説明

太陽電池用熱処理方法および熱処理炉

【課題】半導体基板に塗布された電極ペーストを迅速に焼成して焼結を行なう高速の熱処理方法および熱処理炉を提供する。
【解決手段】最高温度が形成される第5加熱域H5において、加熱ヒータ33aおよび33bからの加熱によって熱放射を行なう熱放射体36が、搬送される太陽電池セル用半導体基板38と上側の加熱ヒータ33aとの間に備えられていることから、太陽電池セル用半導体基板38がその熱放射体からの熱放射により近傍から加熱されるので、太陽電池セル用半導体基板38の高速搬送が可能となり、表面に均一加熱を加えつつ半導体基板38自体の温度上昇を抑制できる。従って、太陽電池セル40は、十分な変換効率を維持しつつ、表面電極用導電ペースト中のAgがファイヤースルーする温度、且つ裏面電極用導電ペースト中のAlが合金化する温度よりも上になるように設定する焼成温度を、大幅に低下させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルの製造技術に関し、特に、半導体基板に塗布された電極ペーストを迅速に焼成して焼結を行なう高速の熱処理方法および熱処理炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セルの発電効率を上げる目的で、或いは、太陽電池セルで発電された電気を効率よく取り出す目的で、たとえば単結晶Si或いは多結晶Siから成る半導体基板の表面および裏面に導電性の電極ペーストを印刷などにより塗布し、それを乾燥および焼成する熱処理炉を用いて太陽電池セルの表面電極および裏面電極を焼結する製造方法が知られている。太陽電池セルの表面には反射防止膜である窒化シリコン膜(SiNx膜)が形成されており、上記熱処理に際しては、そのSiNx膜中の水素がSi中に浸透し、Siのダングリングボンドを不活性化(パッシベーション)することで変換効率が向上させられることが知られている。特に、多結晶Si基板においてはこのような効果が顕著に得られ、Siの結晶粒界に多数存在しているダングリングボンドをパッシベートすることは、効率の向上のために大変重要な機能である。この熱処理中ではSi中に一旦浸透した水素が離脱するため、その水素の離脱を可及的に少なくするように、表面電極および裏面電極の焼結をしつつ、熱処理時間を可及的に短縮するように高速化や熱処理温度の低温化も求められている。
【0003】
一方で、上記熱処理に際して、たとえば太陽電池セルの裏面に塗布した電極ペースト中のAlがSi中へ拡散(合金化)することにより形成されるBSF層を均一に設けることも、発電効率を得るために重要である。このBSF層は、内部電解を形成して半導体基板の裏面付近でキャリヤの再結合による効率低下を抑制するものであるが、それの形成には十分な熱量が必要とされる。また、BSF層の形成ほどの必要熱量ではないが、たとえば太陽電池セルの表面に塗布した電極ペースト中のAgを絶縁性のSiN膜を通して内部に導通(ファイヤスルー)させるためにもある程度の熱量が必要とされる。
【0004】
このように、水素によるSiのダングリングボンドの不活性化をよい状態に保持するためにはたとえば900℃以上の高速熱処理或いは低温熱処理が求められる一方で、電極ペースト中のAlをSi中に拡散(合金化)させてBSF層を均一に設けたり、電極ペースト中のAgを絶縁性のSiN膜を通して内部に導通させたりするためには、十分な熱量を必要とするということを両立させる熱処理が求められる。また、Alは高温ほどBSF層が均一となって開放電圧Vocが高くなる傾向があるのに対して、Agは温度が高くなると急激に浸食(ファイヤースルー)が進行してpn接合に損傷を与える傾向があるため、電極ペースト中のAlをSi中に拡散させるのに必要な熱量と、電極ペースト中のAgを絶縁性のSiN膜を通して内部に導通させるのに必要な熱量とに差があることを前提として、それらを両立させる熱処理が求められる。
【0005】
これに対して、焼成炉内に熱反射部材を設けることで焼成炉内の温度ばらつきを抑制する技術が、引用文献1により提案されている。また、焼成炉端部の熱を間接的に伝えて炉内温度を安定化させる技術が、引用文献2により提案されている。また、高速焼成のために、乾燥および脱バインダー領域での被加熱物の搬送速度よりも焼成領域での被搬送物の搬送速度を高める技術が、引用文献3により提案されている。さらに、省エネルギーのために上下動を用いて搬送するウォーキングビーム方式の熱処理技術が、引用文献4により提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−185974号公報
【特許文献2】特開2006−310792号公報
【特許文献3】特開2006−189236号公報
【特許文献4】特許第4456033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1乃至4に記載の従来の熱処理炉では、加熱時間が未だ長く、加熱ばらつきが大きいため、水素によるSiのダングリングボンドの不活性化や、AlのSi中への拡散(合金化)によるBSF層の均一形成が十分に行なわれるように加熱温度を設定すると、基板温度を低下させることができないので、電極ペースト中のAgの絶縁性のSiN膜を通した内部への導通に際して過度の加熱となってるので、pn接合に損傷を与えるという問題があった。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、水素によるSiのダングリングボンドの不活性化や、AlのSi中への拡散(合金化)によるBSF層の均一形成が十分に行なわれ、且つ、電極ペースト中のAgの絶縁性のSiN膜を通した内部への導通に際した過度の加熱防止をそれぞれ可能とするように、半導体基板の温度を上げないで必要な熱量で短時間に均一加熱できる熱処理方法および熱処理炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、以上の事情を背景として種々研究を重ねた結果、加熱されることによって熱放射を行なう熱放射体プレートを、熱処理炉内のヒータと半導体基板との間に配置して速やかに搬送すると、半導体基板の温度をそれほど上げないで、すなわち従来よりも200℃程度低い温度でも、水素によるSiのダングリングボンドの不活性化や、AlのSi中への拡散(合金化)によるBSF層の均一形成が十分に行なわれ、しかも、電極ペースト中のAgの絶縁性のSiN膜を通した内部への導通に際して過度の加熱が防止されるという事実を見いだした。本発明はその知見に基づいて為されたものである。
【0010】
また、本発明の太陽電池セルの熱処理方法の要旨とするところは、(a)Agを含む表面電極用導電ペーストが表面に塗布され、Alを含む裏面電極用導電ペーストが裏面に塗布された太陽電池セル用半導体基板を、該太陽電池セル用半導体基板を搬送する過程で位置固定の加熱ヒータで加熱し、裏面電極および表面電極が裏面および表面に固着された太陽電池セルを得るための太陽電池セルの熱処理方法であって、(b)搬送される前記太陽電池セル用半導体基板と該加熱ヒータとの間に配置された、加熱によって熱放射を行なう熱放射体を用いて、前記太陽電池セル用半導体基板を加熱することにある。
【0011】
また、上記太陽電池セルの熱処理方法が好適に適用される熱処理炉の要旨とするところは、(a)Agを含む表面電極用導電ペーストが表面に塗布され、Alを含む裏面電極用導電ペーストが裏面に塗布された太陽電池セル用半導体基板を、該太陽電池セル用半導体基板を搬送する過程で位置固定の加熱ヒータで加熱し、裏面電極および表面電極が裏面および表面に固着された太陽電池セルを得るための太陽電池セルの熱処理炉であって、(b)搬送される前記太陽電池セル用半導体基板と該加熱ヒータとの間に配置された、加熱によって熱放射を行なう熱放射体を含むことにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の太陽電池セルの熱処理方法および熱処理炉によれば、加熱によって熱放射を行なう熱放射体が、搬送される前記太陽電池セル用半導体基板と該加熱ヒータとの間に備えられていることから、太陽電池セル用半導体基板がその熱放射体からの熱放射により近傍から加熱されるので、太陽電池セル用半導体基板の高速搬送が可能となり、表面に均一加熱を加えつつ半導体基板自体の温度上昇を抑制できる。従って、十分な変換効率を維持しつつ、表面電極用導電ペースト中のAgがファイヤースルーする温度、且つ裏面電極用導電ペースト中のAlが合金化する温度よりも上になるように設定する焼成温度を、大幅に低下させることができる。また、高速焼成のためにヒーティングゾーンを長くした大型の熱処理炉を必要としない利点もある。
【0013】
ここで、好適には、前記熱放射体は、前記太陽電池セル用半導体基板の裏面から5mm乃至200mmの距離を隔てて設けられている。このようにすれば、太陽電池セル用半導体基板がその熱放射体からの熱放射により近傍から加熱されることから、太陽電池セル用半導体基板の高速搬送が可能となり、表面に均一加熱を加えつつ半導体基板自体の温度上昇を抑制できるので、太陽電池セルの十分な変換効率を維持しつつ、表面電極用導電ペースト中のAgがファイヤースルーする温度、且つ裏面電極用導電ペースト中のAlが合金化する温度よりも上になるように設定する焼成温度を、大幅に低下させることができる。また、高速焼成のためにヒーティングゾーンを長くした大型の熱処理炉を必要としない。
【0014】
また、好適には、前記熱放射体は、前記太陽電池セル用半導体基板の裏面から5mm乃至200mmの距離を隔てて設けられる。このようにすれば、太陽電池セルの十分な変換効率を維持しつつ、表面電極用導電ペースト中のAgがファイヤースルーする温度、且つ裏面電極用導電ペースト中のAlが合金化する温度よりも上になるように設定する焼成温度を、大幅に低下させることができる。熱放射体と半導体基板の裏面との間の距離が5mmを下回ると、半導体基板と熱処理炉の炉体などとの間が狭くなって干渉などの搬送上の不都合が発生する。熱放射体と半導体基板の裏面との間の距離が200mmを超えると、熱放射体を設けた効果が十分に得られ難くなる。
【0015】
また、好適には、前記熱放射体は、Si板である。このようにすれば、半導体基板の汚染を好適に防止することができる。この熱放射体は、加熱ヒータの熱エネルギを受けて半導体基板へ向かって赤外線、遠赤外線などの放射線を熱放射し、半導体基板を輻射加熱するものであればよく、たとえば、御影石などの天然石、セラミックス板、SiC板、SiN板などであってもよい。また、加熱ヒータ側には吸収率の高い材料から成る黒色層と半導体基板側には熱放射効率の高い材料から成る放射層とから成る多層構造のものであってもよい。
【0016】
また、好適には、前記熱処理炉は、複数の加熱域を有したものであり、前記熱放射体は、それら複数の加熱域のうち、前記半導体基板の温度が最高温度となる加熱域内に少なくとも設けられる。このように熱放射体を配置することで、太陽電池セルの十分な変換効率を維持しつつ、表面電極用導電ペースト中のAgがファイヤースルーする温度、且つ裏面電極用導電ペースト中のAlが合金化する温度よりも上になるように設定する焼成温度を、大幅に低下させることができるという効果が得られる。
【0017】
また、好適には、前記太陽電池セル用半導体基板をその太陽電池セル用半導体基板の裏面が上側となるように搬送する搬送装置を含み、前記熱放射体は、該太陽電池セル用半導体基板の上側に位置固定に配置される。このようにすれば、半導体基板の裏側に一面に塗布されたAlを含む裏面電極用導電ペーストに搬送による欠点を発生させない利点がある。
【0018】
また、好適には、前記搬送装置は、一方向に回転駆動される無端ベルトを有し、該無端ベルトの上側ベルト部上に載置された前記太陽電池セル用半導体基板を搬送するものである。このようにすれば、太陽電池セル用半導体基板を搬送する搬送装置は、比較的簡単に構成される。この無端ベルトは、たとえば、ステンレスメッシュベルトから構成される。
【0019】
また、好適には、前記搬送装置は、水平方向および垂直方向に一定のストロークで相対的に往復移動させられる第1ビームおよび第2ビームを有し、該第1ビームおよび第2ビームが前記太陽電池セル用半導体基板を交互に支持することにより一方向へ搬送するウォーキングビーム式搬送装置である。このようにすれば、搬送装置からの粉塵の発生や熱移動が少なく太陽電池セル用半導体基板の汚染が防止される利点がある。
【0020】
また、好適には、前記太陽電池セル用半導体基板を、該太陽電池セル用半導体基板の裏面が下側となるように搬送する搬送装置を含み、前記熱放射体は、該太陽電池セル用半導体基板の下側に配置されている。このように熱放射体を配置することで、太陽電池セルの十分な変換効率を維持しつつ、表面電極用導電ペースト中のAgがファイヤースルーする温度、且つ裏面電極用導電ペースト中のAlが合金化する温度よりも高くなるように設定する焼成温度を、大幅に低下させることができるという効果が得られる。
【0021】
また、好適には、前記搬送装置は、水平方向および垂直方向に一定のストロークで相対的に往復移動させられる第1ビームおよび第2ビームを有し、該第1ビームおよび第2ビームが前記太陽電池セル用半導体基板を交互に支持することにより一方向へ搬送するものであり、前記熱放射体は、該ビームおよび第2ビームの少なくとも一方に固定されている。このようにすれば、太陽電池セル用半導体基板には、搬送装置からの粉塵の発生や熱移動が少ない利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の熱処理方法を実施するための熱処理炉の一例を模式的に示す図である。
【図2】図1の熱処理炉のヒートカーブおよび焼成時間を説明する図である。
【図3】図1の熱処理炉の熱放射体の形状および取付位置構造を説明するための断面図である。
【図4】図1の熱処理炉の熱放射体の形状および取付位置構造の他の例を説明するための断面図である。
【図5】図1の熱処理装置により製造される太陽電池セルの表面に焼結された表面電極の形状を説明する図である。
【図6】図1の熱処理装置により製造される太陽電池セルの裏面に焼結された裏面電極および半田付パッドの形状を説明する図である。
【図7】図1の熱処理装置により製造される太陽電池セルの構成を説明する断面図である。
【図8】図7の太陽電池セルの焼成時の熱放射体と半導体基板との間の距離を変化させたときに得られる太陽電池セルの性能との対応関係を示す図表である。
【図9】図7の太陽電池セルの焼成時の熱放射体の寸法を変化させたときに得られる太陽電池セルの性能との対応関係を示す図表である。
【図10】本発明の熱処理方法を実施するための熱処理炉の他の一例を模式的に示す図である。
【図11】図10の熱処理炉に備えられたウォーキングビーム式搬送装置の構成を概略説明する平面図である。
【図12】図10のウォーキングビーム式搬送装置の搬送作動を概略説明する図であって、(a)は、可動ビームが上方移動した図であり、(b)は、可動ビームが下方移動した図である。
【図13】図10の熱処理炉のヒートカーブおよび焼成時間を示す図である。
【図14】図10の熱処理炉に備えられたウォーキングビーム式搬送装置の構成を概略説明する断面図である。
【図15】図10の熱処理炉に備えられたウォーキングビーム式搬送装置の構成の他の例を概略説明する断面図である。
【図16】図10の熱処理炉に備えられた太陽電池セルの焼成時の熱放射体と半導体基板との間の距離を変化させたときに得られる太陽電池セルの性能との対応関係を示す図表である。
【図17】本発明の熱処理方法を実施するための熱処理炉の他の一例を模式的に示す図である。
【図18】図17の熱処理炉に備えられたウォーキングビーム式搬送装置の構成を概略説明する平面図である。
【図19】図17のウォーキングビーム式搬送装置の搬送作動を概略説明する図であって、(a)は、可動ビームが上方移動した図であり、(b)は、可動ビームが下方移動した図である。
【図20】図17の熱処理炉に備えられたウォーキングビーム式搬送装置の構成を概略説明する断面図である。
【図21】図17の熱処理炉に備えられたウォーキングビーム式搬送装置の構成の他の例を概略説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一適用例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において装置を説明する図は適宜簡略化された模式図であって、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の熱処理方法が適用される熱処理炉の一例を模式的に示している。図1において、熱処理炉10は、入口12および出口14が形成された炉壁16と、炉壁16の入口12および出口14から両端部が外部に露出するように入口側ローラ18、20および出口側ローラ22、24間に水平となるように捲き掛けられた無端ベルト26を有するベルト式搬送装置28と、無端ベルト26の上側搬送ベルト部26aを上下から挟むように位置固定に設けられた6対の加熱ヒータ28aおよび28b、29aおよび29b、30aおよび30b、31aおよび31b、32aおよび32b、33aおよび33b、34aおよび34bと、加熱ヒータ33aとその加熱ヒータ33aに直下に位置して上側搬送ベルト部26aとの間に位置固定に設けられたプレート状の熱放射体36とを、備えている。
【0025】
上記ベルト式搬送装置28は、たとえばステンレスメッシュ製の上記無端ベルト26と図示しないベルト駆動モータとを備え、無端ベルト26の上側搬送ベルト部26a上に載置された被加熱物である半導体基板38を入口12から出口14へ一定の速度で搬送し、搬送過程で6対の加熱ヒータ28aおよび28b、29aおよび29b、30aおよび30b、31aおよび31b、32aおよび32b、33aおよび33bの間を順次通過させることにより、たとえば図2に示すヒートカーブで半導体基板38に急速な熱処理を施す。加熱ヒータ28aおよび28bは第1加熱域H1、加熱ヒータ29aおよび29bは第2加熱域H2、加熱ヒータ30aおよび30bは第3加熱域H3、加熱ヒータ31aおよび31bは第4加熱域H4、加熱ヒータ32aおよび32bは第5加熱域H5、加熱ヒータ33aおよび33bは第6加熱域H6を形成している。図2に示すように、第6加熱域H6において熱処理の最高温度が形成されるように各加熱ヒータの出力が制御され、熱放射体36は少なくとも上記最高温度が形成される加熱域である第6加熱域H6内に設けられている。
【0026】
上記半導体基板38は、たとえば156mm×150mm×200μm厚のタイル状であり、熱放射体36は、たとえば20cm幅×1cm厚の帯状のSi板から構成されている。熱放射体36は、半導体基板38の1/3以上の奥行きを有することが必要であり、好ましくは半導体基板38の奥行きと同等以上の奥行き寸法を有することが望まれる。また、熱放射体36は、半導体基板38の幅と同等以上の幅寸法を有することが望まれる。たとえば図3に示すように、熱放射体36は、熱処理炉10の幅方向において連続した状態で、半導体基板38の基板温度が最高値を示す加熱域H6において加熱ヒータ33aに直下に位置し、半導体基板38の裏面(上側の面)に対して、5mm乃至200mmの距離を隔てて水平に固定されている。なお、図4に示すように、熱放射体36は、半導体基板38の真上に位置するようにその半導体基板38の数に対応して熱処理炉10の幅方向において分割されていてもよい。
【0027】
図5および図6は、電極用導電(厚膜)ペーストの塗布後の半導体基板38を熱処理することにより得られる太陽電池セル40の表面および裏面を説明する図であり、図7は、その太陽電池セル40の構造を説明する断面図である。太陽電池セル40の表面すなわち受光面には、図5に示すように、互いに平行な複数本の櫛歯状電極42aと、それら複数本の櫛歯状電極42aを導通させるバスバー電極42bとからなる表面電極42が設けられている。この表面電極42は、Agを主成分とする導電性厚膜であって、Agを含む表面電極用導電ペーストが印刷などにより塗布された後で、熱処理されることにより固着されたものである。
【0028】
太陽電池セル40の裏面すなわち背面には、図6に示すように、半導体基板38の裏面全体を覆う裏面電極44と、その裏面電極44に接するように設けられた半田付パッド46とが設けられている。裏面電極44は、Alを主成分とする導電性厚膜であって、Alを含む裏面電極用導電ペーストが印刷などにより塗布された後で、熱処理されることにより固着されたものである。半田付パッド46は、Agを主成分とする導電性厚膜であって、Agを含む表面電極用導電ペーストが印刷などにより塗布された後で、熱処理されることにより固着されたものである。
【0029】
太陽電池セル40の半導体基板38は、結晶成長により得られたインゴットからスライスされた単結晶板、或いは鋳造法により得られたインゴットからスライスされた多結晶板であり、たとえばボロンが拡散されることによりp型とされた300乃至500μm程度の厚みを有するp型半導体である。この半導体基板38の比抵抗は、たとえば1〜5Ω・cmである。この半導体基板38内には、たとえばオキシ塩化リンなどの不純物を含むガス中で熱処理を行なうことにより、図7に示すように、0.1乃至0.5μm程度のn型の拡散層48が形成され、これによりPN接合が内部に形成されている。また、上記半導体基板38の表面には、たとえばシランとアンモニアの混合ガスを用いたプラズマCVD法により、たとえば50乃至200nm程度の厚み(通常70乃至80nm程度の厚み)であって窒化シリコンSiNxから成る図示しない反射防止膜が形成されている。
【0030】
このように構成された半導体基板38の表面と裏面とには、電極用導電ペースト塗布工程において、表面電極42と裏面電極44および半田付パッド46とを焼結するためのAgを含む表面電極用導電ペーストとAlを含む裏面電極用導電ペーストとが印刷などにより塗布される。すなわち、半導体基板38の表面には、図5に示すように、互いに平行な複数本の櫛歯状電極42aと、それら複数本の櫛歯状電極42aを導通させるバスバー電極42bとからなる表面電極42とを形成するために、Agを含む表面電極用導電ペーストが印刷などによりそれぞれ塗布される。また、太陽電池セル40の裏面すなわち背面には、図6に示すように、半導体基板38の裏面全体を覆う裏面電極44と、その裏面電極44に接するように設けられた半田付パッド46とを設けるために、Alを含む裏面電極用導電ペーストが印刷などにより半導体基板38の裏面一面に塗布されるとともに、Agを含む表面電極用導電ペーストが裏面電極44に一部接するように印刷などにより塗布される。次いで、半導体基板38は、必要に応じて乾燥される。
【0031】
そして、熱処理工程において、上記表面電極用導電ペーストおよび裏面電極用導電ペーストの電極用導電ペーストが塗布された半導体基板38が図1に示す熱処理炉10を通されることにより熱処理が施される。この熱処理は、半導体基板38をAlを含む裏面電極用導電ペーストが一面印刷された裏面が表面となり熱放射体36側すなわち上側となるように上側搬送ベルト部26a上に載置された状態で搬送することにより、行なわれる。この熱処理では、最高温度が形成される加熱域H6の加熱ヒータ33aおよび33bのうちの上側の加熱ヒータ33aと上側搬送ベルト部26aすなわち上側搬送ベルト部26a上の半導体基板38との間に配置された熱放射体36からの放射熱(輻射熱)が半導体基板38への入熱に寄与することで、従来では加熱ヒータ33aおよび33bの温度或いは加熱域H6内の温度が800〜850℃程度以上で行なわれていたのに対して、本実施例では、それよりも150〜200℃程度低い温度で、半導体基板38の温度がたとえばAl融点660℃を僅かに上まわる660℃程度以上の焼成温度で行なわれる。これにより、図7に示すように、表面電極42が半導体基板38の表面に焼結され、裏面電極44aおよび半田付パッド44bが半導体基板38の裏面に焼結されるだけでなく、反射防止膜(SiNx膜)中の水素がSi中に浸透させられてSiの結晶粒界に多数存在しているダングリングボンドの不活性化が行なわれ、Agを含む表面電極42が反射防止膜48を通してp型領域に導通(ファイヤースルー)させられ、裏面電極44に含まれるAlがSi中へ拡散(合金化)され、裏面付近でキャリヤの再結合による効率低下を抑制する内部電極を形成する均一なBSF層50が形成される。
【0032】
また、この熱処理では、熱放射体36からの熱放射により、半導体基板38の従来の熱処理温度が従来よりも200℃程度の低温のたとえば半導体基板38のAl融点660℃を僅かに上まわる660℃程度以上の焼成温度且つその維持が2秒程度の短時間で、昇温時間が35秒程度で行なわれるため、半導体基板38内に浸透してSiの結晶粒界に多数存在しているダングリングボンドを不活性化することに寄与している水素の離脱が可及的に少なくされ、変換効率が高められている。同時に、熱放射体36が半導体基板38の裏面側に位置させられていることもあって、表面電極42に含まれるAgがSi内へ浸入(ファイヤースルー)することが抑制されて、pn接合に損傷を与えることが好適に防止されている。
【0033】
上述のように、本実施例の熱処理工程あるいは熱処理炉10によれば、最高温度が形成される第6加熱域H6において、加熱ヒータ33aおよび33bからの加熱によって熱放射を行なう熱放射体36が、搬送される太陽電池セル用半導体基板38と上側の加熱ヒータ33aとの間に備えられていることから、太陽電池セル用半導体基板38がその熱放射体からの熱放射により近傍から加熱されるので、太陽電池セル用半導体基板38の高速搬送が可能となり、表面に均一加熱を加えつつ半導体基板38自体の温度上昇を抑制できる。従って、太陽電池セル40は、十分な変換効率を維持しつつ、表面電極用導電ペースト中のAgがファイヤースルーする温度、且つ裏面電極用導電ペースト中のAlが合金化する温度よりも上になるように設定する焼成温度を、大幅に低下させることができる。また、高速焼成のためにヒーティングゾーンを長くした大型の熱処理炉を必要としない利点もある。
【0034】
因みに、図8は、156mm×156mm×200μm厚みの半導体基板38と、200mm幅×200mm奥行き×10mm厚みのSi板の熱放射体36とを用い、図1のベルト式熱処理炉10の第6加熱域H6において熱放射体36と半導体基板38との間の距離を変化させたときに、電池性能を示すFF(フィルファクタ)を可及的に高い値たとえば77或いは78に維持する焼成条件を示している。図8において、ウエハ表面温度とは、半導体基板38の表面に熱電対を固定して測定した半導体基板38の表面温度であり、設定値とは、各加熱ヒータ28aおよび28b、・・・加熱ヒータ33aおよび33bの温度制御で設定されている目標値である。また、No.1は、熱放射体36を用いない場合の温度設定値である。図8から明らかなように、熱放射体36と半導体基板38との間の距離が5mm乃至100mmであるNo.2乃至No.6では、熱放射体36を用いない場合(No.1)に比較して、第6加熱域H6の設定温度を大幅に低下させることができた。また、No.9に示されるように、熱放射体36と半導体基板38との間の距離が5mmである場合は、熱放射体36を用いない場合(No.1)に比較して、第6加熱域H6の設定温度を280℃低下させても、同等の性能(FF)が得られた。これに対して、熱放射体36と半導体基板38との間の距離が200mm或いは300mmとなると、No.7、No.8に示されるように、熱放射体36を用いない場合(No.1)に比較して、第6加熱域H6の設定温度の差が見られない。したがって、図1のベルト式熱処理炉10では、熱放射体36と半導体基板38との間の距離を5mm乃至100mmとすることで、熱処理温度を低温化することができる効果が得られた。
【0035】
また、図9は、200μm厚みを有し、基板寸法が5インチ角と6インチ角の2種類の半導体基板38と、10mm厚みを有し、幅寸法が200mm、奥行き寸法が50mm、156mm、200mmの3種類のSi板の熱放射体36とを用い、図1のベルト式熱処理炉10の第6加熱域H6において熱放射体36と半導体基板38との間の距離を一定の10mmとしたときに、電池性能を示すFF(フィルファクタ)を可及的に高い値たとえば78に維持する焼成条件を示している。図9のNo.1から明らかなように、熱放射体36の搬送方向の寸法である奥行き寸法が半導体基板38の奥行き寸法に対して1/3以下である場合は、熱放射体36の熱放射による加熱効果が十分でなく、熱放射体36を用いない場合(No.1)に比較して第6加熱域H6の設定温度を低くすると、太陽電池セル40の性能(FF)が得られない。しかし、熱放射体36の奥行き寸法が半導体基板38の奥行き寸法に対して0.4倍乃至1.8倍であるときには、熱放射体36を用いない場合(No.1)に比較して、第6加熱域H6の設定温度を大幅に60℃程度低下させることができた。
【実施例2】
【0036】
以下において、本発明の熱処理方法を実施するために用いられる他の熱処理炉の例を説明するが、実施例相互に共通する部分いは同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
図10は、本発明の熱処理方法を実施するための他の熱処理炉60を模式的に示し、図11は、その焼成炉60に備えられたウォーキングビーム式搬送装置62の構成を概略説明する平面図および断面図である。図12は、ウォーキングビーム式搬送装置の搬送作動を概略説明する断面図である。なお、ウォーキングビーム式搬送装置62を備える熱処理炉60では、熱放射体36の奥行き寸法および幅寸法は、半導体基板38の奥行き寸法および幅寸法と同等以上である。
【0038】
本実施例の熱処理炉60は、前述の熱処理炉10に比較して、6つの加熱域H1乃至H6およびベルト式搬送装置28に替えて、4つの加熱域H1乃至H4およびウォーキングビーム式搬送装置62を備えている点で相違し、他は同様に構成されている。本実施例のウォーキングビーム式搬送装置62は、固定ビーム64とその両側に配置された可動ビーム66、68と、可動ビーム66、68を下降位置から上方位置への上方移動a、後方位置から前進位置への前進方向移動b、上方位置から下降位置への下方移動c、前進位置から後方位置への後進方向移動dを順次実行させる図示しない駆動装置とを備えている。固定ビーム64の両側に配置された可動ビーム66、68は、水平方向および垂直方向に一定のストロークで相対的に往復移動させられ、固定ビーム64と可動ビーム66、68とが前記太陽電池セル用半導体基板38を交互に支持することにより半導体基板38が出口14へ向かって一方向へ搬送される。
【0039】
固定ビーム64に等間隔で設定された複数箇所の基板支持位置には、平面視でX字状を成すX字状支持突起70が設けられている。このX字状支持突起70は、図12(a)および(b)に示すように、先端ほど上方へ向かうように曲げられており、半導体基板38との接触面積が可及的に少なくされている。また、固定ビーム64と平行にその両側に配置された一対の可動ビーム66、68に等間隔で設定された複数箇所の基板支持位置には、図12(a)および(b)に示すように、相対的な上下移動時においてX字状支持突起70と相互干渉しないように、互いに接近するように水平に突き出す一対の平行な棒状突起72がそれぞれ設けられている。
【0040】
上記のように構成されたウォーキングビーム式搬送装置62では、図12(a)に示すように、可動ビーム66、68が上方移動aのストローク分だけ上昇させられると、半導体基板38が可動ビーム66、68の棒状突起72に支持されて高さh1まで持ちあげられ、この状態で前進方向移動bのストローク分だけ進行方向へ搬送させられる。次いで、図12(b)に示すように、可動ビーム66、68が下方移動cのストローク分だけ下降させられると、半導体基板38が高さh2まで下降させられ固定ビーム64のX字状支持突起70に支持される。この状態で、可動ビーム66、68は後進方向移動dのストローク分だけ後退させられる。このような1サイクルの作動が繰り返されることにより、半導体基板38は、高さh1とh2との間の上下動しつつ一定のタクトで逐次搬送される。この炉壁16の入口12から出口14までの搬送過程において、半導体基板38がたとえば図13に示す温度プロファイルで加熱される。
【0041】
本実施例の熱処理炉60では、たとえば図14に示されるように、熱放射体36は、熱処理炉10の幅方向において連続した状態で、半導体基板38の基板温度が最高値を示す加熱域H3において加熱ヒータ31aに直下に位置し、半導体基板38の裏面(上側の面)に対して、5mm乃至200mmの距離を隔てて水平に固定されている。図15は、半導体基板38がその裏面電極44が下側となる姿勢で搬送される場合の、熱放射体36の配置例を示している。この場合の半導体基板38は、X字状支持突起70に支持された半導体基板38の下面に対して5mm乃至200mmの距離を隔てるように固定ビーム64に固定されている。
【0042】
本実施例においても熱放射体36が配置されているので、前述の実施例と同様の効果が得られる。因みに、図16は、図8の場合と同様に、156mm×156mm×200μm厚みの半導体基板38と、200mm幅×200mm奥行き×10mm厚みのSi板の熱放射体36とを用い、図10および図11のベルト式熱処理炉60の第3加熱域H3において熱放射体36と半導体基板38との間の距離を変化させたときに、電池性能を示すFF(フィルファクタ)を所定の高い値たとえば77或いは78に維持する焼成条件を示している。図16において、ウエハ表面温度とは、半導体基板38の表面に熱電対を固定して測定した半導体基板38の表面温度であり、設定値とは、各加熱ヒータ28aおよび28b、・・・加熱ヒータ31aおよび31bの温度制御で設定されている目標値である。また、No.1は、熱放射体36を用いない場合の温度設定値である。図16から明らかなように、熱放射体36と半導体基板38との間の距離が5mm乃至200mmであるNo.2乃至No.7では、熱放射体36を用いない場合(No.1)に比較して、第3加熱域H3の設定温度を大幅に低下させることができた。また、No.9に示されるように、熱放射体36と半導体基板38との間の距離が5mmである場合は、熱放射体36を用いない場合(No.1)に比較して、第3加熱域H3の設定温度を200℃低下させても、同等の性能(FF)が得られた。これに対して、熱放射体36と半導体基板38との間の距離が300mmとなると、No.8に示されるように、熱放射体36を用いない場合(No.1)に比較して、第3加熱域H3の設定温度設定温度の差が殆ど見られない。したがって、図10乃至図12のウォーキングビーム式熱処理炉60では、熱放射体36と半導体基板38との間の距離を5mm乃至200mmとすることで、熱処理温度を低温化することができる効果が得られた。
【実施例3】
【0043】
図17は、本発明の熱処理方法を実施するための他の熱処理炉80を模式的に示し、図18および図19は、その焼成炉80に備えられたウォーキングビーム式搬送装置82の構成を概略説明する平面図および断面図である。
【0044】
本実施例の熱処理炉80は、前述の熱処理炉60に比較して、ウォーキングビーム式搬送装置82が相違するが、他は同様に構成されている。すなわち、ウォーキングビーム式搬送装置82は、前述のウォーキングビーム式搬送装置62の固定ビーム64に替えて、上下動ビーム84が用いられている点が相違している。本実施例のウォーキングビーム式搬送装置62は、上下動ビーム84とその両側に配置された可動ビーム66、68と、上下動ビーム84を上下移動させ、且つ、可動ビーム66、68を下降位置から上方位置への上方移動a、後方位置から前進位置への前進方向移動b、上方位置から下降位置への下方移動c、前進位置から後方位置への後進方向移動dを順次実行させる図示しない駆動装置とを備えている。上下動ビーム84の両側に配置された可動ビーム66、68は、水平方向および垂直方向に一定のストロークで相対的に往復移動させられ、上下動ビーム84が可動ビーム66、68の上方移動aおよび下方移動cに同期してそれと反対方向に移動させられることで、上下動ビーム84と可動ビーム66、68とが前記太陽電池セル用半導体基板38を交互に支持することにより半導体基板38が出口14へ向かって一方向へ搬送される。
【0045】
ウォーキングビーム式搬送装置82では、図19(a)に示すように、可動ビーム66、68が上方移動aのストローク分だけ上昇させられ、それに同期して上下動ビーム84がk1からk2へ下降させられると、半導体基板38が可動ビーム66、68の棒状突起72に高さh1で支持され、この状態で前進方向移動bのストローク分だけ進行方向へ搬送させられる。次いで、図19(b)に示すように、上下動ビーム84がk2からk1へ上昇させられ、それに同期して可動ビーム66、68が下方移動cのストローク分だけ下降させられると、半導体基板38が上下動ビーム84のX字状支持突起70により高さh1で支持される。この状態で、可動ビーム66、68は後進方向移動dのストーク分だけ後退させられる。このような1サイクルの作動が繰り返されることにより、半導体基板38は、高さh1に維持されつつ一定のタクトで逐次搬送される。この炉壁16の入口12から出口14までの搬送過程において、半導体基板38がたとえば図13に示す温度プロファイルで加熱される。
【0046】
本実施例の熱処理炉80では、たとえば図20に示されるように、熱放射体36が、熱放射体36は、熱処理炉10の幅方向において連続した状態で、半導体基板38の基板温度が最高値を示す加熱域H3において加熱ヒータ30aに直下に位置し、半導体基板38の裏面(上側の面)に対して、5mm乃至200mmの距離を隔てて水平に固定されている。図21は、半導体基板38がその裏面電極44が下側となる姿勢で搬送される場合の、熱放射体36の配置例を示している。この場合の半導体基板38は、X字状支持突起70に支持された半導体基板38の下面に対して5mm乃至200mmの距離を隔てるように固定ビーム64に固定されている。
【0047】
本実施例においても熱放射体36が配置されているので、前述の実施例と同様の効果が得られるとともに、図16に示すものと同様の結果が得られるしたがって、図17乃至図19のウォーキングビーム式熱処理炉80では、熱放射体36と半導体基板38との間の距離を5mm乃至200mmとすることで、熱処理温度を低温化することができる効果が得られた。
【0048】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
10、60、80:熱処理炉
26:無端ベルト
28:ベルト式搬送装置(搬送装置)
36:熱放射体
38:太陽電池セル用半導体基板
40:太陽電池セル
62:ウォーキングビーム式搬送装置(搬送装置)
64:固定ビーム
66:可動ビーム
68:可動ビーム
82:ウォーキングビーム式搬送装置(搬送装置)
84:上下動ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Agを含む表面電極用導電ペーストが表面に塗布され、Alを含む裏面電極用導電ペーストが裏面に塗布された太陽電池セル用半導体基板を、該太陽電池セル用半導体基板を搬送する過程で位置固定の加熱ヒータで加熱し、裏面電極および表面電極が裏面および表面に固着された太陽電池セルを得るための太陽電池セルの熱処理方法であって、
搬送される前記太陽電池セル用半導体基板と該加熱ヒータとの間に配置された、加熱によって熱放射を行なう熱放射体を用いて、前記太陽電池セル用半導体基板を加熱することを特徴とする太陽電池セルの熱処理方法。
【請求項2】
Agを含む表面電極用導電ペーストが表面に塗布され、Alを含む裏面電極用導電ペーストが塗布された太陽電池セル用半導体基板を、該太陽電池セル用半導体基板を搬送する過程で位置固定の加熱ヒータで加熱し、裏面電極および表面電極が裏面および表面に固着された太陽電池セルを得るための太陽電池セルの熱処理炉であって、
搬送される前記太陽電池セル用半導体基板と該加熱ヒータとの間に配置された、加熱によって熱放射を行なう熱放射体を含むことを特徴とする太陽電池セルの熱処理炉。
【請求項3】
前記熱放射体は、前記太陽電池セル用半導体基板の裏面から5mm乃至200mmの距離を隔てて設けられていることを特徴とする請求項2の太陽電池セルの熱処理炉。
【請求項4】
前記熱放射体は、Si板であることを特徴とする請求項2または3の太陽電池セルの熱処理炉。
【請求項5】
前記熱処理炉は、複数の加熱域を有し、
前記熱放射体は、前記複数の加熱域のうち、前記半導体基板の温度が最高温度となる加熱域内に少なくとも設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1の太陽電池セルの熱処理炉。
【請求項6】
前記太陽電池セル用半導体基板を、該太陽電池セル用半導体基板の裏面が上側となるように搬送する搬送装置を含み、
前記熱放射体は、該太陽電池セル用半導体基板の上側に位置固定に配置されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1の太陽電池用熱処理炉。
【請求項7】
前記搬送装置は、一方向に回転駆動される無端ベルトを有し、該無端ベルトの上側ベルト部上に載置された前記太陽電池セル用半導体基板を搬送するものであることを特徴とする請求項6の太陽電池用熱処理炉。
【請求項8】
前記搬送装置は、水平方向および垂直方向に一定のストロークで相対的に往復移動させられる第1ビームおよび第2ビームを有し、該第1ビームおよび第2ビームが前記太陽電池セル用半導体基板を交互に支持することにより一方向へ搬送するものであることを特徴とする請求項6の太陽電池用熱処理炉。
【請求項9】
前記太陽電池セル用半導体基板を、該太陽電池セル用半導体基板の裏面が下側となるように搬送する搬送装置を含み、
前記熱放射体は、該太陽電池セル用半導体基板の下側に配置されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1の太陽電池用熱処理炉。
【請求項10】
前記搬送装置は、水平方向および垂直方向に一定のストロークで相対的に往復移動させられる第1ビームおよび第2ビームを有し、該第1ビームおよび第2ビームが前記太陽電池セル用半導体基板を交互に支持することにより一方向へ搬送するものであり、
銭熱放射体は、該ビームおよび第2ビームの少なくとも一方に固定されていることを特徴とする請求項9の太陽電池用熱処理炉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2013−115273(P2013−115273A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260876(P2011−260876)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】