説明

安全スイッチ

【課題】 ロック機能を備えた安全スイッチがロック状態においてアクチュエータが強制的にスイッチ本体から後退された場合であっても、アクチュエータのスイッチ本体からの後退を確実に検出することが可能な安全スイッチを提供する。
【解決手段】 駆動カム15の回転がロックされている状態で強引にアクチュエータ3を引抜くことによって、切欠部15bまたはロック体80の少なくとも一方が破壊されて、駆動カム15が回転可能な状態となった場合でも、駆動カム15のカム曲線部15cおよび操作ロッド21は破損することなく正常な状態である。そのため、駆動カム15が反時計方向へ回転すれば、接点部70の常閉接点39,40正常に開の状態となり、安全スイッチの破壊強度以上の力でアクチュエータ3がスイッチ本体1から後退した場合にも、アクチュエータ3のスイッチ本体1からの後退を確実に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば産業機械等の防護扉周縁の壁面に取り付けられ、防護扉が開かれたときには、産業機械等への電源供給を停止する安全スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業機械の防護扉などには、作業者が機械に巻き込まれて負傷するといったトラブルの発生を防止することを目的として、防護扉が完全に閉まっていないときには、機械を駆動させないようにする安全スイッチが配設されている。このような安全スイッチの一例として、例えば、特許文献1に記載の安全スイッチのように、操作キーが安全スイッチ内に挿入された後、該操作キーを安全スイッチ内で機械的にロックすることにより、操作キーの引抜を防止するロック機構を備えているものがある。
【0003】
このロック機能を備える安全スイッチは、ロボット等の産業機械に電気的に接続されるもので、スイッチ本体(キースイッチ)とアクチュエータ(キー)とにより構成されており、スイッチ本体は防護扉周縁の壁面に固着され、またアクチュエータは防護扉に固着される。そのときのアクチュエータの固着位置はスイッチ本体のキー挿入口に対向し、かつ、防護扉を閉鎖した状態のときにスイッチ本体の左上部のヘッドケース内に進入可能なように設定されている。
【0004】
そして、アクチュエータの進入により、スイッチ本体のヘッドケースの下方に位置する接点が閉に切り換わり、産業機械へ電源が供給されて機械が駆動可能な状態となる。一方、防護扉の開放によりアクチュエータが後退してヘッドケースから抜け出ると、内蔵の接点が開に切り換わり、機械への電源供給が遮断される。
【0005】
ところで、ヘッドケースには、アクチュエータの進入・後退に伴いアクチュエータと係合して回転されるカム体(駆動カム)と、カム体の下方に配置されて、該カム体の回転に応じてそのカム外形(カム曲線部)に沿って上下動する従動体が配設されている。そして、ヘッドケースの下方のスイッチ本体内部には、従動体に連動して上下動する作動体および操作体と、この操作体に連動して開閉する接点が配設されている。また、操作体付近に設けられたバネによって、従動体、作動体および操作体は上方へ付勢されており、従動体がカム体のカム外形を摺接し、カム体の回転に伴って従動体、作動体および操作体が一体的に上下動し、この上下動に連動して各接点の開閉状態が切り換わる。
【0006】
また、この安全スイッチには、左右に移動するロック部材(ロック体)、L字状のロックレバー、プランジャを有するロック機構が設けられている。ロックレバーは中央部が回転自在に軸支され、ロックレバーの左端はロック部材の右端部に、右端はプランジャの下端側にそれぞれ回転自在に連結されており、プランジャの移動がロックレバーの回転を経てロック部材に伝達される。また、ロック部材はバネによって左方へ付勢されている。そのため、カム体の時計方向への回転に伴って従動体がカム体の外形の径大部から径小部へと摺接し、バネの付勢により操作体が上方に移動するとともに、ロック部材が左方へ移動する。その結果、ロック部材が操作体の下方に入り込み、操作体の下方への移動がロック部材によって阻止されるため、従動体によりカム体が係止されることになり、これによってカム体が回転が阻止されたロック状態に保持され、アクチュエータの引抜きが阻止される。
【0007】
また、ロック機構のプランジャを駆動するための電磁ソレノイドが、スイッチ本体内の右上部に配設されており、該電磁ソレノイドが外部からの制御によって通電および通電遮断されることにより、プランジャがそれぞれ上動および下動する。そして、カム体のロック状態では、電磁ソレノイドは通電遮断の状態にあり、この状態から電磁ソレノイドが通電されると、その電磁的吸引力によってプランジャが上動し、プランジャの上動によってロックレバーが反時計方向に回転し、これによりロック部材が右方へ移動して操作体の下動が可能となり、カム体が反時計方向に回転可能な状態となる。その結果、カム体がロックされた状態から開放されてアンロック状態となり、アクチュエータの引抜きが可能となる。
【0008】
【特許文献1】特開平9−245584号公報([0035]〜[0044],図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記した従来の安全スイッチの場合、駆動カム(カム体)がロック状態であって、引抜きが阻止されているアクチュエータが、電磁ソレノイドの通電によって正常にロック解除されないまま、駆動カムのカム曲線部(カム外形)の破壊強度を越える引抜き方向への力がアクチュエータに強制的に加えられると、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、強引にアクチュエータを後退させて引抜こうとした場合、アクチュエータが係合している駆動カムを回転させようとする力となる。ところが、電磁ソレノイドに通電されていないため、ロック機構はロックの状態のままであり、従動体(操作ロッド)は駆動カムのカム曲線部の径小部に係合したままである。そのため、アクチュエータを引抜く力が大きいと、カム曲線部の破壊強度を越えてカム曲線部が破損し、駆動カムは回転可能な状態となり、アクチュエータが引抜かれるのに伴い、回転することとなる。
【0010】
しかしながら、駆動カムのカム曲線部が破損したにも関わらず、ロック機構はロックの状態のままであるため、従動体(操作体)は上動したままであり、スイッチ本体の接点はアクチュエータが引抜かれているにも関わらず、アクチュエータが進入状態にある電気信号を発し続けることになる。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ロック機能を備えた安全スイッチがロック状態においてアクチュエータが強制的にスイッチ本体から後退された場合であっても、アクチュエータのスイッチ本体からの後退を確実に検出することが可能な安全スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するため、本発明にかかる安全スイッチは、スイッチ本体の操作部に進入・後退自在にアクチェータが設けられ、前記アクチュエータの進入・後退に応じて、スイッチ部に設けられた操作ロッドが往復移動することにより接点部の接点が開閉して前記アクチュエータの進入・後退を検出する安全スイッチにおいて、前記操作部に回転自在に設けられた駆動カムと、前記スイッチ本体のロック機構部に設けられ前記駆動カムの回転をロックするロック機構とを備え、前記駆動カムは、その外周面に係合部、切欠部およびカム曲線部がそれぞれ形成され、前記アクチュエータの押込みに伴い、前記アクチュエータの一部が前記係合部に係合し、該係合状態のままで前記アクチュエータが前記操作部に進入するに連れて一方向に回転され、前記アクチュエータの引抜きに伴い、前記アクチュエータが前記操作部から後退するに連れて、前記アクチュエータの一部が前記係合部との係合状態から脱するまで他方向に回転され、この駆動カムの両方向への回転により、前記操作ロッドが前記カム曲線部を摺接することによって前記操作ロッドが往復移動し、前記ロック機構は、ロック位置とアンロック位置との間を前記駆動カムの回転軸に対してほぼ直交方向に移動自在に設けられ、前記アクチュエータが進入状態にあるときに前記ロック位置への移動により前記切欠部に係合して前記駆動カムの回転をロックし、前記アンロック位置への移動により前記切欠部への係合が解除されるロック体と、前記ロック体を移動させる駆動部とを備えることを特徴としている(請求項1)。
【0013】
このように構成された発明では、アクチュエータがスイッチ本体の操作部に押込まれて進入するのに伴い、該アクチュエータの一部が係合部と係合して、この係合状態のままでアクチュエータにより駆動カムが一方向に回転される。この駆動カムの回転に伴い、駆動カムのカム曲線部と操作ロッドとが摺接することによって、該操作ロッドが移動し、該操作ロッドの移動に伴って、接点部の接点が開閉する。そして、ロック機構の駆動部がロック体をロック位置まで移動させることによって、該ロック体と駆動カムの切欠部とが係合して、駆動カムの回転がロックされる。その結果、該駆動カムと係合しているアクチュエータの後退が阻止され、該アクチュエータを操作部から引抜くことが不可能となる。
【0014】
このように、駆動カムの回転がロックされている状態で強引にアクチュエータを後退させて操作部から引抜こうとした場合、アクチュエータの一部が駆動カムの係合部に係合しているため、駆動カムに強制的な回転力が加わる。ところが、駆動カムの切欠部にはロック体が係合したままであるため、アクチュエータを引抜く力が大きい場合、切欠部またはロック体の少なくとも一方が破壊されることがある。その結果、駆動カムは回転可能な状態となり、アクチュエータが引抜かれて操作部から後退するのに伴い他方向に回転され、アクチュエータの一部が係合部との係合状態から脱する。このとき、駆動カムのカム曲線部および操作ロッドは破損することなく正常な状態であるため、駆動カムの他方向への回転に伴って、カム曲線部と操作ロッドとが摺接しつつ操作ロッドが移動する。そして、該操作ロッドの移動に伴って、接点部の接点が正常に開閉するため、例えば、この接点の開閉に基づいてアクチュエータの引抜き(後退)を検出することができる。したがって、安全スイッチの破壊強度以上の力でアクチュエータがスイッチ本体から後退した場合にも、アクチュエータのスイッチ本体からの後退を確実に検出することができる。
【0015】
また、前記ロック体の先端部が前記ロック切欠部に係合し、当該先端部の破壊強度が、前記駆動カムの前記切欠部の破壊強度よりも低く設定されている構成でもよい(請求項2)。また、前記ロック体は、基部と該基部に連続する先端部とからなり、前記先端部と前記基部との境界部分には破壊強度を下げるための欠損部が形成されていることが望ましく、さらには、前記ロック体は、基部と該基部に連続する先端部とからなり、前記先端部は前記基部に接着されて形成されていることが望ましい。
【0016】
このような構成とすれば、ロック体の先端部の破壊強度は、駆動カムの切欠部の破壊強度より低く設定されているため、ロック体の先端部の方が駆動カムの切欠部よりも破損しやすい。そのため、アクチュエータが安全スイッチに進入して、かつ、ロック体が切欠部に係合することにより駆動カムがロックされた状態でアクチュエータがスイッチ本体から強引に引抜かれると、このときの引抜力は、駆動カムを係止しているロック体と切欠部との係合部分に集中するが、破壊強度の低い、ロック体の先端部が駆動カムの切欠部よりも先に破損し、駆動カムが回転可能になる。このように、スイッチ本体から無理にアクチュエータを引抜いた際には、ロック体の先端部のみが破損して、安全スイッチを構成するその他の部分は正常な状態を維持する。したがって、破損したロック体のみを交換すれば、再度、安全スイッチを正常な状態で使用することができるため、低コスト化を実現することができる。
【0017】
また、前記接点部が、前記スイッチ本体内において外部接続用ケーブルの端部に電気的に接続され、前記接点部の接点の開閉による電気信号によって前記アクチュエータの進入・後退の状態を検出するものである構成でもよい。このような構成とすれば、接点部の接点の開閉による電気信号により、外部からアクチュエータの進入・後退を検出することができる。
【0018】
また、前記接点部が、前記スイッチ本体内に設けられた常開接点および外部装置の動作制御に使用される常閉接点を備え、前記アクチュエータの進入に伴う前記操作ロッドの移動により、前記常開接点および常閉接点がそれぞれ開状態および閉状態となり、前記常開接点の開状態により、前記アクチュエータの進入を検出するための電気信号が得られ、前記常閉接点の閉状態により前記外部装置を操作不能状態から操作可能状態にする構成でもよい。このような構成とすれば、アクチュエータの進入に伴い常閉接点が閉状態となって、外部装置が操作不能状態から操作可能状態となる一方、常開接点はアクチュエータの進入に伴って開状態となる。このように、常閉接点とは逆の開閉動作を行う常開接点の開閉状態をモニタすることにより、アクチュエータの進入・後退に加えて、外部装置の状態を外部から確認することができる。
【0019】
また、前記駆動部は、前記ロック機構部に設けられその中心軸方向が前記ロック体の移動方向にほぼ直交して配設されたヒンジ型電磁石と、前記ヒンジ型電磁石への通電により電磁的吸引力を受けて変位し、該変位を前記ロック体に伝達して前記ロック体を移動させる伝達部とを備える構成でも構わない(請求項3)。このような構成とすれば、ヒンジ型電磁石はその中心軸方向がロック体の移動方向にほぼ直交するように配設され、該ヒンジ型電磁石への通電により発生した電磁的吸引力が働く方向を、伝達部を介して偏向してロック体に伝達することによって、該ロック体を移動させている。このように、ヒンジ型電磁石への通電による電磁的吸引力が働く方向を、伝達部によって偏向させてロック体に伝達しているため、プランジャ型電磁石のように該電磁的吸引力を直線的に利用するのに比べ、薄型かつ小型の安全スイッチを提供することができる。
【0020】
また、前記スイッチ本体は直方体状を有し、前記スイッチ本体の対向する一組の隅部の一方にアクチュエータ進入口が、他方にケーブル引き出し口がそれぞれ形成されており、
前記ケーブル引き出し口からケーブルが、ほぼ前記対向する一組の隅部を結ぶ方向へ引き出されている構成でもよい(請求項4)。このような構成とすれば、アクチュエータ進入口と、ケーブル引き出し口との関係から、ケーブルの引き出し方向の自由度が高く、安全スイッチを壁面または防護扉へ配設可能であり、また、アクチュエータ進入口が水平/垂直向きのどちらにでも配設可能となる。また、安全スイッチを裏表、どちらの面を配設場所へ密着させることもできる。したがって、安全スイッチの取り付けの自由度が増し、安全スイッチ取付けの選択範囲を広げることができる。
【0021】
また、前記ロック機構の少なくとも前記ロック体は、ユニット化されて前記駆動部に対して組み込み・取り外し自在に配設されている構成としてもよい。このような構成とすれば、ロック体がユニット化されて駆動部に対して組み込み・取り外し自在に配設されているため、ロック体が破損した場合であっても、このユニットを交換すればよく、短時間で作業効率よく安全スイッチを復元する事ができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、このように、駆動カムの回転がロックされている状態で強引にアクチュエータを後退させて操作部から引抜こうとした場合であっても、駆動カムの切欠部またはロック体の少なくとも一方が破壊されて駆動カムは回転可能な状態となり、操作ロッドは駆動カムのカム曲線部と摺接しつつ操作ロッドが移動することが可能で、接点部の接点は正常に開閉するため、例えば、この接点の開閉に基づいてアクチュエータの引抜き(後退)を検出することができ、アクチュエータのスイッチ本体からの後退を確実に検出することができる。
【0023】
また、請求項2に記載の発明によれば、ロック体の先端部の破壊強度は、駆動カムの切欠部の破壊強度より低く設定されているため、ロック体の先端部の方が駆動カムの切欠部よりも破損しやすく、破損したロック体のみを交換するだけで、安全スイッチを復元することができ、安全スイッチの復元に要するコストの低減を図ることができる。
【0024】
また、請求項3に記載の発明によれば、ヒンジ型電磁石はその中心軸方向がロック体の移動方向にほぼ直交するように配設され、該ヒンジ型電磁石への通電により発生した電磁的吸引力が働く方向を、伝達部を介して偏向してロック体に伝達することによって、該ロック体を移動させるため、プランジャ型電磁石のように該電磁的吸引力を直線的に利用するのに比べ、薄型かつ小型の安全スイッチを提供することができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、アクチュエータ進入口と、ケーブル引き出し口との関係から、安全スイッチを壁面または防護扉へ配設可能であり、また、アクチュエータ進入口が水平/垂直向きのどちらにでも配設可能となる。また、安全スイッチを裏表、どちらの面を配設場所へ密着させることもできる。したがって、安全スイッチの取付けの自由度が増し、安全スイッチ取付けの選択範囲を広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
<第1実施形態>
この発明の第1実施形態について図1ないし図5を参照して説明する。図1ないし図4はスイッチ本体の断面図、図5は安全スイッチの外観図を示す。
【0027】
本発明における安全スイッチは、上記した従来のものとほぼ同様に、外部装置であるロボット等の産業機械等にケーブルを介して電気的に接続されるスイッチであり、図1に示すように、スイッチ本体1と、アクチュエータ3とにより構成される。
【0028】
このとき、スイッチ本体1は、操作部5とスイッチ部7とロック機構部8とからなり、図示を省略する産業機械の防護扉周縁の壁面に固着される。また、アクチュエータ3は防護扉に固着され、その位置は操作部5の側面に形成されたアクチュエータ進入口9aに対向する位置であり、防護扉を閉鎖した状態のときに操作部5のアクチュエータ進入口9a内に進入する。なお、アクチュエータ3は、図1に示すように、基部3aと、この基部3aから突出する一対の押圧片3bと、これら両押圧片3bを互いに連結する連結片3cとから構成されている。このとき、幅が大きく厚みの薄い平板状のアクチュエータの押圧片と比べ、両押圧片3bは幅が小さく厚みのある形状を有し、連結片3cを通る断面がコ字状を成している。
【0029】
スイッチ本体1の左上部に配設された操作部5は、図1ないし図4に示すように、ケース部材11と、回転軸13がこのケース部材11の内面に枢支されて回転自在に支持された駆動カム15を備えている。この駆動カム15の外周面上部には、アクチュエータ3の連結片3cが嵌挿する係合部15aが、上記したアクチュエータ進入口9aから覗く位置に形成されている。さらに、駆動カム15の外周面上部には後述するロック機構部8のロック体80が係合する切欠部15bが形成されている。また、駆動カム15の外周面下部にはカム曲線部15cが形成されており、操作部5の下方に位置するスイッチ部7から先端部分が出退自在に操作部5内に突出する操作ロッド21の半球状の先端が駆動カム15のカム曲線部15cを摺接する。そして、駆動カム15の回転に伴って操作ロッド21が進入・後退して往復移動すると、スイッチ部7に内蔵されている接点部70の接点の開閉状態が切り換えられる。
【0030】
次に、スイッチ部7について説明する。このスイッチ部7は、図1に示すように、ケース部材11と一体となって直方体状のスイッチ本体1を形成するケース部材33の内部であって操作部5の下方に配設され、接点が内蔵された接点部70と、上記した操作ロッド21とから構成されている。また、このケース部材33に、操作部5側のケース部材11が着脱自在に取り付けられるように構成されている。そして、アクチュエータ進入口9aが形成されたケース部材11側の隅部に対向するケース部材33側の隅部には、外部接続用ケーブルのケーブル引き出し口33aが形成されている。また、図1に示すように、ケース部材33の外面には、スイッチ本体1を産業機械の防護扉周縁の壁面に取り付けるためのボルトが挿入される一対の取付孔33bが形成されている。
【0031】
ところで、接点部70には、操作ロッド21の他端部に接し操作ロッド21と一体となって移動する可動部材37と、この可動部材37に連動して開閉する第1および第2常閉接点39,40とを備えている。各常閉接点39,40は、それぞれ可動端子39a,40aと固定端子39b,40bとからなり、各可動端子39a,40aは可動部材37に固定され、各固定端子39b,40bは接点部70に配設された枠部材43に固定されている。ここで、各常閉接点39,40のうち、例えば、常閉接点39は産業機械への電源供給及び遮断用であり、後述するロック機構部8に配設された常閉接点と直列に接続されている。また、常閉接点40はこれら電源供給及び遮断用の接点の開閉状態のモニタ用である。
【0032】
そして、可動部材37は、板状の基板部45と、この基板部45の一方面(図1の表面側)の両端に立設される第1取付部53および第2取付部54とから構成されており、その一端側が操作ロッド21の他端と当接するとともに、その他端側にコイルバネ(図示省略)が取り付けられ、コイルバネによって可動部材37が操作部5の方向、すなわち上方に付勢されている。また、各取付部53,54には、一対の突起53a,53b,54a,54bがそれぞれ可動部材37の長手方向に互いに対向して設けられている。
【0033】
そして、第1,2常閉接点39,40の可動端子39a,40aが、一方の突起53a,54aの根元部それぞれに着脱自在に取り付けられるとともに、各対の突起53a,53b,54a,54bにぞれぞれ外嵌されたバネ(図示省略)によって、各可動端子39a,40aが各取付部53,54に押し付けられて固定されており、これらのバネにより、特に図2に示されるように、各可動端子39a,40aそれぞれと各固定端子39b,40bそれぞれとの間の接触力が発生されている。
【0034】
ここで、ケース部材33には、産業機械と電気的に接続されるケーブル(図示省略)が装着されており、接点部70の内部においてケーブルと各常閉接点39,40とが電気的に接続され、各常閉接点39,40が開閉することによる電気信号によって、アクチュエータ3の操作部5への進入・後退の検出および産業機械への電源供給及び電源供給の遮断が行われるようになっている。
【0035】
ところで、第2常閉接点40の固定端子40bは、図1に示すように、接点部70の枠部材43に形成された常閉接点用取付部43aに着脱自在に取り付けられ、可動端子40aとともにその取り付け位置および取り付け状態を変更可能に取り付けられており、第2常閉接点40を常開接点に切り換えることができるようになっている。
【0036】
すなわち、枠部材43には、上記した常閉接点用取付部43aに加え、固定端子40bが着脱自在に取り付けられる常開接点用取付部43bが形成されており、第2常閉接点40の可動端子40aを一方の突起54aから取り外して他方の突起54b側に取り付けるとともに、固定端子40bを常閉接点用取付部43aから取り外して常開接点用取付部43bに取り付けることにより、第2常閉接点40を常開接点に切り換えることができる。こうすることで、この常開接点は、第1常閉接点39と逆の開閉動作を行うため、第2常閉接点40の場合とは異なる動作のモニタ用接点として用いることができ、用途に応じて常閉と常開の選択を行うことができる。
【0037】
なお、アクチュエータ3が進入していない図1の状態では、操作ロッド21はコイルバネに抗して駆動カム15のカム曲線部15cにより押圧されてほとんどの部分がスイッチ部7側に没した状態にあり、操作ロッド21により可動部材37が押し込まれている。これによって、各常閉接点39,40の可動端子39a,40aおよび固定端子39b,40bが離間し、各常閉接点39,40が開状態となり、産業機械への電源供給が遮断されて産業機械が操作不能な状態となっている。
【0038】
次に、ロック機構部8について説明する。このロック機構部8は、図1に示すように、ケース部材33の内部であって操作部5の右方に配設され、上記したロック体80とロック体80を移動させる駆動部81とを有するロック機構8aと、常開および常閉接点が内蔵されたロック接点部8bと、手動ロック解除機構8cとから構成されている。
【0039】
ロック機構8aを構成するロック体80は図1に示すアンロック位置と、図2に示すロック位置との間を、駆動カム15の回転軸13に対してほぼ直交方向に移動自在にロック体支持部801に支持されている。また、ロック体80の先端部80aの外径は基部80bの外径よりも小さく構成されている。そして、ロック体80がロック位置に移動した際、先端部80aが駆動カム15の切欠部15bと係合することによって、駆動カム15の回転をロックする。一方、ロック体80がアンロック位置に移動した際、先端部80aと切欠部15bとの係合が解除され、駆動カム15が回転可能な状態となる。
【0040】
また、駆動部81は、コアにコイルが巻回されてなるヒンジ型電磁石81aと、ヒンジ型電磁石81aへの通電により電磁的吸引力を受けて変位する略L字形の鉄等の磁性材料からなる作動体81bと、作動体81bを左方に付勢する板バネからなる復帰バネ81cと、作動体81bの変位をロック体80へ伝達するリンク体81dとで構成されている。ヒンジ型電磁石81aは、その中心軸方向がロック体80の移動方向に対してほぼ直交して配設されており、ロック接点部8bのケース82に支持されている。また、図1に示すように、ヒンジ型電磁石81aとケース82との間には隙間83が生じるように、ヒンジ型電磁石81aはケース82に支持されており、隙間83に作動体81bと復帰バネ81cとが配設されている。
【0041】
作動体81bは、その屈曲部81b1が鈍角となるように構成された略L字形の部材であって、屈曲部81b1部分を揺動の中心軸として揺動自在に隙間83内に配設されている。また、復帰バネ81cは、隙間83内であって、作動体81bの右方に、その付勢力が左方を向くように配設されている。また、作動体81bの上端部81b2にはリンク体81dが連結されており、リンク体81dにロック体80が軸支されている。
【0042】
したがって、図2に示すように、ヒンジ型電磁石81aが通電遮断されていれば、作動体81bは復帰バネ81cによって左方に付勢され、上端部81b2は屈曲部81b1部分を揺動の中心軸として左方に移動する。そして、上端部81b2が左方に移動するのに伴い、上端部81b2に連結されているリンク体81dが左方に移動して、リンク体81dに軸支されているロック体80が図2中の矢印方向、すなわちロック位置へと移動する。一方、ヒンジ型電磁石81aが通電されていれば、作動体81bの下左端部81b3がヒンジ型電磁石81aの電磁的吸引力によってヒンジ型電磁石81aへ吸引される。その結果、作動体81bの上端部81b2は復帰バネ81cの付勢力に抗しつつ、屈曲部81b1を揺動の中心軸として右方に移動する。そして、上端部81b2が右方に移動するのに伴い、上端部81b2に連結されているリンク体81dが右方に移動して、リンク体81dに軸支されているロック体80が図3中の矢印方向、すなわちアンロック位置へと移動する。このように、この実施形態では、作動体81bとリンク体81dとが、本発明の「伝達部」として機能している。
【0043】
また、ロック接点部8bのケース82内には常開および常閉接点が配設されている(図示省略)。これら、常開および常閉接点のうちの可動接点はそれぞれ、上記したリンク体81dに支持されている。したがって、これらの可動接点はリンク体81dの動きに連動して、それぞれ同じ方向に移動することとなる。この実施形態では、リンク体81dが左方に移動した場合、すなわち、ロック体80がロック位置へ移動した場合、常開および常閉接点は、それぞれ開および閉状態となり、リンク体81dが右方へ移動した場合、すなわち、ロック体80がアンロック位置へ移動した場合、常開および常閉接点は、それぞれが閉および開状態となるように構成されている。また、上記したように、例えば、ケース82内の常閉接点と、接点部70に配設された接点のうち、産業機械と接続されている常閉接点39とが直列に接続されている。また、これらの常開接点の電気信号をモニタすることによって、ロック体80の動作を検出することができる。
【0044】
また、手動ロック解除機構8cは凸部84aを有する解除カム84を備えている。図2に示すように、ロック体80がロック位置へ移動して、ロック体80と切欠部15bとが係合状態にある場合に、スイッチ本体1の外部から、解除キー等によって解除カム84を時計回りに回転させることによって、ロック状態を解除することができる。すなわち、解除カム84を時計方向に回転させることによって、凸部84aがリンク体81dと摺接しつつ、リンク体81dを右方へ移動させることができる。その結果、リンク体81dが右方へ移動するのに伴い、リンク体81dに軸支されているロック体80も連動して右方へ移動し、ロック体80と切欠部15bとの係合状態が解除され、駆動カム15を回転可能な状態とすることができる。
【0045】
続いて動作について説明する。図1に示すように、アクチュエータ3がスイッチ本体1の操作部5に進入していない場合、操作ロッド21はコイルバネに抗して駆動カム15のカム曲線部15cの径大部分により押圧されてほとんどの部分がスイッチ部7側に没した状態にあり、操作ロッド21により可動部材37が押し込まれている。これによって、各常閉接点39,40の可動端子39a,40aおよび固定端子39b,40bが離間し、各常閉接点39,40が開状態となり、産業機械への電源供給が遮断されて産業機械が操作不能な状態となっている。また、ロック体80は復帰バネ81cに抗して駆動カム15の外周部により押圧されてアンロック位置へと移動しており、ロック接点部8bの常開および常閉接点は、それぞれ閉および開状態となっている。
【0046】
次に、防護扉等を閉じることによって、アクチュエータ3が操作部5に進入すると、図2に示すようにアクチュエータ3の連結片3cが駆動カム15の係合部15aと係合して、アクチュエータ3の進入に伴って駆動カム15が時計方向に回転される。駆動カム15が回転するのに伴い、操作ロッド21の先端がカム曲線部15cの径大部分から径小部分へと摺接しつつ、操作ロッド21がコイルバネの付勢力によって上方に移動する。操作ロッド21が上方に移動するのに伴って、常閉接点39,40が開状態から閉状態となる。また、駆動カム15の回転に伴い、切欠部15bがロック体80と対向する位置に移動することによって、復帰バネ81cの付勢力によってロック体80が左方に移動して、切欠部15bとロック体80の先端部80aとが係合状態となり、駆動カム15の回転がロック、アクチュエータ3の引抜が阻止された状態となる。また、ロック体80がロック位置へ移動することによって、ロック接点部8bの常開および常閉接点は、それぞれ開および閉状態へと切り換わる。したがって、ロック接点部8bの常閉接点および第1常閉接点39が同時に閉状態となるため、これらの常閉接点に直列に接続されているロボット等の産業機械に電源が供給され、産業機械が操作可能な状態となる。
【0047】
続いて、ヒンジ型電磁石81aが外部からの制御によって通電された場合、図3に示すように、作動体81bの下左端部81b3がヒンジ型電磁石81aの電磁的吸引力によってヒンジ型電磁石81aに向って吸引される。そのため、作動体81bの上端部81b2は復帰バネ81cの付勢力に抗しつつ屈曲部81b1を揺動の中心軸として右方に移動するため、ロック体80が右方のアンロック位置へと移動する。したがって、ロック体80と切欠部15bとの係合状態が解除されるため、駆動カム15の回転のロック状態が解除され、アクチュエータ3が後退可能になり、防護扉等を開放する事が可能な状態となる。また、ロック体80がアンロック位置へと移動するのに伴い、ロック接点部8bの常閉接点および常開接点が、それぞれ開および閉状態に切り換わり、その結果、ロック接点部8bの常閉接点および第1常開接点39と直列に接続されている産業機械の電源が遮断され、産業機械は動作不可能な状態となるともに、ロック接点部8bの常開接点を流れる電気信号によってアンロック状態であることが検出される。
【0048】
ところで、図2に示すように駆動カム15の回転がロックされている状態で強引にアクチュエータ3を後退させて操作部5から引抜こうとした場合について、図2および図4を参照しつつ詳述する。アクチュエータ3を強引に後退させた場合、アクチュエータ3の連結片3cが駆動カム15の係合部15aに係合しているため、駆動カム15に強制的な回転力が加わる。このとき、駆動カム15の切欠部15bにはロック体80の先端部80aが係合したままであるため、アクチュエータ3を引抜く力は、駆動カム15を係止している先端部80aと切欠部15bとの係合部分に集中する。そして、アクチュエータ3をスイッチ本体1から強引に引抜けば、先端部80aの径を小さくして先端部80aの破壊強度を切欠部15bの破壊強度よりも低く設定しているため、破壊強度の低いロック体80の先端部80aが駆動カム15の切欠部15bよりも先に破損し、駆動カム15が回転可能な状態となる。
【0049】
そして、アクチュエータ3が操作部5から後退するのに伴い、駆動カム15は反時計方向へ回転されて、アクチュエータ3の連結片3cが係合部15aとの係合状態から脱する。このとき、図4に示すように、駆動カム15のカム曲線部15cおよび操作ロッド21は破損することなく正常な状態であるため、駆動カム15の反時計方向への回転に伴って、操作ロッド21がカム曲線部15cの径小部分から径大部分へと摺接しつつ操作ロッド21がコイルバネの付勢力に抗しつつ下方に移動する。そして、操作ロッド21の下方への移動に伴って、接点部70の常閉接点39,40が正常に開の状態となる。すなわち、接点部70が有する常閉接点39,40が正常に動作しているため、これらの常閉接点39,40の状態に基づいてアクチュエータ3の引抜き(後退)を検出して、産業機械への電源が確実に遮断される。
【0050】
以上のように、この実施形態では、駆動カム15の回転がロックされている状態で強引にアクチュエータ3を後退させて操作部5から引抜くことによって、破壊強度の低いロック体80が破損して、駆動カム15が回転可能な状態となった場合でも、駆動カム15のカム曲線部15cおよび操作ロッド21は破損することなく正常な状態である。そのため、アクチュエータ3が操作部5から後退するのに伴い、駆動カム15が反時計方向へ回転されてアクチュエータ3の連結片3cが係合部15aとの係合状態から脱するときに、操作ロッド21がカム曲線部15cの径小部分から径大部分へと摺接しつつ操作ロッド21は下方へ移動する。そして、この操作ロッド21の下方への移動に伴って、接点部70の常閉接点39,40は正常に開の状態へ切り換わるため、この常閉接点の状態に基づいてアクチュエータ3の引抜き(後退)を検出することができる。したがって、正常にロック解除されないまま防護扉等が強引に開放されてアクチュエータ3がスイッチ本体1から引抜かれた場合にも、アクチュエータ3のスイッチ本体1からの後退を確実に検出することができる。
【0051】
また、この実施形態では、ロック体80の先端部80aの破壊強度を、駆動カム15の切欠部15bの破壊強度より低く設定しているため、ロック体80の先端部80aの方が駆動カム15の切欠部15bよりも破損しやすい。そのため、ロック体80の先端部80aが破損しても、破損したロック体80のみを交換すれば、再度、安全スイッチを正常な状態で使用することができるため、低コスト化を実現することができる。
【0052】
また、この実施形態では、接点部70に配設された常閉接点39,40の開閉による電気信号によってアクチュエータ3の操作部5内への進入・後退の状態を検出しているため、常閉接点39,40の開閉による電気信号により、外部からアクチュエータ3の進入・後退を検出することができる。
【0053】
また、この実施形態では、ヒンジ型電磁石81aをそのコア(中心軸)の方向がロック体80のロック位置とアンロック位置との間の移動方向にほぼ直交するように配設し、ヒンジ型電磁石81aへの通電により発生した電磁的吸引力が働く方向を、作動体81bおよびリンク体81dを介して偏向してロック体80に伝達することによって、ロック体80を移動させているため、例えば、プランジャ型電磁石のように該電磁的吸引力を直線的に利用するのに比べ、安全スイッチ全体の薄型化、小型化を図ることができる。
【0054】
また、この実施形態では、スイッチ本体1は直方体状を有し、スイッチ本体1の対向する一組の隅部の一方にアクチュエータ進入口9aが、他方にケーブル引き出し口33aがそれぞれ形成されている。このため、図5に示すように、アクチュエータ進入口9aと、ケーブル引き出し口33aとの関係から、ケーブルの引き出し方向の自由度が高く、安全スイッチを壁面または防護扉へ配設可能であり、また、アクチュエータ進入口が水平/垂直向きのどちらにでも配設可能となる。また、安全スイッチを裏表、どちらの面を配設場所へ密着させることもできる。したがって、安全スイッチの取付けの自由度が増し、安全スイッチ取付けの選択範囲を広げることができる。また、このような構成とすれば、安全スイッチの取付けの自由度が増すことによって、従来のようにアクチュエータ進入口を2つ設けなくてもよいため、未使用の側のアクチュエータ進入口からゴミ等が進入することによって安全スイッチが故障するのを防止することができ、安全スイッチの耐久性の向上も図ることができる。なお、図5(a)は安全スイッチの表面を上側にした図、図5(b)は安全スイッチの裏面を上側にした図である。
【0055】
<第2実施形態>
図6は本発明にかかるロック体ユニットを示す図であり、図6を参照しつつ本発明にかかる安全スイッチの第2実施形態について詳述する。この第2実施形態が、上記第1実施形態と大きく異なる点は、ロック機構のロック体が、ユニット化されて駆動部に対して組み込み・取り外し自在に配設されている点であり、その他の構成および動作は、上記第1実施形態と同様である。以下、第1実施形態との相違点を中心に第2実施形態について詳細に述べる。なお、第1実施形態と同一な構成および動作については、その構成および動作の説明を省略する。
【0056】
図6に示すように、ロック体ユニット802は、ロック体支持部802cおよびシール部材802a,802bでロック体802dを支持することによって構成されている。そして、このロック体ユニット802が駆動部を構成するヒンジ型電磁石81aの上方に組み込み・取り外し自在に配設されている。また、ロック体802dは基部802eと、基部802eに連続した先端部802fとで構成されており、基部802eと先端部802fとの境界には、破壊強度を下げるための孔802gが穿設されている。
【0057】
このようにロック体802dがロック体ユニット802としてユニット化されて駆動部に対して組み込み・取り外し自在に配設されているため、ロック体802dが破損した場合であっても、このロック体ユニット802を交換すればよく、短時間で作業効率よく安全スイッチを復元する事ができる。また、ロック体802dの先端部802fの破壊強度を下げるための孔802gが設けられているため、アクチュエータが安全スイッチ本体から強引に引抜かれたときには、ロック体802dの先端部802fを、確実に先に破損させて、駆動カムの切欠部を正常な状態に維持する事が出来る。したがって、アクチュエータが安全スイッチ本体から強引に引抜かれることによって、安全スイッチが故障したときには、ロック体ユニット802を交換するだけで安全スイッチを正常な状態に復元する事ができる。
【0058】
<その他>
また、ロック体は上記した構成に限定されず、例えば図7に示すように種々の変更を加えることが可能である。なお、図7はロック体を示すである。図7(a)に示すロック体804は、基部804bと基部804bに連続する先端部804aとからなり、先端部804aと基部804bとの境界部分には破壊強度を下げるための、例えば溝状の欠損部804cが形成されている。また、図7(b)に示すロック体803は、基部803bと基部803bに連続する先端部803aとからなり、先端部803aは基部803bに接着されて形成されている。このとき、基部803bと先端部803aは同一部材、異種部材のいずれでも構わない。このような構成とすれば、アクチュエータが安全スイッチ本体から強引に引抜かれたとき、駆動カムの切欠部ではなく、ロック体の先端部を確実に破損させることができる。なお、上記欠損部を設けた状態で、基部と先端部とを接着する構成でももちろんよい。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、接点部に配設された常閉接点のうちの一方を常開接点としてもよい。この場合、常閉接点を外部装置の動作制御に使用して、常開接点をアクチュエータの進入を検出するための電気信号を得るための接点とすればよい。このような構成とすれば、アクチュエータの進入に伴い常閉接点が閉状態となって、外部装置が操作不能状態から操作可能状態となる一方、常開接点はアクチュエータの進入に伴って開状態となる。このように、常閉接点とは逆の開閉動作を行う常開接点の開閉状態をモニタすることにより、アクチュエータの進入・後退に加えて、外部装置の状態を外部から確認することができる。
【0060】
また、上記した実施形態では、2個の常閉接点39,40を用い、その開閉動作により産業機械への電源供給及び供給遮断を行っているため、例えば、常閉接点39,40が閉状態となって、産業機械への電源供給が行われている際に、常閉接点39,40の可動端子39a,40aと固定端子39b,40bとが溶着した場合であっても、アクチュエータ3が後退し、操作ロッド21によって可動部材37が押し込まれることにより、溶着した可動端子39a,40bと固定端子39b,40bとを強制的に開離することができ、安全スイッチの信頼性を向上することができる。
【0061】
また、上記した実施形態では、常閉接点を2個設けているが、これに限定されるものではなく、1個または3個或いは、4個以上設けてもよい。なお、安全スイッチとしての信頼性を高めるためには、常閉接点を少なくとも2個設けることが望ましい。さらに、第2常閉接点40は、可動端子40aと固定端子40bの位置を変更することにより、常開接点に切り換えることができるよう構成されているため、スイッチ部7の接点構成を用途に応じて簡単に変更することができる。
【0062】
このとき、第2常閉接点40を常開接点に切り換える場合には、可動端子40aと固定端子40bの位置を変更するだけよく、各接点構造に専用の部品を必要としないため、コストの低減を図ることができ、しかも部品が増加することによる部品の組間違え等も未然に防ぐことができる。なお、上記した実施形態では、第2常閉接点40のみを接点構造が切り換え可能な接点として構成しているが、これに限定されるものではなく、接点構造が切り換え可能な接点の数は任意である。
【0063】
また、上記した第1および第2実施形態では、復帰バネ81cのバネ荷重(付勢力)によってロック体80をロック位置へ移動させて、ヒンジ型電磁石81aが通電状態となったときの電磁的吸引力によってロック体80をアンロック位置へ移動させているが、この電磁的吸引力によってロック体80をロック位置へ移動させてロック機構8aをロック状態としてもよい。この場合、例えば、ロック体80をアンロック位置へ移動させる向きに付勢力が働くような復帰バネを配設するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の第1実施形態におけるスイッチ本体の断面図である。
【図2】この発明の第1実施形態におけるスイッチ本体の断面図である。
【図3】この発明の第1実施形態におけるスイッチ本体の断面図である。
【図4】この発明の第1実施形態におけるスイッチ本体の断面図である。
【図5】この発明の第1実施形態における安全スイッチの外観図である。
【図6】この発明の第2実施形態におけるロック体ユニットを示す図である。
【図7】この発明の他の実施形態におけるロック体を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1…スイッチ本体
3…アクチュエータ
33a…ケーブル引き出し口
5…操作部
15…駆動カム
15a…係合部
15b…切欠部
15c…カム曲線部
21…操作ロッド
39,40…常閉接点(接点)
7…スイッチ部
70…接点部
8…ロック機構部
8a…ロック機構
80,802d,803,804…ロック体
802…ロック体ユニット
80a,802f,803a,804a…先端部
80b,802e,803b,804b…基部
81…駆動部
81a…ヒンジ型電磁石(駆動部)
81b…作動体(駆動部、伝達部)
81d…リンク体(駆動部、伝達部)
9a…アクチュエータ進入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ本体の操作部に進入・後退自在にアクチェータが設けられ、前記アクチュエータの進入・後退に応じて、スイッチ部に設けられた操作ロッドが往復移動することにより接点部の接点が開閉して前記アクチュエータの進入・後退を検出する安全スイッチにおいて、
前記操作部に回転自在に設けられた駆動カムと、前記スイッチ本体のロック機構部に設けられ前記駆動カムの回転をロックするロック機構とを備え、
前記駆動カムは、
その外周面に係合部、切欠部およびカム曲線部がそれぞれ形成され、前記アクチュエータの押込みに伴い、前記アクチュエータの一部が前記係合部に係合し、該係合状態のままで前記アクチュエータが前記操作部に進入するに連れて一方向に回転され、前記アクチュエータの引抜きに伴い、前記アクチュエータが前記操作部から後退するに連れて、前記アクチュエータの一部が前記係合部との係合状態から脱するまで他方向に回転され、この駆動カムの両方向への回転により、前記操作ロッドが前記カム曲線部を摺接することによって前記操作ロッドが往復移動し、
前記ロック機構は、
ロック位置とアンロック位置との間を前記駆動カムの回転軸に対してほぼ直交方向に移動自在に設けられ、前記アクチュエータが進入状態にあるときに前記ロック位置への移動により前記切欠部に係合して前記駆動カムの回転をロックし、前記アンロック位置への移動により前記切欠部への係合が解除されるロック体と、前記ロック体を移動させる駆動部とを備える
ことを特徴とする安全スイッチ。
【請求項2】
前記ロック体の先端部が前記切欠部に係合し、
当該先端部の破壊強度が、前記駆動カムの前記切欠部の破壊強度よりも低く設定されていることを特徴とする請求項1記載の安全スイッチ。
【請求項3】
前記駆動部は、
前記ロック機構部に設けられその中心軸方向が前記ロック体の移動方向にほぼ直交して配設されたヒンジ型電磁石と、
前記ヒンジ型電磁石への通電により電磁的吸引力を受けて変位し、該変位を前記ロック体に伝達して前記ロック体を移動させる伝達部とを備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の安全スイッチ。
【請求項4】
前記スイッチ本体は直方体状を有し、前記スイッチ本体の対向する一組の隅部の一方にアクチュエータ進入口が、他方にケーブル引き出し口がそれぞれ形成されており、
前記ケーブル引き出し口からケーブルが、ほぼ前記対向する一組の隅部を結ぶ方向へ引き出されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の安全スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−252778(P2006−252778A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63333(P2005−63333)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)