説明

始動器内蔵形高圧放電灯

【課題】 従来の始動器内蔵形高圧放電灯は、ランプが点灯するまでに数秒以上かかる場合において、始動器の誤動作によりスイッチング素子の動作が停止し、正常なランプでありながら不点の状態になるという欠点があった。
【解決手段】 外管と口金とを備えた外囲器9内に発光管1と始動器とが収納され、前記発光管1と前記始動器とは並列に接続されている。前記始動器は負特性サーミスタ7と該負特性サーミスタ7に流れる電流を制限するための抵抗6との直列体がスイッチング素子8と並列に接続された第1の並列体を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外管と口金とを備えてなる外囲器内に始動器を内蔵した始動器内蔵形高圧放電灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光管に透光性アルミナセラミックを用いた高圧ナトリウムランプや、透明石英管を用いた高圧水銀ランプあるいはメタルハライドランプは効率が優れていることから、工場照明や道路照明等の用途に広く使用されている。
【0003】
ところで、高圧水銀ランプはランプの始動に高電圧パルスを必要としないが、高圧ナトリウムランプやメタルハライドランプは、ランプの始動に高電圧パルスを必要とするのが一般的である。特に、近年商品化された発光管に透光性アルミナセラミックを用いた、いわゆるセラミックメタルハライドランプにおいては、発光管に始動用補助電極を設けることが難しく、始動のために高電圧パルスを必要とする。
【0004】
ランプ始動時に高電圧パルスを発光管両端に印加する方法としては、パルス発生装置を内蔵した安定器を用いる方法と、ランプ外囲器内に始動器を内蔵した始動器内蔵形ランプを用いる方法とがある。前者はパルス発生装置を内蔵した専用の安定器が必要であるのに対して、後者は最も広く普及している安価な高圧水銀ランプ用安定器で点灯できるという利点がある。そのため、高圧ナトリウムランプにおいては始動器内蔵形のランプが一般に普及している。また、最近ではセラミックメタルハライドランプにおいても始動器内蔵形とするのが一般化されつつある。
【0005】
ところで、始動器内蔵形高圧放電灯の例としては図4に示すような特許文献1に記載のものが知られている。図4において、1は発光管、12は抵抗、4はバイメタルスイッチ、7は負特性サーミスタ、8はたとえばグロー管のようなスイッチング素子、9は外囲器である。そして、抵抗12およびバイメタルスイッチ4はスイッチング素子8と負特性サーミスタ7との並列回路と直列に接続され、これら4個の部品で始動器を形成している。ここで、負特性サーミスタとは温度が上がれば抵抗値が減少する素子のことである。なお、バイメタルスイッチ4はランプ非点灯時には閉じており、ランプが点灯すると発光管からの熱で開となるように付設されている。このランプの正常に点灯する場合と正常に点灯しない場合の動作原理は次のとおりである。
【0006】
<ランプが正常に点灯する場合>
安定器を介して交流電圧が口金端子a及びbに印加されると、スイッチング素子8が動作して、始動器に流れる電流の値はスイッチング素子接点の開閉に応じて増加と減少を繰り返し、その結果チョークからなる安定器(図示せず)の両端に高電圧パルスが発生する。安定器の両端に発生した高電圧パルスは口金端子a及びbを介して発光管1の両端の電極に印加され、ランプは点灯する。ランプが点灯すると発光管からの熱でバイメタルスイッチ4は開状態となり、前記始動器の動作は停止する。
【0007】
<ランプが正常に点灯しない場合>
ランプが正常に点灯しない場合、例えば発光管の始動電圧が上昇し、ランプが不点状態になった場合の動作原理は次のとおりである。安定器を介して交流電圧が口金端子a及びbに印加されると、スイッチング素子8が動作して、前記始動器に流れる電流の値はスイッチング素子接点の開閉に応じて増加と減少を繰り返し、その結果チョークからなる安定器(図示せず)の両端に高電圧パルスが発生する。安定器の両端に発生した高電圧パルスは発光管1の両端の電極に印加されるが、発光管の始動電圧が高いためランプは点灯しない。ランプが点灯しないと始動器には電流が流れ続けるため、その電流による自己発熱により負特性サーミスタ7は温度が上がり、抵抗値が減少する。負特性サーミスタ7の抵抗値が減少するとスイッチング素子8に加わる電圧値が低下する。スイッチング素子8に加わる電圧値がある値以下になるとスイッチング素子の動作は停止する。すなわち、発光管が何らかの原因で始動不良となった場合には、ある一定時間経過後、スイッチング素子の動作は停止し、高電圧パルスの発生は自動的に停止する。
【0008】
【特許文献1】特開平8−250072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、図4に示す従来の始動器内蔵形高圧放電灯において、正常なランプでも次のような始動器に起因する誤動作により、ランプが不点状態になるという欠点があった。
【0010】
<誤動作1>
ランプが正常な場合でも、スイッチング素子8の動作のタイミングによっては負特性サーミスタ7の抵抗値が低下してスイッチング素子8が不動作状態になることがあった。すなわち、負特性サーミスタの抵抗値は流れる電流による自己発熱により電圧印加後数秒以内の短時間で低下するので、ランプが点灯するまでに数秒以上かかる場合にはランプが点灯しないままスイッチング素子8の動作は停止してしまうことになる。スイッチング素子8の動作が停止するとランプは点灯できず不点の状態となる。このように、ランプ外囲器内に内蔵した始動器に起因する誤動作で、正常なランプが点灯できないという問題があった。
【0011】
<誤動作2>
ランプが正常な場合でも、ランプ再始動時に発光管1の温度が充分下がっていない状態ではランプの始動電圧が高いのでバイメタルスイッチ4が閉じると、スイッチング素子8が動作してもランプは点灯しない。そのため、ランプが不点の状態となり、負特性サーミスタ7の抵抗値が低下し、スイッチング素子8の動作は停止する。スイッチング素子8の動作が停止するとランプは点灯できず不点となる。このように、ランプ外囲器内に内蔵した始動器に起因する誤動作で、正常なランプが再始動できないという問題があった。
【0012】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、上述した始動器に起因する誤動作を生じない始動器内蔵形高圧放電灯を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、外管と口金とを備えてなる外囲器内に始動器と発光管とが収納され、前記始動器と前記発光管とは並列に接続された始動器内蔵形高圧放電灯において、前記始動器は負特性サーミスタと抵抗との直列体がスイッチング素子と並列に接続された第1の並列体を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、外管と口金とを備えてなる外囲器内に始動器と発光管とが収納され、前記始動器と前記発光管とは並列に接続された始動器内蔵形高圧放電灯において、前記始動器はバイメタルスイッチと抵抗とを並列に接続してなる第2の並列体と、負特性サーミスタとスイッチング素子8とを並列に接続してなる第3の並列体とを備えるとともに、前記第2の並列体と前記第3の並列体とは直列に接続されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、外管と口金とを備えてなる外囲器内に始動器と発光管とが収納され、前記始動器と前記発光管とは並列に接続された始動器内蔵形高圧放電灯において、前記始動器は負特性サーミスタと抵抗との直列体がスイッチング素子と並列に接続された第1の並列体と、バイメタルスイッチと抵抗とを並列に接続してなる第2の並列体とを備えるとともに、前記第1の並列体と前記第2の並列体とは直列に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、始動器を構成する第1の並列体において、負特性サーミスタと抵抗とが直列に接続されているので、負特性サーミスタに流れる電流の大きさを抵抗により制御できる。その結果、負特性サーミスタの抵抗値が低下するまでの時間が自由に設定でき、従来の始動器内蔵形高圧放電灯の欠点となっていた、ランプが点灯するまでに数秒以上かかる場合において、スイッチング素子の動作が停止するという誤動作、すなわち前記の誤動作1を防止できる。
【0017】
請求項2の発明によれば、始動器はバイメタルスイッチと並列に抵抗を接続してなる第2の並列体とスイッチング素子8と並列に負特性サーミスタ7を接続してなる第3の並列体とを直列に接続しているので、バイメタルと並列に接続した抵抗の発熱を利用してバイメタルを加熱でき、ランプ再始動時のバイメタルの復帰時間を自由に設定できる。これにより従来の始動器内蔵形高圧放電灯の欠点であった、発光管の温度が充分に下がっていない状態でバイメタル4が閉じて負特性サーミスタ7の抵抗値が低下し、スイッチング素子8の動作が停止するという誤動作、すなわち前記の誤動作2を防止できる。
【0018】
請求項3の発明によれば、始動器は負特性サーミスタと抵抗との直列体がスイッチング素子と並列に接続された第1の並列体と、バイメタルスイッチと抵抗とを並列に接続してなる第2の並列体とを直列に接続しているので、バイメタルと並列に接続した抵抗の発熱を利用してバイメタルを加熱でき、ランプ再始動時のバイメタルの復帰時間を自由に設定できるとともに、負特性サーミスタに流れる電流の大きさを抵抗により制御できる。これにより従来の始動器内蔵形高圧放電灯の欠点であった、発光管の温度が充分に下がっていない状態でバイメタル4が閉じて負特性サーミスタ7の抵抗値が低下し、スイッチング素子の動作が停止するという誤動作、すなわち前記の誤動作2及びランプが点灯するまでに数秒以上かかる場合において、スイッチング素子の動作が停止するという誤動作、すなわち前記の誤動作1の両方を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を図により説明する。図1は本発明の始動器内蔵形高圧放電灯の第1の実施形態を示す回路構成図である。図1において、9は外管と口金とを備えてなる外囲器で、その内部にはその両端部に電極を備えた発光管1が電気導入線a及びbと接続し、固定されている。さらに電気導入線a及びbとの間には発光管1と並列に始動器が接続されている。
【0020】
始動器はスイッチング素子8と並列に、負特性サーミスタ7と抵抗6との直列体が接続された第1の並列体と、該第1の並列体と直列に接続された抵抗5と、該抵抗5と直列に接続されたバイメタルスイッチ4と該バイメタルスイッチ4と直列に接続されたフィラメント抵抗10とから構成されている。ここで、負特性サーミスタとは温度が上がれば抵抗値が低下する素子のことである。例えば、室温25℃では約10KΩであるが250℃では約55Ωであるような特性を持つものが負特性サーミスタとして使用できる。
【0021】
始動器において、抵抗6は負特性サーミスタ7に流れる電流を調整するためのものである。この抵抗6により、負特性サーミスタ7に流れる電流の大きさを制御して自己発熱により負特性サーミスタ7の抵抗値が低下するまでの時間を調整する。これにより、ランプの点灯に数秒以上かかる場合でも、確実にランプを始動させることができる。さらに、抵抗5はスイッチング素子8に流れる電流を調整するためのものである。この抵抗5により、ランプ始動時にスイッチング素子8に流れる電流を制限し、高電圧パルスの高さを調整できる。バイメタルスイッチ4はランプ非点灯時は閉じており、ランプ点灯後は発光管からの熱で開となるように付設されている。これにより、ランプ点灯中は始動器が動作しないので、余分な高電圧パルスの発生を防止できる。
【0022】
図2は本発明の始動器内蔵形高圧放電灯の第2の実施形態を示す回路構成図である。図2において、9は外管と口金とを備えてなる外囲器で、その内部にはその両端部に電極を備えた発光管1が電気導入線a及びbと接続し、固定されている。さらに電気導入線a及びbとの間には発光管1と並列に始動器が接続されている。
【0023】
始動器はスイッチング素子8と並列に負特性サーミスタ7が接続された第3の並列体と、該第3の並列体と直列に接続された抵抗5と、該抵抗5と直列に接続されたバイメタルスイッチ4と抵抗3とを並列に接続してなる第2の並列体と、該第2の並列体と直列に接続されたフィラメント抵抗10とから構成されている。ここで、負特性サーミスタとは温度が上がれば抵抗値が低下する素子のことである。例えば、室温25℃では約10KΩであるが250℃では約55Ωであるような特性を持つものが負特性サーミスタとして使用できる。
【0024】
始動器において、バイメタルスイッチ4と並列に接続する抵抗3は、ランプ点灯中にバイメタルスイッチ4を加熱するためのものである。この抵抗3の働きにより、ランプ再始動時に発光管が充分に冷却され、ランプが始動可能となった状態でバイメタルスイッチ4が復帰するので、ランプを確実に再始動させることができる。さらに、抵抗5はスイッチング素子8に流れる電流を調整するためのものである。この抵抗5により、ランプ始動時にスイッチング素子8に流れる電流を制限し、高電圧パルスの高さを調整できる。バイメタルスイッチ4はランプ非点灯時は閉じており、ランプ点灯後は発光管からの熱で開となるように付設されている。
【0025】
図3は本発明の始動器内蔵形高圧放電灯の第3の実施形態を示す回路構成図である。図3において、9は外管と口金とを備えてなる外囲器で、その内部にはその両端部に電極を備えた発光管1が電気導入線a及びbと接続し、固定されている。さらに電気導入線a及びbとの間には発光管1と並列に始動器が接続されている。
【0026】
始動器はスイッチング素子8と並列に、負特性サーミスタ7と抵抗6との直列体が接続された第1の並列体と、該第1の並列体と直列に接続された抵抗5と、該抵抗5と直列に接続されたバイメタルスイッチ4と抵抗3とを並列に接続してなる第2の並列体と、該第2の並列体と直列に接続されたフィラメント抵抗10とから構成されている。ここで、負特性サーミスタとは温度が上がれば抵抗値が低下する素子のことである。例えば、室温25℃では約10KΩであるが250℃では約55Ωであるような特性を持つものが負特性サーミスタとして使用できる。
【0027】
始動器において、抵抗6は負特性サーミスタ7に流れる電流を調整するためのものである。この抵抗6により、負特性サーミスタ7に流れる電流の大きさを制御して自己発熱により負特性サーミスタ7の抵抗値が低下するまでの時間を調整する。これにより、ランプの点灯に数秒以上かかる場合でも、確実にランプを始動させることができる。
【0028】
始動器において、バイメタルスイッチ4と並列に接続する抵抗3は、ランプ点灯中にバイメタルスイッチ4を加熱するためのものである。この抵抗3の働きにより、ランプの再始動時に発光管が充分に冷却され、始動可能となった状態でバイメタルスイッチ4が復帰するので、ランプを確実に再始動させることがきる。さらに、抵抗5はスイッチング素子8に流れる電流を調整するためのものである。この抵抗5により、ランプの始動時にスイッチング素子8に流れる電流を制限し、高電圧パルスの高さを調整できる。バイメタルスイッチ4はランプの非点灯時は閉じており、ランプの点灯後は発光管からの熱で開となるように付設されている。
【0029】
なお、第1、2及び3のそれぞれの実施形態において、スイッチング素子としてはグロー管、非線形セラミックコンデンサー、バイメタルスイッチあるいは半導体スイッチ等を用いることができる。また、始動器を構成する部品の一部は口金内に配置しても良い。さらに、発光管の始動性を良くするために、発光管に近接して始動補助導体を付設しても良い。始動器において、フィラメント抵抗10は発光管がスローリークを発生した場合に生じる可能性のある安定器に対する過電流負荷を防止するためのものである。安定器に対する過電流負荷を防止するフィラメント抵抗10の動作原理については特開昭55−124941号公報に詳しく述べられている。なお、フィラメント抵抗10は 必ずしも使用しなくて良い。さらに、外管内は真空にすることにより発光管からの熱損失が抑制されるが、窒素ガスあるいはアルゴンガス等の不活性ガスを封入することもできる。
【実施例】
【0030】
次に実施例について説明する。なお、実施例ではスイッチング素子8としてグロー管を使用しているので、以後の説明ではスイッチング素子8はグロー管8として説明する。
【0031】
<実施例1>
ランプの大きさが360Wのセラミックメタルハライドランプの実施例について説明する。
図1において、発光管1は透光性アルミナ管からなり、内部には水銀、始動用希ガス及びメタルハライドが封入されている。外管と口金(図示せず)とを備えてなる外囲器9内には発光管1と並列に、第1の並列体と、抵抗5と、バイメタルスイッチ4と、フィラメント抵抗10とを備えてなる始動器が接続されている。第1の並列体はグロー管8と並列に抵抗6と負特性サーミスタ7との直列体が接続されている。そして、外管内は高真空に保持されている。このランプは高圧水銀灯用のチョーク式安定器と組み合わせて点灯できる。
【0032】
バイメタルスイッチ4はランプ非点灯時には閉状態、ランプ点灯後は開状態となるように付設されている。抵抗5はグロー管8に流れる電流を制御するためのもので、約300Ωの抵抗値を有する。第1の並列体を構成する抵抗6は負特性サーミスタ7に流れる電流を制御するためのもので、約700Ωの抵抗値を有する。負特性サーミスタ7は温度が上がれば抵抗値が小さくなる特性を有し、例えば室温25℃では約10KΩの抵抗値であるが、250℃になると抵抗値は約55Ωに低下する。次にこのランプを400W高圧水銀灯用のチョーク式安定器と組み合わせて点灯した時の、ランプが正常に点灯する場合と点灯しない場合について始動器の動作原理を説明する。
【0033】
<ランプが正常に点灯する場合>
安定器(図示せず)を介して交流電圧が口金端子a及びbに印加されると、スイッチング素子8が動作して、始動器に流れる電流の値はスイッチング素子接点の開閉に応じて増加と減少を繰り返し、その結果チョークからなる安定器(図示せず)の両端に高電圧パルスが発生する。安定器で発生した高電圧パルスは電流導入線a、bを介して発光管両端の電極間に印加される。電源投入時は負特性サーミスタ7の抵抗値は数10kΩあり、ランプが正常な状態ではこの高電圧パルスでランプは点灯する。ランプが点灯すると、発光管からの熱でバイメタルスイッチ4は開状態となり、始動器は電源から切り離され、パルスの発生は停止する。
【0034】
次に実験データの一例を表1に示す。実験に用いたランプは約6000時間点灯後の、始動に1〜4秒を要するやや始動性の悪くなった360Wセラミックメタルハライドランプの発光管を使用した。実験に用いたランプは実施例1及び従来例とは始動器の構成が異なるだけで、発光管は同じものを使用した。また、ランプを点灯するための安定器には400W高圧水銀灯用の200V用チョーク式安定器を使用した。
【0035】
表1は電源投入後、ランプが正常に点灯したかどうかをランプの個数で示している。表1から分かるように、実施例1のランプでは試験した20個のランプ全てが正常に点灯した。これに対して、図4の始動器で構成した従来例のランプでは試験した20個のランプのうち9個はランプが点灯するまでにグロー管8の動作が停止し、正常に点灯しなかった。すなわち、実施例1のランプは始動器の誤動作による不点率が0%であるのに対し、従来例のランプの不点率は45%であった。
【0036】
ランプ点灯後は前記始動器の両端に印加される電圧が発光管1の両端に印加される電圧、すなわちランプ電圧となるので、グロー管8は印加される電圧が低くなり動作は停止する。グロー管8の動作が停止すると高電圧パルスは発生しなくなる。以上のとおり実施例1のランプは、約6000時間点灯した始動に数秒以上を要するランプにおいても、負特性サーミスタ7に流れる電流を抵抗6により調整して負特性サーミスタ7の抵抗値が低下するまでの時間を遅らせているので、ランプを確実に始動させることができる。
【0037】
【表1】

【0038】
<ランプが点灯しない場合>
ランプが点灯しない場合には、電源投入後、安定器を介してグロー管8に電圧が印加され続ける。その結果、グロー管8に並列に接続されている負特性サーミスタ7は電流調整用の抵抗6を介して電流が流れ、自己発熱により抵抗値が低下する。負特性サーミスタ7の抵抗値が低下するとグロー管8に印加される電圧が低下する。電源投入後、ある一定時間経過後、グロー管8にはグロー放電を維持するに必要な電圧が印加されなくなり、グロー管8の動作は停止する。グロー管8の動作が停止すると高電圧パルスは発生しなくなる。
【0039】
ランプが点灯しない場合は、バイメタルスイッチ4は閉じたままの状態に維持されるので、フィラメント抵抗10、グロー管8への電流制限用の抵抗5、負特性サーミスタ7への電流調整用の抵抗6、負特性サーミスタ7およびグロー管8からなる始動器に電流は流れ続ける。しかし、抵抗5、抵抗6及び負特性サーミスタ7を介して電流は流れるので、電流値は約0.1A程度の値に規制される。これにより、無駄な電力消費が抑えられる。
【0040】
以上のように、実施例1の始動器内蔵形高圧放電灯はランプが正常に点灯しない場合、電源投入後一定時間内に高電圧パルスは自動的に停止するので、寿命末期に不点となったランプを交換する際に感電の恐れがなく、安全性の高いランプである。
【0041】
<実施例2>
ランプの大きさが360Wのセラミックメタルハライドランプの実施例について説明する。図2において、発光管1は透光性アルミナ管からなり、内部には水銀、始動用希ガス及びメタルハライドが封入されている。外管と口金(図示せず)とを備えてなる外囲器9内には発光管1と並列に、バイメタルスイッチ4と抵抗3とを並列に接続した第2の並列体と、グロー管8と負特性サーミスタ7とを並列に接続した第3の並列体と、抵抗5とを備えてなる始動器が接続されている。そして、外管内は高真空に保持されている。このランプは高圧水銀灯用のチョーク式安定器と組み合わせて点灯できる。
【0042】
バイメタルスイッチ4はランプ非点灯時には閉状態、ランプ点灯後は開状態となるように付設されている。抵抗3はバイメタルスイッチ4を加熱するためのもので、約10KΩの抵抗値を有する。抵抗5はグロー管8に流れる電流を制御するためのもので、約300Ωの抵抗値を有する。負特性サーミスタ7は温度が上がれば抵抗値が小さくなる特性を有し、例えば室温25℃では約10KΩの抵抗値であるが、250℃になると抵抗値は約55Ωに低下する。次にこのランプを400W高圧水銀灯用のチョーク式安定器と組み合わせて点灯した時の、ランプが正常に点灯する場合と点灯しない場合について始動器の動作原理を説明する。
【0043】
<ランプが正常に点灯する場合>
安定器(図示せず)を介して交流電圧が口金端子a及びbに印加されると、スイッチング素子8が動作して、始動器に流れる電流の値はスイッチング素子接点の開閉に応じて増加と減少を繰り返し、その結果チョークからなる安定器(図示せず)の両端に高電圧パルスが発生する。安定器で発生した高電圧パルスは電流導入線a、bを介して発光管両端の電極間に印加される。電源投入時は負特性サーミスタ7の抵抗値は数10kΩあり、ランプが正常な状態ではこの高電圧パルスでランプは点灯する。
【0044】
ランプが点灯すると、発光管からの熱でバイメタルスイッチ4が開状態となり、始動器には抵抗3を介して電流が流れつづける。しかしながら、抵抗3が前記始動器に流れる電流を20mA程度の微少なものに制限する。ゆえに、ランプ点灯中に始動器で消費される電力は2〜3Wであり、効率にはほとんど影響しない。ランプ点灯後は始動器にはランプ両端の電極間に加わる電圧、すなわちランプ電圧が印加されることになるので、もはやグロー管8は動作しなくなり、高電圧パルスは停止する。
【0045】
ランプ点灯中は、バイメタルスイッチ4は高温になった発光管1と抵抗3との両方からの輻射熱を受ける。そのため、ランプ消灯時のバイメタルスイッチ4の冷却速度は抵抗3を有しない従来ランプに比べて遅くなる。一旦ランプを消灯して次に点灯する場合、すなわち、ランプ再始動時に抵抗3を有しない従来ランプではバイメタルスイッチ4の温度が下がり、接点が閉となったとき始動器は動作するが、発光管の温度が充分下がっていない可能性がある。発光管の温度が充分下がっていないと発光管の始動電圧が高く、ランプが確実に再始動しない。
【0046】
ランプが再始動しないと始動器には電圧が印加されたままになるので、負特性サーミスタは自己発熱で温度が上がり、抵抗値が小さくなる。負特性サーミスタの抵抗値が小さくなるとその部分での電圧降下が小さくなり、グロー管8に加わる電圧も小さくなる。グロー管8に加わる電圧が小さくなるとグロー管8は動作を停止し、高電圧パルスの発生は停止する。高電圧パルスの発生が停止するとランプは点灯しない。
【0047】
これに対して、本発明の実施例2のランプでは、前述のとおりランプ消灯時のバイメタルスイッチ4の冷却速度が遅いので、バイメタルスイッチ4の温度が下がり接点が閉となったとき、発光管の温度も充分下がり始動電圧も低くなっているのでランプは確実に再始動できる。
【0048】
次に実験データの一例を表2に示す。実験に用いたランプは約6000時間点灯したランプから取り出した発光管を使用した。すなわち、実験に用いたランプは実施例2及び従来例とは始動器の構成が異なるだけで、発光管は同じものを使用した。また、ランプを点灯するための安定器には400W高圧水銀灯用の200V用チョーク式安定器を使用した。表2はランプを安定に点灯させた状態から電源を切ってランプを消灯させ、直ちに電源を入れ、ランプが再始動するかどうかをランプの個数で示している。
【0049】
【表2】

【0050】
表2において実施例2のランプは試験個数20個のランプ全てが正常に再始動できたことを示している。これに対して、抵抗3を備えていない従来例のランプでは試験個数20個のうち4個が再始動しなかった。すなわち、実施例2のランプは始動器の誤動作による再始動時の不点率が0%であるのに対し、従来例のランプの不点率は20%であった。以上のように、実施例2の始動器内蔵形高圧放電灯は、確実にランプを再始動させることができる。
【0051】
<ランプが正常に点灯しない場合>
ランプが正常に点灯しない場合には、電源投入後、安定器を介してグロー管8に電圧が印加され続ける。その結果、グロー管8に並列に接続されている負特性サーミスタ7には電流が流れ、負特性サーミスタ7は自己発熱により抵抗値が低下する。負特性サーミスタの抵抗値が低下するとグロー管8に印加される電圧も低下する。電源投入後、ある一定時間経過後、グロー管8にはグロー放電を維持するに必要な電圧が印加されなくなり、グロー管8の動作は停止する。グロー管8の動作が停止すると高電圧パルスは発生しなくなる。
【0052】
ランプが正常に点灯しない場合は、バイメタルスイッチ4は閉じたままの状態に維持されるので、フィラメント抵抗10、グロー管8への電流制限用の抵抗5、負特性サーミスタ7およびグロー管8からなる始動器に電流は流れ続ける。しかし、抵抗5及び負特性サーミスタ7を介して電流は流れるので、電流値は約0.3A〜0.4Aの値に規制される。これにより、無駄な電力消費が抑えられる。
【0053】
以上のように、実施例2の始動器内蔵形高圧放電灯はランプが正常に点灯しない場合、電源投入後一定時間内に高電圧パルスは自動的に停止するので、寿命末期に不点となったランプを交換する際に感電の恐れがなく、安全性の高いランプである。
【0054】
<実施例3>
ランプの大きさが360Wのセラミックメタルハライドランプの実施例について説明する。図3において、発光管1は透光性アルミナ管からなり、内部には水銀、始動用希ガス及びメタルハライドが封入されている。外管と口金(図示せず)とを備えてなる外囲器9内にはスイッチング素子8と並列に、負特性サーミスタ7と抵抗6との直列体が接続された第1の並列体と抵抗5と、バイメタルスイッチ4と抵抗3とを並列に接続した第2の並列体とフィラメント抵抗10とを備えてなる始動器が接続されている。そして、外管内は高真空に保持されている。このランプは高圧水銀灯用のチョーク式安定器と組み合わせて点灯できる。
【0055】
バイメタルスイッチ4はランプ非点灯時には閉状態、ランプ点灯後は開状態となるように付設されている。抵抗3はバイメタルスイッチ4を加熱するためのもので、約10KΩの抵抗値を有する。抵抗5はグロー管8に流れる電流を制御するためのもので、約300Ωの抵抗値を有する。抵抗6は負特性サーミスタ7に流れる電流を制御するためのもので、約700Ωの抵抗値を有する。負特性サーミスタ7は温度が上がれば抵抗値が小さくなる特性を有し、例えば室温25℃では約10KΩの抵抗値であるが、250℃になると抵抗値は約55Ωに低下する。次にこのランプを400W高圧水銀灯用のチョーク式安定器と組み合わせて点灯した時の、ランプが正常に点灯する場合と点灯しない場合について始動器の動作原理を説明する。
【0056】
<ランプが正常に点灯する場合>
安定器(図示せず)を介して交流電圧が口金端子a及びbに印加されると、スイッチング素子8が動作して、始動器に流れる電流の値はスイッチング素子接点の開閉に応じて増加と減少を繰り返し、その結果チョークからなる安定器(図示せず)の両端に高電圧パルスが発生する。安定器で発生した高電圧パルスは電流導入線a、bを介して発光管両端の電極間に印加される。電源投入時は負特性サーミスタ7の抵抗値は数10kΩあり、ランプが正常な状態ではこの高電圧パルスでランプは点灯する。
【0057】
ランプが点灯すると、発光管からの熱でバイメタルスイッチ4が開状態となり、始動器には抵抗3を介して電流が流れつづける。しかしながら、抵抗3が前記始動器に流れる電流を20mA程度の微少なものに制限する。ゆえに、ランプ点灯中に始動器で消費される電力は2〜3Wであり、効率にはほとんど影響しない。ランプ点灯後は前記始動器の両端に印加される電圧が発光管1の両端に印加される電圧、すなわちランプ電圧となるので、グロー管は印加される電圧が低くなり動作は停止する。グロー管8の動作が停止すると高電圧パルスは発生しなくなる。
【0058】
実施例3のランプは、約6000時間点灯し、始動に数秒以上を要するランプにおいても、負特性サーミスタ7に流れる電流を電流調整用抵抗6により調整して負特性サーミスタ7の抵抗値が低下するまでの時間を遅らせているので、ランプを確実に始動できる。さらに、実施例3のランプでは、前述のとおりランプ消灯時のバイメタルスイッチ4の冷却速度が遅いので、ランプの再始動時にバイメタルスイッチ4の温度が下がり接点が閉となった時、発光管の温度も充分下がり始動電圧も低くなっているのでランプは確実に再始動できる。
【0059】
次に実験データの一例を表3及び表4に示す。実験に用いたランプは約6000時間点灯したランプから取り外した発光管を使用した。実施例3のランプと従来例のランプとは始動器の構成が異なるだけで、発光管は同じものを使用した。この発光管は約6000時間の点灯により始動に1〜4秒を要するやや始動性の悪くなったものである。また、ランプを点灯するための安定器には400W高圧水銀灯用の200V用チョーク式安定器を使用した。
【0060】
表3は電源投入後、ランプが正常に点灯したかどうかをランプの個数で示している。表3から分かるように、実施例3のランプでは試験した20個のランプ全てが正常に点灯した。これに対して、図4の始動器で構成した従来例のランプでは試験した20個のうち9個はランプが点灯するまでにグロー管の動作が停止し、正常に点灯しなかった。
【0061】
次に同じランプを用いて、ランプを安定に点灯させた状態から電源を切ってランプを消灯させ、直ちに電源を入れ、ランプが再始動するかどうかの再始動試験を行った。表4に再始動試験の結果を示す。
【0062】
表4において実施例3のランプは試験個数20個のランプ全てが正常に再始動できたことを示している。これに対して、抵抗3を備えていない従来例ランプでは試験個数20個のうち4個が再始動しなかった。すなわち、実施例3のランプは始動器の誤動作による再始動時の不点率が0%であるのに対し、従来例のランプの不点率は20%であった。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
以上のように、実施例3の始動器内蔵形高圧放電灯は、始動に数秒以上を要するランプにおいても、確実にランプを始動させることができるとともに、確実にランプを再始動させることができる。すなわち、前述の始動器に起因する誤動作1及び誤動作2の両方を防止することができる。
【0066】
<ランプが点灯しない場合>
ランプが点灯しない場合には、電源投入後、安定器を介してグロー管8に電圧が印加され続ける。その結果、グロー管8に並列に接続されている負特性サーミスタ7は電流調整用の抵抗6を介して電流が流れ、自己発熱により抵抗値が低下する。負特性サーミスタ7の抵抗値が低下するとグロー管8に印加される電圧も低下する。電源投入後、ある一定時間経過後、グロー管8にはグロー放電を維持するに必要な電圧が印加されなくなり、グロー管8の動作は停止する。グロー管8の動作が停止すると高電圧パルスは発生しなくなる。
【0067】
ランプが点灯しない場合は、バイメタルスイッチ4は閉じたままの状態に維持されるので、フィラメント抵抗10、グロー管8への電流制限用の抵抗5、負特性サーミスタ7への電流調整用の抵抗6、負特性サーミスタ7およびグロー管8からなる始動器に電流は流れ続ける。しかし、抵抗5、抵抗6及び負特性サーミスタ7を介して電流は流れるので、電流値は約0.1A程度の値に規制される。これにより、無駄な電力消費が抑えられる。
【0068】
以上のように、実施例3の始動器内蔵形高圧放電灯はランプが点灯しない場合、電源投入後一定時間内に高電圧パルスは自動的に停止するので、寿命末期に不点となったランプを交換する際に感電の恐れがなく、安全性の高いランプである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる始動器内蔵形高圧放電灯を示す回路構成図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態にかかる始動器内蔵形高圧放電灯を示す回路構成図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態にかかる始動器内蔵形高圧放電灯を示す回路構成図である。
【図4】従来の始動器内蔵形高圧放電灯の一例を示す回路構成図である。
【符号の説明】
【0070】
1 発光管
3 抵抗
4 バイメタルスイッチ
5 抵抗
6 抵抗
7 負特性サーミスタ
8 スイッチング素子
9 外囲器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管と口金とを備えてなる外囲器内に始動器と発光管とが収納され、前記始動器と前記発光管とは並列に接続された始動器内蔵形高圧放電灯において、前記始動器は負特性サーミスタと抵抗との直列体がスイッチング素子と並列に接続された第1の並列体を備えることを特徴とする始動器内蔵形高圧放電灯。
【請求項2】
外管と口金とを備えてなる外囲器内に始動器と発光管とが収納され、前記始動器と前記発光管とは並列に接続された始動器内蔵形高圧放電灯において、前記始動器はバイメタルスイッチと抵抗とを並列に接続してなる第2の並列体と、負特性サーミスタとスイッチング素子とを並列に接続してなる第3の並列体とを備えるとともに、前記第2の並列体と前記第3の並列体とは直列に接続されていることを特徴とする始動器内蔵形高圧放電灯。
【請求項3】
外管と口金とを備えてなる外囲器内に始動器と発光管とが収納され、前記始動器と前記発光管とは並列に接続された始動器内蔵形高圧放電灯において、前記始動器は負特性サーミスタと抵抗との直列体がスイッチング素子と並列に接続された第1の並列体と、バイメタルスイッチと抵抗とを並列に接続してなる第2の並列体とを備えるとともに、前記第1の並列体と前記第2の並列体とは直列に接続されていることを特徴とする始動器内蔵形高圧放電灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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