説明

多重マトリックスコンバータ装置とその制御方法

【課題】多重構成されたマトリックスコンバータ装置では、マトリックスコンバータの電圧利用率0.866倍を超えた高電圧で、且つ電圧利用率が改善されたもの、及び出力高調波低減されたものが要望されている。
【解決手段】、各マトリックスコンバータに出力変圧器を接続してその2次側を直列に接続する。算出された各マトリックスコンバータの出力電圧指令値の大,中,小の判別値と、電源電圧、単位入力電流指令の大,中,小の判別値を、マトリックスコンバータ毎のデューティ演算部に入力してデューティ比を演算し、デューティ比に基づいて各双方向スイッチのスイッチングパターンを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重マトリックスコンバータ装置に係わり、特に、出力高調波・入力高調波の低減と電圧利用率を向上させる装置とその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年,高密度・高効率化の要求を満たす新しい電力変換器として、マトリックスコンバータが注目されている。マトリックスコンバータは、交流を任意の電圧・周波数の交流に直接電力変換すると同時に、入力電流の力率を制御できる機能を有している。また、整流器やインバータのように直流電圧を介さないため、平滑用電解コンデンサ等の大形部品が必要なく、装置の小型化や高効率化を実現できる。
【0003】
一方、数MVAクラスの高圧・大容量で入出力波形が良好かつ制御応答性の高い電力変換器が必要とされており、マトリックスコンバータの高圧化・大容量化も検討されている。現在では、マトリックスコンバータの大容量化に対応する方式のひとつとして、特許文献1や特許文献2のような並列接続構成のものが提案されている。
【0004】
特許文献1には、同文献の図1で示すように、複数台(2台)のマトリックスコンバータの出力にリアクトルを介して並列結合して多重構成とし、その多重構成されたマトリックスコンバータにおいて、複数台間の電流バランスを制御する手法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2の図1には、文献1と同様にマトリックスコンバータをN台並列接続し、その入力側にLCフィルタを接続したものにおいて、マトリックスコンバータの指令値生成に使用する三角波キャリア信号の位相差を360゜/Nとすることで、入力LCフィルタコンデンサに流入する電流高調波成分をキャリア信号周波数のN倍にし、LCフィルタの負担度軽減および小型化を実現する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4065727号
【特許文献2】特許第4385672号
【特許文献3】特開2008−43254号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2の回路構成では、マトリックスコンバータ並列接続による電流分担で大容量化には対応できるが、出力電圧は多重化できないため、高電圧を出力することは難しい。
【0008】
また、マトリックスコンバータの原理的課題のひとつとして、電圧利用率低下の問題がある。マトリックスコンバータは交流入力電圧から交流出力電圧を生成するため、所望する指令値通りの出力電圧が得られるのは入力電圧の0.866倍までに制限される。したがって、交流入力を整流して直流電圧とし、再び交流出力に電力変換するインバータと比べて電圧利用率が低下するので、マトリックスコンバータでインバータと同等の出力電力を得るには、低下した電圧分を補うべく出力電流を増加させる必要がある。特許文献1,2に開示されるような従来の並列接続構成においても、電圧利用率の改善策等は開示されてなく、上記入力電圧の0.866倍の制限に従っている。
【0009】
また,特許文献2では入力側フィルタコンデンサに流入する高調波低減・小型化について記載されているが、出力側の高調波に関しては特段の考慮がなされておらず、負荷(出力側)の制御性能向上やサージ電圧・高調波低減に関する改善が望まれる。
以上要するに、従来においては、「大容量化」「入力高調波低減」の課題を解決する手段については公知となっていが、「高圧化」「電圧利用率改善」「出力高調波低減」の課題解決については開示されていない。
【0010】
なお、特許文献3には、マトリックスコンバータの電圧利用率0.866倍を超えた過変調領域において、制御方式の改善によって電圧歪み・トルク脈動低減を行うことが記載されている。しかし、特許文献3の方式は、原理的に決まっている電圧利用率0.866を向上するものではなく、あくまでも制御方式の改善によって
電圧利用率0.866倍を超える領域の歪成分を低減しているに過ぎない。
【0011】
本発明が目的とするとこは、「高圧化」「電圧利用率改善」「出力高調波低減」を可能とした多重マトリックスコンバータ装置とその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1は、双方向スイッチを有し、且つ出力変圧器を接続したマトリックスコンバータ複数台を多重接続構成し、一定周波数電源を可変周波数の交流に変換するものにおいて、
前記各出力変圧器の2次側を直列に接続して前記可変周波数の交流を出力すると共に、出力相電圧指令から出力線間電圧指令実効値を演算する出力線間電圧指令実効値演算部と、出力線間電圧指令実効値を入力して各マトリックスコンバータ毎の出力相電圧指令を算出する出力相電圧指令生成部と、電源電圧を入力して電圧の大小を判別する相電圧判別部と、単位入力電流指令を入力してこの単位入力電流指令の大小を判別する単位入力電流指令判別部と、前記出力相電圧指令、大小判別された入力電圧、及び大小判別された単位入力電流指令からマトリックスコンバータ毎のデューティを演算するデューティ演算部と、デューティ演算部によるデューティに基づいて各マトリックスコンバータの制御信号を生成するスイッチングパターン生成部を備えたことを特徴としたものである。
【0013】
本発明の請求項2は、前記直列接続された出力変圧器の入出力に、位相差を持たせたことを特徴としたものである。
【0014】
本発明の請求項3は、前記出力変圧器の出力位相差は、出力変圧器2次側若しくは1次側の何れか一方の結線にて行い、位相差を30゜としたことを特徴としたものである。
【0015】
本発明の請求項4は、前記の各マトリックスコンバータは、相数Mの多相交流のマトリックスコンバータをN台とし、前記出力変圧器の1次側の位相差を180/(M×N)としたことを特徴としたものである。
【0016】
本発明の請求項5は、前記の各マトリックスコンバータの出力変圧器の2次側の一つを△結線とし、位相差を180/(M×N)としたことを特徴としたものである。
【0017】
本発明の請求項6は、前記N台の各マトリックスコンバータのスイッチングパターン生成時に、制御周期Tsにおける位相差△Tsは、△Ts=2Ts/Nとしたことを特徴としたものである。
【0018】
本発明の請求項7は、前記スイッチングパターン生成部の前段に位相生成部を設け、スイッチングパターン生成部に対する制御周期信号を基準として、前記出力相電圧指令の大きさから位相差を持つマトリックスコンバータへの制御周期信号を生成することを特徴としたものである。
【0019】
本発明の請求項8は、多重マトリックスコンバータ装置の制御方法として、
複数台のマトリックスコンバータを多重接続し、多重構成のマトリックスコンバータの制御回路に、電源電圧、単位入力電流指令、及び出力相電圧指令を入力して各マトリックスコンバータが有する双方向スイッチの制御信号を構成する多重マトリックスコンバータ装置において、
前記各マトリックスコンバータにそれぞれ出力変圧器を接続して二次側を直列接続すると共に、
前記出力相電圧指令を、出力線間電圧指令実効値演算部に入力して各マトリックスコンバータの出力変圧器二次側を同相で制御するための出力電圧指令実効値を算出し、算出された各マトリックスコンバータの出力電圧指令実効値の大,中,小の判別値と、前記電源電圧、単位入力電流指令の大,中,小の判別値を、マトリックスコンバータ毎のデューティ演算部に入力してデューティ比を演算し、デューティ比に基づいてスイッチングパターンを生成して前記双方向スイッチを制御することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、各出力変圧器の2次側を直列に接続したことにより、高電圧化となり、且つ入出力波形を制御するスイッチング周波数が上昇し、制御応答向上と高調波低減が可能となるものである。また、出力電圧高調波を低減するスイッチングパターンを用いることで、更なる高調波低減が可能となるものである。更に、複数台のマトリックスコンバータの電圧位相差を持たすことで、電圧利用率が向上するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例を示す基本回路構成図。
【図2】マトリックスコンバータの回路構成図。
【図3】説明のための解析モデル図。
【図4】スイッチングパターンで、(a)は出力電圧波形図、(b)は入力電流波形図。
【図5】電源電圧波形図。
【図6】出力相電圧波形図。
【図7】出力線間電圧波形図で、(a)はMCAの出力線間電圧指令、(b)はMCBの出力線間電圧指令。
【図8】出力電圧範囲の説明図。
【図9】出力線間電圧指令実効値のフローチャート。
【図10】本発明の制御回路の構成図。
【図11】動作波形図。
【図12】動作波形図。
【図13】本発明の他の基本回路構成図。
【図14】本発明の他の基本回路構成図。
【図15】スイッチングパターンで、(a)は位相差なし図、(b)は位相差あり図。
【図16】高調波解析結果図。
【図17】高調波総合歪率の比較図。
【図18】10kHz成分の高調波割合の比較図。
【図19】20kHz成分の高調波割合の比較図。
【図20】位相差生成部の構成図。
【図21】本発明の他の基本回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、多重マトリックスコンバータの出力変圧器の2次側を直列に接続し、電圧位相差を持たすか、或いは単に多重化構成とし、出力電圧高調波を低減するスイッチングパターンを用いるようにしたものである。以下実施例に基づいて詳述する。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明の第1の実施例を示す構成図で、三相交流電源には、電源への高調波電流を除去する入力LCフィルタを介して2台のマトリックスコンバータMCA,MCBを並列に接続する。マトリックスコンバータMCA,MCBの並列接続により、負荷に供給する電圧を分担することができるため大容量化に対応できる。マトリックスコンバータMCA,MCBの入力側R,S,T相と出力側U,V,W相を接続する9つの双方向スイッチSru〜Stwを用いて、一般的な3相マトリックスコンバータを構成する。
【0024】
マトリックスコンバータMCA,MCBの出力は、それぞれΔ-Y結線変圧器TrAとΔ-Δ結線変圧器TrBに接続し、変圧器TrAとTrBの二次側は直列接続することで高電圧化する。ここで、Δ−Y結線、Δ−Δ結線の変圧器を用いて2台のマトリックスコンバータの出力に位相差を持たせており、後述のように電圧利用率を向上させている。高電圧で多重化された電圧・電流は、任意の負荷装置へ供給される。
【0025】
CCはマトリックスコンバータの制御回路で、例えば、△結線された入力フィルタコンデンサCfの両端からマトリックスコンバータ入力線間電圧ersm,estm,etrmを検出し、マトリックスコンバータ制御回路CCに入力する。また、この
マトリックスコンバータの制御回路CCには、単位入力電流指令i*,i*,i* と出力相電圧指令v*u, v*v, v*wが入力される。マトリックスコンバータ制御回路CCの制御回路の詳細は後述する。
【0026】
なお、図1では、2台のマトリックスコンバータMCA,MCBによる多重構成とし、且つ変圧器TrA,TrBの2次側に位相差を持たせているが、本発明では2台以上のN台の複数にも適用でき、また、変圧器の2次側に位相差を持たせずN個直列接続した場合にも適用できるものである。
【0027】
図中記号については、次の通りである。
Lf:入力フィルタリアクトル,Cf:入力フィルタコンデンサ
L:負荷リアクトル,R:負荷抵抗
Sru, Ssu, Stu, Srv, Ssv, Stv, Srw, Ssw, Stw:双方向スイッチ(SruはR-U間のスイッチの意味)
ir, is, it:電源電流(R, S, T相), irm, ism, itm:入力電流(R, S, T相)
irmA, ismA, itmA:MCA入力電流(R, S, T相),irmB, ismB, itmB:MCB入力電流(R, S, T相)
i*rmA, i*smA, i*tmA:MCA入力電流指令値(R, S, T相),i*rmB, i*smB, i*tmB:MCB入力電流指令値(R, S, T相)
vuvA,vvwA,vwuA:MCA出力線間電圧(UV, VW, WU)
v*uvA,v*vwA,v*wuA:MCA出力線間電圧指令値(UV, VW, WU)
vuvB,vvwB,vwuB:MCB出力線間電圧(UV, VW, WU)
v*uvB,v*vwB,v*wuB:MCB出力線間電圧指令値(UV, VW, WU)
iuA, ivA, iwA:MCA出力電流(U, V, W相),iuB, ivB, iwB:MCB出力電流(U, V, W相)
v’uA, v’vA, v’wA:MCA出力変圧器二次側相電圧(U, V, W相)
v’uvA, v’vwA, v’wuA:MCA出力変圧器二次側線間電圧(UV, VW, WU)
v’uvB, v’vwB, v’wuB:MCB出力変圧器二次側線間電圧(UV, VW, WU)
v*uv, v*vw, v*wu:出力線間電圧指令値(UV, VW, WU),vuv, vvw, vwu:出力線間電圧(UV, VW, WU)
iu, iv, iw:出力電流(U, V, W相)
次に、回路動作について説明する。
マトリックスコンバータMCA,MCBの出力電圧指令値と入力力率角φの指令値φ*が与えられたときのマトリックスコンバータMCのスイッチングパターンを導出する。図3は、マトリックスコンバータMCのスイッチングパターン導出のための解析モデルである。図中に付した記号は次の通りであり、サフィックスA,BはマトリックスコンバータMCA,MCBの意である。
er,es ,et:入力電圧(R,S,T)、 v*u, v*v, v*w:出力相電圧指令値、
eα,eβ ,eγ:解析モデル入力電圧(α,β,γ)、
iα ,iβ ,iγ:解析モデル入力電流(α,β,γ)、i*,i*,i*:入力電流指令値(α,β,γ)、Sαα, Sβα, Sαb, Sβb, Sγb, Sβc, Sγc:双方向スイッチ(α,β,γ−a,b,c)、
Dαa, Dβa, Dαb, Dβb, Dγb, Dβc, Dγc:双方向スイッチのデューティ(α,β,γ−a,b,c)、
Tαa, Tβa, Tαb, Tβb, Tγb, Tβc, Tγc:双方向スイッチのスイッチング時間(α,β,γ−a,b,c)、
ia, ib, ic:解析モデル出力電流(a,b,c)、vab , vbc , vca:解析モデル出力線間電圧、
v*a, v*b, v*c:解析モデル出力相電圧指令値、v*ab, v*bc, v*ca:解析モデル出力線間電圧指令値
図3では、モデルの簡単化のために入力LC フィルタを無視している。入力電圧はer, es, et のうち最大、中間、最小電圧をそれぞれeα,eβ ,eγ とする。
また、マトリックスコンバータMCA,MCBの出力電圧指令値はv*uA〜v*wA, v*uB〜v*wBのうち最大、中間、最小電圧をそれぞれv*aA〜v*cA, v*aB〜v*cBとして説明する。スイッチングパターンを考えるにあたって、スイッチング周波数は電源や出力電圧の周波数と比較して十分高いものとする。制御周期Tsにおける解析モデル入力電圧および解析モデル出力電流をそれぞれ一定値として近似する。
【0028】
MCAおよびMCBの制御では、出力線間電圧および入力力率をそれぞれ指令値通りに制御するために、制御周期Ts 間における各9 個のスイッチSαaA 〜 SγcA,SαaB 〜 SγcBのオンデューティDαaA 〜 DγcA,DαaB 〜 DγcB およびスイッチング時間TαaA 〜 TγcA,TαaB 〜 TγcB に対して次式の関係が成立する。
【0029】
【数1】

【0030】
【数2】

【0031】
図4は、制御周期Ts間のスイッチングパターン例を示したもので、(a)は出力電圧波形、(b)は入力電流波形である。
マトリックスコンバータは9つの双方向スイッチのスイッチングパターン選択に自由度があるため、制御目的に応じて使い分けられることが知られている。図3の解析モデルならびに図4のパターンは、極力、出力電圧高調波を低減することを主目的としている。
【0032】
図3で削除したスイッチSγaとSαcは、制御周期Ts間では接続しない。これは、スイッチングパターン選択の自由度を用いて、入力最大電圧と出力最小電圧の接続パターン(スイッチSαc)、入力最小電圧と出力最大電圧の接続パターン(スイッチSγa)を予め省略し、電圧変動の大きなスイッチングを防止するためである。この結果、スイッチングには常に中間電圧を用いることになり、出力電圧高調波を低減することができる。各相スイッチの導通期間をオンデューティDαa〜Dγcで示し、制御周期Tsの1制御周期目と2制御周期目は折り返しパターンとしている。
【0033】
次に、各スイッチのデューティの計算について説明する。
最大出力相のa相は、入力の最大相α、中間相βの順に接続し、最小相γには接続しないため、オンデューティDγa = 0 としている。最小出力相のc相は、入力の中間相β、最小相γの順に接続し、最大相αには接続しないため、オンデューティDαc = 0 としている。また、中間出力相のb相は、α,β,γの順にすべての相に接続する。この結果、制御周期Ts間では転流回数は4回になり、デューティ式は(3)式のようにまとめられる。ただし、Pi は制御周期Ts の単位入力電力である。
【0034】
【数3】

【0035】
(2)式よりDαaM とDγcM が0〜1となれば、他のデューティ比はすべて0〜1の範囲に収まる。
なお,本実施例での図3,図4においては出力高調波の低減を優先したスイッチングパターンを用いて説明するが、もちろん、入力高調波を優先して低減する、あるいは入力と出力の高調波バランスを協調するスイッチングパターンを用いることも可能である。
【0036】
次に、電圧利用率の改善と2台のMCA,MCBの制御方法について説明する。電源は対称三相電源とし、線間電圧実効値E、電源位相角θ、電源角周波数ω を用いると相電圧eα, eβ, eγ は(4),(5)式で与えられる。また、図7に電源電圧波形を示す。ただし、0 ≦ θ ≦ π/3 とする。
【0037】
【数4】

【0038】
【数5】

【0039】
入力力率制御のために入力力率角φ の指令値φ* を用いて、入力電流iα,iβ,iγ の単位入力電流指令値i*,i*,i* は(6)式で定義する。ただし、入力力率角指令値φ* の範囲は-π/6 < φ* < π/6 である。
なお、この単位入力電流指令値i*,i*,i* は、電源電流の位相(入力力率)のみ制御するものであって、振幅は負荷電流に依存して決定される。
【0040】
【数6】

【0041】
負荷の出力電圧の線間電圧指令実効値V*L, 出力電圧位相角θ*L ,出力角周波数ω*Lを用いて、出力相電圧指令値v*u,v*v,v*w は(7),(8)式で与えられる。
【0042】
【数7】

【0043】
【数8】

【0044】
マトリックスコンバータMCA,MCB のそれぞれの出力線間指令実効値をV *LA, V *LB とし、2台のマトリックスコンバータの変圧器二次側電圧を同相で制御する。二次側相電圧v′uA〜 v′wA とv′uB〜 v′wB は(9),(10),(11)式で与えられる。
【0045】
【数9】

【0046】
【数10】

【0047】
【数11】

【0048】
マトリックスコンバータMCA 側のΔ-Y 結線変圧器の巻数比を1 : 1/√3することで一次と二次の線間電圧値が等しくなり、二次側に対して一次側の位相はπ/6 [rad] 遅れる。
一方,MCB側のΔ-Δ結線変圧器の巻数比を1:1 とすることで、一次と二次の電圧および位相ともに等しくなり、2台のマトリックスコンバータの電圧分担率を均等にできる。よって、MCA,MCBの一次側出力相電圧指令値v*uA,v*vA,v*wA,v*uB,v*vB,v*wB はそれぞれ(12),(13)式で与えられる。
図6は(12),(13)式に基づく出力電圧波形を示したもので、(a)はマトリックスコンバータMCAの出力相電圧指令、(b)はマトリックスコンバータMCBの出力相電圧指令を示す。ただし、0 < θ*L < π/3の範囲とする。
【0049】
【数12】

【0050】
【数13】

【0051】
マトリックスコンバータMCA の出力電圧の最大、中間、最小をそれぞれa, b, c 相とすると、0 < θ*L < π/3 では(14)〜(17)式となる。
【0052】
【数14】

【0053】
【数15】

【0054】
【数16】

【0055】
【数17】

【0056】
マトリックスコンバータMCB の出力電圧の最大、中間、最小をそれぞれa, b, c 相とすると、0 < θ*L < π/3では(18),(19)式となる。
【0057】
【数18】

【0058】
【数19】

【0059】
図7は、式(15),(17),(19)に基づく出力線間電圧波形を示したもので、(a)はマトリックスコンバータMCAの出力線間電圧指令、(b)はマトリックスコンバータMCBの出力線間電圧指令を示す。
【0060】
次に,(3) 式のデューティ式から、各MCの出力線間電圧指令実効値V *LA, V* LB の出力可能な電圧値を求める。ここで、単位入力電力Pi は(4) 式と(6) 式より
(20)式となる。
【0061】
【数20】

【0062】
電源位相角θ の範囲が0 ≦ θ ≦π/3 で、出力電圧位相角θ*L の範囲が0 ≦ θ*L ≦π/6 の場合でMCA のデューティDαaA,DγcA より、線間電圧指令実効値V * LA の出力可能な電圧値を求める。ただし,入力力率指令値cos φ* = 1 とする。MCA のデューティDαaA,DγcA は(6) 式、(15) 式と(20) 式を代入して(21),(22)となる。
【0063】
【数21】

【0064】
【数22】

【0065】
出力電圧位相角θ*L の範囲が0 ≦ θ*L ≦ π/6 では、(21) 式、(22) 式より、線間電圧指令実効値V* LA の範囲は(21)式で決まる。θ = 0 のときがV* LA は最も低くなるため、V * LA の最大出力電圧は(23)式となる。
【0066】
【数23】

【0067】
図8に0 ≦ θ*L ≦ π/3 の範囲での線間電圧指令実効値V*LA の出力可能な電圧値を示す。図7(a) のπ/6 ≦θ*L ≦ π/3 の範囲で線間電圧波形が折り返しとなっているため、図8のπ/6 ≦θ*L ≦ π/3 の範囲も折り返しとなる。
また、マトリックスコンバータMCA と同様に、MCB のデューティDαaB,DγcB より、線間電圧指令実効値V*LB の出力可能な電圧値を求める。ただし、出力電圧位相角θ*L の範囲が0 ≦θ*L ≦ π/3 とする。MCB のデューティDαaB,DγcBは(6) 式,(19) 式と(20) 式を代入して(24),(25)式となる。
【0068】
【数24】

【0069】
【数25】

【0070】
出力電圧位相角θ*L の範囲が0 ≦θ*L ≦ π/3 では、(24) 式、(25) 式より、θ = 0,π/3 のとき、線間電圧指令実効値V*LB は最も小さくなる。このとき、V*LB の最大出力電圧は(26) 式となる。(26) 式の波形を図8に追加する。
【0071】
【数26】

【0072】
さらに,図8にV*Lの波形を併せて示す。ただし,V*L = V* LA + V* LB である。図8よりθ*L = π/12,π/4 のとき、V*L = V* LA + V* LB の出力電圧は最も低くなる。
【0073】
【数27】

【0074】
(27)式より明らかなように、本発明では1 台あたりの電圧利用率を、従来の0.866から0.896 に拡大できることがわかる。また,変圧器2次側の直列多重化された負荷電圧は,電源電圧の1.793 倍に拡大できる。
【0075】
図9に各マトリックスコンバータの出力線間電圧指令実効値の決定に関するフローチャート図を示す。
まず、ステップS1では、負荷にかかる出力線間電圧指令実効値V*Lを決定し、ステップS2で(27)式の制御範囲内、すなわち、V*L≦1.793Eであるかを確認する。制御範囲内である場合は、ステップS3で電圧利用率拡大が必要かどうかを判別する。電源電圧実効値Eに対する1台あたりの電圧利用率が従来の0.866倍以下(すなわちV*L / 2 ≦ 0.866E)であれば、2台のMCの電圧分担に関して、(28)式の通り単純に出力線間電圧指令実効値を1/2で分担すればよい。
【0076】
【数28】

【0077】
S3の判断で、電圧利用率拡大が不要に場合にはそのままとなるが、電圧利用率拡大が必要な場合(すなわちV*L / 2 > 0.866E)、ステップS4で、MCAとMCBの最大出力電圧値 (23)式と(26)式の大小判別を行う。S4の判断で、MCAの最大出力電圧値が小さい場合はV*LAが最大出力電圧値となり、ステップS5でV*Lに足りない電圧分を(29)式の通り最大出力電圧値に余裕のあるV*LBで補う。
【0078】
【数29】

【0079】
S4の判断で、MCBの最大出力電圧値が小さい場合はV*LBが最大出力電圧値となり、ステップS6でV*Lに足りない電圧分を(30)式の通り最大出力電圧値に余裕のあるV*LAで補う。
【0080】
【数30】

【0081】
図10は、上記に基づく制御回路CCの構成図である。1は相電圧判別部で、電源電圧を入力して(4)式に基づいて相電圧eα,eβ,eγの大、中、小を判別する。2は単位入力電流指令判別部で、入力電流iα,iβ,iγ の単位入力電流指令値i*,i*,i* の大、中、小を(6)式に基づいて判別する。3は出力線間電圧指令実効値演算部で、(7)式で与えられた出力相電圧指令値v*u,v*v,v*w を入力し、(10),(11)式によりマトリックスコンバータMCA,MCBの出力線間指令実効値V *LA, V *LB を求める。
【0082】
4,5はそれぞれMCA用とMCB用の出力相電圧指令生成部で、出力相電圧指令生成部4は、出力線間指令実効値V *LAを用いて(12)式に基づき出力相電圧指令を演算する出力相電圧指令演算部4aと、出力相電圧指令の大、中、小を
(15)式に基づいて判別する出力相電圧指令判別部4bを有している。
出力相電圧指令生成部5は、出力線間指令実効値V *LBを用いて(13)式に基づき出力相電圧指令を演算する出力相電圧指令演算部5aと、出力相電圧指令の大、中、小を(19)式に基づいて判別する出力相電圧指令判別部5bを有している。
【0083】
6,7はデューティ演算部である。デューティ演算部6,7はそれぞれ入力電圧、単位入力電流指令および出力線間指令実効値を用いて(3)式の演算を実行する。8,9はスイッチングパターン生成部で、生成されたパターンはマトリックスコンバータMCA,MCBの各スイッチ信号となる。
【0084】
制御回路CCは、出力相電圧指令から、図9で示したように電圧利用率拡大領域に対応したマトリックスコンバータMCA,MCBの出力線間電圧指令実効値の導出を行い、MCA,MCBの各制御部へ入力する。MCA,MCBの各制御部では出力相電圧指令値を生成し、3相の大中小関係を考慮した出力相電圧指令値(αβγ系)に変換する。また、電源電圧・単位入力電流指令値も大中小関係を考慮し,デューティ演算部へ入力する。各スイッチのデューティの演算は(3)式に基づいて行い,導出されたデューティに基づいてスイッチングパターンを生成する。スイッチングパターンの生成には,三角波比較PWM等の従来から一般に用いられているスイッチング信号生成ロジックを用いればよい。
【0085】
図11は本実施例の動作波形例を示したものである。
電圧利用率が0.895となるような電圧指令値を与えており、従来の制御法では実現できない電圧利用率の拡大領域での動作例となる。波形は(a)が出力線間電圧波形(UV線間)、(b)は出力電流波形(U相)、(c)は電源電圧波形(RS線間)、(d)は電源電流波形(R相)である。
【0086】
また、図12はMCA,MCBの出力電圧波形例を示したものである。同図において(a)は出力線間電圧波形(UV線間)、(b)はMCAの出力トランス2次側線間電圧波形(UV線間)、(c)はMCBの出力トランス2次側線間電圧波形(UV線間)、(d)はMCAの出力変圧器1次側線間電圧波形(UV線間)、(e)はMCBの出力変圧器1次側線間電圧波形(UV線間)である。
出力線間電圧は高圧多重化されたマルチレベル電圧出力となり,電圧利用率拡大領域に入っても出力電流・入力電流ともに良好な正弦波波形に制御できることが分かる。
【0087】
なお、図1で示す実施例の形態はあくまで一例であり、他の実施形態に変形できる。例えば、出力変圧器を用いれば巻数比を変更することで入出力電圧変換比を1:1以外の任意に変更できるが、電源電圧の有効利用の観点から電圧利用率は可能な限り高い方が望ましい。したがって、本発明では、マトリックスコンバータ単体の電圧利用率を向上させた上で巻数比を変更して更なる昇圧を実現する、あるいは降圧利用においてはマルチレベル化することによる高調波低減を実現することもできる。
【0088】
また,図1の回路構成では出力変圧器にΔ−Y結線,Δ−Δ結線を用いて、MCAとMCBの変圧器2次側の位相差を30度とし、電圧利用率を向上させている。直列多重化する際にMCA,MCBの位相差を30度にする方法は他にもあり、例えば図13で示すように、出力変圧器1次側の巻線に位相差を持たせる構成も考えられる。図13では、MCBの出力変圧器1次側結線を△結線に比べて30゜の位相差を持たせたもので、図1と同様の効果が得られる。
【0089】
以上第1の実施例によれば、次のような効果が得られるものである。
(1)マトリックスコンバータを複数並列接続したことによる大容量化だけでなく、出力変圧器2次側の直列多重化による高電圧化が可能となるものである。
(2)出力変圧器2次側の直列多重化によって、入出力波形を制御するスイッチング周波数が上昇し、制御応答向上と高調波低減が可能となるものである。
(3)出力変圧器2次側における複数台のマトリックスコンバータの電圧位相差を30度とすることで、電圧利用率が向上するものである。
(4)出力電圧高調波を低減するスイッチングパターンを用いることで、更なる高調波低減が可能(出力でなく入力高調波を優先的に低減することも可能)となるものである。
【実施例2】
【0090】
図14は第2の実施例を示す構成図である。前述のように、図1及び図13で示す実施例1では、複数台のマトリックスコンバータの電圧位相差を30度とすることで電圧利用率が向上させたものであるが、第2の実施例は、電圧位相差を持たせずに高圧多重化を考慮したものである。すなわち、マトリックスコンバータMCA,MCBの出力変圧器は共に△−Y結線にされる。この実施例の動作は次のようになる。
【0091】
まず、(1)〜(9)式までは位相差ありの場合と同じである。(10),(11)式はMCA,MCBの各出力変圧器二次側の相電圧であるが、図1の△−Y,△−△の構成でも、図13の△−Y,△−Yの構成でも(10),(11)式は共通となる。ただし、図1では△−Y結線の出力変圧器TrAの巻数比を1:√3として
△−△結線との電圧分担比を等しくしているが、図14で示す実施例2ではどちらも△−Y結線であるので、巻数比1:1で共通となる。勿論、任意巻数比に変更可能であるが、電圧分担比を等しくする場合はMCA,MCBで同じ比率にする必要がある。
【0092】
次に、出力電圧波形を示す(12)式は△−Y結線で図1と共通となるが、(13)式は図1の出力変圧器TrBは△−△結線となるので、(13)式は
(13)´式への置き換えとなる。

【0093】
つまり、MCBに関連する数式は、MCAの数式のサフィックスを「A」→「B」に置き換えたのみとなる。
【0094】
以下同様にして、変更したMCBに係わる(18),(19)式は削除され、代わりに、MCAの(14)〜(17)式に出てくるサフィックス「A」を全て「B」に置き換えた数式となる。また、最大出力電圧についても、MCBの部分はMCAの部分にサフィックスのみを置き換えればよい。つまり、V*LA の最大出力電圧の説明は(21)〜(23)式であり、V*LB の最大出力電圧の説明は(24)〜(26)式であるが、(24)〜(26)式を削除して(21)〜(23)式のサフィックスを「A」→「B」に置き換えればよい。
【0095】
なお、最大出力電圧についての定義は、(3)式のデューティ式を満たすことができて、且つ電源位相角θの範囲内で出力可能な電圧が最も低くなるθにおける出力線間指令実効値を、出力可能な最大出力電圧として定義している。
【0096】
この実施例2によれば、実施例1と比較して電圧利用率改善効果は得られないが、他は実施例1と同様の効果が得られるものである。
【実施例3】
【0097】
図15は第3の実施例を示すスイッチングパターン合成の説明図である。
本実施例は、実施例1の構成において、MCAとMCBのスイッチングパターンを生成する際に用いる制御周期の位相差と高調波低減の関係を考慮したものである。
【0098】
図15では、2台のマトリックスコンバータの出力線間電圧(出力変圧器2次側)、およびそれらを直列多重化した最終的な出力線間電圧を併せて示している。
また、MCA,MCB2台のマトリックスコンバータ制御周期の位相差に着目し、図15(a)は位相差なし(位相差ΔTs=0)の場合、図15(b)は位相差が制御周期と等しい場合(ΔTs=Ts)のスイッチング波形の例を示している。
【0099】
MCAとMCBに位相差がない図15(a)の場合を見ると、最終的な出力線間電圧Vabの波形は負の電圧を出力しているが、位相差ΔTs=Tsの図15(b)のVabでは負の電圧が打ち消されており、電圧変動による高調波電圧を比較的低減できることがわかる。したがって、本実施例では2台のMCの制御周期の位相差がTsとなるようにMCA,MCBのスイッチングパターンを出力する。
【0100】
図16は、同条件における高調波解析結果の比較の例である。特に制御周期成分(10kHz)において,位相差ΔTs=Tsとした方が高調波を低減できることが分かる。
【0101】
したがって、この実施例によれば、N台のマトリックスコンバータを多重接続
構成とし、そのスイッチングパターンを生成するにあたり、
複数台の制御周期の位相差を制御周期Tsとすることで、位相差ΔTs=2Ts/N とすることで制御周期成分の高調波低減効果が得られるものである。
【実施例4】
【0102】
図17は第4の実施例に基づく高調波総合歪み率の比較図である。
実施例3では、N台のMC多重接続において位相差ΔTs=2Ts/N とするスイッチングパターン生成方式を用いたが、実施例4では、マトリックスコンバータの電圧指令領域に応じて位相差ΔTsを可変にする方式を用いるものである。
ここでは、効果を分かりやすく説明するために、位相差ΔTs=0、ΔTs=Ts/N、ΔTs=2Ts/N の3つの場合の高調波解析を行う。
【0103】
図17は、例として2台(N=2)のマトリックスコンバータを多重化した場合に、出力電圧領域ごとの高調波総合歪み率を比較した結果である。また、制御周期成分(10kHz)と制御周期の1/2成分(20kHz)の高調波の割合を示した結果を、それぞれ図18,図19に示す。
【0104】
高調波総合歪み率を比較した図17の結果から分かるように、実施例1のΔTs=2Ts/N(図中のdTs=Ts)の場合は出力電圧領域70〜120Vで高調波低減効果が最も高い。しかしながら、その他の領域ではΔTs=Ts/N(図中のdTs=1/2 Ts)の方が抑制効果が高いことが分かる。
【0105】
制御周期成分(10kHz)時の高調波割合を比較した図18の結果を見ると、制御周期成分(10kHz成分)の割合ではΔTs=2Ts/Nの場合が最も良い。また、制御周期1/2成分(20kHz)時の高調波割合を比較した図19の結果を見ると、制御周期1/2成分(20kHz成分)の割合ではΔTs=Ts/Nが最も良い。したがって、出力電圧領域に応じて位相差を変更した方が、実施例3よりも高調波を改善できる。
【0106】
図20は、位相差生成部の構成を示したもので、マトリックスコンバータの電圧指令領域に応じて位相差を生成する。位相差生成部10は、MCAの制御周期信号を基準として(または、逆にMCBを基準にして)、出力相電圧指令の大きさから、予め決められた電圧領域に従いMCAの制御周期信号に対して位相差をもったMCBの制御周期信号を生成し、MCBのスイッチングパターン生成部9(または、MCAのスイッチングパターン生成部8)へ出力する。スイッチングパターン生成部で、例えば、スイッチングパターン生成に三角波比較PWM方式を用いる場合は、制御周期信号は三角波となる。位相差を持った三角波を用いて、MCA,MCBのスイッチングパターンを生成する。
【0107】
前述の通り、位相差はそのときの出力電圧領域で最も高調波低減可能な値を随時選択すればよい。電圧領域と位相差の量に関しては、予め高調波解析を行って決定しておく。
【0108】
実施例4によれば、複数台のマトリックスコンバータの制御周期信号の位相差を、出力電圧指令値に基づいて可変とすることで、全動作領域での高調波低減可能となるものである。
【実施例5】
【0109】
図21はマトリックスコンバータ3台を多重化した例である。
前述した各図で示した例では2台のマトリックスコンバータを多重化することについての回路構成を示しているが、3台以上の複数台においても電圧利用率を向上しつつ,高圧多重化・大容量化することが可能である。図21は、3台を多重化した場合の構成例である。各マトリックスコンバータの出力変圧器1次側は各マトリックスコンバータ間で位相差を持ったΔ結線とする。このときの位相差は20度とすることで、最も電圧利用率を向上できる。各出力変圧器二次側はY結線で直列接続し,高圧多重化を実現する。
【0110】
電圧利用率改善と各マトリックスコンバータの位相差に着目して一般化すると、多相交流(相数M)のN台のマトリックスコンバータを並列接続する構成において、出力変圧器1次側の位相差は180/(M×N)度で構成すれば電圧利用率を最も効率的に改善できる。
その他、出力変圧器の2次側の一つをΔ結線にして、上記の180/(M×N)度の関係を保つように1次側位相差を構成することも可能である。
【0111】
実施例5のように、3台以上の複数台の多相交流マトリックスコンバータにおいても、電圧利用率を改善しつつ高圧多重・大容量なマトリックスコンバータ装置の構成が可能となるものである。
【符号の説明】
【0112】
1… 相電圧判別部
2… 単位入力電流指令判別部
3… 出力線間電圧指令実効値演算部
4,5… 出力相電圧指令生成部
6,7… デューティ演算部
8,9… スイッチングパターン生成部
10… 位相差生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向スイッチを有し、且つ出力変圧器を接続したマトリックスコンバータを複数台多重接続構成し、一定周波数電源を可変周波数の交流に変換するものにおいて、
前記各出力変圧器の2次側を直列に接続して前記可変周波数の交流を出力すると共に、出力相電圧指令から出力線間電圧指令実効値を演算する出力線間電圧指令実効値演算部と、出力線間電圧指令実効値を入力してマトリックスコンバータ毎の出力相電圧指令を算出する出力相電圧指令生成部と、電源電圧を入力して電圧の大小を判別する相電圧判別部と、単位入力電流指令を入力してこの単位入力電流指令の大小を判別する単位入力電流指令判別部と、前記出力相電圧指令、大小判別された入力電圧、及び大小判別された単位入力電流指令から各マトリックスコンバータ毎のデューティを演算するデューティ演算部と、デューティ演算部によるデューティに基づいて各マトリックスコンバータの制御信号を生成するスイッチングパターン生成部を備えたことを特徴とした多重マトリックスコンバータ装置。
【請求項2】
前記直列接続された出力変圧器の入出力に、位相差を持たせたことを特徴とした請求項1記載の多重マトリックスコンバータ装置。
【請求項3】
前記出力変圧器の出力位相差は、出力変圧器2次側若しくは1次側の何れか一方の結線にて行い、位相差を30゜としたことを特徴とした請求項2記載の多重マトリックスコンバータ装置。
【請求項4】
前記の各マトリックスコンバータは、相数Mの多相交流のマトリックスコンバータをN台とし、前記出力変圧器の1次側の位相差を180/(M×N)としたことを特徴とした請求項2記載の多重マトリックスコンバータ装置。
【請求項5】
前記の各マトリックスコンバータの出力変圧器の2次側の一つを△結線とし、位相差を180/(M×N)としたことを特徴とした請求項2又は請求項5記載の多重マトリックスコンバータ装置。
【請求項6】
前記N台の各マトリックスコンバータのスイッチングパターン生成時に、制御周期Tsにおける位相差△Tsは、△Ts=2Ts/Nとしたことを特徴とした請求項1乃至請求項5記載の何れかである多重マトリックスコンバータ装置。
【請求項7】
前記スイッチングパターン生成部の前段に位相生成部を設け、スイッチングパターン生成部に対する制御周期信号を基準として、前記出力相電圧指令の大きさから位相差を持つマトリックスコンバータへの制御周期信号を生成することを特徴とした請求項1乃至請求項6記載の何れかである多重マトリックスコンバータ装置。
【請求項8】
複数台のマトリックスコンバータを多重接続し、多重構成のマトリックスコンバータの制御回路に、電源電圧、単位入力電流指令、及び出力相電圧指令を入力して各マトリックスコンバータが有する双方向スイッチの制御信号を構成する多重マトリックスコンバータ装置において、
前記各マトリックスコンバータにそれぞれ出力変圧器を接続して二次側を直列接続すると共に、
前記出力相電圧指令を、出力線間電圧指令実効値演算部に入力して各マトリックスコンバータの出力変圧器二次側を同相で制御するための出力電圧指令実効値を算出し、算出された各マトリックスコンバータの出力電圧指令実効値の大,中,小の判別値と、前記電源電圧、単位入力電流指令の大,中,小の判別値を、マトリックスコンバータ毎のデューティ演算部に入力してデューティ比を演算し、デューティ比に基づいて前記各双方向スイッチのスイッチングパターンを生成して前記各双方向スイッチを制御することを特徴とする多重マトリックスコンバータ装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−48503(P2013−48503A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185555(P2011−185555)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】