説明

天地補正機能を有する画像処理装置及びその画像処理装置を搭載する管路点検システム及び管路画像の処理方法。

【課題】従来の管路点検作業に用いられるカメラを有する押し込みロッドは、管路の曲がりやロッドの捩れによりカメラが回り、表示画像の天地が分からなくなり、また天地方向を表示してもその不具合がどの方向に生じているか等の迅速な判断は容易ではない。
【解決手段】本発明は、管路内に挿入される押し込みロッドの先端に取り付けられたカメラにより撮影された管路内画像の点検に必要な表示領域をセンサにより検出された角度情報(天地方向情報)に基づき、その表示領域を回転させて、実際の管路の配設状態と表示領域画像の天地を一致させて表示させる天地補正機能を有する画像処理装置であり、この画像処理装置は管路点検システムに搭載されて使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路内の状況や管路内に嵌通されたケーブル等に対する視覚的検査を行う管路点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中に埋設された又は建造物内に配設された管路内の状況やその管路内に嵌通されたケーブルの状態を直接的な目視により点検することはできない。一方、カメラの製造技術の進歩により動画像撮影用カメラの小型化が実現されている。この小型カメラを管路内に入れて撮影し、管路内状況やケーブル状態をモニタ表示させることにより容易に点検を実施することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、敷設された配管に穿孔した孔に突出する覗き筒を挿入し、管路内を照明して、その内部の様子をミラーにより写し出して画像センサで撮影する確認装置が提案されている。この特許文献1によれば、管路内状況及び、嵌通されている径の細いケーブルが管路壁にへばりついた状態であっても、撮影された画像からその敷設状態を確認することができる。
【0004】
また一般的に、カメラを先端に取り付けた押し込みロッドを管路内に押し込みつつ、移動するカメラにより管路内を撮影して、管路内状況及びケーブル状態を点検する点検システムが知られている。例えば、特許文献2には、管路内に貫装された電力ケーブルに跨りつつ、管路内を移動して、先端に設けられたカメラにより管路内状況とケーブル状態を撮影する管路内点検用カメラヘッドが開示されている。この特許文献2に開示されるカメラヘッドは、ケーブルを跨ぎ、管路内壁に当接しつつ移動させるために、撮像部から二股に分かれて翼状に垂れ下がる2つの支持部を設けた形状を成している。このカメラヘッドは、ケーブルにガイドされるように管路内を移動して撮影を行い、管路内状況やケーブル状態を点検している。
【特許文献1】特開平10−108329号公報
【特許文献2】特開平10−191522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1による確認装置による点検は、配管に孔を穿孔するため、地中に埋設された管路や建造物内に配設された管路においては、管表面を露出させなければならず、土砂の撤去作業や建造物の損壊及び修復が必要となる。点検のためだけに、これらの作業を実施するのは容易ではなく、また道路に埋設されていた場合には点検に際して交通の障害となり、コスト的にみても実施し難い。また、管路内の壁面のどこにケーブルがへばりついているかが事前には分からないため、孔を穿孔する際にドリル先端によりケーブルに損傷を与える可能性もある。
【0006】
また、従来の点検作業に用いられるカメラを先端に取り付けた押し込みロッドは、管路内を移動するに従い、管路の曲がりや押し込みロッドの捩れによりカメラが回転して、モニタに表示される撮影画像の天地(上下方向)が分からなくなる。例えば、点検中に管路に生じている亀裂などの破損を発見した場合、表示されている画像の天地が敷設された管路の天地と一致していれば、その亀裂が天地左右のどの方向に生じているか等の判断を迅速に行うことができる。
【0007】
また、すでにモニタ表示される管路内の画像に天地の方向を示すマークが表示される点検システムも提案されている。しかし、ある角度で回転した状態の管路画像に単に天地の方向を示すマークを付与した場合、そのマークを見ながら亀裂の方向を見極める必要があり、迅速な判断は容易ではない。
【0008】
前述した特許文献2によるカメラヘッドでは、電力ケーブルに跨っている、即ち移動がケーブルにガイドされているため、カメラは管路内で回転しづらく、撮影された画像の天地が入れ替わらない。これは、電力ケーブルのように径が比較的太く、管路内の底部に比較的真っ直ぐに這うように配設され、大きな捩れが発生していないケーブルであれば移動時のガイドとして機能する。しかし、通信ケーブル用の管路は比較的細い配管を用いている上、通信ケーブルにおいても径が細く管路内で大きな撓みや捻れが発生している状態で配設されている場合もある。従って、特許文献2のように、カメラを通信ケーブルに跨って移動させると撮影された画像が回転することとなり、天地が分からなくなる。また、管路内に複数本のケーブルが交差するように配設されていたり、ケーブルを跨いだ状態で移動できるスペースが取れない比較的細い管路であれば、適用することができない。
【0009】
また、前述した各特許文献を含む従来技術においては、管路内を撮影した画像をそのままモニタ表示するだけであり、画像の位置補正は行われていない。
そこで本発明は、敷設される管路内を撮影した画像に対して、管路の天地状態と一致するように画像補正を施して、管路内の状況やその管路内の配設部材の状態を点検する天地補正機能を有する画像処理装置及びその画像処理装置を搭載する管路点検システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために、第1に、 天地方向からなる角度情報を検出するセンサを搭載するカメラ部が管路内を移動しつつ動画像として撮影した管路画像及び該センサが検出した角度情報を入力する入力部と、前記入力部からの前記管路画像に対して、管内状況判断に必要な表示領域を切り取り前記角度情報に従い、該表示領域に対して天地方向の回転補正を施し、天地補正された管路画像を生成する画像処理部と、前記天地補正を行うための情報及び、前記天地補正された管路画像を一時的に記憶する記憶部と、前記天地補正された管路画像を外部の表示装置に出力する出力部とで構成され、地中に埋設された又は建造物内に配設されている前記管路の天地状態と前記天地補正された管路画像における天地が一致する天地補正機能を有する画像処理装置を提供する。
【0011】
また本発明は、挿入された管路内を撮影するカメラ及び天地方向を指し示す角度情報を検出するセンサを搭載するカメラヘッド部と、前記カメラの駆動を制御する制御部と、前記カメラヘッド部を先端に着脱可能に取り付けて前記管路に挿入するための長尺な押し込みロッドと、前記押し込みロッドを巻回収納するロッド巻き枠部と、前記管路開口部から前記管路内に挿入されたカメラまでの距離を検出する挿入距離検出部と、前記制御部から出力された画像データ及び後述するこの画像データに関する情報を記録する記録部と、前記管路の撮影に関する画像情報の入力やオペレータの指示を入力するための入力部と、前記管路の天地状態と撮影された管路画像に対して前記天地補正された管路画像における天地とが一致するように画像回転処理を施す画像処理装置と、前記天地補正された管路画像に画像情報を付与して表示する表示部と、管路開口部の近傍に配置され、前記カメラヘッド部の挿入操作を確認するための補助表示部とで構成され、前記画像処理装置による、撮影された管路内の画像に対して予め定めた点検に必要な表示領域を撮影時に検出された角度情報に従い、その表示領域を回転させて実際の管路の配設状態と表示領域画像の天地を一致させて表示させる天地補正機能を有する管路点検システムを提供する。
【0012】
さらに、管路内を撮影した管路画像により点検を行う管路点検システムに用いられる画像処理方法であって、管路内を撮影した動画像及び静止画像における管内状況判断に必要な表示領域を切り取り、前記撮影時にセンサ検出した天地方向の情報に基づき、前記表示領域に対して天地方向の回転補正を施した天地補正された管路画像を生成し、前記天地補正された管路画像上に前記管内状況判断に必要な画像情報を付与し、地中に埋設された又は建造物内に配設されている前記管路の天地状態と前記天地補正された管路画像における天地を一致させて表示させる管路画像の処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、敷設される管路内を撮影した画像に対して、管路の天地状態と一致するように画像補正を施して、管路内の状況やその管路内の配設部材の状態を点検する天地補正機能を有する画像処理装置及びその画像処理装置を搭載する管路点検システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1には、本発明の天地補正機能を有する画像処理装置及びその画像処理装置を搭載する管路点検システムの概略的な構成を示して説明する。
本発明は、撮影された管路内の画像に対して、予め定めた点検に必要な表示領域を撮影時に検出された角度情報(天地方向情報)に従い、その表示領域を回転させて、実際の管路の配設状態と表示領域画像の天地を一致させて表示させる天地補正機能を有する画像処理装置であり、この画像処理装置は管路点検システムに搭載されて使用される。
【0015】
この管路点検システムは、管路14に挿入されて管路内を撮影するカメラ1を搭載するカメラヘッド部2と、カメラヘッド部2を先端に取り付けて管路14に挿入するための長尺な押し込みロッド3と、押し込みロッド3を出し入れ可能に巻回収納するロッド巻き枠部4と、カメラ1の駆動制御部(CCU)を含みシステム全体を制御するシステム制御部5と、撮影した画像に対して後述する画像処理をリアルタイムに施す画像処理装置6と、制御情報や画像データ及びその画像データに関する情報(以下、画像情報と称する)を記録する記憶部7と、画像情報の入力やオペレータ42の指示を入力するためのキーボード等から成る入力部8と、画像データ及び画像情報をリアルタイムに表示する表示部(モニタ)9と、押し込みロッド3に一体的に設けられてカメラ1とシステム制御部5を接続し、画像信号の伝搬を行う画像信号用ケーブル10と、管路開口部から管路14内に挿入されたカメラ1の距離を検出する挿入距離検出部11と、作業者43が現在のカメラ1の挿入状態を確認するための補助表示部12と、で構成される。
【0016】
記憶部7は、システム全体の制御を行うための制御プログラム及びシステムの駆動用パラメータ等からなる制御情報を記憶する例えばフラッシュメモリと、回転処理された画像や画像情報を記憶する書き換え可能なメモリ(例えば、SDRAM)を用いて構成することができる。また、半導体メモリに代わってハードディスク等を用いてもよい。さらに着脱自在な外部記憶媒体(磁気テープや半導体メモリ)27に対して書き込み読み出しするための入出力インターフェース部(I/F部)7aを備えている。
【0017】
前述した画像情報はモニタ9に表示される情報であり、カメラ1の撮影時に得られる情報又は画像データを記録する際に入力部8により入力される情報からなる。尚、カメラヘッド部2を管路内に挿入する前に、管路内の土砂等の堆積物にウォータジェット水流を放出して洗浄除去する洗浄部13を備えてもよい。
【0018】
この構成において、システム制御部5、画像処理装置6、記憶部7、入力部8及び表示部9は、管路点検時には地上に配置され、好ましくは移動可能な車両15等に搭載されて機動性を有している。尚、ロッド巻き枠部4は、点検時に車両15等に積載された状態で使用してもよいし、点検対象となるマンホール口近傍の地上に配置して用いてもよい。またカメラヘッド部2、挿入距離検出部11及び補助表示部12においても移動時には、その車両等に積載される。
【0019】
押し込みロッド3は、軽量且つ剛性の高い部材、例えばFRP等の樹脂性ワイヤが好ましい。勿論、金属製ワイヤを用いることも可能である。この押し込みロッド3は、点検する管路長よりも長尺であり、持ち運び時にはロッド巻き枠部4のドラムに巻回されている。ロッド巻き枠部4から押し込みロッド3の送り出し/巻き取りは作業者による手動でもモータ等を用いた電動であってもよい。
【0020】
カメラヘッド部2の先端に搭載されるカメラ1は、CCD等の撮像素子を用いて動画及び静止画を撮影する撮影機能21と、LED等の照明用光源からなり撮影範囲を照明する照明機能22を有している。カメラ駆動用電源及び照明用光源の電源は、画像信号用ケーブル10の一部を利用する又は専用の電源ケーブルを併設して設けて供給する、又は電池を搭載して供給してもよい。
【0021】
さらに、カメラヘッド部2内には、天地方向即ち、重力方向を検出する公知なセンサ23を備えている。また、カメラヘッド部2は密閉性が図られ、防水・防塵機能を有している。また後端には、押し込みロッド3の先端部分と着脱自在に取り付けるためのコネクタ部位24が設けられている。
【0022】
また、図2に示すように、モニタ9に表示される画像情報は、カメラ1の撮影時に得られる情報又は画像データを記録する際に入力部8により入力される情報からなる。例えば、撮影日時31、線名(管路名)32、マンホール名33、ダクト番号(配管の番号)34、管路14への挿入距離35、カメラヘッド部2の挿入速度36、後述する天地判別表示(矢印)37、発生している現象(損傷状態)38、その現象が発生している位置39及び、使用したシステムの各ユニット番号40等が相当する。これらの情報は、文字、数字又はマークによりモニタ画面上の注目する画像領域から外れた支障のない位置に表示され、カメラ1の動き又は設定時間に応じて更新されるように表示される。また、これらの画像情報は、全情報を常時表示する必要はなく、表示有無の切り替え機能を持たせて必要なときに選択して表示させてもよい。補助表示部12においては、撮影時には少なくとも管路14への挿入距離35、カメラヘッドの挿入速度36及び天地判別表示37が表示されればよい。カメラヘッド部2の挿入速度36は、専用の速度検出部を設けてもよいし、挿入距離検出部11を用いて、単位時間当たりの押し込みロッド3の移動距離から算出してもよい。
【0023】
また、本実施形態では、図1に示すように、挿入距離検出部11を管路14の開口部に設ける例について説明したが、挿入距離検出部11をロッド巻き枠部4内に設けて、カメラヘッドが管路14の開口部内に挿入された位置を起点(距離0)として、押し込みロッド3の移動距離(カメラヘッドの管路内位置)を求めてもよい。
【0024】
画像処理装置6は、図2に示すように、撮影された管路14内の管路画像25において、予め定めた点検に必要な表示領域(回転表示領域)26を撮影時に検出された天地方向情報(モニタ9には、天地判別表示(矢印)37として表示)に従い、実際の管路14の配設状態と天地が一致するように、その表示領域を回転処理する。ここでは、回転表示領域26が回転処理されて天地が補正されている回転画像の信号を回転画像信号又は回転画像データと称している。本実施形態では、天地判別表示37を矢印として表示しており、ここでは矢が向く方向を「地」の方向としている。勿論、天地判別表示37の表示形式は限定されない。
【0025】
この回転表示領域26を含む管路画像25を天地補正画像(又は、管路画像信号を天地補正画像信号)と称している。本実施形態では、回転表示領域26は、画面中央を中心とする円形であり、その直径は画面の縦横辺で短い方の辺に近い長さとしている。勿論、画像から視認できる大きさであれば、特に限定されることもない。また、本実施形態では、回転処理を行うために円形の回転表示領域26としているが、特に限定されるものではない。尚、画像の処理速度(画像変換速度)が高ければ、管路画像全体を回転移動させて、点検対象の主たる領域をトリミング処理した状態で表示させるようにすることもできる。
【0026】
図3には、画像処理装置6の構成例を示す。
この画像処理装置6は、カメラ1からのアナログカラー画像信号及びセンサ23により検出された天地方向の角度情報を入力するための画像入力端子51と、アナログカラー画像信号をデジタル変換して画像データを生成するA/D変換部52と、図2に記載した回転表示領域26の画像回転処理や補完処理を含む画像処理を行う画像処理部(DSP)53と、制御情報及び画像回転処理に用いる画像処理プログラム等を記憶する記憶部54と、画像回転処理された回転表示領域26を含む回転画像データをアナログ画像信号に変換するD/A変換部55と、天地補正画像信号をモニタ9に出力するための出力端子56と、画像入力端子51から入力したアナログ画像信号(非画像処理)を通過させて未処理で出力するバイパス部57と、アナログ画像信号の入力先を画像処理部53側とバイパス部57のいずれかに切り換える処理切換部58と、制御情報に基づき装置全体を制御する制御部59と、画像処理装置内の各構成部位に駆動させるための電源を供給する電源部60と、で構成される。
【0027】
記憶部54は、装置全体の制御を行うための制御プログラム等からなる制御情報と、画像回転処理や補完処理等を行う演算式やパラメータ等を含む画像処理プログラム(又は画像処理アプリケーション)を記憶する。また、記憶部54は、これらに加えて、画像回転処理や補完処理等が施された画像データ及び、A/D変換部52から入力した未処理の画像データを一時的に記憶してもよい。
【0028】
本実施形態においては、モニタ9から電源部60に駆動電源を供給する構成である。勿論、これに限定されず、別途電源部としては、電池を用いることもできる。尚、記憶部54は前述した記憶部7と同様に、半導体メモリ以外にも、着脱自在な記憶媒体例えば、磁気記録テープ、外付け型ハードディスク又は大容量半導体メモリ等に天地補正画像及び画像情報を併せて記録させる機能を持たせてもよい。
【0029】
本実施形態では、処理切換部58を用いて、アナログカラー画像信号の入力先を選択したが、これに限定されず、例えば、処理切換部58を設けずに電源部60の電源をオフすると、自動的に画像処理部53からバイパス部57に切り換える構成としてもよい。バイパス部57を用いる例としては、例えば、天地補正画像の検査時に管路内に欠陥が発見された際、元の撮影画像によりさらに詳細に確認を行うために、バイパス部57を通過させて、カメラが撮影した画像自体を観察する。また後で画像回転処理を行うのであれば、カメラ1から出力されたアナログカラー画像信号(非画像処理)及び画像情報をそのまま記録させてもよい。
【0030】
本実施形態では、基本的には、管路14内を移動するカメラ1で撮影された動画像をリアルタイムに画像回転処理を施して天地補正画像としてリアルタイムに観察し、欠陥の検出を行っている。
一方、欠陥報告としては、その欠陥箇所が写った静止画像(又は写真)による報告が行われる。従って、撮影した画像から静止画像を切り出す必要がある。その手法としては、カメラ1が管路14内を移動しつつ動画として撮影を行い、その撮影画像に前述した画像回転処理を施して天地補正画像としてリアルタイムに観察しながら、モニタ9を見るオペレータ42からの指示に基づき、所望する位置で動画像から画像を切り出して静止画像を生成する。この時、静止画像の撮影は、オペレータ42の指示だけではなく、カメラの視野内で不具合箇所が視認可能な距離ごとに静止画像を順次撮影する設定でもよい。
別の手法としては、管路14内を移動しつつ動画として撮影を行い、その撮影画像(未画像処理)と、撮影画像に前述した画像回転処理を施した天地補正画像とを記憶する。撮影完了後に、記憶されたそれぞれの画像をモニタ9に再生し、モニタ9を見るオペレータ42からの指示に基づき、動画像から画像を切り出して静止画像を生成する。このように一旦記録した後、再生する場合には、撮影画像と天地補正画像とを同期させて再生すれば、天地補正画像において欠陥を検出する作業を行いつつ、検出した際に撮影画像に対しても容易に欠陥を確認することもできる。
【0031】
このように構成された画像処理装置6における画像データの画像回転処理について説明する。
カメラヘッド2が管路14に挿入されると共に、オペレータ42の操作によりカメラ1による撮影が開始される。カメラ1から撮影された動画像(アナログカラー画像信号)が入力端子51を介してA/D変換部52に入力される。A/D変換部52は、アナログカラー画像信号をデジタル変換して管路画像25となる画像データを生成し画像処理部53へ出力する。この時、画像データと共にカメラヘッド部2に設けた重力センサ23からの天地方向情報も画像処理部53へ出力される。
【0032】
画像処理部53は、この管路画像25から予め設定された回転表示領域26を抽出して、天地方向情報に基づき、例えばアフィン(Affin)変換等の公知な幾何学変換により画像を回転させる処理を行う。この回転処理は、1画像(インターレース式では2フレーム)毎に処理を施す。この処理時には適宜、公知な補完処理を施してもよい。
【0033】
回転処理された回転表示領域26は、元の画像データに嵌め込んで天地補正画像として生成し記憶部54に記憶させる及びモニタ9に表示させる。さらに、補助表示部12には、この天地補正画像を表示させてもよいし、バイパス部57を通過したアナログ画像信号(非画像処理)を表示してもよい。また、補助表示部12には画像情報の中から必要な情報、少なくとも撮影日時31、ダクト番号34、管路14への挿入距離35、カメラヘッド部2の挿入速度36等が表示されればよい。尚、本実施形態では、動画と静止画とを切り換えてモニタ表示する構成とするが、これに限定されるものではない。例えば、モニタ画面上に動画と静止画を合わせて表示することも可能である。
【0034】
次に、図1を参照して、管路点検システムを用いた管路内点検の作業工程について説明する。
まず、車両等からロッド巻き枠部4を点検を行う管路14が開口するマンホールの近傍に配置し、押し込みロッド3の先端にカメラヘッド部2を取り付ける。この時、車両にはシステム制御部5、画像処理装置6、記憶部7、入力部8及び表示部9が搭載されている。また、ロッド巻き枠部4から管路14の開口部までの間で好適する位置に挿入距離検出部11を配置する。挿入距離検出部11は、管路14の開口部を起点(距離0)として、管路14内に挿入された押し込みロッド3の長さを検出する。挿入距離検出部11により検出された押し込みロッド3の押し込み距離情報は、モニタ9の画像情報に随時更新されるように表示されてもよいし、オペレータ42によって静止画として切り出した画像に操作入力してもよいし、任意の距離区間移動したタイミングで検出された長さを操作入力してもよい。尚、挿入距離検出部11による検出の起点は管路14の開口部に限定されるものではなく、マンホールの開口中央(マンホール鉄蓋のセンタ位置)を基準としてもよい。
【0035】
また、マンホールの開口部には、押し込みロッド3を保護しつつスムーズに導入されるように補助するための押し込みロッド導入補助具を設ける。さらに、マンホール内でロッドの押し込みを行う作業者43に挿入状況が分かるように補助表示部12を配置し、この管路点検システムを操作するオペレータ42と無線等の通信手段を用いて、適宜通信を行っている。この例では、管路14のロッド到達側のマンホール内にも確認者を配置している。その他、必要に応じて、作業の総括指揮を行う綜合指揮者44、連絡や確認を行う確認者45等、適当数の作業者を配置する。尚、管路14内に土砂等の堆積物があった場合には、洗浄部13を用いて、ウォータジェット水流による洗浄除去を行う。
【0036】
カメラヘッド部2を先頭にして押し込みロッド3をロッド巻き枠部4より引き出し、カメラヘッド部2を管路14の開口から挿入する。この時、車両等に乗車するオペレータ42は、必要な画像情報例えば、撮影日時31、線名32及びマンホール名33を入力部8により入力し、またカメラ1が出力するアナログ画像信号が適正になるように初期設定して輝度等を調整する。
【0037】
次に、押し込み作業者43は、オペレータ42と連絡を取りながら、補助表示部12に表示されるカメラヘッド部2の挿入速度36や管路内の状況を確認しつつ押し込み作業を行う。この時にオペレータ42の操作によりカメラ1で撮影された動画像は、押し込みロッド3と一体的に設けられている画像信号用ケーブル10を通じてシステム制御部5に伝搬される。
【0038】
システム制御部5に入力された動画像は、予め設定されたルーチンに従い、前述したように回転表示領域26を抽出して、天地方向情報に基づき回転処理を行った天地補正画像を生成し、画像情報と共にモニタ9及び補助表示部12に表示し及び、記憶部7に記憶される。この時、オペレータ42は、この天地補正画像を観察して管路14の欠陥や通信ケーブルの不具合を発見したならば、押し込み作業者43に指示して、例えば、その不具合箇所の前後2m程度の範囲でカメラヘッド部2を往来させて、不具合箇所がよく分かる位置で止めさせる。次に、静止画像を取り出す又はカメラ1に静止画像を撮影させて、その静止画像に必要な画像情報を入力したり、押し込み作業者43に指示を与える等の作業を行う。また、静止画像を撮影する機能を備えていないカメラであったならば、カメラヘッド部2の移動を停止させた状態で所定時間に亘り、不具合箇所を動画撮影してもよい。
【0039】
引き続き、押し込み作業者43は押し込みロッド3を管路14に押し込む。オペレータ42は必要に応じて、押し込み作業者43に指示して、押し込み動作を停止させて、静止画像の撮影や画像情報等の入力や画像記録処理等を行う。そして押し込みロッド3が管路14のロッド到達側まで送り込まれると、その到達側のマンホール内に配置される確認者から到達確認の指示が出される。オペレータ42による必要な処理が行われた後、押し込み作業者43は押し込みロッド3を管路14から引き戻す。この時、確認者はカメラヘッド部2を押し込みロッド3から取り外して、コネクタ部24に封止栓を取り付けることにより、引き戻しに掛かる負荷を低減させたり、引っ掛かりによるカメラヘッド部2への損傷の機会を低減させてもよい。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の画像処理装置は、地上に敷設又は地下に埋設されている管路の天地状態と一致するように画像補正を施す。この画像処理装置を搭載する管路点検システムは、実際の管路の天地状態と表示される管路内画像の天地が一致するため、発生している不具合の状況が迅速に把握することができ、点検判断の高効率化と点検時間の短縮が実現できる。
【0041】
また、前述した実施形態では、センサ23として垂直方向のみを検出して天地状態を判断するセンサを例としたが、勿論これに限定されるものではない。例えば、姿勢検出が可能な公知な3次元位置センサを搭載して、移動時のカメラヘッド部2の傾きを検出する機能を持たせて、管路形状や移動妨害(管路の不具合等)によるヘッド部の屈曲状態を検出してカメラヘッド部2が受ける損傷を事前に回避することもできる。この公知な3次元位置センサとしては、例えば、多関節機構を用いた機械式センサ、交流磁界を3つのコイルで検出する磁気式センサ又は、音の伝搬遅延を用いた超音波式センサ等を用いてもよい。さらに、この3次元位置に加えて方位検出機能を有する6次元位置センサを用いることもできる。この6次元位置センサを用いれば、天地だけでなく、方位も検出できるので水平に敷設又は埋設される管路だけでなく、垂直など角度を持って敷設又は埋設される管路に対しても、その管路内の状況やその管路内に嵌通されたケーブルの状態に対して、不具合が発生している方位を天地同様に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の天地補正機能を有する画像処理装置及びその画像処理装置を搭載する管路点検システムの概略的な構成を示す図である。
【図2】モニタの表示画面及び表示される画像情報の例を示す図である。
【図3】画像処理装置の概略的な構成を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1…カメラ、2…カメラヘッド部、3…押し込みロッド、4…ロッド巻き枠部、5…システム制御部、6…画像処理装置、7…記憶部、7a…入出力インターフェース部(I/F部)、8…入力部、9…モニタ、10…画像信号用ケーブル、11…挿入距離検出部、12…補助表示部、13…洗浄部、14…管路、21…撮影機能、22…照明機能、23…重力センサ、25…管路画像、26…回転表示領域、31…撮影日時、34…ダクト番号、35…挿入距離、36…挿入速度、42…オペレータ、51…入力端子、52…A/D変換部、53…画像処理部、54…記憶部、57…バイパス部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天地方向からなる角度情報を検出するセンサを搭載するカメラ部が管路内を移動しつつ動画像として撮影した管路画像及び該センサが検出した角度情報を入力する画像入力部と、
前記画像入力部からの前記管路画像に対して、管内状況判断に必要な表示領域を切り取り、前記角度情報に従い該表示領域に対して天地方向の回転補正を施し、天地補正された管路画像を生成する画像処理部と、
装置全体の駆動を制御するための制御情報及び、前記天地補正を行うための画像処理情報を記憶し、且つ前記天地補正された管路画像を一時的に記憶する記憶部と、
前記天地補正された管路画像を外部の表示装置に出力する画像出力部と、
前記記憶部からの制御情報に基づき装置全体を制御する制御部と、
で構成され、
地中に埋設された又は建造物内に配設されている前記管路の天地状態と前記天地補正された管路画像における天地が一致することを特徴とする天地補正機能を有する画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記天地補正された管路画像上に、少なくとも、撮影日時、管路線名、マンホール名、管路配管のダクト番号、前記管路への挿入距離、前記カメラ部の挿入速度、角度情報による天地方向表示、管路に発生する損傷状態及び該損傷状態がある位置からなる画像情報を付与することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理装置において、
前記画像処理部は、前記カメラ部により動画撮影されている管路画像に対して、リアルタイムに前記回転補正を施して前記天地補正された管路処理を生成し前記出力部から出力して、前記表示部に動画表示させることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理装置において、さらに、
前記画像入力部から入力した管路画像に対して、前記画像処理部による天地補正処理を施さずに出力するバイパス部と、
前記画像入力部から入力した管路画像を前記画像処理部と前記バイパス部とのいずれかに切り換えて入力させるための処理切換部と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
挿入された管路内を撮影するカメラ及び天地方向を指し示す角度情報を検出するセンサを搭載し、撮影された管路画像に角度情報を関連づけた画像データを出力するカメラヘッド部と、
前記カメラヘッド部を先端に着脱可能に取り付けて前記管路に挿入するための長尺な押し込みロッドと、
前記押し込みロッドを巻回収納するロッド巻き枠部と、
前記管路開口部から前記管路内に挿入されたカメラまでの距離を検出する挿入距離検出部と、
前記管路の撮影に関する画像情報の入力やオペレータの指示を入力するための入力部と、
前記カメラヘッド部から出力される前記画像データによる前記管路画像に対して、前記角度情報により、前記管路画像における天地が前記管路の天地と一致するように画像回転処理を施す画像処理装置と、
システム全体を駆動制御するためのシステム制御情報及び、前記カメラヘッド部から出力された画像データ及び画像回転処理が施された画像データを記憶する記録部と、
前記天地補正された管路画像に画像情報を付与して表示する表示部と、
管路開口部の近傍に配置され、前記カメラヘッド部の挿入操作を確認するための補助表示部と、
予め定められた制御情報に基づき、前記画像処理装置の画像処理制御を含むシステム全体の駆動制御を行う制御部と、
で構成され、
前記画像処理装置による、撮影された管路内の画像に対して予め定めた点検に必要な表示領域を撮影時に検出された角度情報に従い、その表示領域を回転させて実際の管路の配設状態と表示領域画像の天地を一致させて表示させる天地補正機能を有することを特徴とする管路点検システム。
【請求項6】
管路内を撮影した管路画像により点検を行う管路点検システムに用いられる画像処理方法であって、
管路内を撮影した動画像及び静止画像における管内状況判断に必要な表示領域を切り取り、前記撮影時にセンサ検出した天地方向の情報に基づき、前記表示領域に対して天地方向の回転補正を施した天地補正された管路画像を生成し、
前記天地補正された管路画像上に前記管内状況判断に必要な画像情報を付与し、地中に埋設された又は建造物内に配設されている前記管路の天地状態と前記天地補正された管路画像における天地を一致させて表示させることを特徴とする管路画像の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−82372(P2007−82372A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270110(P2005−270110)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000100942)アイレック技建株式会社 (45)
【Fターム(参考)】