説明

太陽電池モジュール

【課題】 本発明の課題は、充分な接着性を有し、且つ光を乱反射する物質を配合してなる太陽電池封止樹脂層を備え、長期信頼性に優れ、且つ発電効率が改善された太陽電池モジュールを提供することである。
【解決手段】 本発明の太陽電池モジュールは、ポリオレフィン系樹脂(a)を変性した変性ポリオレフィン系樹脂組成物に、数平均粒径0.05〜10μmの金属酸化物(e)0.01〜5重量%が配合されてなる、光散乱性の熱溶着性樹脂組成物100重量%からなる太陽電池封止用シートにより封止されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池封止を目的とする熱溶着性シート成形体、及びその製造方法と、それにより封止されてなる太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、異種材料を接着させるニーズが高まりつつある。自動車産業においては、意匠性を高めるために、金属材料と樹脂を接着させたり、太陽電池の分野においては、ガラスと結晶シリコンを接着させたりする例が挙げられる。
【0003】
一方で、金属への接着性に優れた樹脂としては、極性官能基を有するナイロン樹脂やポリエステル樹脂が挙げられるが、ポリオレフィンやポリスチレンといった汎用樹脂に比べると価格が高い。また、ナイロン樹脂やポリエステル樹脂は、金属には接着性を示すが、自動車部材に多用されているポリオレフィン系樹脂に対する接着性は乏しい。また、ガラスに接着する樹脂としては、太陽電池の封止材に使用されているエチレン・酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略記)樹脂が挙げられるが、EVA樹脂そのもののガラスへの接着性は乏しく、シランカップリング剤等で接着強度を高めているのが現状である。
【0004】
特許文献1には、このEVA樹脂成分に有機過酸化物が架橋剤として併用されており、シランカップリング剤を配合することが記載されているが、ガラス基板との接着性は満足できるものではない。
【0005】
また、特許文献2には、EVAフィルムとFRP基板を用いた太陽電池モジュールにおいて、封止材樹脂へのシランカップリング剤の配合が記載されているが、太陽電池素子の封止工程では、太陽電池素子を樹脂製の封止材でカバーした後、数分程度加熱して仮接着し、オーブン内において有機過酸化物が分解する高温で数分から1時間加熱処理して接着させているが、基板との接着性は十分ではない。
【0006】
また、近年では、太陽電池の背面を保護するシートにおいて、光を乱反射させる成分を配合したものが好適とされている(特許文献3参照)。これは、背面を保護するシート(バックシート)で乱反射された太陽光が、太陽電池発電層に再度当たる事で、発電効率が上がるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−116182号公報
【特許文献2】特開2003−204073号公報
【特許文献3】特許第4766192号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、充分な接着性を有し、且つ光を乱反射する物質を配合してなる太陽電池封止樹脂層を備え、長期信頼性に優れ、且つ発電効率が改善された太陽電池モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の現状に鑑み鋭意検討した結果、特定の変性樹脂組成物に対して、金属酸化物を加え、それからなる封止シートを含む太陽電池モジュールとすることで、上述したバックシートと同様に発電効率が改善され、また、金属酸化物添加による封止シートとしての性能低下が発生しないことで、上記課題の解決が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、ポリオレフィン系樹脂(a)を変性した変性ポリオレフィン系樹脂組成物に、数平均粒径0.05〜10μmの金属酸化物(e)0.01〜5重量%が配合されてなる、光散乱性の熱溶着性樹脂組成物100重量%からなる太陽電池封止用シートにより封止されてなる太陽電池モジュールに関する。
【0011】
好ましい実施態様は、前記ポリオレフィン系樹脂(a)を、LDPE、LLDPE、軟質ポリプロピレン系樹脂、及びエチレンブテン共重合体からなる群から選ばれる1種以上とすることである。
【0012】
好ましい実施態様は、前記変性ポリオレフィン系樹脂組成物を、下記(a)、(b)、(c)、及び(d)を押出機中で溶融混練して得られるエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂組成物とすることである。
(a)ポリオレフィン系樹脂 100重量部、
(b)ラジカル重合開始剤 0.01重量部〜5重量部、
(c)エポキシ基含有ビニル単量体 0.01〜10重量部
(d)芳香族ビニル単量体 0〜3重量部
好ましい実施態様は、前記ポリオレフィン系樹脂(a)を、融解熱量が10J/g以下の軟質ポリプロピレン系樹脂とすることであり、エチレン含有量が1〜30重量%であるエチレン−プロピレン共重合体とすることも好ましい。
【0013】
好ましい実施態様は、前記エポキシ基含有ビニル単量体(c)を、グリシジル(メタ)アクリレートとすることである。
【0014】
好ましい実施態様は、前記太陽電池シートを、水蒸気バリア性が2{(g/m・day)/0.4mm}未満であり、かつ、170℃で接着加工した際のガラスとの接着強度が80N/10mm幅以上(180度剥離試験)である、太陽電池封止用シートとすることである。
【0015】
さらに本発明は、このような本発明の太陽電池モジュールの製造方法であって、順に、
前記変性ポリオレフィン系樹脂組成物を押出機からストランドとして押し出すストランド化工程、
前記ストランドの表面に前記金属酸化物(e)を付着させる付着工程、及び
前記ストランドを切断してペレット化するペレット化工程を含む太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【0016】
好ましい実施態様は、前記付着工程において、前記金属酸化物(e)を含む冷却水にストランド化工程直後の前記ストランドを通過させることで、前記ストランドを冷却しつつ前記ストランド表面への前記金属酸化物(e)の付着を行う製造方法とすることである。
【0017】
好ましい実施態様は、前記冷却水に超音波振動エネルギーが付与されている製造方法とすることである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の太陽電池モジュールは、太陽光を効率よく乱反射する封止層を有するために、発電効率が高い。また、封止シートが太陽電池発電層、表層ガラスに良好に接着するため長期信頼性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の詳細について述べる。
【0020】
(太陽電池封止用シートまたはフィルム)
本発明に係る太陽電池封止用シート、又は、太陽電池封止用フィルムは、特定の変性樹脂組成物に金属酸化物が0.01〜5重量%配合されてなる変性ポリオレフィン系樹脂組成物100重量%からなり、この発明の太陽電池封止用シートを用いて太陽電池素子を封止することで、金属酸化物添加による封止シートとしての性能低下を生ずることなく、金属酸化物添加による適度な光散乱効果により光電変換効率が改善された太陽電池モジュールが得られる。
【0021】
このような本発明に係る光散乱性の熱溶着性樹脂組成物は成形加工されて、太陽電池モジュール封止部材として熱溶着性を有する樹脂シートとして提供され、本発明の太陽電池モジュールにおいて太陽電池素子を封止する封止層を構成する。従って、屋外での使用に耐える優れた長期信頼性を確保する観点から、耐加水分解性に優れ、かつ、ガラス板や耐光性PETフィルム、フッ素系樹脂等の保護部材や太陽電池素子との接着性に優れるエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂組成物を主成分とする熱溶着性樹脂組成物とすることが好ましい。
【0022】
本発明でいう熱溶着性とは、熱で溶けて被着体と接合する性質のことである。その厚みとしては3μmから10mmが例示でき、好ましくは10μm〜5mmであり、より好ましくは100μm〜1mm、さらに好ましくは200μm〜600μmであり、シートあるいはフィルムとして利用することができる。
【0023】
このような本発明に係る太陽電池封止用シートは、本発明に係る光散乱性の熱溶着性樹脂組成物を各種の押出成形機、射出成形機、カレンダー成形機、インフレーション成形機、ロール成形機、あるいは加熱プレス成形機などを用いてシート状に成形することで製造可能である。この中でもせん断力の強いスクリュー構成をもった押出成形機や、圧延能力に優れたカレンダー成形機を使用することが、金属酸化物の樹脂中の分散性の観点から好ましい。
【0024】
(変性ポリオレフィン系樹脂組成物)
本発明に係る変性ポリオレフィン系樹脂組成物は、ガラス等への接着性の観点、及び光散乱効果発現の観点から、下記(a)、(b)、(c)、及び(d)を溶融混練して得られる事を特徴とするエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂に、さらに(e)が配合されている組成物とすることが好ましい。
(a)非変性のポリオレフィン系樹脂 100重量部、
(b)ラジカル重合開始剤 0.01重量部〜5重量部、
(c)エポキシ基含有ビニル単量体 0.01〜20重量部
(d)芳香族ビニル単量体 0〜2重量部
(e)金属酸化物 0.01〜5重量部
さらに、ガラスへの接着性を向上させるには、前記の芳香族ビニル単量体の添加部数を少なくする事が好ましい。好ましくは0〜1重量部、さらに好ましくは0〜0.5重量部である。また、遮蔽効果を抑えつつシート内部での光の散乱効果を得て太陽電池の発電効率向上をさせる観点から、金属酸化物が上記の部数の範囲で添加されている事が好ましい。
【0025】
前記変性ポリオレフィン系樹脂組成物は、(a)非変性のポリオレフィン系樹脂に対し、(c)エポキシ基含有ビニル単量体、さらに(d)芳香族ビニル単量体からなるグラフト鎖をグラフトさせた、グラフト重合反応により得られる樹脂組成物であることが、グラフト効率を高める点で好ましい。
【0026】
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂組成物には必要に応じて、各種安定剤や、各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0027】
本発明に用いるグラフト重合反応としては、特に制限されないが、溶液重合、含浸重合、溶融重合などを用いることができる。特に、溶融重合が簡便で好ましい。溶融混練時の加熱温度は、100〜250℃であることが、ポリオレフィン系樹脂が充分に溶融し、かつ熱分解しないという点で好ましい。また溶融混練の時間(ラジカル重合開始剤を混合してからの時間)は、通常30秒間〜60分間である。
【0028】
また、前記の溶融混練の装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ミル、ニーダー、加熱ロールなどを使用することができる。生産性の面から単軸あるいは2軸の押出機を用いる方法が好ましい。また、各々の材料を充分に均一に混合するために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。
【0029】
(ラジカル開始剤(b))
前記ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物またはアゾ化合物などがあげられるが、水素引き抜き能が高いものが好ましく、そのようなラジカル重合開始剤としては、たとえば1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n‐ブチル‐4,4‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)バレレート、2,2‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´‐ビス(t‐ブチルパーオキシ‐m‐イソプロピル)ベンゼン、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t‐ブチルパーオキシオクテート、t‐ブチルパーオキシイソブチレート、t‐ブチルパーオキシラウレート、t‐ブチルパーオキシ‐3,5,5‐トリメチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上があげられる。
【0030】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、非変性のポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲内にあることが好ましく、0.05〜3重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。0.01重量部未満では変性が充分に進行せず、5重量部を超えるとポリオレフィンの流動性、機械的特性の著しい低下を招く。
【0031】
(エポキシ基含有ビニル単量体(c))
前記エポキシ基含有ビニル単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、イタコン酸モノグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルコハク酸モノグリシジル、アリルコハク酸ジグリシジル、p‐スチレンカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、スチレン‐p‐グリシジルエーテル、p‐グリシジルスチレン、3,4‐エポキシ‐1‐ブテン、3,4‐エポキシ‐3‐メチル‐1‐ブテンなどのエポキシオレフィン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドなどの1種または2種以上が挙げられる。
【0032】
これらのうち、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジルが安価という点で好ましい。
【0033】
前記エポキシ基含有ビニル単量体の添加量は、接着性を充分に確保しつつ、好適な形状や外観を有する太陽電池封止用シートとして成形加工する観点から、非変性のポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがさらに好ましい。
【0034】
(芳香族ビニル単量体(d))
前記芳香族ビニル単量体としては、スチレン;o‐メチルスチレン、m‐メチルスチレン、p‐メチルスチレン、α‐メチルスチレン、β‐メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレンなどのメチルスチレン;o‐クロロスチレン、m‐クロロスチレン、p‐クロロスチレン、α‐クロロスチレン、β‐クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのクロロスチレン;o‐ブロモスチレン、m‐ブロモスチレン、p‐ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどのブロモスチレン;o‐フルオロスチレン、m‐フルオロスチレン、p‐フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレンなどのフルオロスチレン;o‐ニトロスチレン、m‐ニトロスチレン、p‐ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレンなどのニトロスチレン;o‐ヒドロキシスチレン、m‐ヒドロキシスチレン、p‐ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレンなどのビニルフェノール;o‐ジビニルベンゼン、m‐ジビニルベンゼン、p‐ジビニルベンゼンなどのジビニルベンゼン;o‐ジイソプロペニルベンゼン、m‐ジイソプロペニルベンゼン、p‐ジイソプロペニルベンゼンなどのジイソプロペニルベンゼン;などの1種または2種以上が挙げられる。
【0035】
これらのうちスチレン、α‐メチルスチレン、p‐メチルスチレンなどのメチルスチレン、ジビニルベンゼン単量体またはジビニルベンゼン異性体混合物が安価であるという点で好ましいく、特に好ましくはスチレンである。
【0036】
前記(d)芳香族ビニル単量体の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、3重量部以下であることが好ましく、ガラスへの接着性を向上させるため、又は、透明性を維持するためには、出来る限り少ない量であることがさらに好ましい。前記範囲の添加量において、ポリオレフィン系樹脂に対する(c)エポキシ基含有ビニル単量体のグラフト効率を高く維持することでき好適である。一方、添加量が3重量部を超えると(c)エポキシ基含有ビニル単量体との共重合体が大きなドメインを形成するために、透明性が低下する傾向があるため、好ましくない。
【0037】
(金属酸化物(e))
本発明においては、太陽電池封止材用変性ポリオレフィン組成物に金属酸化物を添加して白色又は微白色の光散乱性のシートとする事を特徴とする。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、アルミナ、タルク、シリカなどを例示することができ、好ましくは二酸化チタン、硫酸バリウム、特に好ましくは二酸化チタンである。
【0038】
金属酸化物の数平均粒径は、好ましくは0.005μm以上、さらに好ましくは0.01μm以上、特に好ましくは0.05μm以上である。数平均粒径が0.005μm未満であると、効率的に散乱できる光の波長が短波長側へずれるため、可視光領域での反射率が低下することがある。金属酸化物の数平均粒径が10μmを超えると、粒度分布によっては粗大な粒子を含有するため、シートにピンホールを生じるなどの不具合が発生することがあることから、金属酸化物は数平均粒径10μm以下であることが好ましい。
【0039】
金属酸化物の含有量は、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%、さらに好ましくは0.5〜2重量%である。金属酸化物の含有量が0.01重量%未満であると入射光を効率よく散乱することが出来ない。他方、金属酸化物の含有量が5重量%を超えると、遮蔽効果が高まり、太陽電池の発電効率向上効果が得られなくなる。
【0040】
(金属酸化物(e)の配合方法)
本発明の太陽電池用封止シート中に金属酸化物を含有させる方法としては、以下の方法で配合することが好ましい。即ち、前述の方法で製造した変性ポリオレフィン系樹脂組成物を押出機より吐出したストランドを(直径2mm〜8mm)を、金属酸化物を含む冷却水が入った水槽に通し、その際に該ストランドに該金属酸化物を付着させる。
【0041】
このようにしてストランド表面に付着した金属酸化物は、本発明に係る光散乱剤として機能するだけでなく、ストランド同士の粘着を防止する防着剤としても機能する。このような金属酸化物が付着したストランドは、その後ペレタイズする工程において、その工程が容易になるとの効果がある。
【0042】
前記水槽において金属酸化物は、冷却水の表層に浮遊させてもよいし、水に沈む場合は、冷却水中に均一に分散させてもよい。冷却水中に分散させる場合は、水槽に撹拌機をつけて冷却水を撹拌するのが好ましく、超音波分散機で水中の白色顔料を微分散させるのがより好ましい。また、あらかじめ水や有機溶媒中に分散された金属酸化物を、冷却水槽の冷却水として使用してもよいし、金属酸化物の分散液を水槽の水に加えて希釈して使用してもよい。
【0043】
押出機から吐出されたストランド径は、2mm以下だとペレタイザーで切断できずに不具合が生じる事があり、8mm以上だと冷却不足でペレット形状が均一にならない。またストランド径を2〜8mmの間で調整する事により、ストランドに付着する金属酸化物の配合量を調整する事ができる。前記の方法で金属酸化物を配合する利点としては、酸や塩基に対して反応性を有する官能基を持つ単量体を使用して、樹脂を変性すると同時に目的の金属酸化物を配合できる事である。このような変性樹脂の製造時に、押出機中に該金属酸化物を添加すると、金属酸化物表面の酸性または塩基性官能基により、単量体の官能基が反応してしまい、目的の変性樹脂組成物が得られないことが考えられる。
【0044】
(太陽電池モジュール)
本発明の太陽電池モジュールは、本発明に係る光散乱性の熱溶着性樹脂組成物層を封止層として挟んだ状態で、ガラス板や耐光性PETフィルム、フッ素系樹脂等の保護部材、及び太陽電池素子を備える太陽電池モジュールである。
【0045】
(太陽電池素子)
本発明に係る太陽電池素子としては、本発明に係る特定の樹脂組成物の封止性能や光散乱効果を最大限に発揮せしめる観点から、受光面側にフィンガー電極、及びタブ線を有する太陽電池素子が好ましく、より好ましくは、結晶シリコン太陽電池素子とすることである。
【実施例】
【0046】
以下に具体的な実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。下記実施例および比較例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0047】
<封止用架橋性EVAシート>
サンビック社製:ウルトラパール、0.40mm厚、ファーストキュアタイプ
【0048】
<受光面側透明保護部材>
AGC社製:太陽電池用白板半強化ガラス(400mm×400mm×3.2mm)(結晶系モジュールで使用)
【0049】
<裏面側保護部材(バックシート)>
isovolta社製:PVF/PET/PVFバックシート(約330μm)を結晶系モジュール作成に使用した。
isovolta社製:icosolar s/s 2116を薄膜系モジュール作成に使用した。
【0050】
<結晶系太陽電池素子>
Qcells社製の3本バスバー配線の6インチ多結晶セル(180μm厚)を4セル直列構造としたものを結晶太陽電池素子として用いた。
【0051】
<薄膜系太陽電池素子>
縦5inch横5inchサイズのアモルファス太陽電池基板(ガラス上にシリコン等を蒸着・加工して発電素子を形成した物、カネカ社製)を薄膜太陽電池素子として用いた。
【0052】
<配線材料>
日立電線社製:A−SPS(2AG)−0.2mm×2.0mm
実施例及び比較例における各物性の測定方法及び評価方法は以下の通りである。
【0053】
<一体成形の条件> 保護部材と太陽電池素子との間にシートサンプルを挟んだ状態で全体を一体成形することで太陽電池モジュールを作製した。
【0054】
一体成形の条件は、170℃で3.5分脱気した後、170℃でプレス圧力1kg/cm、プレス時間10分で加熱圧着とした。加熱圧着には真空ラミネーター(NPC社製、LM−50×50−S)を使用した。
【0055】
シートサンプルとしてEVA系樹脂のシートを使用した場合は、上記条件で一体成形(加熱圧着)した後、更に150℃のオーブンで120分加熱してEVAを架橋させることとした。このEVAによる封止での150℃、120分の加熱は、EVAを架橋することで、太陽電池封止材料として必要な物性を太陽電池モジュール状態のEVA層が発揮するために必要とされる条件である。
【0056】
[灰分測定]
金属酸化物を配合した変性ポリオレフィンシート中の金属酸化物を定量するのに、電気炉を使用した。太陽電池封止用シート10gをるつぼに入れ、600℃で3時間、電気炉で処理した。るつぼ内に残った金属酸化物の量から、太陽電池封止用シート中の金属酸化物の重量%を算出した。
【0057】
[太陽電池出力評価]
25℃に保持した太陽電池モジュールにソーラーシミュレータからAM1.5及び照射強度1000mW/cmの擬似太陽光を照射し、最大出力[W](JIS C8911 1998)を測定し、発電効率を算出した。
【0058】
[耐熱耐湿性評価]
25℃に保持した太陽電池モジュールにソーラーシミュレータからAM1.5及び照射強度1000mW/cmの擬似太陽光を照射し最大出力[W](JIS C8911 1998)の初期値を測定した。
【0059】
次に、太陽電池モジュールを、温度85℃湿度85%RHの環境下に放置する耐熱耐湿試験を実施した。
【0060】
一定時間放置後の太陽電池モジュールにつき上記と同様にして最大出力[W]の試験後値を測定し、試験後値の初期値に対する比率に基づき耐熱耐湿性の優劣につき評価した。以下の基準による評価結果を表1に示す。
○:放置1000時間以上で比率0.95以上を保持。
△:放置500h時間以上、1000時間未満で比率0.95未満となる。
×:放置500時間未満で比率0.95未満となる。
【0061】
[水蒸気バリア性]
JIS K7126−1(差圧法)に従い、0.4mm厚みのシートサンプルにつき、40℃/90%RH、透過面積15.2cm2、圧力差75cmHgの条件で透湿度を単位{(g/m・day)/0.4mm}で測定した。この値が小さい程、水蒸気バリア性に優れていることを示す。
【0062】
(製造例1)
エチレン−プロピレン共重合体(a)としてダウケミカル社製Versify3401.05(MFR=8、重量比(プロピレン:エチレン)=85:15のランダム重合体)100重量部、及びラジカル重合開始剤(b)として1,3−ジ(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5重量部をシリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpmに設定したベント付き二軸押出機(46mmφ、L/D=63、神戸製鋼所製、HYPER KTX46)に供給することで溶融混練を開始し、その押出機のシリンダー途中より、エポキシ基含有ビニル単量体(c)グリシジルメタクリレート2重量部を加えることでこれらの成分を溶融混練し、変性ポリオレフィン系樹脂組成物を作成した。
【0063】
この変性ポリオレフィン系樹脂組成物を、該押出機のダイスから直径4mmストランドで取り出し、金属酸化物(e)(ルチル型二酸化チタン、R−11P、平均粒子径0.2μm、堺化学工業株式会社製)を水面に浮かせた水槽で冷却した後ペレタイジングし、ペレットを得た。MFRは50であった。
【0064】
この変性ポリオレフィン系樹脂組成物を、500mm幅押出Tダイに溶融樹脂を供給し、シート状溶融樹脂として押し出し、400μmの厚みとなるように調整した。シート中の金属酸化物の量は、0.5部、シートの水蒸気バリア性は、2.5{(g/m・day)/0.4mm}であった。
【0065】
(製造例2)
エチレン−プロピレン共重合体(a)としてダウケミカル社製Versify3401.05(MFR=8、重量比(プロピレン:エチレン)=85:15のランダム重合体)100重量部、及びラジカル重合開始剤(b)として1,3−ジ(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5重量部をシリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpmに設定したベント付き二軸押出機(46mmφ、L/D=63、神戸製鋼所製、製品名HYPER KTX46)に供給することで溶融混練を開始し、その押出機のシリンダー途中より、エポキシ基含有ビニル単量体(c)グリシジルメタクリレート2重量部を加えることでこれらの成分を溶融混練し、変性ポリオレフィン系樹脂組成物を作成した。
【0066】
この変性ポリオレフィン系樹脂組成物を、該押出機のダイスから直径3mmストランドで取り出し、金属酸化物(e)(ルチル型二酸化チタン、R−11P、平均粒子径0.2μm、堺化学工業株式会社製)を浮かせ、且つ水中にも該金属酸化物を分散させ、超音波発信機(SMT社製)で微分散させた水槽で冷却した後ペレタイジングし、ペレットを得た。MFRは50であった。
【0067】
この変性ポリオレフィン系樹脂組成物を、500mm幅押出Tダイに溶融樹脂を供給し、シート状溶融樹脂として押し出し、400μmの厚みとなるように調整した。シート中の金属酸化物の量は、1部、シートの水蒸気バリア性は、2.4{(g/m・day)/0.4mm}であった。
【0068】
(製造例3)
エチレン−プロピレン共重合体(a)としてダウケミカル社製Versify3401.05(MFR=8、重量比(プロピレン:エチレン)=85:15のランダム重合体)100重量部、及びラジカル重合開始剤(b)として1,3−ジ(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5重量部をシリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpmに設定したベント付き二軸押出機(46mmφ、L/D=63、神戸製鋼所製、製品名HYPER KTX46)に供給することで溶融混練を開始し、その押出機のシリンダー途中より、エポキシ基含有ビニル単量体(c)グリシジルメタクリレート2重量部を加えることでこれらの成分を溶融混練し、変性ポリオレフィン系樹脂組成物を作成した。
【0069】
この変性ポリオレフィン系樹脂組成物を、該押出機のダイスから直径3mmストランドで取り出し、金属酸化物(e)を含む水分散体(酸化チタン水分散体『ナノテック』、シーアイ化成(株)製、酸化チタン粒径0.02〜0.03μm、濃度15重量%)を水槽の冷却水に使用し、さらに超音波発信機(SMT社製)で微分散させて冷却した後ペレタイジングし、ペレットを得た。MFRは50であった。
【0070】
この変性ポリオレフィン系樹脂組成物を、500mm幅押出Tダイに溶融樹脂を供給し、シート状溶融樹脂として押し出し、400μmの厚みとなるように調整した。シート中の金属酸化物の量は、1.5部、シートの水蒸気バリア性は、2.3{(g/m・day)/0.4mm}であった。
【0071】
(製造例4)
エチレン−プロピレン共重合体(a)としてダウケミカル社製Versify3401.05(MFR=8、重量比(プロピレン:エチレン)=85:15のランダム重合体)100重量部、及びラジカル重合開始剤(b)として1,3−ジ(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5重量部をシリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpmに設定したベント付き二軸押出機(46mmφ、L/D=63、神戸製鋼所製、製品名HYPER KTX46)に供給することで溶融混練を開始し、その押出機のシリンダー途中より、エポキシ基含有ビニル単量体(c)グリシジルメタクリレート2重量部を加えることでこれらの成分を溶融混練し、変性ポリオレフィン系樹脂組成物を作成した。
【0072】
この変性ポリオレフィン系樹脂組成物を、該押出機のダイスから直径4mmストランドで取り出し、水槽で冷却した後ペレタイジングし、ペレットを得た。MFRは50であった。
【0073】
この変性ポリオレフィン系樹脂組成物を、500mm幅押出Tダイに溶融樹脂を供給し、シート状溶融樹脂として押し出し、400μmの厚みとなるように調整した。水蒸気バリア性は、2.5{(g/m・day)/0.4mm}であった。
【0074】
(実施例1)
受光面ガラス側の封止シートをEVA、セル背面側の封止シートを(製造例1)として、結晶セル系太陽電池モジュールを作成した。
【0075】
(実施例2)
受光面ガラス側の封止シートをEVA、セル背面側の封止シートを(製造例2)として、結晶セル系太陽電池モジュールを作成した。
【0076】
(実施例3)
受光面ガラス側の封止シートをEVA、セル背面側の封止シートを(製造例3)として、結晶セル系太陽電池モジュールを作成した。
【0077】
(実施例4)
受光面ガラス側の封止シート、セル背面側の封止シートをともに(製造例1)のシートとして、結晶セル系太陽電池モジュールを作成した。
【0078】
(実施例5)
受光面ガラス側の封止シート、セル背面側の封止シートをともに(製造例2)のシートとして、結晶セル系太陽電池モジュールを作成した。
【0079】
(実施例6)
受光面ガラス側の封止シート、セル背面側の封止シートをともに(製造例3)のシートとして、結晶セル系太陽電池モジュールを作成した。
【0080】
(実施例7)
(製造例1)のシートを用いて、薄膜系太陽電池モジュールを作成した。
【0081】
(実施例8)
(製造例2)のシートを用いて、薄膜系太陽電池モジュールを作成した。
【0082】
(実施例9)
(製造例3)のシートを用いて、薄膜系太陽電池モジュールを作成した。
【0083】
(比較例1)
受光面ガラス側の封止シート、セル背面側の封止シートをともにEVAとして、結晶セル系太陽電池モジュールを作成した。
【0084】
(比較例1)
受光面ガラス側の封止シート、セル背面側の封止シートをともにEVAとして、結晶セル系太陽電池モジュールを作成した。
【0085】
(比較例2)
受光面ガラス側の封止シートをEVA、セル背面側の封止シートを(製造例4)として、結晶セル系太陽電池モジュールを作成した。
【0086】
(比較例3)
受光面ガラス側の封止シート、セル背面側の封止シートをともに(製造例4)として、結晶セル系太陽電池モジュールを作成した。
【0087】
(比較例4)
EVAシートを用いて、薄膜系太陽電池モジュールを作成した。
【0088】
(比較例5)
(製造例4)のシートを用いて、薄膜系太陽電池モジュールを作成した。
【0089】
(実施例1)〜(実施例9)、及び(比較例1)〜(比較例5)で作成した太陽電池モジュールの出力を測定し、発電効率を算出した。また、耐熱耐湿性評価を行ったところ、実施例、比較例の全てのモジュールで、1000時間以上保持できる事が確認でき、長期信頼性が担保されている事が確認できた。これらの評価結果を[表1]にまとめて示す。
【0090】
【表1】

【0091】
実施例、及び比較例から、本発明の太陽電池封止シートにより封止されてなる太陽電池モジュールは、発電効率を向上させ、且つ長期信頼性を有する事が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂(a)を変性した変性ポリオレフィン系樹脂組成物に、数平均粒径0.05〜10μmの金属酸化物(e)0.01〜5重量%が配合されてなる、光散乱性の熱溶着性樹脂組成物100重量%からなる太陽電池封止用シートにより封止されてなる太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂(a)が、LDPE、LLDPE、軟質ポリプロピレン系樹脂、及びエチレンブテン共重合体からなる群から選ばれる1種以上である事を特徴とする、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記変性ポリオレフィン系樹脂組成物が、下記(a)、(b)、(c)、及び(d)を押出機中で溶融混練して得られるエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂組成物であることを特徴とする、請求項1、又は2に記載の太陽電池モジュール。
(a)ポリオレフィン系樹脂 100重量部、
(b)ラジカル重合開始剤 0.01重量部〜5重量部、
(c)エポキシ基含有ビニル単量体 0.01〜10重量部
(d)芳香族ビニル単量体 0〜3重量部
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂(a)が、融解熱量が10J/g以下の軟質ポリプロピレン系樹脂である事を特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂(a)が、エチレン含有量が1〜30重量%であるエチレン−プロピレン共重合体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記エポキシ基含有ビニル単量体(c)が、グリシジル(メタ)アクリレートである、請求項3〜5のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
水蒸気バリア性が2{(g/m・day)/0.4mm}未満であり、かつ、170℃で接着加工した際のガラスとの接着強度が80N/10mm幅以上(180度剥離試験)である、請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法であって、順に、
前記変性ポリオレフィン系樹脂組成物を押出機からストランドとして押し出すストランド化工程、
該ストランドの表面に前記金属酸化物(e)を付着させる付着工程、及び
該ストランドを切断してペレット化するペレット化工程を含む、ことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記付着工程において、前記金属酸化物(e)を含む冷却水にストランド化工程直後の前記ストランドを通過させることで、該ストランドを冷却しつつ該ストランド表面への前記金属酸化物(e)の付着を行う、請求項8に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記冷却水に超音波振動エネルギーが付与されている事を特徴とする、請求項8、又は9に記載の太陽電池モジュールの製造方法。

【公開番号】特開2013−98242(P2013−98242A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237550(P2011−237550)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】