説明

太陽光発電装置のトラッキングシステム

【課題】太陽の位置をデータに基づいて太陽電池パネルの方位と仰角を制御して発電効率の改善若しくは維持と、省エネルギー化を達成することのできる太陽光発電装置のトラッキングシステムを提供すること。
【解決手段】太陽電池パネル12の方位及び仰角を変位させる駆動装置17と、年月日、時刻及び太陽光発電装置10の設置緯度、経度に基づいて太陽の位置データが予め記憶された機能を備えたコントローラ18を含む。コントローラ18は、位置データを読み出し、方位検出器30及び仰角検出器31から与えられる実際の方位、仰角と比較し、その角度差に応じてに前記駆動装置17を介して太陽電池パネル12を角度変位させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置のトラッキングシステムに係り、更に詳しくは、太陽光発電装置が設置される場所毎に太陽の位置データを与えておき、当該位置データと、太陽電池パネルの実際の方位、仰角に基づいて太陽電池パネルの姿勢制御を行うことのできる太陽光発電装置のトラッキングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今において、石油燃料等の燃焼に伴う二酸化炭素による汚染が温暖化の原因となる等、地球規模で進む環境破壊が広く議論されるに至っている。
環境破壊を伴うことのない太陽光発電装置は、代替エネルギー源として注目され、既に、公共機関、企業、或いは一般家庭における建物等に設置、導入されている。
特許文献1には、日射量や発電量に基づいて太陽光を追尾(トラッキング)する制御方法が開示されており、また、特許文献2には、日射方向を検出することで太陽光を追尾するシステムが提案されている。
【特許文献1】特開2006−80455号公報
【特許文献2】特開2006−114634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1、2の追尾方法若しくはシステムにあっては、日射量や発電量が制御の基準となるものであり、それらの検出精度が維持できる限りにおいて、太陽の位置変化に応じて一定の発電を行うことが期待される。
しかしながら、太陽光発電装置を構成する太陽電池パネルの方位、仰角を制御する駆動量は一定となるものであり、太陽の位置が変化する状態が、季節や時間帯によって異なるという特質を考慮したものとは言い難い。
例えば、南中時(太陽が最も高い位置となる正午)の前後数時間の時間帯は、それ以外の時間帯(日の出後数時間、日没前数時間)に比べ、単位時間当たりにおける太陽の方位変化が小さいため、時刻に関係なく太陽電池パネルを一定の角度で変位させることは、当該変位を行うための駆動系に無駄なエネルギーを費やす、という不利益がある。
また、日照計等の計測手段は、過酷な環境下に晒されるものであるため、当該計測手段が故障を起こしたときに、太陽電池パネルの変位基準自体を喪失する、という致命的な不都合を招来する。
そこで、本発明者は、太陽光発電装置の設置位置における緯度、経度毎に、太陽の移動軌跡が予め特定若しくは把握できることに着目し、種々の実験を行った結果、期待する発電量の確保と、エネルギーの無駄な消費を回避できることを知見した。
【0004】
[発明の目的]
本発明は、公知のトラッキングシステムにおける前述の不都合に着目し、前記知見に基づいて案出されたものであり、その目的は、予め特定することのできる太陽の位置、すなわち、方位、高度をデータとして用い、当該位置データと、太陽電池パネルの実際の方位、仰角に基づいて太陽電池パネルの角度を制御して発電効率の改善若しくは維持と、省エネルギー化を達成することのできる太陽光発電装置のトラッキングシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、太陽電池パネルと、当該太陽電池パネルを変位可能に支持する支持体と、太陽電池パネルの方位及び仰角を変位させる駆動装置と、太陽電池パネルの出力を検出する積算電力計と、太陽電池パネルの方位、仰角を検出する検出器と、年月日、時刻及び太陽光発電装置の設置緯度、経度に基づいて太陽の位置データが予め設定されるとともに所定の制御を行うコントローラとを含む太陽光発電装置のトラッキングシステムにおいて、
前記コントローラは、所定のタイミングで前記位置データを読み出すとともに、前記検出器から与えられる太陽電池パネルの実際の方位、仰角との差に応じて太陽電池パネルを角度変位させる、という構成を採っている。
【0006】
本発明において、前記太陽光発電装置は、風速センサを更に含み、前記コントローラは、風速が設定値を越えたときに、前記駆動装置を介して太陽電池パネルを水平位置に角度変位させる、という構成を採ることが好ましい。
【0007】
また、前記太陽光発電装置は、感雨センサを更に含み、前記コントローラは、雨、雪を判定したときに、前記駆動装置を介して太陽電池パネルを垂直位置に角度変位させる、という構成を採用するとよい。
【0008】
また、前記コントローラは、南中時経過前において、太陽電池パネルの出力積算値に基づいて曇り判定を行い、曇りと判定したときに、駆動装置を介して太陽電池パネルを水平姿勢に角度変位させる、という構成を採ることができる。
【0009】
更に、前記コントローラは、南中時経過前の太陽電池パネルの出力値が前回値を越えているか否かを判定し、前回値以下であるときに、太陽電池パネルの現在仰角を維持した状態で、太陽電池パネルを、現在方位から前記位置データに対応する位置となる所定角度まで角度変位させるとともに、更に、その角度差の1/2進んだ位置まで太陽電池パネルを変位させる一方、前記出力値が前回値以上であるときに、前記方位及び仰角を現在方位及び現在仰角に対して、前記所定角度と、更にその1/2進んだ位置となるように太陽電池パネルを角度変位させる、という構成を採っている。
【0010】
更に、前記コントローラは、南中時経過後において、南中時の太陽電池パネルの出力積算値が所定値を越えているか否かを判定し、所定値以下であるときに、駆動装置を介して太陽電池パネルを水平姿勢に角度変位させることができる。
【0011】
また、前記コントローラは、太陽電池パネルの南中時の出力積算値が所定値を越えていると判定した後に与え得られる出力積算値に基づいて曇り判定を行い、曇りと判定したときに、駆動装置を介して太陽電池パネルを水平姿勢に角度変位させるように構成されている。
【0012】
更に、前記コントローラは、南中時経過後の太陽電池パネルの出力積算値が所定値以上であるかを判定し、所定値以下であるときに、太陽電池パネルの現在仰角を維持した状態で、当該太陽電池パネルを、現在方位から前記位置データに対応する方位となる所定角度まで角度変位させるとともに、更に、その角度差の1/2進んだ位置まで太陽電池パネルを変位させる一方、出力積算値が前回値以上であるときに、前記方位及び仰角を現在方位及び現在仰角に対して、前記所定角度と、更にその1/2進んだ位置となるように太陽電池パネルを変位させる、という構成を採っている。
【0013】
また、前記太陽光発電装置は、風速センサと感雨センサとを含み、前記コントローラは、風速が設定値を越えたときに駆動装置を介して太陽電池パネルを水平位置に角度変位させる一方、降雨、降雪を判定したときに駆動装置を介して太陽電池パネルを垂直位置に角度変位させ、これらが競合したときに、太陽電池パネルを水平位置に角度変位させる制御を優先的に行うように構成することができる。
【0014】
なお、前記コントローラは、日没時刻に達したときに、前記駆動装置を介して前記太陽電池パネルを原点復帰させることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、太陽の位置データを予め記憶する機能を備えたコントローラが、前記位置データを読み出し、検出器から与えられる太陽電池パネルの実際の方位、仰角との差に応じて太陽電池パネルを角度変位させる構成としたから、太陽の位置変化に対して応答性に優れたトラッキングを行うことができ、発電を精度良く行うことができる。
また、風速センサによる風速値が設定上限値を越えたときに、太陽電池パネルを水平位置に角度変位させる構成を採用した場合には、太陽電池パネルの破壊や、太陽光発電装置が倒壊する等のリスクを低減することができる。
更に、雨、雪を感雨センサが判定したときに、太陽電池パネルを垂直位置に角度変位させる構成では、太陽電池パネルの汚れを雨水によって落とすことができる他、積雪を防止することで、その後の稼動時に駆動装置のモータ負荷を軽減することができる。
また、南中時経過前の出力積算値が前回値以下であるときに、太陽電池パネルの現在仰角を維持した状態で、当該太陽電池パネルを所定角度進んだ方位に変位させる構成では、仰角を変位させないことによる節電を図ることができる。ここで、出力積算値が前回値以下である場合には、日照の弱い曇りが想定されるので、仰角を変位させなくても、発電能力への影響は生じない。また、方位は、現在方位から前記位置データに対応する方位まで変位させ、更に、その角度差の1/2進んだ位置まで太陽電池パネルを変位させることにより、例えば、太陽電池パネルの方位、仰角を検出するエンコーダ等の検出器の値をリセットすることによって生じ得る累積誤差の補正も可能となる。
なお、南中時経過後において、南中時の出力積算値が所定値以下であるときに、太陽電池パネルを水平姿勢に角度変位させる構成とした場合も駆動電力の節電を図ることができる。
また、南中時経過後において、南中時の出力積算値に基づいて曇り判定を行い、曇りと判定したときに、駆動装置を介して太陽電池パネルを水平姿勢に角度変位させることで、駆動電力の節電を図りつつ、発電に支障をきたすことのない状態で発電を継続することが可能となる。
更に、南中時経過後の出力積算値が所定値以下であるとき及び所定値以上であるときも、南中時経過前と同様の制御を行うことで、同様の効果を得ることができる。
また、風速センサと感雨センサとの検出結果に基づく制御が競合したときに、風速センサの検出結果に基づく制御を優先して行うことで、制御を統一的に行うことができる。
更に、日没時刻に達したときに太陽電池パネルを原点復帰させることで、翌日の日昇時に備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1には、本実施形態に係る太陽光発電装置のトラッキングシステムのブロック構成図が示され、図2には、太陽光発電装置の概略正面図が示されている。これらの図において、太陽光発電装置10は、フレームFに多数の太陽電池モジュールを縦横に配列して太陽電池アレイとした太陽電池パネル12と、当該太陽電池パネル12を支持する支持体13と、太陽電池パネル12の出力、出力積算値を検出するインバータ表示器からなる積算電力計14と、風速センサ15と、感雨センサ16と、太陽電池パネル12の方位、仰角を変位させる駆動装置17と、この駆動装置17に所定の制御信号を出力して太陽電池パネル12の方位、仰角を変位させるとともに、前記積算電力計14、風速センサ15、感雨センサ16の検出データを入力として所定の制御を行うコントローラ18と、当該コントローラ18に所定の入力を行うとともに、コントローラ18からの出力に基づいて、出力積算値等を含む各種表示や、外部機器への送受信機能等を備えた入出力装置19と図示しない蓄電池とを備えて構成されている。
【0018】
前記支持体13は、支柱20と、当該支柱20の下部に位置するベース21と、このベース21を地中に埋設するコンクリート22とを含む。支持体13の上部には、水平面内で回転可能な回転部材25が設けられている。回転部材25には軸26が支持されているとともに、当該軸26にブラケット27を介して太陽電池パネル12が図2中矢印a方向で回転可能に設けられている。従って、太陽電池パネル12は、回転部材25が回転することで太陽に対して受光面が正面に向く方位が変位可能となる一方、前記ブラケット27が回転することで、水平線に対する太陽光線の入射角となる仰角が変位可能となっている。
【0019】
前記駆動装置17は、前記回転部材25及びブラケット27を回転させる図示しないモータ等の公知の駆動系28を含んで構成されているとともに、支柱20の上部に配置された方位検出器30と仰角検出器31とを含む。本実施形態では、エンコーダにより方位検出器30、仰角検出器31が構成され、これら方位検出器30、仰角検出器31により、太陽電池パネル12の実際の方位、仰角が検出可能とされ、当該検出データがコントローラ18に出力される。また、これらの検出器30,31は、太陽電池パネル12が原点位置に復帰したときに、必要に応じてリセット可能に設けられている。本実施形態において、仰角検出器31は、太陽電池パネル12が水平位置になる毎に、検出値をリセットするように設定されている。また、方位検出器30は、日没後に原点位置に復帰したときに検出値をリセットするように設定されている。なお、支柱20の上部には、方位及び仰角の変位角度範囲を規制する図示しないリミットスイッチが配置されている。方位用のリミットスイッチは、太陽電池パネル12の受光面が真南に向く方位を0°として東方位に−135°、西方位に+135°の位置にそれぞれ設けられている一方、仰角のリミットスイッチは、太陽電池パネル12が、水平となる位置と、鉛直となる位置とにそれぞれ設けられている。これらのリミットスイッチの位置は、任意に変更することができ、従って、太陽電池パネル12の方位と仰角の各変位角度も変更可能となっている。
【0020】
前記コントローラ18は、年月日、時刻及び太陽光発電装置10の設置緯度、経度に基づいて太陽の位置データを入出力装置19を介して設定記憶する機能とタイマー機能等を含む。また、コントローラ18は、前記方位検出器30及び仰角検出器31から与えられる太陽電池パネル12の方位及び仰角と前記位置データに対応する方位及び仰角とを比較してそれらの角度差を求め、当該角度差に応じて駆動装置17を制御する機能と、積算電力計14から出力された太陽電池パネル12の出力、出力積算値を入力として駆動装置17を制御する機能と、風速センサ15から出力された風速値が許容範囲を決定する設定値に比較して駆動装置17を制御する機能と、感雨センサ16から出力されたデータに基づいて雨、雪を判定して駆動装置17を制御する機能と、装置全体をトータルに制御する各種機能とを達成するように構成されている。
【0021】
次に、本実施形態に係るトラッキングシステム、すなわち太陽光追尾システムについて図3及び図4を参照しながら説明する。
【0022】
(日照〜南中時経過前までのトラッキング)
日昇時刻前の段階では、太陽電池パネルは原点位置に保たれる(ステップS1)。この原点位置は、太陽電池パネルの南中時位置となる方位を0°としたときに、東方位に−135°の位置に設定され、また、仰角は、太陽電池パネル12が水平角度すなわち0°に設定されている。
【0023】
図3に示されるように、日の出時刻に達すると(ステップS2)、コントローラ18が太陽の位置データを読み出す(ステップS3)とともに、風速センサ15から与えられる風速値と予め記憶された上限設定値とを比較する(ステップS4)。ここで、風速値が上限設定値を越えていると判定したときに、コントローラ18が動作信号を出力して駆動装置17を介して太陽電池パネル12の仰角が0°となるように当該太陽電池パネル12を水平位置に移動させる(ステップS5)。この際、日の出直後の第1回目の風速判定では、太陽電池パネル12は通常は原点位置にあるため、実際には水平位置への移動は行われず、その後も継続して強風判定状態が検出される限り、水平位置への移動は行わなくてもよいことになる。なお、駆動装置17の駆動電源は、図示しない蓄電池を利用できる他、前記積算電力計を通じた外部電源を利用することができる。
【0024】
風速が前記上限設定値以下である場合には、コントローラ18は、感雨センサ16の出力と予め記憶された判定値と比較して雨、曇判定を行う(ステップS6)。雨、曇が判定されたときは、コントローラ18の制御信号に基づいて、駆動装置17が太陽電体パネル12を垂直位置に移動させる。すなわち、原点の仰角0°から90°となるように角度変位させる(ステップS7)。この角度変化は、仰角検出器31によって検出され、当該仰角検出器31が90度の角度変位を検出したときに、コントローラ18が駆動装置17の駆動を停止させる。なお、強風判定と、降雨・降雪判定が競合したときは、本実施形態では、強風判定したときの制御モードが優先するように予め設定されている。
【0025】
雨、曇でないことが判定されたときは、太陽電池パネル12の出力計測時間が経過したことを条件に(ステップS8)、太陽電池パネル12の出力を積算電力計14により計測する(ステップS9)。なお、出力計測時間に達していない場合には、前記ステップS4に戻る制御を繰り返す。
【0026】
次いで、太陽電池パネル12の出力積算値に基づいてコントローラ18により曇判定を行う(ステップS10)。曇判定の基準を判定する値は、出力積算値から発電にどの程度寄与しているかに基づいて決定される。一定の出力積算値に達していなければ、晴天でないと見なしてよいためである。ここで、曇と判定されたときは、太陽電池パネルの方位を水平となるように駆動装置17が太陽電池パネル12を角度変位させ(ステップS11)、前記ステップS4に戻る。
【0027】
ステップS10において、曇でないと判定されると、すなわち、出力積算値より、晴れ若しくはこれに近い状況が判定されると、前記位置データの太陽の方位及び高度と、太陽電池パネル12の実際の方位、仰角を示す方位検出器30及び仰角検出器31からの検出データとがそれぞれ比較され、それらの角度差が判定される(ステップS12)。角度差がない場合にはステップS4に戻って制御を繰り返す。角度差があると判定されると、太陽電池パネル12の出力が前回出力(ステップS9参照)に対して上昇しているか否かが判定される(ステップS13)。ここで、否が判定されると、太陽電池パネル12の現在角度に対応した方位から、所定角度すなわち予め記憶された太陽の位置データにおけるリアルタイムの方位、高度に対応した方位となる位置まで角度変位するとともに、更に、その1/2進んだ方位となる位置まで角度変位する一方、太陽電池パネル12の仰角は現在位置で停止してステップS4に戻る(ステップS14)。
【0028】
ステップS13において前回出力より出力上昇が判定されると、太陽電池パネル12の方位は、ステップ14と同様に角度変位するとともに、仰角も同様に角度変位する(ステップS15)。そして、これらの制御は、南中時を経過するまで、ステップ4に戻る制御を繰り返して行われる(ステップS16)。
【0029】
(南中時経過後から日没までのトラッキング)
図4に示されるように、太陽電池パネル12の出力積算値を計測し(ステップS17)、その積算値が所定値、すなわち一定の発電を行ったかどうかの基準として予めコントローラ18に与えられている所定値を越えているか否かを判定する(ステップS18)。積算値が所定値を越えていないときは、太陽電池パネルの仰角が0°となるように水平位置に角度変位させる(ステップS19)。これは、南中時を過ぎると、日射量は次第に少なくなって発電の寄与度が低下する傾向があるため、仰角を実際の太陽の方位、高度に応じて変位させる実益に乏しく、太陽電池パネル12を水平姿勢にしても、発電能力に大きな相違がないためである。このように太陽電池パネル12を水平位置に角度変位させた後、又は、出力積算値が所定値を越えていると判定された時は、前述したステップ4ないしステップ12と同様のステップS21ないしステップ28の制御が行われる。
【0030】
そして、ステップ28に示されるように、太陽電池パネル12の実際の方位、仰角と、太陽の位置データの方位、仰角との角度差が判定された後、太陽電池パネル12の出力積算値が所定値を越えたか否かが判定される(ステップ29)。ここで、否の判定がなされると、ステップ14と同様の角度変位が行われる(ステップS30)。この一方、出力積算値が所定値を越えたときは、ステップ15と同様の角度変位が行われる(ステップ31)。これらのステップS17ないしS31の制御は、日没時刻まで繰り返し行われ、日没時刻が経過したときに、太陽電池パネル12が原点位置に復帰する。
【0031】
なお、前記太陽電池パネル12の方位、仰角制御タイミングは特に限定されるものではないが、例えば、日照後、日没に至るまで、5分間隔、10分間隔等、一定の間隔をインターバルとして設定することができる。
【0032】
また、日没後においては、必然的に方位の角度変位は行われないが、風速判定と、降雨・降雪判定は、日没後、日昇まで一定のタイミングで行われる。従って、日没時に原点位置に復帰した太陽電池パネル12は、その後に降雨・降雪が判定されたときに、原点位置である水平位置から垂直位置に角度変位することとなり、降雨・降雪が続く限り、同位置を保持することとなる。但し、風速が上限設定値を超えたときは、風速判定モードが優先するように設定されているため、太陽電池パネル12は水平の原点位置に復帰する。
従って、日昇時には、太陽電池パネル12の仰角が原点位置に存在しない場合も生ずるが、以後の制御を一定に行うために、本実施形態では、日昇時に原点位置に一旦復帰させて、ステップ1ないし31の制御を行うように設定されている。
【0033】
以上のように、本発明によれば、予め記録された太陽の位置を示すデータ上の方位、仰角と、太陽電池パネルの実際の方位、仰角とを比較し、その差に応じて太陽電池パネルを角度変位させるシステム構成としたから、日射量を制御基準として角度変位させる従来タイプに比べて高応答性を付与することができる、という効果を得る。
【0034】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、材料、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態に係る太陽光発電装置のブロック構成図。
【図2】前記太陽光発電装置の概略正面図。
【図3】南中時以前のトラッキング制御を示すフローチャート図。
【図4】南中時以後のトラッキング制御を示すフローチャート図。
【符号の説明】
【0036】
10 太陽光発電装置
11 支持体
12 太陽電池パネル
14 積算電力計
15 風速センサ
16 感雨センサ
17 駆動装置
18 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルと、当該太陽電池パネルを変位可能に支持する支持体と、太陽電池パネルの方位及び仰角を変位させる駆動装置と、太陽電池パネルの出力を検出する積算電力計と、太陽電池パネルの方位、仰角を検出する検出器と、年月日、時刻及び太陽光発電装置の設置緯度、経度に基づいて太陽の位置データが予め設定されるとともに所定の制御を行うコントローラとを含む太陽光発電装置のトラッキングシステムにおいて、
前記コントローラは、所定のタイミングで前記位置データを読み出すとともに、前記検出器から与えられる太陽電池パネルの実際の方位、仰角との差に応じて太陽電池パネルを角度変位させることを特徴とする太陽光発電装置のトラッキングシステム。
【請求項2】
前記太陽光発電装置は、風速センサを更に含み、前記コントローラは、風速が設定値を越えたときに、前記駆動装置を介して太陽電池パネルを水平位置に角度変位させることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電装置のトラッキングシステム。
【請求項3】
前記太陽光発電装置は、感雨センサを更に含み、前記コントローラは、雨、雪を判定したときに、前記駆動装置を介して太陽電池パネルを垂直位置に角度変位させることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽光発電装置のトラッキングシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、南中時経過前において、太陽電池パネルの出力積算値に基づいて曇り判定を行い、曇りと判定したときに、駆動装置を介して太陽電池パネルを水平姿勢に角度変位させることを特徴とする請求項1、2又は3記載の太陽光発電装置のトラッキングシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、南中時経過前の太陽電池パネルの出力値が前回値を越えているか否かを判定し、前回値以下であるときに、太陽電池パネルの現在仰角を維持した状態で、太陽電池パネルを、現在方位から前記位置データに対応する位置となる所定角度まで角度変位させるとともに、更に、その角度差の1/2進んだ位置まで太陽電池パネルを変位させる一方、前記出力値が前回値以上であるときに、前記方位及び仰角を現在方位及び現在仰角に対して、前記所定角度と、更にその1/2進んだ位置となるように太陽電池パネルを角度変位させることを特徴とする請求項1,2又は3記載の太陽光発電装置のトラッキングシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、南中時経過後において、南中時の太陽電池パネルの出力積算値が所定値を越えているか否かを判定し、所定値以下であるときに、駆動装置を介して太陽電池パネルを水平姿勢に角度変位させることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電装置のトラッキングシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、南中時の太陽電池パネルの出力積算値が所定値を越えていると判定した後に与え得られる出力積算値に基づいて曇り判定を行い、曇りと判定したときに、駆動装置を介して太陽電池パネルを水平姿勢に角度変位させることを特徴とする請求項6記載の太陽光発電装置のトラッキングシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、南中時経過後の太陽電池パネルの出力積算値が所定値以上であるか否かを判定し、所定値以下であるときに、太陽電池パネルの現在仰角を維持した状態で、当該太陽電池パネルを、現在方位から前記位置データに対応する方位となる所定角度まで角度変位させるとともに、更に、その角度差の1/2進んだ位置まで太陽電池パネルを変位させる一方、出力積算値が前回値以上であるときに、前記方位及び仰角を現在方位及び現在仰角に対して、前記所定角度と、更にその1/2進んだ位置となるように太陽電池パネルを変位させることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電装置のトラッキングシステム。
【請求項9】
前記太陽光発電装置は、風速センサと感雨センサとを含み、前記コントローラは、風速が設定値を越えたときに駆動装置を介して太陽電池パネルを水平位置に角度変位させる一方、降雨、降雪を判定したときに駆動装置を介して太陽電池パネルを垂直位置に角度変位させ、これらが競合したときに、太陽電池パネルを水平位置に角度変位させる制御を優先的に行うことを特徴とする請求項1ないし8の何れかに記載の太陽光発電装置のトラッキングシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、日没時刻に達したときに、前記駆動装置を介して前記太陽電池パネルを原点復帰させることを特徴とする請求項1ないし9の何れかに記載の太陽光発電装置のトラッキングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−10543(P2010−10543A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170159(P2008−170159)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(594208075)フジプレアム株式会社 (15)
【Fターム(参考)】