説明

定塩魚類切り身の製造法

【構成】 魚類を塩加工するに際し、塩加工用魚類を切り身にしてから食塩処理を施すことにより食塩含有量が一定の塩加工魚類切り身とする方法。魚類切り身を連続して移動させながら、および/または魚類切り身をトレイに平らに並べた状態で食塩処理を施す。食塩処理は、魚類切り身に食塩を一定量振ること、魚類切り身に所定量の食塩を含む吸液シートと接触させることである。吸液シートは紙および/または不織布の吸水性繊維シートであり、さらに魚類切り身のドリップを吸収する吸液材を内蔵する吸液シート層を有することができる。さらに非通気性フィルムで真空包装する。塩加工用魚類は好ましくは生鮭切り身である。
【効果】 低コストで生産性に優れ、所定量の塩分を均一に魚類切り身に付与することができる。塩分含有量を制御できる連続法を提供できる。塩分含有量が制御された塩加工魚類切り身、特に正確な塩分含有量を表示できる美味しい定塩鮭の切り身を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、定塩魚類切り身の製造法に関する。詳しくは本発明は簡単な工程で一定量の食塩を含有する魚類切り身、最も好ましくは塩鮭切り身を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】サケ・マスは、日本人にはきわめて好まれている魚種といえる。平成5年8月農水省消費動向調査によると、食べ方については、塩焼き83.4%、バター焼き56.2%、スモークサーモン41.9%、続いてフライ、鍋物、ムニエルとなっており、特に塩鮭としての食し方、他のムニエル、ソティーなどの西欧風喫食に較べ、伝統的味覚として“おかず”として定着している。
【0003】塩鮭、塩ますの塩蔵法としてはふり塩漬け法と立て塩漬け法を組み合わせた改良立て塩漬け塩蔵法とうす塩をしたあらまき塩蔵法が行われている。ふり塩漬け法は被塩蔵物に直接固体の食塩を散布する魚の塩蔵法であり、立て塩漬け法は、魚体を食塩水中に浸漬する魚の塩蔵法である。
【0004】一方、漁獲から小売にいたる物流形態もニーズにより、■腹部中心塩ふりのドレスの冷凍品でトロ箱流通から、■フィレーにして立塩塩味付けしたフィレーの冷凍品で段ボール入流通へと変化して来た。上記■の方法は、例えば腹部中心塩振りでは、塩に直接身が接触する腹部とそれ以外の部分とでは塩分濃度がバラツき、一定塩分の切り身を得ることは難しい。上記■の方法は、7〜10年前より、定塩鮭としてマーケットに出回り現在主流をなしている。上記■に較べると不要部分(頭、中骨、ヒレ)を除去し、濃塩水に浸漬して塩味付けするいわゆる立塩製法であるため、■より定塩であると認識されており、また、末端小売業者は切り身にしてトレーパックし販売するのに好都合であった。しかし、上記■の方法においても、立塩製法であるゆえに、すなわち原魚の鮮度、品質、フィレーの大きさ、漬込液の中でのフィレーの重なり、漬込液の塩分濃度分布等によって塩の漬込み具合にバラツきが生じるため、漬込ロットごとの塩分のバラツき、フィレーごとの塩分のバラツき、部位ごとの塩分のバラツきが生じ、またフィレーを塩水漬けする際には身崩れを防止するため皮付きでなければならず、同じフィレーでも皮側と内側や、身のうすい尾、腹側と、身の厚い背、頭側などで塩分がばらつき、このフィレーから取れる切り身の塩分を一定範囲に納めることは困難であった。
【0005】したがって、立塩製法を含む従来法では、いかに漬込条件を管理しても切身ごとの塩分のバラツきは大きく、切り身毎の塩分のバラツきはあっても大まかに、甘塩、中辛、辛口、激辛と表示して消費者に供している現状であり、切り身の塩分濃度を表示しないか、平均値を表示してもバラツきの巾は表示されないなど、あいまいな表示となってしまっている。また、立塩製法は濃塩水に漬込むので水が介在するため、また、凍結、解凍を繰り返すために、身肉がダメージをうけたり、水分が多くなったり、ドリップ等とともにエキス分が抜けたり、サケ特有の赤色が褪色する傾向があり、かつ、作業・物流が繁雑であった。
【0006】しかし、近年はより新鮮でおいしく、健康指向も含めたお客様の好みに合った塩鮭がますます求められているとともに、小売店の運営においても、バックヤードで切り身加工等を行っていた作業者の節減が強く求められており、フィレーを切り身に加工する仕事は、納入者(外部メーカー)へ役割転換を強く求めて来ていることなど、克服すべき問題が多くなってきていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、塩加工水産物である塩魚類切り身の塩分含有量を制御することを目的とする。本発明は、塩分含有量が制御され食味に優れかつ均一な所望塩濃度を有する塩魚類切り身の提供を目的とする。本発明は、正確な塩分含有量を表示できる塩魚類切り身の提供を目的とする。本発明は加工時の乾燥工程を省くことによって生産効率を大巾に向上させることを目的とする。さらに詳細には本発明は、鮭切り身の塩分含有量を制御し、いわゆる熟成を均一に行わしめ美味しい塩鮭を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、塩分含有量が制御され熟成により美味しい鮭の切り身を提供することを目的とする。本発明は、正確な塩分含有量を表示できる定塩鮭を切り身単位で提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、魚類を塩加工するに際し、塩加工用魚類を切り身にしてから食塩処理を施すことにより食塩含有量が一定の塩加工魚類切り身とすることを特徴とする定塩魚類切り身の製造法である。切り身に食塩処理を施すことにより、魚体全体に対して食塩処理する場合と比べて、製造工程が簡略化され、しかも食塩含有量が均一な定塩魚類の切り身を製造することが可能となった。
【0009】本発明が対象とする魚類は、塩加工が可能な魚類であって分類学上の魚類ではなく水産物として魚類と同等に取り扱われるイカ、タコなどを包含した意味で使っており、鮭、鯖、サンマ、筋子、イカ、タコなどが例示され、その中で最も好ましい例として鮭が挙げられる。鮭は、シロザケ、ベニザケ、マスノスケなどで例示されるサケ類、カラフトマス、サクラマスなどで例示されるマス類が含まれる。また、切り身の形状には特に制限がなく、フィレー、それからの切り身が例示される。
【0010】食塩処理手段は、魚類切り身の塩分含有量を制御する方法、すなわち一定量の塩を振ることができる方法であればどのような方法を採用しても良い。魚類切り身に食塩を一定量振る方法、魚類切り身に所定量の食塩を含む吸液シートと接触させる方法が好ましい方法として例示される。
【0011】切り身に塩振りした場合、魚類体全体に対して塩撤りした場合と比べて、食塩の侵入速度が大きいため脱水量が少なく、また、形状が平らで厚みもそろっており、皮などの影響もうけないため食塩の侵入が均一であり、歩留まりがよい。さらにまた片面に振り塩を行うため、塩により進行する褪色が片面ですみ、色のきれいな面を上にして包装することができる。これに対して、切り身で立塩処理すると、皮が少なく繊維が切断されるため、身崩れが多く、褪色も両面にわたり進行する。
【0012】鮭切り身を例に挙げて詳しく説明をすると、鮭切り身の塩分含有量を制御する方法は、原料(ドレス)を半解凍二つ割またはフィレー化し、ついで切り身化し、それに塩振りをし、包装する工程よりなる振塩法で行われる。従来法は、原料(ドレス)→解凍→二つ割→つけ込み(塩分、水温、時間選択)→水切り→パン立→凍結→脱パン→箱詰→保管(2〜3週)→出荷→小売店(解凍→切り身化)の工程よりなることを考えると、本発明が食塩処理手段として魚類切り身に食塩を一定量振る方法を採用した場合、特に各工程を連続して行う連続法を採用した場合、工程が少なく、短時間で狭いスペースで生産が上がる連続法となることがわかる。用いる食塩は通常の白塩でよいが、粒径600〜1500μ、純度95〜98%のものが、振り易い点で好ましい。使用する食塩量は甘塩で生鮭重量の2%前後を甘塩、3%前後を中辛、4%以上を辛口などと表示できる。
【0013】すなわち本発明は生鮭を切り身にしてから食塩処理を施すことにより、工程の連続化が可能となったものである。本発明において、生鮭とは、“生の鮭、または、生のまま、凍結保管された鮭”である。連続化は、生鮭切り身を食塩処理手段に対して連続して移動させて行う。このように本発明は、魚類を切り身にし、それらを連続して移動させながら食塩処理を施し食塩含有量が一定の魚類切り身を製造する方法である。上記連続移動は魚類切り身をベルトコンベアやネットコンベアまたはトレイに平らに並べた状態で行う。本発明は、魚類を切り身にし、それらをコンベア等に平らに並べた状態で皮のない切断面に食塩処理を施し食塩含有量が一定の魚類切り身を製造する方法である。
【0014】本発明の振塩法は、塩振りの定量化が必須である。例えば、一定の厚さと幅をもった塩の滝を上方より落とし、あるいはぼた雪が降るように一定量の食塩を一定間隔でスクリューの回転により塩供給ホッパーのスリット孔から落下させ、コンベア移送のトレイ詰め鮭切り身の片面に塩振りをする。塩振面は褪色進行し易い。したがって、裏面を上にして塩を振り、チルドで一昼夜置けば、塩が侵入し下にした表面に到達し全体が一定の塩分になるから、表面の褪色は軽微で無視できる。
【0015】上記のぼた雪が降るように一定量の食塩を落下させる振り塩のやり方は、図1〜図3に示される塩振り装置を使用して行うことができる。塩供給ホッパは、半円筒状底部を有しその底部に円周方向に適当な間隔でスリットを設け、半円筒状底部の周縁に沿って回転する塩定量振り用スクリューを回転可能に配置して構成したものである。塩供給ホッパの中に所定量の食塩を供給し、塩定量振り用スクリューを回転させると、スクリューと塩供給ホッパの半円筒状底部の間に食塩が順次供給され、その底部に設けられたスリットより、真下の鮭切り身上に落下する。切り身は搬送装置によって搬送中のものであるが、搬送装置はネットコンベアで構成されたものであるほうが、切り身以外の部分に落下した食塩がネットを通過して下に落ちるため回収が容易である。ネットコンベアのネットを通過する食塩を受けるための振り塩受ホッパおよび振り塩受ホッパの底から塩供給ホッパの塩供給口まで伸びた塩送りラセンスクリューを組み合わせることができる。切り身以外の部分に落下しネットを通過する食塩を回収し塩供給ホッパに戻して再利用する。
【0016】図1には、塩振り装置の具体例が示されている。スクリューを回転可能に配置した塩供給ホッパが、ホッパーAと表示して、そのスクリューが塩定量降り用スクリューAと表示して、搬送装置がネットコンベアと表示して、ネットコンベアのネットを通過する食塩を受けるための振り塩受ホッパがホッパーBと表示して、振り塩受ホッパの底から塩供給ホッパの塩供給口まで伸びた塩送りラセンスクリューが、塩送りラセンスクリューCと表示して、図示されている。図2には、上記塩定量降り用スクリューAの具体例が示されている。図3R>3には塩供給ホッパの具体例が示されており、半円筒状底部、その半円筒状底部の周縁に沿って回転可能に配置した塩定量振り用スクリュー、およびその半円筒状底部に円周方向に適当な間隔で設けたスリットが示されている。塩振り装置は、一定量の塩を振るように使用する。塩定量振り用スクリューの回転速度、スリットの間隔と孔の大きさ、ネットコンベアの移動速度、食塩の性質(結晶粒子の大きさ、水分含有量等)などを調節して、ぼた雪が降るように落下させる食塩の量を調節することができる。魚類の塩加工をするのに最適な特に湿った状態の食塩を使用するのに適した装置である。
【0017】食塩処理手段として、魚類切り身に所定量の食塩を含む吸液シートと接触させて行う場合について説明する。所定量の食塩を含む吸液シートと、塩加工用魚類切り身とを恒温状態にて一定時間接触させることにより、所望の塩濃度を有し且つ身の締まった塩加工魚類切り身を効率良く得ることができる。一定量の食塩が均一に付着した吸水性繊維シートと、加工するべき魚類切り身とを恒温状態で一定時間接触させると、切り身中の水分と繊維シート上の食塩とが置換されて、切り身の塩加工が極めて容易におこなわれるという知見に基づくものである。この場合、従来の方法において要した塩加工に伴う魚類の乾燥工程は全く不要である。さらに、恒温処理を氷点近く低温で行うことにより食品の品質低下を防ぐこと、すなわち食味の維持が可能となり、また繊維シート上の食塩量を均一かつ一定に調節することで加工食品の塩分濃度を容易に調節することができるし、食品の局部的な塩分ムラも防ぐことができる。
【0018】吸液シートは、紙および/または不織布の吸水性繊維シートである。吸水性繊維シートは、紙、不織布等比較的安価な繊維シートが望ましく、特に不織布は湿潤強度或は食塩担持性の点で好適なものである。吸水性繊維シートは、単に食塩を担持する作用のみにとどまらず、切り身中から置換によって出てくる水分を吸収して食品の余分な水分を除くことで、身の締まった食味に優れた加工品を提供できるという効果をも有する。吸液シートはさらに切り身のドリップを吸収する吸液材を内蔵する吸液シート層を有する。吸液シートとして、上記吸水性繊維シートと切り身のドリップを吸収する吸液材を内蔵する市販の吸液シートとを積層して使用することができる。市販の吸液シートはドリップを生ずる食品から浸出したドリップを食品表面から吸収除去し、しかも食品中の水分を積極的に吸収しないことで食品自体を乾燥させず、長期間にわたって食品の変色や品質低下を防止することができる吸液シートである。また、食塩水の吸水性が大きい厚手の不織布、食塩水の吸水性が小さい薄手の不織布を使い分けることにより塩分含有量を調節することができる。
【0019】吸液シートの吸水性の程度は対象とする塩加工用切り身の種類、希望する脱水の程度に合せて自由に選定できる。吸液シートの吸水性の程度を調節することで、塩加工する際に切り身中から置換によって出てくる水分を表面から吸収除去するには十分であるが、切り身中の水分を積極的に吸収しないようにして切り身自体を乾燥させず半生の状態に加工することができる。例えば、食塩水の吸水性が大きい厚手の不織布、食塩水の吸水性が小さい薄手の不織布を使い分けることにより塩分含有量を調節することができる。また、例えば生鮭を塩加工する際、特に切り身の場合、生鮭中から置換によって出てくる水分を表面から吸収除去するには十分であるが、身肉中の水分を積極的に吸収しないようにして魚身肉自体を乾燥させず半生の状態に塩加工することができる。また、切り身中の水分を積極的に吸収して生乾きの状態に加工することもできる。
【0020】この吸液シートの、所定量吸水後実質上吸水しなくなる特性は、シートに包む時間に制限がないことから輸送用包材その他で、今まで以上にその利便性が期待できる。本発明によれば、例えば保冷車を利用することにより、魚類切り身の塩加工を輸送中に完了することができるといった利点も考えられ、生産効率の点でも極めて優れた加工方法を提供し得る。また、塩加工用切り身を吸液シートの所定量の食塩を含む面に接触させ、非通気性フィルムで真空包装することができる。真空包装して輸送し、または保管する場合の品質と歩留まりを保持することができる。
【0021】食塩処理手段として、魚類切り身に食塩を一定量振る方法を採用した場合でも、魚類切り身に所定量の食塩を含む吸液シートと接触させる方法を採用した場合でも、魚類切り身を連続して移動させながら行うことができる。連続化はベルトコンベアやネットコンベアまたはトレイに平らに並べた状態で行うとよい。
【0022】
【実施例】本発明を実施例によって説明する。本発明はこの実施例によって何ら限定されない。
【0023】参考例1“2.8%定塩”と表示して市販されている商品、すなわち頭、内臓、中骨、ヒレを除去し、濃塩水に浸漬して塩味付けする立塩塩味付けしたフィレーの冷凍品から取れる切り身をサンプルとした。図4に示すように、頭部に近い部位の切り身および胴体中心より尾側の部位の切り身のA、B、Cの各部位について、並びに尾に近い部位の切り身のA、Bの部位について、塩分を分析した。その結果を表1に示す。
【0024】
【表1】


【0025】表1に示すように、定塩“2.8%”とうたった管理された商品についても塩分は1.89%〜5.17%とばらついており、フィレーごとの塩分のバラツき、部位ごとの塩分のバラツきが生じ、上記フィレーから取れる切り身の塩分を一定範囲に納めることは困難であることが分かった。
【0026】参考例2ふり塩漬け法と立て塩漬け法を組み合わせた改良立て塩漬け塩蔵法により製造され、市販されている塩鮭商品の冷凍品からの切り身をサンプルとし、そのA、B、Cの各部位について塩分を分析した。その結果を表2に示す。
【0027】
【表2】


【0028】実施例1振塩切り身のチルド配送品の製造塩を入れたホッパーから、ホッパーのスパイラルの回転数を制御して一定量の塩がスリットからスムーズにコンベア上に落ちるようにする。コンベア上には鮭の切り身をコンベアのスピードをコントロールして移送する。甘口では1.5%(1%〜2%)、中辛では2.5%(2%〜3%)、辛口では3.5%(3%〜4%)、激辛では5%(4%〜6%)の塩濃度規格品ができ、チルド保管(あるいは輸送)24時間で熟成させ、表3に示すように辛口仕様ができ、振塩量を調整し表4のように中辛の振塩定塩熟成切り身が提供できるようになった。
【0029】
【表3】


【0030】
【表4】


【0031】本法によれば、塩分は裏面に振っても、12時間程で全体均一塩濃度に到る。塩分3%に調整後、24時間、48時間、70時間、84時間、108時間、132時間、5℃にチルド保管後焼いて味覚チェックしたところ、24時間〜48時間で身質がソフト化、48時間以上で身質がソフトで塩カドがとれたまろやかな味覚となる。しかし、132時間以上で変敗臭が発生した。この結果より、チルド下で24時間〜108時間が食べごろであることを、確認することができた。
【0032】以上の通りイ)消費者の健康管理上の正確定塩鮭を切り身単位で提供することができる。
ロ)鮮度歴と熟成品が提供できる。従来法によれば前記のように、冷凍・解凍を繰り返し身質が硬くなったり、身質の冷凍劣化で旨味成分を失いカードなどが溶出するが、1フローズンで水を介在させない、本振塩でチルド配送(チルド配送24時間以上で熟成を図る)で品質の向上が計れる。
ハ)立塩の作業がカットされ、大きなコスト低減がはかれる。作業現場における加工コストは1/3〜1/4に低減される。
【0033】実施例2塩シート法による塩切り身のチルド配送品の製造不織布原反の両表面に食塩水溶液をスプレー加工して乾燥し、食塩粒を付着させた。図5に示すように、箱の最下段に80g/m2塩含有シート(No.■シート)を敷き、切り身を並べる。次に130g/m2塩含有シート(No.■シート)を重ねておく。さらにその上に切り身、No.■シートと図5のように重ね、最上部にNo.■シートを置く。この際、シートに切り身の水分が必要以上に吸収されないためには、予め、切り身あるいはシートに、水、食塩水、グルタミン酸ソーダなどを含む調味液を含ませておくこともできる。こうして箱詰めされた切り身をチルドで24時間保管輸送と同一の条件下で保管した後、そのA、B、Cの各部位について塩分を分析した。その結果を表5に示す。
【0034】
【表5】


【0035】表5に示すように切り身は均一に塩分約2.5%含有して定塩化が図られた。シートは濃度を調整して組み合わせれば、甘塩、中塩、辛口が提供できる。
【0036】実施例3レーヨン3デニール51mmカットのステープル40%、ポリプロピレン繊維2デニール38mmカットのステープル40%及びポリオリフィレン系2成分複合繊維3デニール51mmカットステープル20%の混合からなる目付60g/m2のカードウェブを準備し、ニードルマシーンで軽くニードリングを施した後150℃の熱処理機で熱風処理して融着絡合した不織布製繊維シートを得た。次に25%の食塩水溶液をこの繊維シートの両面にスプレーした後乾燥して食塩付着量が70g/m2の食塩担持シートを作成した。一方、約5cm×10cmの生鮭切身を用意し、上記食塩担持シートの2枚の間に並べて接触させ5℃の恒温状態で24時間処理した後取り出した。得られた塩加工鮭切身について、塩分量及び残存水分率を測定した所、平均値として塩分含有率が1.5%、水分率が75%であった。これは甘塩タイプとして適当な数値であり、実際にこれを焼いて試みた所、甘塩鮭として好適な且つ身の締まった食味を有する加工品であった。
【0037】実施例4ポリプロピレン繊維1.5デニール38mmカットステープル70%、ポリオレフィン系複合繊維2デニール38mmカットステープル30%を混合し目付40g/m2のカードウェブを準備し、150℃の熱風炉で熱処理して融着不織布2枚を作成した。次で食塩200g/m2を粉体散布機を用いて上記1枚の不織布上に均一に散布し、しかる後もう1枚の上記不織布を重ね合わせてカレンダー機にて熱プレスし、2枚の不織布間に食塩層を挟み込んだ食塩担持シートを形成した。得られたシート上に約5cm×10cmの生鮭の切身を並べ更にもう一枚の上記食塩担持シートをかぶせた状態で5℃の恒温状態で24時間処理した。取り出した鮭切身の塩分濃度及び水分率を測定した所、平均値で塩分含有率3.2%、水分率73%の塩加工品であり、これは辛塩鮭として適当な塩分と優れた食味とを有するものであった。
【0038】実施例5フィレ立塩より調整した塩鮭切り身(立塩品)と、切り身に塩を振って調整した塩鮭切り身(振塩品)について、嗜好調査を行った。
1. 原料:チリ銀鮭4/6サイズ。同一ロットの同じケース内のドレスを原料とした。
2. 切り身サイズ、形状:フィレ2つ割後の骨付き切り身。切り身ロボットで切り身とした。切り身重量70g。
3. 塩加工法及びサンプル■立塩品:ドレスを2つ割後、中辛タイプとなる条件で塩水漬けを行い、凍結、半解凍後切り身とし再度凍結したものを解凍し、サンプルとした。
■振塩品:ドレスを2つ割後、切り身とし凍結したものを解凍後、塩を振って5℃に24時間おいたものをサンプルとした。なお、■と■は各ドレスの左側半身、右側半身を各々用いた。また、サンプルは各切り身を2枚1パックとし、調査に用いた。
4. 調査方法:上記サンプルを用い、次の2つの方法で調査を行った。
■内容非提示による調査:立塩品、振塩品各サンプルは、記号のみで識別してもらいアンケートに答えてもらった。n=25世帯。
■内容提示による調査:立塩品、振塩品各サンプルに記号を付け さらにその内容を次の様に提示し アンケートに答えてもらった。n=25世帯。
立塩品 → 従来品振塩品 → 熟成品なお、切り身の調理については各家庭で行ってもらった。嗜好調査の結果を表6〜表8に示した。
【0039】
【表6】


【0040】
【表7】


【0041】
【表8】


【0042】
【発明の効果】低コストで生産性に優れ、所定量の塩分を均一に魚類切り身に付与することができる。魚類切り身の持つ食味を損なうことなく塩加工処理をすることができる。従来法によれば、冷凍・解凍を繰り返し身質の冷凍劣化で旨味成分を失いカードなどが溶出するが1フローズンで水を介在させない塩加工処理でチルド配送(チルド配送24時間以上で熟成を図る)で品質の向上が計れる。塩分含有量を制御できる連続法を提供できる。塩分含有量が制御された塩加工魚類切り身、特に塩鮭の切り身を提供できる。正確な塩分含有量を表示できる美味しい定塩鮭を切り身単位で提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の塩振り装置の概略図である。
【図2】本発明の塩振り装置を構成する塩定量降り用スクリューの概略図である。
【図3】本発明の塩振り装置を構成する塩供給ホッパの概略図である。
【図4】魚の切り身の各部位を説明する図面である。
【図5】塩シート法による塩切り身の製造を説明する図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 魚類を塩加工するに際し、塩加工用魚類を切り身にしてから食塩処理を施すことにより食塩含有量が一定の塩加工魚類切り身とすることを特徴とする定塩魚類切り身の製造法。
【請求項2】 魚類切り身を連続して移動させながら食塩処理を施す請求項1の定塩魚類切り身の製造法。
【請求項3】 魚類切り身をトレイに平らに並べた状態で食塩処理を施す請求項2の定塩魚類切り身の製造法。
【請求項4】 食塩処理が、魚類切り身に食塩を一定量振ることである請求項1、2または3の定塩魚類切り身の製造法。
【請求項5】 食塩処理が、魚類切り身に所定量の食塩を含む吸液シートと接触させることである請求項1、2または3の定塩魚類切り身の製造法。
【請求項6】 吸液シートが紙および/または不織布の吸水性繊維シートである請求項5の定塩魚類切り身の製造法。
【請求項7】 吸液シートがさらに魚類切り身のドリップを吸収する吸液材を内蔵する吸液シート層を有する請求項5または6の定塩魚類切り身の製造法。
【請求項8】 さらに非通気性フィルムで真空包装する請求項5、6または7の定塩魚類切り身の製造法。
【請求項9】 塩加工用魚類が生鮭切り身である請求項1ないし8のいずれかの定塩魚類切り身の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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