説明

太陽電池封止材料、並びにそれを用いた太陽電池封止シート及び太陽電池

【課題】 高い透明性を損なうことなく、太陽電池の耐久性を向上させ且つ長期に亘って高い発電効率を維持することを可能とする太陽電池封止材料、並びにそれを用いる太陽電池封止シート及び太陽電池を提供すること。
【解決手段】エチレン−極性モノマー共重合体と、200〜100000の重量平均分子量を有するエポキシ化合物とを含有することを特徴とする太陽電池封止材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池封止材料、並びにそれを用いた太陽電池封止シート及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の枯渇、大気汚染、地球温暖化が問題となっている近年、無尽蔵且つクリーンな自然エネルギーである太陽光を直接電気に変換する太陽電池が広く普及し、更なる性能向上が試みられている。
【0003】
太陽電池は、屋外等の高温、高湿度、風雨に曝される苛酷な環境下で長期に亘って使用される。その為、太陽電池モジュールを製造するために用いられる太陽電池封止シートには、水分、紫外線等で変質しないという耐候性や耐熱性、そして太陽電池セル内部への異物混入や水分侵入を抑制できる接着性、柔軟性が要求される。またその他に、絶縁抵抗性や、太陽電池セルへの集光を十分に確保するための透明性も、太陽電池セルの能力を十分に発揮させるために太陽電池封止シートに要求される。
【0004】
その為、かかる観点から、太陽電池封止シートには、エチレン−極性モノマー共重合体からなるシート、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるシートが、近年広く用いられている。
【0005】
しかし、このような従来の太陽電池封止シートにおいては、長期使用により太陽電池モジュール内へ侵入した水分により加水分解されてしまい、酢酸などのカルボン酸を生じさせることがある。このようにして生じた酸は、太陽電池内部の導線や電極を腐食させてしまい、結果として太陽電池の耐久性を低下させることが問題視されている。
【0006】
かかる問題を解決するため、特開2008−41800号公報(特許文献1)には、脱水性及び加水分解抑制能を有するカルボジイミド化合物を添加した太陽電池封止シートが開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の太陽電池封止シートにおいては、カルボジイミド化合物添加によりその透明性が低下してしまい、太陽電池セルへの太陽光の入射が妨げられることになるため、発電効率の点で未だ十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−41800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高い透明性を損なうことなく、太陽電池の耐久性を向上させ且つ長期に亘って高い発電効率を維持することを可能とする太陽電池封止材料、並びにそれを用いる太陽電池封止シート及び太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、エチレン−極性モノマー共重合体を含有する太陽電池封止材料に特定の分子量を有するエポキシ化合物を添加することにより、該共重合体の高い透明性を低下させず、加水分解によって生じた酸を減少させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の太陽電池封止材料は、エチレン−極性モノマー共重合体と、200〜100000の重量平均分子量を有するエポキシ化合物とを含有することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の太陽電池封止シートは、前記本発明の太陽電池封止材料をシート状に成形してなるものであることを特徴とするものである。
【0013】
更に、本発明の太陽電池は、透明部材と保護部材と太陽電池セルとを備える太陽電池であって、前記太陽電池セルと前記透明部材及び/又は前記保護部材との間に前記本発明の太陽電池封止シートが配置されていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明にかかる前記エポキシ化合物の含有量としては、前記エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0015】
なお、本発明において前記エポキシ化合物を添加することによって、エチレン−極性モノマー共重合体の高い透明性を損なうことなく、太陽電池の耐久性を向上させ且つ長期に亘って高い発電効率を維持することを可能とする理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは、前記エポキシ化合物は、エチレン−極性モノマー共重合体の透明性への影響が少なく、また太陽電池モジュール内に発生したカルボン酸に対し受酸剤として機能するため、太陽電池封止材料の高い透明性を損なうことなく、前記カルボン酸による太陽電池内の導線や電極の腐食が抑制されるためと推察する。また前記エポキシ化合物が受酸剤として機能する理由も必ずしも定かではないが、本発明者らは、前記エポキシ化合物の有するエポキシ基の開環反応により、前記カルボン酸がエステル化され、結果として太陽電池封止材料中のカルボン酸量が低下するためと推察する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い透明性を損なうことなく、太陽電池の耐久性を向上させ且つ長期に亘って高い発電効率を維持することを可能とする太陽電池封止材料、並びにそれを用いる太陽電池封止シート及び太陽電池を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの断面構造を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0019】
本発明の太陽電池封止材料は、エチレン−極性モノマー共重合体と、200〜100000の重量平均分子量を有するエポキシ化合物とを含有することを特徴とするものである。
【0020】
先ず、本発明において用いられるエポキシ化合物について説明する。
【0021】
本発明において用いられるエポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物を指し、その重量平均分子量が200〜100000であることが必要である。前記重量平均分子量が200未満の場合、エチレン−極性モノマー共重合体の加水分解により発生する酸に対する吸収効果が小さく、更にその封止材料を用いて封止シートを成形加工した後にエポキシ化合物がブリードアウトし易くなる。他方、前記重量平均分子量が100000を超えている場合、その封止材料を用いて封止シートを成形する際の加工が困難になる。また、エチレン−極性モノマー共重合体の加水分解により発生する酸に対する吸収効果をより確実にするためには、前記重量平均分子量が1000〜50000であることが好ましい。
【0022】
更に、本発明において用いられるエポキシ化合物の配合量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。エポキシ化合物の配合量が0.1質量部未満の場合、エチレン−極性モノマー共重合体の加水分解により発生する酸を十分に吸収することができなくなる傾向にあり、他方、エポキシ化合物の配合量が10質量部を超えている場合、エチレン−極性モノマー共重合体との相溶性が悪く、透明性が低下する傾向にある。
【0023】
このようなエポキシ化合物としては、アクリル系エポキシ化合物又はスチレン系エポキシ化合物が好ましい。これらのエポキシ化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、エポキシ化合物として、これらのエポキシ化合物の誘導体が用いられてもよい。
【0024】
また、前記エポキシ化合物は、エポキシ当量が100〜400g/eqであることが好ましい。なお、ここでいうエポキシ当量とは、次式:
エポキシ当量(g/eq)=16×100/(エポキシ化合物中のオキシラン酸素濃度(%))
に基づいて算出される値のことである。
【0025】
また、本発明において用いられるエポキシ化合物は、ガラス転移温度が40〜90℃であることが好ましい。なお、ここでいうガラス転移温度とは、JIS
K7121の方法により、示差走査型熱量計(DSC)で測定した中間点ガラス転移温度のことである。
【0026】
本発明に用いるのに好ましいエポキシ化合物の市販品としては、マープルーフG−01100、マープルーフG−0150M、マープルーフG−0250S、マープルーフG−1005S、エピオールSB(以上、日本油脂株式会社製)等が挙げられる。
【0027】
次に、本発明に用いるエチレン−極性モノマー共重合体について説明する。本発明に用いられるエチレン−極性モノマー共重合体は、エチレンと極性基を有する極性モノマーとの共重合体のことを指し、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマー等が挙げられる。これら共重合体は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、前記共重合体として、これらの共重合体の誘導体が用いられてもよい。特に透明性、加工性に優れている点において、エチレン−酢酸ビニル共重合体がより好ましく、更に後述する、太陽電池を構成する透明部材や保護部材との接着性がより優れている点において、酢酸ビニル含有量20質量%以上40質量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
【0028】
また、前記エチレン−極性モノマー共重合体における極性モノマーの含有量としては、前記エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して20質量部以上40質量部以下であることが好ましい。前記極性モノマーの含有量が20質量部未満では架橋不良となる傾向にあり、他方、40質量部を超える場合には酸が発生しやすくなる傾向がある。
【0029】
なお、本発明の太陽電池封止材料においては、本発明の効果を損なわない程度であれば、架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、無機物、顔料等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0030】
架橋剤としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシハイドロパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルプロピル)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルプロピル)シクロヘキサン、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン等の有機過酸化物を用いることができる。
【0031】
有機過酸化物の含有量は、本発明の太陽電池封止材料においては、100質量部の前記エチレン−極性モノマー共重合体に対して、0.2質量部以上5.0質量部以下の範囲で配合されていることが好ましい。なお、ここにいう含有量の値は、太陽電池封止材料製造時における値を示す。有機過酸化物の含有量が0.2質量部以上であることで、太陽電池モジュールを製造する際の加熱工程において、エチレン−極性モノマー共重合体同士の十分な架橋をより一層効果的に実現させることができ、有機過酸化物の含有量が5.0質量部以下であることで、エチレン−極性モノマー共重合体と有機過酸化物との相溶性の悪化をより一層確実に抑制することができ、太陽電池封止シートからの有機過酸化物のブリードアウトをより確実に抑制できる傾向にある。
【0032】
架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート及びトリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤、(メタ)アクリルエステルの単官能及び2官能の助剤等を用いることができる。架橋助剤の配合量は、100質量部の前記エチレン−極性モノマー共重合体に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。この範囲で架橋助剤が添加されていることで、太陽電池封止材料のゲル分率をより一層高めることができ、耐久性に優れた太陽電池封止シートを得ることができる傾向にある。
【0033】
シランカップリング剤としては、公知のものが適宜採用され、具体的には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが例示される。太陽電池封止材料におけるシランカップリング剤の含有量は、100質量部の前記エチレン−極性モノマー共重合体に対して、0.1質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。
【0034】
紫外線吸収剤は、特に制限されないが、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフエノンや2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフエノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい。太陽電池封止材料における紫外線吸収剤の含有量は、100質量部の前記エチレン−極性モノマー共重合体に対して、0.01質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
【0035】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(Hindered Amine Light Stabilizer (HALS))が好ましい。太陽電池封止材料における光安定剤の含有量は、100質量部の前記エチレン−極性モノマー共重合体に対して、0.01質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
【0036】
次に、本発明の太陽電池封止シートについて説明する。本発明の太陽電池封止シートは、前記本発明の太陽電池封止材料をシート状に成形することにより得られるものであり、例えば前記本発明のエチレン−極性モノマー共重合体と前記本発明のエポキシ化合物とを溶融混練して適宜シート状に成形することによって得られる。
【0037】
このような成形方法としては、公知の成形方法を適宜採用することができ、Tダイ押出成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法などが例示される。
【0038】
前記本発明の太陽電池封止材料をシート状に成形する際の成形温度は特に制限されないが、エチレン−極性モノマー共重合体及びエポキシ化合物の軟化点以上の温度範囲であることが好ましい(有機過酸化物を用いる場合は、それが安定に存在する温度範囲内であることが好ましい。なお「有機過酸化物が安定に存在する温度範囲」とは有機過酸化物の10時間半減期温度以下の範囲であることが好ましい)。
【0039】
本発明の太陽電池封止シートの厚みは特に制限されないが、0.2mm〜1.2mmが好ましい。このことは、例えば、成形方法がTダイ押出成形法である場合には、Tダイのリップ隙間の大きさを適宜調整することなどによって、具体的に実現できる。太陽電池封止シートの厚みが0.2mm未満である場合には、太陽電池セルが破損する傾向にあり、他方、太陽電池封止シートの厚みが1.2mmを超える場合には、太陽電池封止シートや太陽電池モジュールの製造コスト高になる傾向にある。
【0040】
次に、本発明の太陽電池封止シートを用いた本発明の太陽電池について説明する。本発明の太陽電池は、透明部材と保護部材と太陽電池セルとを備える太陽電池であって、前記太陽電池セルと前記透明部材及び/又は前記保護部材との間に前記本発明の太陽電池封止シートが配置されているものである。このような本発明の太陽電池の好適な一例を図1に示す。
【0041】
図1に示す太陽電池モジュール1は、太陽電池封止シート2aで固定された透明部材(ガラス基板)3と太陽電池封止シート2bで固定された保護部材(バックシート)4を備え、太陽電池封止シート2a及び太陽電池封止シート2bとの間の太陽電池セル5を、太陽電池セル5の受光面側を透明部材1側に向けて配置されている。
【0042】
太陽電池モジュール1は、次のように製造される。太陽電池セル5の両側に太陽電池封止シート2a、2bを配置し、さらに、太陽電池封止シート2a、2bの外面側に、透明部材3と保護部材4を配置してなる積層体を作製する。次に、その積層体に加熱処理が施されて、太陽電池封止シート2a、2bが一体化して太陽電池封止シート(接着層)2となる。このとき、太陽電池封止シート2a、2bが軟化し、エチレン−極性モノマー共重合体の分子同士の架橋反応が生じる(なお、有機過酸化物を用いる場合には、このような加熱処理は、有機過酸化物の10時間半減期温度以上の温度条件下で実施される)。これにより、太陽電池モジュール1が形成される。
【0043】
太陽電池セル5としては特に制限されないが、n型半導体とp型半導体のpn接合構造を有する光電変換素子などといった公知の光電変換素子を用いることができる。
【0044】
透明部材3としては特に制限されないが、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミナケイ酸ガラス、高ケイ酸ガラスなど適宜ガラス材を用いることができる。
【0045】
保護部材4としては特に制限されないが、ポリフッ化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどといったプラスチックシートなどのシート材を、適宜用いることができる。
【0046】
以上、本発明の太陽電池の好適な実施形態について説明したが、本発明の太陽電池は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、太陽電池セルの片面のみを封止するアモルファスシリコン系、化合物系(CIS系、GaAs系)太陽電池にも好適に用いることは可能である。このような場合、太陽電池封止シートは太陽電池セルと保護部材の間に配置される。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
エチレン酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製、商品名「EVAFLEX EV250R」)100質量部に対して、エポキシ化合物1(日油株式会社製、商品名「マープルーフG−01100」、重量平均分子量:12000、アクリル系エポキシポリマー、ガラス転移温度:47℃、エポキシ当量:170g/eq、実施例1)を3質量部添加し、溶融混練した。次に得られた溶融混練物をTダイ押出機(サーモプラスチックス工業社製、テストφ40mm押出機、シリンダー温度90℃、ダイス(Tダイ)温度90℃)を用いて、シート状に押出成形し、シート厚みが400μmの太陽電池封止シートを得た。
【0049】
(実施例2〜5)
エポキシ化合物1の代わりに、エポキシ化合物2(日油株式会社製、商品名「マープルーフG−0150M」、重量平均分子量:9000、アクリル系エポキシポリマー、ガラス転移温度:71℃、エポキシ当量:310g/eq、実施例2)、エポキシ化合物3(日油株式会社製、商品名「マープルーフG−0250S」、重量平均分子量:20000、スチレン系エポキシポリマー、ガラス転移温度:74℃、エポキシ当量:310g/eq、実施例3)、エポキシ化合物4(日油株式会社製、商品名「エピオールSB」、重量平均分子量:206、p−sec−ブチルフェニル−グリシジルエーテル、エポキシ当量:235g/eq、実施例4)、又はエポキシ化合物5(日油株式会社製、商品名「マープルーフG−1005S」、重量平均分子量:100000、スチレン系エポキシポリマー、ガラス転移温度:96℃、エポキシ当量:3300g/eq、実施例5)を各々添加した以外は実施例1と同様にして太陽電池封止シートを作製した。
【0050】
(実施例6、7及び8)
前記エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、前記エポキシ化合物1を0.1質量部(実施例6)、前記エポキシ化合物1を10質量部(実施例7)又は前記エポキシ化合物4を10.5質量部(実施例8)添加するようにした以外は実施例1と同様にして太陽電池封止シートを作製した。
【0051】
(比較例1)
エポキシ化合物1を添加しなかった以外は実施例1と同様にして太陽電池封止シートを作製した。
【0052】
(比較例2及び3)
エポキシ化合物1の代わりに、カルボジイミド化合物8(N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、比較例2)又はカルボジイミド化合物9(ビス(2,6‐ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、比較例3)を各々添加した以外は実施例1と同様にして太陽電池封止シートを作製した。
【0053】
(比較例4及び5)
エポキシ化合物1の代わりに、エポキシ化合物6(日油株式会社製、商品名「エピオールEH」、重量平均分子量:186、2−エチルヘキシル−グリシジルエーテル、エポキシ当量:215g/eq、比較例4)又はエポキシ化合物7(日油株式会社製、商品名「マープルーフG−1010S」、重量平均分子量:110000、スチレン系エポキシポリマー、ガラス転移温度:93℃、エポキシ当量:1700g/eq、比較例5)を各々添加した以外は実施例1と同様にして太陽電池封止シートを作製した。
【0054】
<全光線透過率の測定>
実施例1〜8及び比較例1〜5で得られた太陽電池封止シートについて、分光光度計(日本分光株式会社製、V−570自記分光光度計)を用いて、可視光領域である380〜780nmの全光線透過率を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0055】
<太陽電池封止シート中における酢酸量の評価>
実施例1〜8及び比較例1〜5で得られた太陽電池封止シートを用い、ガラス板(厚さ3mm)/太陽電池封止シート/バックシート(厚さ120μm)となるように積層した後、真空ラミネーターを用いて、125℃において5分間、更に150℃において20分間加熱処理することによって、ガラス板と太陽電池封止シートとの間及び太陽電池封止シートとバックシートとの間をそれぞれ封止して試験用モジュールを作製した。得られたモジュールを温度121℃、湿度100%RHの環境下に、24時間放置し、このモジュールから剥離した封止シート(縦50mm、横50mm、厚さ400μm)を25℃のアセトン2mlに48時間浸漬し、アセトン抽出液に含まれる酢酸量(ppm)をガスクロマトグラフを用いて定量した。そして、得られた値を下記基準に基づいて評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:酢酸量が500ppm未満
○:酢酸量が500ppm以上2000ppm未満
×:酢酸量が2000ppm以上。
【0056】
<成形加工性の評価>
実施例1〜8及び比較例1〜5において、T−ダイ押出機にてシリンダー及びダイス温度90℃の条件にて製膜した時の状況を、下記評価基準に基づいて成形加工性を評価した。その結果は表1に示す。
◎:ダイスからシートが均一にすんなりと流れ、スクリュー負荷もかかっておらず安定な状況
○:ダイスからシートが流れ、スクリュー負荷が一部かかっているが、製膜には問題がない状況
×:スクリューに負荷がかかり、スクリューが回らず成形が不可能な状況。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の封止材料を用いた場合(実施例1〜8)は、全光線透過率が高く、太陽電池封止シート中の酢酸量が少なく、成形加工性も優れたものであった。
【0059】
一方、本発明にかかるエポキシ化合物を添加しなかった場合(比較例1)、添加したエポキシ化合物の重量平均分子量が200未満の場合(比較例4)においては、エチレン酢酸ビニル共重合体加水分解により発生した酢酸を十分に吸収することができず、酢酸量の点で実施例1〜8より劣ったものであった。
【0060】
また、本発明にかかるエポキシ化合物の代わりにカルボジイミド化合物を添加した場合(比較例2及び3)は、全光線透過率が低く、封止材料の透明性の点で実施例1〜8より劣ったものであった。
【0061】
また、添加したエポキシ化合物の重量平均分子量が100000超の場合(比較例5)においては、太陽電池封止シートを成形することができず、封止材料の成形加工性の点で実施例1〜8より劣ったものであった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明によれば、エチレン−極性モノマー共重合体を含有する太陽電池封止材料にエポキシ化合物を添加することにより、該共重合体の高い透明性を低下させず、加水分解によって生じた酸を減少させることが可能となる。
【0063】
したがって、高い透明性を損なうことなく、太陽電池の耐久性を向上させ且つ長期に亘って高い発電効率を維持することを可能とする太陽電池封止材料、並びにそれを用いる太陽電池封止シート及び太陽電池を提供するために有用である。特に架橋密度並びに柔軟性を向上させるべく酢酸ビニルの含有量が高く、酢酸が発生しやすいエチレン−酢酸ビニル共重合体含有の封止シート、及びそれを用いた太陽電池の提供に有用である。
【符号の説明】
【0064】
1…太陽電池モジュール、2a,2b…太陽電池封止シート、2…太陽電池封止シート(接着層)、3…透明部材(ガラス基板)、4…保護部材(バックシート)、5…太陽電池セル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−極性モノマー共重合体と、200〜100000の重量平均分子量を有するエポキシ化合物とを含有することを特徴とする太陽電池封止材料。
【請求項2】
前記エポキシ化合物の含有量が、前記エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.1〜10質量部であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池封止材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の太陽電池封止材料をシート状に成形してなるものであることを特徴とする太陽電池封止シート。
【請求項4】
透明部材と保護部材と太陽電池セルとを備える太陽電池であって、前記太陽電池セルと前記透明部材及び/又は前記保護部材との間に請求項3に記載の太陽電池封止シートが配置されていることを特徴とする太陽電池。


【図1】
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【公開番号】特開2011−77236(P2011−77236A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226127(P2009−226127)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】