説明

太陽電池モジュールの折版屋根への取り付け構造

【課題】太陽電池モジュールの構造とその取り付け構造を簡素化して太陽電池システム全体を軽量化し、取り付け構造を簡素化できる分だけ施工コストを削減し、併せて屋根への負荷重量を削減できる太陽電池モジュールの取り付け構造を提供する。
【解決手段】折版屋根材10の表面に太陽電池モジュールMを設置する。隣接する折版屋根材10の山部分11どうしは、タイトフレーム15に対してボルト18で連結固定してある。太陽電池モジュールMは、ベース体1と、ベース体1に装着されるシート状の電池本体2とからなる。ベース体1は、山部分11で支持される一対の締結壁3と、締結壁3に連続して立ち上がる一対の脚壁4と、両脚壁4どうしを繋ぐ組付壁5とを備える。締結壁3に形成したボルト穴7をボルト18に挿通して、山部分11とベース体1とをボルト18で共締め固定することにより、太陽電池モジュールMを折版屋根材10に直接締結固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの折版屋根用への取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根上に太陽電池を設置する形態には、表面に太陽電池が一体化してある屋根材を葺きあげる形態と、既存の屋根の上面に太陽電池モジュールを設置する形態(以下、単に据置き型と言う)とがある。据置き型の設置形態においては、屋根上に架台を構築したうえで、その上面に太陽電池モジュールを配置する。折版屋根材で葺きあげた屋根においては、山部と谷部とが交互に連続するので、山部の上面に先の架台と同様の支持枠を組んだうえで、その上面に太陽電池モジュールを配置し、各種の金具で固定している(特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−155803号公報(段落番号0009、図2、図3)
【特許文献2】特許第3352647号公報(段落番号0013、図3)
【特許文献3】特開2002−294955号公報(段落番号0051、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
据置き形の従来の太陽電池モジュールは、殆どが結晶系太陽電池で構成されていて、全体が硬質パネル化されている。そのため個々の太陽電池モジュールの重量が大きいうえ、設置するのに支持枠や取付金具等を多用しなければならない。勢い、太陽電池を設置した後の屋根全体の重量が大きくなり、建物躯体に対する荷重負荷が増加するのを避けられない。また、製造メーカによって太陽電池モジュールの大きさに違いがあり、しかも、太陽電池モジュールの縦横のサイズと折版屋根材の働き幅とが一致しないため、太陽電池モジュールの大きさや、屋根材の働き幅に応じて専用の支持枠や取付金具等を用意する必要があり、太陽電池モジュールの設置コストが嵩む。
【0005】
太陽電池モジュールを直線列状に、あるいは格子状に設置する場合には、隣接する太陽電池モジュールどうしを繋ぐための連結金具などを別途用意する必要があり、その分だけ設置の手間やコストがさらに増加する。隣接するモジュールどうしの連結を容易化するためのフレームや連結構造を備えている太陽電池モジュールがあるが、その場合でも、連結専用の支持枠や支持レールを用意する必要があり、設置コストや屋根重量が増加するのを避けられない。
【0006】
本発明の目的は、結晶系の太陽電池モジュールMで構成した太陽電池システムに比べて全体重量が大幅に軽量な太陽電池モジュールの折版屋根用への取り付け構造を提供することにある。本発明の目的は、より簡単な構造で太陽電池モジュールを屋根面に設置でき、従来の設置構造に比べて施工コストを大幅に削減でき、しかも設置構造が簡単な分だけ屋根の全体重量を削減して建物躯体に対する負荷重量を減少できる太陽電池モジュールの折版屋根用への取り付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽電池モジュールの折版屋根への取り付け構造では、左右方向に交互に連続する山部分11と谷部分12とを備えた折版屋根材10の表面に太陽電池モジュールMを設置する。左右方向に隣接する折版屋根材10の山部分11どうしは、タイトフレーム15に対してボルト18で連結固定してある。太陽電池モジュールMは、折版屋根材10で支持される左右に長いベース体1と、ベース体1に装着されるシート状の電池本体2とからなる。ベース体1は、折版屋根材10の山部分11で支持される一対の締結壁3と、締結壁3に連続して上向きに立ち上がる一対の脚壁4と、両脚壁4どうしを繋ぐ組付壁5とを備えている。締結壁3に、ボルト18を挿通するためのボルト穴7が、左右方向に一定間隔おきに形成される。ボルト穴7をボルト18に挿通して、隣接する折版屋根材10の山部分11とベース体1とをボルト18で共締め固定することにより、太陽電池モジュールMが折版屋根材10の山部分11に直接締結固定してある。
【0008】
軒棟方向に隣接配置したベース体1が、締結壁3およびボルト穴7を上下に重ねた状態で、折版屋根材10の山部分11に固定される。ボルト穴7の軒棟方向の隣接ピッチP1が、タイトフレーム15の軒棟方向の隣接ピッチP2より小さく、かつ、該ピッチP2の整数分の1に設定される。軒棟方向に隣接するタイトフレーム15の間では、上下に重なる締結壁3が、ワンサイドボルト47で山部分11に締結固定される。ワンサイドボルト47は、上下に重ねた締結壁3のボルト穴7の上方から、山部分11に形成した締結穴48に差し込まれている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る太陽電池モジュールの取り付け構造では、ベース体1と、ベース体1に装着されるシート状の電池本体2とで太陽電池モジュールMを構成し、ベース体1を折版屋根材10の山部分11に対して、タイトフレーム15のボルト18を利用して直接固定するので、従来の結晶系の太陽電池モジュールMで構成した太陽電池システムに比べて全体重量を大幅に軽量化できる。
【0010】
さらに、ベース体1に設けた締結壁3を、タイトフレーム15のボルト18を利用して折版屋根材10の山部分11に締結固定し、折版屋根材10自体を太陽電池モジュールM用の架台として利用し、従来のこの種構造において不可欠であった架台や、架台を固定するための金具などを省略するので、太陽電池モジュールMを設置するのに必要な金具を省略でき、先の太陽電池モジュールMの軽量化と併せて、屋根および建物躯体に対する太陽電池システムの負荷重量を小さくできる。もちろん、架台、金具、および枠体などを省略できる分だけ施工の手間や設置コストを大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】太陽電池モジュールの設置構造を示す縦断正面図である。
【図2】太陽電池モジュールの設置構造を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施例) 図1および図2は本発明に係る太陽電池モジュールの折版屋根への取り付け構造の実施例を示す。太陽電池モジュールMは、ベース体1と、ベース体1に装着される電池本体2とで構成する。ベース体1は、一対の締結壁3と、締結壁3に連続して上向きに立ち上がる一対の脚壁4と、両脚壁4の上端どうしを繋ぐ組付壁5とを一体に備えた横長のパネル体からなり、鋼板をロール成形して、あるいはベンダー成型により形成する。
【0013】
図1に示すように隣接する折版屋根材10の山部分11どうし、タイトフレーム15に対してボルト18で連結固定してある。締結壁3にボルト18を挿通するためのボルト穴7を一定間隔おきに形成する。ボルト穴7の隣接ピッチはボルト18の横方向隣接ピッチに一致させる。
【0014】
池本体2は、プラスチックフィルム基板の表面に太陽電池層を形成したフィルム型のアモルファス太陽電池からなる。フィルム型のアモルファス太陽電池は、ガラス基板の表面に太陽電池層を形成した結晶系太陽電池に比べて、単位面積あたりの重量を軽量化できるうえ、湾曲変形できるので曲面に沿って配置できる特長を有する。因みに、この実施例の電池本体2は、1平方m当り1kgの重量しかなく、従来の結晶系太陽電池に比べて10分の1にまで軽量化できる。
【0015】
プラスチックフィルム基板は、耐候性、なかでも紫外線によって劣化しにくいプラスチック材、例えばフッ素樹脂などを素材にして形成してあり、その片面に太陽電池層をプラズマCVD法で形成する。電池本体2は、プラスチックフィルム基板を先の組付壁5に接着することにより、ベース体1と一体化する
【0016】
太陽電池モジュールMの設置例を図1および図2に示す。この設置例における折版屋根材10は、逆台形状の谷部分12の両端に山部分11が形成され、隣接する折版屋根材10の山部分11どうしが、ボルト(剣先ボルト)18で連結固定してある。詳しくは、屋根下地に固定したタイトフレーム15の上面で上下に重ねた山部分11を、ボルト18、ナット19、および座金46などで締結して、隣接する折版屋根材10どうしが連結されている。これらボルト18、ナット19、および座金46をそのまま利用して、太陽電池モジュールMを折版屋根材10に直接締結固定する。
【0017】
既存の屋根においては、ナット19および座金46をボルト18から取り外したのち、ベース体1のボルト穴7がボルト18に外嵌する状態で、太陽電池モジュールMを山部分11に載置する。この状態でボルト18に座金46を組み、ナット19をボルト18に締結することによりベース体1を固定して、太陽電池モジュールMを屋根の軒棟方向と直交する状態で折版屋根材10に直接固定できる。
【0018】
ベース体1に設けたボルト穴7の軒棟方向の隣接ピッチP1と、タイトフレーム15の軒棟方向の隣接ピッチP2とは必ずしも一致しないので、太陽電池モジュールMを屋根の軒棟方向に隣接配置する場合には、タイトフレーム15の軒棟方向の隣接ピッチP2をひとつの基準にしてベース体1を用意する必要がある。多くの場合は、ボルト穴7の軒棟方向の隣接ピッチP1に比べて、タイトフレーム15の軒棟方向の隣接ピッチP2が充分に大きいので、前者ピッチP1を後者ピッチP2の整数分の1とすると、全てのボルト18をベース体1の締結に利用することができ、新たに追加すべき締結部品を最小限化できる。もちろん前者ピッチP1と後者ピッチP2とは一致していてもよい。
【0019】
においては、ボルト穴7の軒棟方向の隣接ピッチP1を、タイトフレーム15の軒棟方向の隣接ピッチP2の2分の1に設定して、上下に隣接配置したベース体1の締結壁3を上下に重ねた状態で、そのボルト穴7をボルト18に挿通し、座金46を組んだのちナット19をボルト18に締結することにより、締結壁3を山部分11およびタイトフレーム15に締結固定できる。軒棟方向に隣接するタイトフレーム15の間では、先のボルト18を利用できないので、上下に重なる締結壁3をワンサイドボルト47で山部分11に締結固定する。
【0020】
詳しくは、ベース体1の軒先側の締結壁3をボルト18に仮固定した状態で、棟側の締結壁3に形成したボルト穴7をガイドにして、山部分11にワンサイドボルト47用の締結穴48をドリルで形成する。こののち、仮固定した太陽電池モジュールMの棟側に新たな太陽電池モジュールM配置し、両モジュールMの締結壁3・3を上下に重ね、ボルト穴7・7を位置あわせする。この状態でワンサイドボルト47をボルト穴7・7に上方から差し込み、全体を押さえ込んだ状態でナット49をねじ込み操作することにより、ねじ軸に外嵌するスリーブ50の下半側を拡開変形させて、締結壁3を山部分11に締結固定する。
【0021】
以後、ベース体1の締結壁3をボルト18とワンサイドボルト47で締結することにより、太陽電池モジュールMが軒棟方向に隣接でき、その側方に同様のモジュール列を設置することにより、大面積の太陽光発電システムを構築することができる。図示していないが、個々の太陽電池モジュールMで発電された電力は、個々のモジュールから導出された出力ケーブルを介して出力調整器へ出力され、そこで電圧を調整したのち交流電流に変換されて商用電源などに供給される。
【0022】
仮設枠40はハット形断面のチャンネル材からなり、そのチャンネル溝壁に先のボルト18・47を挿通するための挿通穴44が形成してある。仮設枠40は、その挿通穴44をボルト18とワンサイドボルト47に外嵌し、チャンネル溝壁をナット19・49の上面に載置することにより、太陽電池モジュールMと平行に支持できる。仮設枠40を足場とすることにより、既設の太陽電池モジュールMを踏みつけることなく、そのメンテナンスや、交換作業などを効果的に行うことができる。必要があれば、仮設枠40の上面に足場パネルを締結してもよい。
【0023】
以下にベース体1の変形例を示す。ベース体1は、棟側の脚壁4の上下高さを軒先側の脚壁4の上下高さより大きくして、組付壁5を軒先側へ向かって下り傾斜させることができる。このように、組付壁5が軒先側へ向かって下り傾斜させてあると、屋根の勾配が小さい場合でも、太陽光の電池本体2に対する入射角度を大きくして、太陽電池モジュールMの発電効率を向上できる。
【0024】
またベース体1は組付壁5を上突湾曲面で形成して、電池本体2を湾曲面に沿って配置させることができる。
【0025】
折版屋根材10によっては、両端の山部分11の間に複数の谷部分12と山部分11を形成することがある。こうした場合には、図に示すワンサイドボルト47による締結構造と同様にして、中間に位置する山部分11にベース体1の締結壁3をワンサイドボルト47で締結することができる。
【0026】
上記以外に、ベース体1はアルミニウム板材やステンレス板材で形成することができる。ボルト穴7は、締結壁3の壁端縁で開口する溝として形成することができる
【符号の説明】
【0027】
1 ベース材
2 電池本体
3 締結壁
4 脚壁
7 ボルト穴
10 折版屋根材
11 山部分
15 タイトフレーム
18 ボルト
M 太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に交互に連続する山部分(11)と谷部分(12)とを備えた折版屋根材(10)の表面に太陽電池モジュール(M)が設置されており、
左右方向に隣接する折版屋根材(10)の山部分(11)どうしが、タイトフレーム(15)に対してボルト(18)で連結固定されており、
太陽電池モジュール(M)は、折版屋根材(10)で支持される左右に長いベース体(1)と、ベース体(1)に装着されるシート状の電池本体(2)とからなり、
ベース体(1)は、折版屋根材(10)の山部分(11)で支持される一対の締結壁(3)と、締結壁(3)に連続して上向きに立ち上がる一対の脚壁(4)と、両脚壁(4)どうしを繋ぐ組付壁(5)とを備えており、
締結壁(3)に、ボルト(18)を挿通するためのボルト穴(7)が、左右方向に一定間隔おきに形成されており、
ルト穴(7)をボルト(18)に挿通して、隣接する折版屋根材(10)の山部分(11)とベース体(1)とをボルト(18)で共締め固定することにより、太陽電池モジュール(M)が折版屋根材(10)の山部分(11)に直接締結固定してある太陽電池モジュールの折版屋根への取り付け構造。
【請求項2】
軒棟方向に隣接配置したベース体(1)が、締結壁(3)およびボルト穴(7)を上下に重ねた状態で、折版屋根材(10)の山部分(11)に固定されており、
ボルト穴(7)の軒棟方向の隣接ピッチ(P1)が、タイトフレーム(15)の軒棟方向の隣接ピッチ(P2)より小さく、かつ、該ピッチ(P2)の整数分の1に設定されており、
軒棟方向に隣接するタイトフレーム(15)の間では、上下に重なる締結壁(3)が、ワンサイドボルト(47)で山部分(11)に締結固定されており、
ワンサイドボルト(47)は、上下に重ねた締結壁(3)のボルト穴(7)の上方から、山部分(11)に形成した締結穴(48)に差し込まれている請求項1記載の太陽電池モジュールの折版屋根への取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−293374(P2009−293374A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217538(P2009−217538)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【分割の表示】特願2006−26004(P2006−26004)の分割
【原出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000006910)株式会社淀川製鋼所 (34)
【Fターム(参考)】