説明

太陽電池発電装置

【課題】各太陽電池パネルを見回らなくても管理室等から遠隔監視可能な技術を提案すること。
【解決手段】本発明は、複数の太陽電池パネルを直列に接続して配設した太陽電池発電装置において、前記太陽電池パネルのプラス極側とダイオードのアノード側とを接続し、前記太陽電池パネルのマイナス側と前記ダイオードのカソード側とを接続し、前記ダイオードの両端の端子間電圧を検出し、所定の基準電圧と比較して、前記端子間電圧が前記所定の基準電圧以下の場合には電源回路動作信号を出力し、前記端子間電圧が前記所定の基準電圧を越える場合には電源回路動作信号を出力しないように構成された電圧検出手段と、前記電源回路動作信号が出力される場合には、前記ダイオードの端子間電圧に基づいた所定の動作電圧を出力する電源回路と、前記動作電圧が出力される場合には前記動作電圧で動作して動作不良信号を送信し、前記動作電圧が出力されない場合には動作不良信号を送信しないように構成された無線送信回路と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルを複数直列に接続し、多量のパネルを配置した太陽電池発電装置の管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題、資源問題から、太陽光という自然エネルギーを利用した太陽光発電装置が注目されている。その中でも太陽電池パネルを複数直列に接続し、複数のパネルを配置した太陽電池発電装置が設置されるようになってきた。
ところで、太陽電池パネルの等価回路は、電流源と、理想ダイオード、抵抗との並列回路として表現できる。前記太陽電池パネルが故障して動作不良となった場合には、前記電流源が消滅して、逆方向に接続された状態の前記理想ダイオードと並列抵抗のみとなる。
したがって、直列接続された複数の太陽電池パネルのうちの1つが動作不良になると、動作不良の太陽電池パネル分の発電量が不足して低下するだけでなく、動作不良の太陽電池パネルによって、他の太陽電池パネルで発電された電流が阻止されるという問題がある。
このようにして動作不良となった太陽電池パネルが電流を阻止する問題を避けるために、各太陽電池パネルに、順方向のダイオードを並列接続することが行われている。
なお、動作不良となった太陽電池パネルがある場合には、交換・修理等のためにその太陽電池パネルを特定する必要があるが、正常な太陽電池パネルと外観上の区別はできないため、ひとつひとつテスタ等で端子電圧をチェックする必要があった。
【0003】
そこで、動作不良となった太陽電池パネルを容易に発見できる技術が、特許文献1等において提案されている。
特許文献1において提案されている技術は、
各太陽電池パネルに並列接続するダイオードを発光ダイオードに代え、当該太陽電池パネルが動作不良となった場合に前記発光ダイオードが点灯するように構成したものである。
この技術によって、テスタ等を用いることなく容易に故障した太陽電池パネルを発見できるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−97456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の技術によって、確かに、夜間等においては、テスタ等を用いることなく容易に故障した太陽電池パネルを発見できるようになったが、明るい昼間の屋外等に設置した複数の太陽電池パネルの中から故障した太陽電池パネルを発見することは見落としやすいという問題があった。
また、点灯している発光ダイオードを発見するためには、各太陽電池パネルを見回る必要があるので、巡回するための人員を確保する必要があるという問題があった。
【0006】
本発明においては、各太陽電池パネルを見回らなくても管理室等から遠隔監視可能な技術を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽電池発電装置の請求項1では、
複数の太陽電池パネルを直列に接続して配設した太陽電池発電装置において、
前記太陽電池パネルのプラス極側とダイオードのアノード側とを接続し、前記太陽電池パネルのマイナス側と前記ダイオードのカソード側とを接続し、
前記ダイオードの両端の端子間電圧を検出し、所定の基準電圧と比較して、前記端子間電圧が前記所定の基準電圧以下の場合には電源回路動作信号を出力し、前記端子間電圧が前記所定の基準電圧を越える場合には電源回路動作信号を出力しないように構成された電圧検出手段と、
前記電源回路動作信号が出力される場合には、前記ダイオードの端子間電圧に基づいた所定の動作電圧を出力する電源回路と、
前記動作電圧が出力される場合には前記動作電圧で動作して動作不良信号を送信し、前記動作電圧が出力されない場合には動作不良信号を送信しないように構成された無線送信回路と、
を備えていることを特徴としている。
請求項2では、
前記無線送信回路は、
当該太陽電池パネルを識別する識別情報を含んだ動作不良信号を送信するように構成されている。
請求項3では、
前記無線送信回路は、
動作不良信号の送信を繰り返すタイミングを乱数に基づいて制御するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る太陽電池発電装置は、
太陽電池パネルのプラス極側とダイオードのアノード側とを接続し、前記太陽電池パネルのマイナス側と前記ダイオードのカソード側とを接続し、
前記ダイオードの両端の端子間電圧を検出し、所定の基準電圧と比較して、前記端子間電圧が前記所定の基準電圧以下の場合には電源回路動作信号を出力し、前記ダイオードの端子間電圧に基づいた所定の動作電圧を出力して、
前記動作電圧が出力される場合には前記動作電圧で動作して動作不良信号を送信するように構成されているので、
動作不良に陥った太陽電池パネルがある場合には、わざわざ現場まで目視確認に行かなくても、前記動作不良信号を受信することによって、遠隔地で確認することができる。
また、動作不良に陥った太陽電池パネルがある場合には、当該太陽電池パネルを識別する識別情報を含んだ動作不良信号を送信するように構成することにより、わざわざ現場まで目視確認に行かなくても、前記動作不良信号を受信することによって、どの太陽電池パネルが動作不良であるかを遠隔地で確認することができる。
また、動作不良信号の送信を繰り返すタイミングを乱数に基づいて制御するように構成することにより、複数の太陽電池パネルが動作不良の場合でも、動作不良の太陽電池パネルを識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る太陽電池発電装置の構成図である。
【図2】実施例1の太陽電池発電装置に用いる太陽電池パネルの構成図である。
【図3】実施例2に用いる太陽電池パネルの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態としては、図1に示したように、複数の太陽電池パネル1が直列接続されて太陽電池発電装置10が構成されている。
各太陽電池パネル1には、それぞれ太陽電池ユニット11が内蔵され、前記太陽電池ユニット11にはダイオード12が並列に接続されている。太陽電池ユニット11とダイオード12との接続形態は、太陽電池ユニット11のプラス極側とダイオード12のアノード側とが接続され、前記太陽電池ユニット11のマイナス側と前記ダイオード12のカソード側とが接続されたものである。
なお、前記太陽電池ユニット11の起電力の電圧Esは、前記ダイオード12の順方向電圧Edより大きくなるように、前記太陽電池ユニット11は構成されている。
【0011】
前記太陽電池ユニット11とダイオード12とはこのような接続形態であるので、前記太陽電池ユニット11が正常に起電力を発生させている状態では、前記起電力は前記ダイオード12に逆バイアスとして印加されて、前記ダイオード12は非導通状態となり、当該太陽電池発電装置10の総起電力は正常に出力される。この状態では、前記ダイオード12の端子間には前記太陽電池ユニット11の起電力による電圧Esが印加されている。
【0012】
前記太陽電池ユニット11が故障して動作不良状態になると、前記太陽電池ユニット11の等価回路における電流源が消失して、等価回路における内部ダイオードのみになるので、前記内部ダイオードには他の太陽電池パネルの起電力が逆バイアスとして印加され前記内部ダイオードは非導通状態となる。このとき、他の太陽電池パネルの起電力の総和は前記並列接続されたダイオード12には順方向電圧として印加されるので、前記ダイオード12は導通状態となり、他の太陽電池パネルの起電力を阻止することはなく、当該太陽電池発電装置10の総起電力は、動作不良の太陽電池パネルの分だけ低下するものの、その低下した総起電力は出力される。
この状態では、前記ダイオード12のアノードとカソード間には当該ダイオード12の特性により順方向電圧Edが発生している。本発明では、この順方向電圧を利用して当該太陽電池パネルの故障状態を報知するものである。
【実施例1】
【0013】
前記太陽電池パネルの実施例1の構成を、図2を参照して説明する。
図2に示したように、前記太陽電池パネル1は、太陽電池ユニット11、ダイオード12、電圧検出回路13、電源回路14、および無線送信回路15を内蔵している。
前記無線送信回路15は、さらに、ID設定回路16と、タイミング制御回路17とを内蔵している。
前記無線送信回路15から電波等によって無線送信される動作不良信号は、例えば当該太陽電池発電装置10に対応して設けられたセンター局にて受信され、このセンター局から無線通信もしくは有線通信によって、管理装置に送信される。前記管理装置は、例えば、複数の太陽電池発電装置を集中管理するものであり、前記動作不良信号を受信して、動作不良の太陽電池パネル1が、どの太陽電池発電装置10のどの太陽電池パネル1であるかを識別して特定し、保守要員に交換もしくは修理を指示することができるように構成されている。
【0014】
前記電圧検出回路13は、前記ダイオード12の端子間電圧Vを所定の基準電圧Erefと比較して前記端子間電圧Vが前記基準電圧Erefより高いときには、当該太陽電池ユニット11は正常であると判断して、電源回路動作信号は出力しないが、前記端子間電圧Vが前記基準電圧Eref以下になると、当該太陽電池ユニット11は故障して動作不良状態であると判断して、電源回路動作信号を出力するように構成されている。前記基準電圧Erefは例えば定電圧ダイオードなどを利用する。
【0015】
前記電源回路14は、例えば、前記ダイオード12の端子間電圧Vを入力電圧とするDC/DCコンバータ回路を内蔵して、前記電圧検出回路13から前記電源回路動作信号が出力された場合にのみ、前記無線送信回路15に必要な所望の動作電圧を得て前記無線送信回路15の動作用の電源として出力するように構成されている。
前記DC/DCコンバータ回路としては、例えば、インダクタを用いないで昇圧させるチャージポンプを採用することができる。
【0016】
前記無線送信回路15は、前記電源回路14から所定の動作電圧の電源が供給される場合にのみ、所定の動作不良信号を送信するように構成されている。
前記動作不良信号は、当該太陽電池パネル1を識別するための識別情報を含んでおり、この識別情報は、他の太陽電池パネルと重複せず異なる識別情報が前記ID設定回路16に予め設定されている。
【0017】
以上のように、前記動作不良信号に識別情報を含ませることにより、センター局では、動作不良に陥った太陽電池パネル1を特定することができるようになったが、複数の太陽電池パネルにおいて動作不良状態が並行して発生している状態では、それぞれの無線送信回路から同時に動作不良信号が送信されることになる。
そのような事態では、センター局では、複数の動作不良信号が混信してしまい、動作不良の太陽電池パネルを正確に特定できないという問題がある。
そこで、前記無線送信回路15は、当該太陽電池パネル1が動作不良に陥ったときに送信する動作不良信号の送信を繰り返す送信タイミングが、他の太陽電池パネルから送信される動作不良信号の送信タイミングと重複しないように、前記無線送信回路15における送信タイミングを制御するために、前記タイミング制御回路17を備えている。
他の太陽電池パネルの無線送信回路と調整しながら送信タイミングをずらすように構成してもよいが、そのようなタイミングの調整のためには他の太陽電池パネル1との通信手段が必要になる。
そこで、ぞれぞれの無線送信回路から送信される動作不良信号の送信間隔をランダムに変化させることによって、互いの送信タイミングが重ならないようにすることが好ましい。
そのためには、前記タイミング制御回路17においては、送信タイミングが重複する確率を低くするために乱数を発生させて、その乱数に基づいた間隔で動作不良信号を送信するように送信タイミングを制御するように構成すると良い。乱数を発生させるためには、例えば、デジタル演算により疑似乱数を生成するアルゴリズムを用いた乱数発生回路や、素子の特性や雑音などを利用してアナログ式に乱数を発生する乱数発生回路等を備えるとよい。
このように、送信タイミングを乱数に基づいてランダムに制御することにより、複数の太陽電池パネル1が動作不良になっている状態が発生しても、それらの太陽電池パネル1から送信される動作不良信号の送信タイミングが一致して、受信側の管理装置において動作不良の太陽電池パネル1の識別ができなくなる事態を少なくすることができる。仮に、複数の太陽電池パネル1から送信される動作不良信号の送信タイミングが一致する瞬間が発生しても、次の送信タイミングが一致する確立は非常に少ないので、動作不良の太陽電池パネルを特定できない事態が続くことは無い。

【0018】
なお、各太陽電池パネル1の動作が正常な場合には、前記無線送信回路15には電源が供給されないので、前記動作不良信号は送信されない。
【0019】
以上のようにして、太陽電池パネル1が動作不良に陥った場合には、前記無線送信回路15から動作不良信号が送信され、この動作不良信号を受信したセンター局では、前記動作不良の太陽電池パネル1が、どの太陽電池発電装置10に属するものであるかを識別する情報を付加して、前記管理装置に送信するので、前記管理装置では、動作不良の太陽電池パネル1が、どの太陽電池発電装置10のどの太陽電池パネル1であるかを識別して特定し、保守要員に交換もしくは修理を指示することができるのである。
【0020】
なお、前記無線送信回路15を、低電圧で動作する素子を用いて構成することにより、前記電源回路14では昇圧回路を不要にすることができる。
【0021】
また、前記電源回路14を、DC/DCコンバータ回路を用いて所望の電圧を出力するように構成し、十分な無線送信出力を得ることができる。
【0022】
前記タイミング制御回路17においては、乱数に代えて、前記識別情報を数値化して、その数値を、無線送信を繰り返す送信間隔とすることにより、乱数発生回路を省略することができる。
また、前記数値化した識別情報を、デジタル演算による乱数生成アルゴリズムで乱数を生成する場合のシードとすることにより、各太陽電池パネル1における送信を繰り返す間隔が重複する確率を下げることができる。
【実施例2】
【0023】
次に、本発明の実施例2に係る構成を、図3を参照して説明する。
実施例2では、ポーリング方式を用いて各太陽電池パネルに対して順次、その識別情報を特定して無線送信して呼び出し、その返信の有無によって、前記呼び出した太陽電池パネルの動作不良の有無を認識するように構成した。
図3に示したように、前記太陽電池パネル1Bには、実施例1における無線送信回路15Bに加えて受信回路18Bを付加し、前記センター局には、ポーリング方式による呼び出し機能を備えている。
前記センター局は、各太陽電池パネルを特定する識別情報を含んだ呼び出し信号を送信する。該当する識別情報で特定される太陽電池パネル1Bが正常に動作している場合には、電源回路14Bから前記無線送信回路15Bには動作用の電源が供給されないので、動作不良信号は送信されない。一方、前記識別情報で特定される太陽電池パネル1Bが動作不良に陥っている場合には、電源回路14Bから前記無線送信回路15Bと前記受信回路18Bに動作用の電源が供給されるので、受信した呼び出し信号を、ID設定回路16Bにて設定されている識別情報と比較して、一致した場合には動作不良信号が送信される。
以上のようにして、各太陽電池パネルを順番に呼び出して、動作不良信号が受信された場合には、その太陽電池パネルは動作不良であり、受信されない場合には、その太陽電池パネルは動作が正常であると判断することができる。
このように構成した場合には、送信される動作不良信号には識別情報を含む必要はない。また、タイミング制御回路も不要である。
【符号の説明】
【0024】
10 太陽電池発電装置
1 太陽電池パネル
11 太陽電池ユニット
12 ダイオード
13 電圧検出回路
14 電源回路
15 無線送信回路
16 ID設定回路
17 タイミング制御回路
1B 太陽電池パネル
14B 電源回路
15B 無線送信回路
16B ID設定回路
18B 受信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池パネルを直列に接続して配設した太陽電池発電装置において、
前記太陽電池パネルのプラス極側とダイオードのアノード側とを接続し、前記太陽電池パネルのマイナス側と前記ダイオードのカソード側とを接続し、
前記ダイオードの両端の端子間電圧を検出し、所定の基準電圧と比較して、前記端子間電圧が前記所定の基準電圧以下の場合には電源回路動作信号を出力し、前記端子間電圧が前記所定の基準電圧を越える場合には電源回路動作信号を出力しないように構成された電圧検出手段と、
前記電源回路動作信号が出力される場合には、前記ダイオードの端子間電圧に基づいた所定の動作電圧を出力する電源回路と、
前記動作電圧が出力される場合には前記動作電圧で動作して動作不良信号を送信し、前記動作電圧が出力されない場合には動作不良信号を送信しないように構成された無線送信回路と、
を備えていることを特徴とする太陽電池発電装置。
【請求項2】
前記無線送信回路は、
当該太陽電池パネルを識別する識別情報を含んだ動作不良信号を送信するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池発電装置。
【請求項3】
前記無線送信回路は、
動作不良信号の送信を繰り返すタイミングを乱数に基づいて制御するように構成されていることを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の太陽電池発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−156317(P2012−156317A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14264(P2011−14264)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】