説明

安全キャビネット及び安全キャビネットにおける汚物処理方法

【課題】安全キャビネット内で動物を飼育し或いは病原性を有する微生物を取り扱った際に動物の排泄物或いは飛散した微生物を、キャビネット外に逸散させることなく安全に汚物等収集バッグ内に収集する。
【解決手段】清浄気流が流れる作業室の作業台に簀の子を上面に有する漏斗状汚物シューターを設け、汚物シューター下部の筒状ダクトよりなる汚物排出口の外周に、該排出口を囲って連続処理バッグ用筒状体を嵌合状態に保持し、同筒状体を前記汚物排出口端部外周に引き出し可能な接圧で弾性バンドにより圧接把持し作業室下部に垂下してなる。そして、作業室下部に垂下した連続処理バッグ用筒状体は幅方向に溶着することで汚物を密閉切断し汚物収容バッグとし作業室下部に設けた同バッグを受ける容器で受けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験動物の飼育にも使用され得る安全キャビネットにおいて、飼育動物の排泄物や汚物感染の原因物質等を安全に収集することの出来る安全キャネット及び、当該キャビネットにおける汚物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病原性を有する微生物や組み換えDNAの操作時には、実験従事者の感染防止を図る為にクラスII型安全キャビネット(以下、安全キャビネットと略す)が使用される。安全キャビネット51は図3に示す如く実験操作のため作業室52の前方が開放されており、その前面開口部53の流入気流54と作業室52内の循環気流55のバランスにより、エアーバリアー56が形成され作業室52内の汚染エアロゾルの流出を防止している。
【0003】
作業室52内の循環気流55は、安全キャビネット51の上部に設けられた送風機57の圧空が作業室52の上部に設けられたヘパフィルター58を経て清浄給気59となり作業室52内に吹き出し一部は作業台60の下部を通り一部は作業室後部からダクト61に入り送風機59に吸引され循環している。一部の圧空はヘパフィルター62を通り安全キャビネット51外に放出される。
【0004】
上記、安全キャビネット51は動物実験に利用される場合もあり、経過観察を目的とした実験動物の飼育を作業室内で同時にすることもある。実験動物を含めた実験試料は、いずれも汚染や感染をしている可能性があり単に作業室外へ持ち出すことが出来ず、特に日常的に行われる実験動物の排泄物を安全に処理する方法が問題となる。
【0005】
その第1に図4Aに示す如き例がある。この例は実験従事者が感染防止防護具(マスクやゴーグル等)を着用し、動物飼育ケージ71の床敷き72を安全キャビネット73より直接引き出し交換する(特許文献1参照)ものが知られている。また、図4Bに示す如く、排水管81を設け、滅菌用排水タンク82に排泄物を含めた汚水を集中させ滅菌後に排水する場合と、安全キャビネットの滅菌器91を合体させ、排泄物を安全キャビネット内で滅菌した後に処理を行なう図4Cの方法がある。Aの場合は設備費が安価であるが、実験従事者が感染する可能性が比較的高く、Bの場合は設備が大型かつ高価となり、Cの場合は多台数時に同台数の滅菌器を必要とし、初期設備費が高価であった。
【特許文献1】特開平9−322670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、安全キャビネット内で動物を飼育し或いは病原性を有する微生物を取り扱った際に動物の排泄物或いは飛散した微生物を、キャビネット外に逸散させることなく安全に汚物等収集バッグ内に収集することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、安全キャビネットに係り、清浄気流が流れる作業室の作業台に簀の子を上面に有する漏斗状汚物シューターを設け、汚物シューター下部の筒状ダクトよりなる汚物排出口の外周に、該排出口を囲って熱溶着性を有する連続処理バッグ用筒状体を嵌合状態に保持し、同筒状体を前記汚物排出口端部外周に引き出し可能な接圧で弾性バンドにより圧接把持し作業室下部に垂下してなり、前記弾性バンドによる把持部の下位には、連続処理バッグ用筒状体の幅方向に同筒状体を熱溶着する熱溶着手段及び切断手段を設けてなる。
そして、請求項2に記載の如く、作業室下部に垂下した連続処理バッグ用筒状体は作業室下部に設けた同バッグを受ける容器で受けられている。
請求項3記載の発明は、安全キャヒネットにおける汚物収集方法であって、作業台に設けられ漏斗状をなす汚物シューターの下部の筒状ダクトよりなる汚物排出口を囲って嵌合状態に連続処理バッグ用筒状体を適宜長さ保持し、該バッグ用筒状体下端を幅方向に熱溶着して袋状の汚物収容バッグとして所定長さ引き出し、汚物シューターからバッグに汚物を落下収容後、汚物シューターの筒状のダクト下端部において、バッグ用筒状体を所定間隔を有して平行に幅方向に熱溶着し、その間を切断することにより汚物を連続して袋体内に密閉する。
そして、請求項4の記載の如く、汚物の封入に用いる汚物収容バッグは、熱溶着性を有する筒状体よりなり、該筒状体を所定間隔ごとに幅方向に熱溶着することで袋体を構成している。
【発明の効果】
【0008】
本発明方法及び装置を用いて、日常の実験動物の排泄物を含む汚物処理を行うことにより、収集された汚物等は清浄気流が流れる作業の作業台に設けた簀の子を上面に有する汚物シューター下部の筒状ダクトよりなる汚物排出口を囲って嵌合状態に保持された、連続バッグ用筒状体よりなる袋体内に外気に触れることなく収容されるので実験従事者の感染防止が十分に図られ、日常の実験動物の排泄物を含む汚物の処理を安全に実施できる。
また汚物収容バッグは、同バッグを受ける専用容器で受けられるので、処理中に外部から何等かの外力を加えられても袋体を保護し、袋体が破損することを防止することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態を図面と共に次に説明する。
図1は本発明安全キャビネット1の縦断側面図である。安全キャビネット1は主として作業室2、作業室2をその上下及び裏側で囲んだ循環路3、循環路3を挟んで作業室2の下位に設けた充填室4よりなり、図示の例では作業室2の床面である作業台5には簀の子6を有する動物飼育ケージ7が設けてある。作業台5の下部、作業室2の背面及び上面は循環路3が形成され上部の循環路3には送風機8及びヘパフィルター9,10が設けられ、送風機8で圧送された圧空は一部ヘパフィルター9を通り安全キャビネット1外に放出され、一部はヘパフィルター10を通り作業室2内に吹き出される。作業室2の背部壁面下部にはエア通路11が、床面にはエア通路12がそれぞれ設けられ、作業室2内の圧空は循環路3に放出される。
【0010】
作業台5に置いた動物飼育ケージ7の床面の簀の子6の下部には漏斗状の汚物シューター15を設ける。汚物シユーター15の下部は汚物排出用の筒状ダクト16となっている。筒状ダクト16には連続処理バッグ用筒状体17を上端部を折り畳んだ状態で嵌め合わせ、垂下している。連続処理バッグ用筒状体17は熱溶融性を有する合成樹脂製シートよりなる筒状体で、図2cに示す如く、筒状体17の上部を汚物シューター15の筒状体ダクト16に蛇腹状に折り畳んだ状態で、後述する汚物収納バッグ複数枚相当長さ分嵌め合わせる。
【0011】
筒状ダクト16の下端部には環状に凹陥部18を適宜数設け、凹陥部18に嵌合するように環状弾性体19を連続処理バッグ用筒状体17の上から締め付ける。この締め付けは強固なものではなく、連続処理バッグ用筒状体17を引き下げる方向に引いたときに筒状ダクト16の周囲に蛇腹状に保持されている部分が筒状ダクト16と環状弾性体19との間を滑って移動できる程度としている。
上記した汚物シューター15の筒状ダクト16、筒状ダクト16に支持された連続処理バッグ用筒状体17等は充填室4の内部に収容されており連続処理バッグ用筒状体17は後述する手段で汚物収容バッグ21として汚物収容バッグ専用容器20によって受けられている。前記筒状ダクト16の下位には垂下してくる連続処理バッグ用筒状体17を挟んでその両側に上下2段に前記バッグ用筒状体17をその幅方向に熱溶着する熱溶着手段(図示せず)が設けられている。熱溶着手段は、前記バッグ用筒状体17をその両側から挟持し幅方向に延びる対のヒーター、或は筒状体17を挟持し幅方向に移動する対の熱ローラ等適宜の手段で良い。
そして、筒状体17の前記熱溶着された2ヶ所の中間位置において、筒状体17をその幅方向に切断するための切断手段25を設けている。
【0012】
本発明装置の作用につき、作業室2内に動物飼育ケージ7を置いた例につき説明する。 動物飼育ケージ7の底面は、排泄物を含む汚物が落下できるように簀の子6が設けられているので、排泄物等は汚物シュター15により筒状ダクト16を経て筒状ダクト16に垂下している連続処理バッグ用筒状体17内に落下する。連続処理バッグ用筒状体17の最下端部は後述する手段で筒状体17の幅方向に溶着24aされ汚物収容バッグ21となっており、連続処理バッグ用筒状体17内を落下した汚物は、前記筒状体17最下部に位置する汚物収容バッグ21内に集積される。
【0013】
適宜量の汚物が集積された汚物収容バッグ21を取り出すには次の如く操作する。充填室4の扉22を開き、連続処理バッグ用筒状体17を手動で100mm程度引き下げる。この際前記筒状体17は環状弾性体19により汚物シューター15の筒状ダクト16に締め付けられているが、手動による連続処理バッグ用筒状体17の引き下げにより、環状弾性体19の上位において汚物シューター15の筒状ダクト16に折り畳まれた状態で保持されている前記連続処理バッグ用筒状体17は引き下げられる。その引き下げられた範囲の2箇所を図2Bに示す如く前記筒状体17の幅方向に上下に2カ所小間隔部分23を有して平行に熱溶着24a,24bし汚物収容バッグ21を密閉した後に前記小間隔部分23の中央位置を鋏等適宜の切断手段で切り離す。
【0014】
切り離された汚物収容バッグ21は頑強で耐熱性の汚物収容バッグ専用容器20に収容され、扉22を開き安全キャビネット1から取り出す。その後は、専用容器20ごと滅菌器に投入する。滅菌前に汚物収容処理バッグは空気の熱膨脹により破裂する可能性があるので、滅菌器に移動後、小さな穴を開けておくと良い。
【0015】
切り離された連続処理バッグ用筒状体17は図2Cの如く下方に引き出し、次の汚物収容に備える。このとき、連続処理バッグ用筒状体17と筒状ダクト16との気密性は2本の環状弾性体19で図られるが、バッグ用筒状体17はポリエチレン製とすれば滑りやすく環状弾性体を緩めることなく下方に引き出すことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明にあっては、連続処理バッグ用筒状体を、汚物処理用として動物飼育ケージの下位において汚物シューターからの汚物収容に用いているが、特に袋詰めする収容物は限定されるものではなく、日常用いる雑貨,野菜,果実,その他の袋詰めにも用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明安全キャビネットの縦断側面図。
【図2】本発明連続処理バッグを示す一部縦断側面図で、Aはバッグ内に汚物ず落下している状態、Bはシールをした状態、Cは折られたバッグを引き出した状態を示す。
【図3】従来の安全キャビネットの縦断側面図。
【図4】従来の安全キャビネットを示す概略縦断側面図で、Aはケージの床敷を引き出し式にしたもの、Bは滅菌用排水タンクを設けたもの、Cは滅菌器を設けたもの。
【符号の説明】
【0018】
1 安全キャビネット
2 作業室
3 循環路
4 充填室
5 作業台
6 簀の子
7 動物飼育ケージ
8 送風機
9,10 ヘパフィルター
11,12 エア通路
15 汚物シューター
16 筒状ダクト
17 連続処理バッグ用筒状体
18 凹陥部
19 環状弾性体
20 汚物収容バッグ専用容器
21 汚物収容バッグ
22 扉
23 小間隔部分
24a,24b 熱溶着
25 切断手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清浄気流が流れる作業室の作業台に、簀の子を上面に有する汚物シューターを設け、汚物シューター下部の汚物排出用の筒状ダクトを囲って熱溶着性を有する連続処理バッグ用筒状体を嵌合状態に保持し、同筒状体を前記汚物排出口端部に引き出し可能な接圧で弾性バンドにより圧接把持し作業室下部に垂下してなり、前記弾性バンドによる把持部の下位には、連続処理バッグ用筒状体の幅方向に同筒状体を熱溶着する熱溶着手段及び切断手段を設けてなる安全キャビネット。
【請求項2】
汚物シューターの汚物排出口から作業室下部内に下がっている連続処理バッグを受ける容器を作業室下部に設けてなる請求項1記載の安全キャビネット。
【請求項3】
作業台に設けられ、漏斗状をなす汚物シューターの下部の汚物排出用の筒状ダクトを囲って連続処理バッグ用筒状体の上端部を蛇腹状に折り畳んで適宜長さを嵌め合わせて保持し、該バッグ用筒状体下端を熱溶着して袋状として所定長さ引き出し、汚物シューターから袋内に汚物を落下収容後、汚物シューターの筒状ダクトの下位位置において、バッグ用筒状体を所定間隔を有して平行に幅方向に熱溶着し、その間を切断することにより汚物を連続して袋体内に密閉することを特徴とする安全キャビネットにおける汚物収集方法。
【請求項4】
連続処理バッグ用筒状体は、熱溶着性を有し、所定間隔ごとに幅方向に熱溶着することで汚物収容バッグを構成することを特徴とする請求項3記載の安全キャビネットにおける汚物収集方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−118777(P2009−118777A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296276(P2007−296276)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(591066465)日本エアーテック株式会社 (27)
【Fターム(参考)】