安全停止装置とその方法
本件は、たとえば自動車用あるいは航空機器用の装置を衝撃や振動に曝す試験に用いられる振動試験機に用いることの出来る安全停止装置について記述するものである。こうした試験機や被試験装置はいずれも高価なものであるので、試験中に損傷されてはならない。故障が起きた場合、制御されないエネルギー散逸が起きて、試験中の装置や試験機自体の定格を超えるような過剰な力が発生することがあり得る。本発明は、エネルギーの流れを、制御されたやり方と速さで、エネルギー溜めの側に切り替えることによって加振システムおよび付随する力学的な部分を速やかにかつ安全に確保して停止させることを可能にする。これは、システム内の異常を検知すること、そして加振システムや供試体を損傷する危険をなくすよう、エネルギーの流れを制御できるやり方で切り替えて散逸させることで実現される。
【発明の詳細な説明】
【背景】
【0001】
本発明は、安全停止装置とその方法に関するものである。本発明は、特に振動試験装置ないし加振システムのための安全停止装置および関連する振動試験の方法に関するものであるが、必ずしもこれにのみ限定されるものではない。
【従来技術】
【0002】
振動試験実施中において、供試品に振動を加えている最中の試験装置を安全に停止させるという要求が発生することは珍しくない。ここで、試験装置とは例えば自動車や航空機用の装置を衝撃試験や振動試験するために設計された工業用の振動試験装置などのことである。このような装置は、一般に高価である。また、試験に供される航空機部品や自動車部品は、往々にしてたった1個だけの試作品として作られたものであることが多く、したがってそれ自身高価なものでありうる。よって、試験中に不用意にあるいは必要も無く損傷を受けるようなことがないようにすることが極めて重要である。
【0003】
加振システムを安全に停止させる必要は、さまざまな要因によって発生しうる。なんらかの故障が原因で加振システムを止めねばならないことがあるが、このような場合、システムの安全停止には、エネルギーの新たな流入を直ちに止めることと共に、加振システムおよびそれに付随して振動しているあらゆる部分を速やかに確保して正規の停止位置で停止させることが求められる。
【0004】
一方、安全停止システムには、それがひとたび作動した場合、加振システムの中に電気的および機械的エネルギーとして蓄えられているエネルギーを、試験中の供試体と加振システムの両方に損傷を与えることなく、安全に放出するという要求が課せられる。ところで、損傷を与えないためには余分な電流や機械的な力を加振システムに与えないことが重要であるが、加振システムに閉ループ制御が行なわれている場合、系を不安定にする恐れがあるので、これは特に重要である。
【0005】
機械的に振動するシステムの変位は、通常、機械的ストッパーによって制限されている。この機械的ストッパーの間の空間が加振システムの動いて良い範囲であり、正常運転時には、制御器が加振システムのテーブル変位が常にこの範囲に収まるように制御している。しかし、緊急停止が起動された場合には、加振システムを完全に掌握して制御することが出来ないことがある。このような場合、システムに蓄えられたエネルギーが加振テーブルを機械的ストッパーのところまで動かしてしまう(衝突することもある)ということがおきる。
【0006】
典型的な加振システムの非常停止は、次の2段階で起きる;第一段階では保護回路が作動する。これは理想的には数ミリ秒以内の極めて短い時間内に速やかに起きる。保護回路が起動されると、続いてエネルギーの放出が起きるが、これは比較的ゆっくりした過程である。システムに蓄えられた大きなエネルギーを与えられて、このエネルギーを制御されたやり方で散逸させるというのは厄介な要求である。と言うのは、もし加振システムの可動部分が機械的ストッパーを叩くことがあると、試験監視中の加振システムと供試体に余分な力が加わったことになり、この力のせいで破壊が起きるかもしれない可能性が秘められているので、こういうことは決して起きてはならないからである。
【0007】
つまり、求められている解決は、単にシステムのエネルギーを散逸させるというだけのものではないのである。もしきちんと制御されたやり方で行なわれないと、その結果生じた力が試験中の供試体の仕様、あるいは加振システムそれ自身の定格を超えてしまうことがありうるからである。例えば、振動子(アーマチュア)の持っているエネルギーによって駆動コイルに電流が発生し、その電流によって力が発生する場合があるが、その結果(衝突が起きてさらに)大きな力が発生することがあるのだ。最悪の場合、この電流によって電気部品が破壊されることもある。従って、多くの工学システムでそうであるように、ここにはトレードオフの関係がある。エネルギー散逸をゆっくり起こさせすぎる(その結果、試験装置や供試体を壊す)か、急速に散逸させすぎる(その結果、制御できない過剰な力を発生させる)か、ということの間で適切な選択が行なわれねばならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的の一つは、制御できないエネルギー散逸の発生を防ぐことである。特に、例えば停電や回路短絡や試験部品の故障、また試験システムの部分的な故障などの際のそれを防ぐことである。
【0009】
他の目的は、安全停止装置を提供することであって、この装置とはシステムに蓄えられたエネルギーの速やかな散逸を監視し制御するものである。
【0010】
更に他の目的は、本件に関わる最適な安全停止の全体系を決定するための方法を提供することである。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第一の側面によれば、システムの状態を知ることの出来る少なくともひとつのセンサ、前記システムの状態を導出するための手段、システムからエネルギーを吸収するエネルギー溜め、予め定めてあった判断基準のひとつまたは複数に合致するシステム状態の不具合が発生した場合にシステムを損傷から守るためにシステムからエネルギー溜めにエネルギーを制御できるやり方で輸送する手段を備えた安全停止装置を提供することができる。
【0012】
本発明の第二の側面によれば、システムの状態を知ることの出来る少なくともひとつのセンサ、前記システムの状態を導出するための手段、システムからエネルギーを吸収するエネルギー溜め、予め定めてあった判断基準のひとつまたは複数に合致するシステム状態の不具合が発生した場合にシステムを損傷から守るためにシステムからエネルギー溜めにエネルギーを制御できるやり方で輸送する手段を備えた振動試験装置のための安全停止装置を提供することができる。
【0013】
エネルギー溜めは、可変式の負荷であることが望ましい。原理的には、この可変負荷は手動式で設定される電気抵抗であり、かつ設定は運転に先立って手動式に行なうことが出来ればよい。
【0014】
また、運転に先立って決めてある条件に基づいて、エネルギー溜め、可変負荷または抵抗を、自動設定するための手段が準備されるのが望ましい。運転に先立って決めておく条件は、(装置の)設置時に定められることもあるし、ユーザがプリセットすることもある。または、供試体を用いてあるいは用いないで(例えば、ダミーを使うなど)行なう試行によって決めることもあるし、熟練技術者による他の何らかの技法で決められても良い。
【0015】
本発明の第三の側面によれば、システムの異常状態を検知するステップ、予め定めてあった判断基準のひとつまたは複数に合致する事象発生の場合には該システムからエネルギーを吸収してシステムが損傷を受ける危険を除去するために、エネルギー吸収負荷またはエネルギー溜めを該システムに直列に接続するステップを備えた制御可能なシャットダウンの方法を提供することができる。
【0016】
また、運転に先立って決めてある条件に基づいて、エネルギー溜め、可変負荷または抵抗を、自動設定するための手段が準備されてもよい。
【0017】
また、エネルギーを、制御出来るやり方で、システムからエネルギー溜めの側に迂回させるための特性を自動設定するための手段が準備されてもよい。
【0018】
電気的エネルギーの速やかな放電は大電流パルスを生じ、その結果、強い力を発生させるが、このことはシャットダウンスイッチの定格に影響を与える。すなわち、システムの部品とくに開閉装置のような電気部品に損傷が起きないよう、このようなエネルギースパイク(極めて短い時間にエネルギーが集中した状態)が発生しないようにする対策が講じられる。エネルギーがゆっくり放電されるよう、例えば急速発熱させることによって大きなエネルギーを吸収することが出来る抵抗負荷が取り付けられることがある。上述した放電抵抗の仕様要求などに応えるため、最適な抵抗値あるいは抵抗の範囲が計算できることが望ましい。この抵抗最適値あるいは値の範囲を得る方法については、後に「背景理論」のところで述べる。
【0019】
本発明は、さらに、機械系に加わった過剰な力や安全停止装置に加わるピーク電流を、停止装置をある特定のシステムのどれかの負荷特性に合せるように調節することができるようにすることによって、低減させる手段をも提供する。
【0020】
システムの初期条件に合わせて放電抵抗の選択を最適化する手続きが提案される。このときの変数は、振動試験システムの起動時に得られ、振動試験システムの持つパラメータや試験負荷の質量などがそれである。以下に述べる最適化の手続きは、加振システムが機械的ストッパーをぶつけることが起きないようにし、また異常発生による過渡応答によって大きな電流が発生することを防ぐことのできる放電抵抗の最大値を求めるための一手法である。出来れば、抵抗値はその都度の運転条件に基づいて決められるのが良い。
【0021】
ここで述べる本発明の実施例では、加振システムをエネルギー源から切り離すことが行なわれる:例えば、該システムからエネルギーを制御されたやり方で除去するために加振機と並列に抵抗を挿入するやり方が採られる。この方法の良いところは、制御できるやり方で(そのときだけ抵抗を挿入して)エネルギーを除去するので、直列に抵抗を入れっぱなしにするような方法のようなムダが無い点である。
【0022】
負荷抵抗には、インピーダンス可変の負荷を使うと有利である。可変抵抗やダンプ抵抗を使っても良い。あるいは、電力コンバーター回路を使用しても良い。
【0023】
さらに、安全停止スイッチには低インピーダンスの抵抗を使うことも出来る。抵抗器または電気抵抗をエミュレートする素子を、加振機と並列に1個または複数の電気スイッチを介して接続する。電気スイッチの例としてはMOSFETやIGBTやサイリスタが挙げられるが、大きな電力容量が得やすいことからサイリスタが適するであろう。
【0024】
電気エネルギーは交流電流として出現するが、サイリスタはユニポーラ素子であるので、電流の各方向にサイリスタをひとつずつ配置する必要がある。これを実現するひとつの方法は、2個またはそれ以上のユニポーラスイッチを「バック・ツー・バック」(反平行ブリッジ配置)に配置することである。
【0025】
可変負荷は、蓄えられたエネルギーを放電したり輸送したりするのに最適な電気経路を選択的に切り替えられるよう、可変インピーダンスまたは可変抵抗を内蔵していることが望ましい。安全停止スイッチ用には、非常に大きなピーク電流容量が得られることと信頼性の高さと使いやすさとから、サイリスタが適している。
【0026】
負荷を電気的(自動的)に、または機械的に(手動)設定する手段が準備される。 被試験システムを加振している振動発生機またはアクチュエターに並列に負荷を挿入するため、電気的スイッチやリレーあるいは類似の装置が用いられる。異常事発生を意味するパラメータが検出されたときにこのスイッチ類を作動させるためのひとつまたは数個のセンサが配置される。
【0027】
主電源の停電時にも、安全停止装置作動させるに十分なエネルギー源が確保されているようにするため、これらの装置には無停電電源(UPS)などの独立電源が含まれていることが望ましい。
【0028】
ある場合には、通常の受動放電回路によって得られるものよりもずっと正確な放電波形が要求されることがあり得る。例えば、供試体がある特定の振動数に対して非常に敏感であるような場合に、こういうことが起きるのであって、この場合、該当する振動数成分は望ましくないので放電波形の中から除去されていなければいけない。こういう正確に制御された放電波形は、電力コンバータを使って実現することが出来る。
【0029】
コンバータ回路は、プリント基板の形で実現されたコントローラによって制御される。コンバータは、図1の‘X’と’Y’点のところで加振機に接続される。
【0030】
コントロール基板300には、安全停止時に要求される波形の形がプログラムされている。コンバータの電流波形は電流センサ200と228で測定され、上述の安全停止目標波形と比較される。コントロール基板300はスイッチ202と204を制御してシャットダウン電流波形が目標波形のようになるように作動する。
【0031】
コンバータは、主電源の乱れ等の影響から自由であるようにするため、UPSあるいはキャパシター・バンクかバッテリ・バンクまたは類似の電源から給電されていることが望ましい。
【0032】
「背景理論」の部分で詳述する最適抵抗負荷の選択法は、コントロール基板300にプログラムする最適波形の選択法としても使うことが出来る。
【0033】
以下において、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ、一例として説明する。
【好ましい実施形態の説明】
【0034】
本発明明の説明を、まず図1と図2に示した安全停止スイッチの実施例を引用しながら行なう。続いて、図3を用いて理論の説明を行なう。図4から図7に掛けては、理論から導かれる最適化の結果が示されている。
【0035】
安全停止スイッチの実施例を用いて得られた試行結果と、それらと等価な条件によるシミュレーション結果が図9から15にかけてそれぞれ示されている。
【0036】
回路の詳細な説明
図1と2のブロック図は、安全停止スイッチ3として示されている停止装置の実施例を示している。
【0037】
図1には、振動発生機20とその上に搭載された供試体30とを含む振動試験装置4が示されている。正常運転においては、振動発生機20の振動子(アーマチュア)10がこの振動試験装置4を駆動する。エネルギーは、電力増幅器2から電気的エネルギーの形で伝達され、この例のアーマチュア10のようなアクチュエータによって試験装置4を駆動することによって運動エネルギーに変換される。
【0038】
したがって、本件が対象とする停止動作中におけるエネルギーは、電気的かつ力学的(運動学的)な性質のものである。電気的エネルギー(E)は、主としてアーマチュアの駆動コイル12に蓄積される。このエネルギーの大きさはE = LI2/2と表わされる。ここに、Lは駆動コイルのインダクタンスであり、Iは駆動電流を表わすとする。
【0039】
力学的エネルギーは、主として運動エネルギー(KE)として蓄えられその大きさはKE = mv2/2で表わされる。ここにmはアーマチュアの質量、vはアーマチュアの速度を表わすものとする。
【0040】
停電や電気系統の故障などの異常事態発生時に、図2に詳細が示されている安全停止スイッチ3は、振動発生機20から電力増幅器2を切り離すことによって、電力増幅器2からのエネルギーが振動発生機20に届かないようにするように作動する。加えて、安全停止スイッチ3は、振動発生機4と供試体30に蓄えられたエネルギーが速やかにかつ安全に散逸されるための通路を提供するものである。
【0041】
安全停止スイッチ3を、電力増幅器2と振動発生機20との間に直列に挿入することは、現実問題として不可能である。なぜなら直列接続する場合のパワー損失は大きすぎるからである。また、もし直列に接続するなら、直流(DC)電流が流れないように絶縁しなければならないが、これもまた無理なことである。
【0042】
したがって、安全停止スイッチ3は、並列接続によって電力増幅器2を振動発生機20から切り離すように動作せねばならない。
【0043】
図1は、安全停止スイッチ3がどのようにして電力増幅器2を切り離し、アーマチュアに蓄えられた(電気的および力学的)エネルギーを制御されたやり方で散逸させるかを示している。なお、本実施例では安全停止スイッチ3は可能な限り受動的であるように(能動素子や制御回路は極力使わないようにして)設計されている。安全停止スイッチがいかなる形であれエネルギーを蓄えるようなことは、信頼性の観点から避けたのである。そのおかげで、安全停止スイッチ3は何ヶ月でも何年でもじっと何もしないでいることができる。 しかし、ひとたび異常が起きたその瞬間、安全停止スイッチ3は確実に作動する。
【0044】
装置の故障や不合理な運転条件、あるいは電源の故障や短絡などの非常事態が発生したとき、停止命令1が起動される。停止命令は、コンピュータ(図示されていない)の監視下にある一連のセンサ(図示されていない)によって発動されるであろう。すると、安全停止スイッチ3は、振動発生機のアーマチュア12の端子XとYの間を何らかの低インピーダンス110で接続するように動作を起こす。低インピーダンスは負荷抵抗RSSSで実現されているが、振動発生機のアーマチュア12を双方向接続のサイリスタ120で接続されている。サイリスタ120は、非常に大きなピーク電流がとれること、十分に確立された信頼性の高さ、制御の簡明さによって、安全停止スイッチ3用に適している。
【0045】
監視回路が、たとえば電源の故障を検知したことによって、停止命令1が発動される。停止命令は、直ちに安全停止スイッチ3を起動すると共にサイリスタ120を起動する。安全停止スイッチ3は電力増幅器2に対して停止信号を送る。これによって、電力増幅器の出力段が直ちに非動作状態になり、加振システム4にそれ以上エネルギーが供給されることが停止される。アーマチュアに蓄えられたエネルギーはインピーダンス負荷110の負荷抵抗RSSSにおいて散逸される。
【0046】
電源
図1と2には電源回路130が例示されている。単相電源5が、安全停止スイッチ3に供給されている。また、電源5は、無停電電源(UPS)やバッテリーバックアップから供給されても良い。電源は、電圧変換され、整流され平滑されて、制御回路用の低電圧(+/-15V, +5V, 0V)電源となる。同様に、電圧変換され、整流され平滑された電源5は、サイリスタのゲートドライブ回路160用のフローティングされた電源(+20V, 0V)を供給する。
【0047】
制御回路
制御回路150は、リセット命令7によりリセットされる。制御回路150は、停止命令1とイネーブル信号6を監視している。電力増幅器2からのイネーブル信号6が有効でない場合は、制御回路150は稼動状態にならない。イネーブル信号6が有効であり、かつ停止命令1が有効でない場合に、制御回路が稼動状態になる。
【0048】
停止命令1がイネーブルまたはアクティブになると、制御回路150は、サイリスタ・ゲート・ドライブ160をONにするように作動する。同時に禁止命令8が電力増幅器2に送られて電力増幅器の出力段を非動作状態にし、電源と増幅器内の能動回路を停止する。
【0049】
パワー段
パワー段は、電流を双方向に流せるように双方向に接続されたサイリスタ120から成る。安全停止スイッチ3の電力定格は、このサイリスタをもっと大きな電流容量を持つ他の部品に換えることによって、自由に変えることが出来る。したがって、本発明は蓄積されているエネルギーの量に応じて、それぞれの振動試験システムに適合させることが出来る。パワー段はエネルギー減衰用の抵抗RSSS110に直列に挿入して、アーマチュアに対しては並列に入るようにする。図には示していないが、パワー段はヒートシンク上に実装され、冷却ファンで冷やされることもある。
【0050】
より進んだ電流制御動作
本発明は、電流制御回路19を用いて放電電流を精密に制御することにより、さらに強化することが出来る。電流変換器15によって放電電流を観測し、それを電流波形として目標波形18と比較する。観測された電流と目標電流は、電流制御回路19における電流変調の制御に用いられる。このような運転のためには、サイリスタスイッチ120を開閉動作させる必要があるが、それには転流回路を使うか、もっと簡単にはサイリスタをIGBTスイッチかMOSFETスイッチに換えればよい。
【0051】
背景理論
以下においては、単純化された動電式加振システムのモデルについての関係式に言及する形で、本発明に関する記述を続ける。これらの関係式は、安全停止スイッチの設計や運転のパラメータを決める際に役に立つものである。
【0052】
単純化された動電式加振システムは、式(1)によって記述される。
【0053】
システムの状態変数は、速度vと変位xDである。
【0054】
【数1】
【0055】
他に、システムの出力として加速度aとスイッチに流れる電流iがあり、これらは(2)式で規定される。
【0056】
【数2】
【0057】
運動方程式は、速度と変位の初期値v(0)とxD (0)に対し、解析的に解ける。
【0058】
変位の過渡応答の最大値は、初期条件と負荷の質量および放電抵抗値の関数として(3)式のように書ける。
【0059】
【数3】
【0060】
(3)式は、その他のパラメータが与えられていれば、放電抵抗の値に関して数値的に解くことが出来る。
【0061】
運動方程式を解いて過渡応答の表式を得るために、(4),(5),(6)式で定義される減衰比率x, 共振振動数wn 、減衰振動数wd を用いる。
【0062】
【数4】
【0063】
【数5】
【0064】
【数6】
【0065】
運動方程式の解は、減衰の大きさに応じて、三種の応答を与える。
【0066】
減衰の小さいときの振動的な応答の場合、変位、速度の解は式(7)および(8)で与えられる。この表式中で、xD (0) と v (0)の値がシステム状態の初期条件を表わしている。
【0067】
【数7】
【0068】
【数8】
【0069】
【数9】
【0070】
【数10】
【0071】
(11),(12)式は過減衰の場合の速度vと変位xDの解である。
【0072】
【数11】
【0073】
【数12】
【0074】
変位の最大(または最小)は、速度がゼロのときに起きる。 (8),(10),(12)式を解いて得られる速度がゼロになる時刻に変位が最大になる(減衰があるので、最初の値が最大値になる)。これらの時刻は、それぞれ(13),(14),(15)式で与えられる。
【0075】
【数13】
【0076】
【数14】
【0077】
【数15】
【0078】
これらから時刻を算出し、(7),(9),(11)式を使って計算すれば、それぞれの場合についての変位の最大値が得られる。 これから分かるように、最大変位は変位発生のメカニズム(振動発生機)、負荷質量、初期条件と放電抵抗の値に依存して決まる。
【0079】
最大変位と抵抗値との関係は線形ではなく、また抵抗値(RSSS)に関して明示的な解を得ることは出来ない。しかし、上記の式は数値的に解くことが出来るので、システムのパラメータや初期条件の下で、望ましい最大変位値を得るためのRSSSの最適値を設定することが出来る。現実問題としては、これが特定の運転条件について振動試験システムに対して発生する要求のすべてである。
【0080】
電力増幅器の出力フィルタの静電容量Cfが安全停止動作中の、とくに最大速度に関して、重要な役割を演じることが分かった。この件は、その性格から、シミュレーションモデルの範囲で考察されるべきものであり、実験はしていないが、この出力フィルタの静電容量Cfが持つ効果は、安全停止スイッチ3における抵抗値RSSSの選択をより重要にするものである。
【0081】
速度が大きい状態で安全停止スイッチ3が作動した場合、振動発生機の発生電圧、したがって電力増幅器の出力電圧はいずれも大きな値を持っている。そこで、安全停止スイッチ3が作動すると、構成部品Cf、 La およびCe.との間における発振が起きることがあり得るのである。この発振はRSSSの値の選択に依存するので、その選択は停止動作が大加速度発生時に起きる場合よりも、大速度発生時に起きる場合に重要になる。
【0082】
最適化アルゴリズム
図4、図5は、ある負荷質量と最大変位の場合について最適化アルゴリズムを適用して得られた結果を示している。これらの図には、与えられた運転条件に対して抵抗値がどのように選択されうるかが示されていると言える。
【0083】
最適化アルゴリズムは、安全停止スイッチのモデル(次数4)で得られた結果と、実際に特定の加振システムを使って得られた実験結果とを照合しながら決められた。
【0084】
実験では、最悪条件が想定された。すなわち、最大速度発生の瞬間つまり蓄えられた運動エネルギーが最大になった瞬間に、スイッチが作動させられた。この瞬間の変位はゼロである。この二つの仮定(xD (0)=0, v (0)=1.6m/s)が、抵抗値の最適値を求める初期条件となった。
【0085】
加振システムの緊急停止実験
以下に実際の実験結果を、「背景理論」に掲げた表式によって予測される振る舞いと比較しながら提示する。
【0086】
実加振実験とシミュレーションの結果は、すべて、下記の初期条件の下に得られたものである:
・変位: 40mm peak to peak
・速度: 1.6 m/s
・振動数: 12.8 Hz
・緊急停止は最大速度で起動。
【0087】
モデルの精度と能力を示すために、図6と図7には2種のパラメータの2種の値についてモデルで計算された変位波形と加速度波形を示す。負荷質量の値は0kgと40kgの2種、放電抵抗の値は、0.2オームと2.0オームの2種である。
【0088】
これらの計算結果を、図8から図15までの実際の加振実験の結果と比べると、非常に良い精度で実験との一致が得られていることが分かる。これは、放電抵抗値の最適化を行なう際にシミュレーション計算を使って良いことを示している。
【0089】
図8から図15には、変位と放電抵抗値と負荷質量との関係を示すため、応答の時系列波形が表示されている。
【0090】
すべての場合において、加振システムは、自身が持つ機械的また電気的なダンピングによって変位が減衰して行っており、安定であることが見て取れる。
【0091】
抵抗値が大きい抵抗を使うと(図16)、抵抗値が小さい場合に比べて最大変位が非常に大きくなる(0.05m)。そしてこの場合はアーマチュアが機械的ストッパーに当っている。一方、図15の加速度応答は、抵抗値が小さすぎると最大加速度が大きくなりすぎることを示している。
【0092】
(初速が大きい場合には)たとえ無負荷の場合でも、機械的ストッパーへの衝突を防ぐには、比較的小さな抵抗値が必要とされることが分かる。と最大加速度が大きくなりすぎることを示している。負荷質量が大きくなれば、当然それに見合ってより小さい抵抗値が必要となる。
【0093】
さまざまな実験結果について、図8から図15を参照しながら、以下に説明する。
【0094】
試行1−安全停止スイッチが無い場合の無負荷での実加振試験
安全停止スイッチ3の有用性を示すために、まず停止動作中に抵抗が一切接続されない場合の実験を実施した。実験は無負荷状態で行なった。すなわち、アーマチュアそのものの質量だけが負荷になっている。図8は、緊急停止スイッチの起動の前後における波形データを示している。(下から)軸1,2,3,4の順に、変位波形、加速度波形、電圧波形(速度に比例する)と電流波形が示されている。
【0095】
緊急停止スイッチ3が起動され、電流が遮断されている。しかし、慣性によって速度は急にはなくならないから、アーマチュアは動き続ける。(その結果、本来の最大変位位置よりも行き過ぎてしまって)アーマチュアが機械的ストッパーに衝突すると、大きな加速度が発生し、そのあと速度は減少している。その後、系は、自身のもつダンピングによってエネルギーを放出しながら、ゆっくりと静止状態に向かって推移してゆく。
【0096】
これと同じ力学特性を示すシミュレーション結果が図9に示されている。計算値では、アーマチュアの最大変位は、機械的ストッパーがないものとして、ゼロ点から0.04mである。機械的ストッパーは+/- 0.03 mのところに設けられているので、図8に示されたように、実際にはアーマチュアがこれにぶつかるはずである。
【0097】
試行2−無負荷、放電抵抗2.0オームでの実加振試験
アーマチュアが機械的ストッパーに衝突するのを防ぐため、安全停止回路が接続され、既述の方法によって計算された抵抗値を持つ放電抵抗が取り付けられた。許容される最大変位は0.0145mであり、無負荷の条件では抵抗値は2.0オームと算出された。この値の放電抵抗での安全停止スイッチの動作と能力が図10に示されている。
【0098】
系のダンピング特性が改善されたことによって、速度(駆動コイルの電圧)が速やかに減少するようになった。この結果、最大変位値が小さくなっている。逆起電力によって駆動コイルに流れる電流が出現し、振動系のエネルギーを除去するように働いている。その結果として最大加速度が増加しているが許容範囲内である。これと同じ状況のシミュレーション結果が図11に示されているが、計算された最大変位値と実測値とは非常に良い一致を示している。
【0099】
試行.3−40kg負荷、放電抵抗1.0オームでの実加振試験
40kgの負荷を載せた情況での最適化が実施された(初期条件は試行1と同条件とした)。抵抗値は1オームで、最大変位は0.023mと算出された。
【0100】
図12と13には、実験データとシミュレーション結果が一致していることが示されている。負荷質量が増したので過渡応答は長くなっているが、変位は制御されており過剰な加速度発生もない。エネルギーを制御されたやり方で解除する本手法の有効性が証明されている。
【0101】
試行4−40kg負荷、最適化されていない放電抵抗での実加振試験
図14には試行3と同じ条件での実験結果が示されている。但し、放電抵抗は0.25オームという小さすぎる値に設定されている。この場合、振動発生機に蓄えられたエネルギーを散逸させる放電電流は試行3よりもずっと大きくなっている。この結果、アーマチュアを停止させる加速度レベルが試験レベルよりもかなり大きくなっていて、供試体あるいは振動試験装置を損傷する可能性がある。
【0102】
図15も、試行3と同一条件での実験結果を示している。ただし、放電抵抗は2.0オームという大きすぎる値に設定されている。この場合、振動発生機に蓄えられたエネルギーを散逸させる放電電流は試行3や図14の場合よりもずっと小さくなっている。この結果、アーマチュアを停止させる加速度レベルが小さすぎ、アーマチュアは速やかに停止されることが出来ず、機械的ストッパーに衝突してしまっている。衝突によっておきた大きな加速度ピークが図15に見て取れるが、これは供試体または振動試験装置に損傷を与える可能性がある。
【0103】
安全停止スイッチが作動すると、アーマチュアの運動によって励起される逆起電力’e’が、安全停止スイッチ3とサイリスタ120および抵抗器RSSSとによって形成される回路に印加され、その結果電流が生じる。この電流はアーマチュアを停止させる働きを持つが、その大きさはe/ RSSSである。このことが上記の実験結果には明瞭に現れている。
【0104】
発生した電流はアーマチュアを停止させる加速度を与えるが、この加速度は、Fをアーマチュアに加わる力、iを駆動コイルに流れる電流、Bを磁束密度、lを駆動コイルの長さ、mをアーマチュアの質量としたとき、F = B x i x l の関係と F = m x aの関係とから決まる。すなわち、これらの式からa=Bil/m であって、停止加速度は発生する電流に比例する大きさを持つ。このようにして、安全停止スイッチ回路のインピーダンスは電流とその結果発生する加速度を制御するのである。
【0105】
これらの実験結果は、安全停止スイッチの作動によって、アーマチュアに大きな過渡応答を発生することなく、振動発生機を安全に停止させ得ることを示している。安全停止スイッチ3の特性は、ダンピング抵抗を変えることによって変化させることが出来、このことを利用して特定の振動発生機と負荷に対して停止特性を最適化することが出来る。
【0106】
電力増幅器2と安全停止スイッチ3の電流値は、安全運転の制限内に収まっている。安全停止スイッチ3は、さまざまな振動発生システムに対し、適切なサイリスタを選択することにより適用することが出来る。
【0107】
動的電力コンバータ回路
図16と図17には、例えば制御することができる正確なエネルギー溜めように使えるような、別のエネルギー吸収装置が示されている。この実施例は非常に高速のパワートランジスタが使われているような場合、あるいは停止動作中にエネルギーが共振の形で残っているような場合に応用できるだろう。
【0108】
図16と図17に示したコンバータ回路の実施例は、エネルギーを安全で制御できるやり方で散逸させる制御可能な可変インピーダンスをどのようにして実現できるかを示している。この回路は、単相のフルブリッジコンバーター、あるいは双方向の電流と電圧を制御できるHブリッジとして使うことが出来る。
【0109】
図16は、ハーフブリッジ回路200を示している。回路200にはスイッチ202と204が含まれている。これらのスイッチ202と204とで双方向の電流制御が出来る。ダイオードD206とD208は、スイッチ202と204とがOFFになったときに電流が自由に流れることが出来るようにする。インダクタL210は電流変化が制御できるためと出力波形が平滑化されるためのものである。電流は電流変換器220で測定される。
【0110】
あるいは双方向の電流と電圧を制御できるHブリッジとして使うことが出来る。コンデンサ222は直流電流の平滑化のためのものである。
【0111】
完全な電力コンバータは、図16に例示したようにハーフブリッジ200と400とを接続して作ることが出来る。これらは互いにまったく同じものである。電力コンバータの出力波形は、コンデンサC226でさらに平滑化される。
【0112】
電力コンバータ回路は、図中のマイクロコントローラ300のようなものによって制御される。電力コンバータは、点’X’と点’Y’で、図1に示されているように振動試験装置に接続される。
【0113】
コントローラ300は、安全停止のために必要とされる要求波形形状を使ってプログラムされている。電流変換器220、228がコンバータの出力電流を観測し、それが停止波形の目標波形と比較され、コントローラ300は停止波形が常に目標波形と等しくなるように制御を行なう。
【0114】
この電力コンバータは、無停電電源(UPS)か、コンデンサ・バンク、バッテリ・バンクあるいは類似の電源に接続され、主電源からのいかなる影響も受けないようになっているのが望ましい。
【0115】
この応用例として、負荷抵抗の最適値を得る最適化の方法の記述に変形を加えることが出来るかもしれない。最適化の方法は、加振システムの運動エネルギー(KE)の最大値と、その装置で試験される供試体の運動エネルギー(KE)の最大値を求め、加振システムと供試体が減速されるための最適値を割り出し、システムと供試体を保護するため、この減速要求と、予想できるやり方でのシステムからのエネルギーの伝送要求の両方を同時に満たすような最適値を導き出す、というものになるだろう。
【0116】
この方法は、加振システムと供試体を速やかに停止させたいという要求と、そのために発生する損傷を避けるために電気的エネルギーを制御しながらエネルギー溜め(可変抵抗)に散逸させるという矛盾した要求を両立させることが出来る。
【0117】
また、次のようにして、エネルギーのエネルギー溜めへの輸送を最適化する方法が準備されたことになる:
加振システムの運動エネルギー(KE)の最大値と、その装置で試験される供試体の運動エネルギー(KE)の最大値を求め、システムと供試体を保護するために加振システムと供試体が減速されることが出来る最適値を割り出し、そこから電流と電圧波形の持つべき特性を割り出し、その波形を実現するためのコンバーター回路を採用する。
【0118】
このように、電力コンバータを用いることが出来るという事実は、システムからのエネルギー散逸を動的に制御することを可能にするのである。
【0119】
本発明からの逸脱のない範囲で、実施例に対するさまざまな変形が可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、加振システムと安全停止システムの実施例を示すものである。
【図2】図2は、図1の安全停止システムの回路ブロック図である。
【図3】図3は、図1の安全停止システム簡略化モデルである。
【図4】図4は、(停止までに必要な)変位を、放電抵抗と負荷質量の関数として示すものである。
【図5】図5は、放電抵抗の最適値を、初期変位と速度の関数として示すものである。
【図6】図6は、変位応答波形を、それぞれ2種の放電抵抗値と負荷質量の場合について示すものである。
【図7】図7は、加速度応答波形を、それぞれ2種の放電抵抗値と負荷質量の場合について示すものである。
【図8】図8は、緊急停止が起きたときの実例を示している。この場合は安全停止スイッチを使っていないため、アーマチュアが機械的ストッパーに衝突してしまっている。
【図9】図9は、安全停止スイッチを使っていない場合に緊急停止が起きたときのシミュレーション結果を示している。
【図10】図10は、安全停止スイッチを接続した状態で緊急停止が起きたときの実例を示している。この例は、無負荷の場合であって、放電抵抗の抵抗値は2オームである。
【図11】図11は、安全停止スイッチを接続した状態で緊急停止が起きたときのシミュレーション結果を示している。この例は、無負荷の場合であって、放電抵抗の抵抗値は2オームである。
【図12】図12は、安全停止スイッチを接続した状態で緊急停止が起きたときの実例を示している。この例は、負荷の質量が40kgの場合であって、放電抵抗の抵抗値は1オームである。
【図13】図13は、安全停止スイッチを接続した状態で緊急停止が起きたときのシミュレーション結果を示している。この例は、負荷の質量が40kgの場合であって、放電抵抗の抵抗値は1オームである。
【図14】図14は、安全停止スイッチを接続した状態で緊急停止が起きたときの実例を示している。この例は、負荷の質量が40kgの場合であって、放電抵抗の抵抗値は0.25オームである。
【図15】図15は、安全停止スイッチを接続した状態で緊急停止が起きたときの実例を示している。この例は、負荷の質量が40kgの場合であって、放電抵抗の抵抗値は2オームである。
【図16】図16は電力コンバータ回路の例を示している。
【図17】図17は、図16に示したタイプのハーフブリッジ回路をふたつ使ってフルブリッジの電力コンバータを実現する実施例を示している。
【背景】
【0001】
本発明は、安全停止装置とその方法に関するものである。本発明は、特に振動試験装置ないし加振システムのための安全停止装置および関連する振動試験の方法に関するものであるが、必ずしもこれにのみ限定されるものではない。
【従来技術】
【0002】
振動試験実施中において、供試品に振動を加えている最中の試験装置を安全に停止させるという要求が発生することは珍しくない。ここで、試験装置とは例えば自動車や航空機用の装置を衝撃試験や振動試験するために設計された工業用の振動試験装置などのことである。このような装置は、一般に高価である。また、試験に供される航空機部品や自動車部品は、往々にしてたった1個だけの試作品として作られたものであることが多く、したがってそれ自身高価なものでありうる。よって、試験中に不用意にあるいは必要も無く損傷を受けるようなことがないようにすることが極めて重要である。
【0003】
加振システムを安全に停止させる必要は、さまざまな要因によって発生しうる。なんらかの故障が原因で加振システムを止めねばならないことがあるが、このような場合、システムの安全停止には、エネルギーの新たな流入を直ちに止めることと共に、加振システムおよびそれに付随して振動しているあらゆる部分を速やかに確保して正規の停止位置で停止させることが求められる。
【0004】
一方、安全停止システムには、それがひとたび作動した場合、加振システムの中に電気的および機械的エネルギーとして蓄えられているエネルギーを、試験中の供試体と加振システムの両方に損傷を与えることなく、安全に放出するという要求が課せられる。ところで、損傷を与えないためには余分な電流や機械的な力を加振システムに与えないことが重要であるが、加振システムに閉ループ制御が行なわれている場合、系を不安定にする恐れがあるので、これは特に重要である。
【0005】
機械的に振動するシステムの変位は、通常、機械的ストッパーによって制限されている。この機械的ストッパーの間の空間が加振システムの動いて良い範囲であり、正常運転時には、制御器が加振システムのテーブル変位が常にこの範囲に収まるように制御している。しかし、緊急停止が起動された場合には、加振システムを完全に掌握して制御することが出来ないことがある。このような場合、システムに蓄えられたエネルギーが加振テーブルを機械的ストッパーのところまで動かしてしまう(衝突することもある)ということがおきる。
【0006】
典型的な加振システムの非常停止は、次の2段階で起きる;第一段階では保護回路が作動する。これは理想的には数ミリ秒以内の極めて短い時間内に速やかに起きる。保護回路が起動されると、続いてエネルギーの放出が起きるが、これは比較的ゆっくりした過程である。システムに蓄えられた大きなエネルギーを与えられて、このエネルギーを制御されたやり方で散逸させるというのは厄介な要求である。と言うのは、もし加振システムの可動部分が機械的ストッパーを叩くことがあると、試験監視中の加振システムと供試体に余分な力が加わったことになり、この力のせいで破壊が起きるかもしれない可能性が秘められているので、こういうことは決して起きてはならないからである。
【0007】
つまり、求められている解決は、単にシステムのエネルギーを散逸させるというだけのものではないのである。もしきちんと制御されたやり方で行なわれないと、その結果生じた力が試験中の供試体の仕様、あるいは加振システムそれ自身の定格を超えてしまうことがありうるからである。例えば、振動子(アーマチュア)の持っているエネルギーによって駆動コイルに電流が発生し、その電流によって力が発生する場合があるが、その結果(衝突が起きてさらに)大きな力が発生することがあるのだ。最悪の場合、この電流によって電気部品が破壊されることもある。従って、多くの工学システムでそうであるように、ここにはトレードオフの関係がある。エネルギー散逸をゆっくり起こさせすぎる(その結果、試験装置や供試体を壊す)か、急速に散逸させすぎる(その結果、制御できない過剰な力を発生させる)か、ということの間で適切な選択が行なわれねばならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的の一つは、制御できないエネルギー散逸の発生を防ぐことである。特に、例えば停電や回路短絡や試験部品の故障、また試験システムの部分的な故障などの際のそれを防ぐことである。
【0009】
他の目的は、安全停止装置を提供することであって、この装置とはシステムに蓄えられたエネルギーの速やかな散逸を監視し制御するものである。
【0010】
更に他の目的は、本件に関わる最適な安全停止の全体系を決定するための方法を提供することである。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第一の側面によれば、システムの状態を知ることの出来る少なくともひとつのセンサ、前記システムの状態を導出するための手段、システムからエネルギーを吸収するエネルギー溜め、予め定めてあった判断基準のひとつまたは複数に合致するシステム状態の不具合が発生した場合にシステムを損傷から守るためにシステムからエネルギー溜めにエネルギーを制御できるやり方で輸送する手段を備えた安全停止装置を提供することができる。
【0012】
本発明の第二の側面によれば、システムの状態を知ることの出来る少なくともひとつのセンサ、前記システムの状態を導出するための手段、システムからエネルギーを吸収するエネルギー溜め、予め定めてあった判断基準のひとつまたは複数に合致するシステム状態の不具合が発生した場合にシステムを損傷から守るためにシステムからエネルギー溜めにエネルギーを制御できるやり方で輸送する手段を備えた振動試験装置のための安全停止装置を提供することができる。
【0013】
エネルギー溜めは、可変式の負荷であることが望ましい。原理的には、この可変負荷は手動式で設定される電気抵抗であり、かつ設定は運転に先立って手動式に行なうことが出来ればよい。
【0014】
また、運転に先立って決めてある条件に基づいて、エネルギー溜め、可変負荷または抵抗を、自動設定するための手段が準備されるのが望ましい。運転に先立って決めておく条件は、(装置の)設置時に定められることもあるし、ユーザがプリセットすることもある。または、供試体を用いてあるいは用いないで(例えば、ダミーを使うなど)行なう試行によって決めることもあるし、熟練技術者による他の何らかの技法で決められても良い。
【0015】
本発明の第三の側面によれば、システムの異常状態を検知するステップ、予め定めてあった判断基準のひとつまたは複数に合致する事象発生の場合には該システムからエネルギーを吸収してシステムが損傷を受ける危険を除去するために、エネルギー吸収負荷またはエネルギー溜めを該システムに直列に接続するステップを備えた制御可能なシャットダウンの方法を提供することができる。
【0016】
また、運転に先立って決めてある条件に基づいて、エネルギー溜め、可変負荷または抵抗を、自動設定するための手段が準備されてもよい。
【0017】
また、エネルギーを、制御出来るやり方で、システムからエネルギー溜めの側に迂回させるための特性を自動設定するための手段が準備されてもよい。
【0018】
電気的エネルギーの速やかな放電は大電流パルスを生じ、その結果、強い力を発生させるが、このことはシャットダウンスイッチの定格に影響を与える。すなわち、システムの部品とくに開閉装置のような電気部品に損傷が起きないよう、このようなエネルギースパイク(極めて短い時間にエネルギーが集中した状態)が発生しないようにする対策が講じられる。エネルギーがゆっくり放電されるよう、例えば急速発熱させることによって大きなエネルギーを吸収することが出来る抵抗負荷が取り付けられることがある。上述した放電抵抗の仕様要求などに応えるため、最適な抵抗値あるいは抵抗の範囲が計算できることが望ましい。この抵抗最適値あるいは値の範囲を得る方法については、後に「背景理論」のところで述べる。
【0019】
本発明は、さらに、機械系に加わった過剰な力や安全停止装置に加わるピーク電流を、停止装置をある特定のシステムのどれかの負荷特性に合せるように調節することができるようにすることによって、低減させる手段をも提供する。
【0020】
システムの初期条件に合わせて放電抵抗の選択を最適化する手続きが提案される。このときの変数は、振動試験システムの起動時に得られ、振動試験システムの持つパラメータや試験負荷の質量などがそれである。以下に述べる最適化の手続きは、加振システムが機械的ストッパーをぶつけることが起きないようにし、また異常発生による過渡応答によって大きな電流が発生することを防ぐことのできる放電抵抗の最大値を求めるための一手法である。出来れば、抵抗値はその都度の運転条件に基づいて決められるのが良い。
【0021】
ここで述べる本発明の実施例では、加振システムをエネルギー源から切り離すことが行なわれる:例えば、該システムからエネルギーを制御されたやり方で除去するために加振機と並列に抵抗を挿入するやり方が採られる。この方法の良いところは、制御できるやり方で(そのときだけ抵抗を挿入して)エネルギーを除去するので、直列に抵抗を入れっぱなしにするような方法のようなムダが無い点である。
【0022】
負荷抵抗には、インピーダンス可変の負荷を使うと有利である。可変抵抗やダンプ抵抗を使っても良い。あるいは、電力コンバーター回路を使用しても良い。
【0023】
さらに、安全停止スイッチには低インピーダンスの抵抗を使うことも出来る。抵抗器または電気抵抗をエミュレートする素子を、加振機と並列に1個または複数の電気スイッチを介して接続する。電気スイッチの例としてはMOSFETやIGBTやサイリスタが挙げられるが、大きな電力容量が得やすいことからサイリスタが適するであろう。
【0024】
電気エネルギーは交流電流として出現するが、サイリスタはユニポーラ素子であるので、電流の各方向にサイリスタをひとつずつ配置する必要がある。これを実現するひとつの方法は、2個またはそれ以上のユニポーラスイッチを「バック・ツー・バック」(反平行ブリッジ配置)に配置することである。
【0025】
可変負荷は、蓄えられたエネルギーを放電したり輸送したりするのに最適な電気経路を選択的に切り替えられるよう、可変インピーダンスまたは可変抵抗を内蔵していることが望ましい。安全停止スイッチ用には、非常に大きなピーク電流容量が得られることと信頼性の高さと使いやすさとから、サイリスタが適している。
【0026】
負荷を電気的(自動的)に、または機械的に(手動)設定する手段が準備される。 被試験システムを加振している振動発生機またはアクチュエターに並列に負荷を挿入するため、電気的スイッチやリレーあるいは類似の装置が用いられる。異常事発生を意味するパラメータが検出されたときにこのスイッチ類を作動させるためのひとつまたは数個のセンサが配置される。
【0027】
主電源の停電時にも、安全停止装置作動させるに十分なエネルギー源が確保されているようにするため、これらの装置には無停電電源(UPS)などの独立電源が含まれていることが望ましい。
【0028】
ある場合には、通常の受動放電回路によって得られるものよりもずっと正確な放電波形が要求されることがあり得る。例えば、供試体がある特定の振動数に対して非常に敏感であるような場合に、こういうことが起きるのであって、この場合、該当する振動数成分は望ましくないので放電波形の中から除去されていなければいけない。こういう正確に制御された放電波形は、電力コンバータを使って実現することが出来る。
【0029】
コンバータ回路は、プリント基板の形で実現されたコントローラによって制御される。コンバータは、図1の‘X’と’Y’点のところで加振機に接続される。
【0030】
コントロール基板300には、安全停止時に要求される波形の形がプログラムされている。コンバータの電流波形は電流センサ200と228で測定され、上述の安全停止目標波形と比較される。コントロール基板300はスイッチ202と204を制御してシャットダウン電流波形が目標波形のようになるように作動する。
【0031】
コンバータは、主電源の乱れ等の影響から自由であるようにするため、UPSあるいはキャパシター・バンクかバッテリ・バンクまたは類似の電源から給電されていることが望ましい。
【0032】
「背景理論」の部分で詳述する最適抵抗負荷の選択法は、コントロール基板300にプログラムする最適波形の選択法としても使うことが出来る。
【0033】
以下において、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ、一例として説明する。
【好ましい実施形態の説明】
【0034】
本発明明の説明を、まず図1と図2に示した安全停止スイッチの実施例を引用しながら行なう。続いて、図3を用いて理論の説明を行なう。図4から図7に掛けては、理論から導かれる最適化の結果が示されている。
【0035】
安全停止スイッチの実施例を用いて得られた試行結果と、それらと等価な条件によるシミュレーション結果が図9から15にかけてそれぞれ示されている。
【0036】
回路の詳細な説明
図1と2のブロック図は、安全停止スイッチ3として示されている停止装置の実施例を示している。
【0037】
図1には、振動発生機20とその上に搭載された供試体30とを含む振動試験装置4が示されている。正常運転においては、振動発生機20の振動子(アーマチュア)10がこの振動試験装置4を駆動する。エネルギーは、電力増幅器2から電気的エネルギーの形で伝達され、この例のアーマチュア10のようなアクチュエータによって試験装置4を駆動することによって運動エネルギーに変換される。
【0038】
したがって、本件が対象とする停止動作中におけるエネルギーは、電気的かつ力学的(運動学的)な性質のものである。電気的エネルギー(E)は、主としてアーマチュアの駆動コイル12に蓄積される。このエネルギーの大きさはE = LI2/2と表わされる。ここに、Lは駆動コイルのインダクタンスであり、Iは駆動電流を表わすとする。
【0039】
力学的エネルギーは、主として運動エネルギー(KE)として蓄えられその大きさはKE = mv2/2で表わされる。ここにmはアーマチュアの質量、vはアーマチュアの速度を表わすものとする。
【0040】
停電や電気系統の故障などの異常事態発生時に、図2に詳細が示されている安全停止スイッチ3は、振動発生機20から電力増幅器2を切り離すことによって、電力増幅器2からのエネルギーが振動発生機20に届かないようにするように作動する。加えて、安全停止スイッチ3は、振動発生機4と供試体30に蓄えられたエネルギーが速やかにかつ安全に散逸されるための通路を提供するものである。
【0041】
安全停止スイッチ3を、電力増幅器2と振動発生機20との間に直列に挿入することは、現実問題として不可能である。なぜなら直列接続する場合のパワー損失は大きすぎるからである。また、もし直列に接続するなら、直流(DC)電流が流れないように絶縁しなければならないが、これもまた無理なことである。
【0042】
したがって、安全停止スイッチ3は、並列接続によって電力増幅器2を振動発生機20から切り離すように動作せねばならない。
【0043】
図1は、安全停止スイッチ3がどのようにして電力増幅器2を切り離し、アーマチュアに蓄えられた(電気的および力学的)エネルギーを制御されたやり方で散逸させるかを示している。なお、本実施例では安全停止スイッチ3は可能な限り受動的であるように(能動素子や制御回路は極力使わないようにして)設計されている。安全停止スイッチがいかなる形であれエネルギーを蓄えるようなことは、信頼性の観点から避けたのである。そのおかげで、安全停止スイッチ3は何ヶ月でも何年でもじっと何もしないでいることができる。 しかし、ひとたび異常が起きたその瞬間、安全停止スイッチ3は確実に作動する。
【0044】
装置の故障や不合理な運転条件、あるいは電源の故障や短絡などの非常事態が発生したとき、停止命令1が起動される。停止命令は、コンピュータ(図示されていない)の監視下にある一連のセンサ(図示されていない)によって発動されるであろう。すると、安全停止スイッチ3は、振動発生機のアーマチュア12の端子XとYの間を何らかの低インピーダンス110で接続するように動作を起こす。低インピーダンスは負荷抵抗RSSSで実現されているが、振動発生機のアーマチュア12を双方向接続のサイリスタ120で接続されている。サイリスタ120は、非常に大きなピーク電流がとれること、十分に確立された信頼性の高さ、制御の簡明さによって、安全停止スイッチ3用に適している。
【0045】
監視回路が、たとえば電源の故障を検知したことによって、停止命令1が発動される。停止命令は、直ちに安全停止スイッチ3を起動すると共にサイリスタ120を起動する。安全停止スイッチ3は電力増幅器2に対して停止信号を送る。これによって、電力増幅器の出力段が直ちに非動作状態になり、加振システム4にそれ以上エネルギーが供給されることが停止される。アーマチュアに蓄えられたエネルギーはインピーダンス負荷110の負荷抵抗RSSSにおいて散逸される。
【0046】
電源
図1と2には電源回路130が例示されている。単相電源5が、安全停止スイッチ3に供給されている。また、電源5は、無停電電源(UPS)やバッテリーバックアップから供給されても良い。電源は、電圧変換され、整流され平滑されて、制御回路用の低電圧(+/-15V, +5V, 0V)電源となる。同様に、電圧変換され、整流され平滑された電源5は、サイリスタのゲートドライブ回路160用のフローティングされた電源(+20V, 0V)を供給する。
【0047】
制御回路
制御回路150は、リセット命令7によりリセットされる。制御回路150は、停止命令1とイネーブル信号6を監視している。電力増幅器2からのイネーブル信号6が有効でない場合は、制御回路150は稼動状態にならない。イネーブル信号6が有効であり、かつ停止命令1が有効でない場合に、制御回路が稼動状態になる。
【0048】
停止命令1がイネーブルまたはアクティブになると、制御回路150は、サイリスタ・ゲート・ドライブ160をONにするように作動する。同時に禁止命令8が電力増幅器2に送られて電力増幅器の出力段を非動作状態にし、電源と増幅器内の能動回路を停止する。
【0049】
パワー段
パワー段は、電流を双方向に流せるように双方向に接続されたサイリスタ120から成る。安全停止スイッチ3の電力定格は、このサイリスタをもっと大きな電流容量を持つ他の部品に換えることによって、自由に変えることが出来る。したがって、本発明は蓄積されているエネルギーの量に応じて、それぞれの振動試験システムに適合させることが出来る。パワー段はエネルギー減衰用の抵抗RSSS110に直列に挿入して、アーマチュアに対しては並列に入るようにする。図には示していないが、パワー段はヒートシンク上に実装され、冷却ファンで冷やされることもある。
【0050】
より進んだ電流制御動作
本発明は、電流制御回路19を用いて放電電流を精密に制御することにより、さらに強化することが出来る。電流変換器15によって放電電流を観測し、それを電流波形として目標波形18と比較する。観測された電流と目標電流は、電流制御回路19における電流変調の制御に用いられる。このような運転のためには、サイリスタスイッチ120を開閉動作させる必要があるが、それには転流回路を使うか、もっと簡単にはサイリスタをIGBTスイッチかMOSFETスイッチに換えればよい。
【0051】
背景理論
以下においては、単純化された動電式加振システムのモデルについての関係式に言及する形で、本発明に関する記述を続ける。これらの関係式は、安全停止スイッチの設計や運転のパラメータを決める際に役に立つものである。
【0052】
単純化された動電式加振システムは、式(1)によって記述される。
【0053】
システムの状態変数は、速度vと変位xDである。
【0054】
【数1】
【0055】
他に、システムの出力として加速度aとスイッチに流れる電流iがあり、これらは(2)式で規定される。
【0056】
【数2】
【0057】
運動方程式は、速度と変位の初期値v(0)とxD (0)に対し、解析的に解ける。
【0058】
変位の過渡応答の最大値は、初期条件と負荷の質量および放電抵抗値の関数として(3)式のように書ける。
【0059】
【数3】
【0060】
(3)式は、その他のパラメータが与えられていれば、放電抵抗の値に関して数値的に解くことが出来る。
【0061】
運動方程式を解いて過渡応答の表式を得るために、(4),(5),(6)式で定義される減衰比率x, 共振振動数wn 、減衰振動数wd を用いる。
【0062】
【数4】
【0063】
【数5】
【0064】
【数6】
【0065】
運動方程式の解は、減衰の大きさに応じて、三種の応答を与える。
【0066】
減衰の小さいときの振動的な応答の場合、変位、速度の解は式(7)および(8)で与えられる。この表式中で、xD (0) と v (0)の値がシステム状態の初期条件を表わしている。
【0067】
【数7】
【0068】
【数8】
【0069】
【数9】
【0070】
【数10】
【0071】
(11),(12)式は過減衰の場合の速度vと変位xDの解である。
【0072】
【数11】
【0073】
【数12】
【0074】
変位の最大(または最小)は、速度がゼロのときに起きる。 (8),(10),(12)式を解いて得られる速度がゼロになる時刻に変位が最大になる(減衰があるので、最初の値が最大値になる)。これらの時刻は、それぞれ(13),(14),(15)式で与えられる。
【0075】
【数13】
【0076】
【数14】
【0077】
【数15】
【0078】
これらから時刻を算出し、(7),(9),(11)式を使って計算すれば、それぞれの場合についての変位の最大値が得られる。 これから分かるように、最大変位は変位発生のメカニズム(振動発生機)、負荷質量、初期条件と放電抵抗の値に依存して決まる。
【0079】
最大変位と抵抗値との関係は線形ではなく、また抵抗値(RSSS)に関して明示的な解を得ることは出来ない。しかし、上記の式は数値的に解くことが出来るので、システムのパラメータや初期条件の下で、望ましい最大変位値を得るためのRSSSの最適値を設定することが出来る。現実問題としては、これが特定の運転条件について振動試験システムに対して発生する要求のすべてである。
【0080】
電力増幅器の出力フィルタの静電容量Cfが安全停止動作中の、とくに最大速度に関して、重要な役割を演じることが分かった。この件は、その性格から、シミュレーションモデルの範囲で考察されるべきものであり、実験はしていないが、この出力フィルタの静電容量Cfが持つ効果は、安全停止スイッチ3における抵抗値RSSSの選択をより重要にするものである。
【0081】
速度が大きい状態で安全停止スイッチ3が作動した場合、振動発生機の発生電圧、したがって電力増幅器の出力電圧はいずれも大きな値を持っている。そこで、安全停止スイッチ3が作動すると、構成部品Cf、 La およびCe.との間における発振が起きることがあり得るのである。この発振はRSSSの値の選択に依存するので、その選択は停止動作が大加速度発生時に起きる場合よりも、大速度発生時に起きる場合に重要になる。
【0082】
最適化アルゴリズム
図4、図5は、ある負荷質量と最大変位の場合について最適化アルゴリズムを適用して得られた結果を示している。これらの図には、与えられた運転条件に対して抵抗値がどのように選択されうるかが示されていると言える。
【0083】
最適化アルゴリズムは、安全停止スイッチのモデル(次数4)で得られた結果と、実際に特定の加振システムを使って得られた実験結果とを照合しながら決められた。
【0084】
実験では、最悪条件が想定された。すなわち、最大速度発生の瞬間つまり蓄えられた運動エネルギーが最大になった瞬間に、スイッチが作動させられた。この瞬間の変位はゼロである。この二つの仮定(xD (0)=0, v (0)=1.6m/s)が、抵抗値の最適値を求める初期条件となった。
【0085】
加振システムの緊急停止実験
以下に実際の実験結果を、「背景理論」に掲げた表式によって予測される振る舞いと比較しながら提示する。
【0086】
実加振実験とシミュレーションの結果は、すべて、下記の初期条件の下に得られたものである:
・変位: 40mm peak to peak
・速度: 1.6 m/s
・振動数: 12.8 Hz
・緊急停止は最大速度で起動。
【0087】
モデルの精度と能力を示すために、図6と図7には2種のパラメータの2種の値についてモデルで計算された変位波形と加速度波形を示す。負荷質量の値は0kgと40kgの2種、放電抵抗の値は、0.2オームと2.0オームの2種である。
【0088】
これらの計算結果を、図8から図15までの実際の加振実験の結果と比べると、非常に良い精度で実験との一致が得られていることが分かる。これは、放電抵抗値の最適化を行なう際にシミュレーション計算を使って良いことを示している。
【0089】
図8から図15には、変位と放電抵抗値と負荷質量との関係を示すため、応答の時系列波形が表示されている。
【0090】
すべての場合において、加振システムは、自身が持つ機械的また電気的なダンピングによって変位が減衰して行っており、安定であることが見て取れる。
【0091】
抵抗値が大きい抵抗を使うと(図16)、抵抗値が小さい場合に比べて最大変位が非常に大きくなる(0.05m)。そしてこの場合はアーマチュアが機械的ストッパーに当っている。一方、図15の加速度応答は、抵抗値が小さすぎると最大加速度が大きくなりすぎることを示している。
【0092】
(初速が大きい場合には)たとえ無負荷の場合でも、機械的ストッパーへの衝突を防ぐには、比較的小さな抵抗値が必要とされることが分かる。と最大加速度が大きくなりすぎることを示している。負荷質量が大きくなれば、当然それに見合ってより小さい抵抗値が必要となる。
【0093】
さまざまな実験結果について、図8から図15を参照しながら、以下に説明する。
【0094】
試行1−安全停止スイッチが無い場合の無負荷での実加振試験
安全停止スイッチ3の有用性を示すために、まず停止動作中に抵抗が一切接続されない場合の実験を実施した。実験は無負荷状態で行なった。すなわち、アーマチュアそのものの質量だけが負荷になっている。図8は、緊急停止スイッチの起動の前後における波形データを示している。(下から)軸1,2,3,4の順に、変位波形、加速度波形、電圧波形(速度に比例する)と電流波形が示されている。
【0095】
緊急停止スイッチ3が起動され、電流が遮断されている。しかし、慣性によって速度は急にはなくならないから、アーマチュアは動き続ける。(その結果、本来の最大変位位置よりも行き過ぎてしまって)アーマチュアが機械的ストッパーに衝突すると、大きな加速度が発生し、そのあと速度は減少している。その後、系は、自身のもつダンピングによってエネルギーを放出しながら、ゆっくりと静止状態に向かって推移してゆく。
【0096】
これと同じ力学特性を示すシミュレーション結果が図9に示されている。計算値では、アーマチュアの最大変位は、機械的ストッパーがないものとして、ゼロ点から0.04mである。機械的ストッパーは+/- 0.03 mのところに設けられているので、図8に示されたように、実際にはアーマチュアがこれにぶつかるはずである。
【0097】
試行2−無負荷、放電抵抗2.0オームでの実加振試験
アーマチュアが機械的ストッパーに衝突するのを防ぐため、安全停止回路が接続され、既述の方法によって計算された抵抗値を持つ放電抵抗が取り付けられた。許容される最大変位は0.0145mであり、無負荷の条件では抵抗値は2.0オームと算出された。この値の放電抵抗での安全停止スイッチの動作と能力が図10に示されている。
【0098】
系のダンピング特性が改善されたことによって、速度(駆動コイルの電圧)が速やかに減少するようになった。この結果、最大変位値が小さくなっている。逆起電力によって駆動コイルに流れる電流が出現し、振動系のエネルギーを除去するように働いている。その結果として最大加速度が増加しているが許容範囲内である。これと同じ状況のシミュレーション結果が図11に示されているが、計算された最大変位値と実測値とは非常に良い一致を示している。
【0099】
試行.3−40kg負荷、放電抵抗1.0オームでの実加振試験
40kgの負荷を載せた情況での最適化が実施された(初期条件は試行1と同条件とした)。抵抗値は1オームで、最大変位は0.023mと算出された。
【0100】
図12と13には、実験データとシミュレーション結果が一致していることが示されている。負荷質量が増したので過渡応答は長くなっているが、変位は制御されており過剰な加速度発生もない。エネルギーを制御されたやり方で解除する本手法の有効性が証明されている。
【0101】
試行4−40kg負荷、最適化されていない放電抵抗での実加振試験
図14には試行3と同じ条件での実験結果が示されている。但し、放電抵抗は0.25オームという小さすぎる値に設定されている。この場合、振動発生機に蓄えられたエネルギーを散逸させる放電電流は試行3よりもずっと大きくなっている。この結果、アーマチュアを停止させる加速度レベルが試験レベルよりもかなり大きくなっていて、供試体あるいは振動試験装置を損傷する可能性がある。
【0102】
図15も、試行3と同一条件での実験結果を示している。ただし、放電抵抗は2.0オームという大きすぎる値に設定されている。この場合、振動発生機に蓄えられたエネルギーを散逸させる放電電流は試行3や図14の場合よりもずっと小さくなっている。この結果、アーマチュアを停止させる加速度レベルが小さすぎ、アーマチュアは速やかに停止されることが出来ず、機械的ストッパーに衝突してしまっている。衝突によっておきた大きな加速度ピークが図15に見て取れるが、これは供試体または振動試験装置に損傷を与える可能性がある。
【0103】
安全停止スイッチが作動すると、アーマチュアの運動によって励起される逆起電力’e’が、安全停止スイッチ3とサイリスタ120および抵抗器RSSSとによって形成される回路に印加され、その結果電流が生じる。この電流はアーマチュアを停止させる働きを持つが、その大きさはe/ RSSSである。このことが上記の実験結果には明瞭に現れている。
【0104】
発生した電流はアーマチュアを停止させる加速度を与えるが、この加速度は、Fをアーマチュアに加わる力、iを駆動コイルに流れる電流、Bを磁束密度、lを駆動コイルの長さ、mをアーマチュアの質量としたとき、F = B x i x l の関係と F = m x aの関係とから決まる。すなわち、これらの式からa=Bil/m であって、停止加速度は発生する電流に比例する大きさを持つ。このようにして、安全停止スイッチ回路のインピーダンスは電流とその結果発生する加速度を制御するのである。
【0105】
これらの実験結果は、安全停止スイッチの作動によって、アーマチュアに大きな過渡応答を発生することなく、振動発生機を安全に停止させ得ることを示している。安全停止スイッチ3の特性は、ダンピング抵抗を変えることによって変化させることが出来、このことを利用して特定の振動発生機と負荷に対して停止特性を最適化することが出来る。
【0106】
電力増幅器2と安全停止スイッチ3の電流値は、安全運転の制限内に収まっている。安全停止スイッチ3は、さまざまな振動発生システムに対し、適切なサイリスタを選択することにより適用することが出来る。
【0107】
動的電力コンバータ回路
図16と図17には、例えば制御することができる正確なエネルギー溜めように使えるような、別のエネルギー吸収装置が示されている。この実施例は非常に高速のパワートランジスタが使われているような場合、あるいは停止動作中にエネルギーが共振の形で残っているような場合に応用できるだろう。
【0108】
図16と図17に示したコンバータ回路の実施例は、エネルギーを安全で制御できるやり方で散逸させる制御可能な可変インピーダンスをどのようにして実現できるかを示している。この回路は、単相のフルブリッジコンバーター、あるいは双方向の電流と電圧を制御できるHブリッジとして使うことが出来る。
【0109】
図16は、ハーフブリッジ回路200を示している。回路200にはスイッチ202と204が含まれている。これらのスイッチ202と204とで双方向の電流制御が出来る。ダイオードD206とD208は、スイッチ202と204とがOFFになったときに電流が自由に流れることが出来るようにする。インダクタL210は電流変化が制御できるためと出力波形が平滑化されるためのものである。電流は電流変換器220で測定される。
【0110】
あるいは双方向の電流と電圧を制御できるHブリッジとして使うことが出来る。コンデンサ222は直流電流の平滑化のためのものである。
【0111】
完全な電力コンバータは、図16に例示したようにハーフブリッジ200と400とを接続して作ることが出来る。これらは互いにまったく同じものである。電力コンバータの出力波形は、コンデンサC226でさらに平滑化される。
【0112】
電力コンバータ回路は、図中のマイクロコントローラ300のようなものによって制御される。電力コンバータは、点’X’と点’Y’で、図1に示されているように振動試験装置に接続される。
【0113】
コントローラ300は、安全停止のために必要とされる要求波形形状を使ってプログラムされている。電流変換器220、228がコンバータの出力電流を観測し、それが停止波形の目標波形と比較され、コントローラ300は停止波形が常に目標波形と等しくなるように制御を行なう。
【0114】
この電力コンバータは、無停電電源(UPS)か、コンデンサ・バンク、バッテリ・バンクあるいは類似の電源に接続され、主電源からのいかなる影響も受けないようになっているのが望ましい。
【0115】
この応用例として、負荷抵抗の最適値を得る最適化の方法の記述に変形を加えることが出来るかもしれない。最適化の方法は、加振システムの運動エネルギー(KE)の最大値と、その装置で試験される供試体の運動エネルギー(KE)の最大値を求め、加振システムと供試体が減速されるための最適値を割り出し、システムと供試体を保護するため、この減速要求と、予想できるやり方でのシステムからのエネルギーの伝送要求の両方を同時に満たすような最適値を導き出す、というものになるだろう。
【0116】
この方法は、加振システムと供試体を速やかに停止させたいという要求と、そのために発生する損傷を避けるために電気的エネルギーを制御しながらエネルギー溜め(可変抵抗)に散逸させるという矛盾した要求を両立させることが出来る。
【0117】
また、次のようにして、エネルギーのエネルギー溜めへの輸送を最適化する方法が準備されたことになる:
加振システムの運動エネルギー(KE)の最大値と、その装置で試験される供試体の運動エネルギー(KE)の最大値を求め、システムと供試体を保護するために加振システムと供試体が減速されることが出来る最適値を割り出し、そこから電流と電圧波形の持つべき特性を割り出し、その波形を実現するためのコンバーター回路を採用する。
【0118】
このように、電力コンバータを用いることが出来るという事実は、システムからのエネルギー散逸を動的に制御することを可能にするのである。
【0119】
本発明からの逸脱のない範囲で、実施例に対するさまざまな変形が可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、加振システムと安全停止システムの実施例を示すものである。
【図2】図2は、図1の安全停止システムの回路ブロック図である。
【図3】図3は、図1の安全停止システム簡略化モデルである。
【図4】図4は、(停止までに必要な)変位を、放電抵抗と負荷質量の関数として示すものである。
【図5】図5は、放電抵抗の最適値を、初期変位と速度の関数として示すものである。
【図6】図6は、変位応答波形を、それぞれ2種の放電抵抗値と負荷質量の場合について示すものである。
【図7】図7は、加速度応答波形を、それぞれ2種の放電抵抗値と負荷質量の場合について示すものである。
【図8】図8は、緊急停止が起きたときの実例を示している。この場合は安全停止スイッチを使っていないため、アーマチュアが機械的ストッパーに衝突してしまっている。
【図9】図9は、安全停止スイッチを使っていない場合に緊急停止が起きたときのシミュレーション結果を示している。
【図10】図10は、安全停止スイッチを接続した状態で緊急停止が起きたときの実例を示している。この例は、無負荷の場合であって、放電抵抗の抵抗値は2オームである。
【図11】図11は、安全停止スイッチを接続した状態で緊急停止が起きたときのシミュレーション結果を示している。この例は、無負荷の場合であって、放電抵抗の抵抗値は2オームである。
【図12】図12は、安全停止スイッチを接続した状態で緊急停止が起きたときの実例を示している。この例は、負荷の質量が40kgの場合であって、放電抵抗の抵抗値は1オームである。
【図13】図13は、安全停止スイッチを接続した状態で緊急停止が起きたときのシミュレーション結果を示している。この例は、負荷の質量が40kgの場合であって、放電抵抗の抵抗値は1オームである。
【図14】図14は、安全停止スイッチを接続した状態で緊急停止が起きたときの実例を示している。この例は、負荷の質量が40kgの場合であって、放電抵抗の抵抗値は0.25オームである。
【図15】図15は、安全停止スイッチを接続した状態で緊急停止が起きたときの実例を示している。この例は、負荷の質量が40kgの場合であって、放電抵抗の抵抗値は2オームである。
【図16】図16は電力コンバータ回路の例を示している。
【図17】図17は、図16に示したタイプのハーフブリッジ回路をふたつ使ってフルブリッジの電力コンバータを実現する実施例を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムの状態を知ることの出来る少なくともひとつのセンサと、
前記システムの状態を導出するための手段と、
前記システムからエネルギーを吸収するエネルギー溜めと、
予め定めてあった判断基準のひとつまたは複数に合致するシステム状態の不具合が発生した場合に、システムを損傷から守るために、前記システムから前記エネルギー溜めにエネルギーを制御可能に輸送する手段と、
を備えた安全停止装置。
【請求項2】
システムの状態を知ることの出来る少なくともひとつのセンサと、
前記システムの状態を導出するための手段と、
システムからエネルギーを吸収するエネルギー溜めと、
予め定めてあった判断基準のひとつまたは複数に合致するシステム状態の不具合が発生した場合に、システムを損傷から守るためにシステムからエネルギー溜めにエネルギーを制御可能に輸送する手段と、
を備えた振動試験装置用の安全停止装置。
【請求項3】
請求項1または2の安全停止装置であって、運動エネルギー(KE)を吸収する手段を有するもの。
【請求項4】
請求項3の安全停止装置であって、前記運動エネルギーを吸収する手段は、運動エネルギー(KE)を電気エネルギーに変換するもの。
【請求項5】
請求項1または2の安全停止装置であって、過剰な電気エネルギーを吸収するために用いられるもの。
【請求項6】
請求項4または5の安全停止装置であって、エネルギー溜めは、可変負荷抵抗を含むもの。
【請求項7】
請求項6の安全停止装置であって、エネルギー溜めは、手動設定式の抵抗器と、ひとつまたはそれ以上の実行に先立って定まる条件によって決まる手動設定部とを含むもの。
【請求項8】
請求項6の安全停止装置であって、実行に先立って定まる条件に基づき自動設定するための手段を有するもの。
【請求項9】
請求項8の安全停止装置であって、動的に変化する条件に基づき可変負荷を自動的に変化させるための手段を有するもの。
【請求項10】
請求項9の安全停止装置であって、条件によって発生する過渡応答に起因するエネルギースパイクからエネルギーを吸収するための手段を有するもの。
【請求項11】
請求項5から10のいずれかの安全停止装置であって、可変負荷抵抗が可変な熱応答時定数を有するもの。
【請求項12】
請求項8から11のいずれかの安全停止装置であって、可変抵抗のインピーダンスを変化させるためにマイクロプロセッサを備えているもの。
【請求項13】
請求項8から11のいずれかの安全停止装置であって、負荷抵抗が以下のグループの中のいずれかであるもの:可変インピーダンス抵抗、可変抵抗負荷、ダンプ抵抗、電力コンバータ。
【請求項14】
請求項13の安全停止装置であって、負荷抵抗が、エネルギーを熱の形で散逸させるように作られた巻線抵抗器を含むもの。
【請求項15】
請求項13の安全停止装置であって、負荷抵抗が、エネルギーを熱の形で散逸させるように作られたアルミ被覆炭素抵抗器を含むもの。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかの安全停止装置であって、エネルギーをシステムからエネルギー溜めに制御可能に輸送する前記手段は、MOSFETを含むもの。
【請求項17】
請求項1から15のいずれかの安全停止装置であって、エネルギーをシステムからエネルギー溜めに制御可能に輸送する前記手段は、バイポーラトランジスタまたは絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を含むもの。
【請求項18】
請求項1から15のいずれかの安全停止装置であって、エネルギーをシステムからエネルギー溜めに制御可能に輸送する前記手段は、サイリスタを含むもの。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかの安全停止装置であって、エネルギーを制御可能に負荷抵抗に輸送する手段を有するもの。
【請求項20】
請求項19の安全停止装置であって、エネルギーをエネルギー溜めに制御可能に輸送する前記手段は、バック・ツー・バック接続または反平行ブリッジ構成されたユニポーラスイッチを備えているもの。
【請求項21】
請求項6から20のいずれかに従った、負荷抵抗の最適値を得る方法であって、前記最適化手順は次のステップを備えている:システムの運動エネルギーの最大値を求め、システムによって試験されている対象物の運動エネルギーの最大値を求め、システムや被試験物損傷を受けないようにシステムを減速させる最適値を求め、当該減速とシステムからエネルギーを予知可能な速さでの輸送とを両立させ得る負荷抵抗の値を選択する。
【請求項22】
請求項1から20のいずれかに従った、エネルギーをシステムからエネルギー溜めに制御可能に輸送するのを最適化する方法であって、以下のステップを備えた方法:システムの運動エネルギーの最大値を求め、システムによって試験されている対象物の運動エネルギーの最大値を求め、システムや被試験物損傷を受けないようにシステムを減速させる最適値を求めて、電流と電圧の波形の特性を定め、その波形を実現するためにコンバータ回路を使用する。
【請求項23】
試験システムを制御可能に停止させる方法であって、以下のステップを備えた方法:システム内に非常状態が発生したことを検知し、ひとつまたは複数の基準に従いながらシステムからエネルギーを吸収するため該システムに直列に接続されたエネルギー溜めのスイッチを入れ、システムに損傷を与えることを避けるためにエネルギーを制御可能に散逸させる。
【請求項24】
請求項22の試験システムを制御可能に停止させる方法であって、前記エネルギー溜めは可変負荷抵抗であり、当該抵抗のインピーダンスの最適値を求めるステップを含むもの。
【請求項25】
請求項23の試験システムを制御可能に停止させる方法であって、さらに次のステップを含むもの:システムの初期条件を決め、試験を開始する前にシステムの特性を掌握して、振動試験実施中のシステムの動的特性を決める。
【請求項1】
システムの状態を知ることの出来る少なくともひとつのセンサと、
前記システムの状態を導出するための手段と、
前記システムからエネルギーを吸収するエネルギー溜めと、
予め定めてあった判断基準のひとつまたは複数に合致するシステム状態の不具合が発生した場合に、システムを損傷から守るために、前記システムから前記エネルギー溜めにエネルギーを制御可能に輸送する手段と、
を備えた安全停止装置。
【請求項2】
システムの状態を知ることの出来る少なくともひとつのセンサと、
前記システムの状態を導出するための手段と、
システムからエネルギーを吸収するエネルギー溜めと、
予め定めてあった判断基準のひとつまたは複数に合致するシステム状態の不具合が発生した場合に、システムを損傷から守るためにシステムからエネルギー溜めにエネルギーを制御可能に輸送する手段と、
を備えた振動試験装置用の安全停止装置。
【請求項3】
請求項1または2の安全停止装置であって、運動エネルギー(KE)を吸収する手段を有するもの。
【請求項4】
請求項3の安全停止装置であって、前記運動エネルギーを吸収する手段は、運動エネルギー(KE)を電気エネルギーに変換するもの。
【請求項5】
請求項1または2の安全停止装置であって、過剰な電気エネルギーを吸収するために用いられるもの。
【請求項6】
請求項4または5の安全停止装置であって、エネルギー溜めは、可変負荷抵抗を含むもの。
【請求項7】
請求項6の安全停止装置であって、エネルギー溜めは、手動設定式の抵抗器と、ひとつまたはそれ以上の実行に先立って定まる条件によって決まる手動設定部とを含むもの。
【請求項8】
請求項6の安全停止装置であって、実行に先立って定まる条件に基づき自動設定するための手段を有するもの。
【請求項9】
請求項8の安全停止装置であって、動的に変化する条件に基づき可変負荷を自動的に変化させるための手段を有するもの。
【請求項10】
請求項9の安全停止装置であって、条件によって発生する過渡応答に起因するエネルギースパイクからエネルギーを吸収するための手段を有するもの。
【請求項11】
請求項5から10のいずれかの安全停止装置であって、可変負荷抵抗が可変な熱応答時定数を有するもの。
【請求項12】
請求項8から11のいずれかの安全停止装置であって、可変抵抗のインピーダンスを変化させるためにマイクロプロセッサを備えているもの。
【請求項13】
請求項8から11のいずれかの安全停止装置であって、負荷抵抗が以下のグループの中のいずれかであるもの:可変インピーダンス抵抗、可変抵抗負荷、ダンプ抵抗、電力コンバータ。
【請求項14】
請求項13の安全停止装置であって、負荷抵抗が、エネルギーを熱の形で散逸させるように作られた巻線抵抗器を含むもの。
【請求項15】
請求項13の安全停止装置であって、負荷抵抗が、エネルギーを熱の形で散逸させるように作られたアルミ被覆炭素抵抗器を含むもの。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかの安全停止装置であって、エネルギーをシステムからエネルギー溜めに制御可能に輸送する前記手段は、MOSFETを含むもの。
【請求項17】
請求項1から15のいずれかの安全停止装置であって、エネルギーをシステムからエネルギー溜めに制御可能に輸送する前記手段は、バイポーラトランジスタまたは絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を含むもの。
【請求項18】
請求項1から15のいずれかの安全停止装置であって、エネルギーをシステムからエネルギー溜めに制御可能に輸送する前記手段は、サイリスタを含むもの。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかの安全停止装置であって、エネルギーを制御可能に負荷抵抗に輸送する手段を有するもの。
【請求項20】
請求項19の安全停止装置であって、エネルギーをエネルギー溜めに制御可能に輸送する前記手段は、バック・ツー・バック接続または反平行ブリッジ構成されたユニポーラスイッチを備えているもの。
【請求項21】
請求項6から20のいずれかに従った、負荷抵抗の最適値を得る方法であって、前記最適化手順は次のステップを備えている:システムの運動エネルギーの最大値を求め、システムによって試験されている対象物の運動エネルギーの最大値を求め、システムや被試験物損傷を受けないようにシステムを減速させる最適値を求め、当該減速とシステムからエネルギーを予知可能な速さでの輸送とを両立させ得る負荷抵抗の値を選択する。
【請求項22】
請求項1から20のいずれかに従った、エネルギーをシステムからエネルギー溜めに制御可能に輸送するのを最適化する方法であって、以下のステップを備えた方法:システムの運動エネルギーの最大値を求め、システムによって試験されている対象物の運動エネルギーの最大値を求め、システムや被試験物損傷を受けないようにシステムを減速させる最適値を求めて、電流と電圧の波形の特性を定め、その波形を実現するためにコンバータ回路を使用する。
【請求項23】
試験システムを制御可能に停止させる方法であって、以下のステップを備えた方法:システム内に非常状態が発生したことを検知し、ひとつまたは複数の基準に従いながらシステムからエネルギーを吸収するため該システムに直列に接続されたエネルギー溜めのスイッチを入れ、システムに損傷を与えることを避けるためにエネルギーを制御可能に散逸させる。
【請求項24】
請求項22の試験システムを制御可能に停止させる方法であって、前記エネルギー溜めは可変負荷抵抗であり、当該抵抗のインピーダンスの最適値を求めるステップを含むもの。
【請求項25】
請求項23の試験システムを制御可能に停止させる方法であって、さらに次のステップを含むもの:システムの初期条件を決め、試験を開始する前にシステムの特性を掌握して、振動試験実施中のシステムの動的特性を決める。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図13】
【図16】
【図17】
【図4】
【図5】
【図8】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図13】
【図16】
【図17】
【図4】
【図5】
【図8】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2007−536550(P2007−536550A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512593(P2007−512593)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001728
【国際公開番号】WO2005/108947
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000100676)IMV株式会社 (17)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001728
【国際公開番号】WO2005/108947
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000100676)IMV株式会社 (17)
[ Back to top ]