大脳高次機能診断装置
【課題】大脳高次機能障害を早期に発見し、適切な処置やリハビリテーションを行うためには、大脳高次機能を客観的、かつ、数値として定量的に診断することが求められている。しかし、CTやMRIといった解剖学的形態精密診断では、診断結果を数値として定量的に表すこと困難であり、また、テスト形式の検査では、検者の主観と経験に負うところが多く客観的とは言えないという課題がある。
【解決手段】本発明は、上記課題を鑑み、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置を提供する。
【解決手段】本発明は、上記課題を鑑み、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させることにより、被診断者の立体把握能力を定量的に測定する大脳高次機能診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大脳高次機能とは、例えば、言語の理解、物体の認識、記憶の保持などを行う脳の働きである。この脳の働きが、脳血管障害(脳卒中)、外傷、アルツハイマー病などの認知症の発症等に起因して支障を来すことを、大脳高次機能障害という。具体的な症状としては、例えば、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、状況判断力の低下、情緒面の障害が挙げられる。このような脳の障害を検査、診断するために、コンピュータ断層スキャン(CT)や、特許文献1に開示されているような磁気共鳴イメージング(MRI)などの解剖学的形態精密診断技術が存在する。また、別の手法として、被診断者に何らかのテストを行わせ、その結果を評価する方法が存在する。例えば、特許文献2にある検査方法や、非特許文献1にある描画を用いる検査方法や、非特許文献2にある評価方法や、ミニメンタルステート検査法などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−283313号公報
【特許文献2】特開2003−230551号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Piercy M.,Hecaen H.,&Ajuriaguerra de J.(1960) Constructional apraxia associated with unilateral cerebral lesion,left and right sided cases compared. Brain,83,225−242.
【非特許文献2】加藤伸司、下垣光、小野寺敦志ら、(1991)改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDR−R)の作成、老年精神医学雑誌、2:1339−47.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1をはじめとする解剖学的形態診断においては、脳の損傷が軽度な場合や、アルツハイマー病などの発症初期段階では、必ずしも正確な診断が行えるわけではなく、また、診断結果を数値として定量的に表すことも困難である。さらに、患者における肉体的及び経済的負担も少なくない。また、特許文献2をはじめとするテスト形式の検査手法は、大脳高次機能をある程度反映しており、数値で定量的に表現できるが、検者の主観や経験が大きく反映され客観性に欠ける場合がある。
【0006】
また、大脳高次機能障害のうち失行症や失認症は、外見からは分かりにくく、また、本人に自覚のない場合が多い。治療やリハビリテーションのためには、早期に発見し必要に応じてCTやMRIなどを用いた更なる処置を講ずることが必要である。そのためには、患者に負担を与えず簡易に、客観的かつ定量的な診断が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の診断装置を提供する。すなわち、第一の発明として、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、原図と、模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する原図相関係数演算部を有する診断装置を提供する。
【0008】
第二の発明として、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度回転相関係数を演算する180度回転相関係数演算部を有する診断装置を提供する。
【0009】
第三の発明として、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右半分回転相関係数を演算する180度右半分回転相関係数演算部を有する診断装置を提供する。
【0010】
第四の発明として、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度下半分回転相関係数を演算する180度下半分回転相関係数演算部を有する診断装置を提供する。
【0011】
第五の発明として、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図の左上四分の一と、模写線図の右下四分の一を180度回転した右下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右下四分の一回転相関係数を演算する180度右下四分の一回転相関係数演算部を有する診断装置を提供する。
【0012】
第六の発明として、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図の右上四分の一と、模写線図の左下四分の一を180度回転した左下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度左下四分の一回転相関係数を演算する180度左下四分の一回転相関係数演算部を有する診断装置を提供する。
【0013】
第七の発明として、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、原図と、模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する原図相関係数演算部と、模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度回転相関係数を演算する180度回転相関係数演算部と、模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右半分回転相関係数を演算する180度右半分回転相関係数演算部と、模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度下半分回転相関係数を演算する180度下半分回転相関係数演算部と、模写線図の左上四分の一と、模写線図の右下四分の一を180度回転した右下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右下四分の一回転相関係数を演算する180度右下四分の一回転相関係数演算部と、模写線図の右上四分の一と、模写線図の左下四分の一を180度回転した左下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度左下四分の一回転相関係数を演算する180度左下四分の一回転相関係数演算部と、前記各演算部での演算結果を利用して診断結果を出力する総合診断結果出力部と有する診断装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、患者に負担を与えず簡易に、大脳高次機能障害の診断を、客観的かつ定量的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】原図を模写する際の概念図
【図2】実施形態1に係る診断装置の構成の一例を示す機能ブロック図
【図3】原図と模写線図との相関係数を演算する要領を表す概念図
【図4】実施形態1における診断結果の一例を示す図
【図5】実施形態1に係る診断装置のハードウェア構成の一例を示す概略図
【図6】実施形態1に係る診断装置の処理の流れの一例を示すフロー図
【図7】実施形態2に係る診断装置の構成の一例を示す機能ブロック図
【図8】模写線図と回転模写線図を示す図
【図9】実施形態2における診断結果の一例を示す図
【図10】実施形態2に係る診断装置の処理の流れの一例を示すフロー図
【図11】実施形態3に係る診断装置の構成の一例を示す機能ブロック図
【図12】模写線図の左半分と右半分回転模写線図を示す図
【図13】実施形態3における診断結果の一例を示す図
【図14】実施形態3に係る診断装置の処理の流れの一例を示すフロー図
【図15】実施形態4に係る診断装置の構成の一例を示す機能ブロック図
【図16】模写線図の上半分と下半分回転模写線図を示す図
【図17】実施形態4における診断結果の一例を示す図
【図18】実施形態4に係る診断装置の処理の流れの一例を示すフロー図
【図19】実施形態5に係る診断装置の構成の一例を示す機能ブロック図
【図20】模写線図の左上四分の一と右下四分の一回転模写線図を示す図
【図21】実施形態5における診断結果の一例を示す図
【図22】実施形態5に係る診断装置の処理の流れの一例を示すフロー図
【図23】実施形態6に係る診断装置の構成の一例を示す機能ブロック図
【図24】実施形態6における診断結果の一例を示す図
【図25】実施形態6におけるグラフ化した診断結果の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。なお、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0017】
実施形態1は、主に請求項1などに関する。実施形態2は、主に請求項2などに関する。実施形態3は、主に請求項3などに関する。実施形態4は、主に請求項4などに関する。実施形態5は、主に請求項5、6などに関する。実施形態6は、主に請求項7などに関する。
<実施形態1>
<実施形態1 概要>
【0018】
本実施形態の概要を、図1を用いて説明する。図1は、被診断者に原図を模写させる際の概念図である。「診断用紙」(0101)は、「デジタイザ」(0102)に載せられ、「原図」(0103)である立方体透視斜視線図を見本として、被診断者に模写させる。被診断者が模写した「模写線図」(0104)の二次元座標データをデジタイザなどの座標読取装置により取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を、相関係数を用いて数値化することにより被診断者の立体把握能力を測定する診断装置である。
<実施形態1 構成>
【0019】
図2は、本実施形態に係る構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態の「診断装置」(0200)は、「原図相関係数演算部」(0201)を有する。本診断装置は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するものであり、原図相関係数演算部は、原図と、模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する。
【0020】
ここで、本診断装置の機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアおよびソフトウェアの両方として実現され得る。具体的には、コンピュータを利用するものであれば、CPUやRAM、バス、あるいは二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ、CD−ROMやDVD−ROMなどの記憶メディアとそれらメディアの読取ドライブなど)、印刷機器や表示装置、その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部やその他の外部周辺機器用のI/Oポート、それらハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラム、情報入力に利用されるユーザインターフェイスなどが挙げられる。
【0021】
また、これらハードウェアやソフトウェアは、RAM上に展開したプログラムをCPUで演算処理したり、メモリやハードディスク上に保持されているデータや、インターフェイスを介して入力されたデータなどを加工、蓄積、出力処理したり、あるいは各ハードウェア構成部の制御を行ったりするために利用される。また、この発明は装置として実現できるのみでなく、方法としても実現可能である。また、このような発明の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに、そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるソフトウェア製品、および同製品を記憶媒体に固定した記憶媒体も、当然にこの発明の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である)。
【0022】
「診断装置」(0200)は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定する。なお、本発明は、大脳高次機能障害の検査において従来から行われている手法を参考にしている。例えば、被診断者に、図形の模写や、積み木やパズルをさせる検査手法などである。立体把握能力に障害を持つ者は、模写や積み木などをうまく行うことができない場合が多い。
【0023】
被診断者が模写する原図には、「立方体透視斜視線図」を用いる。立方体透視斜視線図は対称性を有する図形であり模写の原図として好適である。立方体であることを把握することができれば、模写線図においても対称性は維持される。しかし、構成失行などの大脳高次機能障害を持つ者の場合には、対称性は損なわれてしまう場合が多い。
【0024】
模写線図の二次元座標データの取得に関して図1を用いて説明する。「模写線図」は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写したものである。図1において、「原図」(0101)は、デジタイザ(0102)の上に載置された「診断用紙」(0103)に描かれており、被診断者は、その立方体透視斜視線図を原図として、破線で閉じられた領域に模写する。そこで模写されるものが、「模写線図」(0104)である。二次元座標データの取得は、デジタイザのほかペンタブレットなどでもよい。また、デジタイザにはディスプレイを備えるものもあるが、その場合には、診断用紙にかえて、原図を表示して、これをディスプレイ上に模写させてもよい。また、模写に用いるペンについても電磁誘導式や光学式など種々存在するが、二次元座標データを取得し得るものであればよい。
【0025】
「原図相関係数演算部」(0201)は、原図と、模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する機能を有する。模写線図が原図に類似するものであれば、相関係数は高い値になり、被診断者が、原図が立方体であることを把握できていることが推認できる。一方、いずれかの線が欠如していたり、各線が適切に接していない場合には、相関係数は低い値となり、被診断者が、原図が立方体であることを把握できていないことが推認できる。このように原図と模写線図との相関係数を求めることにより、被診断者の立体把握能力を数値として表すことができ、大脳高次機能障害を、客観的、かつ、定量的に診断することが可能となる。
【0026】
図3は、「原図」(0301)と「模写線図」(0302)を示したものである。この両者の相関係数を演算するための処理の一例を説明する。図形の特徴抽出などを行いやすくするために模写線図を二値化する。原図はあらかじめ二値化したテンプレートとして記憶されており、その輪郭のサイズが、例えば、縦500画素、横500画素であるとすると、両者の適正な相関を求めるためには、模写線図の輪郭も原画と同じサイズであることが望ましい。したがって、模写線図に対しては、例えば、模写線図の図形の骨格線を抽出する細線化処理や、エッジ強調処理などを行ったうえで、模写線図の輪郭のサイズを原図のサイズと同等になるように拡大、縮小を行う。そして、原図と模写線図のそれぞれの重心を求め、これを基準座標として重ね合わせて両者の相関係数を演算する。この場合、模写線図の傾きを検出して、重心を中心として傾きの補正をしたうえで演算してもよい。なお、原図と模写線図との相関係数の演算は、他の既知の技術によっても可能である。また、原図相関係数演算部は、原図と模写線図との相関係数を演算するための処理をCPUに実行させるためのプログラムを含んでいてもよい。
【0027】
図4は、本実施形態の診断装置を用いた診断結果の一例である。健常例では、6つの面から構成される立方体の構造が意識されて描かれていることが見て取れ、角部においても各線が的確に接している。しかし、症例においては、模写原図における立体構造が破綻している。演算結果も、健常例が、0.40、0.25であるのに対して、症例では、−0.14、−0.09、0.14と低い値となっている。このように、立体把握能力の測定結果を数値として得ることができるため、診断者においても自己の測定結果を保持することができ、以後の治療やリハビリテーション等に役立てることができる。また、治療等の進行とともに改めて測定することにより、症状の経過を確認することもできる。さらに、診断装置にHDDなどの記憶装置を備えることにより、測定結果を蓄積でき、以後の診断に活用することができる。
<実施形態1 ハードウェア構成>
【0028】
図5は、本実施形態の診断装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例を表す図である。図5に示すように、本実施形態の診断装置は、「原図相関係数部部」などを構成する、「CPU」(0501)、「メインメモリ」(0502)、「記憶装置」(0503)、「I/O」(0504)、「デジタイザ」(0505)、「表示装置」(0506)、「バス」(0507)などを備えている。
【0029】
メインメモリは、プログラム実行中に動的にデータ書換可能な記憶装置である。メインメモリは記憶装置に記憶されている原図相関係数演算プログラムや二値化プログラムなどを実行するために必要なスタックやヒープ等のワーク領域を提供する。そして、原図相関係数演算プログラムや二値化プログラムなどの命令により計算された計算結果などを保持する。記憶装置はプログラム実行中に動的にデータ書換可能な記憶装置であり、装置の電源が切れても、記憶しているデータが消去されない。記憶装置は、原図座標データや模写線図座標データや測定結果や上記プログラムなどが記憶されている。CPUは、デジタイザにて取得され記憶装置に記憶される模写線図座標データをメインメモリの所定領域に格納する。そして、メインメモリに展開した二値化プログラムを実行し、二値化した模写線図座標データを生成し、これをいったん保持する。そして、原図相関係数演算プログラムを実行し、原図と模写線図との相関係数を求める演算処理を行う。演算結果は、測定値としてディスプレイに出力する。
<実施形態1 処理の流れ>
【0030】
図6は、本実施形態に係る診断装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。処理の流れは、まず、被診断者が原図となる立方体透視斜視線図を見て模写した模写線図の二次元座標データを取得する。(模写線図二次元座標データ取得ステップ S0601)。次に、取得した模写線図の二次元座標データに基づき、原図と模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する。この処理は原図相関係数演算部によって実行される(原図相関係数演算 S0602)。
<実施形態1 効果>
【0031】
本実施形態の診断装置により、被診断者の立体把握能力を数値として測定することにより、大脳高次機能障害を客観的、かつ、定量的に診断することが可能となる。
<実施形態2>
<実施形態2 概要>
【0032】
本実施形態は、実施形態1と同様に原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図との対称性を数値化することを特徴とするものである。
<実施形態2 構成>
【0033】
図7は、本実施形態に係る構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態の「診断装置」(0700)は、「180度回転相関係数演算部」(0701)を有する。本診断装置は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するものであり、180度回転相関係数演算部は、模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である180度回転相関係数を演算する。本実施形態の診断装置は、基本的に実施形態1の診断装置と同様であるため、本実施形態の特徴である「180度回転相関係数演算部」以外の説明は省略する。
【0034】
「180度回転相関係数演算部」(0701)は、模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する。立方体透視斜視線図は、点対称な図形なので、180度回転させた図形を重ね合わせれば一致する。したがって、立方体透視斜視線図を原図として模写した場合、正確に模写すれば模写線図とこれを180度回転した回転模写線図とは一致する。しかし、立体把握能力に障害がある場合には、模写線図は対称性が損なわれていることが多い。そこで、模写線図と回転模写線図とを重ねた場合の相関係数を演算する。
【0035】
図8に、「模写線図」(0801)と、「回転模写線図」(0802)とを示す。この両者の二次元座標データを用いて、実施形態1における原図相関係数演算部での処理と同様に、両図を重ねた場合の相関係数を演算する。
【0036】
図9に、本実施形態の診断装置を用いた診断結果の一例を示す。健常例では、0.40、0.61であるのに対して、症例では、0.15、−0.08、0.31と低い値となっている。このように模写線図の点対称性を相関係数により数値化することにより被診断者の立体把握能力を測定することができる。
【0037】
なお、本実施形態に係る診断装置の構成に、さらに、実施形態1の「原図相関係数演算部」を含ませてもよい。これにより、複数の測定値により複合的な診断ができる。
<実施形態2 ハードウェア構成>
【0038】
本実施形態の診断装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例としては、実施形態1にて図5を利用して説明した構成において、180度回転相関係数を演算するための180度回転相関係数演算プログラムを、原図相関係数演算プログラムに換えて、あるいは、これとともに所定の記憶領域に記憶しておくことを加えた構成などが挙げられる。
<実施形態2 処理の流れ>
【0039】
図10は、本実施形態に係る診断装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。処理の流れは、まず、被診断者が原図となる立方体透視斜視線図を見て模写した模写線図の二次元座標データを取得する。(模写線図二次元座標データ取得ステップ S1001)。次に、取得した模写線図の二次元座標データに基づき、模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度回転相関係数を演算する。この処理は180度回転相関係数演算部によって実行される(180度回転相関係数演算ステップ S1002)。
<実施形態2 効果>
【0040】
本実施形態の診断装置により、模写線図の対称性を数値化することにより被診断者の立体把握能力を、客観的、かつ、定量的に診断することが可能となる。
<実施形態3>
<実施形態3 概要>
【0041】
本実施形態は、実施形態1、2と同様に原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図との対称性を数値化することを特徴とするものである。
<実施形態3 構成>
【0042】
図11は、本実施形態に係る構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態の「診断装置」(1100)は、「180度右半分回転相関係数演算部」(1101)を有する。本診断装置は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するものであり、180度右半分回転相関係数演算部は、模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右半分回転相関係数を演算する。本実施形態の診断装置は、基本的に実施形態1の診断装置と同様であるため、本実施形態の特徴である「180度右半分回転相関係数演算部」以外の説明は省略する。
【0043】
「180度右半分回転相関係数演算部」(1101)は、模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右半分回転相関係数を演算する。立方体模写線図は左右対称の図形である。そこで、模写線図の右半分を180度回転させたものと、模写線図の左半分との対称性を、相関係数で数値化することにより、被診断者の立体把握能力を測定することができる。また、模写線図の左右の対称性が損なわれている場合には、被診断者において、構成失行とともに半側空間失認や半側身体失認などを伴っていることもあり、多面的な診断を行うことができる。なお、模写線図の右半分と、模写線図の左半分を180度回転させたものとの相関係数を演算する場合であっても、本実施形態における診断装置の目的および効果が同様であることは言うまでもない。
【0044】
図12に、「模写線図の左半分」(1201)と、「右半分回転模写線図」(1202)を示す。右半分回転模写線図は、「模写線図の右側」(1203)を180度回転したものである。図示した模写線図の左半分と右半分回転模写線図の二次元座標データを用いて、実施形態1における原図相関係数演算部での処理と同様に、両図を重ねた場合の相関係数を演算する。
【0045】
図13に、本実施形態の診断装置を用いた診断結果の一例を示す。健常例では、0.53、0.61であるのに対して、症例では、0.24、0.17、0.31と低い値となっている。このように模写線図の左右の対称性を相関係数により数値化することにより被診断者の立体把握能力を測定することができる。
【0046】
なお、本実施形態に係る診断装置の構成に、さらに、実施形態1の「原図相関係数演算部」及び/又は実施形態2の「180度回転相関係数演算部」を含ませてもよい。これにより、複数の測定値により複合的な診断ができる。
<実施形態3 ハードウェア構成>
【0047】
本実施形態の診断装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例としては、実施形態1にて図5を利用して説明した構成において、180度右半分回転相関係数を演算するための180度右半分回転相関係数演算プログラムを、原図相関係数演算プログラムに換えて、あるいは、これとともに所定の記憶領域に記憶しておくことを加えた構成などが挙げられる。
<実施形態3 処理の流れ>
【0048】
図14は、本実施形態に係る診断装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。処理の流れは、まず、被診断者が原図となる立方体透視斜視線図を見て模写した模写線図の二次元座標データを取得する。(模写線図二次元座標データ取得ステップ S1401)。次に、取得した模写線図の二次元座標データに基づき、模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右半分回転相関係数を演算する。この処理は180度右半分回転相関係数演算部によって実行される(180度右半分回転相関係数演算ステップ S1402)。
<実施形態3 効果>
【0049】
本実施形態の診断装置により、模写線図の左右の対称性を数値化することにより被診断者の立体把握能力を、客観的、かつ、定量的に診断することが可能となる。
<実施形態4>
<実施形態4 概要>
【0050】
本実施形態は、実施形態1から3と同様に原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図との対称性を数値化することを特徴とするものである。
<実施形態4 構成>
【0051】
図15は、本実施形態に係る構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態の「診断装置」(1500)は、「180度下半分回転相関係数演算部」(1501)を有する。本診断装置は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するものであり、180度下半分回転相関係数演算部は、模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度下半分回転相関係数を演算する。本実施形態の診断装置は、基本的に実施形態1の診断装置と同様であるため、本実施形態の特徴である「180度下半分回転相関係数演算部」以外の説明は省略する。
【0052】
「180度下半分回転相関係数演算部」(1501)は、模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度下半分回転相関係数を演算する。立方体模写線図は上下対称の図形である。そこで、模写線図の下半分を180度回転させたものと、模写線図の上半分との対称性を、相関係数で数値化することにより、被診断者の立体把握能力を測定することができる。なお、模写線図の下半分と、模写線図の上半分を180度回転させたものとの相関係数を演算する場合であっても、本実施形態における診断装置の目的および効果が同様であることは言うまでもない。
【0053】
図16に、「模写線図の上半分」(1601)と、「下半分回転模写線図」(1602)を示す。下半分回転模写線図は、「模写線図の下側」(1603)を180度回転したものである。図示した模写線図の上半分と下半分回転模写線図の二次元座標データを用いて、実施形態1における原図相関係数演算部での処理と同様に、両図の相関係数を演算する。
【0054】
図17に、本実施形態の診断装置を用いた診断結果の一例を示す。健常例では、0.42、0.62であるのに対して、症例では、0.16、−0.05、0.33と低い値となっている。このように模写線図の上下の対称性を相関係数により数値化することにより被診断者の立体把握能力を測定することができる。
【0055】
なお、本実施形態に係る診断装置の構成に、さらに、実施形態1の「原図相関係数演算部」及び/又は実施形態2の「180度回転相関係数演算部」及び/又は実施形態3の「180度右半分回転相関係数演算部」を含ませてもよい。これにより、複数の測定値により複合的な診断ができる。
<実施形態4 ハードウェア構成>
【0056】
本実施形態の診断装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例としては、実施形態1にて図5を利用して説明した構成において、180度下半分回転相関係数を演算するための180度下半分回転相関係数演算プログラムを、原図相関係数演算プログラムに換えて、あるいは、これとともに所定の記憶領域に記憶しておくことを加えた構成などが挙げられる。
<実施形態4 処理の流れ>
【0057】
図18は、本実施形態に係る診断装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。処理の流れは、まず、被診断者が原図となる立方体透視斜視線図を見て模写した模写線図の二次元座標データを取得する。(模写線図二次元座標データ取得ステップ S1801)。次に、取得した模写線図の二次元座標データに基づき、模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度下半分回転相関係数を演算する。この処理は180度下半分回転相関係数演算部によって実行される(180度下半分回転相関係数演算ステップ S1802)。
<実施形態4 効果>
【0058】
本実施形態の診断装置により、模写線図の上下の対称性を数値化することにより被診断者の立体把握能力を、客観的、かつ、定量的に診断することが可能となる。
<実施形態5>
<実施形態5 概要>
【0059】
本実施形態は、実施形態1から4と同様に原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図の左上四分の一と、模写線図の右下四分の一を180度回転した右下四分の一回転模写線図との対称性、及び/又は、模写線図の右上四分の一と、模写線図の左下四分の一を180度回転した左下四分の一回転模写線図との対称性を数値化することを特徴とするものである。
<実施形態5 構成>
【0060】
図19は、本実施形態に係る構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態の「診断装置」(1900)は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するものであって、「180度右下四分の一回転相関係数演算部」(1901)と、「180度左下四分の一回転相関係数演算部」(1902)とを有する。本実施形態の診断装置は、基本的に実施形態1の診断装置と同様であるため、本実施形態の特徴である「180度右下四分の一回転相関係数演算部」と「180度左下四分の一回転相関係数演算部」以外の説明は省略する。
【0061】
「180度右下四分の一回転相関係数演算部」(1901)は、模写線図の左上四分の一と、模写線図の右下四分の一を180度回転した右下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右下四分の一回転相関係数を演算する。立方体模写線図は点対称の図形である。そこで、模写線図の右下四分の一を180度回転させたものと、模写線図の左上四分の一との対称性を、相関係数で数値化することにより、被診断者の立体把握能力を測定することができる。なお、模写線図の右下四分の一分と、模写線図の左上四分の一を180度回転させたものとの相関係数を演算する場合であっても、本実施形態における診断装置の目的および効果が同様であることは言うまでもない。
【0062】
図20に、「模写線図の左上四分の一」(2001)と、「右下四分の一回転模写線図」(1602)を示す。右下四分の一回転模写線図は、「模写線図の右下四分の一」(1603)を180度回転したものである。図示した模写線図の左上四分の一と右下四分の一回転模写線図の二次元座標データを用いて、実施形態1における原図相関係数演算部での処理と同様に、両図の相関係数を演算する。
【0063】
「180度左下四分の一回転相関係数演算部」(1902)は、模写線図の右上四分の一と、模写線図の左下四分の一を180度回転した左下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度左下四分の一回転相関係数を演算する。なお、「180度左下四分の一回転相関係数演算部」は、上述の「180度右下四分の一回転相関係数演算部」と同様の機能を備えるものであるため、説明を省略する。
【0064】
図21に、本実施形態の診断装置を用いた診断結果の一例を示す。180度右下四分の一回転相関係数は、健常例では、0.64、0.63であるのに対して、症例では、0.33、0.57、0.29と低い値なっており、また、180度左下四分の一回転相関係数についても、健常例では、0.53、0.59であるのに対して、症例では、0.07、−0.19、0.36と低い値となっている。このように模写線図の上下の対称性を相関係数により数値化することにより被診断者の立体把握能力を測定することができる。
【0065】
なお、本実施形態に係る診断装置の構成に、さらに、実施形態1の「原図相関係数演算部」及び/又は実施形態2の「180度回転相関係数演算部」及び/又は実施形態3の「180度右半分回転相関係数演算部」及び/又は実施形態4の「180度下半分回転相関係数演算部」を含ませてもよい。これにより、複数の測定値により複合的な診断ができる。
<実施形態5 ハードウェア構成>
【0066】
本実施形態の診断装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例としては、実施形態1にて図5を利用して説明した構成において、180度右下四分の一回転相関係数を演算するための180度右下四分の一回転相関係数演算プログラム及び180度左下四分の一回転相関係数を演算するための180度左下四分の一回転相関係数演算プログラムを、原図相関係数演算プログラムに換えて、あるいは、これとともに所定の記憶領域に記憶しておくことを加えた構成などが挙げられる。
<実施形態5 処理の流れ>
【0067】
図22は、本実施形態に係る診断装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。ここでは、180度右下四分の一回転相関係数演算部を有する診断装置における処理の流れを説明する。処理の流れは、まず、被診断者が原図となる立方体透視斜視線図を見て模写した模写線図の二次元座標データを取得する。(模写線図二次元座標データ取得ステップ S2201)。次に、取得した模写線図の二次元座標データに基づき、模写線図の左上四分の一と、模写線図の右上四分の一を180度回転した右下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右下四分の一回転相関係数を演算する。この処理は180度右下四分の一回転相関係数演算部によって実行される(180度右下四分の一回転相関係数演算ステップ S2202)。
<実施形態5 効果>
【0068】
本実施形態の診断装置により、模写線図の対称性を数値化することにより被診断者の立体把握能力を、客観的、かつ、定量的に診断することが可能となる。
<実施形態6>
<実施形態6 概要>
【0069】
本実施形態は、実施形態1から5と同様に原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、実施形態1から5における各演算部での演算結果を利用して診断結果を出力することを特徴とするものである。
<実施形態6 構成>
【0070】
図23は、本実施形態に係る構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態の「診断装置」(2300)は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するものであって、「原図相関係数演算部」(2301)と、「180度回転相関係数演算部」(2302)と、「180度右半分回転相関係数演算部」(2303)と、「180度下半分回転相関係数演算部」(2304)と、「180度右下四分の一回転相関係数演算部」(2305)と、「180度左下四分の一回転相関係数演算部」(2306)と、「総合診断結果出力部」(2307)とを有する。本実施形態における各演算部は、実施形態1から5におけるそれぞれの演算部と同様であるので説明を省略する。
【0071】
「総合診断結果出力部」(2307)は、原図相関係数演算部と、180度回転相関係数演算部と、180度右半分回転相関係数演算部と、180度下半分回転相関係数演算部と、180度右下四分の一回転相関係数演算部と、180度左下四分の一回転相関係数演算部の各演算部での演算結果を利用して診断結果を出力する。出力する演算結果としては、例えば、各演算部での演算結果を一連のデータ列として出力したり、グラフ化して出力してもよい。
【0072】
図24は、上記各演算部での演算結果を、それぞれ「相関1」から「相関6」として被診断者ごとの診断結果を示したものである。演算結果をデータ列として出力する場合には、例えば、症例1の被診断者の演算結果は、(−0.14,0.15,0.24,0.16,0.33,0.07)というデータ列で表すことができる。また、図25は、図24で示した各診断者の演算結果をグラフ化したものである。破線で示したグラフは健常例の2例についてのものであり、実線で示したグラフは症例の3例についてのものである。なお、各演算部での演算結果のすべてを必ずしも利用しなければならないわけではなく、いずれかの演算結果を選択して出力してもよい。
【0073】
このように各演算部での演算結果を、データ列やグラフ化して出力することにより、立体把握能力を総合的に診断することができる。また、診断結果を記録、蓄積等することにより、以後の診断にも活用することができる。さらに、被診断者においては、自己の数値化された客観的な診断結果を保持することができ、以後の治療やリハビリテーションなどに活用することができる。
<実施形態6 ハードウェア構成>
【0074】
本実施形態係る診断装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現する構成については、実施形態1から5に準じて実現できる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
<実施形態6 処理の流れ>
【0075】
本実施形態の処理の流れは、実施形態1から5における処理の流れにより演算された演算結果を出力するものである。各演算における処理の流れについては説明済みであるため、ここでの説明は省略する。
<実施形態6 効果>
【0076】
本実施形態の診断装置により、各演算部での演算結果を利用した総合的な診断結果を示すことが可能となる。
【符号の説明】
【0077】
0101 デジタイザ
0102 診断用紙
0103 原図
0104 模写線図
【技術分野】
【0001】
本発明は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させることにより、被診断者の立体把握能力を定量的に測定する大脳高次機能診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大脳高次機能とは、例えば、言語の理解、物体の認識、記憶の保持などを行う脳の働きである。この脳の働きが、脳血管障害(脳卒中)、外傷、アルツハイマー病などの認知症の発症等に起因して支障を来すことを、大脳高次機能障害という。具体的な症状としては、例えば、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、状況判断力の低下、情緒面の障害が挙げられる。このような脳の障害を検査、診断するために、コンピュータ断層スキャン(CT)や、特許文献1に開示されているような磁気共鳴イメージング(MRI)などの解剖学的形態精密診断技術が存在する。また、別の手法として、被診断者に何らかのテストを行わせ、その結果を評価する方法が存在する。例えば、特許文献2にある検査方法や、非特許文献1にある描画を用いる検査方法や、非特許文献2にある評価方法や、ミニメンタルステート検査法などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−283313号公報
【特許文献2】特開2003−230551号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Piercy M.,Hecaen H.,&Ajuriaguerra de J.(1960) Constructional apraxia associated with unilateral cerebral lesion,left and right sided cases compared. Brain,83,225−242.
【非特許文献2】加藤伸司、下垣光、小野寺敦志ら、(1991)改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDR−R)の作成、老年精神医学雑誌、2:1339−47.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1をはじめとする解剖学的形態診断においては、脳の損傷が軽度な場合や、アルツハイマー病などの発症初期段階では、必ずしも正確な診断が行えるわけではなく、また、診断結果を数値として定量的に表すことも困難である。さらに、患者における肉体的及び経済的負担も少なくない。また、特許文献2をはじめとするテスト形式の検査手法は、大脳高次機能をある程度反映しており、数値で定量的に表現できるが、検者の主観や経験が大きく反映され客観性に欠ける場合がある。
【0006】
また、大脳高次機能障害のうち失行症や失認症は、外見からは分かりにくく、また、本人に自覚のない場合が多い。治療やリハビリテーションのためには、早期に発見し必要に応じてCTやMRIなどを用いた更なる処置を講ずることが必要である。そのためには、患者に負担を与えず簡易に、客観的かつ定量的な診断が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の診断装置を提供する。すなわち、第一の発明として、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、原図と、模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する原図相関係数演算部を有する診断装置を提供する。
【0008】
第二の発明として、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度回転相関係数を演算する180度回転相関係数演算部を有する診断装置を提供する。
【0009】
第三の発明として、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右半分回転相関係数を演算する180度右半分回転相関係数演算部を有する診断装置を提供する。
【0010】
第四の発明として、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度下半分回転相関係数を演算する180度下半分回転相関係数演算部を有する診断装置を提供する。
【0011】
第五の発明として、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図の左上四分の一と、模写線図の右下四分の一を180度回転した右下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右下四分の一回転相関係数を演算する180度右下四分の一回転相関係数演算部を有する診断装置を提供する。
【0012】
第六の発明として、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図の右上四分の一と、模写線図の左下四分の一を180度回転した左下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度左下四分の一回転相関係数を演算する180度左下四分の一回転相関係数演算部を有する診断装置を提供する。
【0013】
第七の発明として、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、原図と、模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する原図相関係数演算部と、模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度回転相関係数を演算する180度回転相関係数演算部と、模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右半分回転相関係数を演算する180度右半分回転相関係数演算部と、模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度下半分回転相関係数を演算する180度下半分回転相関係数演算部と、模写線図の左上四分の一と、模写線図の右下四分の一を180度回転した右下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右下四分の一回転相関係数を演算する180度右下四分の一回転相関係数演算部と、模写線図の右上四分の一と、模写線図の左下四分の一を180度回転した左下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度左下四分の一回転相関係数を演算する180度左下四分の一回転相関係数演算部と、前記各演算部での演算結果を利用して診断結果を出力する総合診断結果出力部と有する診断装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、患者に負担を与えず簡易に、大脳高次機能障害の診断を、客観的かつ定量的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】原図を模写する際の概念図
【図2】実施形態1に係る診断装置の構成の一例を示す機能ブロック図
【図3】原図と模写線図との相関係数を演算する要領を表す概念図
【図4】実施形態1における診断結果の一例を示す図
【図5】実施形態1に係る診断装置のハードウェア構成の一例を示す概略図
【図6】実施形態1に係る診断装置の処理の流れの一例を示すフロー図
【図7】実施形態2に係る診断装置の構成の一例を示す機能ブロック図
【図8】模写線図と回転模写線図を示す図
【図9】実施形態2における診断結果の一例を示す図
【図10】実施形態2に係る診断装置の処理の流れの一例を示すフロー図
【図11】実施形態3に係る診断装置の構成の一例を示す機能ブロック図
【図12】模写線図の左半分と右半分回転模写線図を示す図
【図13】実施形態3における診断結果の一例を示す図
【図14】実施形態3に係る診断装置の処理の流れの一例を示すフロー図
【図15】実施形態4に係る診断装置の構成の一例を示す機能ブロック図
【図16】模写線図の上半分と下半分回転模写線図を示す図
【図17】実施形態4における診断結果の一例を示す図
【図18】実施形態4に係る診断装置の処理の流れの一例を示すフロー図
【図19】実施形態5に係る診断装置の構成の一例を示す機能ブロック図
【図20】模写線図の左上四分の一と右下四分の一回転模写線図を示す図
【図21】実施形態5における診断結果の一例を示す図
【図22】実施形態5に係る診断装置の処理の流れの一例を示すフロー図
【図23】実施形態6に係る診断装置の構成の一例を示す機能ブロック図
【図24】実施形態6における診断結果の一例を示す図
【図25】実施形態6におけるグラフ化した診断結果の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。なお、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0017】
実施形態1は、主に請求項1などに関する。実施形態2は、主に請求項2などに関する。実施形態3は、主に請求項3などに関する。実施形態4は、主に請求項4などに関する。実施形態5は、主に請求項5、6などに関する。実施形態6は、主に請求項7などに関する。
<実施形態1>
<実施形態1 概要>
【0018】
本実施形態の概要を、図1を用いて説明する。図1は、被診断者に原図を模写させる際の概念図である。「診断用紙」(0101)は、「デジタイザ」(0102)に載せられ、「原図」(0103)である立方体透視斜視線図を見本として、被診断者に模写させる。被診断者が模写した「模写線図」(0104)の二次元座標データをデジタイザなどの座標読取装置により取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を、相関係数を用いて数値化することにより被診断者の立体把握能力を測定する診断装置である。
<実施形態1 構成>
【0019】
図2は、本実施形態に係る構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態の「診断装置」(0200)は、「原図相関係数演算部」(0201)を有する。本診断装置は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するものであり、原図相関係数演算部は、原図と、模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する。
【0020】
ここで、本診断装置の機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアおよびソフトウェアの両方として実現され得る。具体的には、コンピュータを利用するものであれば、CPUやRAM、バス、あるいは二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ、CD−ROMやDVD−ROMなどの記憶メディアとそれらメディアの読取ドライブなど)、印刷機器や表示装置、その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部やその他の外部周辺機器用のI/Oポート、それらハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラム、情報入力に利用されるユーザインターフェイスなどが挙げられる。
【0021】
また、これらハードウェアやソフトウェアは、RAM上に展開したプログラムをCPUで演算処理したり、メモリやハードディスク上に保持されているデータや、インターフェイスを介して入力されたデータなどを加工、蓄積、出力処理したり、あるいは各ハードウェア構成部の制御を行ったりするために利用される。また、この発明は装置として実現できるのみでなく、方法としても実現可能である。また、このような発明の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに、そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるソフトウェア製品、および同製品を記憶媒体に固定した記憶媒体も、当然にこの発明の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である)。
【0022】
「診断装置」(0200)は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定する。なお、本発明は、大脳高次機能障害の検査において従来から行われている手法を参考にしている。例えば、被診断者に、図形の模写や、積み木やパズルをさせる検査手法などである。立体把握能力に障害を持つ者は、模写や積み木などをうまく行うことができない場合が多い。
【0023】
被診断者が模写する原図には、「立方体透視斜視線図」を用いる。立方体透視斜視線図は対称性を有する図形であり模写の原図として好適である。立方体であることを把握することができれば、模写線図においても対称性は維持される。しかし、構成失行などの大脳高次機能障害を持つ者の場合には、対称性は損なわれてしまう場合が多い。
【0024】
模写線図の二次元座標データの取得に関して図1を用いて説明する。「模写線図」は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写したものである。図1において、「原図」(0101)は、デジタイザ(0102)の上に載置された「診断用紙」(0103)に描かれており、被診断者は、その立方体透視斜視線図を原図として、破線で閉じられた領域に模写する。そこで模写されるものが、「模写線図」(0104)である。二次元座標データの取得は、デジタイザのほかペンタブレットなどでもよい。また、デジタイザにはディスプレイを備えるものもあるが、その場合には、診断用紙にかえて、原図を表示して、これをディスプレイ上に模写させてもよい。また、模写に用いるペンについても電磁誘導式や光学式など種々存在するが、二次元座標データを取得し得るものであればよい。
【0025】
「原図相関係数演算部」(0201)は、原図と、模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する機能を有する。模写線図が原図に類似するものであれば、相関係数は高い値になり、被診断者が、原図が立方体であることを把握できていることが推認できる。一方、いずれかの線が欠如していたり、各線が適切に接していない場合には、相関係数は低い値となり、被診断者が、原図が立方体であることを把握できていないことが推認できる。このように原図と模写線図との相関係数を求めることにより、被診断者の立体把握能力を数値として表すことができ、大脳高次機能障害を、客観的、かつ、定量的に診断することが可能となる。
【0026】
図3は、「原図」(0301)と「模写線図」(0302)を示したものである。この両者の相関係数を演算するための処理の一例を説明する。図形の特徴抽出などを行いやすくするために模写線図を二値化する。原図はあらかじめ二値化したテンプレートとして記憶されており、その輪郭のサイズが、例えば、縦500画素、横500画素であるとすると、両者の適正な相関を求めるためには、模写線図の輪郭も原画と同じサイズであることが望ましい。したがって、模写線図に対しては、例えば、模写線図の図形の骨格線を抽出する細線化処理や、エッジ強調処理などを行ったうえで、模写線図の輪郭のサイズを原図のサイズと同等になるように拡大、縮小を行う。そして、原図と模写線図のそれぞれの重心を求め、これを基準座標として重ね合わせて両者の相関係数を演算する。この場合、模写線図の傾きを検出して、重心を中心として傾きの補正をしたうえで演算してもよい。なお、原図と模写線図との相関係数の演算は、他の既知の技術によっても可能である。また、原図相関係数演算部は、原図と模写線図との相関係数を演算するための処理をCPUに実行させるためのプログラムを含んでいてもよい。
【0027】
図4は、本実施形態の診断装置を用いた診断結果の一例である。健常例では、6つの面から構成される立方体の構造が意識されて描かれていることが見て取れ、角部においても各線が的確に接している。しかし、症例においては、模写原図における立体構造が破綻している。演算結果も、健常例が、0.40、0.25であるのに対して、症例では、−0.14、−0.09、0.14と低い値となっている。このように、立体把握能力の測定結果を数値として得ることができるため、診断者においても自己の測定結果を保持することができ、以後の治療やリハビリテーション等に役立てることができる。また、治療等の進行とともに改めて測定することにより、症状の経過を確認することもできる。さらに、診断装置にHDDなどの記憶装置を備えることにより、測定結果を蓄積でき、以後の診断に活用することができる。
<実施形態1 ハードウェア構成>
【0028】
図5は、本実施形態の診断装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例を表す図である。図5に示すように、本実施形態の診断装置は、「原図相関係数部部」などを構成する、「CPU」(0501)、「メインメモリ」(0502)、「記憶装置」(0503)、「I/O」(0504)、「デジタイザ」(0505)、「表示装置」(0506)、「バス」(0507)などを備えている。
【0029】
メインメモリは、プログラム実行中に動的にデータ書換可能な記憶装置である。メインメモリは記憶装置に記憶されている原図相関係数演算プログラムや二値化プログラムなどを実行するために必要なスタックやヒープ等のワーク領域を提供する。そして、原図相関係数演算プログラムや二値化プログラムなどの命令により計算された計算結果などを保持する。記憶装置はプログラム実行中に動的にデータ書換可能な記憶装置であり、装置の電源が切れても、記憶しているデータが消去されない。記憶装置は、原図座標データや模写線図座標データや測定結果や上記プログラムなどが記憶されている。CPUは、デジタイザにて取得され記憶装置に記憶される模写線図座標データをメインメモリの所定領域に格納する。そして、メインメモリに展開した二値化プログラムを実行し、二値化した模写線図座標データを生成し、これをいったん保持する。そして、原図相関係数演算プログラムを実行し、原図と模写線図との相関係数を求める演算処理を行う。演算結果は、測定値としてディスプレイに出力する。
<実施形態1 処理の流れ>
【0030】
図6は、本実施形態に係る診断装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。処理の流れは、まず、被診断者が原図となる立方体透視斜視線図を見て模写した模写線図の二次元座標データを取得する。(模写線図二次元座標データ取得ステップ S0601)。次に、取得した模写線図の二次元座標データに基づき、原図と模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する。この処理は原図相関係数演算部によって実行される(原図相関係数演算 S0602)。
<実施形態1 効果>
【0031】
本実施形態の診断装置により、被診断者の立体把握能力を数値として測定することにより、大脳高次機能障害を客観的、かつ、定量的に診断することが可能となる。
<実施形態2>
<実施形態2 概要>
【0032】
本実施形態は、実施形態1と同様に原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図との対称性を数値化することを特徴とするものである。
<実施形態2 構成>
【0033】
図7は、本実施形態に係る構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態の「診断装置」(0700)は、「180度回転相関係数演算部」(0701)を有する。本診断装置は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するものであり、180度回転相関係数演算部は、模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である180度回転相関係数を演算する。本実施形態の診断装置は、基本的に実施形態1の診断装置と同様であるため、本実施形態の特徴である「180度回転相関係数演算部」以外の説明は省略する。
【0034】
「180度回転相関係数演算部」(0701)は、模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する。立方体透視斜視線図は、点対称な図形なので、180度回転させた図形を重ね合わせれば一致する。したがって、立方体透視斜視線図を原図として模写した場合、正確に模写すれば模写線図とこれを180度回転した回転模写線図とは一致する。しかし、立体把握能力に障害がある場合には、模写線図は対称性が損なわれていることが多い。そこで、模写線図と回転模写線図とを重ねた場合の相関係数を演算する。
【0035】
図8に、「模写線図」(0801)と、「回転模写線図」(0802)とを示す。この両者の二次元座標データを用いて、実施形態1における原図相関係数演算部での処理と同様に、両図を重ねた場合の相関係数を演算する。
【0036】
図9に、本実施形態の診断装置を用いた診断結果の一例を示す。健常例では、0.40、0.61であるのに対して、症例では、0.15、−0.08、0.31と低い値となっている。このように模写線図の点対称性を相関係数により数値化することにより被診断者の立体把握能力を測定することができる。
【0037】
なお、本実施形態に係る診断装置の構成に、さらに、実施形態1の「原図相関係数演算部」を含ませてもよい。これにより、複数の測定値により複合的な診断ができる。
<実施形態2 ハードウェア構成>
【0038】
本実施形態の診断装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例としては、実施形態1にて図5を利用して説明した構成において、180度回転相関係数を演算するための180度回転相関係数演算プログラムを、原図相関係数演算プログラムに換えて、あるいは、これとともに所定の記憶領域に記憶しておくことを加えた構成などが挙げられる。
<実施形態2 処理の流れ>
【0039】
図10は、本実施形態に係る診断装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。処理の流れは、まず、被診断者が原図となる立方体透視斜視線図を見て模写した模写線図の二次元座標データを取得する。(模写線図二次元座標データ取得ステップ S1001)。次に、取得した模写線図の二次元座標データに基づき、模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度回転相関係数を演算する。この処理は180度回転相関係数演算部によって実行される(180度回転相関係数演算ステップ S1002)。
<実施形態2 効果>
【0040】
本実施形態の診断装置により、模写線図の対称性を数値化することにより被診断者の立体把握能力を、客観的、かつ、定量的に診断することが可能となる。
<実施形態3>
<実施形態3 概要>
【0041】
本実施形態は、実施形態1、2と同様に原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図との対称性を数値化することを特徴とするものである。
<実施形態3 構成>
【0042】
図11は、本実施形態に係る構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態の「診断装置」(1100)は、「180度右半分回転相関係数演算部」(1101)を有する。本診断装置は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するものであり、180度右半分回転相関係数演算部は、模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右半分回転相関係数を演算する。本実施形態の診断装置は、基本的に実施形態1の診断装置と同様であるため、本実施形態の特徴である「180度右半分回転相関係数演算部」以外の説明は省略する。
【0043】
「180度右半分回転相関係数演算部」(1101)は、模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右半分回転相関係数を演算する。立方体模写線図は左右対称の図形である。そこで、模写線図の右半分を180度回転させたものと、模写線図の左半分との対称性を、相関係数で数値化することにより、被診断者の立体把握能力を測定することができる。また、模写線図の左右の対称性が損なわれている場合には、被診断者において、構成失行とともに半側空間失認や半側身体失認などを伴っていることもあり、多面的な診断を行うことができる。なお、模写線図の右半分と、模写線図の左半分を180度回転させたものとの相関係数を演算する場合であっても、本実施形態における診断装置の目的および効果が同様であることは言うまでもない。
【0044】
図12に、「模写線図の左半分」(1201)と、「右半分回転模写線図」(1202)を示す。右半分回転模写線図は、「模写線図の右側」(1203)を180度回転したものである。図示した模写線図の左半分と右半分回転模写線図の二次元座標データを用いて、実施形態1における原図相関係数演算部での処理と同様に、両図を重ねた場合の相関係数を演算する。
【0045】
図13に、本実施形態の診断装置を用いた診断結果の一例を示す。健常例では、0.53、0.61であるのに対して、症例では、0.24、0.17、0.31と低い値となっている。このように模写線図の左右の対称性を相関係数により数値化することにより被診断者の立体把握能力を測定することができる。
【0046】
なお、本実施形態に係る診断装置の構成に、さらに、実施形態1の「原図相関係数演算部」及び/又は実施形態2の「180度回転相関係数演算部」を含ませてもよい。これにより、複数の測定値により複合的な診断ができる。
<実施形態3 ハードウェア構成>
【0047】
本実施形態の診断装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例としては、実施形態1にて図5を利用して説明した構成において、180度右半分回転相関係数を演算するための180度右半分回転相関係数演算プログラムを、原図相関係数演算プログラムに換えて、あるいは、これとともに所定の記憶領域に記憶しておくことを加えた構成などが挙げられる。
<実施形態3 処理の流れ>
【0048】
図14は、本実施形態に係る診断装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。処理の流れは、まず、被診断者が原図となる立方体透視斜視線図を見て模写した模写線図の二次元座標データを取得する。(模写線図二次元座標データ取得ステップ S1401)。次に、取得した模写線図の二次元座標データに基づき、模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右半分回転相関係数を演算する。この処理は180度右半分回転相関係数演算部によって実行される(180度右半分回転相関係数演算ステップ S1402)。
<実施形態3 効果>
【0049】
本実施形態の診断装置により、模写線図の左右の対称性を数値化することにより被診断者の立体把握能力を、客観的、かつ、定量的に診断することが可能となる。
<実施形態4>
<実施形態4 概要>
【0050】
本実施形態は、実施形態1から3と同様に原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図との対称性を数値化することを特徴とするものである。
<実施形態4 構成>
【0051】
図15は、本実施形態に係る構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態の「診断装置」(1500)は、「180度下半分回転相関係数演算部」(1501)を有する。本診断装置は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するものであり、180度下半分回転相関係数演算部は、模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度下半分回転相関係数を演算する。本実施形態の診断装置は、基本的に実施形態1の診断装置と同様であるため、本実施形態の特徴である「180度下半分回転相関係数演算部」以外の説明は省略する。
【0052】
「180度下半分回転相関係数演算部」(1501)は、模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度下半分回転相関係数を演算する。立方体模写線図は上下対称の図形である。そこで、模写線図の下半分を180度回転させたものと、模写線図の上半分との対称性を、相関係数で数値化することにより、被診断者の立体把握能力を測定することができる。なお、模写線図の下半分と、模写線図の上半分を180度回転させたものとの相関係数を演算する場合であっても、本実施形態における診断装置の目的および効果が同様であることは言うまでもない。
【0053】
図16に、「模写線図の上半分」(1601)と、「下半分回転模写線図」(1602)を示す。下半分回転模写線図は、「模写線図の下側」(1603)を180度回転したものである。図示した模写線図の上半分と下半分回転模写線図の二次元座標データを用いて、実施形態1における原図相関係数演算部での処理と同様に、両図の相関係数を演算する。
【0054】
図17に、本実施形態の診断装置を用いた診断結果の一例を示す。健常例では、0.42、0.62であるのに対して、症例では、0.16、−0.05、0.33と低い値となっている。このように模写線図の上下の対称性を相関係数により数値化することにより被診断者の立体把握能力を測定することができる。
【0055】
なお、本実施形態に係る診断装置の構成に、さらに、実施形態1の「原図相関係数演算部」及び/又は実施形態2の「180度回転相関係数演算部」及び/又は実施形態3の「180度右半分回転相関係数演算部」を含ませてもよい。これにより、複数の測定値により複合的な診断ができる。
<実施形態4 ハードウェア構成>
【0056】
本実施形態の診断装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例としては、実施形態1にて図5を利用して説明した構成において、180度下半分回転相関係数を演算するための180度下半分回転相関係数演算プログラムを、原図相関係数演算プログラムに換えて、あるいは、これとともに所定の記憶領域に記憶しておくことを加えた構成などが挙げられる。
<実施形態4 処理の流れ>
【0057】
図18は、本実施形態に係る診断装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。処理の流れは、まず、被診断者が原図となる立方体透視斜視線図を見て模写した模写線図の二次元座標データを取得する。(模写線図二次元座標データ取得ステップ S1801)。次に、取得した模写線図の二次元座標データに基づき、模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度下半分回転相関係数を演算する。この処理は180度下半分回転相関係数演算部によって実行される(180度下半分回転相関係数演算ステップ S1802)。
<実施形態4 効果>
【0058】
本実施形態の診断装置により、模写線図の上下の対称性を数値化することにより被診断者の立体把握能力を、客観的、かつ、定量的に診断することが可能となる。
<実施形態5>
<実施形態5 概要>
【0059】
本実施形態は、実施形態1から4と同様に原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、模写線図の左上四分の一と、模写線図の右下四分の一を180度回転した右下四分の一回転模写線図との対称性、及び/又は、模写線図の右上四分の一と、模写線図の左下四分の一を180度回転した左下四分の一回転模写線図との対称性を数値化することを特徴とするものである。
<実施形態5 構成>
【0060】
図19は、本実施形態に係る構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態の「診断装置」(1900)は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するものであって、「180度右下四分の一回転相関係数演算部」(1901)と、「180度左下四分の一回転相関係数演算部」(1902)とを有する。本実施形態の診断装置は、基本的に実施形態1の診断装置と同様であるため、本実施形態の特徴である「180度右下四分の一回転相関係数演算部」と「180度左下四分の一回転相関係数演算部」以外の説明は省略する。
【0061】
「180度右下四分の一回転相関係数演算部」(1901)は、模写線図の左上四分の一と、模写線図の右下四分の一を180度回転した右下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右下四分の一回転相関係数を演算する。立方体模写線図は点対称の図形である。そこで、模写線図の右下四分の一を180度回転させたものと、模写線図の左上四分の一との対称性を、相関係数で数値化することにより、被診断者の立体把握能力を測定することができる。なお、模写線図の右下四分の一分と、模写線図の左上四分の一を180度回転させたものとの相関係数を演算する場合であっても、本実施形態における診断装置の目的および効果が同様であることは言うまでもない。
【0062】
図20に、「模写線図の左上四分の一」(2001)と、「右下四分の一回転模写線図」(1602)を示す。右下四分の一回転模写線図は、「模写線図の右下四分の一」(1603)を180度回転したものである。図示した模写線図の左上四分の一と右下四分の一回転模写線図の二次元座標データを用いて、実施形態1における原図相関係数演算部での処理と同様に、両図の相関係数を演算する。
【0063】
「180度左下四分の一回転相関係数演算部」(1902)は、模写線図の右上四分の一と、模写線図の左下四分の一を180度回転した左下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度左下四分の一回転相関係数を演算する。なお、「180度左下四分の一回転相関係数演算部」は、上述の「180度右下四分の一回転相関係数演算部」と同様の機能を備えるものであるため、説明を省略する。
【0064】
図21に、本実施形態の診断装置を用いた診断結果の一例を示す。180度右下四分の一回転相関係数は、健常例では、0.64、0.63であるのに対して、症例では、0.33、0.57、0.29と低い値なっており、また、180度左下四分の一回転相関係数についても、健常例では、0.53、0.59であるのに対して、症例では、0.07、−0.19、0.36と低い値となっている。このように模写線図の上下の対称性を相関係数により数値化することにより被診断者の立体把握能力を測定することができる。
【0065】
なお、本実施形態に係る診断装置の構成に、さらに、実施形態1の「原図相関係数演算部」及び/又は実施形態2の「180度回転相関係数演算部」及び/又は実施形態3の「180度右半分回転相関係数演算部」及び/又は実施形態4の「180度下半分回転相関係数演算部」を含ませてもよい。これにより、複数の測定値により複合的な診断ができる。
<実施形態5 ハードウェア構成>
【0066】
本実施形態の診断装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例としては、実施形態1にて図5を利用して説明した構成において、180度右下四分の一回転相関係数を演算するための180度右下四分の一回転相関係数演算プログラム及び180度左下四分の一回転相関係数を演算するための180度左下四分の一回転相関係数演算プログラムを、原図相関係数演算プログラムに換えて、あるいは、これとともに所定の記憶領域に記憶しておくことを加えた構成などが挙げられる。
<実施形態5 処理の流れ>
【0067】
図22は、本実施形態に係る診断装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。ここでは、180度右下四分の一回転相関係数演算部を有する診断装置における処理の流れを説明する。処理の流れは、まず、被診断者が原図となる立方体透視斜視線図を見て模写した模写線図の二次元座標データを取得する。(模写線図二次元座標データ取得ステップ S2201)。次に、取得した模写線図の二次元座標データに基づき、模写線図の左上四分の一と、模写線図の右上四分の一を180度回転した右下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右下四分の一回転相関係数を演算する。この処理は180度右下四分の一回転相関係数演算部によって実行される(180度右下四分の一回転相関係数演算ステップ S2202)。
<実施形態5 効果>
【0068】
本実施形態の診断装置により、模写線図の対称性を数値化することにより被診断者の立体把握能力を、客観的、かつ、定量的に診断することが可能となる。
<実施形態6>
<実施形態6 概要>
【0069】
本実施形態は、実施形態1から5と同様に原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、実施形態1から5における各演算部での演算結果を利用して診断結果を出力することを特徴とするものである。
<実施形態6 構成>
【0070】
図23は、本実施形態に係る構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態の「診断装置」(2300)は、原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するものであって、「原図相関係数演算部」(2301)と、「180度回転相関係数演算部」(2302)と、「180度右半分回転相関係数演算部」(2303)と、「180度下半分回転相関係数演算部」(2304)と、「180度右下四分の一回転相関係数演算部」(2305)と、「180度左下四分の一回転相関係数演算部」(2306)と、「総合診断結果出力部」(2307)とを有する。本実施形態における各演算部は、実施形態1から5におけるそれぞれの演算部と同様であるので説明を省略する。
【0071】
「総合診断結果出力部」(2307)は、原図相関係数演算部と、180度回転相関係数演算部と、180度右半分回転相関係数演算部と、180度下半分回転相関係数演算部と、180度右下四分の一回転相関係数演算部と、180度左下四分の一回転相関係数演算部の各演算部での演算結果を利用して診断結果を出力する。出力する演算結果としては、例えば、各演算部での演算結果を一連のデータ列として出力したり、グラフ化して出力してもよい。
【0072】
図24は、上記各演算部での演算結果を、それぞれ「相関1」から「相関6」として被診断者ごとの診断結果を示したものである。演算結果をデータ列として出力する場合には、例えば、症例1の被診断者の演算結果は、(−0.14,0.15,0.24,0.16,0.33,0.07)というデータ列で表すことができる。また、図25は、図24で示した各診断者の演算結果をグラフ化したものである。破線で示したグラフは健常例の2例についてのものであり、実線で示したグラフは症例の3例についてのものである。なお、各演算部での演算結果のすべてを必ずしも利用しなければならないわけではなく、いずれかの演算結果を選択して出力してもよい。
【0073】
このように各演算部での演算結果を、データ列やグラフ化して出力することにより、立体把握能力を総合的に診断することができる。また、診断結果を記録、蓄積等することにより、以後の診断にも活用することができる。さらに、被診断者においては、自己の数値化された客観的な診断結果を保持することができ、以後の治療やリハビリテーションなどに活用することができる。
<実施形態6 ハードウェア構成>
【0074】
本実施形態係る診断装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現する構成については、実施形態1から5に準じて実現できる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
<実施形態6 処理の流れ>
【0075】
本実施形態の処理の流れは、実施形態1から5における処理の流れにより演算された演算結果を出力するものである。各演算における処理の流れについては説明済みであるため、ここでの説明は省略する。
<実施形態6 効果>
【0076】
本実施形態の診断装置により、各演算部での演算結果を利用した総合的な診断結果を示すことが可能となる。
【符号の説明】
【0077】
0101 デジタイザ
0102 診断用紙
0103 原図
0104 模写線図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、
原図と、模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する原図相関係数演算部を有する診断装置。
【請求項2】
原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、
模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度回転相関係数を演算する180度回転相関係数演算部を有する診断装置。
【請求項3】
原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、
模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右半分回転相関係数を演算する180度右半分回転相関係数演算部を有する診断装置。
【請求項4】
原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、
模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度下半分回転相関係数を演算する180度下半分回転相関係数演算部を有する診断装置。
【請求項5】
原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、
模写線図の左上四分の一と、模写線図の右下四分の一を180度回転した右下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右下四分の一回転相関係数を演算する180度右下四分の一回転相関係数演算部を有する診断装置。
【請求項6】
原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、
模写線図の右上四分の一と、模写線図の左下四分の一を180度回転した左下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度左下四分の一回転相関係数を演算する180度左下四分の一回転相関係数演算部を有する診断装置。
【請求項7】
原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、
原図と、模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する原図相関係数演算部と、
模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度回転相関係数を演算する180度回転相関係数演算部と、
模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右半分回転相関係数を演算する180度右半分回転相関係数演算部と、
模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度下半分回転相関係数を演算する180度下半分回転相関係数演算部と、
模写線図の左上四分の一と、模写線図の右下四分の一を180度回転した右下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右下四分の一回転相関係数を演算する180度右下四分の一回転相関係数演算部と、
模写線図の右上四分の一と、模写線図の左下四分の一を180度回転した左下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度左下四分の一回転相関係数を演算する180度左下四分の一回転相関係数演算部と、
前記各演算部での演算結果を利用して診断結果を出力する総合診断結果出力部と、
を有する診断装置。
【請求項1】
原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、
原図と、模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する原図相関係数演算部を有する診断装置。
【請求項2】
原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、
模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度回転相関係数を演算する180度回転相関係数演算部を有する診断装置。
【請求項3】
原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、
模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右半分回転相関係数を演算する180度右半分回転相関係数演算部を有する診断装置。
【請求項4】
原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、
模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度下半分回転相関係数を演算する180度下半分回転相関係数演算部を有する診断装置。
【請求項5】
原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、
模写線図の左上四分の一と、模写線図の右下四分の一を180度回転した右下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右下四分の一回転相関係数を演算する180度右下四分の一回転相関係数演算部を有する診断装置。
【請求項6】
原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、
模写線図の右上四分の一と、模写線図の左下四分の一を180度回転した左下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度左下四分の一回転相関係数を演算する180度左下四分の一回転相関係数演算部を有する診断装置。
【請求項7】
原図となる立方体透視斜視線図を被診断者に見せ、それを模写させた線図である模写線図の二次元座標データを取得し、取得した模写線図の二次元座標データの対称性を数値化することで被診断者の立体把握能力を測定するための診断装置であって、
原図と、模写線図とを重ねた場合の両者の相関係数である原図相関係数を演算する原図相関係数演算部と、
模写線図と、模写線図を180度回転した回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度回転相関係数を演算する180度回転相関係数演算部と、
模写線図の左半分と、模写線図の右半分を180度回転した右半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右半分回転相関係数を演算する180度右半分回転相関係数演算部と、
模写線図の上半分と、模写線図の下半分を180度回転した下半分回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度下半分回転相関係数を演算する180度下半分回転相関係数演算部と、
模写線図の左上四分の一と、模写線図の右下四分の一を180度回転した右下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度右下四分の一回転相関係数を演算する180度右下四分の一回転相関係数演算部と、
模写線図の右上四分の一と、模写線図の左下四分の一を180度回転した左下四分の一回転模写線図と、を重ねた場合の両者の相関係数である180度左下四分の一回転相関係数を演算する180度左下四分の一回転相関係数演算部と、
前記各演算部での演算結果を利用して診断結果を出力する総合診断結果出力部と、
を有する診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−24869(P2011−24869A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175162(P2009−175162)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(000101558)アニマ株式会社 (13)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(000101558)アニマ株式会社 (13)
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