説明

多結晶研磨材及びその製造方法

【課題】ミクロン、サブミクロン又はナノサイズのマトリックス材料中に分散したミクロン、サブミクロン又はナノサイズの超硬質研磨剤から成る多結晶研磨要素の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス質を好む表面を有する複数の超硬質研磨粒子を、マトリックス前駆体材料を用いて被覆し、その後焼結に適するように処理する。マトリックス前駆体材料の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸炭化物、又は炭窒化物、又は元素形態に、マトリックス前駆体材料を変換することができる。被覆した超硬質研磨粒子が結晶学的又は熱力学的に安定な圧力及び温度で、被覆した超硬質研磨粒子を固め焼結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶研磨体及び研磨材に関し、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨(研削、切削又は摩耗)用成形体は、切断、切削、切り抜き(又はカッティング:cutting)、微粉砕、磨砕、錬磨、フライス加工、フライス削り(又はミリング:milling)、研削、破砕、粉砕、研磨、ひく、磨く、とぐ(又はグラインディング:grinding)、穴あけ、ドリルあけ、掘削(又はドリリング:drilling)及び他の研磨作業に広範に使用される。それらは一般に、第二相マトリックス中に分散した超硬質研磨用粒子を含む。マトリックスは、金属又はセラミック又はサーメット(cermet)であってよい。超硬質研磨用粒子は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN)、炭化ケイ素又は窒化ケイ素等であってよい。これらの粒子は、一般に使用される高温高圧圧縮製造方法の間に互いに結合して、多結晶の塊を形成し得る、又は第二相材料のマトリックスを介して結合し、多結晶の塊を形成し得る。そのような物体は、一般に多結晶ダイヤモンド又は多結晶立方晶窒化ホウ素として知られ、それらは、各々超硬質研磨剤として、ダイヤモンド又はcBNを含む。
【0003】
ダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素研磨用成形体の例は、米国特許第 3,745,623;3,767,371;3,743,489;4,334,928;5,466,642 及び 5,328,875 に記載されている。
【0004】
例えば、米国特許第 4,334,928 は、80〜20体積%の高圧型窒化ホウ素;及び残部(周期表のIVa又はVa族遷移金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、ホウ化物及びシリサイド(ケイ化物又はケイ素化合物)、それらの混合物及びそれらの固溶体配合物からなる群から選択される少なくとも一種のバインダー配合材料のマトリックスである)から本質的に成る工具(又は用具)に使用する焼結成形体を教示する。マトリックスは、連続マトリックスに組み込まれた高圧型窒化ホウ素を有する焼結体に連続結合構造を形成する。この特許に概説された方法は、例えば、ボールミル、すり鉢等の、機械的微粉砕/混合技術を用いて、所望の材料を組み合わせることの全てを伴う。
【0005】
米国特許第 5,466,642 では、強靱性(又は硬度)に優れる耐摩耗性cBN系切削工具は、特定量の少なくとも一種のTi炭化物/窒化物成分、少なくとも一種のTi及びAlを含む配合物、炭化タングステン、Al、及びcBnと付随的な不純物である残部を含むことを教示する。上述の製造方法は、ボールミル中の湿式混合を伴う。付随的な不純物は、ミルのボールと本体から摩耗する材料に主に帰する。
【0006】
米国特許第 5,328,875 では、結合相構成成分、分散相構成成分、及び不可避的不純物を含んで成り、高靱性で摩耗及び切削に高耐性の切削工具用高強度セラミックを提供するPCBNセラミックがクレームされている。結合相構成成分は、一種又はそれ以上のチタン及びアルミニウムの炭化物、窒化物及び炭窒化物化合物(酸素を含む)、及び20体積%〜48体積%の分解反応相立方晶窒化ホウ素を有する。分散相構成成分は、立方晶窒化ホウ素を含んで成り、分解反応相は、一種又はそれ以上の炭化チタン、窒化チタン及び炭窒化チタン、及び一種又はそれ以上の酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ化チタンを含んで成る。分解反応相を含んで成る結合相の結晶粒子サイズと、立方晶窒化ホウ素を含んで成る分散相の結晶粒子サイズは、全て1ミクロンより小さいと考えられる。チタン及びアルミニウム炭化物化合物は、Ti−3AlCであることが好ましく、チタンとアルミニウム窒化物化合物は、実質的にTi−3AlNであり、チタンとアルミニウム炭窒化物化合物は、実質的にTi−3AlCNである。分解反応相は、実質的に一種又はそれ以上のTiC、TiN、TiCN、Al、AlN及びTiBを含んで成る。上述の製造方法は、湿式ボールミル中で、所望の成分粒子材料を微粉砕し混合することを伴う。
【0007】
先行技術の方法には、重要な問題が生ずる。所望の出発材料を組み合わせるために、機械的微粉砕及び混合手順を伴う一般的方法は、該成分の不可避の粉砕及び破砕をもたらす。言い換えると、このことは、成分の均一性が結果的に欠如することを伴って生ずる、しばしば複雑で多種多様の成分が広範囲にわたる粒子サイズを有することを生ずる。この不均一性は、焼結後最終材料の相構造を正確に測定し制御することができないということをもたらし、言い換えると、切削工具等として材料の真の潜在能力を利用できない。そのような材料は、用途において乏しい特性を示し、そのことは、構成成分の不適切な分散及び均一性に由来し得る。
【0008】
更に、所望の出発構成成分の粒子サイズがより細かく成るとともに、特にサブミクロン粒子材料にとり、より特にはナノサイズの成分材料にとっては、分散がきわめて困難であるために、これらの手順は、不適当である。従って、これらの手順は、均一なサブミクロン及びナノサイズの相を有する複合材料を製造することに制限を課す。
【0009】
更に、ミルボール、ロッド及びミル本体材料を多かれ少なかれ研磨することなく、超硬質研磨粒子を微粉砕することは不可能である。この研磨によって生ずる材料は、所望の成分の混合物を、望ましくない材料で必然的に汚染する、又はもしその材料が望ましいと考え得る場合、制御できない種々の方法で入れられる。高エネルギー微粉砕技術を使用してサブミクロン及びナノサイズの出発構成材料に用いることを試みる場合、この汚染は特に一般的に行われる。ミル本体、ボール及びロッドの寿命の間に、回避できない研磨は、これらの品の寸法と外観に徐々に変化をもたらし、それらの磨砕、混合及び粉砕挙動に徐々に変化をもたらす。更にこれらの変化は、組み合わされる材料の汚染の程度、均一性、分散性の変化し易さをもたらし、言い換えれば、最終的に製造される複合材料と工具の適用性、性質、構造の変化し易さをもたらす。更に、サブミクロン、ナノ粒子サイズ材料は、特にこれらの問題を生じがちであり、そのような方法で製造することが困難な傾向にある。
【0010】
微粉砕及び混合手順は、通常靱性(又はねばり強さ)を向上するために、所望の複合材の機械的特性を変更するために加えてよい、繊維、ウィスカー(又はひげ結晶)、一般に高アスペクト比粒子材料を損傷し壊す傾向もあり、従ってそれによって目的を無にする傾向もある。
【0011】
先行技術の例では、微粉砕及び混合技術は、大部分用いられない。例えば、米国第 5,211,726 では、細かくて約0.1ミクロンから粗くて約1mmサイズの範囲のcBN又はダイヤモンドの粒子を、一又はそれ以上の活性被覆層で被覆してよく、これらの被覆したものは、ある圧力及び温度で焼結して、多粒子(又はマルチグレイン)研磨成形体を得てよいことを教示する。サイズが約50ミクロンから約1mmの特定のタイプのcBN材料の多粒子粒状物を被覆するために、被覆方法(又はコーティング方法)は、化学気相蒸着(CVD)法に制限される。
【0012】
EP 0 577 375 も、ダイヤモンド又はcBNに耐熱性酸化物、窒化物及び炭化物の被覆を蒸着(又は堆積)し、ダイヤモンド又はcBNが熱力学的に安定と考えられる温度及び圧力で被覆を焼結する、超硬質成分としてダイヤモンド又はcBNを用いる研磨成形体の製造方法を教示する。開示の被覆方法は、20〜40ミクロンのサイズで被覆すべきダイヤモンド又はcBN粒子をともなう化学気相蒸着である。
【0013】
米国第 5,536,485 は、まず気体又は蒸気の環境でダイヤモンド又はcBN粒子を被覆し、その後ダイヤモンドとcBNが熱力学的に安定及熱力学的に準安定の両方であってよい温度及び圧力条件で該被覆した粒子を焼結することによって、ダイヤモンド又はcBN焼結物を製造することができる方法を開示する。
【0014】
cBNが超硬質成分である材料に関する先行技術の多くは、溶融時にcBNを濡らすことができ、cBNと大いに反応することができ、その部分的分解を生じさせることができる、例えばアルミニウム、チタン又はケイ素等の金属との反応に依存する。従って、これらのアプローチは、得られる材料の複雑な微小構造中に組み込まれる得られる分解相を有する材料をもたらす。必然的に、反応金属の複雑なホウ化物、窒化物及び窒化ホウ素が、しばしば、組み込まれる他の相と不均一分布で存在する。このことは、製造することができる材料を、各反応によって可能なもので、過度に複雑な構造に制限する傾向にある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の要約
本発明の一の要旨に基づく、多結晶研磨(研削、切削又は摩耗)要素の製造方法は、ガラス質を好む(又は親ガラス性:vitreophilic)表面を有する複数の超硬質研磨粒子を供給する工程、マトリックス前駆体材料で超硬質研磨粒子を被覆(又はコート)する工程、被覆した超硬質研磨粒子を処理し、それらが焼結に適するようにする、好ましくはマトリックス前駆体材料を、マトリックス前駆体材料の酸化物、窒化物、炭化物(又はカーバイド)、酸窒化物(又はオキシナイトライド:oxynitride)、酸炭化物(又はオキシカーバイド:oxycarbide)又は炭窒化物(又はカーボナイトライド:carbonitride)、又はマトリックス前駆体材料の元素形態、又はそれらの組み合わせにする工程、及び被覆した超硬質粒子が結晶学的に又は熱力学的に安定である圧力及び温度で固めて(圧縮して、硬化して又は圧密化して:consolidate)焼結する工程を含む。
【0016】
マトリックス前駆体材料は、非晶質又はナノ結晶性酸化物、水酸化物又はオキソ−水酸化物(又はオキソ−ハイドロオキサイド:oxo-hydroxide)であることが好ましい。
【0017】
超硬質研磨粒子は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、亜酸化ホウ素(BO)等を含んで成る群から選択されることが好ましい。
【0018】
特に、超硬質研磨粒子は、ダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素又はこれらの材料の組み合わせであり、その場合、粒子は、その表面をガラス質を好むようにするために表面処理法(又はプロセス)を受けなければならない。このことは、本発明の更なる要旨を形成し、それに関して表面化学種が選択され、化学種は適当な処理によって発生され、そのように形成される表面化学種は、その後の湿式化学反応及び超硬質粒子の被覆手段と相性がよく、かつ関与することができる。表面化学のこの性質は、ガラス又はガラス状非晶質材料の典型的酸化物成分と結合を形成することができるという点で、ガラス質を好む(親ガラス性又はガラス質親和性)又はガラスを愛すると記載してよい。このようにして、その後、被覆材料は、超硬質粒子の表面と化学的に結合するであろう。
【0019】
変換されたマトリックス前駆体材料は、ミクロン、サブミクロン又はナノ粒子サイズ(又はナノ微粒子サイズ:nano-grain sized)酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸炭化物、炭窒化物又は元素状態のマトリックス材料、又はそれらの組み合わせから、典型的に選択される。それらは、典型的には、アルミニウム、チタン、ケイ素、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、タンタル、クロム、モリブデン及びタングステンの酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸炭化物及び炭窒化物、及びこれらの材料の適切な組み合わせを含む。好ましくは、これらのマトリックス前駆体材料は、ナノ粒子サイズであろう。好ましい元素マトリックスは、タングステン、モリブデン又はこれらの金属の組み合わせ又は合金であり、特にナノ粒子サイズのものである。
【0020】
マトリックス材料用前駆体を、いわゆるゾルゲル技術を用いて超硬質研磨粒子に被覆することが好ましい。適する化学反応剤、特に一種又はそれ以上のアルコキサイドを加えた液体媒体に、超硬質粒子を懸濁して、コロイド体(又はコロイド物質)を形成し、表面と結合させ、該粒子に被覆を形成してよい。そのようにして形成した被覆は、主に、上述した金属又は半金属の細孔性(又は多孔性)酸化物、水酸化物又はオキソ−水酸化物(又はオキソ−ハイドロオキサイド:oxo-hydroxide)である。
【0021】
空気、真空又は不活性ガス中での温度制御加熱を行って、高表面積の微孔性非晶質被覆、例えば、ヒドロキシル種、特に−OH等に付着した(又は付けられた)、望ましくない化学種及び揮発性物質を除去することが好ましい。
【0022】
更に熱処理又は焼成を行い、被覆を結晶化して、微粒子又はナノサイズ粒子酸化物セラミックを形成することができる。
【0023】
酸化物セラミックは、ある温度範囲で相変化を受けるので、使用する温度と時間による特定の(又は具体的)結晶相の選択は、更に本発明の要旨である。
【0024】
酸化物被覆材料には、広い温度範囲で結晶化しないものがあり、従って、ガラスを形成することができ、ガラス質焼結機構によって密度を高める(又は緻密にする)ことができる。
【0025】
反応性ガス中での温度制御反応を使用して、非晶質酸化物又は結晶性酸化物セラミックを、結晶性非酸化物セラミックに変えてもよい。特に、被覆をアンモニアガスと反応させて窒化物を形成する。炭素質ガスと水素、例えば、メタン又はエタンと水素の混合物等の中で被覆を反応させることで、炭化物を形成してよい。酸化物被覆には、水素で還元可能な場合があり、それらはマイクロ又はナノ粒子サイズ元素又は金属に変えることができる。
【0026】
本発明の特定の要旨は、酸化物前駆体被覆が非晶質又は微結晶性であるために、ガスと反応させることにより、それらを、選択されたセラミック又は金属に変えるために必要な温度は、常套の焼成と溶融により製造される常套の酸化物セラミックに必要な温度より著しく低いということである。
【0027】
例えば、選択された時間に対して選択された圧力で適切な温度にホットプレスすること等で、特に高温高圧条件下で、ホットプレスすることで、被覆された超硬質粒子を固め、圧縮し(又は成形し)、被覆を焼結することが好ましい。選択される条件は、焼結すべき具体的被覆材料と具体的超硬質粒子に依存するであろう。好ましいホットプレス装置は、例えば、ベルト型高圧装置(belt high pressure device)等の高圧装置及び当業界で既知のものを含む。
【0028】
超硬質研磨粒子の被覆は、被覆した粒子の処理をし、本発明のもう一つの要旨を形成する。
【0029】
被覆し処理した粒子を高圧及び高温で固めて焼結することは、更に本発明のもう一つの要旨を形成する。
【0030】
本発明の多結晶研磨要素又は成形体は、極めて細かい粒子酸化物セラミック、非酸化物セラミック、サーメット(又は陶性合金)又はこれらの種類の材料の組み合わせからできている連続マトリックスに十分に分散し、サブミクロン及びナノサイズ(0.1ミクロン、即ち、100nmより小さい粒子)までのものを含む、約数百ミクロンより小さい、サイズ又はサイズ分布の多くの超硬質粒子材料を含んで成る複合材料であることが好ましい。
【0031】
本発明の方法は、独特の多結晶超硬質研磨要素又は複合物のホストへの道も開いた。これらは、
チタニア、TiO、ハフニア、HfO、シリカ、SiO、ジルコニア、ZrO、窒化チタン、TiN、窒化バナジウム、VN、窒化ハフニウム、HfN、窒化ニオブ、NbN、NbN、窒化タンタル、TaN、窒化モリブデン、MoN、窒化タングステン、WN、炭化チタン、TiC、炭化バナジウム、VC、炭化ハフニウム、HfC、炭化ニオブ、NbC、炭化タンタル、TaC、炭化モリブデン、MoC、炭化タングステン、WC、WC、モリブデン、Mo及びタングステン、Wから選択されるマトリックス中にダイヤモンドを含んで成る多結晶超硬質研磨要素;
アルミナ、Al、チタニア、TiO、ハフニア、HfO、シリカ、SiO、ジルコニア、ZrO、窒化バナジウム、VN、窒化ハフニウム、HfN、窒化ニオブ、NbN、NbN、窒化タンタル、TaN、窒化モリブデン、MoN、窒化タングステン、WN、炭化バナジウム、VC、炭化ハフニウム、HfC、炭化ニオブ、NbC、炭化タンタル、TaC、炭化モリブデン、MoC、炭化タングステン、WC、WC、モリブデン、Mo及びタングステン、Wから選択されるマトリックス中に立方晶窒化ホウ素を含んで成る多結晶超硬質研磨要素;及び
アルミナ、Al、チタニア、TiO、ハフニア、HfO、シリカ、SiO、ジルコニア、ZrO、窒化チタン、TiN、窒化バナジウム、VN、窒化ハフニウム、HfN、窒化ニオブ、NbN、NbN、窒化タンタル、TaN、窒化モリブデン、MoN、窒化タングステン、WN、炭化チタン、TiC、炭化バナジウム、VC、炭化ハフニウム、HfC、炭化ニオブ、NbC、炭化タンタル、TaC、炭化モリブデン、MoC、炭化タングステン、WC、WC、モリブデン、Mo及びタングステン、Wから選択されるマトリックス中にダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素の組み合わせを含んで成る多結晶超硬質研磨要素を含む。
本発明によって製造可能な他の独特の要素又は複合材料は、マトリックス材料の粒子サイズがナノサイズであるという条件で、アルミナマトリックス中のダイヤモンド、窒化チタンマトリックス中の立方晶窒化ホウ素又は炭化チタンマトリックス中の立方晶窒化ホウ素を含む。
【0032】
添付した図面を参照して、例としての目的のみで、より詳細に本発明を以下説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の方法の工程の概略図である。
【図2】図2は、本発明の方法の好ましい態様の中間材料である、チタニア被覆cBN粒子のX線回折である。
【図3】図3は、図2に参照したチタニア被覆cBN粒子を熱処理した結果である、窒化チタン被覆cBN粒子のX線回折である。
【図4】図4は、図3に参照した窒化チタン被覆cBN粒子から製造された焼結材料のX線回折である。
【図5】図5は、本発明の方法のもう一つの好ましい態様に基づいて製造された窒化チタン被覆ダイヤモンド粒子のX線回折である。
【図6】図6は、本発明の方法の更に好ましい態様に基づいて製造されたダイヤモンド酸化ケイ素複合材料のX線回折である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、回転、旋削、丸削り(又はチューニング:turning)、微粉砕、磨砕、錬磨、フライス加工、フライス削り(又はミリング)及び砥石仕上げ、とぎ上げ、ホーニング仕上げ(又はホーニング:honing)のための切削工具、岩、セラミック及び金属のための穴あけ、ドリルあけ、掘削(又はドリリング)カッター、摩耗部品等として使用するための多結晶研磨体及び研磨材(多結晶研磨要素ともいう)に関し、更に、その製造方法に関する。本発明は、改良された均一複合材料に特に向けられており、存在する材料相は、ミクロン、サブミクロン及び/又はナノ粒子サイズであり、その結果、そのような材料相の使用結果として、用途(又は応用)での性質及び挙動の期待される改良を利用することができる。
【0035】
これらの材料は、本発明の複合研磨体を使用することができる用途の範囲で高められた挙動を生ずる改良された性質を示す。微細構造の均一性の欠如、組成相の複雑さ及び取り込まれる不純物を処理する先行技術で経験する多くの課題を、本発明で取り扱う。
【0036】
複合研磨体は、ミクロン、サブミクロン又はナノ粒子サイズマトリックス材料中に分散したミクロン、サブミクロン又はナノサイズ超硬質研磨粒子で作られる。
【0037】
本発明の目的とするサブミクロン粒子又は微粒子(particles or grains)は、1マイクロメーター(1000nm)〜0.1ミクロン(100nm)の間のそれらの主たる直径方向の寸法を有するとして定義され、ナノサイズの粒子又は微粒子は、0.1ミクロン(100nm)より小さいそれらの主たる直径方向の寸法を有するとして定義される。
【0038】
超硬質研磨粒子は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、亜酸化ホウ素(BO)等及びこれらの粒子種のいずれかの組み合わせを含む。好ましくは超硬質粒子は、ダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素又はこれらの材料の組み合わせである。
【0039】
マトリックス材料は、ミクロン、サブミクロン又はナノ粒子サイズの酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸炭化物又は炭窒化物マトリックスを含むが、これらに限定されるものではない。サブミクロン又はナノサイズのマトリックス材料は、アルミニウム、チタン、ケイ素、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、タンタル、クロム、モリブデン及びタングステンの酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸炭化物又は炭窒化物及びこれらの材料のいずれかの適切な組み合わせを含む。好ましくは、これらのマトリックスは、アルミニウム、チタン、タンタル、ケイ素又はジルコニウムのナノ粒子サイズの化合物である。
【0040】
本発明の複合研磨体は、約25体積%〜98体積%を上回る、マトリックス材料に対する分散超硬質粒子の組成比を含むが、これらの組成比に制限されるものではない。
【0041】
本発明の方法の鍵となる要旨は、所望のマトリックス材料のための前駆体を、コロイド技術を用いて各個々の超硬質粒子に正確に被覆することができ、その結果、各粒子は、他の全てのものと、実質的に同じ寸法及び構造の被覆を有する。このことは、先行技術の方法で得られるよりも著しく良好な、獲得すべき(又は達成すべき)程度の大きな構造的均一性を可能とする。これは、ミクロン、サブミクロン及び更にナノサイズの寸法の細かい超硬質粒子のために可能である。なぜならば、前駆体被覆材料及びその後選択される熱処理手順によってもたらされるその後の最終マトリックス材料は、極めて細かいナノ粒子サイズであり得るからである。即ち、このことは、良好な均一性を伴って、達成すべき約90体積%を超える極めて高い超硬質粒子含有量を可能とする。
【0042】
本発明の方法は、大まかに四つの手順の構成要素、即ち、1)超硬質粒子に、ガラス質を好む表面をもたらすこと(又は設けること)、又は適切である場合、超硬質粒子表面を化学的に処理して、ガラス質を好むようにすること;2)コロイド懸濁反応法を用いて、超硬質粒子を前駆体材料で被覆すること;3)組み込み反応ガスを含むガス環境中でそのように被覆された超硬質粒子を熱処理して、選択された酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸炭化物及び/又は炭窒化物に、被覆を変換すること;及び4)高温、高圧で固めて焼結して、十分に(又は完全に)緻密な(稠密な又は密度の高い)微細構造でナノ構造複合材料要素を生じさせることを含む。
【0043】
第一工程では、超硬質粒子材料の表面化学が制御され、粒子にガラス質を好む性質が提供される。ガラスを好む、「ガラスを愛する」とは、酸化物材料と化学結合を容易に形成することができるような性質として定義される。超硬質粒子のガラス質を好む性質に必要な表面の化学種を生ずることができる処理は、酸化的酸、例えば濃硝酸中で煮沸すること、適切である場合、強い酸化剤、例えば過酸化水素溶液に暴露すること又は空気又は酸素中で加熱することであるが、これらに制限されるものではない。そのようにして形成された表面は、粒子材料上への酸化物及び水酸化物系被覆の形成及び成長とそのようにして形成される酸化物系前駆体被覆との良好な接着を可能とする。
【0044】
第二工程において、非晶質及び/又はナノ粒子サイズ水和酸化物前駆体材料を使用する超硬質粒子材料のコロイド懸濁物被覆を用いる。特定のコロイド技術を適用することで、ミクロン、サブミクロン及びナノ粒子サイズの超硬質材料粒子を正確に被覆することができるということが見出された。適切な被覆を生じさせることができる二つの大まかなコロイドルートがあり、一つは、無機塩の水溶液を使用するか否かにより、他方は金属有機化合物を使用するか否かによる。これに対する好ましいアプローチは、後者のゾルゲルアプローチであり、より好ましくはアルコキサイド又はアルコレートの加水分解と重縮合を用いるゾルゲルアプローチである。この方法によって生ずる前駆体被覆は、細孔性、非晶質又はナノ粒子サイズ高表面積の水和酸化物である。特にゾルゲル技術は、きわめて用途が広く、寸法が10nm又はそれより小さくてよいガラス質を好む懸濁粒子の表面上に水和酸化物前駆体材料の極めて正確な被覆の成長及び不均一核形成の制御を受けやすい。
【0045】
好ましいゾルゲルアプローチは、金属アルコキサイド又は金属アルコキサイドの組み合わせのアルコール性溶液を、同じアルコール中純水の低濃度アリコート(大きな全体の一部分又は一定分量:aliquot)中の超硬質材料粒子懸濁物にゆっくり加えることである。金属アルコキサイドは、水で加水分解され、金属水酸化物モノマーを形成し、それは、重縮合反応を順に受けて、徐々に水和した酸化物細孔性材料を形成する。これは、本発明では、酸化物前駆体材料又は被覆ともいう。アルコキサイドとして、典型的には同じアルキル基を有するアルコール種、懸濁した超硬質粒子の濃度、アルコール中アルコキサイド溶液の濃度、アルコキサイドと水との比、温度及び例えば酸又は塩基等の他の試薬の存在又は非存在の適切な選択によって、懸濁した超硬質粒子上に酸化物前駆体の被覆形成を制御することが可能である。使用する各タイプのアルコキサイドは、所望の被覆中に懸濁超硬質粒子材料を被覆するために、使用すべき特定の条件を必要とする。
【0046】
このアプローチの重要な要旨は、アルコキサイド加水分解及び重縮合反応の副生成物は、被覆の一部の自由表面上の水酸化物種、アルコール及び水であるということである。全てのこれらの副生成物は、乾燥及び低温熱処理で容易に除去できる。更に、アルコキサイド自身、高純度グレードのものを容易に使用できる。従って、アルコキサイドゾルゲルアプローチは、極めて純粋で汚染されていない酸化物をもたらす。従って、最終マトリックス材料を、先行技術の方法によって生産されるものと比較して極めて純粋に製造することができる。確かに、微粉砕/混合法によって取り込まれる随所に存在する不純物は、本発明の方法では存在しない。
【0047】
更に本発明のもう一つの極めて重要な要旨は、広範囲の混合前駆体酸化物材料を、種々の種類の金属に基づく一種以上のアルコキサイドを同時に用いることで作り得るということである。このようにして、そのように生ずる酸化物前駆体材料は、分子スケールで分布した種々の金属を有する混合酸化物となるであろう。別法では、一種より多い金属を伴うアルコキサイドコンプレックスを作ることができることが知られている。これらのアルコキサイドコンプレックスを本発明の方法で使用することができる。その結果、本発明の方法を十分使用することによって生ずる酸化物、窒化物及び炭化物は、混合及び合金相を含むことができる。更に、混合金属アルコキサイド構造を作ることができることが既知である。そのような混合金属アルコキサイドの使用も、混合金属前駆体酸化物と、その後混合金属複合マトリックス相をもたらす。
【0048】
アルコキサイドの混合物又は混合アルコキサイドの使用も、例えば、イットリア(又は酸化イットリウム)、マグネシア(又は酸化マグネシウム)等の構造変性剤と焼結を用いる、前駆体とその後のマトリックス材料のドーピングを可能とする。従って、多数の確立されたセラミック、サーメット及び冶金学の材料科学知識を、本発明の方法による複合材料の製造に生かすことができる。
【0049】
懸濁物から取り出し、洗浄後、被覆した粒子を、例えば減圧して100℃より低い温度に加熱することによってゆっくり乾燥する。前駆体被覆材料の細孔性、非晶質又はナノ粒子サイズ構造は、複合材料の成分としての所望の微粒子及びナノ粒子サイズセラミック及び他の材料を形成するために、ガス状の反応物質又はガスを含む環境の温度プログラム反応熱処理のため、それらを理想的にする。
【0050】
第三工程において、選択したガス環境で、前駆体被覆超硬質粒子の温度プログラム反応熱処理を用いて、被覆を部分的に緻密にし、選択した細かい又はナノ粒子サイズセラミック材料に変換する。空気又は酸素中の熱処理を用いて、焼成し、部分的に被覆を緻密にし、残留する水分とアルコール分を追い出し、所望の酸化物相として被覆を結晶化させる。加熱速度、トップ(又は最高)温度及びトップ温度の継続時間の選択は、必要な酸化物の構造、相及び種類に特有である。
【0051】
被覆を窒化物に変換することが好ましい場合、乾燥又は空気焼成被覆材料を典型的には約1100℃までの温度で乾燥アンモニア中で加熱してよいが、約1400℃を含む、1400℃までの温度が、用途によっては必要であり得る。この温度プログラム反応処理は、被覆材料を次第に減少させ、酸化物系被覆を化学量論的に及び非化学量論的に窒化物及び酸窒化物に変換可能なことが見出された。再び、加熱速度、ガス流速度、トップ温度及びトップ温度の継続時間は、要求される窒化物の構造、相及び種類に特有である。酸窒化物相を、条件の適切な選択によって生じさせることが可能なことも見出された。
【0052】
被覆を炭化物に変換することが好ましい場合、乾燥又は空気焼成被覆材料を例えばメタン又はエタン等の炭素質のガスと水素との混合物中で典型的には1200℃より低い温度で加熱してよいが、用途によっては1500℃を含み1500℃までの温度を要してよい。更に、加熱速度、ガス流速度、トップ温度及びトップ温度の継続時間の選択は、要求される炭化物の構造、相及び種類に特有である。酸炭化物相を、条件の適切な選択によって生じさせることが可能なことも見出された。別法では、上述したように生じた窒化物被覆を、メタン又はエタン、水素混合物中で適切に熱処理することで、炭化物に変換可能なことも見出された。炭窒化物相を、条件の選択によって生じさせることが可能である。
【0053】
一部の酸化物被覆は、純水素中で還元することで対応する元素金属に容易に還元することができる。そのような被覆の例は、酸化タングステン及び酸化モリブデン;WO及びMoOであり、それらは、典型的には500〜700℃の範囲の低温度で金属に容易に還元し得る。
【0054】
本発明の方法の温度プログラム反応成分の鍵となる要旨は、超硬質粒子上に得られる酸化物、窒化物、炭化物被覆の粒子サイズが、典型的には寸法が全てナノメートルであるということが見出されたということである。更に、これらの熱処理のもう一つの価値のある要旨は、変換に影響を与える必要な温度と時間は、融解又は溶融技術で作られる常套の酸化物材料の同様の変換にために必要な温度及び時間と比較して、低くて短かったということである。窒化物を形成する場合、常套の酸化物材料の窒化物化と比較して、本発明の方法で必要とされる温度はほとんど400℃低い。更に、被覆された超硬質粒子は、分散し、非凝集と成り得る。このことは、その後の高圧、高温で固めること、次に続く焼結工程の間に、得られる構造の均一性を促進する。
【0055】
第四工程において、高温で固め焼結することを、超硬質粒子材料が、十分に緻密又はほとんど十分に緻密なミクロン、サブミクロン及びナノサイズ複合一体材料要素を形成する熱力学的及び化学的に安定である温度及び圧力で行う。ダイヤモンド及びcBNの好ましい超硬質材料のために、これらの条件は、2.5GPa〜8GPaと600℃〜1800℃の範囲であった。そのようにして生ずる緻密な複合材料を、固めて焼結する間にそのままで金属炭化物基材と結合することもできる。使用する高圧高温装置は、適切な条件を生じさせることができる当業界で既知のものであってよい。
【0056】
上述の方法の工程を、図1を参照して以下詳細に説明する。
【0057】
1.超硬質粒子をガラス質を好むようにする(又は親ガラス性にする)表面処理
ミクロン、サブミクロン又はナノ粒子サイズダイヤモンドの場合、表面を終了する表面官能基は、例えば硝酸及び/又は硫酸の混合物等の濃い酸化力のある酸で加熱する等の方法により、C−OH、C−O−C、C=O及びO=C−Oで、主に作られるように生じさせてよい。別法では、表面をHで終わらせるために、20%水素/アルゴン中900℃で気体熱処理し、その後20%酸素/アルゴン中480℃で熱処理して酸素種によって占められた表面を形成してよい。ダイヤモンド表面に結合する酸素系官能基を生ずる他の方法も使用することができる。酸化したダイヤモンド表面は、ガラス質を好むようになり、即ち、特に水和酸化物(又はハイドレーテッドオキサイド:hydrated oxide)構造を含む酸化物と化学結合を形成することができる。
【0058】
サブミクロンcBNの場合、600℃を超える空中での熱処理は、表面上のホウ素酸素種と窒素酸素種の濃度を増加させることが期待され、このことは、フーリエ変換赤外反射分光法で示すことができる。そのような表面は、ゾルゲル誘導酸化物を用いるその後のコロイド被覆の際にガラス質を好む挙動を示す。例えば、炭化ケイ素及び窒化ケイ素等の他の既知の超硬質材料の多くは、本発明の方法に適する通常ガラス質を好むようにする、それらの表面の酸化的化学末端を有する。
【0059】
2.超硬質材料粒子のコロイド被覆
模式図の2(a)を参照すると、前駆体水和酸化物材料を製造し所望のマトリックス材料にする一般的なゾルゲル技術が使用される。そのようなアプローチの一般的な例は、例えば尿素等の有機化合物の存在下、例えば100℃の温度で硫酸アルミニウム溶液を加水分解して、懸濁物中の粒子を被覆することを含む。このようにして、水和した酸化アルミニウム被覆を生じさせることができる。
【0060】
しかし、より好ましいより一般的なアプローチは、アルコール溶液中の金属アルコキサイドの加水分解と重縮合反応を用いることである。金属アルコキサイド又はアルコレートは、Mn+[OR][ここで、Mは、原子価nの金属、Oは、酸素であり及びRは、アルキル基である]によって示される一般式を有する。金属は、酸素原子を介してアルキル基と結合する。多くの金属アルコキサイドは、アルコールに可溶であり、アルコール溶液中で水で容易に加水分解して水酸化物を形成することができる:
【化1】

【0061】
下記式(2)のように、その後、重縮合反応が進み、M−O−M結合を形成することができる。
【化2】

【0062】
この反応が進行して連続することによって、三次元の−M−O−M−O−M−ネットワークを生ずる。そのようにして形成する酸化物前駆体材料は、通常、極めて大きな表面積を有する非晶質又はナノ粒子サイズであり、孔中にHO及びアルコールを有する細孔性である。細孔構造の表面は、ヒドロキシル(又は水酸化物)、OH官能基で終了する。濃度、アルコキサイド/水比、温度、溶媒アルコール及び例えば酸又は塩基等の他の化学物質の存在等の適切な選択によって、アルコール溶媒中のガラス質を好む懸濁粒子の被覆として、多孔質酸化物前駆体材料を生じさせ、凝集し、成長させることができる。被覆材料のための成長中心として作用する懸濁粒子の適切な濃度を選択しなければならない。
【0063】
金属アルコキサイドの溶液を、無水アルコール中で作り、その後、通常同じアルコール中で純水のアリコート中超硬質粒子の連続攪拌懸濁物に、約2〜3時間かけてゆっくり加えた。例えば、酸又は塩基等の解凝固剤(ペプチゼーション剤:peptizing agent)を懸濁物の安定化に加えることができる。
【0064】
別法では、特に反応性アルコキサイド反応剤を使用すべき場合、無水アルコール中のアルコキサイドの懸濁物中の超硬質粒子の懸濁物に、アルコール中水のアリコートをゆっくり加えることで、被覆形成に関しより良好な制御を行うことができる。
【0065】
反応の水とアルコール副生成物を、乾燥及び低温熱処理2(b)によって除去することができる。同様に、OH表面官能基を除去することができる。典型的には、懸濁物を遠心沈降又は濾過後、新しい清浄アルコール及びその後脱イオン水で洗浄し、被覆した粒子を、約二日間低減圧下約60℃でゆっくり乾燥することができる。更に、その後残留水とアルコールの除去を、空気中約300℃に加熱して達成することができる。
【0066】
周期表の多くの元素は、アルコキサイドを形成することができる。本発明の方法を用いて酸化物マトリックスを作るために有用であることが見出されたアルコキサイドは、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、クロム、ケイ素のものを含み、添加剤として使用されることもあるカルシウム、マグネシウム、ハフニウム、イットリウムのアルコキサイドを含み、これらのアルコキサイドの組み合わせを含む。本発明の方法を用いて窒化物マトリックスを作るために有用であることが見出されたアルコキサイドは、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ケイ素、タンタル、クロム、ニオブ、ハフニウム、バナジウム、モリブデン及びタングステンのもの及びこれらの組み合わせを含む。本発明の方法を用いて炭化物マトリックスを作るために有用であることが見出されたアルコキサイドは、チタン、ジルコニウム、ケイ素、タンタル、クロム、ニオブ、ハフニウム、バナジウム、モリブデン及びタングステンのもの及びこれらの組み合わせを含む。
【0067】
金属アルコキサイドの一般式、M[OR]、中のアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル及び一般式−C2X+1のいずれかを含んでよい。更に、例えばイソプロピル基、−CH(CH又はsec−ブチル基、―CHCHCHCH等の側鎖アルキル基が存在する場合のアルキル基が含まれる。
【0068】
各金属アルコキサイドに対する加水分解速度とゲル化点への時間(又はゲル化時間)は、アルキル基の鎖長に大きく依存する。Rの鎖長が短いほど、加水分解が速く、超硬質粒子の被覆中の酸化物前駆体材料のゲル化への時間も短い。各々の種類の所望の水和酸化物前駆体被覆に対する被覆特性は、Rの選択によって強く影響され得る。
【0069】
アルコキサイド及び水の溶媒として、また、超硬質粒子のための懸濁流体として、使用されるアルコールは、一般に市販されるいずれかの液体溶媒から選択することができる。好ましいアルコールは、エタノール、メタノール及びイソプロピルアルコールである。
表1は、本発明の方法に最も有用ないくつかのアルコキサイドをリストするが、これらに限定されるものではない。
【0070】
【表1】

【0071】
乾燥/予備熱処理後、被覆した粒子を走査型電子顕微鏡及び/又は透過型電子顕微鏡を用いて調べることができる。
【0072】
3.温度プログラム熱処理(Temperature Programmed Heat Treatment:TPRe)
さて、被覆した粒子は、温度プログラム熱処理を受ける。残留揮発性不純物の除去を制御するために、緻密にし(密度を高め又は圧縮し)焼結するために、他の構造相に変えるために、及び被覆をガスと化学的に反応させて他の材料種と相にするために、選択された気体環境(条件又は雰囲気)下で、選択された加熱速度で、選択されたトップ温度へ、選択された時間、このことは行われる。好ましいアプローチは、注意深く選択し制御した流速で、流通ガス系(又はシステム)を用いることである。被覆した粒子材料の加熱を、環状炉、粒子をゆっくり「攪拌」するように組織化され、溶解又は凝集を防止する回転する環状炉、又は選択した制御気体環境で粒子材料を制御加熱するために適切な炉設備で行うことができる。
【0073】
模式図、図1を参照すると、予備乾燥/熱処理2(b)の後、被覆材料を所望の材料に変換する複数のルートがある。(予備乾燥/熱処理2(b)自身が、複数工程、例えば、100℃より低い温度で減圧乾燥して、被覆の微小孔から大部分の自由水を除去し、その後、例えば、減圧して又は空気中で約300℃まで加熱して、表面から化学的に吸着したヒドロキシル官能基と残留アルコールを除去することを伴ってよい。)
【0074】
一のルート、ルートAは、空気又は酸素中で被覆した粒子を焼成(か焼)して、被覆を、選択した未だ半緻密(又は稠密)な酸化物に変える。取り扱う特定の多孔性酸化物前駆体材料に応じて、部分的焼結及び/又は結晶化が、部分的緻密化(稠密化又は密度の高まり)を伴って生ずるであろう。異なる結晶構造酸化物への相変化が生じ得、組織化され(又は有機的構造が与えられ)所望の酸化物を形成し得る。通常、ナノ粒子サイズ酸化物がこの方法を用いて形成される。各々の場合、必要な熱処理条件は、反応監視(又はモニター)及び反応を特徴付ける技術、例えば、熱重量分析(TGA)、示差熱分析(DTA)、X線回折(XRD)等によって測定できる。微粒子材料に適用できるいずれかの使いやすい装置で加熱することができるが、回転炉及び流動床炉が好ましい。
【0075】
ルートBは、アンモニア又はアンモニア不活性ガス混合物中での2(b)からの乾燥被覆粒子を加熱して、多孔性酸化物前駆体被覆を窒化物又は酸窒化物に変換することを提供する。アンモニアは、極めて活性な窒素と水素種に分解し、徐々に前駆体酸化物被覆を還元し窒化する。条件を選択することによって、種々の酸窒化物と窒化物構造を形成することができる。再び、必要な熱処理条件は、反応監視及び反応を特徴付ける技術、例えば、熱重量分析(TGA)、示差熱分析(DTA)、X線回折(XRD)等によって測定できる。通常、ナノ粒子サイズ被覆を得られる。
【0076】
ルートCは、炭素質水素ガス混合物中で、2(b)からの乾燥被覆粒子を加熱して、多孔性酸化物前駆体被覆を炭化物又は酸炭化物に変換することを提供する。炭素質ガスは、原則としていずれの炭化水素ガスであってよいが、メタン又はエタンであることが好ましい。炭素質/水素ガス混合物を、不活性キャリアガス、例えばアルゴン等で希釈することができる。活性ガスが、不活性キャリアガスの20%を超えないで構成する場合、もし漏れを生じたとしても空気との爆発性ガス混合物を形成できると考えにくく、安全性が高められる。典型的なメタン又はエタン/水素比は、1/5〜1/20である。必要な熱処理条件は、反応監視及び反応を特徴付ける技術、例えば、熱重量分析(TGA)、示差熱分析(DTA)、X線回折(XRD)等によって測定できる。
【0077】
酸窒化物と窒化物に被覆を変換する別法は、選択した酸化物へのルートAを使用し、その後、窒化物を得るためにアンモニア環境熱処理を適用することによるルートDを遂行することである。更に、その後、炭素質/水素ガス処理をそのように形成された窒化物被覆に適用するルートEを用いることで、ルートCと比較して、他の炭化物微小構造を生じさせることができる。
【0078】
更に酸化物構造へのルートAの後、ルートFを用いて、酸化物相から直接炭化物微小構造を生じさせることができる。
【0079】
別ルートの組み合わせは、各炭化物、窒化物及び酸化物の炭素、窒素及び酸素組成の設計変更を可能とする。例えば、ルートとTPRe条件に選択によって、酸窒化物材料、MNO材料、[ここで、Mは、金属元素、選択されるXは、0.5〜0.05]を製造することができる。更なる例は、ルートとTPRe条件を選択することで、炭窒化物材料、MCN材料[ここで、yは、0〜1の間である]を生ずることができるということである。
【0080】
被覆材料のための設計した組成及び構造の結晶種を製造するために必要な加熱温度は、相対的に低い。このことは、より高温で通常行われるより常套の固体状態反応によって得られない、低温結晶種の形成を生ずることができる。必要な多くの温度は、1200℃より低く、しばしば1000℃より低く、場合により550℃までも下がる。
【0081】
設計された酸化物、窒化物又は炭化物相及び微小構造内に各々被覆された超硬質粒子は、ホットプレス処理、好ましくは高圧/高温処理によって、十分に緻密又はほとんど十分に緻密なナノ粒子サイズ複合材料要素に固められる(圧縮される、より高密度にされる又は圧密される:consolidate)。
【0082】
4.ホットプレス法(又は加熱加圧成形法)による固め及び焼結
ナノ粒子サイズ材料を固めるため、十分な緻密さと最小の粒子成長を達成する場合、ホットプレスは、常圧焼結(又は無加圧焼結)と比較して明確な優位性を与える。使用し得るホットプレス技術の例は、そのように設計された炉内で炭素ダイでの一軸ホットプレス法(uniaxial hot pressing)、熱間等静圧圧縮成形法(HIP:hot isostatic pressing)、押出及び高圧技術である。本発明で好ましい超硬質粒子は、ダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素であり、その両者は、大気圧で、例えば1600℃又はそれ以上の高温に長時間さらされると、柔らかいグラファイト又は六方晶系の相に変換しやすい。このことを考慮すると、高圧/高温ホットプレス法は、本発明の方法に好ましい技術である。使用し得る典型的条件は、約2.5〜約8GPaの圧力と、ダイヤモンドとcBNの熱力学的及び/又は化学的安定性によって決定される各圧力に対する温度、典型的には約600℃〜約1800℃の範囲の温度であるが、これらに制限されるものではない。使用し得るタイプの高温/高圧装置は、ピストン・アンド・シリンダー(piston and cylinder)装置、ピストン・アンド・アンビル(piston and anvil)装置、キュービック・アンビル・プレス(cubic anvil press)、トロイダル・アンド・ベルト(toroidal and belt)装置及び他の当業界で既知のものを含む。
【0083】
設計した通常半緻密、酸化物、窒化物、又は炭化物被覆内に個々にクラッドされた超硬質粒子に、一時的有機結合材を用いて又は用いないで、粒状化、噴霧乾燥、凍結乾燥、流動床粒状化を受けさせることができる。常套の常圧圧縮成形(又は冷却圧縮)法も使用して、フリーパウダー(free powder)又は粒状化材料を用いて、いずれかの都合のよい形状の多孔性、半緻密、「未処理」物品を製造することができる。圧力/温度/時間プロフィールを各々の場合に選択して、被覆材料を緻密にし焼結し、粒子成長を最小にし又は制御し、複合材料要素を製造する。
【0084】
そのように生ずる極めて均一で細かいナノ粒子サイズの研磨複合材料は、それらの均一さと極めて細かい微小構造の結果として、例えば別々の粉末出発材料を微粉砕し混合する等のより常套のアプローチを経由して製造される同様な複合材料と比較して、性能の向上を示した。靱性の向上が観察されたが、高温強度と硬度の最も顕著で重大な向上が見出された。新規な材料の組み合わせ、組成及び微小構造を有する複合材料も、本発明の方法を使用して作ることができる。
【0085】
硬質金属基材構造と一体の又は結合したそのように得られた研磨微粒子複合材料を、例えば、切断、切削、切り抜き(又はカッティング)、微粉砕、磨砕、錬磨、フライス加工、フライス削り(又はミリング)、研削、破砕、粉砕、研磨、ひく、磨く、とぐ(又はグラインディング)、穴あけ、ドリルあけ、掘削(又はドリリング)を激しく行う、削岩及び他の研磨作業を含む材料の機械加工等の用途に使用することができる。
【0086】
本発明の方法は、湿式コロイド懸濁技術を使用するという点で、従って、100ミクロンより大きいサイズからサブミクロンサイズまでの、ナノサイズの粒子材料を含む粒子状超硬質粒子を効率的に被覆することが十分に可能であるという点で、先行技術を超えて特徴付けられる。即ち、このことは、先行技術に示されたものを超える、区別できる新規な材料構造及び組成物の製造を可能とする。超硬質粒子成分の表面化学操作の特定の手段、細孔性酸化物系前駆体被覆を用いるコロイド被覆、選択された構造と相を形成するための該被覆材料の熱処理、その後、改良された新規な複合構造、組成物及び材料を生じさせるための特定の固める焼結する手順を含む、先行技術から本発明を区別する本発明の他の要旨がある。
【0087】
以下、実施例を参照して本発明を更により詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明を何ら制限するものではない。
【実施例】
【0088】
例1
50gのサブミクロン立方晶窒化ホウ素(平均粒子サイズは0.7ミクロン、大まかな(又は全般的な)サイズ範囲は0.5〜1.0ミクロン)を、硝酸カリウムを加えた発煙濃硫酸で処理した。洗浄し乾燥後、サブミクロンcBNを更に空気中600℃で30分間加熱した。これらの手順によって、cBN表面化学は酸素関連官能基によって占められ、従ってガラス質を好むようになることが確保された。
【0089】
その後、15gのこのサブミクロン表面処理cBNを、7.3mlの脱イオン水を加えたビーカー内の865mlの純エタノール中に懸濁した。懸濁物を約100rpmでパドル攪拌機(paddle stirrer)を用いて激しく攪拌した。15.3gのチタンイソプロポキサイド液体、Ti(OCを100mlの無水エタノールに溶かした。その後この溶液を、攪拌しながら、cBN/エタノール/水懸濁物に、1時間かけて、室温(約25℃)で滴下してゆっくり加えた。攪拌を更に2時間続け、ビーカー内容物を、一夜間熟成した。得られた被覆された粒子を、減圧濾過によって懸濁物から取り出し、エタノールで三回洗浄し、脱イオン水で三回洗浄し、その後真空オーブン中で60℃で二日間乾燥した。走査型電子顕微鏡(SEM)で調べると、各cBN粒子は、酸化チタン化合物(微孔性非晶質チタニア、TiOであると考えられる)で完全に被覆されたことが観察された。
【0090】
その後、10gのTiO被覆cBN粒子を、流通空気中700℃で3時間熱処理した。加熱速度及び冷却速度は、1分間当たり5℃に保った。X線回折装置で調べたところ、図2(それは、材料はチタニアとcBNのみを含むことを示すX線回折である)に示すように、被覆は主にチタニアのアナターゼ相(anatase phase)に結晶化したことが見出された。透過型電子顕微鏡(TEM)でこの粒子材料の試料を調べたところ、チタニア被覆は、直径約30nmのナノサイズの晶子(又はクリスタライト)の形態で結晶化したことが見出された。
【0091】
その後、5gの空気熱処理チタニア被覆サブミクロンcBN粒子を、乾燥アンモニアガス、NHの気流中にさらしながら、更に、1100℃で5時間、環状炉で加熱した。使用した加熱速度は、一分当たり10℃であった。アンモニア中の熱処理は、ナノ粒子サイズのチタニア被覆をナノ粒子サイズの窒化チタン、TiNに変換した。この材料をTEMによって調べると、被覆は、直径約40nmの窒化チタン晶子でできていることが示された。図3は、得られた粉末が、オスボルナイト(osbornite)構造の窒化チタンとcBNのみから成るということを示すX線回折である。
【0092】
その後、2.5gのナノ粒子サイズTiN被覆cBNを、当業界で周知のベルト型高圧装置(belt type high pressure apparatus)中で、炭化タングステン、WC、基材と接触させて、20分間、約1300℃の温度、約5.0GPaの圧力に付した。従って、WC基材又は裏打ちに結合した、連続TiNマトリックス中に約78重量%のcBNからできているクラックのない多結晶cBN材料を製造した。焼結した材料のX−線回折分析を、図4に示す。微量のルチル相チタニアは、明らかである。SEMで調べると、得られた材料は、TiNマトリックス中のサブミクロンcBN粒子として容易に処分できると考えられた。このことは、例えば、他の金属成分と一緒に炭化タングステン、WC等の相が、使用される微粉砕/混合体から誘導され見出されると考えられる常套の技術と、本発明を区別する一つの要旨である。更に、SEMを測定する際に、電子分散スペクトル(electron dispersion spectra:EDS)は、Ti、N及びB以外の元素を検出しなかった。SEM写真も、cBN粒子の間隔は、約50〜100nmの間であることを示した。このことから、TiNマトリックスの粒子サイズは、大きくともこれらの寸法と同じ又はこれらの寸法より小さいということが暗示される。このことは、材料を適切に薄くした試料をTEMで調べたところ、約20〜100nmのTiN粒子が観察されて、確認された。上述の手順を複数回繰り返して、機械応用(又は用途)試験(machining application test)用材料を作った。
【0093】
材料を放電加工して、スチールの機械加工が困難である摩耗試験用に適切な寸法を有する工具試料を製造した。上述のように製造した材料は、これらのスチールを機械加工する間に旋盤工具材料として効果があることが見出された。
【0094】
例2
平均粒子サイズ2ミクロンの30gのcBN粉末を、水中15%過酸化水素、H、及び15%水酸化アンモニウム、NHOHの1対1混合溶液中に懸濁させた。これは、cBN粒子表面の加水分解に役立ち、従って、ガラス質を好むようにする。その後、2ミクロンcBN粉末を、懸濁物から濾過で取り出し、脱イオン水で洗浄した。
【0095】
その後、製造した25.5gのcBN粉末を、13.1mlの脱イオン水を加えた1440mlのエタノール中に懸濁した。cBN粒子の凝集物を壊すために15分間超音波照射した。20.7gのチタンイソプロポキサイドを、100mlの無水エタノールに溶かした。その後、この溶液を激しく攪拌したエタノール/水中cBNの懸濁物に、室温で1時間かけて滴下して加えた。滴下後、懸濁物を更に2時間攪拌し、一夜間熟成した。その後、濾過で懸濁物から粒子材料を取り出し、純エタノールで三回洗浄し、脱イオン水で三回洗浄し、その後、真空オーブン中で二日間60℃で乾燥した。EDS装置を使用して電子顕微鏡で粒子材料を調べると、cBNはチタンと酸素の化合物で被覆されたことが示された。各粒子は、同程度に完全に被覆された。
【0096】
その後、20gのこの被覆したcBNを、乾燥空気流中で450℃3時間、環状炉内で焼成した。加熱速度及び冷却速度は、1分当たり5℃に保った。X線回折装置を用いて調べたところ、被覆は、アナターゼ構造のチタニア、TiOであった。
【0097】
その後、8gの焼成アナターゼチタニア被覆cBNを、乾燥アンモニアガスの気流中で、1100℃で5時間、環状炉で加熱した。X線スペクトロメータで調べると、アナターゼチタニア被覆は、窒化チタン、TiNに変換されたことが示された。
【0098】
その後、そのように生成したTiN被覆2ミクロンcBN粒子を、約5.0GPaの圧力で約1300℃の温度に20分間付した。そのようにして製造した材料の多結晶体を切断し、断面を磨いた後、TiN被覆を焼成して2ミクロンのcBN粒子が均一に分散した連続マトリックスを形成したことが示された。cBNとTiN以外の材料相は検出できなかった。窒化チタン以外の金属又は金属化合物は、検出されなかった。従って、連続TiNマトリックス中に均一に分散した約85重量%の2ミクロン平均粒子サイズのcBN超硬質粒子のみでできている単純な複合材料を製造した。
【0099】
例3
大きさを砕き、分類手順によって合成ダイヤモンドソースから誘導された50gのダイヤモンドミクロン(平均粒子サイズ1.0ミクロン、大まかなサイズ範囲0.75〜1.5ミクロン)を、硝酸カリウムを加えた発煙濃硫酸で処理した。この清浄化で、ダイヤモンドが金属及び無機表面汚染物質を含まないことを確保した。その後、ダイヤモンドを、アルゴンガス流中20%酸素気流中で、480℃で1時間加熱した。この手順は、ダイヤモンド表面に付された酸素含有官能基を最大にし、表面をガラス質を好むようにした。
【0100】
その後、15gのこの1ミクロン表面処理ダイヤモンドを、7.3mlの脱イオン水を加えたビーカー内の865mlの純エタノール中に懸濁した。懸濁物を約100rpmでパドル攪拌機を用いて激しく攪拌した。15.6gのチタンイソプロポキサイド液体、Ti(OCを100mlの無水エタノールに溶かした。その後この溶液を、攪拌しながら、ダイヤモンド/エタノール/水懸濁物に、1時間かけて、室温(約25℃)で滴下してゆっくり加えた。攪拌を更に2時間続け、ビーカー内容物を、一夜間熟成した。得られた被覆された粒子を、減圧濾過によって懸濁物から取り出し、エタノールで三回洗浄し、脱イオン水で三回洗浄し、その後真空オーブン中で60℃で二日間乾燥した。
【0101】
その後、12gの乾燥被覆ダイヤモンドを、静止空気中450℃で2時間加熱した。1分当たり5℃の加熱速度を用いた。その後、SEM及びX線回折を用いて材料を調べ、ダイヤモンドは、結晶性アナターゼ相チタニアで被覆され、他の相及び化合物は全く検出されなかったということが見出された。TEMによる試験により、被覆は、寸法約10〜20nmのアナターゼTiO晶子からできているということが確認された。
【0102】
その後、5gのこの被覆した材料を、1100℃で5時間、乾燥アンモニア流中で熱処理した。1分当たり約1リットルのアンモニア流速と1分当たり約10℃の加熱速度を用いた。SEM及びXRD分析は、ダイヤモンドは窒化チタンで被覆されたことを示した。図5は、ダイヤモンドと窒化チタンの存在を示し、他の相及び成分は検知されなかったことを示すX線回折図である。この材料のTEMによる試験は、被覆は、寸法約20〜250nmの窒化チタン晶子からできていることを示した。
【0103】
ベルト型高圧装置内でこの粉末を約5.5GPaの圧力で約1350℃の温度に約20分間付することによって、窒化チタンマトリックス中ダイヤモンド複合材料を製造した。X線回折分析によって、製造された複合物は、窒化チタンマトリックス中ダイヤモンドであり、窒化チタンの化学量論は、(TiN)0.88であることが確認された。
【0104】
例4
例3に詳述した手順を行って、結晶性アナターゼ被覆ダイヤモンド粉末を製造することができる。もし、この粉末を、流通するアルゴン中10%メタンとアルゴン中10%水素のガス混合物に、メタンと水素との適切な比で、約1350℃の温度で数時間(好ましくは5時間より長く)暴露すると、チタニア被覆は炭化チタンに変換されることが期待される。
【0105】
その後、複数のこれらの炭化チタン被覆ダイヤモンド粒子を、高圧高温で焼結し、潜在的にナノ粒子連続炭化チタンマトリックス中に細かいダイヤモンドを含んで成る複合材料を生産することができると期待される。
【0106】
例5
1ミクロンダイヤモンド(0.75〜1.5ミクロンサイズ範囲)を例3に記載したように酸で清浄にした。20gの酸清浄粉末を、1対1の体積比の過酸化水素(30重量%)と水酸化アンモニウム(25%)に、60℃で還流して暴露した。例3で詳細に記載した手順を、酸化したダイヤモンド粒子に行って、結晶性アナターゼ被覆ダイヤモンド粉末を製造した。
【0107】
このチタニア被覆ダイヤモンド粉末を、ベルト型高圧装置内で5.5GPaの圧力で1350℃の温度に付した。ダイヤモンド−チタニアマトリックス複合物を、そのように製造した。
【0108】
例6
結晶性チタニア被覆cBN粉末を例1に記載したように製造し、空中700℃までの熱処理で、主にアナターゼ被覆cBNを製造した。この粉末をベルト型高圧装置内で5.5GPaの圧力で1350℃の温度に付した。cBNルチル相チタニア複合物をそのように製造した。
【0109】
例7
0.75〜1.5ミクロンの大まかな粒子サイズを有する1ミクロン合成ダイヤモンド粉末を、例3に記載したように酸で清浄にした。20gのこのダイヤモンド粉末を、258mlの純イソプロパノールと175mlの脱イオン水を含んで成る溶液に懸濁した。この懸濁物を還流装置で60℃に加熱し、パドル型攪拌機を用いて約100rpmで機械的に攪拌した。24gのアルミニウムsec−ブトキサイド(化学式AlO1227)を100mlの無水イソプロパノールに溶かし、加熱し攪拌したダイヤモンド懸濁物に1時間45分かけて滴下して加えた。アルコキサイドの滴下後、懸濁物を、60℃で1時間15分攪拌を続けた。その後、約1mlの塩酸(32%)を加熱した懸濁物に加え、その後、80℃まで加熱し、更にその温度を保ちながら1時間攪拌した。その後、懸濁物を室温まで放冷し、室温で一夜間熟成した。その後、懸濁物を400mbarに減圧し80℃の温度でロータリーエバポレーターを用いて乾燥した。
【0110】
アルミニウム化合物被覆ダイヤモンドを、更に二日間60℃の真空オーブン中で乾燥した。SEM分析により、ダイヤモンド粒子は、酸化アルミニウム化合物で被覆されていることが示された。
【0111】
その後、この粉末を静止空気中400℃で3時間熱処理した。一分当たり5℃の加熱速度を用いた。X線回折分析は、この熱処理後ダイヤモンド上の被覆は、主に非晶質であることを示した。これは、TEM分析によって確認された。その後、熱処理粉末を炭化タングステン基材ディスクと接触させて、高圧/高温ベルト型装置内で約1300℃の温度、5GPaの圧力で約20分間ホットプレスして(又は加熱加圧成形して)、ダイヤモンド−酸化アルミニウム複合材料を製造した。
【0112】
サイズが平均1ミクロンのダイヤモンド粒子を、連続アルミナマトリックスに十分に分布させた。ダイヤモンド粒子間隔は、約50nm〜500nmの範囲にある。炭化タングステン基材に近い複合材料は、結合したタングステンに伴うコバルト金属に部分的に浸透された。これらの金属の存在は、SEM測定の際に電子分散分光法(electron dispersive spectrometry:EDS)を用いて検知される。ダイヤモンド−アルミナ複合材料は、炭化タングステン基材と非常に十分に結合した。X線回折分析によって、得られた焼結材料は、主に結晶連続アルミナマトリックス中ダイヤモンドであった。
【0113】
例8
1ミクロン合成ダイヤモンド粉末(0.75〜1.5ミクロンの大まかな粒子サイズ範囲を有する)を、例3で記載したように酸で清浄にした。30gのこのダイヤモンド粉末を、2.5リットルの純エタノール、500mlの脱イオン水及び60mlの25体積%の水酸化アンモニウム水溶液の混合物に懸濁した。この懸濁液を、超音波プローブを用いて15分間超音波処理した後、約100rpmでパドル型攪拌機で機械的に攪拌した。80gの化学式、Si[CO]のテトラエチルオルトシリケートを、100ml純エタノールに溶かした。テトラエチルオルトシリケート懸濁物を、激しく攪拌したダイヤモンド懸濁物に、機械的攪拌を行いながら、3時間かけて滴下して加えた。アルコキサイドの滴下後、コロイド懸濁物を更に2時間攪拌し、64時間熟成した。その後、熟成した溶液を純エタノールで6回洗浄し、150mbarの減圧レベル、70〜80℃の温度でロータリーエバポレーターを用いて乾燥した。粉末を更に真空オーブン中60℃で2日間乾燥した。
【0114】
その後、乾燥ケイ素化合物被覆ダイヤモンドをアルゴン流を流しながら、環状炉内で、一分当たり5℃の加熱速度で800℃まで熱処理した。アルゴン流通下、粉末を800℃で3時間処理した。熱処理した粉末のX線回折は、ダイヤモンドの酸化ケイ素被覆は、主に非晶質であることを示した。これは。TMS分析で確認された。
【0115】
酸化ケイ素被覆ダイヤモンド粉末を、ベルト型装置内で5分間約5GPaの圧力で約1300℃の温度に付して、ダイヤモンド−酸化ケイ素複合材料を製造した。磨いた試料のSEM試験は、複合材料は、連続マトリックス中に十分に分布した平均1ミクロンダイヤモンドでできていることを示した。顕微鏡のEDS装置を用いて、マトリックスは酸化ケイ素相であることが示され、X線回折装置を用いて調べる際に、この材料のX線回折である図6に示すように微粒子結晶性石英であることが示された。
【0116】
例9
0.5〜1ミクロンの大まかな粒子サイズ範囲(平均粒子サイズは0.7ミクロン)を有するサブミクロン立方晶窒化ホウ素を、例1に記載のように酸処理した。34.04gの酸処理cBN粉末を、2021mlの純エタノールと42mlの脱イオン水に懸濁した。このcBN懸濁物を超音波プローブで20分間処理して凝集物を除去し、パドル型攪拌機で激しく機械的に攪拌した。
【0117】
19.79gの化学式、Zr[O(CHCHを有するジルコニウム(IV)n−プロポキサイド(n−プロパノール中70%w/w)を、122mlの乾燥エタノールに溶かした。アルコキサイド溶液を攪拌したcBN懸濁物に室温で3時間かけて滴下して加え、アルコキサイドを加えた後、更に1.5時間攪拌を続けた。被覆したcBN懸濁物を室温で一夜間熟成した。酸化ジルコニウム被覆cBNを純エタノールで三回洗浄し、70〜80℃の温度、600〜390mbarの減圧でロータリーエバポレーターで乾燥した。得られた粉末を真空オーブン中60℃で2時間更に乾燥した。乾燥粉末を走査型電子顕微鏡を用いて調べると、cBN粒子は十分に被覆されていることが見出された。
【0118】
その後、この乾燥粉末を静止空気中600℃で3時間熱処理した。使用した加熱速度は、1分当たり5℃であった。熱処理粉末のX線回折分析によって、立方晶窒化ホウ素と正方晶酸化ジルコニウム(ZrO)相が存在することが示された。TEM写真により、ジルコニア被覆は、5nmまでの(小さな)サイズの晶子からできていることが示された。
【0119】
正方晶ジルコニア被覆cBN粉末を、炭化タングステン基材ディスクと接触させて、ベルト型高圧/高温プレス中で、約1300℃の温度、約5GPaの圧力で20分間ホットプレスした。これによって、炭化タングステン基材に結合した高cBN含有量ジルコニアマトリックス複合材料が製造された。cBN含有量は、約85質量%であると推測された。
【0120】
微小構造のSEM測定によって、cBN粒子は、連続マトリックス中に十分に分布し、粒子間隔は、最大100nmであることが示された。材料のX線回折分析により、マトリックスは、極めて微粒子のジルコニアからできており、正方晶相(ZrO1.88)と単斜晶相(ZrO)が存在することが示された。マトリックス材料によるXRDピークの幅広さは、ジルコニアマトリックスの期待されるナノ粒子構造と一致する。
【0121】
例10
0.5〜1ミクロンの粒子サイズ範囲(0.7ミクロンの平均粒子サイズ)のサブミクロン立方晶窒化ホウ素を、例1に記載したように酸処理した。25gのこの粉末を1.5リットルの純エタノールと30mlの脱イオン水に懸濁し、25分間超音波照射して凝集物を取り除いた。別のビーカーに、0.483gの硝酸イットリウム6水和物、Y(NO・6HOを、50mlの純エタノールに溶かし、その後、13.9gのジルコニウム(IV)n−プロポキサイド、化学式Zr[O(CHCHと追加の50mlの純エタノールを加えた。後者のビーカーの内容物をガラス棒で攪拌し、更に分液漏斗で該内容物を振って混合した。硝酸イットリウム6水和物−ジルコニウム(IV)n−プロポキサイド溶液混合物を、攪拌したcBN懸濁物に、2時間かけて室温で滴下して加えた。この添加後、溶液を更に1時間10分機械的に攪拌した。その後、溶液を室温で一夜間熟成した。得られた複数の被覆された粒子は、一晩熟成後きわめて粘性のゲルを形成したことを見出した。48時間の合計の熟成時間後、70〜80℃の温度、400mbarの減圧下で、ゾルゲルをロータリーエバポレーターで乾燥した。
【0122】
この粉末を更に真空オーブン中60℃で2日間乾燥した。その後、乾燥酸化ジルコニウム被覆cBN粉末を静止空気中600℃で3時間熱処理した。1分当たり5℃の加熱速度を用いた。X線回折分析によって、得られた粉末はcBNと正方晶ZrO1.99相から成ることが示された。TEM写真は、サイズが4〜5nmのジルコニア粒子を示した。
【0123】
熱処理粉末を、高温/高圧ベルト型装置内で、20分間約1300℃の温度、約5GPaの圧力に付した。これによって、cBN−酸化ジルコニウム複合材料を製造した。cBN含有量は、少なくとも85質量%と推測された。微小構造のSEM測定によって、cBN粒子は連続マトリックス中に十分に分布し、粒子間隔は最大で100nmであることが示された。材料のX線回折分析によって、マトリックスは極めて微粒子のジルコニア(正方晶(ZrO1.95)相と斜方晶(ZrO)相の両方が存在する)からできていることが示された。微量のZrB相が検出された。マトリックス材料によるXRDピークの幅広さは、ジルコニアマトリックスの期待されるナノ粒子構造と一致する。
【0124】
例11
破壊した合成ダイヤモンドから得られた10gのミクロンダイヤモンド(平均サイズ2ミクロン)を、例3に記載したように、酸で清浄にし、酸素中で熱処理した。これによって、粒子表面をガラス質を好むようにし、酸化物材料と結合形成を可能とした。
【0125】
その後、この材料を2リットルビーカー内で5ml脱イオン水を加えた150mlの純エタノール中に懸濁させた。パドル攪拌機を用いて約100rpmで懸濁物を激しく攪拌した。式W(OCの20.25gのタングステンエトキサイドを、100mlの純無水エタノールに溶かした。その後、この溶液をエタノールと水懸濁物中の攪拌したダイヤモンドに1.5時間かけてゆっくりと滴下して加えた。タングステンアルコキサイドの添加完了後、懸濁物を更に2時間攪拌した。その後、反応物を一晩約16時間静置した。粒子材料はビーカーの底に沈み、上澄み液は、外見は、ある程度乳白色であった。上澄み液をデカンテーションし(又は傾斜で取り除き)、攪拌、静置及びデカンテーションを繰り返すことで、純エタノールで3回粒子材料を洗浄した。最後のデカンテーション後、粒子材料を2日間周囲条件でゆっくり乾燥した。その後、材料を更に真空オーブン中で60℃24時間乾燥した。SEMを用いて測定する際、該装置のEDS装置を用いて、2ミクロンダイヤモンド粒子が、式WOの酸化タングステンと対応するタングステンと酸素との比を有する酸化タングステン化合物で被覆されていることを観察した。
【0126】
その後、被覆した材料を空中で380℃で3時間加熱し、更に乾燥して特にヒドロキシル種を除去した。
【0127】
その後、5gの得られた被覆した粒子材料を環状炉内で、メタン(CH)、水素(H)、アルゴンガス混合物の流れの中で、加熱した。ガス体積の90%はアルゴンであり、他の10%はメタンと水素の混合物である。メタンと水素との体積比は、1:4である。使用したガス流量の合計は、約50ml/分であった。炉の温度は、1分当たり10℃の速度で増加させ、その後最高の一定温度を10時間保った。冷却しその後のSEMとXRD分析後、粒子ダイヤモンドは、極めて微粒子炭化タングステン、WCに被覆されていることが見出された。
【0128】
その後、WC被覆ダイヤモンドを、ベルト型高圧装置内で、約1400℃の温度約5.5GPaの圧力で焼結した。極微粒子焼結炭化タングステンマトリックス中に分布した約50重量%の2ミクロンダイヤモンドを含んで成る複合材料を得た。炭化タングステンマトリックスの粒子サイズは実質的にナノサイズであって、即ち、粒子は大まかな寸法で、100nmより極めて小さいであろうということが期待された。
【0129】
5gの残余の酸化タングステン被覆ダイヤモンドも、純水素中、550℃で3時間加熱した。従って、酸化物被覆は、微結晶タングステン金属の形態に還元された。
【0130】
その後、タングステン金属被覆ダイヤモンド粒子を、約1400℃の温度約5.5GPaの圧力に付すことができる。微結晶タングステン金属マトリックス中に約50重量%の2ミクロンダイヤモンドが分散してできている複合材料が製造されると予想される。
【0131】
例12
2ミクロンダイヤモンドのバッチを清浄にし、粒子表面を例1に記載した方法と同様にして調製した。2ミクロンcBNも例3に記載した方法と同様にして、酸で清浄にし、表面を調製した。1:1の質量比で例2及び3に記載した方法と同様に、これらのダイヤモンドとcBN粉末をアルコール性懸濁物に混合し、被覆した。これによって、非晶質酸化チタン被覆ダイヤモンド/cBN粉末を生じ、それによって、各粒子は個々にチタニア中に被覆されると予想される。その後、この粉末を空中で熱処理し、その後乾燥アンモニア中で1100℃で熱処理して(例3に詳細に記載した)、結晶性窒化チタン被覆ダイヤモンド/cBN粉末を生ずるであろう。例2に記載したように、この粉末を、高圧/高温焼結条件に付することで、連続マイクロ/ナノ結晶性窒化チタンマトリックス中に同様にダイヤモンドとcBN粒子の均一な分布を生ずるであろう。
【0132】
例13
1ミクロン合成ダイヤモンドのバッチを、例3に記載した方法と同様に酸で清浄にして、表面処理をした。
【0133】
例えば、ジルコニウム(IV)n−プロポキサイドとイットリウム(III)イソプロポキサイド等のジルコニウムとイットリウムアルコキサイドを、得られるZrOは3〜8モル%含むように、無水アルコール中で混合することができる。このアルコキサイド混合物を、例10に記載したように、ダイヤモンドのアルコール性懸濁物に滴下して加えることができる。被覆したダイヤモンド粉末を例10に記載したように乾燥し、熱処理して、ダイヤモンド粒子上に主にナノサイズの正方晶相ジルコニア被覆を製造することができる。例2に詳細に記載したように、この粉末を、高圧/高温焼結に付すことで、ダイヤモンド−ジルコニア複合材料を生産することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス質を好む表面を有する複数の超硬質研磨粒子を供給する工程、
マトリックス前駆体材料を用いて超硬質研磨粒子を被覆する工程、
被覆した超硬質研磨粒子を処理して、焼結に適するものとする工程、及び
結晶学的に又は熱力学的に安定である圧力及び温度で被覆した超硬質研磨粒子を固めて焼結する工程
を含む多結晶研磨要素の製造方法。
【請求項2】
被覆した超硬研磨粒子を処理して、マトリックス前駆体材料の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸炭化物、炭窒化物、又はマトリックス前駆体材料の元素形態、又はそれらの組み合わせに、マトリックス前駆体材料を変換する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マトリックス前駆体材料は、非晶質又はナノ結晶性酸化物、水酸化物又はオキソ−水酸化物である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
超硬質研磨粒子は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素及び亜酸化ホウ素(BO)を含んで成る群から選択される請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
超硬質研磨粒子は、ダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素又はこれらの材料の組み合わせであり、粒子表面をガラス質を好むようにするために、表面処理法で粒子を処理する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
変換されたマトリックス前駆体材料は、マトリックス前駆体材料のミクロン、サブミクロン又はナノ粒子サイズの酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸炭化物及び炭窒化物、又は元素形態のマトリックス前駆体材料、又はそれらの組み合わせから選択される請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
変換されたマトリックス前駆体材料は、アルミニウム、チタン、ケイ素、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、タンタル、クロム、モリブデン及びタングステンの酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸炭化物及び炭窒化物、及びこれらの材料の適切な組み合わせから選択される1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
マトリックス前駆体材料は、アルミニウム、チタン、ケイ素、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、タンタル、クロム、モリブデン及びタングステンの非晶質又はナノ粒子サイズ化合物及びこれらの材料の適切な組み合わせである請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
変換されたマトリックス前駆体材料は、元素の形態のタングステン、モリブデン、又はこれらの金属の合金又は組み合わせである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
変換されたマトリックス前駆体材料の元素形態は、ナノ粒子サイズのタングステン、モリブデン又はこれらの金属の組み合わせ又は合金である請求項1〜6及び9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
いわゆるゾルゲル技術を用いて、マトリックス前駆体材料を超硬質研磨粒子に被覆する請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
超硬質研磨粒子を液体媒体中に懸濁させ、適切な化学反応剤を入れて、各粒子の表面と結合し、粒子上に被覆を構成するコロイド体を形成する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
適切な化学反応剤は、少なくとも一種のアルコキサイド又はアルコキサイドのアルコール溶液である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
液体媒体は、アルコールと水のアリコートである請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
アルコキサイドは、アルミニウム、チタン、ケイ素、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、ハフニウム及びイットリウムから選択される元素のアルコキサイドである請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
アルミニウム、チタン、ケイ素、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、ハフニウム及びイットリウム元素のアルコキサイドから選択される、二種又はそれ以上のアルコキサイドを液体媒体に入れる請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
適切な化学反応剤は、アルミニウム、チタン、ケイ素、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、ハフニウム及びイットリウム元素の二種又はそれ以上を組み込む混合アルコキサイド化合物又はコンプレックスである請求項13又は14に記載の方法。
【請求項18】
アルコールは、アルコキサイドと同じアルキル基を有する請求項13〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
マトリックス前駆体材料被覆は、実質的に細孔性である請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
被覆した超硬質研磨粒子を、空気、真空又は不活性ガス中で温度制御加熱に付し、高表面積の細孔性非晶質被覆に付着した好ましくない化学種及び揮発性物質を除去する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
被覆した超硬質研磨粒子を更に熱処理又は焼成に付して、被覆を結晶化し、微粒子又はナノサイズの粒子酸化物セラミックを形成する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
被覆した超硬質研磨粒子を更に熱処理に付して、被覆をガラス質に変えてガラスを形成する請求項20に記載の方法。
【請求項23】
被覆した超硬質研磨粒子を反応性ガス中で温度制御反応に付して、被覆材料を非酸化物セラミック又はガラスに変換する請求項19〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
被覆をアンモニアガスと反応させることで窒化物を形成する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
炭素質ガスと水素の混合物中で被覆を反応させて、炭化物を形成する請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
メタン又はエタンと水素の混合物中で被覆を反応させて、炭化物を形成する請求項25に記載の方法。
【請求項27】
被覆した超硬質研磨粒子を反応性ガス中で温度制御反応に付して、被覆材料を、酸窒化物又は酸炭化物セラミック又はガラスに変換する請求項19〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
酸化物被覆を水素で還元し、ミクロン又はナノ粒子サイズの元素又は金属に変換する請求項21に記載の方法。
【請求項29】
被覆された超硬質研磨粒子を、ホットプレスで固めて圧縮し焼結する請求項1〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
被覆された超硬質研磨粒子を、高圧高温条件下で固めて圧縮し焼結する請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
チタニア、TiO、ハフニア、HfO、シリカ、SiO、ジルコニア、ZrO、窒化チタン、TiN、窒化バナジウム、VN、窒化ハフニウム、HfN、窒化ニオブ、NbN、NbN、窒化タンタル、TaN、窒化モリブデン、MoN、窒化タングステン、WN、炭化チタン、TiC、炭化バナジウム、VC、炭化ハフニウム、HfC、炭化ニオブ、NbC、炭化タンタル、TaC、炭化モリブデン、MoC、炭化タングステン、WC、WC、モリブデン、Mo及びタングステン、Wから選択されるマトリックス中にダイヤモンドを含んで成る多結晶超硬質研磨要素。
【請求項32】
アルミナ、Al、チタニア、TiO、ハフニア、HfO、シリカ、SiO、ジルコニア、ZrO、窒化バナジウム、VN、窒化ハフニウム、HfN、窒化ニオブ、NbN、NbN、窒化タンタル、TaN、窒化モリブデン、MoN、窒化タングステン、WN、炭化バナジウム、VC、炭化ハフニウム、HfC、炭化ニオブ、NbC、炭化タンタル、TaC、炭化モリブデン、MoC、炭化タングステン、WC、WC、モリブデン、Mo及びタングステン、Wから選択されるマトリックス中に立方晶窒化ホウ素を含んで成る多結晶超硬質研磨要素。
【請求項33】
アルミナ、Al、チタニア、TiO、ハフニア、HfO、シリカ、SiO、ジルコニア、ZrO、窒化チタン、TiN、窒化バナジウム、VN、窒化ハフニウム、HfN、窒化ニオブ、NbN、NbN、窒化タンタル、TaN、窒化モリブデン、MoN、窒化タングステン、WN、炭化チタン、TiC、炭化バナジウム、VC、炭化ハフニウム、HfC、炭化ニオブ、NbC、炭化タンタル、TaC、炭化モリブデン、MoC、炭化タングステン、WC、WC、モリブデン、Mo及びタングステン、Wから選択されるマトリックス中にダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素の組み合わせを含んで成る多結晶超硬質研磨要素。
【請求項34】
マトリックス材料の粒子サイズがナノサイズであるという条件で、アルミナマトリックス中にダイヤモンド、窒化チタンマトリックス中に立方晶窒化ホウ素又は炭化チタンマトリックス中に立方晶窒化ホウ素を含んで成る多結晶超硬質研磨要素。
【請求項35】
ダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素は、ミクロン、サブミクロン又はナノサイズである請求項31〜34のいずれかに記載の多結晶超硬質研磨要素。
【請求項36】
マトリックス材料は、非化学量論的である請求項31〜35のいずれかに記載の多結晶超硬質研磨要素。
【請求項37】
説明に役立つ例のいずれかを参照して本明細書で実質的に説明した請求項1に記載の方法。
【請求項38】
説明に役立つ例のいずれかを参照して本明細書で実質的に説明した多結晶超硬質研磨要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−13999(P2013−13999A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−153299(P2012−153299)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2007−531863(P2007−531863)の分割
【原出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(502450457)エレメント シックス (プロプライエタリイ)リミテッド (4)
【Fターム(参考)】