説明

太陽電池用封止シートの製造方法

【課題】 本発明は、有機過酸化物が均一に含浸されて均一に架橋することができ且つフィッシュアイのない太陽電池用封止シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の太陽電池用封止シートは、エチレン系共重合体ペレットと、一時間半減期温度が100℃以上である液状の有機過酸化物とを回転容器内に供給して上記エチレン系共重合体ペレットが25〜45℃となるように加熱しながら上記回転容器を回転させることによって上記エチレン系共重合体ペレット中に上記有機過酸化物を含浸させて有機過酸化物含有ペレットを製造し、この有機過酸化物含有ペレットを押出機に供給して溶融混練して上記押出機から押出して太陽電池用封止シートを製造することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用封止シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原油などの化石燃料の枯渇や、化石燃料を使用することによって生じる地球温暖化などの環境破壊が世界的な問題となっている。化石燃料に代わるクリーンエネルギーとして、潮流、海流、波などの海洋エネルギー、太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス、地熱、温度差の利用などの色々なエネルギーについて検討が行われている。
【0003】
太陽光発電はクリーンエネルギーとして特に注目されており、太陽電池の開発が進められている。太陽電池モジュールは、太陽電池を表裏から太陽電池用封止シートによって封止すると共に、表側太陽電池用封止シート上にガラス板などの表面側透明保護部材が、裏側太陽電池用封止シート上に裏面側保護部材(バックシート)が積層一体化されてなる。
【0004】
上記太陽電池用封止シートとして、特許文献1には、有機過酸化物を含有するエチレン共重合体からなる太陽電池モジュール用保護シートにおいて、有機過酸化物として、ジアルキルパーオキサイド(A)と、アルキルパーオキシエステル及びパーオキシケタールからなる群より選ばれる少なくとも1種の過酸化物(B)を、(A)/(B)の重量比が10/90〜90/10の割合で配合したものを用いた太陽電池モジュール用保護シートが開示されている。
【0005】
ここで、合成樹脂中に添加剤を混合する場合には、合成樹脂と添加剤とを単に押出機に供給して溶融混練しただけでは添加剤が合成樹脂中に均一に混合しないことから、通常、添加剤を高濃度で合成樹脂中に含有させてなるマスターバッチを作製し、このマスターバッチを合成樹脂と共に押出機に供給して溶融混練することによって合成樹脂中に添加剤を均一に混合させることが行われている。
【0006】
そして、特許文献1の太陽電池モジュール用保護シートは、実施例1において、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び有機過酸化物、その他の添加剤を押出機に供給してTダイ法によって製造されており、明確に記載されていないものの、この実施例1においても、有機過酸化物及びその他の添加剤を高濃度で含有するマスターバッチを予め作製しておき、この添加剤のマスターバッチとエチレン−酢酸ビニル共重合体とを押出機に供給してTダイ法によって太陽電池モジュール用保護シートを製造しているものと考えられる。
【0007】
上記添加剤のマスターバッチは、有機過酸化物やその他の添加剤を合成樹脂と共に押出機に供給して溶融混練して製造される。従って、太陽電池モジュール用保護シートを製造するにあたって、有機過酸化物は押出機に二回に亘って供給されて溶融混練されており、複数回に亘る押出機内での加熱や混練に伴う摩擦熱によって分解し易い。
【0008】
そのため、太陽電池モジュール用保護シートをTダイ法によって製造するにあたって、有機過酸化物が押出機やTダイ内で分解してエチレン−酢酸ビニル共重合体が架橋し、得られる太陽電池モジュール用保護シートの厚みが不均一となり、或いは、太陽電池モジュール用保護シートの表面に斑点状にゲルが発生する、所謂、フィッシュアイが発生し表面性が低下するといった問題点を有している。
【0009】
又、太陽電池用裏面保護シートの製造時間を短縮するために、一時間半減期温度が120℃以下の有機過酸化物を用いることも考えられるが、このように分解温度の低い有機過酸化物を用いると、製造工程中に有機過酸化物が製造工程中に分解してしまい、上述と同様の問題点を生じ易い。
【0010】
そこで、特許文献2では、エチレン系共重合体シートの表面に有機過酸化物を液状で接触させ、有機過酸化物をシート内部に浸透させる架橋性シートの製造方法が開示されている。
【0011】
しかしながら、上記架橋性シートの製造方法では、エチレン系共重合体シートの内部に有機過酸化物が充分に含浸しておらず、架橋性シートを架橋させた時に均一に架橋されないといった問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−26791号公報
【特許文献2】特開昭59−138234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、有機過酸化物が均一に含浸されて均一に架橋することができ且つフィッシュアイのない太陽電池用封止シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の太陽電池用封止シートの製造方法は、エチレン系共重合体ペレットと、一時間半減期温度が100℃以上である有機過酸化物とを回転容器内に供給して上記エチレン系共重合体ペレットが25〜45℃となるように加熱しながら上記回転容器を回転させることによって上記エチレン系共重合体ペレット中に上記有機過酸化物を液状にて含浸させて有機過酸化物含有ペレットを製造し、この有機過酸化物含有ペレットを押出機に供給し溶融混練して上記押出機から押出して太陽電池用封止シートを製造することを特徴とする。
【0015】
本発明の太陽電池用封止シートの製造方法は、好ましくは、エチレン系共重合体ペレットと、一時間半減期温度が100℃以上である液状の有機過酸化物とを回転容器内に供給して上記エチレン系共重合体ペレットが25〜45℃となるように加熱しながら上記回転容器を回転させることによって上記エチレン系共重合体ペレット中に上記有機過酸化物を含浸させて有機過酸化物含有ペレットを製造し、この有機過酸化物含有ペレットを押出機に供給して溶融混練して上記押出機から押出して太陽電池用封止シートを製造することを特徴とする。
【0016】
エチレン系共重合体ペレットを構成しているエチレン系共重合体としては、特に限定されず、例えば、エチレンと、エチレンと共重合しうる共重合性モノマーとの共重合体であり、このような共重合性モノマーとしては、得られる太陽電池用封止シートの接着性及び透明性の観点から、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステルが挙げられ、酢酸ビニルが好ましい。なお、共重合性モノマーはエチレンと単独で共重合されていてもよいし、二種以上の共重合性モノマーがエチレンと共重合されていてもよい。
【0017】
エチレン系共重合体中に含まれる共重合性モノマーの含有量は、少ないと、太陽電池用封止シートの透明性が低下して太陽電池モジュールの発電性能が低下することがあり、多いと、太陽電池用封止シートの製膜性が低下することがあるので、5〜50重量%が好ましい。
【0018】
エチレン系共重合体ペレットの製造方法としては、特に限定されず、例えば、エチレン系共重合体を押出機に供給し溶融混練して押出機からストランド状(棒状)又はシートに押出し、このストランド状又はシート状の成形体をペレタイザを用いてペレット状に切断してエチレン系共重合体ペレットを製造する方法などが挙げられる。
【0019】
又、本発明で用いられる有機過酸化物は、一時間半減期温度が100℃以上であり且つ回転容器内においてエチレン系共重合体ペレットに含浸させる条件下にて液状である。なお、有機過酸化物は、回転容器内において加熱されなくとも常温、常圧下にて液状であってもよいし、加熱されない状態において固体状であっても、回転容器内においてエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットに有機過酸化物を含浸させる条件下にて融解して液状となってもよい。
【0020】
このような有機過酸化物としては、例えば、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(111℃)、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン(114℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(115℃)、t−ブチルパーオキシラウレート(118℃)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(118℃)、t−ブチルパーオキシマレイン酸(119℃)、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(119℃)、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート(119℃)、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(119℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(119℃)、t−ブチルパーオキシアセテート(121℃)、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン(122℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(125℃)、n−ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート(127℃)、ジクミルパーオキサイド(136℃)、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド(136℃)、t−ブチルクミルパーオキサイド(137℃)、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(138℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(138℃)などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、括弧内の温度は、有機過酸化物の一時間半減期温度である。
【0021】
有機過酸化物の一時間半減期温度は、低いと、エチレン系共重合体ペレットが回転容器内において分解するので、100℃以上に限定され、高すぎると、太陽電池モジュールを作成する時のラミ温度を高温度にする必要があるなど、生産性が低下することがあるので、100〜160℃が好ましく、100〜140℃がより好ましい。
【0022】
有機過酸化物はエチレン系共重合体ペレットと共に回転容器内に供給されるが、回転容器内に供給する有機過酸化物の総量は、少ないと、得られる太陽電池用封止シートの架橋性が低下し、太陽電池用封止シートを充分に架橋することができないことがあり、多いと、太陽電池用封止シートの表面に余分な有機過酸化物がブリードアウトすることがあるので、回転容器内に供給されるエチレン系共重合体ペレットの総量100重量部に対して1〜20重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
【0023】
次に、エチレン系共重合体ペレットと有機過酸化物とを回転容器内に供給する。この回転容器としては、エチレン系共重合体ペレットと有機過酸化物とを混合させてエチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を含浸させることができればよい。このような回転容器を備えた装置としては、タンブラーミキサー、ロータリーミキサーなどが挙げられ、タンブラーミキサーが好ましい。
【0024】
そして、回転容器を回転させて、エチレン系共重合体ペレットと有機過酸化物とを回転容器内において攪拌、接触させて、有機過酸化物をエチレン系共重合体ペレットに含浸させて有機過酸化物含有ペレットを製造する。なお、エチレン系共重合体ペレットは、回転容器を回転させる前にエチレン系共重合体ペレットを回転容器内に全量、供給することが好ましい。一方、有機過酸化物は、回転容器を回転させる前に回転容器内に全量、供給してもよいし、分割して供給してもよいが、エチレン系共重合体ペレットに均一に含浸させることができるので、回転容器内に分割して供給することが好ましい。
【0025】
エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を含浸させるときのエチレン系共重合体ペレットの温度は、低いと、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を含浸させるのに長時間を要し、高いと、エチレン系共重合体ペレット同士が融着し、或いは、エチレン系共重合体ペレットが回転容器の内面に融着して、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を均一に含浸できないので、25〜45℃に限定され、30〜40℃が好ましい。エチレン系共重合体ペレットの温度とは、エチレン系共重合体ペレットの表面温度をいう。
【0026】
又、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を含浸させる時間は、短いと、有機過酸化物をエチレン系共重合体ペレットにその内部まで充分に含浸させることができないことがあり、長くても、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を含浸させる効果に変化はないので、2〜12時間が好ましく、6〜10時間がより好ましい。
【0027】
回転容器内に後述するようにエチレン系共重合体及び有機過酸化物以外に、添加剤を供給する場合において、添加剤の全てがエチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を含浸させる条件下にて液状であるときには、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を含浸させる時間は上述と同様の時間が好ましいが、添加剤の一部に、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を含浸させる条件下にて固体状の添加剤が含まれているときには、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を含浸させる時間は4〜12時間が好ましく、6〜10時間がより好ましい。
【0028】
なお、回転容器内には、エチレン系共重合体及び有機過酸化物以外に、太陽電池用封止シートの物性を損なわない範囲内において、架橋助剤、カップリング剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどの酸化防止剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤などの添加剤を供給してもよい。
【0029】
回転容器に供給される酸化防止剤の総量は、少ないと、酸化防止剤の効果が得られ難くなり、多いと、エチレン系共重合体ペレットに含浸されず残ることがあるので、回転容器内に供給するエチレン系共重合体ペレットの総量100重量部に対して0.1 〜20 重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
【0030】
回転容器に供給される紫外線吸収剤の総量は、少ないと、紫外線吸収剤の効果が得られ難く 、多いと、エチレン系共重合体ペレットに含浸されず残ることがあるので、回転容器内に供給するエチレン系共重合体ペレットの総量100重量部に対して0.1 〜20 重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
【0031】
架橋助剤としては、特に限定されず、例えば、アリル基、ビニル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を2個以上有する多官能モノマーが挙げられ、このような多官能モノマーとしては、例えば、フタル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルフォスフェート、ジビニルベンゼン;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールなどの(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレートなどが挙げられ、単独で使用されてもよいし、二種以上が併用されてもよい。
【0032】
回転容器に供給される架橋助剤の総量は、少ないと、太陽電池用封止シートの架橋が不充分となることがあり、多いと、太陽電池用封止シートの製膜時に押出機やダイ内において架橋が進行してゲルを生じ、或いは、厚みの不均一な太陽電池用封止シートしか得られないことがあるので、回転容器内に供給するエチレン系共重合体ペレットの総量100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましい。
【0033】
上記カップリング剤としては、特に限定されず、例えば、アミノ基、グリシジル基、メタクリロキシ基及びメルカプト基からなる群より選ばれた一種又は二種以上の官能基を有するシランカップリング剤が好適に用いられ、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0034】
回転容器に供給されるカップリング剤の総量は、少ないと、カップリング剤の効果が得られ難くなり、多いと、エチレン系共重合体ペレットに含浸されず残ることがあるので、回転容器内に供給するエチレン系共重合体ペレットの総量100重量部に対して0.1 〜20重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
【0035】
上述のように、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を含浸させるにあたって、回転容器内にエチレン系共重合体ペレット及び有機過酸化物、必要に応じて添加剤を供給して回転容器を回転させているので、エチレン系共重合体ペレットや有機過酸化物が、攪拌羽根を有する攪拌装置を用いた場合のように攪拌羽根との間において摩擦熱を受けることはなく、有機過酸化物を分解させることなく、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を均一に且つ確実に含浸させている。そして、回転容器内に有機過酸化物以外の添加剤を供給した場合、回転容器内においてエチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を含浸させる条件下にて添加剤が液状である場合には、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物と共に添加剤も均一に且つ確実に含浸される。又、回転容器内においてエチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を含浸させる条件下にて添加剤が固体状である場合には、エチレン系共重合体ペレットに液状の有機過酸化物が付着することによって、エチレン系共重合体ペレットの表面に粘着性が発現し、この粘着性によって固体状の添加剤がエチレン系共重合体ペレットの表面に均一に且つ確実に付着する。
【0036】
次に、有機過酸化物含有ペレットと、このペレットとは別の有機過酸化物を含有していないエチレン系共重合体ペレットとを押出機に供給し必要に応じて有機過酸化物の一時間半減期温度よりも低い温度で溶融混練して押出機の先端に取り付けたTダイなどのダイから押し出して太陽電池用封止シートを得ることができる。なお、有機過酸化物が二種以上含有されている場合には、最も低い有機過酸化物の一時間半減期温度よりも低い温度にて溶融混練すればよい。なお、押出機に有機過酸化物含有ペレットのみを供給してもよい。
【0037】
このように、本発明では、有機過酸化物は押出機内を一回だけ通過するものであるので、有機過酸化物が、押出機内における加熱や、スクリュー羽根との摩擦熱によって分解するのをできるだけ抑えることができ、よって、有機過酸化物が押出機内やダイ内において不測に分解し、得られる太陽電池用封止シートの厚みが不均一となり或いは太陽電池用封止シートの表面にフィッシュアイが生じるなどの問題は生じない。
【0038】
又、後述する太陽電池モジュールの製造時において、太陽電池、表面側透明保護部材又は裏面側保護部材と、太陽電池用封止シートとの間における脱気性を向上させるために、太陽電池用封止シートの表面にエンボス加工を施すことが好ましい。
【0039】
太陽電池用封止シートの表面にエンボス加工を施す方法としては、特に限定されず、Tダイから押出された直後の溶融シートを、表面にエンボス模様が施されたエンボスロールと、このエンボスロールに対峙して配設されたゴムロールとの間に供給し、エンボスロールを溶融シートに押圧させて、太陽電池用封止シートの表面にエンボス加工を施す方法が挙げられる。なお、一旦製造された太陽電池用封止シートを再度、加熱して溶融状態とした上で上述の要領でエンボス加工を施してもよい。
【0040】
そして、本発明の太陽電池用封止シートを用いた太陽電池モジュールの製造方法としては、例えば、(1)太陽電池の表面に表側太陽電池用封止シートを介して表面側透明保護部材を、裏面に裏側太陽電池用封止シートを介して裏面側保護部材を積層して積層体を製造し、この積層体を減圧下にて加熱することによって表裏太陽電池用封止シートを架橋させながら太陽電池を表裏太陽電池用封止シートによって表裏から封止すると共に太陽電池の表裏面に表裏太陽電池用封止シートを介して保護部材を積層一体化させる太陽電池モジュールの製造方法、(2)基板上に、光の照射によって電気を発生させる薄膜状の太陽電池素子が形成されてなる太陽電池を用意し、この太陽電池の基板における太陽電池素子の形成面上に太陽電池用封止シートを積層すると共に太陽電池用封止シート上に裏面側保護部材を積層して積層体を製造し、この積層体を減圧下にて加熱することによって太陽電池用封止シートを架橋させながら太陽電池素子を太陽電池用封止シートと基板とによって表裏から封止すると共に太陽電池素子上に太陽電池用封止シートを介して裏面側保護部材を積層一体化させる太陽電池モジュールの製造方法が挙げられる。
【0041】
なお、積層体を加熱する際の条件としては、有機過酸化物の一分間半減期温度にて5〜10分間に亘って加熱すればよい。例えば、有機過酸化物の一分間半減期温度が160℃であれば、160℃にて5〜10分間に亘って積層体を加熱すればよい。
【0042】
又、上記(2)にて用いられる太陽電池における基板としては、特に限定されず、例えば、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォンなどの耐熱性樹脂からなるシートが挙げられる。又、薄膜状の太陽電池素子は、単結晶シリコン、単結晶ゲルマニウム、多結晶シリコン、微結晶シリコンなどの結晶系半導体、アルモルファスシリコンなどのアモルファス系半導体、GaAs、InP、AlGaAs、CdS、CdTe、Cu2S、CuInSe2、CuInS2などの化合物半導体、フタロシアニン、ポリアセチレンなどの有機半導体などから汎用の要領で形成される。
【0043】
上記(1)で用いられる太陽電池としては、例えば、光が照射されると電流を生じる機能を有するシリコン半導体素子やセレン半導体素子のウエハをインターコネクターを用いて直接又は並列に接続してなる太陽電池素子を備えた太陽電池などが挙げられる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の太陽電池用封止シートの製造方法は、上述のように、エチレン系共重合体ペレットに液状の有機過酸化物を含有させるにあたって、エチレン系共重合体ペレットと有機過酸化物とを回転容器に供給して回転容器を回転させているので、エチレン系共重合体ペレットと有機過酸化物に摩擦応力や剪断応力をできるだけ加えることなく、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を該有機過酸化物を分解させることなく均一に含浸させて有機過酸化物含有ペレットを製造することができる。
【0045】
そして、上記有機過酸化物含有ペレットを用いて押出機から汎用の要領で押出すことによって太陽電池用封止シートを製造しているので、有機過酸化物を押出機に供給する回数を一回とし、有機過酸化物が押出機内において熱や摩擦を受ける時間を短くして分解するのを概ね防止している。
【0046】
従って、得られる太陽電池用封止シートは、この太陽電池用封止シートに含まれている有機過酸化物の分解が防止されており、厚みが均一であり且つフィッシュアイなどが生じておらず表面平滑性にも優れている。
【0047】
このような太陽電池用封止シートを用いて太陽電池を封止することによって、太陽電池を確実に封止することができると共に、太陽電池の封止時に充分に架橋させて耐候性に優れたものとし、太陽電池の性能を長期間に亘って確実に維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0049】
(実施例1、2)
エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット(酢酸ビニル含有量:25重量%、メルトフローレイト:20g/10分)100重量部及び液状のジクミルパーオキサイド(一時間半減期温度:136℃)10重量部をタンブラーの回転容器に供給してエチレン系共重合体ペレットが表1に示した含浸温度となるように加熱しながら回転容器を7時間に亘って回転させてエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットにジクミルパーオキサイドを含浸させて有機過酸化物含有ペレットを得た。なお、ジクミルパーオキサイドは、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットにジクミルパーオキサイドを含浸させている工程中は液状であった。
【0050】
得られた有機過酸化物含有ペレット10重量部と、有機過酸化物及びその他の添加剤を一切含有していないエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット(酢酸ビニル含有量:25重量%、メルトフローレイト:20g/10分)90重量部とを押出機に供給し120℃にて溶融混練してTダイから吐出量15kg/時間で押出して厚みが500μmの太陽電池用封止シートを得た。
【0051】
(実施例3)
液状のジクミルパーオキサイド(一時間半減期温度:136℃)10重量部の代わりに液状のt−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート(一時間半減期温度115℃)10重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止シートを得た。なお、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットにt−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネートを含浸させている工程中は液状であった。
【0052】
(実施例4)
液状のジクミルパーオキサイド(一時間半減期温度:136℃)10重量部の代わりに液状のn−ブチル4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレート(一時間半減期温度126℃)10重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止シートを得た。なお、n−ブチル4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットにn−ブチル4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレートを含浸させている工程中は液状であった。
【0053】
(実施例5)
エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット(酢酸ビニル含有量:25重量%、メルトフローレイト:20g/10分)100重量部、有機過酸化物として液状のジクミルパーオキサイド(一時間半減期温度:136℃)10重量部、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート10重量部、紫外線吸収剤として2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン7重量部、酸化防止剤としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート7重量部、及び、カップリング剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5重量部をタンブラーの回転容器に供給してエチレン系共重合体ペレットが表1に示した含浸温度となるように加熱しながら回転容器を7時間に亘って回転させてエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットにジクミルパーオキサイド及びトリアリルイソシアヌレートを含浸させると共に、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットの表面に2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを付着させて有機過酸化物含有ペレットを得た。なお、回転容器内において、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットにジクミルパーオキサイドを含浸させている間、トリアリルイソシアヌレートは液状であった。
【0054】
得られた有機過酸化物含有ペレット10重量部と、有機過酸化物及びその他の添加剤を一切含有していないエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット(酢酸ビニル含有量:25重量%、メルトフローレイト:20g/10分)90重量部とを押出機に供給し120℃にて溶融混練してTダイから吐出量15kg/時間で押出して厚みが500μmの太陽電池用封止シートを得た。
【0055】
(比較例1)
含浸温度を30℃の代わりに50℃としたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池用封止シートを製造しようとしたが、得られた有機過酸化物含有ペレットは、回転容器内において軟化して回転容器内面に付着しており、更に、有機過酸化物含有ペレットは、その表面にジクミルパーオキサイドの滲み出しが見られ、べとついており、太陽電池用封止シートの製造に用いることができなかった。
【0056】
(比較例2)
含浸温度を30℃の代わりに20℃としたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池用封止シートを製造しようとしたが、得られた有機過酸化物含有ペレットは、ジクミルパーオキサイドの含浸が不充分であり、表面がジクミルパーオキサイドでべとついており、太陽電池用封止シートの製造に用いることができなかった。
【0057】
(比較例3)
エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:25重量%、メルトフローレイト:20g/10分)100重量部と液状のジクミルパーオキサイド(一時間半減期温度:136℃)10重量部とを押出機に直接、供給し120℃で溶融混練してTダイから吐出量15kg/時間で押出して厚みが500μmの太陽電池用封止シートを得た。
【0058】
しかしながら、ジクミルパーオキサイドの存在のために、エチレン−酢酸ビニル共重合体が押出機内のスクリュー羽根との間で滑りを生じ、エチレン−酢酸ビニル共重合体を充分に混練することができず、エチレン−酢酸ビニル共重合体中にジクミルパーオキサイドを均一に混合することができなかった。
【0059】
(比較例4)
t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート(一時間半減期温度115℃)とエチレン−酢酸ビニル共重合体を押出機に供給して120℃にて溶融混練し押出機からストランド状に押し出してペレタイザを用いて有機過酸化物含有ペレットを作製した。
【0060】
次に、上記有機過酸化物含有ペレット10重量部と、有機過酸化物及びその他の添加剤を一切含有していないエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット(酢酸ビニル含有量:25重量%、メルトフローレイト:20g/10分)90重量部とを押出機に供給し溶融混練してTダイから吐出量15kg/時間で押出して厚みが500μmの太陽電池用封止シートを得た。
【0061】
得られた太陽電池用封止シートの押出性、架橋度及び外観を下記基準に基づいて測定し、その結果を表1に示した。
【0062】
(押出性)
太陽電池用封止シートの押出時において、吐出変動がなく且つ太陽電池用封止シートの厚みが均一であった場合を「○」、吐出変動があり太陽電池用封止シートの厚みが不均一であった場合を「×」として評価した。
【0063】
(架橋度)
太陽電池用封止シートの両端部及び中央部のそれぞれから幅5cm、長さ5cmの平面正方形状の試験片を切り出した。
【0064】
次に、試験片を150℃で10分間に亘って加熱して試験片を架橋させた。この試験片の重量W1を測定した。しかる後、試験片を50ミリリットルのキシレン中に浸漬して110℃で12時間に亘って加熱した後、200メッシュの金網で不溶分を濾過し、金網上の不溶分を80℃にて4時間に亘って減圧乾燥させて不溶分の重量W2を測定した。そして、下記式に基づいて各試験片のゲル分率を算出し、太陽電池用封止シートの両端部のそれぞれから切り出した各試験片のゲル分率の相加平均した値を「端部架橋度」とし、太陽電池用封止シートの中央部から切り出した試験片のゲル分率を「中央部架橋度」とした。
ゲル分率(重量%)=100×W2/W1
【0065】
(外観)
太陽電池用封止シートの表面を目視観察し、太陽電池用封止シートの表面にフィッシュアイやムラがなかった場合を「○」、フィッシュアイ又はムラがあった場合を「×」として評価した。
【0066】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系共重合体ペレットと、一時間半減期温度が100℃以上である有機過酸化物とを回転容器内に供給して上記エチレン系共重合体ペレットが25〜45℃となるように加熱しながら上記回転容器を回転させることによって上記エチレン系共重合体ペレット中に上記有機過酸化物を液状にて含浸させて有機過酸化物含有ペレットを製造し、この有機過酸化物含有ペレットを押出機に供給し溶融混練して上記押出機から押出して太陽電池用封止シートを製造することを特徴とする太陽電池用封止シートの製造方法。
【請求項2】
有機過酸化物の一時間半減期温度が100〜160℃であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用封止シートの製造方法。
【請求項3】
架橋助剤を回転容器内に供給してエチレン系共重合体ペレットに上記架橋助剤を含浸させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽電池用封止シートの製造方法。
【請求項4】
紫外線吸収剤、酸化防止剤及びカップリング剤を回転容器内に供給することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の太陽電池用封止シートの製造方法。

【公開番号】特開2010−258436(P2010−258436A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79361(P2010−79361)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】