説明

安定化されたイミダゾール誘導体含有医薬組成物、イミダゾール誘導体の安定化方法

【課題】医薬組成物中の生理活性を有する化合物の安定性を向上させる方法、及び安定化した医薬組成物の提供。
【解決手段】式:
【化1】


(式中、nは1ないし3の整数を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香環を示し、*はキラル中心を示す。)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグと、糖アルコールとを含有する医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は安定化されたイミダゾール誘導体含有医薬組成物、およびイミダゾール誘導体の安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬組成物、特に医薬固形組成物は一般に種々の賦形剤と生理活性を有する化合物よりなるが、その賦形剤の配合が生理活性を有する化合物を不安定化する場合があることが広く知られており、様々な安定化対策が実施される。例えば医薬組成物に使用される賦形剤によってはその賦形剤の示す雰囲気あるいはその賦形剤の分解によって酸性物質を生成し、その分解物が弱酸性を示す場合がある。このような弱酸性を示す賦形剤を使用した場合に生理活性を有する化合物の安定性が損なわれる場合がある。医薬組成物において生理活性を有する化合物が分解し類縁物質等が生成あるいは増加することはその類縁物質等の安全性が確認されたものであっても、医薬という性質から類縁物質の生成あるいは増加を抑制することは極めて重要である。
【0003】
酸に対して不安定な生理活性を有する化合物を安定な医薬組成物とする最も一般的な方法は腸溶性基材でコーティングを施すことである。さらに腸溶性基材が酸性物質であるから、生理活性を有する化合物との相互作用を考慮して、塩基性塩等を配合して、さらに安定性を向上させることがある。いずれにしても、ここでいう酸に対して不安定な化合物とは、生理活性を有する化合物の顕著な含量低下を示すような化合物であって、顕著な含量低下を認めない化合物にあってはこの一般的な安定化法を施すことなく、安定な医薬品組成物として認められ、安定化の必要性もないと考えられていた。つまり、化合物の極わずかな分解に伴う類縁物質の生成あるいは増加を問題とは認識していなかった。近年、不純物の許容基準及びその不純物の毒性試験の必要性などに関して、国際調和が進み一定の基準での不純物の取り扱いが必要となり、化合物の極わずかな分解に伴う類縁物質の生成あるいは増加も問題にする必要がでてきた。例えば、従来技術の適用が不必要な酸に対して顕著な含量低下を示さない化合物の医薬組成物においても、それに使用した賦形剤によってはその賦形剤の示す雰囲気あるいはその賦形剤の分解によって酸性物質を生成し、その分解物が弱酸性を示すものがあり、医薬組成物自身も弱酸性を示すことによって生理活性を有する化合物への影響を無視できないことが多くなった。
一方、ステロイドC17,20リアーゼ阻害活性を有し、前立腺癌、乳癌等の腫瘍の予防・治療剤として有用な縮合イミダゾール誘導体の光学活性体である後述の式(I)で表される化合物が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第02/040484号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
酸に対して不安定であるが、顕著な含量低下を認めない化合物は、安定化技術を施す必要はないと考えられていた。しかし賦形剤によっては化合物の極わずかな分解に伴う類縁物質の生成あるいは増加がある。従って、その化合物の極わずかな分解に伴う類縁物質の生成あるいは増加を問題にし、それを抑制する必要がでてきた。
したがって、本発明の目的は、医薬組成物中の生理活性を有する化合物の安定性を向上させる方法を提供すること、及び安定化した医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、医薬組成物に使用される賦形剤によってはその賦形剤の示す雰囲気あるいは賦形剤の分解によって酸性物質を生成し、その分解物が弱酸性を示すことにより不安定化される医薬組成物の安定性を向上させる方法について検討した結果、本発明を完成するにいたった。
【0007】
すなわち、本発明は、
〔1〕式:
【化1】

(式中、nは1ないし3の整数を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香環を示し、*はキラル中心を示す。)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグと、糖アルコールとを含有する安定化された医薬組成物;
〔2〕糖アルコールがマンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトールおよびラクチトールからなる群より選択される1または2以上である、前記〔1〕記載の医薬組成物;
〔3〕さらにpH調整剤を含有する前記〔1〕記載の医薬組成物;
〔4〕医薬組成物のpHを6.0-10.5に制御する量のpH調整剤を含有する前記〔3〕記載の医薬組成物;
〔5〕医薬組成物のpHを6.0-9.5に制御する量のpH調整剤を含有する前記〔3〕記載の医薬組成物;
〔6〕式:
【化2】

(式中、nは1ないし3の整数を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香環を示し、*はキラル中心を示す。)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグと、pH調整剤とを含有する安定化された医薬組成物;
〔7〕医薬組成物のpHを6.0-10.5に制御する量のpH調整剤を含有する前記〔6〕記載の医薬組成物;
〔8〕医薬組成物のpHを6.0-9.5に制御する量のpH調整剤を含有する前記〔6〕記載の医薬組成物;
〔9〕医薬固形組成物である前記〔1〕または〔6〕記載の医薬組成物;
〔10〕Arが置換基を有していてもよい単環もしくは二環性芳香族縮合環である前記〔1〕または〔6〕記載の医薬組成物;
〔11〕Arが置換されていてもよく、環構成原子として0ないし4個のヘテロ原子を含む5ないし10個の原子から構成され炭素原子で結合する芳香環である前記〔1〕または〔6〕記載の医薬組成物;
〔12〕Arが式:
【化3】

(式中、m1は1ないし4の整数を、m2は0ないし3の整数を示し、R1およびR2は同一または異なってそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいチオール基、置換基を有していてもよいアミノ基、アシル基、ハロゲン原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)で表される基、式:
【化4】

(式中、m3は1ないし5の整数を、m4は0ないし4の整数を示し、R3およびR4は同一または異なってそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいチオール基、置換基を有していてもよいアミノ基、アシル基、ハロゲン原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)で表される基または式:
【化5】

(式中、m5は1ないし4の整数を示し、R5は水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいチオール基、置換基を有していてもよいアミノ基、アシル基、ハロゲン原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)で表される基である前記〔1〕または〔6〕記載の医薬組成物;
〔13〕Arが式:
【化6】

(式中、R6およびR7は同一または異なってそれぞれ独立して水素原子または低級アルキル基を示す)で表される基または、式:
【化7】

(式中、m4は0ないし4の整数を示し、R3およびR4は同一または異なってそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいチオール基、置換基を有していてもよいアミノ基、アシル基、ハロゲン原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)で表される基である前記〔1〕または〔6〕記載の医薬組成物;
〔14〕Arが式:
【化8】

(式中、R6およびR7は同一または異なって、水素原子または低級アルキル基を示す)で表される基である前記〔1〕または〔6〕記載の医薬組成物;
〔15〕式(I)で表される化合物が、以下の化合物からなる群より選択されるものである、前記〔1〕または〔6〕記載の医薬組成物:
7-(5-メトキシベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(R)-オール、7-(5-メトキシベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(S)-オール、7-(5-フルオロベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(R)-オール、7-(5-フルオロベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(S)-オール、7-(4'-フルオロ[1,1'-ビフェニル]-3-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(R)-オール、7-(4'-フルオロ[1,1'-ビフェニル]-3-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(S)-オール、7-(4'-フルオロ[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(R)-オール、7-(4'-フルオロ[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(S)-オール、6-(7(R)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-N-メチル-2-ナフタミド、6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-N-メチル-2-ナフタミド、N-エチル-6-(7(R)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミド、N-エチル-6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミド、6-(7(R)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-N-イソプロピル-2-ナフタミド、6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-N-イソプロピル-2-ナフタミド、6-(7(R)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミドおよび6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミド;
〔16〕式:
【化9】

(式中、nは1ないし3の整数を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香環を示し、*はキラル中心を示す。)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグに、糖アルコールを添加する、式(I)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグの安定化方法;
〔17〕糖アルコールがマンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトールおよびラクチトールからなる群より選択される1または2以上である前記〔16〕記載の安定化方法;
〔18〕さらにpH調整剤を添加する前記〔16〕記載の安定化方法;
〔19〕式(I)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグを含有する医薬組成物のpHを6.0-10.5に制御する、前記〔18〕記載の安定化方法;
〔20〕式(I)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグを含有する医薬組成物のpHを6.0-9.5に制御する、前記〔18〕記載の安定化方法;
〔21〕式:
【化10】

(式中、nは1ないし3の整数を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香環を示し、*はキラル中心を示す。)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグに、pH調整剤を添加する、式(I)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグの安定化方法;
〔22〕式(I)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグを含有する医薬組成物のpHを6.0-10.5に制御する、前記〔21〕記載の安定化方法;
〔23〕式(I)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグを含有する医薬組成物のpHを6.0-9.5に制御する、前記〔21〕記載の安定化方法などに関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
化合物は、製剤すなわち、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤に製され医薬となるが、その安定性は化合物単独以上に製剤処方中の他成分との相互作用の存在により悪化傾向を示し、製造時および経日的な含量低下、着色変化等の現象として品質への影響が見られることがある。本発明で示すような医薬組成物の示す酸性雰囲気によって不安定化される化合物においては極わずかな化合物の分解とそれに伴う類縁物質の生成または増加の問題が特に医薬とするために配合される賦形剤、たとえば増量剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、フィルムコーティング基材、色素、隠蔽剤等により影響を受けることが多く、その原因は使用された賦形剤によって、その賦形剤の示す酸性雰囲気あるいはその賦形剤の分解によって酸性物質を生成し、その分解物が弱酸性を示すことにより医薬組成物自身も弱酸性を示すことによって生理活性を有する化合物が不安定化される。本発明では、(1)医薬組成物の示す雰囲気が弱酸性とならない、例えばマンニトール等のような糖アルコールを主とした組成とするなど賦形剤を選定することにより、安定性が改善できる。一方、医薬組成物の製造性等の物理化学的特性を満足させるため、例えば錠剤の場合は、崩壊性、硬度などの適正化のために、さらには他の安定化、例えば光安定性等を確保する必要があるために、使用を避けて通ることのできない他の賦形剤がある場合のように、上記(1)にいう賦形剤の選定ができない場合には、(2)賦形剤の選定に依らず、第3物質の添加、具体的にはpH調整剤を医薬組成物に配合することによって安定性が改善できる。さらに、(3)賦形剤の選定とpH調整剤の添加の組み合わせによって、生理活性を有する化合物を含有する医薬組成物の安定性が改善できる。
【0009】
本発明において、生理活性を有する化合物は、式:
【化11】

(式中、各記号は前記の定義と同義である。)で表される光学活性部位を有する化合物であり、酸性条件下において光学活性部位のコンバージョンや光学活性部位の水酸基の脱離を伴う脱水反応(脱水体の生成)などにより、類縁物質の生成や増加を引き起こす構造を有する。
【0010】
本明細書中、各式中の各記号の定義は次の通りである。
nは1ないし3の整数であるが、1が好ましい。
m1は1ないし4の整数であるが、1または2が好ましく、特に1が好ましい。
m2は0ないし3の整数であるが、0または1が好ましく、特に0が好ましい。
m3は1ないし5の整数であるが、1ないし3が好ましく、特に1が好ましい。
m4は0ないし4の整数であるが、0または1が好ましく、特に0が好ましい。
m5は1ないし4の整数であるが、1または2が好ましく、特に1が好ましい。
【0011】
R1、R2、R3、R4およびR5で示される置換基を有していてもよい水酸基としては、無置換の水酸基の他、たとえば低級アルコキシ(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ等のC1-4アルコキシ基)、低級アルカノイルオキシ(例、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ等のC1-4アルカノイルオキシ)、置換基を有していてもよいカルバモイルオキシ(例、無置換のカルバモイルオキシの他、たとえばメチルカルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシ、ジメチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ、エチルメチルカルバモイルオキシ等の1または2個のC1-4アルキル基で置換されたカルバモイルオキシ)等が挙げられる。
R1、R2、R3、R4およびR5で示される置換基を有していてもよいチオール基としては、無置換のチオール基の他、たとえば低級アルキルチオ(例、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ等のC1-4アルキルチオ)、低級アルカノイルチオ(例、アセチルチオ、プロピオニルチオ等のC1-4アルカノイルチオ)等が挙げられる。
R1、R2、R3、R4およびR5で示される置換基を有していてもよいアミノ基としては、無置換のアミノ基の他、たとえば低級アルキルアミノ(例、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ等のC1-4アルキルアミノ)、ジ低級アルキルアミノ(例、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等のジC1-4アルキルアミノ)、C1-4アルカノイルアミノ(例、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ等)等が挙げられる。
R1、R2、R3、R4およびR5で示されるアシル基としては、たとえばアルカノイル基(例、ホルミル、アセチル、プロピオニル等のC1-6アルカノイル)、アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル、エチルスルホニル等のC1-4アルキルスルホニル)、アロイル基(例、ベンゾイル、トルオイル、ナフトイル等)、置換基を有していてもよいカルバモイル基(例、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル等のモノ-またはジ-C1-10アルキルカルバモイル基;フェニルカルバモイル、ジフェニルカルバモイル等のモノ-またはジ-C6-14アリールカルバモイル基;ベンジルカルバモイル、ジベンジルカルバモイル等のモノ-またはジ-C7-16アラルキルカルバモイル基等)、置換基を有していてもよいスルファモイル基(例、メチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル等のモノ-またはジ-C1-10アルキルスルファモイル基;フェニルスルファモイル、ジフェニルスルファモイル等のモノ-またはジ-C6-14アリールスルファモイル基;ベンジルスルファモイル、ジベンジルスルファモイル等のモノ-またはジ-C7-16アラルキルスルファモイル基等)等が挙げられる。
R1、R2、R3、R4およびR5で示されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
R1、R2、R3、R4およびR5で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「炭化水素基」としては、例えば鎖式炭化水素基または環式炭化水素基等が挙げられる。
【0012】
該鎖式炭化水素基としては例えば、炭素数1ないし10の直鎖状または分枝状鎖式炭化水素基等を示し、具体的には、例えばアルキル基、アルケニル基等が挙げられる。これらの中で特にアルキル基が好ましい。該「アルキル基」としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル等のC1-10アルキル基等が挙げられるが、C1-6アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等)が好ましい。該「アルケニル基」としては、例えばビニル、1-プロペニル、アリル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、イソブテニル、sec-ブテニル等のC2-10アルケニル基等が挙げられるがC2-6アルケニル基(例えば、ビニル、1-プロペニル、アリル等)が好ましい。該「アルキニル基」としては、例えばエチニル、1-プロピニル、プロパルギル等のC2-10アルキニル基等が挙げられるが、C2-6アルキニル基(例えば、エチニル等)が好ましい。
該環式炭化水素基としては例えば、炭素数3ないし18の環式炭化水素基、具体的には、例えば、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
該「脂環式炭化水素基」としては、例えば3ないし10個の炭素原子から構成される単環式または縮合多環式の基、具体的にはシクロアルキル基、シクロアルケニル基およびこれらとC6-14アリール基(例えば、ベンゼン等)等との2または3環式縮合環等が挙げられる。該「シクロアルキル基」としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC3-6シクロアルキル基等が、該「シクロアルケニル基」としては、例えばシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等のC3-6シクロアルケニル基等が挙げられる。
該「芳香族炭化水素基」としては、例えば6ないし18個の炭素原子から構成される単環式芳香族炭化水素基、縮合多環式芳香族炭化水素基等が挙げられ、具体的には、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-インデニル、2-アンスリル等のC6-14アリール基が挙げられ、C6-10アリール基(例えば、フェニル等)等が好ましい。
【0013】
該「置換基を有していてもよい炭化水素基」中の「鎖式炭化水素基」が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、例えばハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アシルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アルキルカルボニル基、シクロアルキル基、アリール基、芳香族複素環基等が挙げられる。これらの置換基は、「鎖式炭化水素基」上に化学的に許容される範囲において置換され、その置換基の置換基数は1ないし5個、好ましくは1ないし3個である。ただし、置換基の数が2個以上の場合は同一または相異なっていてもよい。
【0014】
該「置換基を有していてもよい炭化水素基」中の「環式炭化水素基」が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、例えばハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、モノ-またはジ-アルキルアミノ基、アシルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキニルカルボニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、芳香族複素環基等が挙げられる。これらの置換基は、「環式炭化水素基」上に化学的に許容される範囲において置換され、その置換基の置換基数は1ないし5個、好ましくは1ないし3個である。ただし、置換基の数が2個以上の場合は同一または相異なっていてもよい。
【0015】
該「ハロゲン原子」としては、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。該「アルコキシ基」としては、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等のC1-10アルコキシ基等が挙げられる。該「アシルオキシ基」としては、例えばホルミルオキシ、C1-10アルキル-カルボニルオキシ(例えば、アセトキシ、プロピオニルオキシ等)等が挙げられる。該「アルキルチオ基」としては、例えばメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ等のC1-10アルキルチオ基等が挙げられる。該「アルキルスルホニル基」としては、例えばメチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル等のC1-10アルキルスルホニル基等が挙げられる。該「アシルアミノ基」としては、例えばホルミルアミノ、ジホルミルアミノ、モノ-またはジ-C1-10アルキル-カルボニルアミノ(例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチリルアミノ、ジアセチルアミノ等)等が挙げられる。該「モノ-またはジ-アルキルアミノ基」としては、上述の低級アルキルアミノやジ低級アルキルアミノと同様のものが例示される。該「アルコキシカルボニル基」としては、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル等のC1-10アルコキシカルボニル基等が挙げられる。該「アルキルカルボニル基」としては、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル等のC1-10アルキルカルボニル基等が挙げられる。該「アルキニルカルボニル基」としては、例えばエチニルカルボニル、1-プロピニルカルボニル、2-プロピニルカルボニル等のC3-10アルキニルカルボニル基等が挙げられる。該「シクロアルキル基」としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC3-10シクロアルキル基等が挙げられる。該「アリール基」としては、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル等のC6-14アリール基等が挙げられる。該「芳香族複素環基」としては、例えば炭素原子以外に窒素、酸素および硫黄から選ばれたヘテロ原子を1または2種、好ましくは1ないし4個含む1ないし3環式芳香族複素環基等が挙げられる。具体的には、たとえばチエニル、ピリジル、フリルピラジニル、ピリミジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリダジニル、テトラゾリル、キノリル、インドリル、イソインドリル等が挙げられる。該「アルキル基」としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル等のC1-10アルキル基等が挙げられる。
【0016】
前記「炭化水素基」が有していてもよい置換基は更に下記に示されるような置換基を、化学的に許容される範囲において1ないし5個、好ましくは1ないし3個有していてもよい。このような置換基としては例えばハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素)、水酸基、C1-6アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ等)が挙げられる。
【0017】
R6およびR7で示される低級アルキル基としては、例えば、炭素数1ないし4の直鎖状、分枝状または環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロプロピル、シクロブチル等が挙げられる。
【0018】
Arで示される置換基を有していてもよい芳香環とは、1またはそれ以上の置換基を有していてもよい単環もしくは二環性芳香族縮合環等が例示される。また、置換されていてもよく、環構成原子として0ないし4個のヘテロ原子を含む5ないし10個の原子から構成される芳香環(ここで該芳香環はヘテロ原子ではなく炭素原子で式(I)中の縮合イミダゾール環と結合している)も、Arとして好適に例示される。
Arで示される置換基を有していてもよい芳香環における置換基としては、置換基を有していもよい水酸基、置換基を有していもよいチオール基、置換基を有していてもよいアミノ基、アシル基、ハロゲン原子または置換基を有していてもよい炭化水素基が挙げられる。該「置換基を有していてもよい水酸基」、該「置換基を有していもよいチオール基」、該「置換基を有していてもよいアミノ基」、該「アシル基」、該「ハロゲン原子」および該「置換基を有していてもよい炭化水素基」としては、それぞれ上記R1、R2、R3、R4およびR5で例示されたものが挙げられる。
【0019】
式(I)中、Arとしては式(1)で表される基および式(2)で表される基が好ましく、式(1)で表される基が特に好ましい。式(1)で表される基のなかでは式(1-1)で表される基がより好ましく、また式(1-1)で表される基中、R6およびR7の双方がいずれも水素原子であるもの、一方が水素で他方がメチル基またはエチル基であるものが特に好ましい。
式(2)で表される基のなかでは式(2-1)で表される基がより好ましく、式(2-1)で表される基の中では、m4が0でR3がハロゲン原子であるものが特に好ましい。
【0020】
式(I)で表される化合物の好ましい具体例としては次の化合物が挙げられる。
7-(5-メトキシベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(R)-オール、7-(5-メトキシベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(S)-オール、7-(5-フルオロベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(R)-オール、7-(5-フルオロベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(S)-オール、7-(4'-フルオロ[1,1'-ビフェニル]-3-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(R)-オール、7-(4'-フルオロ[1,1'-ビフェニル]-3-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(S)-オール、7-(4'-フルオロ[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-(R)-オール、7-(4'-フルオロ[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-(S)-オール、6-(7(R)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-N-メチル-2-ナフタミド、6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-N-メチル-2-ナフタミド、N-シクロプロピル-6-(7(R)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミド、N-シクロプロピル-6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミド、N-エチル-6-(7(R)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミド、N-エチル-6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミド、N-シクロブチル-6-(7(R)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミド、N-シクロブチル-6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミド、6-(7(R)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-N-イソプロピル-2-ナフタミド、6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-N-イソプロピル-2-ナフタミド、6-(7(R)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミド、および6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミド。
【0021】
式(I)で表される化合物は、塩を形成していてもよく、該塩としては酸付加塩、例えば無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機酸塩(例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等)等が挙げられる。
尚、式(I)で表される化合物またはその塩は水和物であってもよく、いずれも本発明の範囲内である。以下、塩、水和物も含め化合物(I)と称する。
【0022】
化合物(I)のプロドラッグとは、生体内において酵素や胃酸等による反応によりステロイドC17,20リアーゼ阻害作用を有する化合物(I)に変換する化合物をいう。
化合物(I)のプロドラッグとしては、化合物(I)のイミダゾール窒素がアシル化またはアルキル化された化合物(例、ジメチルアミノスルホニル化、アセトキシメチル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メトキシカルボニルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、ベンジルオキシメチル化された化合物等);化合物(I)の水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、硫酸化、ホウ酸化された化合物(例、化合物(I)の水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、スクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物等)等が挙げられる。これらの化合物は自体公知の方法によって製造することができる。
化合物(I)のプロドラッグはそれ自身であっても、薬理学的に許容される塩であってもよい。このような塩としては、化合物(I)のプロドラッグがカルボキシル基等の酸性基を有する場合、無機塩基(例、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、鉄、銅等の遷移金属等)や有機塩基(例、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン等の有機アミン類、アルギニン、リジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸類等)等との塩が挙げられる。
【0023】
化合物(I)のプロドラッグがアミノ基等の塩基性基を有する場合、無機酸や有機酸(例、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、炭酸、重炭酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等)、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸等との塩が挙げられる。
また、化合物(I)のプロドラッグは水和物および非水和物のいずれであってもよい。
化合物(I)は、水酸基が結合したキラル中心の他に、分子内に1ないしそれより多いキラル中心を有する場合があるが、これらキラル中心に関しR配置、S配置のいずれも本発明に包含される。
化合物(I)としては、好ましくは、下式:
【0024】
【化12】

【0025】
(式中、各記号は前記の定義と同義である。)で表される光学活性体である。
あるいは、本発明の医薬組成物中に含有される生理活性を有する化合物は、化合物(I)の光学異性体の混合物であってもよく、ラセミ体も本発明に含まれる。
【0026】
化合物(I)は、従来公知の方法、例えば国際公開第02/040484号パンフレットに示される方法等によって製造することができる。
【0027】
化合物(I)またはそのプロドラッグの配合割合は、特に限定されないが、一般的に含有する割合が低いほど不安定化することが知られており、安定化の効果が顕著に確認できるのは、医薬組成物重量に対して、通常0.01%〜40%重量、好ましくは0.01%〜30%重量、さらに好ましくは0.01%〜10%重量である。
【0028】
本発明で使用する糖アルコールとしては、例えばマンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット等が挙げられ、とりわけマンニトールが好ましいがこれらに限定されない。
糖アルコールの配合割合は、医薬組成物重量に対して、通常10%〜90%重量、好ましくは20%〜85%重量、さらに好ましくは30%〜80%重量である。
【0029】
化合物(I)は酸性条件下において光学活性部位の光学転移や光学活性部位の水酸基の脱離を伴う脱水反応(脱水体の生成)などにより、類縁物質の生成や増加を引き起こす構造を有する化合物であることから、賦形剤の選定に拘らず、適切なpH調整剤を医薬組成物に添加して、医薬組成物自身が示す雰囲気をアルカリ側へシフトさせ、化合物の安定性を改善する。
この発明において、使用するpH調整剤としてはアルカリ化剤または塩基性アミノ酸から選ばれる1種または2種以上を配合することにより、十分な安定性が得られる。アルカリ化剤としては、特に限定されず塩基性を示す物質であればよいが、とりわけ、アルカリ金属のリン酸水素2塩(例えばリン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム等);アルカリ金属の炭酸2塩(例えば炭酸2ナトリウム等);金属酸化物(例えば酸化マグネシウム等);アルカリ土類金属水酸化物(例えば水酸化カルシウム等)、アルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム等);アルカリ金属のエデト酸2塩(例えばエデト酸2ナトリウム等);メグルミン、トロメタモール[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]等が挙げられる。好ましくは、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素カリウムを用いる。より好ましくはリン酸水素2ナトリウムを用いる。アミノ酸としては、例えばアルギニン、アスパラギン等が挙げられる。なお、これらの溶媒和物(例えば、水和物、エタノール溶媒和物)でもよい。
pH調整剤は、医薬組成物のpHを、通常6.0〜10.5、好ましくは6.0〜9.5、より好ましくは6.2〜9.5、さらに好ましくは6.5〜9.0、特に好ましくは7.0〜9.0に制御する量を配合する。本明細書において医薬組成物のpHとは液状組成物については該組成物のpHをいい、固形組成物については該組成物1錠(裸錠として285 mg)を精製水3 mLに懸濁した状態で示すpHをいう。具体的にはアルカリ化剤、アミノ酸の添加総量として、医薬組成物重量に対して、0.01%〜50%重量、好ましくは0.01%〜30%重量、より好ましくは0.05%〜20%重量である。
【0030】
さらに本発明において、医薬組成物の成分である賦形剤の選定とpH調整剤の組み合わせ、すなわち、糖アルコールおよびpH調整剤を配合することによって、より高い安定化効果が得られる。糖アルコール、pH調整剤は前記と同様のものを用いることができる。
糖アルコールの配合割合は、医薬組成物重量に対して、通常10%〜90%重量、好ましくは20%〜85%重量、さらに好ましくは30%〜80%重量である。
pH調整剤は、医薬組成物のpHを、通常6.0〜10.5、好ましくは6.0〜9.5、より好ましくは6.2〜9.5、さらに好ましくは6.5〜9.0、特に好ましくは7.0〜9.0に制御する量を配合する。具体的にはアルカリ化剤、アミノ酸の添加総量として、医薬組成物重量に対して、0.01%〜50%重量、好ましくは0.01%〜30%重量、より好ましくは0.05%〜20%重量である。
【0031】
本発明においては、上記糖アルコール、pH調整剤の他、本発明の効果を阻害しない限り、医薬的に許容される担体を配合することができる。医薬的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤;液状製剤における溶剤、分散剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として適宜適量配合される。また必要に応じて、常法にしたがって防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を用いることもできる。
ここでいう結合剤において、結合剤の選定は特に限定せず、ゼラチン、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、結晶セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、マクロゴール、アラビアゴム、デキストラン、ポリビニルアルコール(PVA)、でんぷん糊などが使用することができる。好ましくはヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが望ましく、さらに、好ましくはヒドロキシプロピルセルロースが望ましい。
崩壊剤としては、選定は特に限定せず、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、陽イオン交換樹脂、部分α化でんぷん、トウモロコシデンプンなどを用いることができる。医薬組成物の物理化学的特性を満足するため、たとえば製造性、錠剤の場合は、崩壊性、硬度などの適正化するため、好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの使用が望ましい。その配合割合は好ましくは医薬組成物中に3%〜15%重量である。
滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ワックス類、DL-ロイシン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、マクロゴール、エアロジル(帯電防止剤としても可能)などを使用できるが、好ましくはステアリン酸マグネシウムが望ましい。
着色剤としては、医薬品に適用可能な合成着色剤(例えば、サンセットイエロー等及びそれらのアルミニウムレーキなど)、黄色三二酸化鉄(黄ベンガラ)、三二酸化鉄(赤ベンガラ)、リボフラビン、リボフラビン有機酸エステル(例えば、リボフラビン酪酸エステル)、リン酸リボフラビンあるいはそのアルカリ金属、アルカリ土類金属塩、フェノールフタレイン、酸化チタンなどが挙げられる。遮光剤としては酸化チタンなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、BHT、トコフェロール、トコフェロールエステル(例えば、酢酸トコフェロール)、アスコルビン酸あるいはそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。
還元剤としては、シスチン、システインなどが挙げられる。
キレート剤としては、EDTA、EDTAのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、クエン酸、酒石酸などのアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
なお、本発明の実施形態としては、上記の賦形剤に規定されるものではない。 賦形剤としては、上記糖アルコールの他、例えば乳糖、白糖、ブドウ糖、麦芽糖、トウモロコシデンプン、小麦粉デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、デキストリン、カルボキシメチルデンプン、ゼラチン、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
増粘剤の好適な例としては、例えば天然ガム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体等が挙げられる。溶剤の好適な例としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油等が挙げられる。分散剤の好適な例としては、例えば、ツイーン(Tween)(例えばTween 80、Tween 60、Tween 20)、HCO(例えばHCO60、HCO50)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。溶解補助剤の好適な例としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。懸濁化剤の好適な例としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。等張化剤の好適な例としては、例えば塩化ナトリウム、グリセリン等が挙げられる。緩衝剤の好適な例としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。無痛化剤の好適な例としては、例えばベンジルアルコール等が挙げられる。防腐剤の好適な例としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。抗酸化剤の好適な例としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸及びそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0032】
本発明の医薬組成物は、固形、半固形、液状等のいずれの形態であってもよいが、医薬固形組成物が好ましい。本発明の安定化方法を適用する医薬組成物は、自体公知の手段に従い、たとえば錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤などの経口投与または注射剤、坐剤などの非経口投与に適した剤形に製剤化することができるが、これらに限定するものではない。錠剤、顆粒剤、細粒剤に関しては、味のマスキングあるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングしてもよい。そのコーティング剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール(例えばポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール8000)、ツイーン80、および酸化チタン、ベンガラ(例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄)等の色素が用いられる。また、フィルムコーティングする場合、隠蔽剤などを添加し光安定性などを向上させることが可能であるが、このとき酸化チタンなどの隠蔽剤を配合する場合は、あらかじめ、それらを含まないフィルムコーティングを施した後にさらにそれらを含むフィルムコーティングを施すとよりよい結果が得られる。これらのフィルムコーティング処方中には、さらに必要に応じてタルクやその他医薬品に適用可能な賦形剤を含有させてもよい。フィルムコーティング剤としては、味の隠蔽や光安定性の向上あるいは外観を向上させるためのもの以外にも、腸溶性や放出制御を付与する基剤を用いても良い。フィルムコーティング基剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、酢酸フタル酸セルロース、メタアクリル酸コポリマー類(例えば、メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体(Eudragit L100 or S100、Rohm社製)、メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体(Eudragit L100-55,L30D-55)、メタクリル酸・アクリル酸メチル・メタクリル酸メチル共重合体(Eudragit FS30D、Rohm社製))、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP-55, HP-50、信越化学(株)製)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC、フロイント産業(株)製)、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS 信越化学(株)製)、ポリビニルアセテートフタレート、シェラックなどが用いられる。これらは単独で、あるいは少なくとも2種以上のポリマーを組み合わせて、または少なくとも2種以上のポリマーを順次コーティングしてもよい。
このうち、活性成分の放出をpH依存的に制御するためのコーティング物質としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP-55, HP-50、信越化学(株)製)、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC、フロイント産業(株)製)、メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体(Eudragit L100, S100、Rohm社製)、メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体(Eudragit L100-55, L30D-55)、メタクリル酸・アクリル酸メチル・メタクリル酸メチル共重合体(Eudragit FS30D、Rohm社製)、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS 信越化学(株)製)、ポリビニルアセテートフタレート、シェラックなどが用いられる。
コーティング物質は単独であるいは必要により組み合わせて用いてもよい。さらにコーティングには必要に応じてポリエチレングリコール、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、トリアセチン、クエン酸トリエチルなどの可塑剤、安定化剤などを用いてもよい。
【0033】
本発明の医薬組成物は医薬として優れた効果を有しており、特にステロイドC17,20リアーゼに対し優れた阻害活性を有する。本発明の医薬組成物は毒性が低く、副作用も少ないので、哺乳動物(例えば、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、マウス、ラット等、特にヒト)に対して、例えば(i)アンドロゲンあるいはエストロゲン低下薬、(ii)アンドロゲンあるいはエストロゲンに関連する疾病、例えば(1)悪性腫瘍(例えば、前立腺癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌等)の原発癌、転移または再発、(2)それらの癌に伴う諸症状(例えば、痛み、悪液質等)、(3)前立腺肥大症、男性化症、多毛症、男性型禿頭症、男児性早熟症、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症、乳腺症、多曩胞性卵巣症候群等のような各種疾病の治療および予防薬として有用である。
本明細書において、アンドロゲンあるいはエストロゲンの低下薬とは、アンドロゲンの生成の抑制およびそれに続くエストロゲンの生成を抑制する(エストロゲンはアンドロゲンを基質として合成される)作用を有する医薬を意味する。
【0034】
本発明の医薬組成物の使用量は、選択される化合物、投与対象に選ばれる動物種、その投与回数等により変化するが、広範囲にわたって有効性を発揮する。例えば、成人の固形腫瘍患者(例えば、前立腺癌患者)に対して、本発明の医薬組成物を経口投与する場合の一日当たりの投与量は、本発明の医薬組成物に含有される化合物の有効量として、通常、約0.001ないし約500 mg/kg体重、好ましくは、約0.1ないし約40 mg/kg体重、さらに好ましくは、約0.5ないし約20 mg/kg体重であるが、非経口投与の場合や他の抗癌剤と併用される場合は、一般にこれらの投与量より少ない値になる。しかし、実際に投与される医薬組成物の量は、化合物の選択、各種製剤形態、患者の年齢、体重、性別、疾患の程度、投与経路、その投与を実施する期間および間隔等の状況によって決定されるものであり、医師の判断によって随時変更が可能である。
本発明の医薬組成物の投与経路は、種々の状況により特に制限されないが、例えば経口あるいは非経口経路で投与することができる。ここで使用される「非経口」には、静脈内、筋肉内、皮下、鼻腔内、皮内、点眼、脳内、直腸内、腟内および腹腔内等への投与を含む。
本発明の医薬組成物の投与期間および間隔は、種々の状況に応じて変更されるものであり、医師の判断により随時判断されるものであるが、分割投与、連日投与、間歇投与、短期大量投与、反復投与等の方法がある。例えば、経口投与の場合は、1日1ないし数回(特に1日2ないし3回)に分割して投与することが望ましい。また、徐放性の製剤として投与することや長時間かけて点滴静注することも可能である。
【実施例】
【0035】
以下に実施例、試験例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、これらは、本発明はこれに限定するものではない。
以下の比較例、参考例、実施例で用いられるD-マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、乳糖、トウモロコシデンプン、酸化チタン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、マクロゴール6000としては、第十四改正日本薬局方適合品を、リン酸水素2ナトリウム、三二酸化鉄は、医薬品添加物規格1998適合品を用いた。
【0036】
比較例
国際公開第02/040484号パンフレットに記載の方法で製造した6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-N-メチル-2-ナフタミド((+)−体)(以下化合物Aという)4.0 g、乳糖 816.0 g、トウモロコシデンプン 114.0 gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース72.0 gを流動造粒乾燥機(パウレック社製)に入れ、予熱混合し、ヒドロキシプロピルセルロース26 gを溶解した水溶液433.3 gをスプレーして、造粒末を得た。得られた造粒末全量を、20号篩を通し整粒末とした。得られた整粒末928.8 gと低置換度ヒドロキシプロピルセルロース86.4 gおよびステアリン酸マグネシウム10.8 gをポリエチレン袋内で混合して、混合末とした。この混合末1026 gを打錠機(菊水製作所製)により打錠し、素錠を得た。
【0037】
実施例1
化合物A 4.0 g、D-マンニトール 930.0 gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース72.0 gを流動造粒乾燥機(パウレック社製)に入れ、予熱混合し、ヒドロキシプロピルセルロース26 gを溶解した水溶液433.3 gをスプレーして、造粒末を得た。得られた造粒末全量を、20号篩を通し整粒末とした。得られた整粒末928.8 gと低置換度ヒドロキシプロピルセルロース86.4 gおよびステアリン酸マグネシウム10.8 gをポリエチレン袋内で混合して、混合末とした。この混合末1026 gを打錠機(菊水製作所製)により打錠し、素錠を得た。
【0038】
実施例2
化合物A 4.0 g、乳糖 814.8 g、トウモロコシデンプン 114.0 gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース72.0 gを流動造粒乾燥機(パウレック社製)に入れ、予熱混合し、リン酸水素2ナトリウム 1.2 gを溶解した水溶液120.0 gをスプレーし、続けて、ヒドロキシプロピルセルロース26 gを溶解した水溶液433.3 gをスプレーして、造粒末を得た。得られた造粒末全量を、20号篩を通し整粒末とした。得られた整粒末928.8 gと低置換度ヒドロキシプロピルセルロース86.4 gおよびステアリン酸マグネシウム10.8 gをポリエチレン袋内で混合して、混合末とした。この混合末1026 gを打錠機(菊水製作所製)により打錠し、素錠を得た。
【0039】
実施例3
化合物A 4.0 g、D-マンニトール 928.8 gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 72.0 gを流動造粒乾燥機(パウレック社製)に入れ、予熱混合し、リン酸水素2ナトリウム 1.2 gを溶解した水溶液120.0 gをスプレーし、続けて、ヒドロキシプロピルセルロース26 gを溶解した水溶液433.3 gをスプレーして、造粒末を得た。得られた造粒末全量を、20号篩を通し整粒末とした。得られた整粒末928.8 gと低置換度ヒドロキシプロピルセルロース86.4 gおよびステアリン酸マグネシウム10.8 gをポリエチレン袋内で混合して、混合末とした。この混合末1026 gを打錠機(菊水製作所製)により打錠し、素錠を得た。
【0040】
参考例1
精製水1260 gに、酸化チタン42 g、三二酸化鉄2.52 gを分散させ、精製水2520 gにヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC-5、信越化学工業(株))312.48 gおよびマクロゴール6000 63 gを溶解し、それらを混合して、被覆剤を製した。
【0041】
実施例4
化合物A 18 g、D-マンニトール 4185 gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース324 gを流動造粒乾燥機(パウレック社製)に入れ、予熱混合し、ヒドロキシプロピルセルロース117 gを溶解した水溶液1950 gをスプレーして、造粒末を得た。得られた造粒末4386 gをパワーミル(昭和化学機械工作所製)を用いて整粒末とした。得られた整粒末4128.0 gと低置換度ヒドロキシプロピルセルロース384 gおよびステアリン酸マグネシウム48 gをタンブラー混合機(昭和化学機械工作所製)を用いて混合末とした。この混合末3990 gを打錠機(菊水製作所製)により打錠し、素錠を得た。
【0042】
実施例5
化合物A 1800 g、D-マンニトール 2403 gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース324 gを流動造粒乾燥機(パウレック社製)に入れ、予熱混合し、ヒドロキシプロピルセルロース117 gを溶解した水溶液1950 gをスプレーして、造粒末を得た。得られた造粒末4386 gをパワーミル(昭和化学機械工作所製)を用いて整粒末とした。得られた整粒末4128.0 gと低置換度ヒドロキシプロピルセルロース384 gおよびステアリン酸マグネシウム48 gをタンブラー混合機(昭和化学機械工作所製)を用いて混合末とした。この混合末3990 gを打錠機(菊水製作所製)により打錠し、素錠を得た。
【0043】
実施例6
実施例4で得られた裸錠に、フィルムコーティング機(フロイント社製)中で、参考例1で得られた被覆剤を噴霧し、1錠当たり14mgの被覆を行い、フィルムコーティング錠を得た。
【0044】
実施例7
実施例5で得られた裸錠に、フィルムコーティング機(フロイント社製)中で、参考例1で得られた被覆剤を噴霧し、1錠当たり14mgの被覆を行い、フィルムコーティング錠を得た。
【0045】
実施例8
化合物A 30 g、D-マンニトール246 gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース21.6 gを流動造粒乾燥機(パウレック社製)に入れ、予熱混合し、ヒドロキシプロピルセルロース12 gを溶解した水溶液200 gをスプレーして、造粒末を得た。得られた造粒末全量を20号篩を通し整粒末とした。得られた整粒末258 gと低置換度ヒドロキシプロピルセルロース24 gおよびステアリン酸マグネシウム3 gをポリエチレン袋内で混合して、混合末とした。この混合末25 gを打錠機(菊水製作所製)により打錠し、素錠を得た。
【0046】
実施例9
化合物A 30 g、D-マンニトール234 gおよび結晶セルロース33.6 gを流動造粒乾燥機(パウレック社製)に入れ、予熱混合し、ヒドロキシプロピルセルロース12 gを溶解した水溶液200 gをスプレーして、造粒末を得た。得られた造粒末全量を20号篩を通し整粒末とした。得られた整粒末258 gと低置換度ヒドロキシプロピルセルロース24 gおよびステアリン酸マグネシウム3 gをポリエチレン袋内で混合して、混合末とした。この混合末285 gを打錠機(菊水製作所製)により打錠し、素錠を得た。
【0047】
実施例10
化合物A 120 g、D-マンニトール156 gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース21.6 gを流動造粒乾燥機(パウレック社製)に入れ、予熱混合し、ヒドロキシプロピルセルロース12 gを溶解した水溶液200 gをスプレーして、造粒末を得た。得られた造粒末全量を20号篩を通し整粒末とした。得られた整粒末258 gと低置換度ヒドロキシプロピルセルロース24 gおよびステアリン酸マグネシウム3 gをポリエチレン袋内で混合して、混合末とした。この混合末285 gを打錠機(菊水製作所製)により打錠し、素錠を得た。
【0048】
実施例11
化合物A 120 g、D-マンニトール144 gおよび結晶セルロース33.6 gを流動造粒乾燥機(パウレック社製)に入れ、予熱混合し、ヒドロキシプロピルセルロース12 gを溶解した水溶液200 gをスプレーして、造粒末を得た。得られた造粒末全量を20号篩を通し整粒末とした。得られた整粒末258 gと低置換度ヒドロキシプロピルセルロース24 gおよびステアリン酸マグネシウム3 gをポリエチレン袋内で混合して、混合末とした。この混合末285 gを打錠機(菊水製作所製)により打錠し、素錠を得た。
【0049】
参考例2
精製水600 gに酸化チタン14 g、三二酸化鉄0.84 gを分散させ、精製水660 gにヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC-5、信越化学工業(株))104.2 gおよびマクロゴール6000 21 gを溶解し、それらを混合して、被覆剤を製した。
【0050】
実施例12
実施例8で得られた裸錠に、フィルムコーティング機(フロイント社製)中で、参考例2で得られた被覆剤を噴霧し、1錠当たり14 mgの被覆を行い、フィルムコーティング錠を得た
【0051】
実施例13
実施例9で得られた裸錠に、フィルムコーティング機(フロイント社製)中で、参考例2で得られた被覆剤を噴霧し、1錠当たり14 mgの被覆を行い、フィルムコーティング錠を得た。
【0052】
実施例14
実施例10で得られた裸錠に、フィルムコーティング機(フロイント社製)中で、参考例2で得られた被覆剤を噴霧し、1錠当たり14 mgの被覆を行い、フィルムコーティング錠を得た。
【0053】
実施例15
実施例11で得られた裸錠に、フィルムコーティング機(フロイント社製)中で、参考例2で得られた被覆剤を噴霧し、1錠当たり14 mgの被覆を行い、フィルムコーティング錠を得た。
【0054】
試験例1
実施例1で製造したD-マンニトールを主たる賦形剤とした1 mg製剤及び比較例で製造した乳糖・トウモロコシデンプンを主たる賦形剤とした1 mg製剤をガラス瓶に入れ、開栓状態で40℃/75%RH、約1ヵ月間保存した後、類縁物質量及び光学異性体量(エナンチオマー)を液体クロマトグラフィーで測定し、イニシャルから変化及び両製剤の安定性の比較を行った。その結果、〔表1〕に示すように、D-マンニトールを主たる賦形剤とした製剤とすることで、酸性雰囲気下の分解に起因する脱水体の生成及びエナンチオマーの増加が顕著な比較例に対して、それらの増加を顕著に抑制した。また、それら以外の分解を示すその他の類縁物質(合計)でも顕著に抑制した。
【0055】
【表1】

【0056】
試験例2
実施例2で製造したpH調整剤を添加した乳糖・トウモロコシデンプンを主たる賦形剤とした1 mg製剤をガラス瓶に入れ、開栓状態で40℃/75%RH、2ヵ月間保存した後、類縁物質量及び光学異性体量を測定し、イニシャルからの類縁物質量または光学異性体量の変化を評価した。比較例で製造した乳糖・トウモロコシデンプンを主たる賦形剤とした1 mg製剤の4週間保存後の結果と比較すると〔表2〕に示すように、製剤中にpH調整剤を配合することによって、酸性雰囲気下の分解に起因する脱水体の生成及びエナンチオマーの増加が顕著な比較例に対して、それらの増加を顕著に抑制した。また、それら以外の分解を示すその他の類縁物質(合計)でも抑制した。
【0057】
【表2】

【0058】
試験例3
実施例3で製造したpH調整剤を添加したD-マンニトールを主たる賦形剤とした1 mg製剤をガラス瓶に入れ、開栓状態で40℃/75%RH、2ヵ月間保存した後、類縁物質量及び光学異性体量を測定し、イニシャルからの類縁物質量または光学異性体量の変化を評価した。比較例で製造した乳糖・トウモロコシデンプンを主たる賦形剤とした1 mg製剤の4週間保存後の結果と比較すると〔表3〕に示すように、D-マンニトールを主たる賦形剤とした製剤とし、さらに製剤中にpH調整剤を配合することによって、酸性雰囲気下の分解に起因する脱水体の生成及びエナンチオマーの増加が顕著な比較例に対して、それらの増加を顕著に抑制した。また、それら以外の分解を示すその他の類縁物質(合計)でも抑制した。
【0059】
【表3】

【0060】
試験例4
実施例6で製造したD-マンニトールを主たる賦形剤とした1 mg製剤及び実施例7で製造したD-マンニトールを主たる賦形剤とした100 mg製剤をガラス瓶に入れ、キャップをし、密栓状態でそれぞれ40℃、2ヶ月保存した後に、含量及び類縁物質を測定した。その結果、〔表4〕に示すように保存後の含量及び類縁物質の変化はほとんどなく安定であることが確認された。
【0061】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によって、酸性条件下において光学活性部位の光学転移や光学活性部位の水酸基の脱離を伴う脱水反応(脱水体の生成)などにより、類縁物質の生成や増加を引き起こす構造を有する生理活性を有する化合物を含有する医薬組成物を安定化する方法及び安定化された医薬を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式中、nは1ないし3の整数を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香環を示し、*はキラル中心を示す。)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグと、糖アルコールとを含有する安定化された医薬組成物。
【請求項2】
糖アルコールがマンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトールおよびラクチトールからなる群より選択される1または2以上である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
さらにpH調整剤を含有する請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
医薬組成物のpHを6.0-10.5に制御する量のpH調整剤を含有する請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
医薬組成物のpHを6.0-9.5に制御する量のpH調整剤を含有する請求項3記載の医薬組成物。
【請求項6】
式:
【化2】

(式中、nは1ないし3の整数を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香環を示し、*はキラル中心を示す。)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグと、pH調整剤とを含有する安定化された医薬組成物。
【請求項7】
医薬組成物のpHを6.0-10.5に制御する量のpH調整剤を含有する請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
医薬組成物のpHを6.0-9.5に制御する量のpH調整剤を含有する請求項6記載の医薬組成物。
【請求項9】
医薬固形組成物である請求項1または6記載の医薬組成物。
【請求項10】
Arが式:
【化3】

(式中、R6およびR7は同一または異なって、水素原子または低級アルキル基を示す)で表される基である請求項1または6記載の医薬組成物。
【請求項11】
式(I)で表される化合物が、以下の化合物からなる群より選択されるものである、請求項1または6記載の医薬組成物:
7-(5-メトキシベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(R)-オール、
7-(5-メトキシベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(S)-オール、
7-(5-フルオロベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(R)-オール、
7-(5-フルオロベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(S)-オール、
7-(4'-フルオロ[1,1'-ビフェニル]-3-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(R)-オール、
7-(4'-フルオロ[1,1'-ビフェニル]-3-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(S)-オール、
7-(4'-フルオロ[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(R)-オール、
7-(4'-フルオロ[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7(S)-オール、
6-(7(R)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-N-メチル-2-ナフタミド、
6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-N-メチル-2-ナフタミド、
N-エチル-6-(7(R)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミド、
N-エチル-6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミド、
6-(7(R)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-N-イソプロピル-2-ナフタミド、
6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-N-イソプロピル-2-ナフタミド、
6-(7(R)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミドおよび
6-(7(S)-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-c]イミダゾール-7-イル)-2-ナフタミド。
【請求項12】
式:
【化4】

(式中、nは1ないし3の整数を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香環を示し、*はキラル中心を示す。)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグに、糖アルコールを添加する、式(I)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグの安定化方法。
【請求項13】
糖アルコールがマンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトールおよびラクチトールからなる群より選択される1または2以上である請求項12記載の安定化方法。
【請求項14】
さらにpH調整剤を添加する請求項12記載の安定化方法。
【請求項15】
式(I)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグを含有する医薬組成物のpHを6.0-10.5に制御する、請求項14記載の安定化方法。
【請求項16】
式(I)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグを含有する医薬組成物のpHを6.0-9.5に制御する、請求項14記載の安定化方法。
【請求項17】
式:
【化5】

(式中、nは1ないし3の整数を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香環を示し、*はキラル中心を示す。)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグに、pH調整剤を添加する、式(I)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグの安定化方法。
【請求項18】
式(I)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグを含有する医薬組成物のpHを6.0-10.5に制御する、請求項17記載の安定化方法。
【請求項19】
式(I)で表される化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグを含有する医薬組成物のpHを6.0-9.5に制御する、請求項17記載の安定化方法。

【公開番号】特開2011−1382(P2011−1382A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224344(P2010−224344)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【分割の表示】特願2004−51766(P2004−51766)の分割
【原出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】