説明

孔形成型枠用シースの製造方法、その製造方法によって製造される孔形成型枠用シース、及びその孔形成型枠用シースを用いたプレキャストコンクリート部材

【課題】シースとコンクリート及びグラウト材との一体性を高める。
【解決手段】帯状の鋼板20に、その帯長さ方向に沿って表面側に突出する突条24’と裏面側に突出する突条25’とを曲げ加工により設け、前記鋼板20を螺旋状に巻回してその鋼板20の隣り合う幅方向端縁21,22同士を固定することにより円筒状の管体10を形成し、前記両突条24’、25’は、前記管体10の円筒部23から外径方向に突出する螺旋状の外向き凸部24と、内径方向に突出する螺旋状の内向き凸部25とを形成する孔形成型枠用シースの製造方法とした。この構成によれば、シース10に外径方向に突出する螺旋状の外向き凸部24と、内径方向に突出する螺旋状の内向き凸部25とを設けることができ、その両凸部24,25によって、シース10外側のコンクリートcと、シース10内側のグラウト材gとの一体性を、ともに高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリートのプレストレス工法や、プレキャスト工法等で使用される孔形成型枠用シースの製造方法、その製造方法によって製造される孔形成型枠用シース、及びその孔形成型枠用シースを用いたプレキャストコンクリート部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレストレス工法で製造されるコンクリート部材には、圧縮力を付与するために緊張材が挿通される。その緊張材を挿通可能な貫通孔を形成するために、従来からシースと呼ばれる緊張材挿通用の孔形成型枠が使用されてきた。
【0003】
また、この孔形成型枠用シースは、プレキャストコンクリート(以下、「PC」という)部材にも使用される。
【0004】
このPC部材として、例えば、特許文献1に示すブロック型のものがある。その構成は、上下方向及び水平方向縦横にそれぞれ貫通孔(シース)が埋設された直方体状の本体からなり、この本体に接合する柱部、梁部に埋設した主筋(鉄筋)を、その貫通孔内に挿通可能としたものである。なお、その貫通孔内には、鉄筋を挿通した後にグラウト材を注入して、シースと鉄筋との一体化を図っている。
【0005】
また、特許文献2に記載のPC部材は、例えば、図6及び図7に示すように、梁主筋4b(鉄筋4)が埋設されたPC梁部2と、柱主筋4c(鉄筋4)が埋設された上下PC柱部3,5と、それらの間に配置される直方体状の仕口パネル6とを備えている。
仕口パネル6には、上下方向及び水平方向縦横にそれぞれ貫通孔(シース)10;10a,10bが埋設されている。
【0006】
上下PC柱部3,5の柱主筋4cは、図7(a)に示すように、各PC柱部3,5の端部に埋設された連結用継手3a,5a内にその端部が挿入されている。
また、PC梁部2の梁主筋4bは、図7(b)に示すように、一端がPC梁部2の端面から外方に突出し、他端はそのPC梁部2の端部に埋設された連結用継手2a内に挿入されている。
【0007】
図6に示すように、仕口パネル6の上下方向両側に上下PC柱部3,5を突き合わせ、矢印fに示すように、中継筋4a(鉄筋4)を前記仕口パネル6の上下方向の貫通孔10aに挿通して、その中継筋4aの両端を上下PC柱部3,5の連結用継手3a,5a内に挿入することにより、仕口パネル6及び上下PC柱部3,5とを連結し一体化する。貫通孔10a内には、その後、注入孔7からグラウト材が注入される。
また、仕口パネル6の水平方向両側にPC梁部2,2を突き合わせ、その一方のPC梁部2の前記梁主筋4bの突出した端部を、矢印eの方向へ前記仕口パネル6の水平方向の貫通孔10bに挿通する。その梁主筋4bは、図7(c)に示すように、他方のPC梁部2に埋設された前記連結用継手2a内に挿入され、仕口パネル6及び両PC梁部2,2とを連結し一体化する。貫通孔10b内には、その後、図示しない注入孔からグラウト材が注入される。
【0008】
さらに、その他のPC部材の構成として、例えば、仕口及び梁を一体成形し、柱主筋に相当する位置に孔形成型枠としてシースを埋設したPC梁・仕口部材を、上面に開口するように機械式継手を埋設した下方のPC柱部材の上部に建て込み、さらに下面に柱鉄筋が突出した上部のPC柱部材を、その柱主筋が仕口、梁部材のシースに貫通し、下方のPC柱部材の継手内に挿入されるようにしたものもある。
【0009】
これらの工法では、そのシース10内にグラウト材が注入され、シース10内を通過する緊張材又は主筋(鉄筋)4との一体性を高めている。この場合、内部に充填したグラウト材とそのシース10との一体性を保つことが重要であり、また、そのシース10とコンクリートとの一体性を保つことも重要である。
【0010】
これは、グラウト材とそのシース10とが剥離して軸方向、周方向に相対移動するような状態(グラウト材とそのシース10との一体性が保たれていない状態)になると、あるいは、シース10とコンクリートとが剥離して軸方向、周方向に相対移動するような状態(シース10とコンクリートとの一体性が保たれていない状態)になると、コンクリート部材、PC部材は、所期の強度を発揮できないからである。
このようなグラウト材とそのシース10との一体性、及びシース10とコンクリートとの一体性は、コンクリート部材、PC部材の製造当初は維持されていても、その後、供用中にコンクリート部材に外力が作用した場合に、あるいは、時間の経過とともに、一体性を失ってしまう場合もある。
【0011】
このため、グラウト材とそのシース10との一体性、及びシース10とコンクリートとの一体性を高めるために、シース10の内面又は外面に突起を設けて付着性能を高めるようにした技術が開示されている。
【0012】
例えば、図9(a)に示すように、帯状の鋼板を螺旋状に巻いて形成した金属製のシース10の外面12に、外側に突出する螺旋状の膨出部11を形成したものがある。
【0013】
その膨出部11は、図中に示すように、軸方向に沿った断面において断面円弧状であり、その外径側に打設されるコンクリートに対しては、その膨出部11外面の凸部11aがコンクリート内に入り込んでその一体性を増すように機能する。すなわち、凸部11aがコンクリート内に入り込むことにより、両者が相互に噛み合って付着性能を高め、その一体性を増していると考えられる。
また、その膨出部11を形成したことによって生じた内面の凹部11bには、シース10内のグラウト材が入り込んでその一体性を増すように機能する。すなわち、凹部11b内にグラウト材が入り込むことにより、両者が相互に噛み合って付着性能を高め、その一体性を増していると考えられる(例えば、特許文献3参照)。
【0014】
また、図9(b)に示すように、樹脂製のシース10に螺旋状の肉厚部13を形成したものがある。肉厚部13外面の凸部13aがコンクリート内に入り込んでその一体性を増すように機能する。また、肉厚部13内面の凸部13bがグラウト材内に入り込んでその一体性を増すように機能する。
さらに、外面の凸部13a及び内面の凸部13bには、それぞれ鋼線14が埋め込まれて、その鋼線14が肉厚部13に対して径方向に突出させることにより、さらに一体性が高められている(例えば、特許文献4参照)。
【0015】
なお、帯状の鋼板を螺旋状に巻いて、その帯状の鋼板の幅方向端部同士をかしめることによりハゼ部を形成し、そのハゼ部を介して鋼板を円筒状に固定した金属性のシース10は、一般的に使用されている(非特許文献1参照)。
【0016】
その構成を、図8に示す製造方法を例に説明すると、帯状を成す薄い鋼板15の一方の幅方向端部に断面U字状の折曲部16を形成し、他方の幅方向端部に断面L字状の折曲部17を形成する。前記両折曲部16,17は、その折り曲げ方向が表裏逆方向になるように形成する(図8(a)参照)。
【0017】
鋼板15を螺旋状に巻いて円筒状とし、その螺旋によって隣接するU字状の前記折曲部16の開口部内へ、他方のL字状の折曲部17の突出した先端を嵌め込み(図8(c)参照)、上下のかしめロール7,8間で両者を押圧することにより、両折曲部16,17同士をかしめて内径側に突出するハゼ部18を形成する(図8(d)参照)。
このハゼ部18によって、隣り合う鋼板15同士が液密に固定されて、それらの鋼板15が螺旋状に繋がれて円筒状の管が形成される(図8(b)参照)。
【0018】
なお、一般的な金属製スパイラル管において、前記ハゼ部18は、図8に示すように内径側に突出するように形成される場合(内ハゼ式)もあるし、外径側に突出するように形成される場合(外ハゼ式)もある。
【0019】
【特許文献1】特公平06−104991号公報
【特許文献2】特開2006−22494号公報
【特許文献3】特開平5−346052号公報
【特許文献4】特開平10−148010号公報
【非特許文献1】株式会社栗本鐵工所ホームページ「製品/建材/土木関連製品/鋼材製シース」インターネット<URL:http://www.kurimoto.co.jp/j03/tetsu.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記図9(a)の金属製のシース10によると、外径側のコンクリートに対しては、シース10の外面12に、外側に突出する螺旋状の膨出部11を形成したので、その膨出部11外面の凸部11aがコンクリート内に入り込んでその一体性を増すように機能する。
【0021】
しかし、内径側のグラウト材に対しては、グラウト材がシース10内面の凹部11bに入り込んで、その一体性を増す構成となっている。凹部11bの存在は付着力向上に寄与するが、シース10とグラウト材とのより高い一体性を実現するためには、図9(b)に示す肉厚部13のように、シース10外面だけでなく、シース10内面にも凸部を設けることが望ましい。
【0022】
しかし、帯状の鋼板15を螺旋状に巻いて円筒状に形成された金属製のシース10では、図9(b)に示すように、肉厚部13を形成することができない。鋼板15は、その肉厚が一定だからである。
【0023】
なお、仮に、前記ハゼ部18の突出方向を、前記膨出部11の突出方向と内外逆方向にすれば、そのハゼ部18と前記膨出部11とによって、シース10の内外両面にそれぞれ凸部を設けることができる、とも考えられる。
しかし、ハゼ部18の径方向への突出量は小さいので、それだけでは、コンクリートやグラウト材との一体性を高めるには充分でない。
【0024】
そこで、この発明は、帯状の鋼板を螺旋状に巻いて円筒状に形成される金属製のシースにおいて、シース外側のコンクリートと、シース内側のグラウト材との一体性を、ともに高めることができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の課題を解決するために、この発明は、帯状の鋼板に、その帯長さ方向に沿って表面側に突出する突条と裏面側に突出する突条とを設け、前記鋼板を巻回してその鋼板の隣り合う幅方向端縁同士を固定することにより管体を形成し、前記両突条は、前記管体から外径方向に突出する外向き凸部と、内径方向に突出する内向き凸部とを形成することを特徴とする孔形成型枠用シースの製造方法の構成を採用した。
【0026】
巻回する前の帯状の鋼板に、表面側に突出する突条、裏面側に突出する突条がそれぞれ設けられていることにより、その鋼板を巻回すれば、外径方向に突出する外向き凸部と、内径方向に突出する内向き凸部とを備えた金属製シースを得ることができる。
このため、この製造方法によれば、帯状の鋼板を巻いて形成される金属製のシースにおいて、シース(管体)外側のコンクリートと、シース(管体)内側のグラウト材との一体性を、ともに高めることができる。
【0027】
また、前記外向き凸部及び前記内向き凸部は、それぞれ、前記管体の管軸方向に沿って両側に前記各凸部の頂部に向かう傾斜面を備える構成とすることができる。
【0028】
この構成によれば、シース(管体)に対してグラウト材及びコンクリートが前記管軸方向に相対移動しようとした際に、その傾斜面が、グラウト材及びコンクリートが前記管軸方向に相対移動しようとするのを抑える支圧面となって、その相対移動が発生しないように前記グラウト材及びコンクリートを拘束することができる。このため、シースとグラウト材及びコンクリートとの一体性をさらに高めることができる。
【0029】
なお、その傾斜面は、それぞれ前記管軸方向に対して45〜60度の角度を成すことが望ましい。これは、45〜60度のときの傾斜面に生じる圧縮応力、及びせん断応力のバランスが最もよいからであり、特に45度のときにコンクリート強度に対する余裕度が最大となる。また、角度が45度から大きくなると、傾斜面の圧縮破壊に対する余裕度が相対的に下がり、45度より小さくなると、傾斜面のせん断破壊に対する余裕度が相対的に下がる。
さらに、シースが、傾斜面を備える前記外向き凸部及び前記内向き凸部を有し、この傾斜面が45度であることから、シースが水平、垂直のいずれの向きに固定されていても、グラウト材注入時のシース内の空気の残留を抑制し、グラウト材とシースとの一体性を確保することができる。
【0030】
また、前記隣り合う幅方向端縁同士は、その幅方向端縁同士をかしめることによりハゼ部を形成することにより固定され、前記ハゼ部は、前記円筒部に形成することができる。前記円筒部を構成する鋼板は、フラットな円筒面であるので、ハゼ部をかしめ加工する上で有利である。
あるいは、前記ハゼ部は、前記外向き凸部又は前記内向き凸部に形成することができる。このとき、そのハゼ部を設ける前記外向き凸部又は前記内向き凸部がフラットな円筒面を備え、そのフラットな円筒面の部分にハゼ部が介在するようにすれば、同じくハゼ部をかしめ加工する上で有利である。
【0031】
これらの各孔形成型枠用シースの製造方法によって製造される孔形成型枠用シースにおいて、帯状の鋼板に、その帯長さ方向に沿って表面側に突出する突条と裏面側に突出する突条とを設け、前記鋼板を巻回してその鋼板の隣り合う幅方向端縁同士を固定することにより管体を形成し、前記両突条により、前記管体から外径方向に突出する外向き凸部と、内径方向に突出する内向き凸部とを形成していることを特徴とする孔形成型枠用シースの構成を採用することができる。
【0032】
帯状を成す鋼板の幅方向に、表面側に突出する突条と裏面側に突出する突条とが介在しているので、これらの突条は、鋼板が巻回された後に外径方向に突出する外向き凸部と、内径方向に突出する内向き凸部になって、その管体の管軸方向に対する剛性を高める効果を発揮する。
このため、グラウト材及びコンクリートがシース(管体)に対して前記管軸方向に相対移動しようとする外力が作用した際に、その外力に伴ってシース(管体)が変形することを抑制することができる。したがって、このようにシース(管体)の剛性が高まれば、シース(管体)が変形しないので、シースとグラウト材及びコンクリートとの付着性能が高まり、その一体性をさらに高めることができる。
【0033】
なお、これらの各構成において、前記鋼板の巻回による管体の形成は、螺旋状に巻回することにより管体を形成してもよいし、帯の長手方向端部同士を連結して筒状に形成したものを管軸方向に複数連結することにより管体を形成してもよい。また、その管体の断面形状は、円形、多角形等任意の形状を採用し得る。
【発明の効果】
【0034】
この発明は、外径方向に突出する外向き凸部と、内径方向に突出する内向き凸部とを備えた金属製シースとしたので、シース(管体)外側のコンクリートと、シース(管体)内側のグラウト材との一体性を、ともに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
一実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。この実施形態は、PC部材(プレキャストコンクリート部材)用の孔形成型枠用シースである。その使用方法は、従来例の説明で用いた図6及び図7に示す通りであるので、説明を省略する。
【0036】
シース10は、全面に亘って等厚の帯状を成す鋼板20を螺旋状に巻回して円筒状に形成したものであり、その構成は、図1(a)(b)に示すように、管軸方向に沿って、管軸t周りの円筒形状を成す円筒部23から、外径方向に突出する螺旋状の外向き凸部24と、内径方向に突出する螺旋状の内向き凸部25とが形成されている。
前記円筒部23は、その板厚方向中心線が直径dとなるように形成されている。
【0037】
外向き凸部24は、円筒部23の板厚方向中心線sから外径側にL1だけ突出するように形成され、図1(a)に示すように、管軸tを通る管軸方向断面において、断面三角形を成している。
【0038】
内向き凸部25は、円筒部23の板厚方向中心線sから内径側にL2だけ突出するように形成され、図1(a)に示すように、管軸tを通る管軸方向断面において、断面台形を成している。この内向き凸部25の頂部は、フラットな円筒面となっている。
【0039】
前記外向き凸部24及び前記内向き凸部25は、それぞれ管軸方向に隣り合う前記円筒部23,23間に設けられて、外向き凸部24、円筒部23、内向き凸部25、円筒部23、外向き凸部24・・・の順に、前記外向き凸部24及び前記内向き凸部25が交互に設けられている。
【0040】
また、前記外向き凸部24及び前記内向き凸部25は、それぞれ、前記管体10の管軸方向両側に前記円筒部23から各凸部24,25の頂部に向かって徐々に立ち上がる傾斜面24a,25bを備えている。
前記各傾斜面24a,25bは、それぞれ前記管軸方向に対して45度の角度を成すフラット面となっている。
【0041】
鋼板20を螺旋状に巻回して円筒状に形成する際に、その鋼板20の隣り合う幅方向端縁21,22同士は、塑性変形を伴いながらかしめられて、図1(a)に示すハゼ部28を形成することにより固定されている。前記ハゼ部28は、外向きに形成されている。
【0042】
このシース10の製造方法について説明すると、図2に示すように、巻回する帯状の鋼板20には、その帯長さ方向に沿って表面側に突出する突条24’と裏面側に突出する突条25’とが設けられている。この両突条24’、25’は、前工程において、フラットな帯状の鋼板20を曲げ加工することにより形成されている。
また、鋼板20の幅方向両端部に、表裏逆方向になるように折曲部が形成されている。
【0043】
鋼板20を螺旋状に巻いて円筒状とし、その螺旋によって隣接する前記折曲部の開口部内へ、他方の折曲部の突出した先端を嵌め込み、上下のかしめロール間で両者を押圧することにより、両折曲部同士をかしめて外径側に突出するハゼ部28を形成する。
【0044】
このハゼ部28を介して隣り合う鋼板20,20同士を、螺旋の全長に亘って固定することにより、円筒状の管体10を形成する。
【0045】
鋼板20が円筒状に固定されると、前記両突条24’、25’は、前記管体10の円筒部23から外径方向に突出する螺旋状の外向き凸部24と、内径方向に突出する螺旋状の内向き凸部25となる。
【0046】
この実施形態では、前記内向き凸部25がフラットな円筒面を備えているので、その内向き凸部25のフラットな円筒面の部分に前記ハゼ部28が形成されている。ハゼ部28は、そのフラットな円筒面から外径方向にL3だけ突出している。
【0047】
このシース10の作用について説明すると、図1(a)に矢印aで示すように、シース10に対してコンクリートcが管軸方向に相対移動しようとした際に、前記外向き凸部24の傾斜面24aが、そのコンクリートcが管軸方向に相対移動しようとするのを抑える支圧面Aとなって機能する。
支圧面Aは、前記相対移動が発生しないように前記コンクリートcを拘束し、シース10とコンクリートcとの剥離を防止し、その一体性をさらに高めることができる。
【0048】
なお、その外向き凸部24を形成したことによってシース10内面に生じた凹部24bには、そのシース10内のグラウト材gが入り込んでその一体性を増すように機能する。すなわち、凹部24b内にグラウト材gが入り込むことにより、シース10とグラウト材gとが相互に噛み合って付着性能を高める機能も発揮している。
【0049】
また、図1(a)に矢印bで示すように、シース10に対してグラウト材gが管軸方向に相対移動しようとした際に、前記内向き凸部25の傾斜面25bが、そのグラウト材gが管軸方向に相対移動しようとするのを抑える支圧面Bとなって機能する。
支圧面Bは、前記相対移動が発生しないように前記グラウト材gを拘束し、シース10とグラウト材gとの剥離を防止し、その一体性をさらに高めることができる。
【0050】
なお、その内向き凸部25を形成したことによってシース10外面に生じた凹部25aには、コンクリートcが入り込んでその一体性を増すように機能する。すなわち、凹部25a内にコンクリートcが入り込むことにより、シース10とコンクリートcとが相互に噛み合って付着性能を高める機能も発揮している。
【0051】
なお、それらの傾斜面24a,25bは、それぞれ前記管軸方向に対して45度の角度を成すフラット面となっている。45度であれば、傾斜面24a,25bに生じる圧縮応力、及びせん断応力に最も効果的に対抗することができる。
【0052】
また、このシース10によれば、外径方向に突出する外向き凸部24と、内径方向に突出する内向き凸部25とを備えることによって、そのシース10の管軸方向に対する剛性を高める効果が発揮されている。
【0053】
このため、コンクリートcあるいはグラウト材gが、シース10に対して管軸方向に相対移動しようとした際に、前記支圧面が受ける力に伴うシース10のつぶれが抑制されている。
このようにシース10の剛性が高まれば、シース10のつぶれが抑制されるので、シース10とコンクリートc及びグラウト材gとの剥離をさらに効果的に抑制し、その一体性をさらに高めることができる。
【0054】
他の実施形態を図3及び図4に示す。この実施形態は、前述の実施形態との差異点を中心に説明すると、図3(a)(b)に示すように、管軸方向に沿って、管軸t周りの円筒形状を成す円筒部23から、外径方向に突出する螺旋状の外向き凸部24と、内径方向に突出する螺旋状の内向き凸部25とが形成されている。
前記円筒部23の板厚方向中心線が、直径dとなるように形成されている点は同じである。
【0055】
外向き凸部24は、円筒部23の板厚方向中心線sから外径側にL4だけ突出するように形成され、図3(a)に示すように、管軸tを通る管軸方向断面において、断面台形を成している。この外向き凸部24の頂部は、フラットな円筒面となっている。
【0056】
内向き凸部25は、円筒部23の板厚方向中心線sから内径側にL5だけ突出するように形成され、図3(a)に示すように、管軸tを通る管軸方向断面において、断面台形を成している。この内向き凸部25の頂部は、フラットな円筒面となっている。
【0057】
前記外向き凸部24は、その管軸方向両側に前記内向き凸部25が隣り合うように配置され、また、前記円筒部23の管軸方向両側に内向き凸部25が隣り合うように配置されるようになっている。すなわち、外向き凸部24、内向き凸部25、円筒部23、内向き凸部25、外向き凸部24、内向き凸部25、円筒部23、内向き凸部25、外向き凸部24、内向き凸部25、円筒部23、・・・の順に設けられている。
【0058】
前記外向き凸部24及び前記内向き凸部25は、その管軸方向両側にそれぞれ、前記管体10の管軸方向に対して各凸部24,25の頂部に向かって徐々に立ち上がる傾斜面24a,25bを備え、また、その各傾斜面24a,25bは、それぞれ前記管軸方向に対して45度の角度を成すフラット面となっている。
【0059】
また、前記ハゼ部28は、前記円筒部23に外向きに形成され、外径方向にL6だけ突出している。
【0060】
なお、このシース10の製造方法(図4参照)については、前記円筒部23、前記外向き凸部24、前記内向き凸部25の形状及び配置に関する部分を除けば、前述の実施形態と同様であるので説明を省略し、以下、このシース10の作用について説明する。
【0061】
図3(a)に矢印aで示すように、シース10に対してコンクリートcが管軸方向に相対移動しようとした際に、前記外向き凸部24の傾斜面24aが、そのコンクリートcが管軸方向に相対移動しようとするのを抑える支圧面Cとなって機能する。
支圧面Cは、前記相対移動が発生しないように前記コンクリートcを拘束し、シース10とコンクリートcとの剥離を防止し、その一体性をさらに高めることができる。
【0062】
なお、その外向き凸部24を形成したことによってシース10内面に生じた凹部24bには、そのシース10内のグラウト材gが入り込んでその一体性を増すように機能する。すなわち、凹部24b内にグラウト材gが入り込むことにより、シース10とグラウト材gとが相互に噛み合って付着性能を高める機能も発揮している。
【0063】
また、図3(a)に矢印bで示すように、シース10に対してグラウト材gが管軸方向に相対移動しようとした際に、前記内向き凸部25の傾斜面25bが、そのグラウト材gが管軸方向に相対移動しようとするのを抑える支圧面Dとなって機能する。
支圧面Dは、前記相対移動が発生しないように前記グラウト材gを拘束し、シース10とグラウト材gとの剥離を防止し、その一体性をさらに高めることができる。
【0064】
なお、その内向き凸部25を形成したことによってシース10外面に生じた凹部25aには、コンクリートcが入り込んでその一体性を増すように機能する。すなわち、凹部25a内にコンクリートcが入り込むことにより、シース10とコンクリートcとが相互に噛み合って付着性能を高める機能も発揮している。
【0065】
これらの各実施形態において、シース10が、傾斜面24a,25bを備える前記外向き凸部24及び前記内向き凸部25を有しているので、シース10内にグラウト材gを注入する際に、そのシース10内に空気が残留しにくいという効果が期待できる。
すなわち、注入中のグラウト材gの前端位置は、図5にラインI〜Vに示すように、シース10内面付近から軸心に向かって傾斜した状態で図中矢印h1〜h5のように進んでいき、シース10内の空気は、シース10内面に沿って矢印i方向に押し出される。
このとき、傾斜面24a,25bが階段状に配置されているので、空気の押し出し効果が高くなる。また、図中にラインII,IIIで示す位置において、通常は最も空気が残留しやすくなるが、この実施形態では、注入中のグラウト材g前端の傾斜面が、シース10内面の傾斜面24a,25bと同方向の傾斜であるので、空気が残留しにくくなる。
【0066】
なお、この傾斜面24a,25bの向きが管軸方向に対して45度であれば、グラウト材gをシース10が水平、垂直のいずれの向きに固定されていても、グラウト材g注入時のシース10内の空気の残留を抑制する効果を同等に発揮でき、グラウト材gとシース10との所定の一体性を確保することができる。
【0067】
なお、前記各実施形態では、前記各傾斜面24a,25bの向きを管軸方向に対して45度としたが、この角度は任意に設定することができ、例えば、60度とすることも可能である。また、前記外向き凸部24、前記内向き凸部25の前記円筒部23からの立上がり角度を90度とした構成も採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】一実施形態を示し、(a)は要部拡大断面図、(b)は一部切断全体図
【図2】同実施形態の製造方法を示す説明図
【図3】他の実施形態を示し、(a)は要部拡大断面図、(b)は一部切断正面図
【図4】同実施形態の製造方法を示す説明図
【図5】シース内にグラウト材を注入する際の作用を示す説明図
【図6】プレキャストコンクリート部材による構造体の施工方法の説明図
【図7】図6の詳細を示し、(a)は柱部の連結状態を示す正面断面図、(b)(c)は梁部の連結状態を示す平面断面図
【図8】従来の鋼板の巻回方法を示す説明図
【図9】(a)(b)は従来例を示す一部切断正面図
【符号の説明】
【0069】
2 PC梁部
3,5 PC柱部
4 梁主筋、柱主筋、中継筋(鉄筋)
6 仕口パネル
7 注入孔
10 シース(管体)
15,20 鋼板
16,17 折曲部
23 円筒部
24 外向き凸部
25 内向き凸部
24a,25b 傾斜面
24b,25a 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の鋼板20に、その帯長さ方向に沿って表面側に突出する突条24’と裏面側に突出する突条25’とを設け、前記鋼板20を巻回してその鋼板20の隣り合う幅方向端縁21,22同士を固定することにより管体10を形成し、前記両突条24’、25’は、前記管体10から外径方向に突出する外向き凸部24と、内径方向に突出する内向き凸部25とを形成することを特徴とする孔形成型枠用シースの製造方法。
【請求項2】
前記外向き凸部24及び前記内向き凸部25は、それぞれ、前記管体10の管軸方向に沿って両側に前記各凸部24,25の頂部に向かう傾斜面24a,25bを備えることを特徴とする請求項1に記載の孔形成型枠用シースの製造方法。
【請求項3】
前記傾斜面24a,25bは、それぞれ前記管軸方向に対して45度の角度を成すことを特徴とする請求項2に記載の孔形成型枠用シースの製造方法。
【請求項4】
前記隣り合う幅方向端縁21,22同士は、その幅方向端縁21,22同士をかしめることによりハゼ部28を形成することにより固定され、前記ハゼ部28は、前記円筒部23に形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の孔形成型枠用シースの製造方法。
【請求項5】
前記隣り合う幅方向端縁21,22同士は、その幅方向端縁21,22同士をかしめることによりハゼ部28を形成することにより固定され、前記外向き凸部24又は前記内向き凸部25がフラットな円筒面を備え、その外向き凸部24又は前記内向き凸部25のフラットな円筒面の部分に前記ハゼ部28が形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の孔形成型枠用シースの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の孔形成型枠用シースの製造方法によって製造される孔形成型枠用シースにおいて、帯状の鋼板20に、その帯長さ方向に沿って表面側に突出する突条24’と裏面側に突出する突条25’とを設け、前記鋼板20を巻回してその鋼板20の隣り合う幅方向端縁21,22同士を固定することにより管体10を形成し、前記両突条24’、25’により、前記管体10から外径方向に突出する外向き凸部24と、内径方向に突出する内向き凸部25とを形成していることを特徴とする孔形成型枠用シース。
【請求項7】
請求項6に記載の孔形成型枠用シースをプレキャストコンクリート部材の内部に埋設して貫通孔を形成し、そのプレキャストコンクリート部材に接合する他のプレキャストコンクリート部材の主筋を、前記貫通孔内に挿通可能とするプレキャストコンクリート部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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