説明

媒体処理装置

【課題】被処理媒体に対する少なくとも二種類の処理の両方を、精度よく安価に行うことが可能な装置を提供する。
【解決手段】プロッタは、所定の方向に搬送される紙に対して、それぞれ異なる処理を行うカッター1及びペン2と、紙を介してカッター1及びペン2に対向する位置に設けられ、カッター1及びペン2による処理を受ける紙を支持する受け部8とを備えている。カッター1とペン2とは、紙の搬送方向に交差する方向においてそれぞれ異なるライン上に位置するように配置されている。したがって、一方の加工具の処理後の受け部8の状態に、他方の加工具が影響を受けることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理媒体に対して複数の処理を行う媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等のシート状の被処理媒体に作画及び切断等の処理を行う媒体処理装置として、非特許文献1に示すカッティングプロッタAC−800(武藤工業社製)及び非特許文献2に示すカッティングプロッタCE−5000(グラフテック社製)がある。非特許文献1に記載のカッティングプロッタAC−800は、受け部として設けられたゴムローラに対向する位置にペンとカッターとを設け、当該ゴムローラを、シートを搬送するローラと同期させて回転させながら作画及び切断を行うものである。非特許文献2に記載のカッティングプロッタCE−5000は、受け部として、柔軟性があり、カッターの回転及び追従運動がしやすい起毛材からなるものを用いて、ペン及びカッターによる処理を行うものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“カッティングプロッタAC−800”、[online]、[2011年6月3日検索]、インターネット<http://www.mutoh.co.jp/printer_plotter/~plotter/ac800/index.html>
【非特許文献2】“カッティングプロッタCE−5000”、[online]、[2011年6月3日検索]、インターネット<http://www.graphtec.co.jp/site_cutting/gl/ce5000/spec.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記非特許文献1及び2等の装置では、被処理媒体に対して少なくとも二種類の処理を行うために、作画具又は切削加工具を1つのキャリッジに搭載して備えている。このような媒体処理装置においては、被処理媒体を搬送しながら、この搬送方向に交差する方向にキャリッジを往復移動させ、搬送される被処理媒体に作画具又は切削加工具を押し付けることによって、被処理媒体に作画及び切断処理を行う。このとき、作画具及び切削加工具の各加工具に対向する位置には受け部が配置されており、受け部が被処理媒体を介して各加工具に接触することによって、その処理を支持する。
【0005】
作画具及び切削加工具の共通の受け部材として単純にゴム板を配置した場合、カッターの回転及び追従運動が阻害されるためカット動作の引っ掛かり、カット中の加工具の飛び跳ね等によりカット精度が悪化し,カッター刃の耐久性が低下する。また、カッターで傷ついたゴムローラ上においてペンによる作画を行うことになり、作画性能が悪化する。
【0006】
非特許文献1に記載のプリンタープロッタにおいては、各加工具の受け部としてゴムローラを用いて、ゴムローラを被処理媒体の搬送ローラと同期させて回転させることによって、カッターの回転及び追従運動阻害の問題の改善を図っている。しかしながら、カッターで傷ついたゴムローラ上においてペンによる作画を行う点では違いがないため、作画性能が悪化する。さらに、カッターで傷ついたゴムローラを交換する必要があり、コスト高を招くという問題もある。
【0007】
また、非特許文献2に記載のカッティングプロッタは、受け部として柔軟性のある起毛材を用いているので、カッターの回転及び追従運動はしやすい。しかしながら、薄い被処理媒体を用いた場合等には、作画する際に穴を開けてしまう、被処理媒体の搬送が円滑に行われずにジャムを生じさせてしまう等の作画精度を低下させる問題がある。
【0008】
このように、従来の作画及び切断用の媒体処理装置においては、作画及び切断の両方を精度よく行うことは困難であり、これを改善し、作画及び切断の両処理を精度よく行うことが可能な装置が望まれていた。本発明はこれら問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被処理媒体に対して少なくとも二種類の処理を行い、その両方の処理を精度よく行うことが可能な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る媒体処理装置は、所定の方向に搬送される媒体に対して、当該媒体の搬送方向に交差する方向に往復移動しながら、それぞれ異なる処理を行う第1の処理手段及び第2の処理手段と、前記媒体を介して前記第1の処理手段及び前記第2の処理手段に対向する位置に設けられ、前記第1の処理手段及び前記第2の処理手段による処理を受ける前記媒体を支持する支持手段とを備え、前記第1の処理手段と前記第2の処理手段とを、前記媒体の搬送方向に交差する方向においてそれぞれ異なるライン上に位置するように配置したことを特徴としている。
【0010】
前記の構成によれば、第1の処理手段と第2の処理手段とは、媒体の搬送方向に交差する方向において、それぞれ異なるライン上に位置するように、オフセットして配置されている。したがって、それぞれが媒体の搬送方向に交差する方向に往復移動しながら媒体を処理するときに、第1の処理手段と第2の処理手段とが同一ライン上を通過することがない。そのため、一方の処理後の支持手段の表面状態に影響されることなく他方の処理を行うことができる。これにより、第1の処理手段及び第2の処理手段の両方の処理を精度良く行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る媒体処理装置において、前記支持手段は、前記媒体を介して前記第1の処理手段に対向する位置に設けられた第1の支持部と、前記媒体を介して前記第2の処理手段に対向する位置に設けられた第2の支持部とをさらに備えていてもよい。
【0012】
前記の構成によれば、第1の処理手段の支持手段として第1の支持部を設け、第2の処理手段の支持手段として第2の支持部を設けるので、第1の処理手段及び第2の処理手段に対してそれぞれ異なる受け部を設けることが可能であり、各処理に適した支持手段の材料を選択することによって、各処理を精度よく行うことができる。また、各処理に適した支持手段の材料を選択するので、各処理手段の耐久性や、支持手段自身の耐久性が向上し、これらの交換コストを低減することができる。
【0013】
さらに、本発明に係る媒体処理装置において、前記第1の処理手段及び前記第2の処理手段のうち、一方が前記媒体に作画するものであり、他方が前記媒体を切断するものであることが好ましい。
【0014】
前記の構成によれば、媒体に作画する作画手段と媒体を切断する切断手段との両方を備えており、これらがオフセットして保持手段に保持されているので、例えば切断手段による切断処理後の支持手段の表面状態に、作画手段による作画処理が影響を受けないので、作画処理及び切断処理の両方を精度良く行うことができる。
【0015】
また、本発明に係る媒体処理装置は、前記第1の処理手段及び前記第2の処理手段を保持する保持手段をさらに備え、前記保持手段は、前記第1の処理手段と前記第2の処理手段とを、一方の処理手段と上記媒体との距離を、他方の処理手段と上記媒体との距離に比べて、近づけたり遠ざけたりして切替可能に保持することが好ましい。
【0016】
前記の構成によれば、二種類の処理手段を共に保持したままで、目的の処理を行なう方の処理手段を媒体に近づけて、処理を行なうことができる。すなわち、処理毎に処理手段を持ち替える必要がなく、処理手段の切替のために装置を停止することがないので、処理時間を短縮することができる。さらに、1つの保持手段が各処理手段と媒体との距離を変更するので、各処理手段と媒体との位置調整を簡易に行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る媒体処理装置において、前記保持手段は、前記第1の処理手段及び前記第2の処理手段のうち、前記媒体への押圧力がより大きいほうをキャリッジにより近接して保持することが好ましい。
【0018】
前記の構成によれば、例えば媒体に対する押圧力が第2の処理手段よりも第1の処理手段の方が大きい場合、第1の処理手段から保持手段までの距離が、第2の処理手段から保持手段までの距離よりも近くなるように、保持手段が第1の処理手段及び第2の処理手段を保持する。これにより、処理手段に確実に所望の押圧力を加えることが可能であり、精度良く処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る媒体処理装置は、所定の方向に搬送される媒体に対して、当該媒体の搬送方向に交差する方向に往復移動しながら、それぞれ異なる処理を行う第1の処理手段及び第2の処理手段と、前記媒体を介して前記第1の処理手段及び前記第2の処理手段に対向する位置に設けられ、前記第1の処理手段及び前記第2の処理手段による処理を受ける前記媒体を支持する支持手段とを備え、前記第1の処理手段と前記第2の処理手段とを、前記媒体の搬送方向に交差する方向においてそれぞれ異なるライン上に位置するように配置したので、一方の処理手段の処理後の支持手段の表面状態に、他方の処理手段が影響を受けることなく、その両方の処理を精度よく行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るプロッタのヘッド部分を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るプロッタを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図1及び2を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るプロッタ(媒体処理装置)20のヘッド10部分を示す模式図であり、図2は、本発明の一実施形態に係るプロッタ20を示す模式図である。図1及び2に示すように、被処理媒体に作画及び切断処理を行う作画及び切断の両用のプロッタ20はヘッド10を備えている。ヘッド10は、カッター(第1の処理手段)1、ペン(第2の処理手段)2、カッター保持具3、ペン保持具4、及びキャリッジ(保持手段)5を備えている。ヘッド10は、プロッタ20において、カッター受け部(第1の支持部)6及びペン受け部(第2の支持部)7からなる受け部(支持手段)8に対向する位置に設けられている。
【0022】
プロッタ20は、載置台(図示せず)に支持された状態で搬送される被処理媒体上において、その搬送方向に交差する方向にヘッド10を往復移動させることによって、被処理媒体を加工処理する。ヘッド10は、図2に示すプロッタ20の長手方向に平行に被処理媒体上を走査し、被処理媒体はヘッド10の走査方向に交差する方向に搬送される。プロッタ20によって加工処理される被処理媒体としては、プロッタ20において搬送移動しながら処理されるため、シート状の媒体であることが好ましく、例として、紙等が挙げられる。なお、本発明に係る媒体処理装置が対象とする媒体は、例えば、型紙用及び段ボール等の紙、樹脂板等が挙げられる。本実施形態においては、被処理媒体として紙(生地;図示せず)を用いた場合を例として説明する。
【0023】
ヘッド10は、図1に示すように、プロッタ20において搬送される紙に対向する位置において、矢印Aの走査方向に往復移動する。被処理媒体である紙は、カッター1及びペン2と、受け部8との間を通過するように搬送される。なお、図1においては、説明の便宜上、紙を搬送していない状態のヘッド10近傍の状態を示している。ヘッド10においてキャリッジ5は、カッター保持具3及びペン保持具4を介してカッター1及びペン2を保持する。
【0024】
カッター保持具3は、紙に対してカッター1の距離を近づけたり遠ざけたりすることによって、その距離を変更し得るようにキャリッジ5に取り付けられており、その距離は距離変更手段(図示せず)によって変更され得る。紙に対するカッター1の距離を変更することによって、カッター1を紙に近づけ、さらに押し付けて紙を切断し、カッター1を紙から遠ざけて紙の切断を中断するというように、切断処理を制御することができる。すなわち、カッター1を昇降させることにより紙に対するカッター1の距離を変更させつつ、ヘッド10の移動に伴って紙上においてカッター1を移動させることによって、所望の形状に紙を切断することができる。
【0025】
同様に、ペン保持具4は、紙に対してペン2の距離を近づけたり遠ざけたりすることによって、その距離を変更し得るようにキャリッジ5に取り付けられており、その距離は距離変更手段(図示せず)によって変更され得る。紙に対するペン2の距離を変更することによって、ペン2を紙に近づけ、さらに押し付けて紙に作画し、ペン2を紙から遠ざけて紙への作画を中断するというように、作画処理を制御することができる。すなわち、ペン2を昇降させることにより紙に対するペン2の距離を変更させつつ、ヘッド10の移動に伴って紙上においてペン2を移動させることによって、紙に所望の形状を作画することができる。
【0026】
本実施形態においては、プロッタ20を作画及び切断の両用の複合装置を例として説明したが、カッター1及びペン2の替わりに他の加工具をキャリッジ5に保持させて同様に制御することによって、他の複合処理を行う装置として提供することもできる。また、キャリッジ5に対するカッター1とペン2との位置を入れ替えても、同様の処理が可能である。
【0027】
プロッタ20においては、作画手段としてペン2を用いたが、被処理媒体である紙に適切に作画できれば他の作画手段を用いることも可能であり、例えば、シャープペンシル、鉛筆等も好適に利用可能である。同様に、カッター1の代わりに、紙等の媒体を適切に切断し得る他の切断手段を用いても良く、例えば、樹脂の発泡体や板等を切削する際にはエンドミルを使用してもよい。
【0028】
カッター1及びペン2による処理は、受け部8によって支持されている。特に、カッター1による処理は、カッター受け部6により支持されることによって、紙に対する適切な処理を可能にしている。カッター受け部6は、カッター1に対向する位置に、カッター1の移動範囲(ヘッド10の往復移動範囲)に亘って設けられている。プロッタ20において搬送される紙は、カッター受け部6上でありかつカッター1の直下を通過するときに、紙に近づくように降下したカッター1に接触し、カッター1が押し付けられることによって切断される。
【0029】
同様に、ペン2による処理は、ペン受け部7により支持されることによって、紙に対する適切な処理を可能にしている。ペン受け部7は、ペン2に対向する位置に、ペン2の移動範囲(ヘッド10の往復移動範囲)に亘って設けられている。プロッタ20において搬送される紙は、ペン受け部7上でありかつペン2の直下を通過するときに、紙に近づくように降下したペン2に接触し、ペン2が押し付けられることによって作画される。
【0030】
プロッタ20において、カッター1による処理とペン2による処理とはそれぞれ独立して制御され得る。したがって、ペン2を紙上に降下させて走査し、作画した後に、ペン2を上昇させ、次いでカッター1を紙上に降下させて、ペン2により作画された形状にカッター1を走査して切断することができる。また、各加工具に上述したのと逆の動作をさせてもよい。
【0031】
ここでキャリッジ5は、カッター1とペン2とを、一方の加工具と紙との距離を、他方の加工具と紙との距離に比べて、近づけたり遠ざけたりして切替可能に保持している。このとき、距離の変更は、上述した距離変更手段(図示せず)により行われる。さらに、プロッタ20は、キャリッジ5と紙との距離を変更する上下位置制御手段(図示せず)を備えていてもよい。キャリッジ5に保持されたカッター1又はペン2と紙との距離の変更と、キャリッジ5と紙との距離の変更とを組み合わせることによって、加工具の切替を容易かつ精確に行うことができる。
【0032】
カッター1とペン2とは、紙の搬送方向に交差する方向、すなわちヘッド10の走査方向においてそれぞれ異なるライン上に位置するようにキャリッジ5に保持されている。したがって、ヘッド10の往復移動時に、カッター1とペン2とが同一ライン上を通過することがない。
【0033】
プロッタ20は、カッター1及びペン2を、紙を介して受け部8に押し付けながら移動させることによって、紙を切断及び作画する。そのため、カッター1及びペン2を往復移動させた後、受け部8上には、カッター1又はペン2の押圧により傷が生じることがある。このとき、例えばカッター1により傷が生じた受け部8上を作画中のペン2が通過すると、作画動作の引っ掛かり等が生じ、作画精度が低下してしまう。
【0034】
プロッタ20においては、上述したように、ヘッド10の往復移動時に、カッター1とペン2とが同一ライン上を通過することがないので、一方の処理後の受け部8の表面状態に影響されることなく他方の処理を行うことができる。すなわち、例えばカッター1により傷がついたカッター受け部6上を、作画中のペン2が通過することがなく、ペン2の作画精度を低下させることがない。
【0035】
さらに、プロッタ20においては、カッター1に対向する位置にカッター受け部6を設け、ペン2に対向する位置にペン受け部7を設けており、カッター1及びペン2に対してそれぞれ異なる受け部8を設けることができる。したがって、各処理に適した受け部8の材料を選択することによって、各処理を精度よく行うことができる。すなわち、加工具による処理の種類に応じて、最適な受け部8を下敷きとして処理を行うことができる。
【0036】
例えば、カッター受け部6として、カッター1により傷が生じることを防止するために、起毛材からなる表面を有するものを用い、ペン受け部7として、ペンによる被処理媒体の破損を防止するために、ゴム状の板を用いるというように、各処理に適した受け部8を適宜選択することができる。これにより、カッター1による切断とペン2による作画との両方を精度よく行うことができる。さらに、各処理により破損しづらいものを受け部8の材料として選択することによって、その交換コストを削減することができる。また、各加工具を破損させづらいものを受け部8の材料として選択することによって、加工具の交換コストを削減することもできる。
【0037】
また、カッター1の移動範囲に対向する位置にカッター受け部6を設け、ペン2の移動範囲に対向する位置にペン受け部7を設けているので、加工具の切替に応じて受け部8を移動させたり、加工具を移動させたりする必要がない。すなわち、簡易な装置構成で、所望の処理毎に最適な受け部8上において所望の処理を行うことができる。
【0038】
ここで、カッター受け部6としては、上述した起毛材表面を有するもの以外にも、スポンジ等を好適に利用可能である。また、ペン受け部7として、上述したゴム状の板以外にも、樹脂シート等を好適に利用可能である。
【0039】
本実施形態においては、カッター1及びペン2を備える作画及び切断の両用のプロッタ20を例として説明したが、プロッタにカッター1及びペン2に加えて、さらに他の加工具を搭載し、2以上の処理を行う複合装置としてもよい。この場合、複数の加工具のそれぞれを、その走査方向において異なるライン上にオフセットしてキャリッジに保持させればよい。
【0040】
また、キャリッジ5は、カッター1及びペン2のうち、紙への押圧力がより大きくなる方を、自手段により近接するように保持してもよい。本実施形態においては、カッター1の切断時の紙への押圧力が、ペン2の作画時の紙への押圧力よりも大きくなるため、カッター1からキャリッジ5までの距離が、ペン2からキャリッジ5までの距離よりも短くなるように設ける。また、キャリッジ5は、カッター1のように、より高い加工精度が求められる加工具を、他の加工具よりも自身に近接させて保持させてもよい。このように、紙への押圧力が高い加工具や、より高い加工精度が求められる加工具を、他の加工具よりもキャリッジ5に近接して保持させることによって、加工具に確実に所望の押圧力を加えることが可能であり、精度良く処理を行うことができる。
【0041】
<付記事項>
以上のように、本発明に係るプロッタ20の一実施形態は、所定の方向に搬送される紙に対して、紙の搬送方向に交差する方向に往復移動しながら、それぞれ異なる処理を行うカッター1及びペン2と、紙を介してカッター1及びペン2に対向する位置に設けられ、カッター1及びペン2による処理を受ける紙を支持する受け部8とを備え、カッター1及びペン2を、紙の搬送方向に交差する方向においてそれぞれ異なるライン上に位置するように配置する。
【0042】
前記の構成によれば、カッター1及びペン2とは、紙の搬送方向に交差する方向において、それぞれ異なるライン上に位置するようにオフセットして配置されているので、それぞれが、紙の搬送方向に交差する方向に往復移動しながら紙を処理するときに、カッター1とペン2とが同一ライン上を通過することがない。したがって、一方の処理後の受け部8の表面状態に影響されることなく他方の処理を行うことができる。これにより、カッター1及びペン2の両方の処理を精度良く行うことができる。
【0043】
また、プロッタ20において、受け部8は、紙を介してカッター1に対向する位置に設けられたカッター受け部6と、紙を介してペン2に対向する位置に設けられたペン受け部7とをさらに備えていてもよい。
【0044】
前記の構成によれば、カッター1の受け部としてカッター受け部6を設け、ペン2の受け部としてペン受け部2を設けるので、カッター1及びペン2に対してそれぞれ異なる受け部を設けることが可能であるので、各処理に適した受け部の材料を選択することによって、各処理を精度よく行うことができる。また、各処理に適した受け部8の材料を選択するので、各加工具の耐久性や、受け部8自身の耐久性が向上し、これらの交換コストを低減することができる。
【0045】
さらに、プロッタ20において、カッター1及びペン2のうち、一方が紙に作画するものであり、他方が紙を切断するものであることが好ましい。このように、紙に作画するペン2と紙を切断するカッター1との両方を備えており、これらがオフセットしてキャリッジに保持されているので、例えばカッター1による切断処理後の受け部8の表面状態に、ペン2による作画処理が影響を受けないので、作画処理及び切断処理の両方を精度良く行うことができる。
【0046】
また、プロッタ20は、カッター1及びペン2を保持するキャリッジ5をさらに備え、キャリッジ5は、カッター1とペン2とを、一方の加工具と紙との距離を、他方の加工具と紙との距離に比べて、近づけたり遠ざけたりして切替可能に保持することが好ましい。
【0047】
前記の構成によれば、二種類の加工具を共に保持したままで、目的の処理を行う方の加工具を紙に近づけて、処理を行うことができる。すなわち、処理毎に加工具を持ち替える必要がなく、加工具の切替のために装置を停止することがないので、処理時間を短縮することができる。さらに、1つのキャリッジが各加工具と紙との距離を変更するので、各加工具と紙との位置調整を簡易に行うことができる。
【0048】
また、プロッタ20において、キャリッジ5は、カッター1及びペン2のうち、紙への押圧力がより大きいほうをキャリッジ5により近接して保持することが好ましい。この場合、紙に対する押圧力がペン2よりもカッター1の方が大きいので、カッター1からキャリッジ5までの距離が、ペン2からキャリッジ5までの距離よりも近くなるように、キャリッジ5がカッター1及びペン2を保持する。これにより、加工具に確実に所望の押圧力を加えることが可能であり、かつ精度良く処理を行うことができる。
【0049】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、媒体に対して少なくとも二種類の処理を行う種々の媒体処理装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 カッター(第1の処理手段)
2 ペン(第2の処理手段)
3 カッター保持具
4 ペン保持具
5 キャリッジ(保持手段)
6 カッター受け部(第1の支持部)
7 ペン受け部(第2の支持部)
8 受け部(支持手段)
10 ヘッド
20 プロッタ(媒体処理装置)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に搬送される媒体に対して、当該媒体の搬送方向に交差する方向に往復移動しながら、それぞれ異なる処理を行う第1の処理手段及び第2の処理手段と、
前記媒体を介して前記第1の処理手段及び前記第2の処理手段に対向する位置に設けられ、前記第1の処理手段及び前記第2の処理手段による処理を受ける前記媒体を支持する支持手段とを備え、
前記第1の処理手段と前記第2の処理手段とを、前記媒体の搬送方向に交差する方向においてそれぞれ異なるライン上に位置するように配置したことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記支持手段は、
前記媒体を介して前記第1の処理手段に対向する位置に設けられた第1の支持部と、
前記媒体を介して前記第2の処理手段に対向する位置に設けられた第2の支持部と
をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記第1の処理手段及び前記第2の処理手段のうち、一方が前記媒体に作画するものであり、他方が前記媒体を切断するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記第1の処理手段及び前記第2の処理手段を保持する保持手段をさらに備え、
前記保持手段は、前記第1の処理手段と前記第2の処理手段とを、一方の処理手段と上記媒体との距離を、他方の処理手段と上記媒体との距離に比べて、近づけたり遠ざけたりして切替可能に保持することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記保持手段は、前記第1の処理手段及び前記第2の処理手段のうち、前記媒体への押圧力がより大きいほうを前記保持手段により近接して保持することを特徴とする請求項4に記載の媒体処理装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−254608(P2012−254608A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130185(P2011−130185)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】