説明

媒体処理装置

【課題】搬送基準面に向けて媒体をスムーズに寄せること、および、強度の弱い媒体であっても搬送時の破損を防止することが可能で、かつ、小型化することが可能な媒体処理装置を提供する。
【解決手段】媒体処理装置1は、媒体2が搬送される搬送路10と、媒体2を搬送する搬送手段と、搬送路10に接続されるとともに少なくとも媒体2の一部を搬送路10から退避させるための退避路52とを備えている。搬送路10の、媒体2の搬送方向に直交する媒体幅方向の一方側には、媒体2の搬送基準面が形成され、搬送手段は、媒体2を搬送する搬送ローラ20と、搬送ローラ20に対向配置される対向ローラ22とを備えている。対向ローラ22は、対向ローラ22の、搬送基準面と逆側が搬送方向に変位可能となるように支持され、搬送手段は、搬送基準面に媒体2を寄せる際に、退避路52を利用して媒体2を内部で往復搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小切手等の薄いシート状の媒体を処理するための媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カード状の媒体を搬送しながら、媒体に記録された磁気情報の再生等を行うカードリーダが知られている。このカードリーダでは、搬送方向に対する媒体の傾きを補正して、搬送中の媒体に対して適切な処理を行うため、搬送中の媒体の短手幅方向の基準位置となる搬送基準面がカードの搬送路に形成されている。この搬送基準面に向けて媒体をスムーズに寄せ、強度の弱い媒体であっても破損を起こさないように構成されたカードリーダが本出願人によって提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載のカードリーダでは、複数の駆動ローラに無端ベルトが架け渡されており、この無端ベルトによって媒体の搬送が行われる。すなわち、無端ベルトに沿って媒体の搬送路が形成されており、搬送路は、駆動ローラ間に形成される平面部と、駆動ローラの外周に沿って形成される湾曲面部とから構成されている。また、平面部と湾曲面部との境界近傍に、搬送基準面と逆側が搬送方向に変位自在に支持された搬送ローラが配置されている。
【0004】
このカードリーダでは、スキャナによる媒体表面の文字情報等の読み取り、および、媒体に記録された磁気情報の再生が適切に完了するまで、媒体は、搬送路に沿って回転する。また、媒体は、搬送路に沿って回転する際に、搬送ローラの作用で搬送基準面に向かって寄っていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−282366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のカードリーダでは、平面部と湾曲面部との境界近傍に配置された搬送ローラの作用で、搬送基準面に向けて媒体をスムーズに寄せることができ、また、強度の弱い媒体であっても搬送時の破損を防止することが可能になる。しかしながら、このカードリーダでは、媒体を回転搬送するように、無端ベルトに沿って媒体の搬送路が形成されているため、搬送路の設置スペースが大きくなり、装置が大型化する。
【0007】
そこで、本発明の課題は、搬送基準面に向けて媒体をスムーズに寄せること、および、強度の弱い媒体であっても搬送時の破損を防止することが可能で、かつ、小型化することが可能な媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の媒体処理装置は、シート状の媒体が搬送される搬送路と、媒体を搬送するための搬送手段と、搬送路に接続されるとともに、少なくとも媒体の一部を搬送路から退避させるための退避路と、を備え、搬送路の、媒体の搬送方向に直交する媒体幅方向の一方側には、搬送時における媒体幅方向での媒体の基準位置となる搬送基準面が形成され、搬送手段は、搬送路に配置され媒体を搬送する搬送ローラと、搬送ローラに対向配置され搬送ローラに向かって付勢される対向ローラとを備え、対向ローラは、対向ローラの、搬送基準面と逆側が搬送方向に変位可能となるように支持され、搬送手段は、搬送基準面に媒体を寄せる際に、退避路を利用して媒体を内部で往復搬送することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の媒体処理装置は、たとえば、搬送方向に対する媒体の傾きを検出する傾き検出手段を備え、搬送手段は、傾き検出手段で媒体の傾きが検出されると、退避路を利用して媒体を内部で往復搬送する。
【0010】
本発明の媒体処理装置では、搬送ローラに対向する対向ローラは、この対向ローラの、搬送基準面と逆側が搬送方向に変位可能となるように支持されている。そのため、搬送中の媒体が対向ローラに当接すると、対向ローラは、搬送基準面に向けて媒体を寄せる方向へ搬送基準面側を支点にして傾く。したがって、対向ローラの作用で、搬送中の媒体を搬送基準面に向けてスムーズに寄せることが可能になり、搬送方向に対して媒体が傾いている場合には、搬送基準面に媒体を当接させて、その傾きを補正することが可能になる。また、対向ローラの変位量を適切に設定することで、搬送基準面に向かう媒体に過剰な負荷がかかるのを防止することができる。したがって、強度の弱い媒体であっても搬送時の破損を防止することが可能になる。
【0011】
また、本発明の媒体処理装置では、搬送手段が、搬送基準面に媒体を寄せる際に、退避路を利用して媒体を内部で往復搬送している。すなわち、本発明では、搬送基準面に媒体を寄せて、搬送方向に対する媒体の傾きを補正する必要があるときに、媒体を往復搬送するための退避路が形成されている。したがって、媒体が回転搬送されるように搬送路が形成される従来の構成と比較して、搬送路および退避路の設置スペースを小さくすることが可能になる。その結果、本発明では、装置を小型化することが可能になる。
【0012】
さらに、本発明の媒体処理装置では、搬送基準面に媒体を寄せる際に、搬送手段が、退避路を利用して媒体を内部で往復搬送しているため、媒体が回転搬送される場合と比較して、搬送基準面に媒体を寄せる際の媒体の搬送距離を短くすることが可能になる。したがって、本発明では、媒体の処理時間を短縮することが可能になる。また、本発明では、搬送路に搬送ローラと対向ローラとが配置されているため、適切な数量の搬送ローラと対向ローラとを設置することで、平面部と湾曲面部との境界近傍に搬送ローラが配置される従来の構成と比較して、短時間で搬送基準面に媒体を寄せることが可能になる。
【0013】
本発明において、搬送路は、搬送中の媒体が直進可能となるように、略直線状に形成され、退避路は、搬送路から分岐するように形成されるとともに、搬送路の上方または下方に向かって湾曲するように形成されていることが好ましい。この場合には、たとえば、媒体処理装置は、媒体を挿入するための媒体挿入部を備え、退避路は、搬送路の、媒体挿入部側から分岐している。このように構成すると、媒体の搬送方向において、装置を小型化することが可能になる。また、搬送路が略直線状に形成されるため、搬送路で搬送される媒体の破損を防止しやすくなる。
【0014】
本発明において、媒体処理装置は、搬送路と退避路との境界部分に、搬送路から媒体挿入部または退避路のいずれか一方への媒体の搬送を可能とする搬送方向切替手段を備えることが好ましい。このように構成すると、往復搬送される際の媒体を退避路へ確実に案内することができる。
【0015】
本発明において、媒体幅方向と対向ローラの軸方向とが略一致した状態から、対向ローラの、搬送基準面と逆側が搬送方向の両側に変位可能となるように、対向ローラが支持されていることが好ましい。このように構成すると、往復搬送される媒体は、どちらの方向に搬送されても、対向ローラの作用で搬送基準面に向けて寄っていく。したがって、短時間で媒体を搬送基準面に寄せて、媒体の傾きを補正することが可能になる。
【0016】
本発明において、媒体処理装置は、媒体を挿入するための媒体挿入部を備え、媒体挿入部は、媒体挿入部を閉鎖および開放するシャッター部材と、搬送基準面側に配置されるとともに媒体の挿入を検出するための挿入検出手段とを備え、挿入検出手段によって媒体が検出されると、シャッター部材が媒体挿入部を開放すること、および/または、挿入検出手段によって媒体が検出されると、媒体処理装置へ媒体の取り込むために搬送手段が起動することが好ましい。このように構成すると、媒体幅方向において、媒体の端部が搬送基準面に近い位置にあるときに、媒体処理装置への媒体の挿入が可能になる。したがって、挿入された媒体を短時間で搬送基準面に寄せることが可能になる。
【0017】
本発明において、媒体処理装置は、対向ローラの、搬送基準面と逆側の変位量を調整するための変位量調整手段を備えることが好ましい。このように構成すると、媒体の強度に応じて、対向ローラの変位量を設定することができる。すなわち、媒体の強度に応じて、対向ローラの傾きを設定することができる。そのため、搬送基準面に向かう媒体に過剰な負荷がかかるのを防止することができる。したがって、強度の弱い媒体の搬送時の破損を確実に防止することが可能になる。また、強度が比較的強い媒体を短時間で搬送基準面に寄せることが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の媒体処理装置では、搬送基準面に向けて媒体をスムーズに寄せること、および、強度の弱い媒体であっても搬送時の破損を防止することが可能になる。また、本発明の媒体処理装置では、装置を小型化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態にかかる画像読取装置を示す斜視図であり、搬送路を構成する上搬送ブロックを開けた状態を示している。
【図2】図1に示す画像読取装置において、上搬送ブロックを閉じた動作状態時の断面構成図である。
【図3】図1に示す媒体挿入部内の挿入検出センサーの配置位置を説明するための概略平面図である。
【図4】図1に示す画像読取装置を構成する下搬送ステージのガイド部材を示す斜視図である。
【図5】図1に示すパッドローラおよびその周辺部の構成を示す概略平面図である。
【図6】図5に示すパッドローラの作用を説明するための図であり、(A)は媒体が奥側へ搬送されているときの状態を示し、(B)は媒体が手前側へ搬送されているときの状態を示している。
【図7】図2に示すスキャナと毛ブラシローラとの位置関係を示す模式断面図である。
【図8】図1に示す毛ブラシローラの毛を掻き分ける突起を示す模式図である。
【図9】図1に示す画像読取装置における媒体の幅寄せ動作を説明するための図である。
【図10】図1に示す画像読取装置における媒体の取込時の制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
(画像読取装置の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる画像読取装置1を示す斜視図であり、搬送路10を構成する上搬送ブロック9を開けた状態を示している。図2は、図1に示す画像読取装置1において、上搬送ブロック9を閉じた動作状態時の断面構成図である。
【0022】
本形態の画像読取装置1は、媒体挿入部3から挿入されたシート状の媒体2を搬送路10に導き、その搬送路10内に設けられたスキャナ30によって媒体2に記載または印字された文字情報等を読み取る装置である。そして、読み取り後においては、媒体2を、搬送路10内の搬送ローラ20によって、画像読取装置1のさらに奥側に設けられた他の装置(印字装置等)へ搬送する、または、媒体挿入部3から排出する装置である。すなわち、本形態の画像読取装置1は、媒体2に対して所定の処理を行う媒体処理装置である。なお、本明細書において、「手前側」とは画像読取装置1の媒体挿入部3側のことをいい、「奥側」とはその反対側である画像読取装置1の後方側のことをいう。
【0023】
本形態の画像読取装置1は、図1および図2に示すように、シート状の媒体2が搬送される搬送路10と、画像読取装置1内で媒体2を搬送する搬送手段と、媒体2が搬送される媒体搬送方向(搬送方向)Xに直交する媒体幅方向Yを主走査するとともに、媒体搬送方向Xを副走査して、媒体2に印刷された画像データを読み取るスキャナ30と、搬送路10を挟んでスキャナ30と対向するとともに、表面に植毛が施された(植毛された)毛ブラシローラ40とを備えている。
【0024】
また、本形態の画像読取装置1では、毛ブラシローラ40とスキャナ30の読み取り面31との間に、媒体2の通過を許容する隙間Gが設けられている。また、画像読取装置1は、搬送手段が搬送路10の手前側近傍で媒体2を搬送方向Xに搬送するときに、毛ブラシローラ40Aが媒体2の被読み取り面2Bとは反対側の面2Aを規制して媒体2を案内するように構成され、搬送手段が搬送路10の奥側近傍で媒体2を搬送方向Xに搬送するときに、毛ブラシローラ40Bが媒体2の被読み取り面2Aとは反対側の面の2Bを規制して媒体2を案内するように構成されている。
【0025】
なお、以下の説明および図中において、数字符号に続く大文字の英字は当該数字符号に対応する同種の部材が複数あるときの識別のために付したものであり、その部材を総称する場合には単に数字符号のみで説明する。以下に、各構成について説明する。
【0026】
(媒体)
シート状の媒体2は、画像読取装置1で読み取り対象となる薄いシート状の媒体であり、たとえば小切手、手形等の紙材質からなる。こうした小切手等の薄い紙媒体は、厚さが薄く(たとえば、厚さ0.05〜0.20mm程度)、折り曲げ等されて使用および保管されるので、腰が無くなっていることがあるが、本形態の画像読取装置1では、こうした媒体2に対しても適切な処理を行うことができる。
【0027】
(媒体挿入部の概略構成)
図3は、図1に示す媒体挿入部3内の挿入検出センサー13の配置位置を説明するための概略平面図である。
【0028】
媒体挿入部3の内部には、図2に示すように、媒体2が通過する媒体通過路11が形成されている。また、媒体挿入部3は、媒体通過路11を閉鎖および開放するシャッター部材12(図2参照)と、媒体2の挿入を検出する2個の挿入検出センサー13(図3参照)とを備えている。
【0029】
挿入検出センサー13は、たとえば、発光素子(図示省略)と受光素子(図示省略)とから構成される光学式のセンサー(フォトインタラプタ)であり、発光素子と受光素子とは、媒体通過路11を挟むように対向配置されている。
【0030】
2個の挿入検出センサー13のうちの一方の挿入検出センサー13Aは、図3に示すように、媒体幅方向Yにおける媒体挿入部3の一端側に配置されている。具体的には、挿入検出センサー13Aは、搬送路10に形成される後述の搬送基準面15側に配置されている。本形態では、挿入検出センサー13Aは、媒体幅方向Yにおいて、搬送基準面15の形成位置の近傍に配置されている。また、本形態の挿入検出センサー13Aは、搬送基準面15側に配置される挿入検出手段となっている。
【0031】
他方の挿入検出センサー13Bは、媒体幅方向Yにおいて、挿入検出センサー13Aと所定の間隔をあけた状態で配置されている。具体的には、画像読取装置1で使用される最小幅の媒体2aを、2個の挿入検出センサー13A、13Bで検出可能となるように、挿入検出センサー13Bは、挿入検出センサー13Aと所定の間隔をあけた状態で配置されている。
【0032】
本形態では、画像読取装置1が媒体2の挿入待機状態であるときには、シャッター部材12は媒体通過路11を閉鎖している。この状態で、挿入検出センサー13Bが媒体2を検出すると、シャッター部材12が媒体通過路11を開放する。また、この状態で、検出センサー13Aが媒体2を検出すると、画像読取装置1へ媒体2の取り込むため、搬送手段を構成する後述の搬送ローラ20が回転を開始する。すなわち、本形態では、2個の挿入検出センサー13A、13Bの両方が媒体2を検出しないと、画像読取装置1へ媒体2を取り込むことができない。また、本形態では、シャッター部材12は、所定のリンク機構(図示省略)を介してソレノイド14(図1参照)に連結されており、ソレノイド14の動力で媒体通過路11の開閉動作を行う。
【0033】
なお、挿入検出センサー13Aが媒体2を検出すると、シャッター部材12が媒体通過路11を開放し、検出センサー13Bが媒体2を検出すると、搬送手段を構成する後述の搬送ローラ20が回転を開始するようにしても良い。また、挿入検出センサー13A、13Bの両方が媒体2を検出したことを上位のホストコンピュータあるいは画像読取装置1の制御部が認識した後に、シャッター部材12が媒体通過路11を開放し、かつ、搬送ローラ20が回転を開始するようにしても良い。
【0034】
(搬送路の概略構成)
図4は、図1に示す画像読取装置1を構成する下搬送ステージ8のガイド部材80を示す斜視図である。
【0035】
搬送路10は、媒体2の走路であり、図1および図2に示すように、上下に対向して設けられた上搬送ブロック9のガイド部材90および下搬送ステージ8のガイド部材80と、画像読取装置1の側面を構成する2枚の側板とで構成されている。この搬送路10は、媒体2をまっすぐ搬送することが可能となるように、図2の左右方向にまっすぐ延びている。すなわち、搬送路10は、搬送中の媒体2が直進可能となるように、略直線状に形成されている。
【0036】
この搬送路10内において、媒体2は、搬送手段を構成する搬送ローラ20A〜20Dと、搬送ローラ20A〜20Dに対向するパッドローラ22A〜22Dとによって媒体搬送方向Xに搬送される。なお、本形態では、搬送ローラ20A〜20Dが下搬送ステージ8に設けられ、パッドローラ22A〜22Dが上搬送ブロック9に設けられているが、必ずしもそうした構成に限定されず、搬送ローラ20A〜20Dの全部または一部を上搬送ブロック9に設け、パッドローラ22A〜22Dの全部又一部を下搬送ステージ8に設けてもよい。
【0037】
搬送路10の、媒体幅方向Yの一端には、搬送時における媒体幅方向Yでの媒体2の基準位置となる搬送基準面15が形成されている。本形態では、図1の紙面奥側に配置される側板の一部が搬送基準面15となっている。また、搬送路10の幅は、幅の異なる各種の媒体2に対応可能なように、たとえば65mm〜110mmの範囲で構成されている。また、搬送路10の高さH(隙間、図7参照)は、使用によってシワ(皺)が生じた媒体等も容易に搬送可能な隙間であることが好ましく、通常、1mm〜3mm程度である。
【0038】
搬送路10を構成する下搬送ステージ8のガイド部材80は、搬送路10の下側に、上搬送ブロック9のガイド部材90に対向して設けられたガイド部材である。このガイド部材80は、図4に示すように、樹脂製の成形体であることが好ましいが、それ以外のものであってもよい。ガイド部材80の搬送路10側の面には、媒体搬送方向Xに沿って延びるスリットガイド84(図4参照)が複数設けられている。このスリットガイド84は、媒体2が媒体搬送方向Xに沿って搬送するのを助けるように作用し、平坦面85上に任意の間隔で突出した所定高さの突起状に形成されている。
【0039】
一方、搬送路10を構成する上搬送ブロック9のガイド部材90は、下搬送ステージ8のガイド部材80に対向して設けられており、その上搬送ブロック90は開閉可能となっている。このガイド部材90も上記のガイド部材80と同様に、樹脂製の成形体であることが好ましいが、それ以外のものであってもよい。また、ガイド部材90の搬送路10側の面も、ガイド部材80と同様に、媒体搬送方向Xに沿って延びるスリットガイド(図1参照)が複数設けられている。
【0040】
上搬送ブロック9の開閉は、搬送手段を構成するプーリ122の軸と併用される支持軸91を支点として行われる。上搬送ブロック9を開いたときの位置を開位置(図1参照)といい、閉じたときの位置を閉位置(図2参照)というが、この画像読取装置1には、上搬送ブロック9を開位置に保持する保持手段(94〜96)と、上搬送ブロック9を閉位置に保持するロック手段(92)とが設けられている。
【0041】
保持手段(94〜96)は特に限定されないが、図1では、先端に係合ピン95を備える支柱94と、その係合ピン95が複数の位置で係合する係合部96を有するプレート97とを例示されている。すなわち、上搬送ブロック9は、支柱94の先端の係合ピン95が所定の係合部96に係合することによって、所定の開位置に保持される。また、開位置から閉位置にする際には、上搬送ブロック9を手で支えながら、係合ピン95を移動して、所定の係合部96に係合させる。
【0042】
上搬送ブロック9の閉位置でのロックは、上搬送ブロック9の両サイドに設けられたロックレバー92A、92Bと、そのロックレバー92A、92Bに形成された凹部に係合する図示しないロックピンとで行われる。なお、ロックレバー92A、92Bの一端は、ロックレバー92A、92Bを付勢するバネ機構(図示省略)とともに、上搬送ブロック9に取り付けられている。
【0043】
下搬送ステージ8と上搬送ブロック9には、媒体2の位置検出を行うセンサー機構が設けられている。図1に示す画像読取装置1は、下搬送ステージ8に設けられた発光素子60(60A、60B、60C)と、上搬送ブロック9に設けられた受光素子61(61A、61B、61C)とからなるセンサー機構を有している。センサー機構の例としては、発光素子60(60A、60B、60C)と受光素子61(61A、61B、61C)とが対向配置され、発光素子60からの光を媒体2が遮るのを受光素子61が検出することによって、媒体2の有無や位置を判定するフォトインタラプタを挙げることができる。
【0044】
また、上搬送ブロック9には、媒体2の表面に記載されるMICR(Magnetic Ink Character Recognition;磁気インク文字認識)データに対して着磁を行う着磁ヘッド71と、着磁ヘッド71で着磁されたMICRデータを再生する磁気ヘッド70とが設けられている。下搬送ステージ8には、着磁ヘッド71に対向するパッドローラ24が搬送ローラ20Bと並んで設けられている。また、下搬送ステージ8には、磁気ヘッド70に対向するパッドローラ23が搬送ローラ20Cと並んで設けられている。
【0045】
(退避路の概略構成)
図2に示すように、本形態の画像読取装置1は、媒体挿入部3から媒体2を露出させずに、搬送路10から媒体2の少なくとも一部を退避させる退避路52を備えている。この退避路52は、搬送路10に接続されている。本形態では、退避路52は、搬送路10の手前側から分岐するように形成されている。また、退避路52は、上端が搬送路10に繋がる湾曲部52aと、湾曲部52aの下端に繋がる平面部52bと、平面部52bの下端に繋がる傾斜平面部52cとから構成され、全体として、搬送路10の下方に向かって湾曲するように形成されている。
【0046】
湾曲部52aは、手前側に向かって膨らむ曲面状に形成されている。平面部52bは、図2の上下方向に平行な平面状に形成されている。傾斜平面部52cは、平面状に形成されるとともに、奥側に向かうにしたがって下方向へ傾斜するように形成されている。そのため、退避路52に搬入される媒体2は、はじめは手前側に向かって搬送され、その後、奥側に向かって搬送される。なお、上端が搬送路10に繋がる湾曲部のみによって、退避路52が形成されても良い。
【0047】
搬送路10と退避路52との境界部分には、搬送路10から媒体挿入部3または退避路52のいずれか一方への媒体2の搬送を可能とする搬送方向切替手段としての切替レバー51が設けられている。切替レバー51は、所定のリンク機構(図示省略)を介してソレノイド14に連結されており、シャッター部材12の開閉動作と連動して回動する。具体的には、切替レバー51が、搬送路10から媒体挿入部3への媒体2の搬送を可能とする開位置51Aにあるときには、シャッター部材12は、媒体通過路11を開放し、切替レバー51が、搬送路10から退避路52への媒体2の搬送を可能とする閉位置51Bにあるときには、シャッター部材12は、媒体通過路11を閉鎖する。
【0048】
本形態では、後述のように、搬送基準面15に向けて媒体2を寄せる際に、退避路52を利用して、画像読取装置1の内部で媒体2を往復搬送している。すなわち、搬送基準面15に向けて媒体2を寄せる際には、切替レバー51は、閉位置51Bにある。
【0049】
なお、退避路52は、スキャナ30による情報読み取りによって回収が必要と判断された媒体2を回収するための回収用搬送路としても機能する。具体的には、媒体挿入部3から挿入された媒体2は、後述のように、搬送ローラ20E、20A、20B、20C、20Dの回転によって奥側に搬送され、媒体2の文字情報等が読み取られるが、その媒体2が上位のホストコンピュータにより回収が必要であると判断されると、搬送ローラ20A〜20Dが逆回転し、媒体2が手前側に戻される。このとき、切替レバー51は閉位置51Bにあり、手前側に戻る媒体2は、退避路52に送られ、退避路52内の搬送ローラ20F、20Gによって回収エリア53に送られる。
【0050】
(搬送手段の構成)
図5は、図1に示すパッドローラ22Aおよびその周辺部の構成を示す概略平面図である。図6は、図5に示すパッドローラ22Aの作用を説明するための図であり、(A)は媒体2が奥側へ搬送されているときの状態を示し、(B)は媒体2が手前側へ搬送されているときの状態を示している。
【0051】
媒体2を搬送する搬送手段は、駆動モータ120(図2参照)を駆動源として回転する駆動ローラである搬送ローラ20と、搬送ローラ20に対向配置される従動ローラであるパッドローラ22とを備えている。媒体2の搬送は、搬送ローラ20の駆動力により、搬送ローラ20とパッドローラ22との間に媒体2が挟まれた状態で行われる。
【0052】
本形態では、搬送路10に4本の搬送ローラ20A〜20Dおよびパッドローラ22A〜22Dが配置されている。具体的には、手前側から奥側に向かって、搬送ローラ20A〜20Dおよびパッドローラ22A〜22Dがこの順番で配置されている。また、搬送路10と媒体挿入部3との間に1本の搬送ローラ20Eおよびパッドローラ22Eが配置され、退避路52に2本の搬送ローラ20F、20Gおよびパッドローラ22F、22Gが配置されている。
【0053】
搬送ローラ20に対する駆動モータ120の駆動力の伝達手段は種々の方法が可能であるが、たとえば、本形態では、駆動モータ120の駆動力は、図1に示すように、駆動モータ120の軸に設けられたプーリ121からベルト129を介してプーリ128、130に伝達され、プーリ128、130と同軸上に設けられた搬送ローラ20C、20Dが回転する。また、他の搬送ローラ20A、20Bに対しても同様の伝達手段によって駆動モータ120の駆動力が伝達され、搬送ローラ20A、20Bが回転する。
【0054】
また、搬送路10と媒体挿入部3との間に配置されている搬送ローラ20Eや、退避路52に配置されている搬送ローラ20F、20Gに対しても同様の伝達手段によって駆動モータ120の駆動力が伝達され、搬送ローラ20E、20F、20Gが回転する。なお、搬送ローラ20F、20Gの駆動源として、駆動モータ120とは別の駆動モータを設けても良い。この場合には、たとえば、図1に示すプーリ131、132、133やベルト134等によってこの駆動モータの駆動力が伝達される。
【0055】
パッドローラ22A〜22Gはそれぞれ、搬送ローラ20A〜20Gに向かって付勢され、搬送ローラ20の駆動力に追従して回転する。その付勢手段は特に限定されないが、通常はコイルバネ等が用いられている。本形態では、パッドローラ22A〜22Dは、搬送路10に配置される搬送ローラ20A〜20Dに対向配置される対向ローラとなっている。
【0056】
パッドローラ22Aは、図5に示すように、回転軸25に同心状に固定されている。回転軸25の一端側は軸受26によって回転可能に支持され、回転軸25の他端側は軸受27によって回転可能に支持されている。軸受26は、搬送基準面15側(図1の紙面奥側)に配置され、軸受27は、搬送基準面15と逆側(図1の紙面手前側)に配置されている。また、軸受26、27は、ガイド部材90に形成された軸受固定部98に固定されている。
【0057】
図5に示すように、軸受26には、媒体搬送方向Xで回転軸25を支持する2個の軸支持部28が形成されている。また、軸受27には、媒体搬送方向Xで回転軸25を支持する2個の軸支持部29が形成されている。
【0058】
2個の軸支持部28の媒体搬送方向Xの間隔は、回転軸25の径とほぼ同じか回転軸25の径よりもわずかに大きくなっている。一方、2個の軸支持部29の媒体搬送方向Xの間隔は、回転軸25の径よりも大きくなっている。そのため、回転軸25は、一端側を支点として傾斜可能となっている。すなわち、回転軸25の他端側は、その一端側を支点として媒体搬送方向Xに変位可能となっている。このように、パッドローラ22Aの、搬送基準面15と逆側が媒体搬送方向Xに変位可能となるように、回転軸25を介して、パッドローラ22Aが軸受26、27に支持されている。
【0059】
本形態では、図5に示すように、パッドローラ22Aの軸方向(すなわち、回転軸25の軸方向)と媒体幅方向Yとが略一致した状態で、手前側に配置される軸支持部29と回転軸25との間に隙間が形成されるとともに、奥側に配置される軸支持部29と回転軸25との間にも隙間が形成されている。そのため、回転軸25の他端側(すなわち、パッドローラ22Aの他端側)は、パッドローラ22Aの軸方向と媒体幅方向Yとが略一致した状態から媒体搬送方向Xの両側に変位可能となっている。
【0060】
具体的には、図5に示す状態では、手前側に配置される軸支持部29と回転軸25との間の隙間と、奥側に配置される軸支持部29と回転軸25との間の隙間が略等しくなっており、回転軸25の他端側は、パッドローラ22Aの軸方向と媒体幅方向Yとが略一致した状態から媒体搬送方向Xの両側に略等しい量だけ変位可能となっている。
【0061】
搬送ローラ20Aとパッドローラ22Aとの間に媒体2が挟まれて、媒体2が奥側に向かって搬送されると、媒体2とパッドローラ22Aとの間に生じる摩擦力によって、図6(A)に示すように、回転軸25の他端側は、奥側に配置される軸支持部29に接触するまで、回転軸25の一端側(基準搬送面15側)を支点にして、奥側に向かって変位する。すなわち、パッドローラ22Aの他端側が奥側に向かって変位して、奥側に向かって搬送される媒体2を一端側(搬送基準面15側)に向けて寄せる方向にパッドローラ22Aが傾斜する。
【0062】
また、搬送ローラ20Aとパッドローラ22Aとの間に媒体2が挟まれて、媒体2が手前側に向かって搬送されると、媒体2とパッドローラ22Aとの間に生じる摩擦力によって、図6(B)に示すように、回転軸25の他端側は、手前側に配置される軸支持部29に接触するまで、回転軸25の一端側(基準搬送面15側)を支点にして、手前側に向かって変位する。すなわち、パッドローラ22Aの他端側が手前側に向かって変位して、手前側に向かって搬送される媒体2を一端側(搬送基準面15側)に向けて寄せる方向にパッドローラ22Aが傾斜する。
【0063】
パッドローラ22B〜22Eも、パッドローラ22Aと同様に、軸受26、27によって回転可能に支持された回転軸25に同心状に固定されている。そのため、パッドローラ22B〜22Eも、パッドローラ22Aと同様に、媒体2が搬送される方向に応じて傾斜する。
【0064】
なお、本形態では、手前側から奥側に向かって、パッドローラ22A〜22Eの傾斜角度が次第に小さくなるように、2個の軸支持部29間の間隔が設定されている。すなわち、手前側から奥側に向かって、2個の軸支持部29の間隔が次第に狭くなっている。ただし、パッドローラ22A〜22Eの傾斜角度が同じになるように、2個の軸支持部29間の間隔が設定されても良い。また、たとえば、パッドローラ22A、22B、22Eの傾斜角度あるいはパッドローラ22A、22Eの傾斜角度が大きくなり、パッドローラ22C、22Dあるいはパッドローラ22B〜22Dの傾斜角度がわずかになるように、2個の軸支持部29間の間隔が設定されても良い。
【0065】
一方、パッドローラ22F、22Gは、軸受26によって両端側を回転可能に支持された回転軸25に同心状に固定されている。そのため、搬送ローラ20F、20Gとパッドローラ22F、22Gとの間に媒体2が挟まれて、媒体2が搬送されても、パッドローラ22F、22Gは傾斜しない。なお、パッドローラ22F、22Gは、パッドローラ22Aと同様に、軸受26、27によって回転可能に支持された回転軸25に同心状に固定されても良い。
【0066】
(スキャナの構成)
図7は、図2に示すスキャナ30と毛ブラシローラ40との位置関係を示す模式断面図である。
【0067】
スキャナ30は、図1および図2に示す例では搬送路10の下側と上側にそれぞれ計2つ設けられているが、一方のみに設けられていてもよい。このスキャナ30は、媒体2が搬送される媒体搬送方向Xと直交する媒体幅方向Yを主走査するとともに、媒体搬送方向Xを副走査して、媒体2に印刷された画像データ(文字情報や画像情報)を読み取るように機能する。スキャナ30の搬送路10側の面は、図7に示すように、読み取り面31であり、通常はガラス面となっている。スキャナ30で読み取られた画像データは、上位のホストコンピュータに送られ、その後の搬送動作等が制御される。なお、図7に示すように、スキャナ30の読み取り面31の媒体搬送方向Xの前後には、媒体2の搬送を妨げないテーパ部材32A、32B設けられていることが好ましい。
【0068】
(毛ブラシローラの構成)
毛ブラシローラ40は、図2および図7等に示すように、上記のスキャナ30の読み取り面31に対向して設けられている。この毛ブラシローラ40は、軸43回りの植毛ベース42に毛41を植毛した一般的な形態を例示できるが(図4参照)、必ずしもこうした形態に限定されない。たとえば、毛を織り込んで植毛したシート状の植毛ベース42を、軸43に螺旋状に巻きつけて接着剤等を用いて貼付ける形態を挙げることができる。
【0069】
毛ブラシローラ40と、スキャナ30の読み取り面31(ガラス面)との間には、図7に示すように、媒体2の通過を許容する隙間Gが設けられている。この隙間Gは、画像読取装置1が取り扱う媒体2の厚さ以下に設定されている。隙間Gをこのように設定することにより、搬送ローラ20による媒体2の搬送時に、毛ブラシローラ40が媒体2の被読み取り面2A(または2B)とは反対側の面2B(または2A)を規制して媒体2を案内する。
【0070】
この隙間Gは、取り扱う媒体2の種類に応じて調整することが好ましく、たとえば小切手等の腰の弱い紙媒体を専用に取り扱う画像読取装置1の場合と、小切手等より厚くて腰のある紙媒体を専用に取り扱う画像読取装置1の場合とで、その隙間Gを調整して用いることが好ましい。
【0071】
上搬送ブロック9に設けられた毛ブラシローラ40Bは、駆動モータ120の動力で回転する。駆動モータ120の駆動力は、図1に示すように、プーリ121からベルト123を介してプーリ122に伝達され、さらにそのプーリ122と同軸に設けられたプーリ124からベルト125を介してプーリ(図示しない。ギア126と同軸で設けられている)に伝達され、そのプーリと同軸上のギア126に連結したギア127に伝達される。毛ブラシローラ40Bは、ギア127と同軸上に設けられており、ギア127に伝達される駆動モータ120の動力で回転する。なお、下搬送ステージ8に設けられた毛ブラシローラ40Aにも同様の伝達手段で駆動モータ120の動力が伝達され、毛ブラシローラ40Aも駆動モータ120の動力で回転する。
【0072】
(ガイド部材の構成)
図8は、図1に示す毛ブラシローラ40の毛41を掻き分ける突起81を示す模式図である。
【0073】
ガイド部材80、90は、図4、図7および図8に示すように、上記の毛ブラシローラ40と協働して作用する、本形態の特徴的な構成の一つである。具体的には、ガイド部材80は、毛ブラシローラ40が設けられる下搬送ステージ8に設けられており、毛ブラシローラ40側の搬送路10を規制する平坦面85と、その平担面85の搬送路10側に媒体搬送方向Xに沿って延びる複数のスリットガイド84とを有している。スリットガイド84は、媒体2が媒体搬送方向Xに沿って搬送するのを助けるように作用し、平坦面85上に任意の間隔で突出した所定高さの突起状に構成されている。
【0074】
ガイド部材80は、毛ブラシローラ40を装着しかつ搬送路10に臨ませる窓部88と、その窓部88の縁89から毛ブラシローラ40に向かいかつ媒体搬送方向Xと平行な方向に突出して毛ブラシローラ40の毛41を掻き分ける複数の突起81A、81Bとを備えている。突起81A、81Bは、図8に示すように、断面が毛ブラシローラ40に向かって狭くなる三角形の舳先形状に形成されている。なお、毛ブラシローラ40に対する突起81A、81Bの侵入長さは、たとえば1〜2mm程度とすることが好ましい。
【0075】
また、ガイド部材80の、窓部88に隣接する隣接部(すなわち、媒体搬送方向Xにおける窓部88の縁89と平坦面85との間の部分)は、図7および図8に示すように、媒体搬送方向Xにおいて毛ブラシローラ40に向かって搬送路10から徐々離れる斜面82となっている。この斜面82には、スリットガイド83が形成されている。
【0076】
また、ガイド部材80には、図4に示すように、スキャナ装着部86が形成されるとともに、ローラ装着部87(87A〜87C)が形成されている。
【0077】
ガイド部材90は、毛ブラシローラ40が設けられる上搬送ブロック9に設けられている。このガイド部材90は、ガイド部材80と同様に構成されているため、ガイド部材90の詳細な説明は省略する。
【0078】
(媒体の取込動作)
図9は、図1に示す画像読取装置1における媒体2の幅寄せ動作を説明するための図である。図10は、図1に示す画像読取装置1における媒体2の取込時の制御フローを示すフローチャートである。
【0079】
以上のように構成された画像読取装置1では、以下のようにして、装置内部に媒体2が取り込まれる。
【0080】
すなわち、まず、上位のホストコンピュータからの制御指令で、媒体2の挿入待機状態になると、画像読取装置1の制御部(以下、制御部とする。)は、挿入検出センサー13A、13Bの両センサーが媒体2を検出したか否かを判断する(ステップS1)。
【0081】
挿入検出センサー13Bが媒体2を検出すると、制御部は、シャッター部材12を移動して媒体通過路11を開放し、挿入検出センサー13Aが媒体2を検出すると、制御部は、搬送ローラ20等の搬送手段を起動して、画像読取装置1内の所定位置まで奥側に向かって媒体2を搬送する(ステップS2)。また、ステップS2では、スキャナ30によって媒体2の文字情報等を読み取る。さらに、ステップS2では、媒体2の表面に記載されるMICRデータに対して着磁ヘッド71で着磁を行い、着磁されたMICRデータを磁気ヘッド70で再生する。なお、媒体2が画像読取装置1内の所定位置まで搬送されると、シャッター部材12が媒体通過路11を閉鎖し、切替レバー51が閉位置51Bまで回動する。
【0082】
その後、制御部あるいはホストコンピュータは、ステップS2において、スキャナ30で文字情報等が適切に読み取られたか否かを判断する(ステップS3)。ここで、所定位置まで搬送された媒体2の媒体搬送方向Xに対する傾きが小さい場合には、スキャナ30で読み取られた文字情報等の傾きも小さいため、スキャナ30で文字情報等を適切に読み取ることができる。したがって、所定位置まで搬送された媒体2の媒体搬送方向Xに対する傾きが小さく、スキャナ30で文字情報等を適切に読み取ることができた場合(ステップS3でYesの場合)には、画像取込装置1は、媒体2の取込動作を終了する。
【0083】
一方、所定位置まで搬送された媒体2の媒体搬送方向Xに対する傾きが大きい場合には、スキャナ30で読み取られた文字情報等の傾きも大きくなるため、スキャナ30で文字情報等を適切に読み取ることができない。したがって、所定位置まで搬送された媒体2の媒体搬送方向Xに対する傾きが大きく、スキャナ30で文字情報等を適切に読み取ることができない場合(ステップS3でNoの場合)には、搬送基準面15に向けて媒体2を寄せて、媒体2の傾きを補正するため、媒体2を往復搬送する(ステップS4)。
【0084】
具体的には、図9に示すように、退避路52を利用して、画像読取装置1の内部で媒体2を1回、往復搬送する。すなわち、図9に示す矢印の方向へ媒体2を1回、往復搬送する。このとき、切替レバー51は、閉位置51Bにある。ステップS4で往復搬送された媒体2は、パッドローラ22A〜22Dの作用で、搬送基準面15に寄っていき、搬送基準面15に当接する。媒体2が搬送基準面15に当接すると、搬送基準面15によって、媒体2の傾きが補正される。また、ステップS4では、スキャナ30によって媒体2の文字情報等を読み取る。さらに、ステップS4では、媒体2の表面に記載されるMICRデータに対して着磁ヘッド71で着磁を行い、着磁されたMICRデータを磁気ヘッド70で再生する。
【0085】
ステップS4での往復搬送が終了すると、ステップS3へ戻り、スキャナ30で適切な文字情報等が読み取られたか否かを判断する。その結果、文字情報等を適切に読み取ることができた場合には、媒体2の取込動作を終了し、文字情報等を適切に読み取ることができなかった場合には、再び、ステップS4へ進んで、媒体2の傾きを補正するため、媒体2を往復搬送する。
【0086】
なお、本形態では、スキャナ30は、文字情報等を読み取ることで媒体搬送方向Xに対する媒体2の傾きを検出する傾き検出手段となっている。また、ステップS2での媒体2の搬送時にも、パッドローラ22A〜22Eの作用で、媒体2は搬送基準面15に寄っていき、媒体2の傾きが補正されている。
【0087】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、パッドローラ22A〜22Dは、その他端側(搬送基準面15と逆側)が媒体搬送方向Xに変位可能となるように軸受26、27に支持されている。そのため、搬送中の媒体2がパッドローラ22A〜22Dに当接すると、媒体2とパッドローラ22A〜22Dとの間に生じる摩擦力によって、パッドローラ22A〜22Dは、搬送基準面15に向けて媒体2を寄せる方向へ搬送基準面15側を支点にして傾く。したがって、パッドローラ22A〜22Dの作用で、搬送中の媒体2を搬送基準面15に向けてスムーズに寄せることができ、媒体搬送方向Xに対して媒体2が傾いている場合には、搬送基準面15に媒体2を当接させて、その傾きを補正することができる。
【0088】
また、パッドローラ22A〜22Dの変位量を適切に設定することで(具体的には、2個の軸支持部29の間隔を適切に設定することで)、搬送基準面15に向かう媒体2に過剰な負荷がかかるのを防止することができる。したがって、強度の弱い媒体2であっても搬送時の破損を防止することが可能になる。
【0089】
本形態では、搬送基準面15に向けて媒体2を寄せる際に、退避路52を利用して媒体2を画像読取装置1の内部で往復搬送している。すなわち、本形態では、搬送基準面15に媒体2を寄せて、媒体搬送方向Xに対する媒体2の傾きを補正する必要があるときに、媒体2を往復搬送するための退避路52が形成されている。したがって、媒体2が回転搬送されるように搬送路が形成される従来の構成と比較して、搬送路10および退避路52の設置スペースを小さくすることができる。その結果、本形態では、画像読取装置1を小型化することができる。
【0090】
また、画像読取装置1が小型であっても、媒体2を往復搬送させる際に、媒体挿入部3から、媒体2の一部が露出することがないため、ユーザの誤操作を防止することができる。
【0091】
また、本形態では、搬送基準面15に媒体2を寄せる際に、退避路52を利用して媒体2を往復搬送しているため、媒体2が回転搬送される場合と比較して、搬送基準面15に媒体2を寄せる際の媒体2の搬送距離を短くすることができる。したがって、媒体2の処理時間を短縮することができる。また、本形態では、搬送路10に4本の搬送ローラ20A〜20Dとパッドローラ22A〜22Dとが配置されているため、平面部と湾曲面部との境界近傍に搬送ローラが配置される従来の構成と比較して、短時間で搬送基準面15に媒体2を寄せることができる。
【0092】
本形態では、搬送路10は、搬送中の媒体2が直進可能となるように、略直線状に形成され、退避路52は、搬送路10の下方に向かって湾曲するように形成されている。そのため、媒体搬送方向Xにおいて、画像取込装置1を小型化することができる。また、搬送路10が略直線状に形成されているため、搬送路10で搬送される媒体2の破損を防止しやすくなる。
【0093】
本形態では、搬送路10と退避路52との境界部分に、切替レバー51が配置されている。そのため、搬送手段によって、往復搬送される際の媒体2を退避路52へ確実に案内することができる。
【0094】
本形態では、パッドローラ22A〜22Dの他端側は、パッドローラ22A〜22Dの軸方向と媒体幅方向Yとが略一致した状態から媒体搬送方向Xの両側に変位可能となっている。そのため、媒体2が奥側に向かって搬送される場合および手前側に向かって搬送される場合のいずれの場合にも、パッドローラ22A〜22Dの作用で搬送基準面15に向けて媒体2を寄せることができる。したがって、短時間で媒体2を搬送基準面15に寄せて、媒体2の傾きを補正することができる。
【0095】
本形態では、2個の挿入検出センサー13A、13Bの両方で媒体2が検出されると、シャッター部材12が媒体通過路11を開放して、搬送手段が起動する。すなわち、2個の挿入検出センサー13A、13Bの両方が媒体2を検出すると、画像読取装置1への媒体2の取り込みが可能になる。そのため、媒体幅方向Yにおいて、媒体2の端部が搬送基準面15に近い位置にあるときに、媒体2が画像読取装置1に取り込まれる。したがって、本形態では、取り込まれた媒体2を短時間で搬送基準面15に寄せることができる。
【0096】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0097】
上述した形態では、回転軸25の他端側は、パッドローラ22A〜22Eの軸方向と媒体幅方向Yとが略一致した状態から媒体搬送方向Xの両側に略等しい量だけ変位可能となっている。この他にもたとえば、回転軸25の他端側の、パッドローラ22A〜22Eの軸方向と媒体幅方向Yとが略一致した状態から手前側への変位量と、奥側への変位量とが異なっていても良い。
【0098】
また、上述した形態では、回転軸25の他端側は、パッドローラ22A〜22Eの軸方向と媒体幅方向Yとが略一致した状態から媒体搬送方向Xの両側に変位可能となっているが、パッドローラ22A〜22Eの軸方向と媒体幅方向Yとが略一致した状態から媒体搬送方向Xの片側のみに(手前側あるいは奥側のみに)変位可能となっていても良い。
【0099】
上述した形態では、軸受27に形成される2個の軸支持部29の間隔は一定になっている。この他にもたとえば、2個の軸支持部29の間隔を調整して、パッドローラ22A〜22Eの、搬送基準面15と逆側の変位量を調整するための変位量調整手段を画像読取装置1が備えていても良い。この場合には、媒体2の強度に応じて、パッドローラ22A〜22Eの変位量を設定することができる。すなわち、媒体2の強度に応じて、パッドローラ22A〜22Eの傾きを設定することができる。そのため、搬送基準面15に向かう媒体2に過剰な負荷がかかるのを防止することができる。したがって、強度の弱い媒体2の搬送時の破損を確実に防止することが可能になる。また、強度が比較的強い媒体2を短時間で搬送基準面15に寄せることが可能になる。
【0100】
上述した形態では、退避路52は、搬送路10の手前側から分岐するように形成されている。この他にもたとえば、退避路52は、搬送路10の奥側から分岐するように形成されても良い。また、上述した形態では、退避路52は、搬送路10の下方に向かって湾曲するように形成されているが、搬送路10の上方に向かって湾曲するように形成されても良い。
【0101】
上述した形態では、画像読取装置1を例に本発明の実施の形態を説明しているが、本発明の構成は、画像読取装置1以外の各種の媒体処理装置に適用可能である。たとえば、着磁ヘッド71と磁気ヘッド70とを備えているが、スキャナ30を備えていない媒体処理装置においても、本発明の構成を用いることができる。
【0102】
なお、画像読取装置1の奥側に、印字装置(プリンタユニット)やスタンプユニット等が装着されていてもよい。その印字装置等との接続は、画像読取装置1が有する接続フランジとボルト・ナット等の締結部材とを用いて行うことができる。
【符号の説明】
【0103】
1 画像読取装置(媒体処理装置)
2 媒体
3 媒体挿入部
10 搬送路
11 媒体通過路
12 シャッター部材
13A 挿入検出センサー(挿入検出手段)
15 搬送基準面
20(20A〜20D) 搬送ローラ
22A〜22D パッドローラ(対向ローラ)
30 スキャナ(傾き検出手段)
51 切替レバー(搬送方向切替手段)
52 退避路
X 媒体搬送方向
Y 媒体幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の媒体が搬送される搬送路と、
前記媒体を搬送するための搬送手段と、
前記搬送路に接続されるとともに、少なくとも前記媒体の一部を前記搬送路から退避させるための退避路と、を備え、
前記搬送路の、前記媒体の搬送方向に直交する媒体幅方向の一方側には、搬送時における前記媒体幅方向での前記媒体の基準位置となる搬送基準面が形成され、
前記搬送手段は、前記搬送路に配置され前記媒体を搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラに対向配置され前記搬送ローラに向かって付勢される対向ローラとを備え、
前記対向ローラは、前記対向ローラの、前記搬送基準面と逆側が前記搬送方向に変位可能となるように支持され、
前記搬送手段は、前記搬送基準面に前記媒体を寄せる際に、前記退避路を利用して前記媒体を内部で往復搬送することを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記搬送方向に対する前記媒体の傾きを検出する傾き検出手段を備え、
前記搬送手段は、前記傾き検出手段で前記媒体の傾きが検出されると、前記退避路を利用して前記媒体を内部で往復搬送することを特徴とする請求項1記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記搬送路は、搬送中の前記媒体が直進可能となるように、略直線状に形成され、
前記退避路は、前記搬送路から分岐するように形成されるとともに、前記搬送路の上方または下方に向かって湾曲するように形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記媒体を挿入するための媒体挿入部を備え、
前記退避路は、前記搬送路の、前記媒体挿入部側から分岐していることを特徴とする請求項3記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記搬送路と前記退避路との境界部分に、前記搬送路から前記媒体挿入部または前記退避路のいずれか一方への前記媒体の搬送を可能とする搬送方向切替手段を備えることを特徴とする請求項4記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記媒体幅方向と前記対向ローラの軸方向とが略一致した状態から、前記対向ローラの、前記搬送基準面と逆側が前記搬送方向の両側に変位可能となるように、前記対向ローラが支持されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記媒体を挿入するための媒体挿入部を備え、
前記媒体挿入部は、前記媒体が通過する媒体通過路と、前記媒体通過路を閉鎖および開放するシャッター部材と、前記搬送基準面側に配置されるとともに前記媒体の挿入を検出するための挿入検出手段とを備え、
前記挿入検出手段によって前記媒体が検出されると、前記シャッター部材が前記媒体挿入部を開放すること、および/または、前記挿入検出手段によって前記媒体が検出されると、前記媒体処理装置へ前記媒体の取り込むために前記搬送手段が起動することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の媒体処理装置。
【請求項8】
前記対向ローラの、前記搬送基準面と逆側の変位量を調整するための変位量調整手段を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−82558(P2013−82558A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−269981(P2012−269981)
【出願日】平成24年12月11日(2012.12.11)
【分割の表示】特願2009−517712(P2009−517712)の分割
【原出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】