説明

大型デジタイザセンサ板

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、CAD等の情報入力装置に使用される電磁誘導方式のデジタイザセンサ板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般的に用いられている電磁誘導方式のデジタイザセンサ板として、従来より、図4に図示する如き構成のデジタイザセンサ板1が多用されている。図において、3はマグネットワイヤ等からなる絶縁センサ線であり、2,2は透明絶縁硬質平板、4はセンサ線の折り返し部、6,6Aはそれぞれ接着剤である。そして、このデジタイザセンサ板1は次のようにして製造されていた。
【0003】即ち、図示していないが、一枚の硬質平板2の外周囲に所定のパターンでセンサ線布線用ピンを配設し、前記線布線用ピンを介して前記硬質平板2の外周囲にセンサ線の折り返し部4を形成しながら絶縁センサ線を布線し、前記硬質平板2上にセンサ線直交布線網5を形成する。そして、接着剤6を介して前記直交布線網5を二枚の透明絶縁硬質平板2,2間に挟持固着せしめ、接着剤6の硬化後、センサ線折り返し部4をセンサ線布線用ピンから取り外し、布線用ピンから取り外したセンサ線折り返し部4を二枚の透明絶縁硬質平板2,2の端面に折り込み、接着剤6Aにより固着していた。
【0004】ところで、これらデジタイザセンサ板1の実用に際し、JIS規格等により定められたセンサ板1の大きさとしては、A0版、またはB0版の大きさが最大であった。そして、これらを超えた大きさで実用化されている量産品としてのデジタイザセンサ板はその用途が極めて少ないばかりか、入手することも極めて困難であった。
【0005】ところが近年、特に土木,建築業界において、これらのデジタイザセンサ板を用いて入力作業を行なうにあたって、入力作業時に図面全体の大きさやバランス等を考慮しながら入力作業を行ったほうが、より効率的な入力作業を行うことができるといった観点から、A0版、またはB0版を超えた大型のデジタイザセンサ板が熱望されるようになってきていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、A0版、またはB0版を超える大きさのデジタイザセンサ板を製造する場合、A0版、またはB0版よりさらに一回り大きな一枚、または二枚の硬質平板が必要で、デジタイザセンサ板が大型化するほか、センサ板重量が大きくなる難点があった。
【0007】このため、センサ板の取扱いが一人では困難になって危険性が生じる難点を有するほか、センサ板に変形が生じ易く、センサ精度に優れた大型のデジタイザセンサ板が得難くかった。また、このような大型のデジタイザセンサ板を製造するには、従来の製造設備とは別に、新しい大型の製造設備を必要とするほか、製造要員を増加させる必要があり、その結果センサ板が極めて高価になってしまう難点があった。
【0008】本発明の目的は、前述されたような難点が解消し、従来からの製造設備による製造が可能で、量産性に優れた大型で安価なデジタイザセンサ板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】四角形状の絶縁硬質平板の外周囲にセンサ線布線用ピンを所定パターンで配設し、前記センサ布線用ピンを介して前記絶縁硬質平板上のX軸方向とY軸方向それぞれに絶縁センサ線を所定パターンで、かつ前記硬質平板の外周囲にセンサ線折り返し部を形成するとともに端末リード線を前記硬質平板から導出させて布線してなる小さなセンサ線直交布線網を、前記硬質平板の周辺内、または周辺部全面に帯状に塗布した接着剤で前記硬質平板上に固着し、前記硬質平板の必要とする辺の帯状接着剤上にセンサ線接続用オスピンコネクタを接着固定するとともにセンサ線折り返し部を前記布線用ピンから取り外し、前記オスピンコネクタに対応するセンサ線折り返し部の各センサ線をオスピンコネクタに接続して小型のデジタイザセンサ板を形成せしめ、センサ線のリード線導出口およびオスピンコネクタ用開口部を具備するとともに前記小型デジタイザセンサ板を複数個平面状に収納するセンサ板収納枠に、対応する辺の端面同志を突き合わせて接着剤を塗布した複数個の小型デジタイザセンサ板を収納固着し、両端にメスピンコネクタを接続したフラットケーブルを介して対応するオスピンコネク同志を接続して形成した大きなセンサ線直交布線網を具備せしめて構成するものであり、前記大きなセンサ線直交布線網の複数箇所を接着剤によりさらに各硬質平板に固着して構成するとよい。
【0010】また、前記小型センサ板の接着剤の塗布されていないセンサ線直交布線網部分の全て、または周辺部の必要部分を除いた部分を接着剤により各硬質平板に固着するとよく、前記小型センサ板のオスピンコネクの配設されない辺に対応するセンサ線折り返し部を硬質平板の周辺部に折り返して接着剤により固定するものである。小型センサ板のオスピンコネクの配設されない辺に対応するセンサ線折り返し部を硬質平板周辺部に折り返して接着剤により固着して構成するとよい。
【0011】
【作用】大型デジタイザセンサ板が従来の製造設備により製造された複数の小型センサ板と、これら小型センサ板を平面状に収納するセンサ板収納枠により構成されるので、新しい大型の布線用治具や絶縁硬質平板が不要となり、従来から用いているセンサ板製造設備の共用化が図られるほか、センサ板収納枠によりセンサ板の変形が防止される。この結果、製造作業性に優れ、安価でセンサ精度に優れた大型デジタイザセンサ板が得られる。
【0012】
【実施例】以下、本発明を図に沿って説明する。図1は本発明による大型デジタイザセンサ板を示し、同図(a)はその構成を示す説明図、同図(b)は大型デジタイザセンサ板を構成する小型のセンサ板の構成を示す説明図であり、図2は互いに突き合わされて大型デジタイザセンサ板を構成する小型のセンサ板間における電気的接続を示す説明図で、同図(a)は小型のセンサ板のセンサ線とオスピンコネクタピンとの接続を示す説明図、同図(b)は小型のセンサ板のオスピンコネクタ間の接続を示す説明図である。図において、1はそれぞれ大型デジタイザセンサ板1Aを構成する小型のセンサ板で、これら小型センサ板1はそれぞれ次のようにして製造される。
【0013】まず、従来より用いられているセンサ線布線用治具(図示せず)上に1枚の四角形状の絶縁硬質平板2を配設し、絶縁硬質平板2の外周囲にセンサ線布線用ピン(図示せず)を所定パターンで配設する。そして、前記センサ布線用ピンを介してマグネットワイヤ等からなる極細絶縁センサ線3を前記絶縁硬質平板上のX軸方向とY軸方向それぞれに所定パターンで、かつ前記硬質平板2の外周囲にセンサ線折り返し部4を形成するとともに、センサ線リード線9を硬質平板2から導出させて布線して小さなセンサ線直交布線網5を形成する。そして、前記小さなセンサ線直交布線網5上から、前記硬質平板2の周辺内、または周辺部全面に接着剤6を帯状に塗布してセンサ線直交布線網5を硬質平板上に固着する。
【0014】接着剤6の硬化後、図示する如く、硬質平板2の所定の辺側の周辺部に帯状に塗布した接着剤6上にL字状のピン7が一体成形されたオスピンコネクタ8を接着剤6Aにより固定する。そして、各センサ線折り返し部4を前記布線用ピンから取り外すとともに、各辺がA,B,C,Dで示される硬質平板2の必要な辺側のセンサ線折り返し部4をそれぞれ切断する。切断したセンサ線折り返し部4のセンサ線3をそれぞれ1本づつ対応するオスピンコネクタ8のピン7にからげるとともに、センサ線3とピン7とをハンダ付けにより電気的に接続して小型のセンサ板1を製造する。
【0015】本発明の大型デジタイザセンサ板は必要枚数の小型センサ板1と、図3に図示する如く、センサ線のリード線9を導出するためのリード線導出口10と、オスピンコネクタ8を導出するためのコネクタ用開口部11を具備したセンサ板収納枠12を用いて次のようにして製造される。実施例においては、このようにして製造した4枚の小型センサ板1をセンサ線直交布線網5側を下側にしてそれぞれ平面状になるようセンサ板収納枠12に収納する。そして、前記4枚の小型デジタイザセンサ板1の対応する辺の端面を互いに突き合わせるとともに、接着剤を塗布してセンサ板1同志をそれぞれ固着する。
【0016】4枚の小型センサ板1のセンサ板収納枠12への収納を具体的に説明すると、1枚目の硬質平板2の辺Cの端面は2枚目の硬質平板2の辺Aの端面と、1枚目の硬質平板2の辺Dの端面は3枚目の硬質平板2の辺Bの端面と、さらに2枚目の硬質平板2の辺Dの端面は4枚目の硬質平板2の辺Bの端面と、4枚目の硬質平板2の辺Aの端面は3枚目の硬質平板2の辺Cの端面と、それぞれ所定位置に精度よく位置するよう調整して突き合わせられ、接着剤により固着されるものである。
【0017】このようにして、4枚の小型センサ板1の対応する辺の端面同志を突き合わせて固着せしめ、さらに各小型センサ板1それぞれを接着剤やネジ止めにより、センサ板収納枠12に固定する。そして、対応する小型センサ板1のオスピンコネクタ8同志を、両端にメスコネクタ13を具備したフラットケーブル14を介して電気的に接続し、4つの小さなセンサ線直交布線網5からなる大きなセンサ線直交布線網55を具備する大型デジタイザセンサ板1Aを構成する。
【0018】なお、各小型のセンサ板1のセンサ線直交布線網5の複数箇所、あるいは小型のセンサ板1の接着剤6の塗布されていないセンサ線直交布線網5部分の全て、または周辺部の必要部分を除いた部分を接着剤6により各硬質平板2に固着したり、オスピンコネクタが配設されていない辺に対応するセンサ線折り返し部4を各硬質平板2の周辺部に折り返して接着剤6により固定して大型デジタイザセンサ板1Aを構成するものである。
【0019】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明による大型デジタイザセンサ板は、一般に多用されている小型センサ板が複数個と、簡単な構造のセンサ板収納枠を用いる簡便な手段で、従来の製造設備を用いて作業性よく製造される。また、センサ板の変形がなく、高精度入力が可能な安価な大型デジタイザセンサ板が得られる。等、その実用上の効果は大きなものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による大型デジタイザセンサ板を示し、同図(a)はその構成を示す説明図、同図(b)は大型デジタイザセンサ板を構成する小型のセンサ板の構成を示す説明図である。
【図2】小型センサ板でのセンサ線の電気的接続を示し、同図(a)はセンサ線とオスピンコネクタピンの接続を示す説明図、同図(b)はオスピンコネクタ間の接続を示す説明図である。
【図3】本発明に用いられるセンサ板収納枠の構成を示す説明図である。
【図4】一般的に用いられているデジタイザセンサ板の構成を示し、同図(a)はその平面図、同図(b)はその部分断面図である。
【符号の説明】
1,1A デジタイザセンサ板
2 絶縁硬質平板
3 絶縁センサ線
4 センサ線折り返し部
5,55 センサ線直交布線網
6,6A 接着剤
7 ピン
8 オスピンコネクタ
9 センサ線のリード線
10 リード線導出口
11 コネクタ用開口部
12 センサ板収納枠
13 メスコネクタ
14 フラットケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 四角形状の絶縁硬質平板の外周囲にセンサ線布線用ピンを所定パターンで配設し、前記センサ布線用ピンを介して前記絶縁硬質平板上のX軸方向とY軸方向それぞれに絶縁センサ線を所定パターンで、かつ前記硬質平板の外周囲にセンサ線折り返し部を形成するとともに端末リード線を前記硬質平板から導出するよう布線してなる小さなセンサ線直交布線網を、前記硬質平板の周辺内、または周辺部全面に沿って帯状に塗布した接着剤で前記硬質平板上に固着し、前記硬質平板の必要とする辺の帯状接着剤上にセンサ線接続用オスピンコネクタを接着固定するとともに各センサ線折り返し部を前記布線用ピンから取り外し、前記オスピンコネクタに対応するセンサ線折り返し部の各センサ線をオスピンコネクタに接続して小型のデジタイザセンサ板を形成せしめ、センサ線のリード線導出口およびオスピンコネクタ用開口部を具備するとともに前記小型デジタイザセンサ板を複数個平面状に収納するセンサ板収納枠に、対応する辺の端面同志を突き合わせて接着剤を塗布した複数個の小型デジタイザセンサ板を収納固着し、両端にメスピンコネクタを接続したフラットケーブルを介して対応するオスピンコネク同志を接続して形成した大きなセンサ線直交布線網を具備してなることを特徴とする大型デジタイザセンサ板。
【請求項2】 前記小型センサ板の小さなセンサ線直交布線網の複数箇所を接着剤によりさらに硬質平板に固着したことを特徴とする請求項1記載の大型デジタイザセンサ板。
【請求項3】 前記小型センサ板の接着剤の塗布されていない小さなセンサ線直交布線網部分の全て、または周辺部の必要部分を除いた部分を接着剤により硬質平板に固着せしめてなることを特徴とする請求項1または2記載の大型デジタイザセンサ板。
【請求項4】 前記小型センサ板のオスピンコネクの配設されない辺に対応するセンサ線折り返し部を硬質平板周辺部に折り返して接着剤により固定したことを特徴とする請求項1,2または3記載の大型デジタイザセンサ板。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【特許番号】特許第3081443号(P3081443)
【登録日】平成12年6月23日(2000.6.23)
【発行日】平成12年8月28日(2000.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−83958
【出願日】平成6年3月29日(1994.3.29)
【公開番号】特開平7−271499
【公開日】平成7年10月20日(1995.10.20)
【審査請求日】平成9年3月12日(1997.3.12)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【参考文献】
【文献】実開 平4−104339(JP,U)
【文献】実開 平3−78326(JP,U)
【文献】実開 平3−86440(JP,U)
【文献】実開 平3−100936(JP,U)