説明

太陽電池モジュール

【課題】受光面保護材がガラスとなっている従来タイプに比べて重量が低減でき、しかもバック部材によって耐火性も改善された太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】受光面保護剤として樹脂製フィルムA、第1の樹脂製封止材B1、太陽電池セルC、第2の樹脂製封止材B2、バック部材として珪酸カルシウム板D等を積層することにより太陽電池モジュールが構成されている。受光面保護材に樹脂製フィルムを用いるとともにバック部材として珪酸カルシウム板等を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光面保護材、第1の樹脂製封止材、太陽電池セル、第2の樹脂製封止材、バック部材の順で一体化された太陽電池モジュールに係り、特に、特別な屋根補強を実施することなく設置可能な軽量タイプであって、耐火性に優れた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、家屋や工場等の建築物の屋根面に敷設するものが一般的であり、例えば、特許文献1に開示されているように、フッ素系樹脂などからなる受光面保護層と、セルが樹脂封止された太陽電池セルと、その裏面側に位置するバック部材と、層間接着用の樹脂製封止材とを備えた構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3162513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した層構造を有する太陽電池モジュールは、一般的なガラスを受光面保護材として用いたものに比べて重量を軽減し、軽量化を達成することができるが、バック部材がプラスチック製の段ボールによって構成されていることから、耐火性能に劣る、という不都合がある。そのため、軽量化がある程度達成されても、他方で耐火性が相対的に低下してしまう、という不都合があった。
【0005】
[発明の目的]
本発明の目的は、軽量化を図りつつ耐火性を付与することのできる太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は特許請求の範囲記載の構成を採用したものである。具体的には、受光面保護材を構成する樹脂製シート(A)、第1の樹脂製封止材(B1)、太陽電池セル(C)、第2の樹脂製封止材(B2)、バック部材(D)が順次積層された太陽電池モジュールにおいて、
前記バック部材(D)を厚み3mm〜6mm、重量4.5kg/m以下の珪酸カルシウム板若しくはセメント系スレート板により構成する、という構成を採っている。
【0007】
本発明において、前記バック部材(D)は、外表面に吸湿防止構造を施すことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バック部材として珪酸カルシウム板等を採用しているため、バック部材の重さを抑制できるとともに、耐火性を付与することができる。しかも、その外表面を吸湿防止した構成では、バック部材が吸湿することで重量増となってしまう不都合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る実施形態を示す太陽電池モジュールの概略断面図。
【図2】太陽電池モジュールの変形例を示す概略断面図。
【図3】太陽電池モジュールの他の変形例を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示されるように、太陽電池モジュール(10)は、受光面保護材として作用する樹脂製シートであるフッ素系樹脂フィルム(A)と、第1の樹脂製封止材(B1)と、太陽電池セル(C)と、第2の樹脂製封止材(B2)と、バック部材としての珪酸カルシウム板(D)がこの順に積層されて一体化されている。
【0011】
フッ素系フィルム(A)は、水蒸気バリア性・透明性に優れるが製造コストが高いテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン(FEP)や、製造コストが低いが水蒸気バリア性に劣るポリビニリデンフルオライド(PVDF)などがある。好ましくは、これら特性について突出した特性はないもののバランス良く兼ね備えるエチレンーテトラフルオロエチレン(ETFE)がある。厚みは降雹などの受光面側の衝撃から太陽電池セル(C)を保護する役目と費用面から0.05mm〜0.25mm、重量は0.125kg/m〜0.625kg/mのものが好ましい。
【0012】
第1、第2の樹脂製封止材(B1)、(B2)としては、公知の太陽電池用の封止材を使用できる。この樹脂製封止材は、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、オレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられるが、各積層される部材との密着性から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、オレフィン系樹脂が好ましい。第1の樹脂製封止材(B1)及び第2の樹脂封止材(B2)は厚み0.3mm〜1.0mm、重量0.28kg/m〜0.9kg/mのものを用いることができる。厚みが0.3mm未満では太陽電池モジュール製造時に太陽電池セルが割れ易く歩留まりが低下してしまう。また、受光面側の衝撃から太陽電池セルを十分に保護できない。一方で、厚みが1.0mmを越えると、封止材の重量が重くなり軽量化が達成できなくなる。
【0013】
太陽電池セル(C)としては、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、化合物型など多岐に渡るが、従来の受光面保護部材がガラスである太陽電池モジュールと比較して水蒸気透過度が劣るため、主に水蒸気の影響を受けにくい単結晶シリコン型、多結晶シリコン型が好ましい。
【0014】
バック部材(D)は、珪酸カルシウム板、セメント系スレート板を採用することができる。これらの板は、厚み3mm〜6mm、重量2.25kg/m〜4.5kg/mのものを用いることが好ましい。3mm未満では強度不足となり、6mmを越えると、軽量化が達成できなくなるためである。
一般的に珪酸カルシウム板は、雰囲気の湿度によって吸湿・放湿を繰り返す。そこで珪酸カルシウム板の表裏各面及び端面に吸湿防止構造を施すために無機・有機系塗料で塗装することが好ましい。この塗装により、珪酸カルシウム板の直接露出面をなくして湿分を取り込まないようにし、重量増加や、強度不足を防ぐことができる。
なお、図2に示されるように、太陽電池セルと珪酸カルシウム板との間に成分移動防御シートを介在させ、受光面保護材(A)、第1樹脂製封止材(B1)、太陽電池セル(C)、第2樹脂製封止材(B2)、防御シート(E)、第3樹脂製封止材(B3)、珪酸カルシウム板(D)という構成をとることもできる。このような構成をとることで珪酸カルシウム板から移動した成分によって太陽電池セルが劣化することなく、より信頼性の高い太陽電池モジュールとすることができる。
また、図3に示されるように、バック部材の表面層にシートを配置し、受光面保護材(A)、第1樹脂製封止材(B1)、太陽電池セル(C)、第2樹脂製封止材(B2)、珪酸カルシウム板(D)、第3樹脂製封止材(B3)、シート材(F)という構成をとることもできる。このような構成をとり、シート材(F)の形状を珪酸カルシウム板(D)よりも少し大きくすることで、当該シートの外側を折り返すことで珪酸カルシウム板の端面をカバーでき、より信頼性の高い太陽電池モジュールとすることができる。
【0015】
[太陽電池モジュールの製造方法]
本発明において、フッ素系樹脂フィルム(A)と、第1の樹脂製封止材(B1)、太陽電池セル(C)、第2の樹脂製封止材(B2)、珪酸カルシウム板(D)が積層される。その積層は、図示しない真空ラミネート装置により行うことができる。このラミネート装置は、下型内部の加熱板上に前記各層材料を積層し、その後、上型を閉じ密閉した状態で内部空気を排気装置で排気し、次いで、上型側に支持されたゴム製のダイヤフラムで上下2つに仕切られた各空間部に差圧を生じさせることで、当該ダイヤフラムにより各層材料が所定時間真空加圧され、図1で示す断面構造の太陽電池モジュール(10)を形成することができる。
【0016】
次に、具体的実施例について説明する。
【0017】
受光面保護材として、厚み0.05mm、0.12kg/mのエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)を用いた。
第1、第2の樹脂封止材(B1)、(B2):厚み0.4mm、重量0.36kg/m、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
太陽電池セル(C):0.2mm、0.523kg/mの6インチシリコン単結晶セル。
バック部材として、5mm、3.53kg/mの珪酸カルシウム板を用いた。この珪酸カルシウム板には、その表裏各面及び端面を塗装し、直接的な露出がないようにした。
【0018】
得られた太陽電池モジュールは、縦1482mm×横985mmにおいて重量11.3kg、基準状態において出力220.3Wであった。
【0019】
上記太陽電池モジュールを所定の耐火試験を行ったところ、受光面保護材、第1、第2の樹脂層が一部溶融・燃焼したことが目視できたが、バック部材としての珪酸カルシウム板に異常は見られず、太陽電池モジュール全体として火災拡大が抑制され耐火性が大幅に向上した。
なお、上記バック部材をセメント系スレート板に替えて同様の耐火試験を行った場合においても異常は見られなかった。
以上より、本発明の太陽電池モジュールは、軽量化が達成できるだけでなく、耐火性能も改善されたものということができる。
【0020】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0021】
10 太陽電池モジュール
A フッ素系フィルム(受光面保護材)
B1 第1の樹脂製封止材
B2 第2の樹脂製封止材
C 太陽電池セル
D 珪酸カルシウム板(バック部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面保護材を構成する樹脂製シート(A)と、第1の樹脂製封止材(B1)、太陽電池セル(C)、第2の樹脂製封止材(B2)、バック部材(D)が順次積層された太陽電池モジュールにおいて、
前記バック部材(D)を厚み3mm〜6mm、重量4.5kg/m以下の珪酸カルシウム板若しくはセメント系スレート板により構成したことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記バック部材(D)は、外表面に吸湿防止構造が施されていることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−41936(P2013−41936A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177062(P2011−177062)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(594208075)フジプレアム株式会社 (15)
【Fターム(参考)】