説明

多重管構造形直管式コリオリ流量計

【課題】 定在波を安定させることが可能な多重管構造形直管式コリオリ流量計を提供する。
【解決手段】 多重管構造形直管式コリオリ流量計21は、フローチューブ3とカウンタバランス4との二重管構造による共振系の外側に筒状体22等を有するような構造、すなわち、流量計筐体としての外筒2の内側で三重管構造を形成する直管式コリオリ流量計となる。駆動装置7を共振駆動させると、フローチューブ3とカウンタバランス4との二重管構造による共振系に定在波が生じる。また、拡大開口部9と固着プレート23との間や、板バネ6の接続位置と固着プレート23との間にも駆動周波数に応じた定在波が発生する。駆動装置7を共振駆動させると5次の定在波が生成される。外乱ノイズは、板バネ6の接続位置と固着プレート23との間の定在波によって一旦緩衝される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流管に作用するコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数を検出することにより被測定流体の質量流量及び/又は密度を得る直管式のコリオリ流量計に関し、詳しくは多重管構造形直管式コリオリ流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
直管式コリオリ流量計は、両端が支持された直管(フローチューブ)の中央部直管軸に垂直な方向の振動を加えたとき、直管の支持部と中央部との間でコリオリの力による直管の変位差、すなわち位相差信号が得られ、その位相差信号に基づいて質量流量を検知するように構成されている。このような直管式コリオリ流量計は、シンプル、コンパクトで堅牢な構造を有している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図5において、従来の直管式コリオリ流量計1は、図中引用符号2の外筒、3のフローチューブ、4のカウンタバランス、5の連結ブロック、6の板バネ、7の駆動装置、8の検出器(検出手段)、図示しない重錘等とを備えて構成されている。フローチューブ3は、その両端部にラッパ状に形成された拡大開口部9を有している。また、フローチューブ3は、両端部の拡大開口部9の間に真っ直ぐな直管部10を有している。フローチューブ3は、流出入口を有する両端部側で支持されるようになっている。
【0004】
フローチューブ3の直管部10には、その外側にカウンタバランス4が設けられている。フローチューブ3の直管部10とカウンタバランス4は、カウンタバランス4の両端部で連結ブロック5により同軸に接合されている。直管部10とカウンタバランス4によって、二重管構造が形成されている。外筒2は、その内部に二重管構造を収容することができるように形成されている。外筒2の両端部は、フローチューブ3の拡大開口部9に向けて窄まるように形成されている。外筒2の両端部は、拡大開口部9に対して溶接されている。外筒2の両端部と拡大開口部9は、液密に固着されている。拡大開口部9の開口端部には、接続フランジ11が溶接されている。
【0005】
板バネ6は、フローチューブ3の直管部10に直交する面を有しており、一端が連結ブロック5に、他端が外筒2の内壁に固着されている。また、板バネ6は、共振振動方向に対して直交方向に配置されている。駆動装置7は、フローチューブ3とカウンタバランス4の中央位置に取り付けられている。検出器8は、駆動装置7の左右対称位置に取り付けられている。図示しない重錘は、駆動装置7の反対側の位置に取り付けられている。より具体的に、図示しない重錘は、駆動装置7の駆動方向に取り付けられている。図示しない重錘は、連結ブロック5まわりのフローチューブ3の固有振動数とカウンタバランス4の固有振動数とが等しく調整することができるように設けられている。
【0006】
上記構成において、フローチューブ3とカウンタバランス4とからなる共振系は、板バネ6により支持されている。また、共振系から延長される直管部10の端部における拡大開口部9は、接続フランジ11の位置で支持されている。従って、フローチューブ3は合計四点で支持されている。このような構成の直管式コリオリ流量計1は、図示しない被測定流体をフローチューブ3に流した状態で駆動装置7を共振駆動させて、検出器8によりコリオリの力に比例した位相差信号を検出することで質量流量を測定することができるようになっている。直管式コリオリ流量計1において、駆動装置7の共振駆動により、共振系には定在波が形成されるようになっている。上記の各支持点は、振動の節部となっている。尚、熱膨張によるフローチューブ3に生じる応力は、拡大開口部9のバネ作用及び板バネ6のバネ作用により除去されるようになっている。
【特許文献1】特許第2786829号公報 (第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フローチューブ3は、接続フランジ11の位置まで延長され、そして、拡大開口部9を介して接続フランジ11に溶接されることから、駆動装置7の共振駆動によって、フローチューブ3は一対の接続フランジ11の間で振動するようになっている。従って、接続フランジ11の条件で振動条件も変化してしまうこととなり、精度、安定性への影響が無視できない状態になっている。
【0008】
フローチューブ3は、接続フランジ11に接続される際に薄肉でラッパ状の拡大開口部9を介して接続されることから、拡大開口部9によってフローチューブ3の振動が阻害されることはなく、そのため自由な曲げ振動が容易になっている(図6参照)。ところで、図6に示される如く、拡大開口部9における薄肉部12の肉厚を薄くすれば、より自由度のある振動が可能であるが、耐圧の関係により、ある程度の肉厚が必要となっている。それ故に、自由度には制限が付くことが必然で、接続フランジ11に接続される条件から完全に切り離して考えることはできないものとなっている。
【0009】
図7は振動時におけるフローチューブ3の振動状態を示している。ここで、図7中のF1〜F4は、図5中のF1〜F4、すなわち拡大開口部9と接続フランジ11との接続部分、及び板バネ6の接続部分に対応するようになっている。図7において、F1とF2(F4とF3)は、振動の支点となっており、また、F2(F3)は板バネ6を適用していることから、F1とF2との間(F4とF3との間)には、駆動周波数に応じた定在波が生じるようになっている。
【0010】
図8は接続フランジ11にストレスが生じた場合の振動状態を示す図である。図8の場合では、接続フランジ11の取り付けに関し、F1がF1aやF1bに変化すると、腹部となるQ0は、QaやQbへシフトしてその結果、F2とF3の間の定在波に影響を与えてしまうようになる。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、定在波を安定させることが可能な多重管構造形直管式コリオリ流量計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の多重管構造形直管式コリオリ流量計は、流出入口を有する両端部側で支持される直管状のフローチューブと、連結ブロックを介し前記フローチューブと固着し該フローチューブと共に二重管構造を形成するカウンタバランスと、前記フローチューブを中心位置で交番駆動する駆動装置と、前記フローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差を検出する一対の検出手段とを備え、前記フローチューブは前記連結ブロックの位置に前記フローチューブの軸に直交方向の板バネを有する直管式コリオリ流量計であって、前記流出入口及び前記板バネ接続位置の中間の振動節部を介して前記フォローチューブに固着する固着プレートと、前記カウンタバランス及び流量計筐体の間に位置するとともに前記固着プレート及び前記板バネを固着する筒状体と、前記固着プレートの位置で前記筒状体及び前記流量計筐体を連結する前記板バネと同方向の第二板バネとを備えることを特徴としている。
【0013】
このような特徴を有する本発明によれば、フローチューブとカウンタバランスとの二重管構造による共振系の外側に筒状体等を有するような構造の直管式コリオリ流量計になる。すなわち、本発明は、流量計筐体の内側で三重管構造を形成する直管式コリオリ流量計となる。駆動装置を共振駆動させると、フローチューブとカウンタバランスとの二重管構造による共振系に定在波が生じる。また、拡大開口部と固着プレートとの間や、板バネ接続位置と固着プレートとの間にも駆動周波数に応じた定在波が発生する。駆動装置を共振駆動させると5次の定在波が生成されることになる。本発明によれば、三重管構造を形成することにより、拡大開口部と固着プレートとの間の定在波に混入する外乱ノイズが、次に配列される板バネ接続位置と固着プレートとの間の定在波によって一旦緩衝されるようになる。外乱ノイズが緩衝されることにより、フローチューブとカウンタバランスとの二重管構造による共振系の定在波が安定する。
【0014】
請求項2記載の本発明の多重管構造形直管式コリオリ流量計は、請求項1に記載の多重管構造形直管式コリオリ流量計において、前記固着プレートを前記板バネの形状に合わせて形成、又は円板状に形成することを特徴としている。
【0015】
このような特徴を有する本発明によれば、板バネ形状又は円板状の固着プレートを介して筒状体がフローチューブに連結する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された本発明によれば、三重管構造を形成することにより、フローチューブとカウンタバランスとの共振系の振動を安定させることができるという効果を奏する。従って、直管式コリオリ流量計としての精度及び安定性を従来よりも向上させることができるという効果を素する。本発明は、配管条件や外因的影響の少ない直管式コリオリ流量計を提供することができるという効果を奏する。
【0017】
請求項2に記載された本発明によれば、固着プレートのより良い形態を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の多重管構造形直管式コリオリ流量計の一実施の形態を示す断面図である。また、図2(a)は配管影響がない場合の振動状態を示す図、図2(b)は配管影響を受ける場合の振動状態を示す図、図3(a)は固着プレート及び板バネの斜視図、図3(b)は固着プレートの他の例を示す斜視図、図4は図3(b)の固着プレートを用いた場合の三重管構造の斜視図(一部断面を含む)である。尚、従来例と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0019】
図1において、本発明の多重管構造形直管式コリオリ流量計21は、従来構造に対して筒状体22、固着プレート23、及び第二板バネ24を追加して外筒2(流量計筐体)の内側に三重管構造のものを形成することを特徴としている。三重管構造は、フローチューブ3とカウンタバランス4との二重管構造の外側に筒状体22等を配置してなるものであって、この三重管構造により駆動装置7の共振駆動時において5次の定在波が生成されるようになっている。
【0020】
筒状体22は、フローチューブ3やカウンタバランス4と同軸となる剛体であって、例えば円筒形状に形成されている(一例であるものとする)。筒状体22は、この全長がカウンタバランス4よりも長く且つフローチューブ3の直管部10よりも短くなるように形成されている。筒状体22は、カウンタバランス4と外筒2との間に介在する大きさに形成されている。
【0021】
筒状体22の材質としては、例えばステンレススチールが用いられている。ちなみに、フローチューブ3の材質は、ステンレス、ハステロイ、チタン合金等のこの技術分野において通常のものが用いられている。また、カウンタバランス4の材質は、ステンレススチール等のこの技術分野において通常のものが用いられている。
【0022】
固着プレート23は、板バネ6の接続位置と拡大開口部9との中間に存在するフローチューブ3の振動節部に配置されている。固着プレート23は、薄板を加工してなるものであって、図3(a)に示される如く、板バネ6と同様の形状、若しくは図3(b)に示される如くの円板状に形成されている(一例であるものとする。尚、円板状に形成した場合の三重管構造は図4に示される如くの形状になる)。
【0023】
固着プレート23の一端は、連結ブロック25を介してフローチューブ3の外周面に固着されている。また、固着プレート23の他端は、連結ブロック26を介して筒状体22の内周面に固着されている。固着プレート23の他端は、筒状体22の両端開口部から若干内側に位置するように固着されている。
【0024】
第二板バネ24は、固着プレート23の位置で筒状体22と外筒2とを連結することができるように形成されている。具体的に、第二板バネ24は、板バネ6と同様の形状に、且つ板バネ6と同方向にのびて固着ができるように形成されている。第二板バネ24の一端は、連結ブロック27を介して筒状体22の外周面に固着されている。また、第二板バネ24の他端は、連結ブロック28を介して外筒2の内周面に固着されている。
【0025】
固着プレート23、板バネ6、及び第二板バネ24の材質としては、例えばステンレススチール等のこの技術分野において通常のものが用いられている。
【0026】
上記構成において、駆動装置7を共振駆動させると、図2の(a)に示されるような5次の定在波が生成される。ここで、図2の(a)中の5次の定在波における振動節部F11〜F16は、図1中のF11〜F16の部分に相当するものとする。すなわち、F11及びF16の振動節部は拡大開口部9と接続フランジ11との接続部分、F12及びF15の振動節部は固着プレート23の接続部分、F13及びF14の振動節部は板バネ6の接続部分に相当するものとする。
【0027】
5次の定在波は、上述の如く駆動装置7を共振駆動(図中のFなる力で駆動される)させることにより得られる振動波形であって、F13〜F14の振動節部間の定在波は、三重管構造のうちのフローチューブ3とカウンタバランス4との二重管構造による共振系に発生する駆動周波数に応じた定在波である。また、F12〜F13及びF14〜F15の振動節部間の定在波は、固着プレート23の接続位置と板バネ6の接続位置との間に発生する駆動周波数に応じた定在波である。また、F11〜F12及びF15〜F16の振動節部間の定在波は、拡大開口部9と固着プレート23の接続位置との間に発生する駆動周波数に応じた定在波である。各定在波における振幅の幅は、F13〜F14>F12〜F13>F11〜F12、F13〜F14>F14〜F15>F15〜F16の関係で減衰する。
【0028】
このような5次の定在波が発生する本発明の多重管構造形直管式コリオリ流量計21において、接続配管や接続フランジ11にストレスや外乱ノイズが発生した場合、図2(b)に示すような状態になる。
【0029】
すなわち、F11及びF16に曲げモーメントが加えられると、F11〜F12及びF15〜F16の波形は、破線(配管影響がない場合の波形)に比べて大きく外乱を受けて実線の如く大きく変化する。しかしながらこの大きな変化は、F12〜F13及びF14〜F15において影響が減衰される(言い換えれば、F12〜F13及びF14〜F15において一旦緩衝される)。このように影響が減衰されると、F13〜F14の振動節部間の定在波は、安定した状態を維持する。
【0030】
本発明の多重管構造形直管式コリオリ流量計21によれば、接続配管や接続フランジ11にストレスや外乱ノイズが発生した場合であっても、フローチューブ3とカウンタバランス4との二重管構造による共振系の振動が安定する。従って、従来よりも直管式コリオリ流量計としての精度及び安定性が向上する。本発明は、配管条件や外因的影響の少ない直管式コリオリ流量計となる。
【0031】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の多重管構造形直管式コリオリ流量計の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】(a)は配管影響がない場合の振動状態を示す図、(b)は配管影響を受ける場合の振動状態を示す図である。
【図3】(a)は固着プレート及び板バネの斜視図、(b)は固着プレートの他の例を示す斜視図である。
【図4】図3(b)の固着プレートを用いた場合の三重管構造の斜視図(一部断面を含む)である。
【図5】従来例の直管式コリオリ流量計の断面図である。
【図6】拡大開口部とその周囲の拡大断面図である。
【図7】振動時におけるフローチューブの振動状態を示す図である。
【図8】接続フランジにストレスが生じた場合の振動状態を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 直管式コリオリ流量計
2 外筒(流量計筐体)
3 フローチューブ
4 カウンタバランス
5 連結ブロック
6 板バネ
7 駆動装置
8 検出器(検出手段)
9 拡大開口部
10 直管部
11 接続フランジ
12 薄肉部
21 多重管構造形直管式コリオリ流量計
22 筒状体
23 固着プレート
24 第二板バネ
25〜28 連結ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流出入口を有する両端部側で支持される直管状のフローチューブと、連結ブロックを介し前記フローチューブと固着し該フローチューブと共に二重管構造を形成するカウンタバランスと、前記フローチューブを中心位置で交番駆動する駆動装置と、前記フローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差を検出する一対の検出手段とを備え、前記フローチューブは前記連結ブロックの位置に前記フローチューブの軸に直交方向の板バネを有する直管式コリオリ流量計であって、
前記流出入口及び前記板バネ接続位置の中間の振動節部を介して前記フォローチューブに固着する固着プレートと、前記カウンタバランス及び流量計筐体の間に位置するとともに前記固着プレート及び前記板バネを固着する筒状体と、前記固着プレートの位置で前記筒状体及び前記流量計筐体を連結する前記板バネと同方向の第二板バネとを備える
ことを特徴とする多重管構造形直管式コリオリ流量計。
【請求項2】
請求項1に記載の多重管構造形直管式コリオリ流量計において、
前記固着プレートを前記板バネの形状に合わせて形成、又は円板状に形成する
ことを特徴とする多重管構造形直管式コリオリ流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−292515(P2006−292515A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112455(P2005−112455)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【Fターム(参考)】