天井部の吊下装置
【課題】天井部から吊下された被吊下体の揺動を静止状態へ速やかに収束できる天井部の吊下装置を提供する。
【解決手段】建物等の天井部21に、剛体よりなる複数の吊下部材23を介して被吊下体22を吊下する。吊下部材23の両端と天井部21及び被吊下体22との間には、吊下部材23の傾動を許容するための球面軸受24A,24B等よりなる許容構造を設ける。天井部21と被吊下体22との間には、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーを吸収するための粘弾性体等の吸収部材35を設ける。
【解決手段】建物等の天井部21に、剛体よりなる複数の吊下部材23を介して被吊下体22を吊下する。吊下部材23の両端と天井部21及び被吊下体22との間には、吊下部材23の傾動を許容するための球面軸受24A,24B等よりなる許容構造を設ける。天井部21と被吊下体22との間には、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーを吸収するための粘弾性体等の吸収部材35を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具等を天井部に吊り下げる天井部の吊下装置に関するものであって、特に、地震や強風等による建物の揺れや、波浪等による船舶の揺れ等によって生じる横揺れを抑制するようにした照明器具の吊下装置に関するものである。この明細書において、「天井部」とは、照明器具等が吊り下げられる部分を意味し、建物内の部屋、廊下、ホール等の天井部のみならず、例えば船舶内の部屋、廊下、ホール、デッキ等の天井部を含む。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吊下装置としては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。
この従来構成においては、建物の天井部に設備機器を支持する吊り天井部材が、吊りボルトを介して吊下支持されている。吊り天井部材の端部と建物の側壁との間には、吊り天井部材の横方向への相対変位を吸収するための伸縮可能な変形吸収部材が介装されている。吊り天井部材と天井部との間には、吊り天井部材の横方向への揺動を抑止するための複数の制振ダンパが傾斜状に延びるように設置されている。そして、地震により吊り天井部材に揺動が生じたとき、その加速度が想定の範囲内である場合には、変形吸収部材及び制振ダンパにより、吊り天井部材の揺動が抑止されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−240538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来構成において、制振ダンパはその軸方向である一方向の動きにしか対応できないため、吊り天井部材の揺動方向が前記一方向以外の方向である場合には、充分な揺動抑止効果を得ることができないことがある。しかも、想定外の大地震によって吊り天井部材が大きく揺動した場合は、制振ダンパに過大な圧縮荷重が作用して、その制振ダンパが座屈により破損し、このため吊り天井部材の揺動を抑止できなくなり、吊り天井部材が壁等との衝突によって破損するおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、照明器具等の被吊下体の揺動を効果的に抑止することができて、被吊下体の揺動状態から静止状態への収束性を高めることができる天井部の吊下装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、建物等の構造物の天井部に複数の吊下部材を介して被吊下体を吊下した天井部の吊下装置において、天井部と被吊下体との間には天井部と被吊下体との間の揺動変位にともなうエネルギーを吸収するための非拘束性の吸収手段を設けたことを特徴としている。ここで、非拘束性の吸収手段とは、エネルギーの吸収方向が一方向に制限されていない吸収手段を示す。また、本発明における天井部と被吊下体との間の揺動変位を、以後は被吊下体の揺動ということにする。
【0007】
従って、本発明の天井部の吊下装置においては、地震が発生すると、許容手段により吊下部材の傾動が許容されて、被吊下体が横方向に揺動される。よって、地震時の揺れが、天井部から被吊下体に直接伝達されるのを抑制することができる。また、被吊下体の揺動時には、吸収手段により被吊下体の揺動にともなうエネルギーが吸収される。このため、被吊下体を揺動状態から静止状態へ速やかに収束させることができる。そして、吸収手段が非拘束性であるため、従来技術とは異なり、多方向の揺動を吸収手段の破損をともなうことなく吸収できる。
【0008】
前記の構成において、前記吊下部材を剛体によって構成するとともに、吊下部材の傾動を許容する許容手段を設けてもよい。
前記の構成において、前記許容手段は吊下部材の両端と天井部及び被吊下体との間に介在された球面軸受であるとよい。
【0009】
前記の構成において、前記吸収手段は弾性体であるとよい。
前記の構成において、前記吸収手段は粘弾性体であるとよい。
前記の構成において、一対の吊下部材間に変位部材を架設し、その変位部材と被吊下体または天井部との間に吸収手段を介在させるとよい。
【0010】
前記の構成において、前記変位部材と吸収手段との間に球面軸受を介在させるとよい。
前記の構成において、前記吸収手段は摩擦抵抗付与手段であるとよい。
前記の構成において、前記摩擦抵抗付与手段は、前記天井部と被吊下体との間の揺動変位にともなって自身の延長方向に移動される索と、その索に摩擦抵抗を付与する抵抗付与部材とを備えるとよい。ここで、索の移動は被吊下体に対する相対移動を指す。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、被吊下体の揺動状態を静止状態へ速やかに収束させることができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態の天井部の吊下装置を示す断面図。
【図2】図1の2−2線における断面図。
【図3】図1の動作状態を示す断面図。
【図4】第2実施形態の天井部の吊下装置を示す要部断面図。
【図5】図4の5−5線における部分断面図。
【図6】第3実施形態の天井部の吊下装置を示す断面図。
【図7】図6の7−7線における断面図。
【図8】図6の吊下装置における索の取付部の構成を拡大して示す要部斜視図。
【図9】同吊下装置における索の案内部の構成を拡大して示す要部斜視図。
【図10】同吊下装置における索への摩擦抵抗付与部の構成を拡大して示す要部斜視図。
【図11】図6の動作状態を示す断面図。
【図12】第4実施形態の建物における吊下装置を示す断面図。
【図13】第3実施形態の変更例を示す断面図。
【図14】第3実施形態の別の変更例を示す断面図。
【図15】第3実施形態のさらに別の変更例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下に、本発明を具体化した天井部の吊下装置の第1実施形態を図1〜図3に従って説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、この実施形態の吊下装置においては、建物や船舶等の構造物の部屋,廊下,ホール等における天井部21に大型の照明器具等よりなる被吊下体22が、金属棒や金属パイプ等の剛体よりなる複数本の吊下部材23を介して吊下支持されている。各吊下部材23の上端部と天井部21との間、及び各吊下部材23の下端部と被吊下体22との間には、吊下部材23の傾動を許容するための許容手段としての球面軸受24A,24Bが設けられている。上側の球面軸受24Aは、吊下部材23の上端部に取り付けられたほぼ半球状の球面体25と、その球面体25と係合するように天井部21の下部の支持ブラケット26に形成された支持座27とから構成されている。下側の球面軸受24Bは、吊下部材23の下端部に取り付けられたほぼ半球状の球面体28と、その球面体28と係合するように被吊下体22の上面に形成された支持座29とから構成されている。
【0015】
前記被吊下体22の上面近傍において、被吊下体22の図1の左右方向に並設された各一対の吊下部材23の間には、金属棒や金属パイプ等の剛体よりなる変位部材30がジョイント31を介して被吊下体22の前記左右方向へ相対変位可能に架設されている。各ジョイント31は、変位部材30の両端部に固定された平面形ほぼ横U字状の取付金具32と、各吊下部材23の下端近傍の外周に取り付けられた一対の支持金具33と、取付金具32の両側壁と各支持金具33との間に介在された水平方向に延びる一対の連結軸34とより構成されている。そして、図3に示すように、被吊下体22の揺動により各吊下部材23が傾動されたとき、変位部材30が各吊下部材23に対して両ジョイント31の連結軸34を中心に相対回動されて、被吊下体22に対して平行状態を保ちながら横方向へ相対変位されるようになっている。
【0016】
図1及び図2に示すように、前記変位部材30と被吊下体22との間には、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーを吸収するための吸収手段としての板状の吸収部材35が介在されている。吸収部材35は特殊ブチルゴム等の粘弾性体により構成されており、この吸収部材35は、図1の水平方向及び厚さ方向に変形可能であって、このため非拘束性で無方向性の変形機能を有している。吸収部材35は、上下一対の挟着板36,37間に狭着固定した状態で、被吊下体22の上面に取り付けられている。上側挟着板36の上面には一対の連結板38が突設され、両連結板38には上下方向に延びる長孔38aが形成されている。変位部材30には、両連結板38の長孔38aに係合可能な連結ピン39が貫設されている。そして、連結ピン39の両端部が両連結板38の長孔38aに係合されることにより、変位部材30が吸収部材35の上側挟着板36に対して、変位部材30の延長方向へ一体移動可能にかつ上下方向へ相対移動可能に連結されている。
【0017】
次に、前記のように構成された天井部の吊下装置の作用を説明する。
この天井部の吊下装置において、通常時には図1及び図2に示すように、被吊下体22が複数本の吊下部材23を介して静止状態に吊下支持されている。この状態においては、各吊下部材23が鉛直方向に平行に延長配置されて、各一対の吊下部材23間に架設された変位部材30が被吊下体22に対して平行に延びるとともに、吊下部材23に対して直交する方向に延びるように配置されている。このため、図1に示すように、変位部材30と被吊下体22との間に介在された粘弾性体よりなる吸収部材35は、弾性変形されることなく断面長四角状の原形状態に保持されている。
【0018】
この被吊下体22の吊下状態において地震や波浪等により被吊下体22に横方向への揺動力が作用すると、図3に示すように、球面軸受24A,24Bにより各吊下部材23の傾動が許容されて、被吊下体22が天井部21と平行状態を保ちながら横方向に揺動される。従って、被吊下体22が天井部21に拘束状態で固定されている場合と異なり、天井部21の揺れが吊下部材23を介して被吊下体22に直接伝達されることはなく、被吊下体22や吊下部材23と被吊下体22との連結部等に大きな荷重がかかるおそれはない。
【0019】
また、前記被吊下体22の揺動時には、図3に示すように、吊下部材23の傾動にともなって、変位部材30が被吊下体22に対して平行状態を保ちながら横方向へ相対変位される。この変位部材30の変位により、粘弾性体よりなる吸収部材35が自身の粘弾性力に抗して変形されて、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーが吸収されて、減衰される。その結果、被吊下体22の揺動が抑止されて、被吊下体22の揺動状態から静止状態へ収束時間が早められる。従って、建物等の揺れやすい方向に変位部材30が延長されるように、変位部材30を吊下部材23間に架設すれば、被吊下体22の揺動を最小限にすることができて、照明器具の破損等を防止することができる。
【0020】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この天井部の吊下装置においては、吊下部材23と天井部21及び被吊下体22との間には、吊下部材23の傾動を許容するための許容構造を有する球面軸受24A,24Bが設けられている。このため、天井部21が揺動しても、被吊下体22の揺動を小さく抑えることができる。
【0021】
(2) この天井部の吊下装置においては、天井部21と被吊下体22との間には、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーを吸収するための無方向性の吸収部材35が設けられている。このため、天井部21と被吊下体22との間に揺動変位が生じた場合、吸収部材35はその厚さ方向,斜め方向及び外周方向のいずれの方向にも変形できる。よって、被吊下体22に作用する揺動のエネルギーが効果的に吸収されて減衰される。このため、被吊下体22の揺動が増幅されるのを抑止することができてばかりでなく、被吊下体22を揺動状態から静止状態へ速やかに収束させることができる。よって、被吊下体22の壁等との衝突による破損等を防止することができる。
【0022】
(3) この天井部の吊下装置においては、吊下部材23の両端と天井部21及び被吊下体22との間に球面軸受24A,24Bが介在されている。このため、簡単な構造によって、吊下部材23の傾動を許容することができる。
【0023】
(4) この天井部の吊下装置においては、前記吸収構造が粘弾性体よりなる吸収部材35から構成されている。このため、部品点数を最小限にして構成及び組み付けを簡単にできるとともに、粘弾性作用により、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーを有効に吸収することができる。しかも、粘弾性体の材質や形状等に応じてエネルギー吸収効果を簡単に把握することができる。
【0024】
(5) この天井部の吊下装置においては、一対の吊下部材23間に変位部材30が架設され、その変位部材30と被吊下体22との間に粘弾性体よりなる吸収部材35が介在されている。このため、被吊下体22の揺動時に吊下部材23が傾動されると、変位部材30が被吊下体22に対して相対変位されて、吸収部材35が自身の粘弾性力に抗して変形される。よって、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーを効果的に吸収することができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した天井部の吊下装置の第2実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0026】
この第2実施形態においては、図4に示すように、変位部材30の両端部が連結軸41を介してジョイント31の取付金具32に回動可能に取り付けられている。このため、変位部材30の両端部が一対の吊下部材23に対して、互いに直行する方向に延びる連結軸41及び連結軸34を中心に相対回動可能に連結され、被吊下体22の水平面内の全方向への移動が許容される。
【0027】
図4及び図5に示すように、前記被吊下体22上に配置された粘弾性体よりなる吸収部材35の上側挟着板36と変位部材30との間には、球面軸受42が介在されている。この球面軸受42は、吸収部材35の上側挟着板36上に突設された球面体43と、その球面体43と係合するように変位部材30の外周下部に支持リング44を介して取り付けられた球面凹状のキャップ体45とより構成されている。このため、球面軸受42は被吊下体22の全方向の変位に追随することが可能になる。
【0028】
そして、被吊下体22が一対の吊下部材23間に架設された変位部材30の延長方向に揺動された場合には、前記第1実施形態の場合と同様に、吸収部材35が弾性変形されて、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーが吸収される。また、図5に示すように、被吊下体22が変位部材30の延長方向と交差する方向に揺動された場合には、球面軸受42を介して吸収部材35の上側挟着板36が傾動される。このため、前記と同様に吸収部材35が弾性変形されて、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーが吸収される。
【0029】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)〜(5)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(6) この天井部の吊下装置においては、変位部材30が吊下部材23に対して、互いに直行する軸を中心に相対回動可能に連結されるとともに、前記変位部材30と粘弾性体よりなる吸収部材35との間に球面軸受42が介在されている。このため、被吊下体22が一対の吊下部材23間に架設された変位部材30の延長方向に揺動された場合のみでなく、変位部材30の延長方向と交差する方向に揺動された場合においても、吸収部材35が弾性変形されて、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーを吸収することができる。従って、建物がどの方向に揺動しても、揺動エネルギーを円滑に吸収できる。
【0030】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した天井部の吊下装置の第3実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0031】
この第3実施形態においては、図6及び図7に示すように、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーを吸収するための吸収手段として、被吊下体22の揺動に対して摩擦抵抗を付与する摩擦抵抗付与手段としての摩擦抵抗付与機構46が設けられている。この摩擦抵抗付与機構46は、被吊下体22の揺動にともなって自身の延長方向に移動されるように、複数の吊下部材23間に張設された索47と、その索47に摩擦抵抗を付与する抵抗付与部材48とより構成されている。
【0032】
図6及び図8に示すように、被吊下体22の長さ方向に並設された複数の吊下部材23のうちで、外側の2本の吊下部材23の上端近傍には、索47の両端部を止着するための止着部材49が取付金具50を介して回動可能(矢印方向)に取り付けられている。図6及び図9に示すように、内側の2本の吊下部材23の下端近傍には、索47の中間部を案内するための案内ローラ51が取付金具52を介して回転可能に取り付けられている。そして、止着部材49及び案内ローラ51により、索47が複数の吊下部材23間に正面ほぼ逆台形状をなすように張設されている。
【0033】
図6及び図10に示すように、前記抵抗付与部材48は、被吊下体22の上面に固定された第1挟圧板53と、その第1挟圧板53との間で索47を挟圧するように、第1挟圧板53上に一対の案内ピン54を介して上下動可能に配置された第2挟圧板55とより構成されている。各案内ピン54の先端部の座金56と第2挟圧板55との間には、第2挟圧板55を第1挟圧板53に向かって押圧付勢するためのバネ57が介装されている。従って、索47には第1,第2挟圧板55間において挟圧面内の全方向において抵抗が付与される。
【0034】
そして、図11に示すように、天井部21と被吊下体22との間の揺動変位の発生により各吊下部材23が傾動されて、被吊下体22が吊下部材23の並設方向の一方側に揺動された場合には、索47が自身の延長方向に沿って被吊下体22の揺動方向と反対側に相対移動される。また、被吊下体22が吊下部材23の並設方向と交差する方向に揺動された場合には、索47が自身の延長方向と交差する方向に移動される。このとき、抵抗付与部材48の両挟圧板53,55間において、索47に摩擦抵抗が付与されて、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーが吸収される。このため、被吊下体22が揺動状態から静止状態へ速やかに収束される。
【0035】
従って、この第3実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)及び(2)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(7) この天井部の吊下装置においては、エネルギーの吸収手段を構成する摩擦抵抗付与機構46が、吊下部材23間に張設された索47と、その索47に摩擦抵抗を付与する抵抗付与部材48とより構成されている。このため、摩擦抵抗付与機構46は安価な部品を用いて簡単に構成できる。
【0036】
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した天井部の吊下装置の第4実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0037】
この第4実施形態においては、図12に示すように、摩擦抵抗付与機構46の抵抗付与部材48が、被吊下体22の上面に支持部材58を介して回転可能及び上下方向へ移動可能に支持された押圧ローラ59と、その押圧ローラ59を索47に向かって押し付けるためのバネ60とから構成されている。そして、地震の発生時に、被吊下体22の揺動にともなって索47が自身の延長方向に移動されるとき、押圧ローラ59の押し付けにより索47に摩擦抵抗が付与されて、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーが吸収される。
【0038】
従って、この第4実施形態によれば、前記第1及び第3実施形態における(1)、(2)及び(7)に記載の効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0039】
・ 前記第1及び第2実施形態において、変位部材30を天井部21の下面に近接して一対の吊下部材23間に架設し、その変位部材30と天井部21との間に粘弾性材等よりなる吸収部材35を介在させること。
【0040】
・ 前記第1及び第2実施形態において、挟着板36,37間に例えばシリコーンゴムを介在させることにより吸収部材35を弾性材により構成すること。
・ 前記第3実施形態において、図13に示すように、被吊下体22の長さ方向に並設された複数の吊下部材23のうちで、内側の2本の吊下部材23の上端近傍に止着部材49を取り付けるとともに、外側の2本の吊下部材23の下端近傍に案内ローラ51を取り付ける。そして、止着部材49及び案内ローラ51により、索47を複数の吊下部材23間に正面ほぼ台形状をなすように張設すること。
【0041】
・ 前記第3実施形態において、図14に示すように、被吊下体22の長さ方向に並設された複数の吊下部材23のうちで、外側の2本の吊下部材23の下端近傍に止着部材49を取り付けるとともに、内側の2本の吊下部材23の上端近傍に案内ローラ51を取り付ける。そして、止着部材49及び案内ローラ51により、索47を複数の吊下部材23間に正面ほぼ台形状をなすように張設する。また、索47に摩擦抵抗を付与するための抵抗付与部材48を天井部21の下面に配置すること。
【0042】
・ 前記第3実施形態において、図15に示すように、被吊下体22の長さ方向に並設された複数の吊下部材23のうちで、内側の2本の吊下部材23の下端近傍に止着部材49を取り付けるとともに、外側の2本の吊下部材23の上端近傍に案内ローラ51を取り付ける。そして、止着部材49及び案内ローラ51により、索47を複数の吊下部材23間に正面ほぼ逆台形状をなすように張設する。また、抵抗付与部材48を天井部21の下面に配置すること。
【0043】
・ 前述した図13〜図15に示す第3実施形態の変更例において、抵抗付与部材48を第4実施形態の押圧ローラ59等により構成すること。
・ 前記第3実施形態、第4実施形態及び図13〜図15に示す変更例において、索47の両端を止着するための止着部材49を天井部21の下面または被吊下体22の上面に取り付けること。
【0044】
・ 前記第3実施形態、第4実施形態及び図13〜図15に示す変更例において、索47を案内するための案内ローラ51を、吊下部材23の端部と対応する被吊下体22の上面または天井部21の下面に取り付けること。
【0045】
・ 前記各実施形態において、照明器具とは異なる被吊下体22,例えば吊り天井等の吊下装置に具体化すること。
【符号の説明】
【0046】
21…建物等の構造物の天井部、22…被吊下体、23…吊下部材、24A,24B…許容手段としての許容構造を構成する球面軸受、25,28…球面体、27,29…支持座、30…変位部材、31…ジョイント、35…吸収手段としての吸収構造を構成する吸収部材、42…球面軸受、43…球面体、45…キャップ体、46…摩擦抵抗付与手段としての摩擦抵抗付与機構、47…索、48…抵抗付与部材、49…止着部材、51…案内ローラ、53…第1挟圧板、55…第2挟圧板、57…バネ、59…押圧ローラ、60…バネ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具等を天井部に吊り下げる天井部の吊下装置に関するものであって、特に、地震や強風等による建物の揺れや、波浪等による船舶の揺れ等によって生じる横揺れを抑制するようにした照明器具の吊下装置に関するものである。この明細書において、「天井部」とは、照明器具等が吊り下げられる部分を意味し、建物内の部屋、廊下、ホール等の天井部のみならず、例えば船舶内の部屋、廊下、ホール、デッキ等の天井部を含む。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吊下装置としては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。
この従来構成においては、建物の天井部に設備機器を支持する吊り天井部材が、吊りボルトを介して吊下支持されている。吊り天井部材の端部と建物の側壁との間には、吊り天井部材の横方向への相対変位を吸収するための伸縮可能な変形吸収部材が介装されている。吊り天井部材と天井部との間には、吊り天井部材の横方向への揺動を抑止するための複数の制振ダンパが傾斜状に延びるように設置されている。そして、地震により吊り天井部材に揺動が生じたとき、その加速度が想定の範囲内である場合には、変形吸収部材及び制振ダンパにより、吊り天井部材の揺動が抑止されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−240538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来構成において、制振ダンパはその軸方向である一方向の動きにしか対応できないため、吊り天井部材の揺動方向が前記一方向以外の方向である場合には、充分な揺動抑止効果を得ることができないことがある。しかも、想定外の大地震によって吊り天井部材が大きく揺動した場合は、制振ダンパに過大な圧縮荷重が作用して、その制振ダンパが座屈により破損し、このため吊り天井部材の揺動を抑止できなくなり、吊り天井部材が壁等との衝突によって破損するおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、照明器具等の被吊下体の揺動を効果的に抑止することができて、被吊下体の揺動状態から静止状態への収束性を高めることができる天井部の吊下装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、建物等の構造物の天井部に複数の吊下部材を介して被吊下体を吊下した天井部の吊下装置において、天井部と被吊下体との間には天井部と被吊下体との間の揺動変位にともなうエネルギーを吸収するための非拘束性の吸収手段を設けたことを特徴としている。ここで、非拘束性の吸収手段とは、エネルギーの吸収方向が一方向に制限されていない吸収手段を示す。また、本発明における天井部と被吊下体との間の揺動変位を、以後は被吊下体の揺動ということにする。
【0007】
従って、本発明の天井部の吊下装置においては、地震が発生すると、許容手段により吊下部材の傾動が許容されて、被吊下体が横方向に揺動される。よって、地震時の揺れが、天井部から被吊下体に直接伝達されるのを抑制することができる。また、被吊下体の揺動時には、吸収手段により被吊下体の揺動にともなうエネルギーが吸収される。このため、被吊下体を揺動状態から静止状態へ速やかに収束させることができる。そして、吸収手段が非拘束性であるため、従来技術とは異なり、多方向の揺動を吸収手段の破損をともなうことなく吸収できる。
【0008】
前記の構成において、前記吊下部材を剛体によって構成するとともに、吊下部材の傾動を許容する許容手段を設けてもよい。
前記の構成において、前記許容手段は吊下部材の両端と天井部及び被吊下体との間に介在された球面軸受であるとよい。
【0009】
前記の構成において、前記吸収手段は弾性体であるとよい。
前記の構成において、前記吸収手段は粘弾性体であるとよい。
前記の構成において、一対の吊下部材間に変位部材を架設し、その変位部材と被吊下体または天井部との間に吸収手段を介在させるとよい。
【0010】
前記の構成において、前記変位部材と吸収手段との間に球面軸受を介在させるとよい。
前記の構成において、前記吸収手段は摩擦抵抗付与手段であるとよい。
前記の構成において、前記摩擦抵抗付与手段は、前記天井部と被吊下体との間の揺動変位にともなって自身の延長方向に移動される索と、その索に摩擦抵抗を付与する抵抗付与部材とを備えるとよい。ここで、索の移動は被吊下体に対する相対移動を指す。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、被吊下体の揺動状態を静止状態へ速やかに収束させることができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態の天井部の吊下装置を示す断面図。
【図2】図1の2−2線における断面図。
【図3】図1の動作状態を示す断面図。
【図4】第2実施形態の天井部の吊下装置を示す要部断面図。
【図5】図4の5−5線における部分断面図。
【図6】第3実施形態の天井部の吊下装置を示す断面図。
【図7】図6の7−7線における断面図。
【図8】図6の吊下装置における索の取付部の構成を拡大して示す要部斜視図。
【図9】同吊下装置における索の案内部の構成を拡大して示す要部斜視図。
【図10】同吊下装置における索への摩擦抵抗付与部の構成を拡大して示す要部斜視図。
【図11】図6の動作状態を示す断面図。
【図12】第4実施形態の建物における吊下装置を示す断面図。
【図13】第3実施形態の変更例を示す断面図。
【図14】第3実施形態の別の変更例を示す断面図。
【図15】第3実施形態のさらに別の変更例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下に、本発明を具体化した天井部の吊下装置の第1実施形態を図1〜図3に従って説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、この実施形態の吊下装置においては、建物や船舶等の構造物の部屋,廊下,ホール等における天井部21に大型の照明器具等よりなる被吊下体22が、金属棒や金属パイプ等の剛体よりなる複数本の吊下部材23を介して吊下支持されている。各吊下部材23の上端部と天井部21との間、及び各吊下部材23の下端部と被吊下体22との間には、吊下部材23の傾動を許容するための許容手段としての球面軸受24A,24Bが設けられている。上側の球面軸受24Aは、吊下部材23の上端部に取り付けられたほぼ半球状の球面体25と、その球面体25と係合するように天井部21の下部の支持ブラケット26に形成された支持座27とから構成されている。下側の球面軸受24Bは、吊下部材23の下端部に取り付けられたほぼ半球状の球面体28と、その球面体28と係合するように被吊下体22の上面に形成された支持座29とから構成されている。
【0015】
前記被吊下体22の上面近傍において、被吊下体22の図1の左右方向に並設された各一対の吊下部材23の間には、金属棒や金属パイプ等の剛体よりなる変位部材30がジョイント31を介して被吊下体22の前記左右方向へ相対変位可能に架設されている。各ジョイント31は、変位部材30の両端部に固定された平面形ほぼ横U字状の取付金具32と、各吊下部材23の下端近傍の外周に取り付けられた一対の支持金具33と、取付金具32の両側壁と各支持金具33との間に介在された水平方向に延びる一対の連結軸34とより構成されている。そして、図3に示すように、被吊下体22の揺動により各吊下部材23が傾動されたとき、変位部材30が各吊下部材23に対して両ジョイント31の連結軸34を中心に相対回動されて、被吊下体22に対して平行状態を保ちながら横方向へ相対変位されるようになっている。
【0016】
図1及び図2に示すように、前記変位部材30と被吊下体22との間には、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーを吸収するための吸収手段としての板状の吸収部材35が介在されている。吸収部材35は特殊ブチルゴム等の粘弾性体により構成されており、この吸収部材35は、図1の水平方向及び厚さ方向に変形可能であって、このため非拘束性で無方向性の変形機能を有している。吸収部材35は、上下一対の挟着板36,37間に狭着固定した状態で、被吊下体22の上面に取り付けられている。上側挟着板36の上面には一対の連結板38が突設され、両連結板38には上下方向に延びる長孔38aが形成されている。変位部材30には、両連結板38の長孔38aに係合可能な連結ピン39が貫設されている。そして、連結ピン39の両端部が両連結板38の長孔38aに係合されることにより、変位部材30が吸収部材35の上側挟着板36に対して、変位部材30の延長方向へ一体移動可能にかつ上下方向へ相対移動可能に連結されている。
【0017】
次に、前記のように構成された天井部の吊下装置の作用を説明する。
この天井部の吊下装置において、通常時には図1及び図2に示すように、被吊下体22が複数本の吊下部材23を介して静止状態に吊下支持されている。この状態においては、各吊下部材23が鉛直方向に平行に延長配置されて、各一対の吊下部材23間に架設された変位部材30が被吊下体22に対して平行に延びるとともに、吊下部材23に対して直交する方向に延びるように配置されている。このため、図1に示すように、変位部材30と被吊下体22との間に介在された粘弾性体よりなる吸収部材35は、弾性変形されることなく断面長四角状の原形状態に保持されている。
【0018】
この被吊下体22の吊下状態において地震や波浪等により被吊下体22に横方向への揺動力が作用すると、図3に示すように、球面軸受24A,24Bにより各吊下部材23の傾動が許容されて、被吊下体22が天井部21と平行状態を保ちながら横方向に揺動される。従って、被吊下体22が天井部21に拘束状態で固定されている場合と異なり、天井部21の揺れが吊下部材23を介して被吊下体22に直接伝達されることはなく、被吊下体22や吊下部材23と被吊下体22との連結部等に大きな荷重がかかるおそれはない。
【0019】
また、前記被吊下体22の揺動時には、図3に示すように、吊下部材23の傾動にともなって、変位部材30が被吊下体22に対して平行状態を保ちながら横方向へ相対変位される。この変位部材30の変位により、粘弾性体よりなる吸収部材35が自身の粘弾性力に抗して変形されて、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーが吸収されて、減衰される。その結果、被吊下体22の揺動が抑止されて、被吊下体22の揺動状態から静止状態へ収束時間が早められる。従って、建物等の揺れやすい方向に変位部材30が延長されるように、変位部材30を吊下部材23間に架設すれば、被吊下体22の揺動を最小限にすることができて、照明器具の破損等を防止することができる。
【0020】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この天井部の吊下装置においては、吊下部材23と天井部21及び被吊下体22との間には、吊下部材23の傾動を許容するための許容構造を有する球面軸受24A,24Bが設けられている。このため、天井部21が揺動しても、被吊下体22の揺動を小さく抑えることができる。
【0021】
(2) この天井部の吊下装置においては、天井部21と被吊下体22との間には、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーを吸収するための無方向性の吸収部材35が設けられている。このため、天井部21と被吊下体22との間に揺動変位が生じた場合、吸収部材35はその厚さ方向,斜め方向及び外周方向のいずれの方向にも変形できる。よって、被吊下体22に作用する揺動のエネルギーが効果的に吸収されて減衰される。このため、被吊下体22の揺動が増幅されるのを抑止することができてばかりでなく、被吊下体22を揺動状態から静止状態へ速やかに収束させることができる。よって、被吊下体22の壁等との衝突による破損等を防止することができる。
【0022】
(3) この天井部の吊下装置においては、吊下部材23の両端と天井部21及び被吊下体22との間に球面軸受24A,24Bが介在されている。このため、簡単な構造によって、吊下部材23の傾動を許容することができる。
【0023】
(4) この天井部の吊下装置においては、前記吸収構造が粘弾性体よりなる吸収部材35から構成されている。このため、部品点数を最小限にして構成及び組み付けを簡単にできるとともに、粘弾性作用により、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーを有効に吸収することができる。しかも、粘弾性体の材質や形状等に応じてエネルギー吸収効果を簡単に把握することができる。
【0024】
(5) この天井部の吊下装置においては、一対の吊下部材23間に変位部材30が架設され、その変位部材30と被吊下体22との間に粘弾性体よりなる吸収部材35が介在されている。このため、被吊下体22の揺動時に吊下部材23が傾動されると、変位部材30が被吊下体22に対して相対変位されて、吸収部材35が自身の粘弾性力に抗して変形される。よって、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーを効果的に吸収することができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した天井部の吊下装置の第2実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0026】
この第2実施形態においては、図4に示すように、変位部材30の両端部が連結軸41を介してジョイント31の取付金具32に回動可能に取り付けられている。このため、変位部材30の両端部が一対の吊下部材23に対して、互いに直行する方向に延びる連結軸41及び連結軸34を中心に相対回動可能に連結され、被吊下体22の水平面内の全方向への移動が許容される。
【0027】
図4及び図5に示すように、前記被吊下体22上に配置された粘弾性体よりなる吸収部材35の上側挟着板36と変位部材30との間には、球面軸受42が介在されている。この球面軸受42は、吸収部材35の上側挟着板36上に突設された球面体43と、その球面体43と係合するように変位部材30の外周下部に支持リング44を介して取り付けられた球面凹状のキャップ体45とより構成されている。このため、球面軸受42は被吊下体22の全方向の変位に追随することが可能になる。
【0028】
そして、被吊下体22が一対の吊下部材23間に架設された変位部材30の延長方向に揺動された場合には、前記第1実施形態の場合と同様に、吸収部材35が弾性変形されて、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーが吸収される。また、図5に示すように、被吊下体22が変位部材30の延長方向と交差する方向に揺動された場合には、球面軸受42を介して吸収部材35の上側挟着板36が傾動される。このため、前記と同様に吸収部材35が弾性変形されて、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーが吸収される。
【0029】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)〜(5)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(6) この天井部の吊下装置においては、変位部材30が吊下部材23に対して、互いに直行する軸を中心に相対回動可能に連結されるとともに、前記変位部材30と粘弾性体よりなる吸収部材35との間に球面軸受42が介在されている。このため、被吊下体22が一対の吊下部材23間に架設された変位部材30の延長方向に揺動された場合のみでなく、変位部材30の延長方向と交差する方向に揺動された場合においても、吸収部材35が弾性変形されて、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーを吸収することができる。従って、建物がどの方向に揺動しても、揺動エネルギーを円滑に吸収できる。
【0030】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した天井部の吊下装置の第3実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0031】
この第3実施形態においては、図6及び図7に示すように、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーを吸収するための吸収手段として、被吊下体22の揺動に対して摩擦抵抗を付与する摩擦抵抗付与手段としての摩擦抵抗付与機構46が設けられている。この摩擦抵抗付与機構46は、被吊下体22の揺動にともなって自身の延長方向に移動されるように、複数の吊下部材23間に張設された索47と、その索47に摩擦抵抗を付与する抵抗付与部材48とより構成されている。
【0032】
図6及び図8に示すように、被吊下体22の長さ方向に並設された複数の吊下部材23のうちで、外側の2本の吊下部材23の上端近傍には、索47の両端部を止着するための止着部材49が取付金具50を介して回動可能(矢印方向)に取り付けられている。図6及び図9に示すように、内側の2本の吊下部材23の下端近傍には、索47の中間部を案内するための案内ローラ51が取付金具52を介して回転可能に取り付けられている。そして、止着部材49及び案内ローラ51により、索47が複数の吊下部材23間に正面ほぼ逆台形状をなすように張設されている。
【0033】
図6及び図10に示すように、前記抵抗付与部材48は、被吊下体22の上面に固定された第1挟圧板53と、その第1挟圧板53との間で索47を挟圧するように、第1挟圧板53上に一対の案内ピン54を介して上下動可能に配置された第2挟圧板55とより構成されている。各案内ピン54の先端部の座金56と第2挟圧板55との間には、第2挟圧板55を第1挟圧板53に向かって押圧付勢するためのバネ57が介装されている。従って、索47には第1,第2挟圧板55間において挟圧面内の全方向において抵抗が付与される。
【0034】
そして、図11に示すように、天井部21と被吊下体22との間の揺動変位の発生により各吊下部材23が傾動されて、被吊下体22が吊下部材23の並設方向の一方側に揺動された場合には、索47が自身の延長方向に沿って被吊下体22の揺動方向と反対側に相対移動される。また、被吊下体22が吊下部材23の並設方向と交差する方向に揺動された場合には、索47が自身の延長方向と交差する方向に移動される。このとき、抵抗付与部材48の両挟圧板53,55間において、索47に摩擦抵抗が付与されて、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーが吸収される。このため、被吊下体22が揺動状態から静止状態へ速やかに収束される。
【0035】
従って、この第3実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)及び(2)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(7) この天井部の吊下装置においては、エネルギーの吸収手段を構成する摩擦抵抗付与機構46が、吊下部材23間に張設された索47と、その索47に摩擦抵抗を付与する抵抗付与部材48とより構成されている。このため、摩擦抵抗付与機構46は安価な部品を用いて簡単に構成できる。
【0036】
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した天井部の吊下装置の第4実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0037】
この第4実施形態においては、図12に示すように、摩擦抵抗付与機構46の抵抗付与部材48が、被吊下体22の上面に支持部材58を介して回転可能及び上下方向へ移動可能に支持された押圧ローラ59と、その押圧ローラ59を索47に向かって押し付けるためのバネ60とから構成されている。そして、地震の発生時に、被吊下体22の揺動にともなって索47が自身の延長方向に移動されるとき、押圧ローラ59の押し付けにより索47に摩擦抵抗が付与されて、被吊下体22の揺動にともなうエネルギーが吸収される。
【0038】
従って、この第4実施形態によれば、前記第1及び第3実施形態における(1)、(2)及び(7)に記載の効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0039】
・ 前記第1及び第2実施形態において、変位部材30を天井部21の下面に近接して一対の吊下部材23間に架設し、その変位部材30と天井部21との間に粘弾性材等よりなる吸収部材35を介在させること。
【0040】
・ 前記第1及び第2実施形態において、挟着板36,37間に例えばシリコーンゴムを介在させることにより吸収部材35を弾性材により構成すること。
・ 前記第3実施形態において、図13に示すように、被吊下体22の長さ方向に並設された複数の吊下部材23のうちで、内側の2本の吊下部材23の上端近傍に止着部材49を取り付けるとともに、外側の2本の吊下部材23の下端近傍に案内ローラ51を取り付ける。そして、止着部材49及び案内ローラ51により、索47を複数の吊下部材23間に正面ほぼ台形状をなすように張設すること。
【0041】
・ 前記第3実施形態において、図14に示すように、被吊下体22の長さ方向に並設された複数の吊下部材23のうちで、外側の2本の吊下部材23の下端近傍に止着部材49を取り付けるとともに、内側の2本の吊下部材23の上端近傍に案内ローラ51を取り付ける。そして、止着部材49及び案内ローラ51により、索47を複数の吊下部材23間に正面ほぼ台形状をなすように張設する。また、索47に摩擦抵抗を付与するための抵抗付与部材48を天井部21の下面に配置すること。
【0042】
・ 前記第3実施形態において、図15に示すように、被吊下体22の長さ方向に並設された複数の吊下部材23のうちで、内側の2本の吊下部材23の下端近傍に止着部材49を取り付けるとともに、外側の2本の吊下部材23の上端近傍に案内ローラ51を取り付ける。そして、止着部材49及び案内ローラ51により、索47を複数の吊下部材23間に正面ほぼ逆台形状をなすように張設する。また、抵抗付与部材48を天井部21の下面に配置すること。
【0043】
・ 前述した図13〜図15に示す第3実施形態の変更例において、抵抗付与部材48を第4実施形態の押圧ローラ59等により構成すること。
・ 前記第3実施形態、第4実施形態及び図13〜図15に示す変更例において、索47の両端を止着するための止着部材49を天井部21の下面または被吊下体22の上面に取り付けること。
【0044】
・ 前記第3実施形態、第4実施形態及び図13〜図15に示す変更例において、索47を案内するための案内ローラ51を、吊下部材23の端部と対応する被吊下体22の上面または天井部21の下面に取り付けること。
【0045】
・ 前記各実施形態において、照明器具とは異なる被吊下体22,例えば吊り天井等の吊下装置に具体化すること。
【符号の説明】
【0046】
21…建物等の構造物の天井部、22…被吊下体、23…吊下部材、24A,24B…許容手段としての許容構造を構成する球面軸受、25,28…球面体、27,29…支持座、30…変位部材、31…ジョイント、35…吸収手段としての吸収構造を構成する吸収部材、42…球面軸受、43…球面体、45…キャップ体、46…摩擦抵抗付与手段としての摩擦抵抗付与機構、47…索、48…抵抗付与部材、49…止着部材、51…案内ローラ、53…第1挟圧板、55…第2挟圧板、57…バネ、59…押圧ローラ、60…バネ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物等の構造物の天井部に複数の吊下部材を介して被吊下体を吊下した建物における吊下装置において、
天井部と被吊下体との間には天井部と被吊下体との間の揺動変位にともなうエネルギーを吸収するための非拘束性の吸収手段を設けたことを特徴とする天井部の吊下装置。
【請求項2】
前記吊下部材を剛体によって構成するとともに、吊下部材の傾動を許容する許容手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の天井部の吊下装置。
【請求項3】
前記許容手段は吊下部材の両端と天井部及び被吊下体との間に介在された球面軸受であることを特徴とする請求項2に記載の天井部の吊下装置。
【請求項4】
前記吸収手段は弾性体であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の天井部の吊下装置。
【請求項5】
前記吸収手段は粘弾性体であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の天井部の吊下装置。
【請求項6】
一対の吊下部材間に変位部材を架設し、その変位部材と被吊下体または天井部との間に吸収手段を介在させたことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の天井部の吊下装置。
【請求項7】
前記変位部材と吸収手段との間に球面軸受を介在させたこと特徴とする請求項6に記載の天井部の吊下装置。
【請求項8】
前記吸収手段は摩擦抵抗付与手段であることを特徴とする請求項1または2に記載の天井部の吊下装置。
【請求項9】
前記摩擦抵抗付与手段は、前記天井部と被吊下体との間の揺動変位にともなって自身の延長方向に移動される索と、その索に摩擦抵抗を付与する抵抗付与部材とを備えたことを特徴とする請求項8に記載の天井部の吊下装置。
【請求項1】
建物等の構造物の天井部に複数の吊下部材を介して被吊下体を吊下した建物における吊下装置において、
天井部と被吊下体との間には天井部と被吊下体との間の揺動変位にともなうエネルギーを吸収するための非拘束性の吸収手段を設けたことを特徴とする天井部の吊下装置。
【請求項2】
前記吊下部材を剛体によって構成するとともに、吊下部材の傾動を許容する許容手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の天井部の吊下装置。
【請求項3】
前記許容手段は吊下部材の両端と天井部及び被吊下体との間に介在された球面軸受であることを特徴とする請求項2に記載の天井部の吊下装置。
【請求項4】
前記吸収手段は弾性体であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の天井部の吊下装置。
【請求項5】
前記吸収手段は粘弾性体であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の天井部の吊下装置。
【請求項6】
一対の吊下部材間に変位部材を架設し、その変位部材と被吊下体または天井部との間に吸収手段を介在させたことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の天井部の吊下装置。
【請求項7】
前記変位部材と吸収手段との間に球面軸受を介在させたこと特徴とする請求項6に記載の天井部の吊下装置。
【請求項8】
前記吸収手段は摩擦抵抗付与手段であることを特徴とする請求項1または2に記載の天井部の吊下装置。
【請求項9】
前記摩擦抵抗付与手段は、前記天井部と被吊下体との間の揺動変位にともなって自身の延長方向に移動される索と、その索に摩擦抵抗を付与する抵抗付与部材とを備えたことを特徴とする請求項8に記載の天井部の吊下装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−40494(P2013−40494A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178010(P2011−178010)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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