説明

安定化コンタクトレンズを製造するための方法

安定化ゾーンを有するコンタクトレンズは、ベジェ曲線等の数学的構造を使用して設計され、眼上での性能のモデル化に供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
特定の視覚欠損は、円筒型、二焦点、若しくは多焦点の特性等の、非球状補正物の態様をコンタクトレンズの1つ又は2つ以上の面に応用することで補正可能である。これらのレンズが効果的であるためには、眼上にある間、概して特定の方向で維持される必要がある。レンズの眼上での方向の維持は通常、レンズの機械的特性を変えることによって行われる。レンズの後面に対する前面の偏心、下方レンズ周辺部の厚さの増大、レンズ表面上における俯角又は仰角の形成、及びレンズ縁部の切断を含むプリズムの安定化は、安定化アプローチの例である。更に、薄いゾーン、又は、レンズ周辺部の厚さが減少する領域を使用することによってレンズを安定化させる動的安定化が用いられている。通常、薄いゾーンは、その眼上配置の観点から、レンズの垂直軸線又は水平軸線のいずれかに対して対称である2つの領域に位置付けられる。
【0002】
レンズ設計を評価することは、眼上でのレンズの性能に関して判断すること、並びにその後、必要かつ可能な場合に、その設計を最適化することを伴う。このプロセスは、通常、試験設計を患者において臨床的に評価することによって行われる。しかしながら、このプロセスは、患者間の変動性が考慮されなければならないために、かなりの数の患者が試験される必要があるため、時間と費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特定のコンタクトレンズの安定化を改善すること、及びそれらを設計する方法に対して、継続的必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、安定化ゾーンが数学的構造によって定義される、安定化コンタクトレンズを設計する方法である。その構造は、ベジェ曲線であってもよい。
【0005】
本発明の一態様において、レンズは、角の厚さプロファイルの上部を記述するベジェ曲線係数を使用して設計され、そのためサグ値が低減される。安定化ゾーンがレンズ周辺部に追加される際、レンズ上部の厚さは、増加される代わりに減少され、安定化の上部の厚さを減少させることは、最大厚を減少させながらも、同一の厚さの差分を保つことを可能にする。最大厚の位置の周囲の傾斜は、このプロファイル変更にそれほど影響されない。
【0006】
本発明の別の態様において、低減サグ値を有する領域は、安定化ゾーンの上部及び下部に適用される。
【0007】
本発明の更に別の態様において、安定化ゾーンの最大厚は、左側と右側との間で異なる。
【0008】
本発明の更に別の態様において、正及び/又は負の角度に対する厚さプロファイルの傾斜面は、傾斜面角度を増加又は低下させるように調整され得る。
【0009】
本発明の更に別の態様において、設計方法に従って作製されるレンズは、改善された安定化を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】安定化コンタクトレンズの正面図又はオブジェクト図。
【図2A】回転の軸線及びレンズで作用する様々なトルクを特定する、レンズが挿入された状態の眼の略図。
【図2B】回転の軸線及びレンズで作用する様々なトルクを特定する、レンズが挿入された状態の眼の略図。
【図2C】回転の軸線及びレンズで作用する様々なトルクを特定する、レンズが挿入された状態の眼の略図。
【図3A】ベジェ曲線から得られた新しい厚さプロファイル。
【図3B】ベジェ曲線から得られた新しい厚さプロファイル。
【図4A】実施例1に対するレンズ厚マップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【図4B】実施例1に対するレンズ厚マップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【図5A】実施例2に対するレンズ厚マップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【図5B】実施例2に対するレンズ厚マップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【図6A】実施例3に対するレンズ厚マップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【図6B】実施例3に対するレンズ厚マップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【図7A】実施例4に対するレンズ厚マップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【図7B】実施例4に対するレンズ厚マップ及び厚さプロファイルのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のコンタクトレンズは、レンズ上で作用する、様々な力の平衡をとることに基づいて、安定化を最適化させる設計を有する。これは、眼上で働くトルク、眼の構成要素、及び最終的には眼上に配置される安定化レンズの平衡をとる設計プロセスの適用を伴う。好ましくは、改善された安定化は、安定化の要素を含む公称設計を有する改善プロセスの開始によって実現される。例えば、中心を通る水平軸線及び垂直軸線の両方に対して対称である2つの安定化ゾーンを有するレンズ設計は、本発明の方法に従ってレンズの安定化を最適化するために、有用な参照である。「安定化ゾーン」とは、周辺ゾーンのその他の領域よりも大きな厚さ値を有するレンズの周辺ゾーンの領域を意味する。「周辺ゾーン」とは、レンズの視覚ゾーンを周囲方向に囲み、レンズの縁部は含まずに、そこまで延在するレンズ表面の領域を意味する。安定化ゾーンを有しない周辺ゾーンは通常、回転対称面、好ましくは球面を備えるであろう。有用な開始点である別の安定化設計は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第20050237482号に記載されるが、いずれの安定化設計も、後に本発明に従って最適化される、公称設計として使用され得る。安定化設計の改善プロセスはまた、以下に記載される眼モデルを用いて改善を試験すること、試験の結果を評価すること、及び所望のレベルの安定化が達成されるまで改善プロセスを反復して継続することを取り入れることができる。
【0012】
図1は、安定化レンズの正面、又はオブジェクト側面の表面を描写する。レンズ10は、視覚ゾーン11を有する。レンズの周辺部は、視覚ゾーン11を囲む。2つの厚い範囲12が、周辺部に位置付けられており、安定化ゾーンである。
【0013】
本プロセスにおいて、好ましくは新しい設計を製造するために使用されるモデルは、機械的操作及びレンズ安定性への効果をシミュレートする、様々な要因及び想定を取り入れる。好ましくは、このモデルは、よく知られているプログラミング技術に従って、標準的なプログラミング及びコーディング技術を使用する、ソフトウェアまで単純化される。概観において、本モデルは、眼の規定数のまばたきにおいて以下に説明される力の適用をシミュレートすることによって、安定化レンズを設計するためのプロセスにおいて使用される。レンズが回転及び偏心する角度は、適宜決定される。設計は、次いで、回転及び/又は中心化をより望ましいレベルにすることを目的とする手法で変えられる。次いで、所定数のまばたき後にまばたきすると、並進を判定するために再度モデルにかけられる。
【0014】
モデルは、眼が、好ましくは角膜及び強膜を表す少なくとも2つの球面部からなり、x−y−z座標軸の原点が、角膜を表す球体の中心にあることを想定する。非球面等のより複雑な表面もまた、使用され得る。レンズのベース形状は球面部からなるが、レンズのベースカーブ半径は、レンズの中心から縁部に向かって変化することが可能である。2つ以上のベースカーブが、後面を描くために使用されてもよい。眼上に位置されるレンズは、眼の形状と同一の形状をとることが想定される。レンズの厚さ分布は、必ずしも回転対称である必要はなく、実際に、本発明のレンズの幾つかの好ましい実施形態によると対称的ではない。レンズ縁部の厚いゾーンは、レンズの位置挙動及び方向挙動を制御するために使用されてもよい。均一の薄い液体被膜(涙液膜)が、通常の厚さが1〜7μm、好ましくは5μmで、レンズと眼との間に存在する。この涙液膜は、レンズ後方涙液膜と呼ばれる。レンズ縁部において、レンズと眼との間の液膜の厚さはより小さく、ムチン涙液膜と称される。通常の厚さが1〜10μm、好ましくは5.0μmの均一の薄い液体被膜(また、涙液膜)が、レンズと下瞼及び上瞼との間に存在し、これらはレンズ前方涙液膜と称される。下瞼及び上瞼の両方の境界は、x−y平面内の単位法線ベクトルを有する平面内にある。したがって、z軸に垂直な平面上のこれらの境界の射影は、直線である。この想定はまた、瞼の動作中にもなされる。上瞼は、コンタクトレンズ上に均一の圧力をかける。この均一圧力は、上瞼によって被覆されたコンタクトレンズの全域又は上瞼の境界付近のこの領域の一部に、均一幅でかけられる(平面に対して垂直な方向で、瞼の縁部を描く曲線を通して測定される)。下瞼は、コンタクトレンズ上に均一の圧力をかける。この圧力は、下瞼によって被覆されたコンタクトレンズの全域にかけられる。瞼によってコンタクトレンズにかけられた圧力は、コンタクトレンズの、特に縁部付近の不均一な厚さ分布(厚いゾーン)を通してレンズで作用するトルクに貢献する。コンタクトレンズで作用するトルクに対するこの圧力効果は、メロンの種効果(melon seed effect)と称される。レンズが眼に対して動く場合、粘性摩擦がレンズ後方涙液膜内に存在する。レンズが眼に対して動く場合、粘性摩擦はまた、レンズ縁部と眼との間のムチン涙液膜内にも存在する。更に粘性摩擦は、レンズが動く及び/又は瞼が動く場合、レンズ前方涙液膜内に存在する。レンズ内の負担及び圧迫は、レンズの変形に起因して起こる。これらの負担及び圧迫は、レンズの弾性エネルギー量に繋がる。レンズが眼に対して動き、レンズの変形が変化するにつれて、弾性エネルギー量が変化する。レンズは、弾性エネルギー量が最小である位置にある傾向がある。
【0015】
眼の形状(角膜及び強膜)、レンズのベース形状、及び瞼の動作を示すパラメーターが、図2に示される。レンズの動作は、レンズで作用する運動量モーメントの平衡から得られる。慣性効果は無視される。次いで、レンズで作用するすべてのモーメントの合計はゼロになる。したがって、次のようになる。
【数1】

【0016】
最初の4つのモーメントは、トルクに抵抗しており、レンズの動作に直線的に依存する。残りのトルクは駆動トルクである。運動量モーメントのこの平衡は、レンズの位置βに対する非線形一次微分方程式をもたらす。
【数2】

【0017】
この等式は、4次ルンゲ・クッタ積分スキームを用いて解かれる。コンタクトレンズ上の点の位置は、回転ベクトルβ(t)の周りの回転から得られる。点の古い位置を現在の位置に変換する回転マトリックスR(t)は、ロドリゲスの公式から得られ、
【数3】

式中、
【数4】

である。
【0018】
数値積分法において、時間離散化が使用される。次いで、レンズの動作は多数の後続回転として見ることができ、したがって、次の時間ステップ
【数5】

において、回転マトリックスは、次のようになり、
【数6】

式中、
【数7】

が、時間ステップ
【数8】

の間の回転である。
【0019】
回転マトリックスは、レンズの回転
【数9】

と、偏心
【数10】

に分解される。
【数11】

【0020】
レンズの回転は、レンズの中心線を中心とする回転である。偏心は、(x,y)平面内の線を中心とする回転である。したがって、レンズの位置は、偏心
【数12】

に続くレンズの中心線を中心とするレンズの回転
【数13】

として見られる。
【0021】
この設計は、1つ又は2つ以上の数学的構造を使用して設計の詳細を記述することによって、上述されたモデルを使用して作製又は最適化される。好ましくは、安定化ゾーンは、ベジェ曲線を使用して記述されるが、他の数学的記述が、安定化ゾーンの全記述を得るために使用されてもよい。ベジェ曲線のアプローチが使用される場合、半径方向の厚さプロファイルを記述する動径関数A(t)が、好ましくは5つの制御点を使用して定義される。角の厚さプロファイルを記述する角関数Bα(tα)もまた、5つの制御点を使用して定義される。例えば、数学的記述は次のように公式化され得、
【数14】

式中、Pri(x)及びPri(y)が、制御点の座標であり、tは、半径方向プロファイルに沿って正規化された座標である。半径方向の厚さプロファイルを記述する始点は、Pr1によって定義され、終点はPr5によって定義される。
【数15】

式中、Pαi(x)及びPαi(y)が、制御点の座標であり、tαは、角プロファイルに沿って正規化された座標である。角の厚さプロファイルを記述する始点は、Pα1によって定義され、終点は、Pα5によって定義される。
【0022】
C(t,tα)(3)によって記述される安定化ゾーンの規模は、動径関数Ar,y掛ける角度関数Bα,yの積から得られる。倍率Mが、安定化ゾーンの規模を制御するために、2つの関数の積に適用される。
【数16】

【0023】
これらの等式は、いずれの数の制御点にも拡張され得る。その場合、等式は以下のように書き換えられ得る。
【数17】

【0024】
異なる関数群が、左の安定化ゾーンから右の安定化ゾーンを記述するために使用され、非対称の安定化ゾーン設計を得てもよい。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、角の厚さプロファイルの上部を記述するベジェ曲線の係数は、サグ値が低減されるように設定される。安定化ゾーンがレンズの周辺部に追加される特定の事例において、レンズ上部の厚さは増加される代わりに減少される。図3A及び3Bは、安定化ゾーンの上部において厚さを減少させることの効果を示す。それは、最大厚を減らしながらも同一の厚さ差分を保つことを可能にする。最大厚位置の周囲の傾斜は、このプロファイル変更にそれほど影響されない。
【0026】
好ましくは、本発明は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,652,638号、同第5,805,260号、及び同第6,183,082号に開示されているような安定化された乱視用レンズ又は乱視用多焦点レンズを設計し、そして製造するために用いられる。
【0027】
更に別の代替方法として、本発明のレンズは、高次眼収差、角膜トポグラフィーデータ、又はその両方の補正を取り入れてもよい。かかるレンズの例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,305,802号及び同第6,554,425号に見出される。
【0028】
更に別の代替方法として、本発明のレンズは、美容上魅力的にするために、眼上で特定の方向に据えられる必要のある、薄い色付きの模様等、美容的な特徴を取り入れてもよい。
【0029】
本発明のレンズは、メガネレンズ、コンタクトレンズ、及び眼内レンズを非限定的に含む眼科用レンズを製造するのに好適な任意のレンズ成形材料から製造されてもよい。ソフト・コンタクトレンズを形成するための例示的な材料には、例えば、限定することなく、シリコーンエラストマー、シリコーン含有マクロマー、例えば、限定することなく、米国特許第5,371,147号、同第5,314,960号、及び同第5,057,578号(これらは、本明細書において参照により全体が組み込まれる)に開示されているもの、ヒドロゲル、シリコーン含有ヒドロゲルなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。より好ましくは、表面はシロキサンであるか、又は、ポリジメチルシロキサンマクロマー、メタクリルオキシプロピルポリアルキルシロキサン及びそれらの混合物、シリコーンヒドロゲル若しくはエタフィルコンAなどのヒドロゲルを含むがこれらに限定されないシロキサン官能基を含む。
【0030】
レンズ材料の硬化は、任意の便宜のよい方法で行うことができる。例えば材料を型に入れ、熱、放射線、化学物質、電磁放射線硬化など、及びこれらの組み合わせによって硬化させることができる。好ましくは、コンタクトレンズの実施形態では、紫外線を使用して又は可視光線のフルスペクトルを使用して成型が行われる。より具体的には、レンズ材料を硬化させる好適な正確な条件は、選択した材料及び形成すべきレンズによって決定される。好適なプロセスは、米国特許第5,540,410号に開示されている。なおこの文献は、本明細書において参照により全体が組み込まれている。
【0031】
本発明のコンタクトレンズは、あらゆる好都合な方法で製造され得る。このような方法の1つは、VARIFORM(商標)アッタチメントを備えるOPTOFORM(商標)旋盤を使用して、金型インサートを作製する。この成型インサートを使用して、型を作製する。その後、好適な液体樹脂を金型間に配置した後に、樹脂を圧縮及び硬化させて、本発明のレンズを形成する。当業者は、あらゆる既知の方法を用いて本発明のレンズを製造することができることを認識するであろう。
【0032】
ここで、本発明について、以下の非限定的な実施例を参照して更に説明することにする。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
既知の設計を有し、以下の入力設計パラメーターを用いる従来のレンズ設計ソフトウェアを使用して設計された、乱視患者用のコンタクトレンズが得られた。
−度数:−3.00D
−乱視度数:−0.75D
−乱視軸:180度
−レンズ直径:14.50mm
−前方視覚ゾーンの直径8.50mm
−後方視覚ゾーンの直径11.35mm
−レンズのベースカーブ:8.55mm
【0034】
レンズの元の厚さプロファイルは、周辺ゾーンにおいて回転対称である。安定化ゾーンは、レンズの厚さプロファイルに追加される特別厚いゾーンである。左及び右の安定化ゾーンは、前述の数学関数に適用される1セットの制御点(表1)を使用して構成される。レンズの厚さプロファイルは、図4に示される。
【表1】

【0035】
(実施例2)
実施例1に説明されたレンズは、0.25mmで押し出される安定化ゾーンの半径方向配置を有し、選択された処方については、視覚ゾーンの直径は、9.00mm拡張された。左及び右の安定化ゾーンは、前述された数学的関数に適用された、表2に示される1セットの制御点を使用して構成された。安定化ゾーンの上部の厚さは、増加する代わりに減少した。乱視用コンタクトレンズは、通常従来の単焦点レンズに供給されるものに相当する視覚ゾーンを有する。上述の眼モデルを使用してのレンズの中心化及び回転のモデル化は、レンズの性能が、安定化ゾーンの再配置によって有意に影響されなかったことを示した。レンズの厚さプロファイルは、図5に示される。
【表2】

【0036】
(実施例3)
実施例1において説明されたレンズは、左の安定化ゾーンの規模が、40マイクロメートルまで減少されるように、本発明の方法を使用して再設計された。左及び右の安定化ゾーンは、前述の数学関数に適用された、表3に示される1セットの制御点を使用して構成された。
【0037】
厚さにおける非対称の導入は、両方の眼上で同一の回転性能を保つために、左眼及び右眼に対して異なる設計を必要とする。眼モデルからの結果は、最厚の安定化ゾーンが上部位置から下部位置へ回転する必要がある場合、そのような設計のよりよい回転性能を示した。レンズの厚さプロファイルは、図6に示される。
表4:実施例3に適用された制御点
【表3】

【0038】
(実施例4)
実施例1のレンズ設計は、左の安定化ゾーンの規模が、40マイクロメートルまで減少されるように修正された。左及び右の安定化ゾーンは、前述の数学関数に適用された、表4に示される1セットの制御点を使用して構成された。安定化ゾーンの上部及び下部の厚さは、増加される代わりに減少され、安定化ゾーンの上部及び下部で厚さを減少させ、類似の厚さ差分を保持しながらも最大厚を減少させた。レンズの厚さプロファイルは、図7に示される。
【表4】

【0039】
本明細書に記載される眼モデルを利用して、実施例1、2、及び3からのレンズは、40〜50度の不均衡範囲を中心に、最適な回転速度を示す。これらの実施例からの設計は、特注の視力補正レンズ等、レンズ方向が水平軸線に沿った安定化ゾーンの非対称に起因して一方向性である、レンズ方向に依存する視覚を有するレンズに好ましい。それらのレンズはまた、従来の市販レンズと比較すると、最終位置から20度以内のレンズ方向に対して、高い回転速度を提示する。更なる特注化は、左及び右の安定化ゾーンが非対称である実施例3から得られてもよい。これらの設計及びレンズは、(既存の市販レンズと比較して)その最終位置から30度以内のレンズ方向に対して、より大きな回転速度を提示する。
【0040】
安定化ゾーンにおける厚さの減少は、厚さの差分の規模が、安定化の規模が実施例1から実施例2に10%減少された図1及び2を用いて示されるように保たれた場合、回転においてレンズの性能に影響を与えなかった。実施例2のレンズ設計は、従来の製品と比較して約20%減少された、最大安全化ゾーン厚を有し、レンズを着用者により快適なものにする。
【0041】
実施例4のレンズのモデル化は、よりゆっくりとした回転速度だが、レンズ方向に対しては少ない回転速度偏差を示した。実施例4からの設計は、レンズ方向が、安全化ゾーンの設計において保たれる対称性のために二方向性である、乱視用レンズ等、レンズの方向に依存しない視覚を有するレンズに好ましい。
【0042】
〔実施の態様〕
(1) コンタクトレンズを安定化させるための方法であって、安定化ゾーンパラメーターの公称セットを有するレンズ設計を提供し、数学的構造としてのレンズ設計パラメーターの特性に基づいて、改善された安定化を有するコンタクトレンズ設計を作成することと、運動量モーメントの平衡をとるモデルを用いて、前記設計をモデル化することと、前記モデル化の結果に基づいて、前記設計を選択することと、を含む、方法。
(2) 工程b及びcが、反復的に行われる、実施態様1に記載の方法。
(3) 眼構造の影響をシミュレートする仮想モデルが、コンタクトレンズ設計を検証するために使用される、実施態様2に記載の方法。
(4) まばたきが、前記眼構造の1つであり、前記安定化スキームを適宜調整する、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記数学的構造が、ベジェ曲線である、実施態様1に記載の方法。
(6) 少なくとも4つの座標点を有する、実施態様5に記載の方法。
(7) 実施態様1に記載の方法に従って作製される、コンタクトレンズ。
(8) 実施態様2に記載の方法に従って作製される、コンタクトレンズ。
(9) 実施態様3に記載の方法に従って作製される、コンタクトレンズ。
(10) 前記安定化ゾーンの角プロファイルが、低減した厚さ(negative thickness)を有する1つ又は2つ以上の区分によって画成される、実施態様7に記載のコンタクトレンズ。
【0043】
(11) 前記安定化ゾーンの最大厚を含む前記角プロファイルに沿った最大の低減厚さ値が、0.010mm〜0.060mmであり、好ましくはおおよそ0.025mmである、実施態様10に記載のコンタクトレンズ。
(12) 前記安定化ゾーンの最厚部分が、水平線よりも15度〜35度下、好ましくはおおよそ25度に位置付けられる、実施態様7に記載のコンタクトレンズ。
(13) 左の安定化ゾーンと右の安定化ゾーンとの間の厚さの差分が、0.020mm〜0.045mmの範囲であり、好ましくはおおよそ0.030mmである、実施態様7に記載のコンタクトレンズ。
(14) 回転速度が、前記レンズの方向が最終静止位置から30度以内であるときに最適化される、実施態様7に記載のコンタクトレンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズを安定化させるための方法であって、安定化ゾーンパラメーターの公称セットを有するレンズ設計を提供し、数学的構造としてのレンズ設計パラメーターの特性に基づいて、改善された安定化を有するコンタクトレンズ設計を作成することと、運動量モーメントの平衡をとるモデルを用いて、前記設計をモデル化することと、前記モデル化の結果に基づいて、前記設計を選択することと、を含む、方法。
【請求項2】
工程b及びcが、反復的に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
眼構造の影響をシミュレートする仮想モデルが、コンタクトレンズ設計を検証するために使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
まばたきが、前記眼構造の1つであり、前記安定化スキームを適宜調整する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記数学的構造が、ベジェ曲線である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも4つの座標点を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法に従って作製される、コンタクトレンズ。
【請求項8】
請求項2に記載の方法に従って作製される、コンタクトレンズ。
【請求項9】
請求項3に記載の方法に従って作製される、コンタクトレンズ。
【請求項10】
前記安定化ゾーンの角プロファイルが、低減した厚さを有する1つ又は2つ以上の区分によって画成される、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記安定化ゾーンの最大厚を含む前記角プロファイルに沿った最大の低減厚さ値が、0.010mm〜0.060mmであり、好ましくはおおよそ0.025mmである、請求項10に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記安定化ゾーンの最厚部分が、水平線よりも15度〜35度下、好ましくはおおよそ25度に位置付けられる、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
左の安定化ゾーンと右の安定化ゾーンとの間の厚さの差分が、0.020mm〜0.045mmの範囲であり、好ましくはおおよそ0.030mmである、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
回転速度が、前記レンズの方向が最終静止位置から30度以内であるときに最適化される、請求項7に記載のコンタクトレンズ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2013−515282(P2013−515282A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544888(P2012−544888)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/061001
【国際公開番号】WO2011/084683
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(510294139)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
【Fターム(参考)】