説明

天井点検口の開閉装置

【課題】天井点検口の開閉装置の天井への装着作業を容易に行う。
【解決手段】本発明の天井点検口の開閉装置100は、天井に形成された孔の周縁に沿って当該天井に固定され、点検口を囲む枠体2と、点検口を開閉するための扉3と、開閉時に扉3が枠体2に干渉しないように枠体2に扉3を連結するための連結部4とを有する。とくに、連結部4が、枠体2と扉3との間に介在し、一方の端が扉3に回動可能に連結される複数本のアームと、各アームの他方の端がそれぞれ回動可能に連結され、かつ、その連結状態のまま枠体に着脱可能な第1の取り付け部材45とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井点検口の開閉装置に関する。さらに詳しくは、天井に固定される枠体と、この枠体により囲まれる天井点検口を開閉するように前記枠体に連結される扉とを備える天井点検口の開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井裏の点検用に設けられた天井点検口を開閉するための装置として、例えば特許文献1に記載されるものが知られている。この装置の概要を図12に示す。この天井点検口の開閉装置200は、枠体2と、扉3と、左右にそれぞれ2本ずつ設けられるアーム41,42とを備える。前記枠体2は、天井Cに形成された孔Pの周縁に沿って装着され、天井点検口を囲む。前記扉3は、前記天井点検口を開閉するように前記アーム41,42を介して前記枠体2に連結される。前記アーム41,42は、前記枠体2と扉3とを連結し、かつ、扉3の開閉動作を規制するためのもので、各アーム41,42の一方の端が回転軸を介して回動可能に枠体2に直接連結され、各アーム41、42の他方の端が同様に回転軸を介して回動可能に扉3に直接取り付けられている。扉3は、前記枠体2により囲まれた天井点検口内に嵌まり込み可能な形状をもつフレーム31と、このフレーム31から全周にわたり外向きに突出する当接片31aとを有する。この当接片31aは、扉3が閉じたときに前記枠体2の下面と接触することにより気密性を高める機能をもつ。前記アーム41、42は、枠体2に当接片31aが干渉するのを避けながら前記扉3が開閉動作するように枠体2と扉3とを連結するリンク機構を構成する。
【特許文献1】特開昭52−11624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の天井点検口の開閉装置200を天井に形成された孔Pに装着する方法としては、枠体2および扉3を予め工場等で一体の状態にして開閉装置を天井Cへ装着する方法と、まず、枠体2のみを先に天井に固定し、後に、アーム41、42と一体になった扉3を枠体2に連結する方法がある。
【0004】
しかしながら、枠体2と扉3とを予め一体の状態にして開閉装置200を天井Cへ装着する場合には、枠体2と扉3の重量の総和分を支えながら取り付け作業をしなければならず、また、装着時に扉3が枠体2を天井に取り付ける作業の邪魔になるという欠点がある。
【0005】
また、枠体2を天井に取り付けてからこの枠体2に扉3を直結する方法では、複数本のアームのそれぞれの端部を枠体2に回動可能に連結する作業を、すべて天井C側の高所でかつ手の届きにくい特殊な作業場所で行わなければならず、作業者の負担が大きい。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、天井への装着作業を容易に行うことが可能な天井点検口の開閉装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、天井に形成された孔の周縁に沿って当該天井に固定され、点検口を囲む枠体と、点検口を開閉するための扉と、開閉時に前記扉が前記枠体に干渉しないように前記枠体に前記扉を連結するための連結部とを有する天井点検口の開閉装置であって、前記連結部が、前記枠体と前記扉との間に介在し、一方の端が前記扉に回動可能に連結される複数本のアームと、前記各アームの他方の端がそれぞれ回動可能に連結され、かつ、その連結状態のまま前記枠体に着脱可能な第1の取り付け部材とを有する。この構成により、上記目的が達成される。
【0008】
また、前記枠体及び前記第1の取り付け部材のうちのいずれか一方に係合孔が設けられ、他方に前記係合孔に挿入される突出部が設けられ、前記係合孔は、前記突出部が挿脱可能な形状をもつ挿入部と、当該係合孔に挿入された突出部が係合孔から離脱するのを阻止する形状をもつ係止部とを有し、かつ、前記挿入部に挿入された前記突出部が前記係止部に移行することを許容する形状を有することが好ましい。
【0009】
また、前記係合孔は、前記挿入部に挿入された前記突出部が前記枠体の長手方向に沿って前記係止部に移行する形状を有することが好ましい。
【0010】
また、前記枠体は、その内側面から内方に突出し、かつ、当該枠体の長手方向に延びるリブを有し、前記第1の取り付け部材は、前記リブ上に支持された状態で当該リブに沿ってスライド可能な形状を有し、このスライドによって前記突出部が前記挿入部から前記係止部に移行することが好ましい。
【0011】
また、前記枠体は、その内側から内方に突出し、かつ、当該枠体の長手方向に延びるリブを有し、前記第1の取り付け部材は、前記リブ上に支持された状態で前記枠体に取り付けられることが好ましい。
【0012】
また、前記枠体及び前記扉はアルミニウム合金により形成されたものであり、前記連結部は鋼材により形成されたものであることが好ましい。
【0013】
また、前記各アームの他方の端がそれぞれ回動可能に連結され、かつ、その連結状態で前記扉に固定される第2の取り付け部材を備えることが好ましい。
【0014】
また、前記扉は複数の角をもつ形状を有し、前記第2の取り付け部材は、前記扉の角のうちの特定の角を挟む両外側面を外側から覆う形状を有し、当該外側面にそれぞれ固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1の天井点検口の開閉装置によれば、まず、枠体のみを天井に形成された孔の周縁に沿って装着すればよいので、作業者は、この枠体を装着する際に扉の重量まで支える必要がない。しかも、複数のアームの端部が予め共通の第1の取り付け部材に連結されているので、この第1の取り付け部材を枠体に装着するだけで当該枠体に連結部および扉を容易に連結することができる。
【0016】
また、請求項2の天井点検口の開閉装置によれば、枠体及び第1の取り付け部材のうちのいずれか一方に設けられた係合孔の挿入部に、他方に設けられた突出部を挿入し、そのまま当該突出部を前記挿入部から係止部に移行させるという簡単な操作で、第1の取り付け部材を枠体に係止させることができる。
【0017】
また、請求項3の天井点検口の開閉装置によれば、係合孔が、挿入部に挿入された突出部が枠体の長手方向に沿って係止部に移行する形状であるため、この枠体の長手方向の大きな寸法を利用して前記突出部の移行ストロークを十分に確保することができる。
【0018】
特に、請求項4の天井点検口の開閉装置によれば、枠体が、リブを有し、第1の取り付け部材が、リブ上に支持された状態でそのリブに沿ってスライド可能な形状を有し、このスライドによって突出部が挿入部から係止部に移行するので、前記リブを有効に利用して第1の取り付け部材の案内を行うことができるとともに、この第1の取り付け部材が前記枠体から脱落することをより確実に防ぐことができる。
【0019】
また、請求項5の天井点検口の開閉装置によれば、第1の取り付け部材が、リブ上に支持された状態で枠体に取り付けられていることにより、第1の取り付け部材の脱落を防止することができる。
【0020】
また、請求項6の天井点検口の開閉装置によれば、枠体及び扉がアルミニウム合金により形成され、連結部が鋼材により形成されることにより、開閉装置全体の重量増大が回避されながら、特に強度的負担の大きい連結部の強度を十分に確保することができる。
【0021】
また、請求項7の天井点検口の開閉装置によれば、各アームの他方の端がそれぞれ回動可能に連結され、かつ、その連結状態で扉に固定される第2の取り付け部材を備えていることにより、工場等での扉の組み立て作業が容易になる。
【0022】
また、請求項8の天井点検口の開閉装置によれば、第2の取り付け部材が、扉の角のうちの特定の角を挟む両外側面を外側から覆う形状を有し、外側面にそれぞれ固定されるため、この扉の変形、特に前記角の角度の変化を有効に抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の天井点検口の開閉装置は、天井に形成された孔の周縁に沿って当該天井に固定され、点検口を囲む枠体と、点検口を開閉するための扉と、開閉時に扉が枠体に干渉しないように枠体に扉を連結するための連結部とを有する。とくに、連結部が、枠体と扉との間に介在し、一方の端が扉に回動可能に連結される複数本のアームと、各アームの他方の端がそれぞれ回動可能に連結され、かつ、その連結状態のまま枠体に着脱可能な第1の取り付け部材とを有する。すなわち、本発明の天井点検口の開閉装置は、開閉装置を天井に形成された孔に装着する際に、第1の取り付け部材を枠体に嵌め合わせることによって、枠体、連結部および扉を一体的にするものである。
【0024】
以下で、本発明の天井点検口の開閉装置について、図面を用いて詳細に説明する。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の天井点検口の開閉装置100を説明するための斜視図である。図1に示されるように、実施の形態1の天井点検口の開閉装置100は、天井に固定される枠体2と、この枠体2に囲まれた天井点検口を開閉するための扉3と、枠体2と扉3とを一体に連結するための連結部4とから構成されている。
【0026】
図2は実施の形態1の枠体2を説明するための斜視図である。枠体2は、図3に示されるような装着部21を有する。この装着部21は、天井Cに形成された四角い孔Pの側縁に沿って配置可能な形状を有する。つまり、この装着部21は、四角い枠状をなす。図3に示されるように、装着部21は、吊り金具7を使用して、天井Cに施工された下地材に固定される。具体的には、吊り金具7の下部に設けられた板状の部材が、装着部21の内側に嵌め合わせられている。また、吊り金具7の上部に形成されたネジ孔に、ボルト71が螺合される。さらに、野縁8上に設けられた断面チャンネル状の受け具9の底面に、ボルト71の下端が押し当てられて、枠体2が天井Cに固定される。
【0027】
装着部21には、補強用のリブ21bが形成されている。このリブ21bは、前記装着部21の内側面から内側に突出し、この装着部21の長手方向に沿って全周にわたり延びている。このリブ21bは、本来、枠体2の剛性を高めるためのものであるが、本発明では、その補強機能のほか、後述する第1の取り付け部材45または後述する補強材23を支持および固定する機能をも有している。
【0028】
装着部21には、当接片21cが形成されている。前記当接片21cは、前記枠体2と天井Cの側縁との間の気密性を確保するためのものであり、装着部21の全周にわたり当該装着部21の外周面から外方へ突設されている。この装着部21の上面にはゴム等の弾性材からなる気密材22が全周にわたり貼着され、当該気密材22が前記天井Cのうち前記孔Pの周縁部の下面に密着することにより、扉3が閉じたときの気密性が確保される。
【0029】
また、前記装着部21の四隅には、その剛性を高めるための補強材23が固定されている。
【0030】
扉3は、図4に示されるようなフレーム31と、パネル挟持材34とを備える。なお、図4は、前記扉3に連結部4が固定された状態を示す斜視図である。
【0031】
前記フレーム31は、四角い枠状をなし、前記枠体2の内側に嵌り込むことが可能な大きさを有する。このフレーム31の外側面の上下側縁には外向きにリブ31bが突設されている。このリブ31bは、本来、扉3の剛性を高めるための補強材であるが、その本来の補強機能のほか、後述する第2の取り付け部材46および後述する補強材33を支持・固定する機能をも有している。
【0032】
前記フレーム31には、その開口を塞ぐように、天井板となるパネルが装着される。このフレーム31には、前記パネルを支持するためのパネル載置リブ31eが形成されている。このパネル載置リブ31eは、前記フレーム31の内側面から内方へ突出し、かつ、フレーム31の長手方向に沿って延びる。また、パネル載置リブ31eの上面には、気密材32bが固着されている。この気密材32bは、ゴム等の弾性材により形成され、前記パネルと密着する。
【0033】
前記パネル挟持材34は、薄い板状の部材であり、フレーム31の内側で角を挟むように4箇所に設置されることにより、前記パネル載置リブ31eとの間で前記パネルをその板厚方向から挟持する。これらのパネル挟持材34は、フレーム31に当接するように90度折り曲げられた直立部34aを有する。直立部34aには、パネル挟持材34をフレーム31に取り付けるために、ネジ31dを螺合する孔が形成されている。
【0034】
前記フレーム31の下部には、前記枠体2の当接片21cの下面を覆うように当接片31aが形成されている。当接片31aは、扉3を閉めたときに、枠体2と扉3との隙間をシールするためのものである。当接片31aは、フレーム31の全周にわたり、当該フレーム31の外側面から外方へ突設されたものである。当接片31aは、枠体2に設けられた当接片21cの外縁より外側まで延設されている。
【0035】
この当接片31aの上面には、その全周にわたり気密材32aが固着されている。この気密材32aは、前記枠体2の下面に密着することにより、前記枠体2と前記扉3との間をシールする。
【0036】
また、フレーム31には、フレーム31の上下方向(フレーム31長手方向に垂直な方向)に延びた長孔31cが各辺に2箇所ずつ、合計8箇所形成されている。この長孔31cは、上述のパネル挟持材34をフレーム31に取り付けるために形成されたものである。
【0037】
パネル挟持材34を設置するにあたっては、フレーム31に形成された長孔31cにネジ31dを挿入し、さらにネジ31dを、直立部34aの孔に螺合する。このように、フレーム31に形成された長孔31cを用いてパネル挟持材34を設置することにより、パネル挟持材34を長孔31cの長手方向に(すなわち、フレーム31の上下方向に)移動させることができ、パネルの板厚の変化にも柔軟に対応することができる。
【0038】
図5は実施の形態1の連結部4を説明するための斜視図であり、(a)は連結部4の内側を示し、(b)は連結部4の外側を示している。連結部4は、図4に示されるように、扉3の左右2箇所に連結される。各連結部4は、図4、図5(a)及び(b)に示されるように、1対のアームである第1アーム41及び第2アーム42と、これらの第1アーム41および第2アーム42に連結され、かつ枠体2に着脱可能な第1の取り付け部材45と、前記第1アーム41および第2アーム42に連結され、かつ、扉3に固定される第2の取り付け部材46とから構成されている。
【0039】
前記第1アーム41および第2アーム42は、その一方の端部が前記第1の取り付け部材45に回動可能に連結され、他方の端部が前記第2の取り付け部材46に回動可能に連結される。具体的には、第1アーム41および第2アーム42の端部が、第1アーム41と第2アーム42との間の間隔を空けて第1の取り付け部材45または第2の取り付け部材46に連結されている。さらに、第1アーム41および第2アーム42の第1の取り付け部材45側の端部の間隔は、第1アーム41および第2アーム42の第2の取り付け部材46側の端部の間隔より広く取り付けられている(アームの長さは、第1アーム41の方が第2アーム42より短い)。また、扉3が完全に開いた場合(枠体2に対して90度、図11参照)であっても、第1アーム41および第2アーム42は、第2の取り付け部材46の離れた二箇所を支持するので、扉3とアーム41、42との固定強度を向上させることができる。これらの両取り付け部材45、46及び両アーム41、42によって、前記枠体2に対して前記扉3に開閉動作を行わせるためのリンク機構が構成される。1対のアーム41、42を用いて枠体2と扉3とを連結することで、一方のアームが他方のアームを制御するので、開扉時に扉3が急に落下することがない。また、単一のアームを用いて枠体2と扉3とを連結する場合とは異なり、扉3を閉じるときは連結部4が設けられる側と反対側の端部のみを施錠すれば足り、連結部4側を施錠しなくても落下のおそれがない。
【0040】
前記第1の取り付け部材45は、それぞれ、前記枠体2における装着部21bの左右の所定の箇所に着脱される。この第1の取り付け部材45は、略長方形状の板材であり、その外側の面に突出部47が設けられている。この突出部47は、円柱状の小径部47bの先端に、小径部47bの直径より大きい直径を有する大径部47aが設けられた形状を呈している。この大径部47aは、突出部47が枠体2に形成された後述の係合孔6の係止部62に移行した際に、枠体2と係合して突出部47が係合孔6から離脱するのを阻止する。小径部47bは、枠体2の装着部21の板厚分とほぼ同じ長さだけ、第1の取り付け部材45から突出している。突出部47の大径部47aと第1の取り付け部材45との間隔を設定しているので、連結時に、第1の取り付け部材45を、枠体2の装着部21の内側面にぴったりと当接させることができる。これにより、開閉装置100の使用時に、第1の取り付け部材45がガタついたりするのを防止することができる。また、前述したように、第1の取り付け部材45を枠体2に連結する際に、第1の取り付け部材45はスライドされるが、このスライドの際に、第1の取り付け部材45の進行方向前方側縁になる部分には、略U字状の切り欠き45bが形成されている。切り欠き45bは、枠体2に設けられた係止具24の螺子24aと係合する。係止具24は、装着部21上の対向する2つの辺上に設けられている。係止具24は、装着部21の内側から外側へ向けて、装着部21に形成された孔に螺合された螺子24aと、装着部21の外側面に当接するように螺子24aによって固定された締結板24bとから構成されている(図1、図2参照)。係止具24の螺子24aは、第1の取り付け部材45を枠体2に連結したときに、第1の取り付け部材45に形成された切り欠き45bに係合する。さらに、第1の取り付け部材45に螺子24aが係合した状態で、螺子24aを締め付けると、第1の取り付け部材45は、枠体2に対して強固に連結される。また、第1の取り付け部材45には、その2箇所に、第1アーム回転軸43bと第2アーム回転軸44bを貫通させるための孔が形成されている。第1アーム41および第2アーム42は、突出部47が突出する側の反対面に連結される。
【0041】
また、装着部21には、第1の取り付け部材45の一部(後述の突出部47)が嵌め込まれる係合孔6が形成されている。図6は、枠体2に形成された係合孔6を説明するための図である。係合孔6は、装着部21の対向する2箇所に形成されている。係合孔6は、突出部47が挿脱可能な形状をもつ挿入部61と、この係合孔6に挿入された突出部47が係合孔6から離脱するのを阻止する形状をもつ係止部62とを有する。加えて、係合孔6は、挿入部61に挿入された突出部が係止部62に移行することを許容する形状である。具体的には、係合孔6は、図6に示されるように、大小2つの円の中心を結ぶ直線が装着部21の長手方向に平行になるように、大小2つの円を並べて、小円における前記中心を結ぶ直線に平行な2本の接線により、大小2つの円が連結されたような形状の孔である。この場合、大円の孔が挿入部61、小円の孔が係止部62になる。大円(挿入部61)の直径は、突出部47の大径部47aの直径よりもやや大きい。また、小円(係止部62)の直径は、突出部47の小径部47bよりやや大きく、大径部47aの直径より小さい。これにより、突出部47が挿入部61から係止部62へ移行すると、大径部47aが枠体2の装着部21に係合して、突出部47が係合孔6から離脱するのを阻止することができる。
【0042】
この第1の取り付け部材45を設けることにより、第1アーム41および第2アーム42を直接枠体2に連結する必要がなくなる。すなわち、第1の取り付け部材45を枠体2に嵌合させて、第1の取り付け部材45をいくらかスライドさせるだけで、枠体2と連結部4と扉3とを一体にすることができる。
【0043】
第2の取り付け部材46は、扉3に固定されるもので、この第2の取り付け部材46に第1アーム41および第2アーム42の他方の端が回動可能に連結されている。第2の取り付け部材46は、略L字状を呈しており、扉3の角のうちの特定の角を挟む両外側面を外側から覆うように扉3に固定されている。これにより、扉3の変形、特に角の角度の変化を有効に抑止することができる。たとえば、図4の場合には、枠体2の隣り合う2つの角の外側に第2の取り付け部材46を配置し、扉3に形成されたリブ31bをかしめる(具体的には、扉3のフレーム31とリブ31bとの間に第2の取り付け部材46を配置して、リブ31bの一部を強打して塑性変形させ、第2の取り付け部材46をリブ31bとフレーム31との間に挟持する)ことにより、第2の取り付け部材46が扉3に固定されている。略L字状の第2の取り付け部材46を扉3のコーナーに取り付けることで、フレーム31の強度を向上させることができる。フレーム31の強度を向上させることで、フレーム31の変形に伴う第1アーム41および第2アーム42への負荷を低減することができる。また、第2の取り付け部材46を、リブ31bで固定しやすくするために、第2の取り付け部材46の上縁、下縁に、略凹状の切り込みを何箇所か形成してもよい。リブ21bを、ちょうど、この切り込みに嵌るようにかしめつけて、第2の取り付け部材46を固定する。第2の取り付け部材46は、扉3の製造段階で工場等において、第1アーム41と第2アーム42とともに、あらかじめ扉3に固定される。このように、第2の取り付け部材46を介して、連結部4を扉3に固定すると、工場等での扉3と連結部4とを連結する組み立て作業が容易になる。また、第2の取り付け部材46には、その2箇所に、第1アーム回転軸43aと、第2アーム回転軸44aとを貫通させるための孔が形成されている。第1アーム41および第2アーム42は、第2の取り付け部材46の外側表面(フレーム31に接する面の反対側の面)に連結されている(図5(b)参照)。また、フレーム31の第2の取り付け部材46が固定されない2箇所の角には、当該フレーム31の剛性を高めるための補強材33が固定されている。この補強材33は、フレーム31の角を挟む両外側面を外側から覆う形状(略L字状)を呈している。補強材33はフレーム31の隣り合う2つの角の外側に配置され、フレーム31とリブ31bとの間に挟持されている。
【0044】
図7は、連結部4が、枠体2と扉3の間に位置していることを説明するための断面図である。図7に示されるように、第1の取り付け部材45は、枠体2の装着部21の内側面に接するように取り付けられ、第2の取り付け部材46は、扉3のフレーム31の外側面に接するように取り付けられている。図8は、連結部4のリンク機構の状態を説明するための図であり、扉3を閉めた状態で、図7のA−Aの位置を切断したものである。図8に示されるように、扉3を閉じた状態では、装着部21とフレーム31との間に連結部4が収められる。
【0045】
ここで、連結部4の構造を具体的に説明する。連結部4は、第1アーム41、第2アーム42、第1の取り付け部材45および第2の取り付け部材46のほかに、第1アーム41の両端を軸支するための第1アーム回転軸43a、43bと、第2アーム42の両端を軸支するための第2アーム回転軸44a、44bとを備えている。第1アーム回転軸43a、43bおよび第2アーム回転軸44a、44bとしては、扉3を支える強度を有し、第1アーム41と第2アーム42を円滑に回動させるものであれば、とくに限定されるものではない。とくに、本発明では、図7に示されるように、第1アーム回転軸43a、43bおよび第2アーム回転軸44a、44bとして、着脱不能なリベットなどを用いることができるので、従来のように着脱可能な螺子などを回転軸として用いた場合よりも、第1の取り付け部材45または第2の取り付け部材46と第1アーム41および第2アーム42とを強固に枢結することができる。
【0046】
また、連結部4は、鋼材により形成されていることが好ましい。枠体2および扉3がアルミニウム合金により形成され、連結部4が鋼材により形成されていることにより、開閉装置100全体の重量増大が回避されながら、特に強度的負担の大きい連結部4の強度を十分に確保することができる。さらに、第1の取り付け部材45は、枠体2に当接しているので、アルミニウム合金製の枠体2を第1の取り付け部材45の鋼材で補強することになり、枠体2の歪みを防止することができる。
【0047】
ここで、留め具5について詳細に説明する。留め具5は、扉3が枠体2から離脱するのを防ぐためのものである。図9は、実施の形態1の留め具5を説明するための斜視図であり、(a)は留め具5を外している状態を示し、(b)は留め具5を掛けた状態を示している。扉3に固着される留め具5は、図9(a)及び(b)に示されるように、扉3を枠体2に掛止するための回転片51と、回転片51の回転の中心であり、作業者が、留め具5の操作を施すための軸52と、軸52を扉3のフレーム31に保持するための固定手段53とから構成されている。
【0048】
回転片51は、板状を呈しており、その面が軸52の軸線方向に対して垂直に固着されている。回転片51には、扉3のフレーム31に係わり合って回転片51の回転を係止するための回転止め51aと、回転片51をスムーズに装着部21の上縁に掛けるための傾斜部51bとが形成されている。回転止め51aは、回転片51の片面から下方向にほぼ直立した形状を呈している。傾斜部51bは、回転止め51aのちょうど対角線上に位置しており、回転止め51aの直立方向と反対の方向に向けて傾斜している。使用時には、回転片51の下面が枠体2の装着部21の上縁に当接して、扉3が枠体2から離脱するのを防ぐ。
【0049】
軸52は、上端が回転片51に固着され、下端がフレーム31の当接片31aに形成された孔に貫通されている。この当接片31aに形成された孔は、軸52に形成された溝52aを、開閉装置100の表面に露出させるために形成されたものである。軸52の下端面には、溝52aが形成されている。この溝52aは、作業者が軸52を回転させるときに操作する部分である。具体的には、作業者が天井Cに装着された開閉装置100を開閉する際に、当接片31aの孔から露出した軸52の溝52aに、コインのヘリやドライバーの先端などを係合させて軸52を回転させる。
【0050】
固定手段53は、部材の中央に直線状に凹設された保持部53bと、保持部53bの両側に設けられた板状の固定部53aとからなる部材である。固定手段53は、保持部53bに軸52を保持した状態で、固定部53aをフレーム31の外側表面に当接させて、フレーム31の外側面に固定される。図10は、留め具5の他の一例を説明するための斜視図であり、(a)は留め具5を外している状態を示し、(b)は留め具5を掛けている状態を示している。図9の留め具5が金属製であるのに対し、図10の留め具5が樹脂製である以外は、図9(a)、(b)に示した留め具5とほぼ同様の構成であるので、図9(a)、(b)に示した留め具5と同一の機能を有する部分には同一の符号を付して、図10(a)、(b)の留め具の説明を省略する。
【0051】
次に、この構成により、以下で実施の形態1の天井点検口の開閉装置100の取り付け方法について図面を参照しながら説明する。図11(a)は、扉3および該扉3に固定された連結部4を、枠体2に連結するときの状態を説明するための図であり、第1の取り付け部材45の突出部47を枠体2に形成された係合孔6に嵌め合わせた状態を示している。図11(b)は、扉3および該扉3に固定された連結部4を、枠体2に連結するときの状態を説明するための図であり、連結部4を第1の取り付け部材45の切り欠き45bに当接するまで矢印A方向にスライドさせた状態を示している。
【0052】
まず、作業者は、枠体2に吊り金具7を装着して、枠体2のみを天井Cに形成された孔Pの側縁に固定する(図3参照)。
【0053】
つぎに、作業者は、あらかじめ工場等で連結部4と一体にされた扉3を、枠体2に連結する。まず、図11(a)に示されるように、連結部4の第1の取り付け部材45に設けられた突出部47を、枠体2に形成された係合孔6の挿入部61に嵌め込む。つぎに、図11(b)に示されるように、作業者は、第1の取り付け部材45を枠体2の長手方向に沿って(矢印A方向へ向けて)リブ21b上をスライドさせる。リブ21b上を有効に活用して第1の取り付け部材45の案内を行うことができるとともに、この第1の取り付け部材45が枠体2から脱落することをより確実に防ぐことができる。このとき、第1の取り付け部材45に設けられた突出部47は、係合孔6の挿入部61から係合孔6の係止部62へ、枠体2の長手方向に沿って移動する。枠体2に設けられた係合孔6の挿入部61に、第1の取り付け部材45の突出部47を挿入し、そのまま突出部47を挿入部61から係止部62に移行させるという簡単な操作で、第1の取り付け部材を枠体に係止させることができる。枠体2の長手方向の大きな寸法を利用して突出部47の移行ストロークを十分に確保することができる。また、同時に、第1の取り付け部材45に形成された切り欠き45bには、枠体2に設けられた螺子24aが係合する。第1の取り付け部材45は、この螺子24aと突出部47の2箇所で支持される。これにより、第1の取り付け部材45の回転を防ぎ、第1の取り付け部材45は、所定の位置に固定される。
【0054】
以上の実施の形態によれば、まず、枠体2のみを天井Cに形成された孔Pの周縁に沿って装着すればよいので、作業者は、この枠体2を装着する際に扉3の重量まで支える必要がない。しかも、第1アーム41および第2アーム42の端部が予め共通の第1の取り付け部材に連結されているので、この第1の取り付け部材45を枠体2に装着するだけで枠体2に連結部4および扉3を容易に連結することができる。
【0055】
なお、上記実施の形態では、第1の取り付け部材45に突出部47を設け、枠体2に係合孔6を形成した形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、第1の取り付け部材に係合孔を形成し、枠体に突出部を設けた形態であってもよい。
【0056】
また、上記実施の形態では、第1アーム41、第2アーム42を第2の取り付け部材46を介して扉3に連結している形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、第2の取り付け部材を設けずに、1対のアームを直接扉に連結する形態であってもよい。第1の取り付け部材45があればよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、第1の取り付け部材45を枠体2に嵌合させ、第2の取り付け部材46を扉3に固定している形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1の取り付け部材を扉に嵌合させ、第2の取り付け部材を枠体2に固定している形態であってもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、枠体2を吊り金具7を介して天井に施工された下地材に固定される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、枠体2を直接天井に固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施の形態1の天井点検口の開閉装置を説明するための斜視図である。
【図2】実施の形態1の枠体を説明するための斜視図である。
【図3】実施の形態1の枠体を天井に装着した状態を説明するための断面図である。
【図4】実施の形態1の扉を説明するための斜視図である。
【図5】実施の形態1の連結部を説明するための斜視図であり、(a)は連結部の内側を示し、(b)は連結部の外側を示している。
【図6】実施の形態1の枠体に形成された係合孔を説明するための図である。
【図7】実施の形態1の連結部が、枠体と扉の間に位置していることを説明するための断面図である。
【図8】図7のA−A断面図であり、扉を閉めた状態における連結部のリンク機構の状態を説明するための図である。
【図9】実施の形態1の留め具を説明するための斜視図であり、(a)は留め具を外している状態を示し、(b)は留め具を掛ける状態を示している。
【図10】留め具の他の一例を説明するための斜視図であり、(a)は留め具を外している状態を示し、(b)は留め具を掛ける状態を示している。
【図11】扉および該扉に固定された連結部が、枠体に連結されるときの状態を説明するための図である。
【図12】従来の天井点検口の開閉装置を天井に装着した状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
2 枠体
21b リブ
3 扉
4 連結部
41 第1のアーム
42 第2のアーム
45 第1の取り付け部材
45a 突出部
46 第2の取り付け部材
6 係合孔
61 挿入部
62 係止部
100 天井点検口の開閉装置
C 天井
P 天井に形成された孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に形成された孔の周縁に沿って当該天井に固定され、点検口を囲む枠体と、
点検口を開閉するための扉と、
開閉時に前記扉が前記枠体に干渉しないように前記枠体に前記扉を連結するための連結部とを有する天井点検口の開閉装置であって、
前記連結部が、
前記枠体と前記扉との間に介在し、一方の端が前記扉に回動可能に連結される複数本のアームと、
前記各アームの他方の端がそれぞれ回動可能に連結され、かつ、その連結状態のまま前記枠体に着脱可能な第1の取り付け部材とを有することを特徴とする天井点検口の開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載の天井点検口の開閉装置において、
前記枠体及び前記第1の取り付け部材のうちのいずれか一方に係合孔が設けられ、他方に前記係合孔に挿入される突出部が設けられ、
前記係合孔は、前記突出部が挿脱可能な形状をもつ挿入部と、当該係合孔に挿入された突出部が係合孔から離脱するのを阻止する形状をもつ係止部とを有し、かつ、前記挿入部に挿入された前記突出部が前記係止部に移行することを許容する形状を有することを特徴とする天井点検口の開閉装置。
【請求項3】
請求項2記載の天井点検口の開閉装置において、
前記係合孔は、前記挿入部に挿入された前記突出部が前記枠体の長手方向に沿って前記係止部に移行する形状を有することを特徴とする天井点検口の開閉装置。
【請求項4】
請求項3記載の天井点検口の開閉装置において、
前記枠体は、その内側面から内方に突出し、かつ、当該枠体の長手方向に延びるリブを有し、
前記第1の取り付け部材は、前記リブ上に支持された状態で当該リブに沿ってスライド可能な形状を有し、このスライドによって前記突出部が前記挿入部から前記係止部に移行することを特徴とする天井点検口の開閉装置。
【請求項5】
請求項1記載の天井点検口の開閉装置において、
前記枠体は、その内側から内方に突出し、かつ、当該枠体の長手方向に延びるリブを有し、前記第1の取り付け部材は、前記リブ上に支持された状態で前記枠体に取り付けられることを特徴とする天井点検口の開閉装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の天井点検口の開閉装置において、
前記枠体及び前記扉はアルミニウム合金により形成されたものであり、
前記連結部は鋼材により形成されたものであることを特徴とする天井点検口の開閉装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の天井点検口の開閉装置において、
前記各アームの他方の端がそれぞれ回動可能に連結され、かつ、その連結状態で前記扉に固定される第2の取り付け部材を備えることを特徴とする天井点検口の開閉装置。
【請求項8】
請求項7記載の天井点検口の開閉装置において、
前記扉は複数の角をもつ形状を有し、
前記第2の取り付け部材は、前記扉の角のうちの特定の角を挟む両外側面を外側から覆う形状を有し、当該外側面にそれぞれ固定されることを特徴とする天井点検口の開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−280780(P2008−280780A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126745(P2007−126745)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)