説明

多層配線構造

【課題】 金属配線の微細化とエレクトロマイグレーションの抑制との両立を図ることができる多層配線構造を工程数の増加を招くことなく実現する。
【解決手段】 第1の金属配線13の一端部13aと第2の金属配線15の一端部15aとは第1のプラグ16を介して接続されており、第1の金属配線13の他端部13bと第3の金属配線17の一端部17aとは第2のプラグ18を介して接続されている。第1、第2及び第3の金属配線13、15、17の配線幅は、互いに等しいと共に第1及び第2のプラグ16、18の径ともほぼ等しい。第1の金属配線13の他端部13bの配線幅は、第1の金属配線13の一端部13a及び第3の金属配線17の一端部17aの配線幅よりも大きい。第2の金属配線15の一端部15aの配線幅は第1の金属配線13の一端部13aの配線幅よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、上層の配線層に形成された金属配線と下層の配線層に形成された金属配線とが、上層の配線層と下層の配線層との間に設けられた層間絶縁膜に埋め込まれたプラグを介して接続している多層配線構造に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の高密度及び高集積化が進んだLSIにおいては、チップ面積の増大を抑えるために、レイアウト設計において機能素子及び配線幅の微細化が図られている。このため、従来、配線材料としては、加工がしやすく且つ安定性に優れているとの理由からアルミニウム配線が用いられてきた。
【0003】また、LSIの微細化に伴って、金属配線の配線幅も微細化され、電流密度が増加してきている。そのため、金属配線の信頼性という点において、従来にはなかった新たな問題が発生するようになり、特にエレクトロマイグレーションは大きな問題となっている。エレクトロマイグレーションとは、金属配線に電流が流れると、金属配線を構成する金属原子が電子の運動量を受けて移動し、金属原子が移動した跡の空孔が成長することによってボイドが形成される現象をいう。
【0004】従来、エレクトロマイグレーションに対しては種々の対策が講じられており、以下、種々の対策の一例について説明する。すなわち、アルミニウムからなる金属配線に銅を添加して銅をアルミニウムの結晶粒界に析出させることにより、アルミニウム原子の結晶粒界に沿った移動を抑制する方法、アルミニウム又は銅からなる金属配線の側壁部又は底部に窒化タングステンなどからなるバリアメタル層を設けることにより、金属配線に空孔が形成された場合にバリアメタル層からなる電流のバイパスを確保する方法、アルミニウムからなる金属配線の下層にタンタルなどからなるバッファ層を設けることにより、アルミニウムの結晶配向性を向上させる方法などが知られている。
【0005】一方、LSIが高密度化されてくると、金属配線のレイアウトが複雑になるため金属配線の多層化が進む。特に、論理演算回路及びメモリなどのように異なる機能ブロックが混載されたシステムLSIにおいては、5層又は6層程度の配線層が必要になってくる。
【0006】以下、従来の多層配線構造について図6(a)及び(b)を参照しながら説明する。
【0007】図6(a)は従来の多層配線構造の平面図であり、図6(b)は従来の多層配線構造の断面図である。図6(a)及び(b)に示すように、半導体基板1の上に形成された絶縁膜2の上には、アルミニウムからなる第1の金属配線3が形成されており、該第1の金属配線3の上には層間絶縁膜4が形成されている。層間絶縁膜4の上にはアルミニウムからなる第2の金属配線5が形成されており、第1の金属配線3の一端部3aと第2の金属配線5の一端部5aとは、層間絶縁膜4に埋め込まれたタングステンからなる第1のプラグ6を介して接続されている。また、層間絶縁膜4の上にはアルミニウムからなる第3の金属配線7が形成されており、第1の金属配線3の他端部3bと第3の金属配線7の一端部7aとは、層間絶縁膜4に埋め込まれたタングステンからなる第2のプラグ8を介して接続されている。この場合、第1、第2及び第3の金属配線3、5、7の配線幅は、互いにほぼ等しいと共に、第1及び第2のプラグ6、8の径ともほぼ等しく形成され、金属配線間の接続も、互いに端部においてなされるようにレイアウトされることによって、金属配線が占める領域を可能な限り小さくするように設計されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述したエレクトロマイグレーションに対する対策は、配線構造が複雑になるので、金属配線の配線幅が一層微細化されたときには採用が困難になるという問題、及び複雑なプロセスが必要になるので、プロセスの工程数が増加するという問題がある。
【0009】また、我々が、図6(a)及び(b)に示すような微細化された多層配線構造の信頼性のテストを行なってみたところ、従来の多層配線構造つまり金属配線の配線幅がプラグの径よりも大きい多層配線構造に比べて、同じ電流密度においてエレクトロマイグレーションに起因するボイドの発生が多く観察された。
【0010】本発明は、金属配線の配線幅がより微細化され電流密度が増加した多層配線構造における、エレクトロマイグレーションに起因するボイドを低減し、金属配線の微細化とエレクトロマイグレーションの抑制との両立を図ることができる多層配線構造を工程数の増加を招くことなく実現することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】そこで、我々は、エレクトロマイグレーションに起因するボイドの発生原因について種々の検討を加えた。
【0012】従来から知られていることではあるが、金属配線を流れる電流が一定の方向に限られている場合、エレクトロマイグレーションに起因するボイドの発生は多くなる。その理由は、前述したように、エレクトロマイグレーションとは、金属配線に電流が流れると、金属配線を構成する金属原子が電子の運動量を受けて移動した跡の空孔が成長してボイドが形成される現象であるから、エレクトロマイグレーションは、電流が単方向にしか流れない配線領域において発生し、電流が双方向に流れる配線領域においては殆ど発生しない。
【0013】また、金属配線の端部の配線幅がプラグの径よりも大きい多層配線構造においては、金属原子が電子の運動量を受けて移動しても、金属配線におけるプラグの周辺領域から金属原子が補填されるため、ボイドは成長しない。
【0014】さらに、エレクトロマイグレーションに起因して起きるボイドの発生箇所をつぶさに観察した結果、以下に説明するような知見を得た。すなわち、金属配線の端部の配線幅がプラグの径とほぼ等しい多層配線構造であっても、金属配線の端部におけるプラグから電流が流入してくる箇所においてはエレクトロマイグレーションによるボイドは発生しないが、金属配線の端部におけるプラグに向かって電流が流出する箇所においてはエレクトロマイグレーションによるボイドが発生することが分かった。
【0015】図7は、図6(b)に示す多層配線構造においてボイドが発生する部位及び原因を示す図であって、図7において、実線の矢印は電流が流れる方向を示し、破線の矢印は電子が移動する方向を示している。金属配線の端部におけるプラグに向かって電流が流出する箇所、つまり、第1の金属配線3の他端部3b及び第2の金属配線5の一端部5aにおいては、電子の運動量を受けて金属原子(白丸で示す)が矢印のように移動しても、第2及び第1のプラグ8、6及びその周辺領域から金属原子の補填がないので、ボイド9が発生するのである。これに対して、金属配線の端部におけるプラグから電流が流れ込む箇所、つまり、第1の金属配線3の一端部3a及び第3の金属配線7の一端部7aにおいてボイドが発生しないのは、金属原子が電子の運動量を受けても、金属原子は第1及び第2のプラグ6、8に阻止されて移動しないためである。
【0016】本発明は、前記の知見に基づき成されたものであって、電流の流れる方向を考慮し、金属配線におけるエレクトロマイグレーションの発生の恐れがある端部においては配線領域を拡大する一方、エレクトロマイグレーションが発生する恐れがない端部においては配線を微細化するものである。
【0017】ところで、金属配線のレイアウトは自動設計で行なわれることが多いが、従来の自動設計では、配線長を計算して、配線遅延が小さくなるように最適設計していたが、本発明においても、電流が流れる方向に基づいて金属配線の配線幅とプラグの径との関係を一義的に決められるので、自動設計に適し、エレクトロマイグレーションが発生しない信頼性の高い配線設計を行なうことができる。
【0018】尚、プラグの径に対してアライメント余裕を持たせるため、金属配線の両端部の配線幅をその他の部分の配線幅よりも大きくする配線構造は知られているが、これは、電流が流れる方向とは関係なく、金属配線の両端部の配線幅を常にその他の部分の配線幅よりも大きくするという技術であるのに対して、本発明に係る多層配線構造は、電流が流れる方向を考慮して金属配線の一方側の端部の配線幅のみをその他の部分の配線幅よりも大きくするという技術である。
【0019】具体的には、本発明に係る第1の多層配線構造は、一の配線層に形成された第1の金属配線と、一の配線層と異なる配線層に形成され、一端部が第1の金属配線の一端部と層間絶縁膜に埋め込まれた第1のプラグを介して接続された第2の金属配線と、一の配線層と異なる配線層に形成され、一端部が第1の金属配線の他端部と層間絶縁膜に埋め込まれた第2のプラグを介して接続された第3の金属配線とを備え、第1のプラグは、第1の金属配線と異なる導電材料よりなるか又は上底部若しくは下底部にバリア層を有し、第2のプラグは、第1の金属配線と異なる導電材料よりなるか又は上底部若しくは下底部にバリア層を有し、第2の金属配線の一端部から、第1のプラグ、第1の金属配線及び第2のプラグを介して、第3の金属配線の一端部に向かう第1の方向に流れる電流の量は、第3の金属配線の一端部から、第2のプラグ、第1の金属配線及び第1のプラグを介して、第2の金属配線の一端部に向かう第2の方向に流れる電流の量よりも多く、第1の金属配線の他端部における第2のプラグの周辺には、第1の金属配線に該第1の金属配線を構成する金属原子を補填する原子補填部が設けられている一方、第1の金属配線の一端部における第1のプラグの周辺には、第1の金属配線に該第1の金属配線を構成する金属原子を補填する原子補填部が設けられていない。
【0020】第1の多層配線構造によると、第1の金属配線の他端部においては、原子補填部が設けられているため、電子の流動に伴って第1の金属配線を構成する金属原子が配線中央部に向かって移動しても、金属原子が原子補填部から第1の金属配線に補填されるので、エレクトロマイグレーションに起因するボイドは発生しない。一方、第1の金属配線の一端部においては、原子補填部が設けられていないが、金属原子が第2の金属配線の方に移動しないので、エレクトロマイグレーションに起因するボイドは発生しない。
【0021】尚、原子補填部においては、補填のために移動した金属原子の跡には空孔が形成されるが、原子補填部は電流が流れる領域ではないので、配線の信頼性は損なわれない。
【0022】本発明に係る第2の多層配線構造は、第1の多層配線構造における原子補填部として、第1の金属配線の他端部の配線幅が、第1の金属配線の一端部の配線幅よりも大きく形成されている構成をとるものである。
【0023】本発明に係る第3の多層配線構造は、第1の多層配線構造における原子補填部として、第1の金属配線の他端部が第2のプラグの反対側にはみ出す量が、第1の金属配線の一端部が第1のプラグの反対側にはみ出す量よりも大きく形成されている構成をとるものである。
【0024】本発明に係る第4の多層配線構造は、一の配線層に形成された第1の金属配線と、一の配線層と異なる配線層に形成され、一端部が第1の金属配線の一端部と層間絶縁膜に埋め込まれた第1のプラグを介して接続された第2の金属配線と、一の配線層と異なる配線層に形成され、一端部が第1の金属配線の他端部と層間絶縁膜に埋め込まれた第2のプラグを介して接続された第3の金属配線とを備え、第1のプラグは、第1の金属配線と異なる導電材料よりなるか又は上底部若しくは下底部にバリア層を有し、第2のプラグは、第1の金属配線と異なる導電材料よりなるか又は上底部若しくは下底部にバリア層を有し、第1の金属配線の他端部の配線幅は、第3の金属配線の配線幅及び第2のプラグの径よりも大きいと共に、第2の金属配線の一端部の配線幅は、第1の金属配線の配線幅及び第1のプラグの径よりも大きい。
【0025】第4の多層配線構造によると、第1の金属配線の他端部の配線幅は、第3の金属配線の配線幅及び第2のプラグの径よりも大きいと共に、第2の金属配線の一端部の配線幅は、第1の金属配線の配線幅及び第1のプラグの径よりも大きいため、第1の金属配線の他端部及び第2の金属配線の一端部においては、金属配線を構成する金属原子が配線中央部に向かって移動しても、金属原子が金属配線の端部に補填されるので、エレクトロマイグレーションに起因するボイドは発生しない。
【0026】本発明に係る第5の多層配線構造は、第4の多層配線構造において、第1の金属配線の他端部及び第2の金属配線の一端部の配線幅を大きくする構成に代えて、第1の金属配線の他端部が第2のプラグの反対側にはみ出す量は、第3の金属配線の一端部が第2のプラグの反対側にはみ出す量よりも大きいと共に、第2の金属配線の一端部が第1のプラグの反対側にはみ出す量は、第1の金属配線の一端部が第1のプラグの反対側にはみ出す量よりも大きいという構成を採用したものである。
【0027】尚、第1〜第5の多層配線構造においては、第2の金属配線が形成されている配線層と、第3の金属層が形成されている配線層とは、同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0028】第3の多層配線構造において、第1の金属配線の一端部が第1のプラグの反対側にはみ出す量は実質的に零であることが好ましく、第5の多層配線構造において、第3の金属配線の一端部が第2のプラグの反対側にはみ出す量及び第1の金属配線の一端部が第1のプラグの反対側にはみ出す量は実質的に零であることが好ましい。
【0029】このようにすると、金属配線におけるエレクトロマイグレーションが発生しない端部の微細化を図ることができる。
【0030】第4又は第5の多層配線構造において、第2の金属配線の一端部から、第1のプラグ、第1の金属配線及び第2のプラグを介して、第3の金属配線の一端部に向かう第1の方向に流れる電流の量は、第3の金属配線の一端部から、第2のプラグ、第1の金属配線及び第1のプラグを介して、第2の金属配線の一端部に向かう第2の方向に流れる電流の量よりも多いことが好ましい。
【0031】このようにすると、第1の金属配線の他端部及び第2の金属配線の一端部においては、金属原子が補填されるので、エレクトロマイグレーションに起因するボイドが発生しないと共に、第3の金属配線の一端部及び第1の金属配線の一端部においては、金属原子が移動しにくくなるので、エレクトロマイグレーションに起因するボイドが発生しない。
【0032】
【発明の実施の形態】(第1の実施形態)以下、第1の実施形態に係る多層配線構造について、図1(a)、(b)及び図2を参照しながら説明する。尚、図1(a)は金属配線のみを示す平面図であり、図1(b)は図1(a)におけるIb−Ib線の断面図であり、図2は金属配線及びプラグを示す斜視図である。また、図1(a)及び(b)において、実線の矢印は電流が流れる方向を示し、破線の矢印は金属原子が移動する方向を示している。
【0033】半導体基板11の上に形成された絶縁膜12の上にはアルミニウム合金からなる第1の金属配線13が形成され、該第1の金属配線13の上には層間絶縁膜14が形成されている。層間絶縁膜14の上にはアルミニウム合金からなる第2の金属配線15が形成されており、第1の金属配線13の一端部13aと第2の金属配線15の一端部15aとは、層間絶縁膜14に埋め込まれたタングステンからなる第1のプラグ16を介して接続されている。また、層間絶縁膜14の上にはアルミニウム合金からなる第3の金属配線17が形成されており、第1の金属配線13の他端部13bと第3の金属配線17の一端部17aとは、層間絶縁膜14に埋め込まれたタングステンからなる第2のプラグ18を介して接続されている。
【0034】第1の実施形態においては、第2の金属配線15の一端部15aから、第1のプラグ16、第1の金属配線13及び第2のプラグ18を介して、第3の金属配線17の一端部17aに向かう方向に一定して電流が流れる。
【0035】第1の実施形態においては、第1、第2及び第3の金属配線13、15、17における、第1の金属配線13の他端部13b及び第2の金属配線15の一端部15a以外の領域の配線幅は400nmであって、第1及び第2のプラグ16、18の径は400nmである。従って、第1、第2及び第3の金属配線13、15、17の配線幅は、互いに等しいと共に第1及び第2のプラグ16、18の径ともほぼ等しい。第1の金属配線13の他端部13b及び第2の金属配線15の一端部15aの平面形状は一辺が600nmの正方形であって、第1及び第2のプラグ16、18の径よりも大きい。尚、第1及び第2のプラグ16、18の径とは、設計時においては正方形の一辺の長さを示すが、製作後においては実質的に直径に相当する。
【0036】第1の実施形態の特徴として、第1の金属配線13の他端部13bの配線幅(600nm)は、第1の金属配線13の一端部13aの配線幅(400nm)よりも大きい。また、第1の金属配線13の他端部13bの配線幅(600nm)は、第3の金属配線17の配線幅(400nm)及び第2のプラグ18の径(400nm)よりも大きいと共に、第2の金属配線15の一端部15aの配線幅(600nm)は、第1の金属配線13の配線幅(400nm)及び第1のプラグ16の径(400nm)よりも大きい。
【0037】第1の実施形態によると、実線の矢印で示す方向に電流が流れると、金属原子は破線の矢印で示す方向に移動する。このため、第1の金属配線13の他端部13b又は第2の金属配線15の一端部15aにおいては、図3(a)に示すように、金属原子(白丸で示す)は第1又は第2の金属配線13、15の中央部に向かって移動するが、第1の金属配線13の他端部13b又は第2の金属配線15の一端部15aの配線幅が第2又は第1のプラグ18、16の径よりも大きくなっているため、第1の金属配線13の他端部13b又は第2の金属配線15の一端部15aにおけるプラグの周辺領域から金属原子(黒丸で示す)が補填される。このため、第1の金属配線13の他端部13b又は第2の金属配線15の一端部15aにおいては、エレクトロマイグレーションに起因するボイドは発生しない。
【0038】従って、第1の金属配線13の他端部13bにおける第2のプラグ18の周辺領域(配線幅拡張部)は、第1の金属配線13に金属原子を補填する原子補填部を構成し、第2の金属配線15の一端部15aにおける第1のプラグ16の周辺領域(配線幅拡張部)は、第2の金属配線15に金属原子を補填する原子補填部を構成している。
【0039】また、第1の金属配線13の一端部13a又は第3の金属配線17の一端部17aにおいては、金属原子は、電子の運動量を受けても、第1又は第2のプラグ16、18に阻止されて流出しない。このため、第1の金属配線13の一端部13a及び第3の金属配線17の一端部17aにおいては、エレクトロマイグレーションに起因するボイドの発生の恐れがないので、配線幅を第1又は第2のプラグ16、18の径とほぼ等しくすることにより、配線幅の微細化を実現することができる。
【0040】以上説明したように、第1の実施形態によると、エレクトロマイグレーションに起因するボイドが発生する恐れのある金属配線の端部においては、配線幅を大きくして金属原子を補填できるようにしたので、ボイドの発生を確実に防止できると共に、ボイドが発生する恐れのない金属配線の端部においては、配線幅を小さくして金属配線の微細化を図っているため、エレクトロマイグレーションの防止と金属配線の微細化との両立を実現することができる。
【0041】(第2の実施形態)図3(b)及び(c)は第2の実施形態に係る多層配線構造を示しており、第2の実施形態においては、第1の実施形態と同じ部材には同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0042】第1の金属配線13の他端部13bにおける第2のプラグ18の反対側にはみ出している量:d1 (図3(b)を参照)は、第1の金属配線13の一端部13aにおける第1のプラグ16の反対側にはみ出している量:d2 (図3(c)を参照)よりも大きい。また、第1の金属配線13の他端部13bにおける第2のプラグ18の反対側にはみ出している量:d1 は、第3の金属配線17の一端部17aにおける第1のプラグ16の反対側にはみ出している量:d2 よりも大きいと共に、第2の金属配線15の一端部15aにおける第2のプラグ18の反対側にはみ出している量:d1 は、第1の金属配線13の一端部13aにおける第1のプラグ16の反対側にはみ出している量:d2 よりも大きい。尚、第1の金属配線13の一端部13aにおけるはみ出し量:d2 及び第3の金属配線17の一端部17aにおけるはみ出し量:d2 については、実質的に零に設定すると、金属配線の微細化という点から好ましい。
【0043】第2の実施形態によると、第1の金属配線13の他端部13b又は第2の金属配線15の一端部15aにおいては、金属原子(白丸で示す)が第1又は第2の金属配線13、15の中央部に向かって移動しても、第1の金属配線13の他端部13b又は第2の金属配線15の一端部15aにおけるはみ出し部から金属原子(黒丸で示す)が補填されるため、第1の金属配線13の他端部13b又は第2の金属配線15の一端部15aにおいては、エレクトロマイグレーションに起因するボイドは発生しない。
【0044】従って、第1の金属配線13の他端部13bにおけるはみ出し部は、第1の金属配線13に金属原子を補填する原子補填部を構成し、第2の金属配線15の一端部15aにおけるはみ出し部は、第2の金属配線15に金属原子を補填する原子補填部を構成している。
【0045】一方、第1の金属配線13の一端部13a又は第3の金属配線17の一端部17aにおいては、金属原子は第1又は第2のプラグ16、18によって移動を阻止されるので、金属補填部が設けられていなくても、エレクトロマイグレーションに起因するボイドは発生しない。
【0046】(第3の実施形態)図4(a)は第3の実施形態に係る多層配線構造を示しており、図4(a)に示すように、半導体基板21の上には第1の層間絶縁膜22及び第2の層間絶縁膜23が順次形成されている。第2の層間絶縁膜23には、アルミニウム合金などからなる配線24Aと該配線24Aの側壁面及び底面を覆うタンタルなどからなるバリア層24Bとから構成される第1の金属配線24が埋め込まれている。第1の層間絶縁膜22には、アルミニウム合金などからなる配線25Aと該配線25Aの側壁面及び底面を覆うタンタルなどからなるバリア層25Bとから構成される第2の金属配線25が埋め込まれていると共に、アルミニウム合金などからなる配線26Aと該配線26Aの側壁面及び底面を覆うタンタルなどからなるバリア層26Bとから構成される第3の金属配線26が埋め込まれている。尚、図4(a)においても、実線の矢印は、電流が一定して流れる方向を示している。
【0047】第1の金属配線24の一端部24aと第2の金属配線25の一端部25aとは、タングステンプラグ27Aと該タングステンプラグ27Aの壁面を覆うバリア層27Bとからなる第1のプラグ27により接続されていると共に、第1の金属配線24の他端部24bと第3の金属配線26の一端部26aとは、タングステンプラグ28Aと該タングステンプラグ28Aの壁面を覆うバリア層28Bとからなる第2のプラグ28により接続されている。
【0048】第3の実施形態においても、第1又は第2の実施形態と同様、第1の金属配線24の他端部24b及び第2の金属配線25の一端部25aには金属補填部(配線幅拡張部又ははみ出し部)が設けられている一方、第1の金属配線24の一端部24a及び第3の金属配線25の一端部25aには金属補填部(配線幅拡張部又ははみ出し部)が設けられていない。
【0049】第3の実施形態によると、第1の金属配線24の他端部24b又は第2の金属配線25の一端部25aにおいては、金属原子が第1又は第2の金属配線24、25の中央部に向かって移動してもは金属補填部から金属原子が補填されるので、エレクトロマイグレーションに起因するボイドは発生しない。一方、第1の金属配線24の一端部24a又は第3の金属配線25の一端部25aにおいては、金属原子はバリア層27B、28Bによって移動を阻止されるので、金属補填部が設けられていなくても、エレクトロマイグレーションに起因するボイドは発生しない。
【0050】(第4の実施形態)図4(b)は第4の実施形態に係る多層配線構造を示している。第3の実施形態がデュアルダマシン構造であるに対して、第4の実施形態はシングルダマシン構造である点を除くと、第4の実施形態は第3の実施形態と同様であるので、第4の実施形態においては、第3の実施形態と同一の符号を付すことにより、説明を省略する。尚、ダマシン構造には、配線として銅又は銅合金を用いることもできる。
【0051】(第5の実施形態)図5は第5の実施形態に係る多層配線構造を示しており、図5においても実線の矢印は、電流が一定して流れる方向を示している。
【0052】図5に示すように、半導体基板30の上に形成された絶縁膜31の上には、第1の層間絶縁膜32及び第2の層間絶縁膜33が順次形成されている。
【0053】絶縁膜31の上には金属配線A及び金属配線Bが形成され、第1の層間絶縁膜32の上には金属配線C及び金属配線Dが形成され、第2の層間絶縁膜33の上には金属配線Eが形成されている。金属配線Aの一端部Aaと金属配線Cの一端部CaとはプラグFを介して接続され、金属配線Aの他端部Abと金属配線Dの一端部DaとはプラグGを介して接続され、金属配線Dの他端部Dbと金属配線Eの一端部EaとはプラグHを介して接続され、金属配線Eの他端部Ebと金属配線Bの一端部Baとは、プラグJ、プラグK及びプラグJとプラグKとの間に介在するパッドLを介して接続されている。
【0054】第5の実施形態においては、金属配線Aの他端部Ab、金属配線Cの一端部Ca、金属配線Dの他端部Db及び金属配線Eの他端部Ebには金属補填部(配線幅拡張部又ははみ出し部)が設けられている一方、金属配線Aの一端部Aa、金属配線Bの一端部、金属配線Dの一端部Da及び金属配線Eの一端部Eaには金属補填部(配線幅拡張部又ははみ出し部)は設けられていない。
【0055】尚、第1〜第5の実施形態においては、電流が一定方向に流れる場合について説明したが、本発明は電流が必ずしも一定方向に流れる場合に限られず、ある方向に流れる電流の量が逆の方向に流れる電流の量よりも多い場合にも、本発明の効果は得られる。
【0056】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る第1〜第5の多層配線構造によると、金属配線の配線幅の微細化とエレクトロマイグレーションの抑制との両立を図ることができる多層配線構造を工程数の増加を招くことなく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)及び(b)は第1の実施形態に係る多層配線構造を示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるIb−Ib線の断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る多層配線構造の斜視図である。
【図3】(a)は第1の実施形態に係る多層配線構造の作用を示す平面図であって、図1(a)における一点鎖線部の拡大図に相当する。(b)及び(c)は第2の実施形態に係る多層配線構造の要部を示す平面図である。
【図4】(a)は第3の実施形態に係る多層配線構造の断面図であり、(b)は第4の実施形態に係る多層配線構造の断面図である。
【図5】第5の実施形態に係る多層配線構造の断面図である。
【図6】(a)及び(b)は従来の多層配線構造を示し、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
【図7】従来の多層配線構造の問題点を説明する断面図である。
【符号の説明】
11 半導体基板
12 絶縁膜
13 第1の金属配線
13a 一端部
13b 他端部
14 層間絶縁膜
15 第2の金属配線
15a 一端部
16 第1のプラグ
17 第3の金属配線
17a 一端部
18 第2のプラグ
21 半導体基板
22 絶縁膜
23 層間絶縁膜
24 第1の金属配線
24A 銅配線
24B バリア層
25 第2の金属配線
25A 銅配線
25B バリア層
26 第3の金属配線
26A 銅配線
26B バリア層
27 第1のプラグ
27A タングステンプラグ
27B バリア層
28 第2のプラグ
28A タングステンプラグ
28B バリア層
A、B、C、D、E 金属配線
Aa、Ba、Ca、Da、Ea 一端部
Ab、Db、Eb 他端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一の配線層に形成された第1の金属配線と、前記一の配線層と異なる配線層に形成され、一端部が前記第1の金属配線の一端部と層間絶縁膜に埋め込まれた第1のプラグを介して接続された第2の金属配線と、前記一の配線層と異なる配線層に形成され、一端部が前記第1の金属配線の他端部と層間絶縁膜に埋め込まれた第2のプラグを介して接続された第3の金属配線とを備え、前記第1のプラグは、前記第1の金属配線と異なる導電材料よりなるか又は上底部若しくは下底部にバリア層を有し、前記第2のプラグは、前記第1の金属配線と異なる導電材料よりなるか又は上底部若しくは下底部にバリア層を有し、前記第2の金属配線の一端部から、前記第1のプラグ、前記第1の金属配線及び前記第2のプラグを介して、前記第3の金属配線の一端部に向かう第1の方向に流れる電流の量は、前記第3の金属配線の一端部から、前記第2のプラグ、前記第1の金属配線及び前記第1のプラグを介して、前記第2の金属配線の一端部に向かう第2の方向に流れる電流の量よりも多く、前記第1の金属配線の他端部における前記第2のプラグの周辺には、前記第1の金属配線に該第1の金属配線を構成する金属原子を補填する原子補填部が設けられている一方、前記第1の金属配線の一端部における前記第1のプラグの周辺には、前記第1の金属配線に該第1の金属配線を構成する金属原子を補填する原子補填部が設けられていないことを特徴とする多層配線構造。
【請求項2】 一の配線層に形成された第1の金属配線と、前記一の配線層と異なる配線層に形成され、一端部が前記第1の金属配線の一端部と層間絶縁膜に埋め込まれた第1のプラグを介して接続された第2の金属配線と、前記一の配線層と異なる配線層に形成され、一端部が前記第1の金属配線の他端部と層間絶縁膜に埋め込まれた第2のプラグを介して接続された第3の金属配線とを備え、前記第1のプラグは、前記第1の金属配線と異なる導電材料よりなるか又は上底部若しくは下底部にバリア層を有し、前記第2のプラグは、前記第1の金属配線と異なる導電材料よりなるか又は上底部若しくは下底部にバリア層を有し、前記第2の金属配線の一端部から、前記第1のプラグ、前記第1の金属配線及び前記第2のプラグを介して、前記第3の金属配線の一端部に向かう第1の方向に流れる電流の量は、前記第3の金属配線の一端部から、前記第2のプラグ、前記第1の金属配線及び前記第1のプラグを介して、前記第2の金属配線の一端部に向かう第2の方向に流れる電流の量よりも多く、前記第1の金属配線の他端部の配線幅は、前記第1の金属配線の一端部の配線幅よりも大きいことを特徴とする多層配線構造。
【請求項3】 一の配線層に形成された第1の金属配線と、前記一の配線層と異なる配線層に形成され、一端部が前記第1の金属配線の一端部と層間絶縁膜に埋め込まれた第1のプラグを介して接続された第2の金属配線と、前記一の配線層と異なる配線層に形成され、一端部が前記第1の金属配線の他端部と層間絶縁膜に埋め込まれた第2のプラグを介して接続された第3の金属配線とを備え、前記第1の金属配線、第2の金属配線及び第3の金属配線の各配線幅は、互いにほぼ等しいと共に前記第1及び第2のプラグの径ともほぼ等しく、前記第1のプラグは、前記第1の金属配線と異なる導電材料よりなるか又は上底部若しくは下底部にバリア層を有し、前記第2のプラグは、前記第1の金属配線と異なる導電材料よりなるか又は上底部若しくは下底部にバリア層を有し、前記第2の金属配線の一端部から、前記第1のプラグ、前記第1の金属配線及び前記第2のプラグを介して、前記第3の金属配線の一端部に向かう第1の方向に流れる電流の量は、前記第3の金属配線の一端部から、前記第2のプラグ、前記第1の金属配線及び前記第1のプラグを介して、前記第2の金属配線の一端部に向かう第2の方向に流れる電流の量よりも多く、前記第1の金属配線の他端部が前記第2のプラグの反対側にはみ出す量は、前記第1の金属配線の一端部が前記第1のプラグの反対側にはみ出す量よりも大きいことを特徴とする多層配線構造。
【請求項4】 前記第1の金属配線の一端部が前記第1のプラグの反対側にはみ出す量は実質的に零であることを特徴とする請求項3に記載の多層配線構造。
【請求項5】 一の配線層に形成された第1の金属配線と、前記一の配線層と異なる配線層に形成され、一端部が前記第1の金属配線の一端部と層間絶縁膜に埋め込まれた第1のプラグを介して接続された第2の金属配線と、前記一の配線層と異なる配線層に形成され、一端部が前記第1の金属配線の他端部と層間絶縁膜に埋め込まれた第2のプラグを介して接続された第3の金属配線とを備え、前記第1のプラグは、前記第1の金属配線及び第2の金属配線と異なる導電材料よりなるか又は上底部若しくは下底部にバリア層を有し、前記第2のプラグは、前記第1の金属配線及び第3の金属配線と異なる導電材料よりなるか又は上底部若しくは下底部にバリア層を有し、前記第1の金属配線の他端部の配線幅は、前記第3の金属配線の配線幅及び前記第2のプラグの径よりも大きいと共に、前記第2の金属配線の一端部の配線幅は、前記第1の金属配線の配線幅及び前記第1のプラグの径よりも大きいことを特徴とする多層配線構造。
【請求項6】 一の配線層に形成された第1の金属配線と、前記一の配線層と異なる配線層に形成され、一端部が前記第1の金属配線の一端部と層間絶縁膜に埋め込まれた第1のプラグを介して接続された第2の金属配線と、前記一の配線層と異なる配線層に形成され、一端部が前記第1の金属配線の他端部と層間絶縁膜に埋め込まれた第2のプラグを介して接続された第3の金属配線とを備え、前記第1の金属配線、第2の金属配線及び第3の金属配線の各配線幅は、互いにほぼ等しいと共に前記第1及び第2のプラグの径ともほぼ等しく、前記第1のプラグは、前記第1の金属配線及び第2の金属配線と異なる導電材料よりなるか又は上底部若しくは下底部にバリア層を有し、前記第2のプラグは、前記第1の金属配線及び第3の金属配線と異なる導電材料よりなるか又は上底部若しくは下底部にバリア層を有し、前記第1の金属配線の他端部が前記第2のプラグの反対側にはみ出す量は、前記第3の金属配線の一端部が前記第2のプラグの反対側にはみ出す量よりも大きいと共に、前記第2の金属配線の一端部が前記第1のプラグの反対側にはみ出す量は、前記第1の金属配線の一端部が前記第1のプラグの反対側にはみ出す量よりも大きいことを特徴とする多層配線構造。
【請求項7】 前記第3の金属配線の一端部が前記第2のプラグの反対側にはみ出す量及び前記第1の金属配線の一端部が前記第1のプラグの反対側にはみ出す量は実質的に零であることを特徴とする請求項6に記載の多層配線構造。
【請求項8】 前記第2の金属配線の一端部から、前記第1のプラグ、前記第1の金属配線及び前記第2のプラグを介して、前記第3の金属配線の一端部に向かう第1の方向に流れる電流の量は、前記第3の金属配線の一端部から、前記第2のプラグ、前記第1の金属配線及び前記第1のプラグを介して、前記第2の金属配線の一端部に向かう第2の方向に流れる電流の量よりも多いことを特徴とする請求項5又は6に記載の多層配線構造。
【請求項9】 前記第2の方向に流れる電流の量は実質的に零であることを特徴とする請求項1、2、3又は8に記載の多層配線構造。
【請求項10】 前記第2の金属配線と前記第3の金属配線とは、互いに異なる配線層に形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、5又は6に記載の多層配線構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2000−340654(P2000−340654A)
【公開日】平成12年12月8日(2000.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−153567
【出願日】平成11年6月1日(1999.6.1)
【出願人】(000005843)松下電子工業株式会社 (43)
【Fターム(参考)】