説明

太陽電池用封止膜

【課題】光や熱の影響による黄変が防止されることにより、優れた耐光性、耐熱性及び耐候性を有する太陽電池用封止膜及び該封止膜を用いた太陽電池を提供する。
【解決手段】エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、特定の一般構造式で表されるトリアジン化合物0.01〜20質量部、好ましくは特定の一般構造式で表わされる部分構造を有するヒンダードアミン化合物、より好ましくは特定の一般構造式で表わされるヒンダードアミン化合物0.01〜10質量部を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする太陽電池用封止膜及びこの封止膜を用いた太陽電池に関し、特に黄変防止性に優れた太陽電池用封止膜及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や環境汚染の防止等の面から、太陽光を直接電気エネルギーに変換する太陽電池が注目され、開発が進められている。
【0003】
太陽電池は、一般に、図1に示すように、表面側透明保護部材1としてのガラス基板と裏面側保護部材(バックカバー)2との間にEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)フィルムの封止膜3A、3Bにより、シリコン発電素子等の太陽電池用セル4を封止した構成とされている。なお、以下において、セルに対して受光面側に配置する封止膜を「表面側封止膜」と称し、セルの後方側に配置する封止膜を「裏面側封止膜」と称す。
【0004】
このような太陽電池は、表面側透明保護部材1、表面側封止膜3A、太陽電池用セル4、裏面側封止膜3B、及び裏面側保護部材2をこの順で積層し、加熱加圧して、EVAを架橋硬化させて接着一体化することにより製造される。
【0005】
上記太陽電池においては、太陽電池に入射した光をできるだけ効率よく太陽電池用セル内に取り込めるようにすることが発電効率の向上の点から強く望まれている。従って、封止用EVAフィルムは、できるだけ高い透明性を有し、入射した太陽光を吸収したり、反射したりすることが無く、太陽光のほとんどを透過させるものが望ましい。
【0006】
しかしながら、太陽電池を長期に使用した場合に、光又は熱の影響により、封止用EVAフィルムが黄変して、太陽光の透過率が低下する現象が見られること、及びその黄変による外観不良が問題となっている。
【0007】
これらの問題のために、封止用EVAフィルムには、各種の有機過酸化物、紫外線吸収剤等の各種添加剤を併用する手段等が提案されている。例えば、特許文献1では、有機過酸化物(架橋剤)として、パーオキシエステル系の過酸化物である2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサンを使用し、紫外線吸収剤として、モノヒドロキシアルコキシベンゾフェノン系の2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンが使用することが提案されている。また、特許文献2には、有機過酸化物として、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを使用し、紫外線吸収剤として、上記と同じ2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンを使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−139347号公報
【特許文献2】特開2000−183381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の封止用EVAフィルムを用いた太陽電池では、長期間に亘り使用していると依然として封止用EVAフィルムが黄変し、発電性能の低下を招くという問題があった。
【0010】
引用文献1及び2で提案されているベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、光及び熱に対して、一応の安定化効果は示すものの、太陽電池セルの寿命に比べて封止膜の寿命が短く、結果的に太陽電池の寿命が封止膜の寿命に依存する状況にあり、更なる光及び熱に対する安定化が太陽電池の普及には求められている。
【0011】
したがって、本発明は、光や熱の影響による黄変が防止されることにより、優れた耐光性、耐熱性及び耐候性を有する太陽電池用封止膜及び該封止膜を用いた太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑み種々の検討を行った結果、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなるフィルムにおいて、特定の構造を有するトリアジン系紫外線吸収剤を用いることにより、従来好ましいとされているベンゾフェノン系紫外線吸収剤を用いた場合に比較して耐光性、耐熱性及び耐候性を顕著に向上させることが可能なことを見出した。さらに、本発明では、上記フィルムにおいてさらに各成分の種類や含有量につき種々の検討を行った結果、アルコキシアミン構造を有するヒンダードアミン化合物を併用することにより、耐候性をより向上できることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、下記一般式(I)で表されるトリアジン化合物0.01〜20質量部を配合したことを特徴とする太陽電池用封止膜及び該封止膜を用いた太陽電池により、上記目的を達成したものである。
【0014】
【化1】

(式中、R1、R2及びR3は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表し、該アルキル基のアルキレン部分は、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−O−C(=O)−NH−又はNH−C(=O)−O−で中断されていてもよく、該アルキル基の水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。R4、R5及びR6は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表す。)
【0015】
また、本発明は、上記トリアジン化合物と共に、下記一般式(II)で表される部分構造を有するヒンダードアミン化合物を用いることにより、太陽電池用封止膜の長期耐候性を向上できる。
【化2】

(式中、R7はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のアルキル基又は炭素原子数5〜8のシクロアルキル基を表す。)
【0016】
また、本発明は、上記ヒンダードアミン化合物として、下記一般式(III)で表されるヒンダードアミン化合物を用いることにより太陽電池用封止膜の長期耐候性をより一層向上できる。
【化3】

(式中、R7はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のアルキル基又は炭素原子数5〜8のシクロアルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、長期間に亘る使用においても、黄変等の発生が顕著に抑制され、優れた耐光性、耐熱性及び耐候性を有する太陽電池用封止膜を提供することが可能となる。さらに、上記太陽電池用封止膜は、高い紫外線吸収性を長期間に亘り維持することができ、太陽電池内部に含まれるセル等の劣化を抑制することができる。したがって、このような太陽電池用封止膜を用いた太陽電池も、耐光性、耐熱性及び耐候性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一般的な太陽電池の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の太陽電池用封止膜について、好ましい実施形態に基づき詳述する。
本発明の太陽電池用封止膜は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、紫外線吸収剤として、下記一般式(I)で表されるトリアジン化合物0.01〜20質量部を配合したことを特徴とする。
【0020】
本発明に用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、共重合体中の酢酸ビニル単位の含有率が、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは10〜28質量%、特に好ましくは22〜28質量%であるのがよい。この酢酸ビニル含有率が30質量%を超えると、樹脂の粘性が低下し、封止時にガラス基板とバックカバーとの間から流れ出し易くなる恐れがある。さらに、光や熱による劣化を防止することが困難になる恐れがある。酢酸ビニル含有率が10質量%未満になると、加工性が低下し、得られるフィルムが硬質になりすぎるため、脱気性が低下し、太陽電池作製時にセルに損傷を与えやすくなる恐れがある。
【0021】
本発明では、紫外線吸収剤として、下記一般式(I)で表されるトリアジン化合物を用いる。
【0022】
【化4】

(式中、R1、R2及びR3は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表し、該アルキル基のアルキレン部分は、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−O−C(=O)−NH−又はNH−C(=O)−O−で中断されていてもよく、該アルキル基の水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。R4、R5及びR6は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表す。)
【0023】
上記一般式(I)において、R1、R2及びR3で表わされる炭素原子数1〜30のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ベヘニル等が挙げられ、該アルキル基のアルキレン部分は、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−O−C(=O)−NH−又はNH−C(=O)−O−で中断されていてもよく、これらの基による中断の位置及び数は特に制限されない。
また、上記アルキル基の水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、ヒドロキシ基による置換の位置及び数は特に制限されない。
1、R2及びR3としては、樹脂への相溶性や添加質量部当たりの安定効果の点から、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル及びオクタデシルが好ましく、ヘキシル、へプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル及びウンデシルがより好ましい。
【0024】
上記一般式(I)において、R4、R5及びR6で表わされる炭素原子数1〜8のアルキル基としては、R1、R2及びR3で表わされる炭素原子数1〜30のアルキル基として例示した基のうち、炭素原子数が1〜8の範囲にあるものが挙げられる。
炭素原子数2〜4のアルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニルが挙げられる。
【0025】
4、R5及びR6としては、紫外線吸収能や製造の容易さの点から、水素原子又はメチル、エチル、プロピル及びアリルが好ましく、メチルがより好ましい。
4、R5及びR6の置換位置としては、吸収波長が長波長となり、目的物が選択的に合成しやすい点から、全ての置換基がベンゼン環の3位にあることが好ましい。
【0026】
上記一般式(I)で表されるトリアジン化合物としては、例えば、No.1〜No.4の化合物が挙げられるが、これに制限されない。
【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
本発明の太陽電池用封止膜において、上記一般式(I)で表わされるトリアジン化合物の含有量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、特に好ましくは0.2〜5質量部である。上記トリアジン化合物の含有量が0.01質量部未満では光や熱に対する安定化効果が得られず、20質量部を超えると得られる樹脂組成物の透明性を低下させたり、増量による光や熱に対する安定化効果の向上幅が小さくなりコストのみが高くなったりする等の弊害が認められるようになる。
【0032】
本発明の太陽電池用封止膜には、耐候性を高める目的で、光安定化剤として、ヒンダードアミン化合物を用いることが好ましい。かかるヒンダードアミン化合物としては、下記一般式(II)で表される部分構造を有するヒンダードアミン化合物が特に耐候性に優れるので好ましく、下記一般式(III)で表されるヒンダードアミン化合物は顕著な安定化効果を示すので特に好ましい。
【0033】
【化9】

(式中、R7はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のアルキル基又は炭素原子数5〜8のシクロアルキル基を表す。)
【0034】
【化10】

(式中、R7はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のアルキル基又は炭素原子数5〜8のシクロアルキル基を表す。)
【0035】
上記一般式(II)又は(III)において、R7で表わされるヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のアルキル基としては、R1、R2及びR3で表わされる炭素原子数1〜30のアルキル基として例示した基のうち、炭素原子数が1〜18の範囲にあるものが挙げられる。尚、上記ヒドロキシ基による置換の位置及び数は特に制限されない。
炭素原子数5〜8のシクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル等が挙げられる。
【0036】
7としては、耐熱性や樹脂への相溶性の点から、ヘキシル、へプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル及びオクタデシルが好ましく、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルがより好ましい。
【0037】
上記一般式(II)で表される部分構造を有するヒンダードアミン化合物としては、例えば、No.5〜No.10の化合物が挙げられるが、これに制限されない。
【0038】
【化11】

【0039】
【化12】

【0040】
【化13】

【0041】
【化14】

【0042】
【化15】

【0043】
【化16】

【0044】
本発明の太陽電池用封止膜において、上記一般式(II)で表される部分構造を有するヒンダードアミン化合物の含有量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部、特に好ましくは0.2〜3質量部である。上記ヒンダードアミン化合物の含有量が0.01質量部未満では十分な安定化効果が得られない恐れがあり、10質量部を超えると得られる樹脂組成物の透明性を低下させたり増量による安定化効果の向上幅が小さくなりコストのみが高くなったりする等の弊害が認められるようになる恐れがある。
【0045】
本発明の太陽電池用封止膜には、更に、耐光性等を向上させる目的で、架橋剤を用いることが好ましい。かかる架橋剤としては過酸化物等が用いられる。用いられる過酸化物としては、2,5−ジメチルヘキサン;2,5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン;3−ジ−t−ブチルパーオキサイド;t−ジクミルパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン;ジクミルパーオキサイド;t−ブチルクミルパーオキサイド;α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン;2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;tert−ブチルパーオキシベンゾエート;ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。
【0046】
一般的に、エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いた封止膜の作製では、モノマーの架橋密度を向上させるために、上記の有機過酸化物等の架橋剤が用いられる。しかしながら、有機過酸化物の使用は、架橋密度を向上させて耐光性等を向上できる一方で、封止膜中に反応残渣と未反応物を残留させることになる。このような残留物は、不安定なため、上記残留物を含む封止膜に紫外線を含む光が照射されたり、長期間に亘り加熱されたりすると、上記残留物は容易に分解し、ラジカルを発生し、一度、ラジカルが発生すると、新たなラジカルの生成が連鎖的に生じ、ポリマーの酸化劣化及び共役二重結合の生成による黄変を招く。
【0047】
そこで、本発明の太陽電池用封止膜では、紫外線吸収剤として、特定構造を持つトリアジン化合物を用い、光安定化剤として、ヒンダードアミン化合物を用いると共に、さらに、架橋剤として有機過酸化物を用い、かかる有機過酸化物の含有量を、最適化することが好ましい。
【0048】
本発明の太陽電池用封止膜において、上記有機過酸化物の含有量は、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、好ましくは0.2〜1.8質量部、より好ましくは0.25〜1.7質量部、特に好ましくは0.3〜1.5質量部である。これにより、封止膜中に有機過酸化物の反応残渣と未反応物が残留するのを抑制できる。有機過酸化物の含有量が0.2質量部未満であると、封止膜を架橋硬化させる時間が必要以上に長くなる恐れがあり、1.8質量部を超えると架橋により樹脂の柔軟性が低下し過ぎて脆くなる恐れがある。
【0049】
本発明の太陽電池用封止膜に用いられる有機過酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも使用することができる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
【0050】
また、本発明の太陽電池用封止膜に用いる樹脂成分は、エチレン−酢酸ビニル共重合体単独でもよいが、低密度ポリエチレン等の他の樹脂を加えることで曲げ、引っ張り、衝撃等の強度や伸び率、酸素透過率、水蒸気透過率、吸水性等の物性を適宜調整してもよい。他の樹脂を用いる場合、その含有量は、全樹脂成分中、好ましくは3〜30質量%である。
【0051】
本発明の太陽電池用封止膜に用いられる紫外線吸収剤としては、上記一般式(I)で表わされるトリアジン化合物の他、従来公知のものであれば、特に制限されずに併用することができる。例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、他のトリアジン系、サリチル酸系、シアノアクリレート系等の他の紫外線吸収剤を使用することができる。これらの1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせ使用してもよい。
【0052】
上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−ジヒドロキシ−4,
4’−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジ
(2−ヒドロキシエチル)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメト
キシ−5,5’−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−3
,3’−ジメトキシ−5,5’−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゾフェノン、2,2’
−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(ヒドロキシメチル)−5,5’−ジメトキシベンゾフェ
ノン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(2−ヒドロキシエチル)−5,5’−ジ
メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0053】
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−〔2’−ヒドロキシ−
5’−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒド
ロキシ−5’−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−
〔2’−ヒドロキシ−5’−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリ
アゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(ヒドロキシメチル)フェニ
ル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(2
−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ
−3’−メチル−5’−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾ
ール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(ヒドロキシメチル)フェニ
ル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−
(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロ
キシ−3’−t−ブチル−5’−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−5−クロロ−2
H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(3−ヒ
ドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−
3’−t−オクチル−5’−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾー
ル、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−オクチル−5’−(2−ヒドロキシエチル)フ
ェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−オクチル−
5’−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール等、あるいは
2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(ヒドロキ
シメチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2
−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−
(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2
−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−
(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−
4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−ブ
ロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4
−ヒドロキシブチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−クロロ−2H
−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4
−ヒドロキシブチル)フェノール〕、3,3−{2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾト
リアゾリ−2−イル)−1−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕}プロパン、2,2−{2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−1−
ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕}ブタン、2,2’−オキシビス
〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロ
キシエチル)フェノール〕スルフィド、2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ
−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕スルホキシド、2,2’−ビ
ス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕スルホン、2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(
2−ヒドロキシエチル)フェノール〕アミン等が挙げられる。
【0054】
上記他のトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル〕−4,6−(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−{2−(2−エチルヘキシルオキシ)エチル}フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0055】
上記サリチル酸系紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0056】
上記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、テトラキス(2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレートメチル)メタン等が挙げられる。
【0057】
上記他の紫外線吸収剤の含有量は、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、好ましくは合計で0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部とするのがよい。
【0058】
本発明の太陽電池用封止膜に用いられる光安定剤としては、上記一般式(II)で表される部分構造を有するヒンダードアミン化合物の他、従来公知のものであれば、特に制限されずに併用することができる。例えば、低分子量又は高分子量のヒンダードアミン系光安定化剤等の他のヒンダードアミン系光安定化剤を使用することができる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせ用いてもよい。
【0059】
上記低分子量のヒンダードアミン系光安定化剤としては、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロパーオキサイド及びオクタンの反応生成物(分子量737)70重量%とポリプロピレン30重量%からなるもの;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(分子量685);ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート混合物(分子量509);ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(分子量481);テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(分子量791);テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(分子量847);2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートとトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートの混合物(分子量900);1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートとトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートの混合物(分子量900)等が挙げられる。
【0060】
上記高分子量のヒンダードアミン系光安定化剤としては、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](分子量2,000〜3,100);コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物(分子量3,100〜4,000);N,N’,N”,N”’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン(分子量2,286)と上記コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物の混合物;ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル
−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(分子量2,600〜3,400)等が挙げられる。
【0061】
上記の他のヒンダードアミン系光安定化剤の含有量は、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、好ましくは合計で0.1〜2.5質量部、より好ましくは0.1〜1.0質量部とするのがよい。上記含有量が、0.1質量部以上とすることにより安定化への効果が十分に得られ、2.5質量部以下とすることによりヒンダードアミン系光安定化剤の過剰な添加による封止膜の黄変を高く防止することができる。
【0062】
本発明の太陽電池用封止膜には、発電素子との接着力向上の目的で、シランカップリング剤を用いてもよい。この目的に使用されるシランカップリング剤としては公知のもの、例えばγ−クロロプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリクロロシラン;ビニルトリエトキシシラン;ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリアセトキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤の含有量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、5質量部以下、好ましくは0.1〜2質量部である。
【0063】
さらに、本発明の太陽電池用封止膜には、エチレン−酢酸ビニル共重合体のゲル分率を向上させて耐久性を向上させる目的で、架橋助剤(官能基としてラジカル重合性基を有する化合物)を用いることが好ましい。この目的に供される架橋助剤としては、公知のものとしてトリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等も挙げることができる。これらの架橋助剤の含有量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、一般に10質量部以下、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.5〜3.5質量部である。
【0064】
また、本発明の太陽電池用封止膜には、エチレン−酢酸ビニル共重合体の安定性を向上させる目的で、ハイドロキノン;ハイドロキノンモノメチルエーテル;p−ベンゾキノン;メチルハイドロキノン等を用いることができ、これらの含有量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して一般に5質量部以下である。
【0065】
本発明では、必要に応じ、さらに、着色剤、老化防止剤、変色防止剤等を用いることができる。着色剤の例としては、金属酸化物、金属粉等の無機顔料、アゾ系、フタロシアニン系、アヂ系、酸性又は塩基染料系レーキ等の有機顔料が挙げられる。老化防止剤としては、アミン系;フェノール系;ビスフェニル系等が挙げられる。
【0066】
本発明の太陽電池用封止膜の厚さは、特に制限されないが、通常は、20μm〜2mmとすればよい。
【0067】
本発明の太陽電池用封止膜は、上述した各種成分を含む組成物を、例えば、押出成形、カレンダー成形等により加熱圧延することにより成膜する等、常法に従い製造することができる。また、上記組成物を溶剤に溶解させ、この溶液を適当な塗布機(コーター)で適当な支持体上に塗布、乾燥して塗膜を形成することによりシート状物を得ることもできる。尚、加熱温度は、一般的に、50〜90℃である。
【0068】
上述した本発明によれば、黄変の発生が抑制され、耐光性、耐熱性、及び耐候性に優れた太陽電池用封止膜を提供することができる。
従って、このような封止膜を太陽電池に用いることにより、光や熱の影響を受けやすい室外等過酷な環境下に長期間に亘って設置されても、入射光を効率よく太陽電池用セル内に取込むことができ、発電効率に優れる太陽電池を実現することが可能となる。
【0069】
本発明の太陽電池用封止膜を用いて、本発明の太陽電池を製造するには、図1に示すように表面側透明保護部材1、表面側封止膜3A、太陽電池用セル4、裏面側封止膜3B及び裏面側保護部材2を積層するに当り、表面側封止膜3A及び裏面側封止膜3Bの少なくとも一方に本発明の太陽電池用封止膜を用いて積層し、積層体を常法に従って、真空ラミネータで温度120〜150℃、脱気時間2〜15分、プレス圧力0.5〜1kg/cm2、プレス時間8〜45分で加熱加圧圧着すればよい。
【0070】
この加熱加圧時に、表面側封止膜3A及び裏面側封止膜3Bに含まれるエチレン−酢酸ビニル共重合体を架橋させることにより、表面側封止膜3A及び裏面側封止膜3Bを介して、表面側透明保護部材1、裏面側保護部材3A、及び太陽電池用セル4を一体化させて、太陽電池用セル4を封止することができる。
【0071】
尚、本発明において、太陽電池セル4に対して受光面側を「表面側」と称し、太陽電池セルの受光面とは反対面側を「裏面側」と称している。
【0072】
本発明の太陽電池において、本発明の太陽電池用封止膜は、表面側封止膜3A及び裏面側封止膜3Bのうち少なくとも一方に用いられるが、光や熱による劣化に基づく黄変が長期間に亘り高く抑制できることから、少なくとも表面側封止膜3Aとして用いるのが好ましく、より好ましくは表面側封止膜3A及び裏面側封止膜3Bの双方に用いる。
【0073】
上記表面側透明保護部材1としては、通常、珪酸塩ガラス等のガラス基板、特に化学的に或いは熱的に強化させたものが用いられる。
ガラス基板の厚みは、0.1〜10mmが一般的であり、0.3〜5mmが好ましい。
【0074】
上記裏面側保護部材2としては、一般にプラスチックフィルム(例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))が用いられるが、耐熱性を考慮して、フッ化ポリエチレンフィルムが好ましい。
【0075】
尚、本発明の太陽電池は、上述した通り、表面側及び/又は裏面側に用いられる封止膜に特徴を有する。したがって、表面側透明保護部材1、裏面側保護部材2、及び太陽電池用セル4等の上記封止膜以外の部材については、従来公知の太陽電池と同様の構成を有していればよく、特に制限されない。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明する。本発明は、以下の実施例等により制限されるものではない。
【0077】
(実施例1−1〜1−7及び比較例1−1〜1−7)
〔表1〕記載の<配合>の組成物を用いて、80℃でカレンダー成形し、フィルム状に成膜して、実施例1−1〜1−7及び比較例1−1〜1−7の太陽電池用封止膜であるEVAフィルムを得た。尚、得られた各EVAフィルムの厚さは何れも500μmであった。
得られたEVAフィルムについて、下記<破断時間による評価>に記載の手順に従いEVAフィルムの耐光性、耐熱性及び耐候性を評価した。結果を〔表2〕に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
<破断時間による評価>
得られたEVAフィルムをサンシャインウェザオメーター(ブラックパネル温度63℃、水スプレーなし)で劣化を促進し、120時間ごとに破断するまでの時間を測定した。
【0080】
【表2】

【0081】
(実施例2−1〜2−7及び比較例2−1〜2−7)
実施例1において、エチレン酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有率25質量%)をエチレン酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有率6質量%)に変えた以外は実施例1と同様にして、実施例2−1〜2−7及び比較例2−1〜2−7の太陽電池用封止膜であるEVAフィルムを得た。得られたEVAフィルムについて、下記<カルボニルインデックスによる評価>に記載の手順に従い、EVAフィルムの耐光性、耐熱性及び耐候性を評価した。結果を〔表3〕に示す。
【0082】
<カルボニルインデックスによる評価>
得られたEVAフィルム(大きさ50×50mm)を、フロートガラス(厚さ3mm、大きさ50×50mm)の間に挟み込み、100℃の下で、5分間、脱気後、10kPaで10分間、プレスすることにより予備成形を行い、次いで、160℃で加熱加圧して、測定用サンプルを作製した。この測定用サンプルを、サンシャインウェザオメーター(ブラックパネル温度63℃、水スプレーなし)で120時間ごとにカルボニルインデックスが1.0を超えるまでの時間を測定した。
【0083】
【表3】

【0084】
比較例1−7及び比較例2−7は、成形は可能であったがフィルム白濁した太陽電池用の封止膜には適さないものであった。
【符号の説明】
【0085】
1 表面側透明保護部材
2 裏面側保護部材
3A 表面側封止膜
3B 裏面側封止膜
4 太陽電池用セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、下記一般式(I)で表されるトリアジン化合物0.01〜20質量部を配合したことを特徴とする太陽電池用封止膜。
【化1】

(式中、R1、R2及びR3は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表し、該アルキル基のアルキレン部分は、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−O−C(=O)−NH−又はNH−C(=O)−O−で中断されていてもよく、該アルキル基の水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。R4、R5及びR6は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表す。)
【請求項2】
下記一般式(II)で表される部分構造を有するヒンダードアミン化合物をエチレン−酢酸ビニル樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部配合した請求項1記載の太陽電池用封止膜。
【化2】

(式中、R7はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のアルキル基又は炭素原子数5〜8のシクロアルキル基を表す。)
【請求項3】
上記一般式(II)で表される部分構造を有するヒンダードアミン化合物が、下記一般式(III)で表される化合物である請求項1又は2記載の太陽電池用封止膜。
【化3】

(式中、R7はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のアルキル基又は炭素原子数5〜8のシクロアルキル基を表す。)
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の太陽電池用封止膜を用いた太陽電池。



【図1】
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【公開番号】特開2012−204611(P2012−204611A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67865(P2011−67865)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】