説明

実験動物飼育ケージ

【課題】実験動物飼育ケージとして、ケージ本体に対して実験動物や木材チップ等の飼育補助材を出し入れする際に、逃亡防止のための各別な機構や専用部材を要することなく、実験動物が逃げ出しにくい状態で容易に出し入れ操作できるものを提供する。
【解決手段】上方に開放した平面視略矩形のケージ本体1と、矩形周枠3の内側に金網4が張設固着されたケージ蓋2とからなる。ケージ蓋2の矩形周枠3は少なくとも一辺側に傾斜ガイド部33を有し、ケージ蓋2の金網4は傾斜ガイド部33側に臨む平坦部4aと給餌用凹陥部4bとを備えている。ケージ本体1上に被せたケージ蓋2を前方へ押すことにより、傾斜ガイド部33が傾斜誘導でケージ本体1の開口周縁11を乗り越し、ケージ蓋2が水平部4aを開口周縁11上に乗り上げる形で前方へスライドし、後方側でケージ本体1の開口部10が開くから、開いた部分から出し入れすることで実験動物Mの逃亡を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウス、ラット、モルモット等の実験動物を飼育するためのケージ、特にケージ本体が上方に開放した平面視略矩形の熱可塑性プラスチック容器からなる実験動物飼育ケージに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、この種の実験動物飼育ケージは、上方に開放した平面視略矩形の熱可塑性プラスチック容器からなるケージ本体と、該ケージ本体上に被せる金網型のケージ蓋とで構成されている。そして、ケージ本体は、四周側壁が平板状で上端周縁に外側へ張出する鍔部を備え、内側空間が上部側ほど拡がる形になっている。またケージ蓋にはV字状に凹んだ給餌用凹陥部が設けられ、該凹陥部にペレット状の餌を載せたり水呑み具の呑み口を差し込むようにしている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−135521号公報の図4
【特許文献2】特開2007−135473号公報の図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の一般的な実験動物飼育ケージでは、そのケージ本体に対して実験動物や木材チップ等の飼育補助材を出し入れする場合に、ケージ蓋を取り外すか、該ケージ蓋の一端側を片手で持ち上げて斜めに開いた状態で、出し入れ操作することになるが、その際にケージ本体内にいた実験動物や収容して手放した実験動物が外へ逃げ出し、それを捕獲するのに多大な労力及び時間を費やすことが往々にしてあった。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みて、実験動物飼育ケージとして、ケージ本体に対して実験動物や木材チップ等の飼育補助材を出し入れする際に、逃亡防止のための各別な機構や専用部材を要することなく、ケージ本体内から実験動物が逃げ出しにくい状態で容易に出し入れ操作でき、もって逃亡した実験動物の捕獲に要する労力と時間の無駄を排除できるものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係る実験動物飼育ケージは、上方に開放した平面視略矩形のケージ本体1と、金属板材からなる矩形周枠3の内側にワイヤー製の金網4が張設固着されたケージ蓋2とからなり、ケージ蓋2の矩形周枠3は、外周側がケージ本体1の開口周縁11上に載る鍔部31、内周側が該開口周縁11の内側に嵌まり込む嵌入部32をなし、この嵌入部32の内側が金網受け部32aを形成すると共に、矩形の少なくとも一辺側において金網受け部32aから鍔部31へ上向きに傾斜して連続する傾斜ガイド部33を有し、ケージ蓋2の金網4は、矩形周枠3の傾斜ガイド部33側に臨む平坦部4aと、給餌用凹陥部4bとを備えており、ケージ本体1上に被せたケージ蓋2を傾斜ガイド部33側を前として前方へ押すことにより、該傾斜ガイド部33が傾斜誘導でケージ本体1の開口周縁11を乗り越し、該ケージ蓋2が水平部4aを該開口周縁11上に乗り上げる形で前方へスライドし、その後方側でケージ本体1の開口部10が開くように構成されてなる。
【0007】
請求項2の発明は、上記請求項1の実験動物飼育ケージにおいて、ケージ蓋2の矩形周枠3の前記傾斜ガイド部33側を前として、前記嵌入部32の左右両側が金網受け部32aと垂直壁部32bとで縦断面L字形をなすものとしている。
【0008】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の実験動物飼育ケージにおいて、ケージ蓋2は、矩形周枠3の前記傾斜ガイド部33側を前として、前記給餌用凹陥部4bが左右方向に沿って略V字状に凹陥し、その左右両側端が矩形周枠3に一体形成された略逆三角形の端板34,34にて封鎖されてなるものとしている。
【発明の効果】
【0009】
次に、本発明の効果について、図面を参照して具体的に説明する。まず、請求項1の発明に係る実験動物飼育ケージでは、ケージ本体1上に被せたケージ蓋2を傾斜ガイド部33側を前として前方へ押すことにより、該傾斜ガイド部33が傾斜誘導でケージ本体1の開口周縁11を乗り越し、該ケージ蓋2が水平部4aを該開口周縁11上に乗り上げる形で前方へスライドし、このスライド分だけ後方側でケージ本体1の開口部10が開く。従って、ケージ本体1に対して実験動物Mや木材チップT等の飼育補助材を出し入れする際、上記のようにケージ蓋2をスライドさせ、後方側におけるケージ本体1の開口部10を必要最小限度の幅で開くことにより、ケージ本体1内にいた実験動物Mや収容して手放した実験動物Mが外へ逃げ出すのを防ぎながら、容易に出し入れ操作を行える。この場合、スライド後のケージ蓋2を押さえて保持する必要はないから、一方の手で出し入れする実験動物Mや木材チップT等の飼育補助材を掴み、空いた他方の手で余剰の開口部分を遮るようにすれば、より確実に実験動物Mの逃亡を防止できる。しかして、この実験動物飼育ケージは、実験動物Mの逃亡防止のために各別な機構や専用部材を必要とせず、従来構成に対してケージ蓋2の矩形周枠3に傾斜ガイド部33を設けるだけで済むから、製作コストの上昇を回避できるという利点もある。
【0010】
請求項2の発明によれば、ケージ蓋2における矩形周枠3の嵌入部32の左右両側が金網受け部32aと垂直壁部32bとで縦断面L字形をなし、これら左右の垂直壁部32b,32bがケージ本体1の左右側壁12,12内面と対接するから、ケージ本体1上に被せたケージ蓋2を前方へスライドさせる際の横ずれが防止されると共に、スライド後のケージ蓋2が不用意に横ずれして外れることもない。
【0011】
請求項3の発明によれば、ケージ蓋2における金網4の給餌用凹陥部4bの両側端が矩形周枠3に一体形成された略逆三角形の端板34,34で封鎖される構造であるから、該給餌用凹陥部4bの両側端を金網4自体のワイヤーを組んで封鎖する構造に比して、該金網4が簡素になってケージ蓋2全体としての製作コストも低減する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る実験動物飼育ケージのケージ本体及びケージ蓋を示す斜視図である。
【図2】図1におけるケージ蓋のX−X線の断面矢視図である。
【図3】図1におけるケージ蓋のY−Y線の断面矢視図である。
【図4】同飼育ケージに収容した実験動物への給餌状態を示す縦断側面図である。
【図5】同飼育ケージのケージ蓋をスライドさせた状態を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実験動物飼育ケージの一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。この実験動物飼育ケージは、図1で示すように、上方に開放した平面視略矩形の熱可塑性プラスチック容器からなるケージ本体1と、該ケージ本体1上に被せる金網型のケージ蓋2とで構成されている。
【0014】
ケージ本体1は、左右側壁12,12及び前後壁13,13と底壁14とで上方を開口部10とする箱型に構成されており、開口周縁11がアール状に曲折して外側へ鍔状に張出すると共に、左右側壁12,12及び前後壁13,13の各外面に、それぞれ開口周縁11の下面から下方へ延びる一対の条片状の補強リブ15が一体形成されている。また、底壁14の下面側の四隅近傍に接地凸部16(図3,図4参照)が設けてある。
【0015】
なお、補強リブ15は、下縁15aが開口周縁11のアール状と略等しい曲率の凹アール状になっており、ケージ本体1・・同士を入れ子状に積み重ねた際に、該下縁15aが下位のケージ本体1の開口周縁11上に密接する形で載るように設定されている。
【0016】
ケージ蓋2は、図3及び図4で詳細に示すように、鋼板から打抜き及びプレス成形した矩形周枠3の内側に、ワイヤー製の金網4が周縁部のスポット溶接によって張設固着されてなる。
【0017】
このケージ蓋2の矩形周枠3は、外周側がケージ本体1の開口周縁11上に載る鍔部31、内周側が該開口周縁11の内側に嵌まり込む嵌入部32をなしており、この嵌入部32の内側が金網4の周縁部を支承・固着する水平な金網受け部32aを形成している。そして、嵌入部32は、前後両側つまり矩形の対向する短辺側では、金網受け部32aから鍔部31へ上向きに傾斜して連続する傾斜ガイド部33を有する一方、左右両側つまり矩形の対向する長辺側では金網受け部32aと垂直壁部32bとで縦断面L字形をなしている。
【0018】
また、ケージ蓋2の金網4は、略平行に密に配置した多数本の前後方向に沿う縦桟41・・と、粗に配置した複数本の左右方向に沿う横桟42・・とで格子状に形成され、前部側が平坦部4aをなすと共に、後部側に左右方向に沿ってV字状に凹んだ給餌用凹陥部4bを有している。しかして、この給餌用凹陥部4bの両側端は、矩形周枠3に一体形成された略逆三角形の端板34,34で封鎖されている。
【0019】
上記構成の実験動物飼育ケージでは、図4に示すように、マウス等の実験動物Mと木材チップT等の飼育補助材を収容したケージ本体1上にケージ蓋2を被せることにより、該ケージ蓋2の給餌用凹陥部2bがケージ本体1内に突入した形になるから、該給餌用凹陥部2bにペレット状の餌Fを落とし込んでおけば、実験動物Mが金網21の隙間から餌Fをつついて食べることができ、また給餌用凹陥部2bの隙間に水呑み具(図示省略)の呑み口を差し込んでおけば、実験動物Mが自分で飲水できる。
【0020】
そして、ケージ本体1に対して実験動物Mや木材チップT等の飼育補助材を出し入れする場合、図5に示すように、ケージ本体1上に被せたケージ蓋2を矢印aの如く前方へ押せば、傾斜ガイド部33が傾斜誘導でケージ本体1の開口周縁11を乗り越し、該ケージ蓋2が水平部4aを該開口周縁11上に乗り上げる形で前方へスライドし、このスライド分だけ後方側でケージ本体1の開口部10が開くから、この開いた部分から矢印bの如く容易に出し入れ操作を行える。しかも、この出し入れ操作では、ケージ本体1の開口部10の開きを必要最小限度の幅にすることで、ケージ本体1内にいた実験動物Mや収容して手放した実験動物Mが外へ逃げ出すのを防ぐことができる上、スライド後のケージ蓋2を押さえて保持する必要はないから、一方の手で出し入れする実験動物Mや木材チップT等の飼育補助材を掴み、空いた他方の手で余剰の開口部分を遮るようにすれば、より確実に実験動物Mの逃亡を防止できる。
【0021】
また、上記構成のケージ蓋2では、矩形周枠3の左右両側で嵌入部32が縦断面L字形をなし、その垂直壁部32b,32bがケージ本体1の左右側壁12,12内面と対接する形になっているから、ケージ本体1上に被せたケージ蓋2を前方へスライドさせる際に横ずれが防止され、もって安定したスライド操作を行えると共に、スライド後のケージ蓋2が不用意に横ずれして外れる懸念もなく、ケージ蓋2の脱落による実験動物Mの逃亡を確実に防止できる。
【0022】
一方、この実験動物飼育ケージにあっては、実験動物Mの逃亡防止のために各別な機構や専用部材を必要とせず、従来構成に対してケージ蓋2の矩形周枠3に傾斜ガイド部33を設けるだけで済むから、製作コストの上昇を回避できるという利点がある。また、実施形態のように、ケージ蓋2における金網4の給餌用凹陥部4bの両側端が矩形周枠3に一体形成された略逆三角形の端板34,34で封鎖される構造とすれば、該給餌用凹陥部4bの両側端を金網4自体のワイヤーを組んで封鎖する構造に比して、該金網4が簡素になってケージ蓋2全体としての製作コストも低減するという利点がある。
【0023】
なお、実施形態ではケージ蓋3における矩形周枠3の前後両側に傾斜ガイド部33を設けているが、図示の如く金網4の平坦部4aが給餌凹陥部4bの片側(前側)のみである場合、反対側(後側)を傾斜ガイド部33とする必要はなく、左右両側と同様の垂直壁部32bとしてもよい。しかして、金網4の平坦部4aが給餌凹陥部4bの両側にある場合は、その両側に臨む矩形周枠3の二辺に傾斜ガイド部33を設けることで、ケージ蓋3が前後いずれの方向にもスライド可能となる。
【0024】
本発明の実験動物飼育ケージでは、ケージ本体1として、例示したようなプラスチック容器に代えて、金属製やガラス製の箱型容器、一部又は全体が金網からなるもの等、種々の材質及び構造のものを採用できると共に、該ケージ本体1自体に水呑み口、監視窓、開閉窓等の付属物を設けてもよい。また、ケージ蓋2における金網4の網目形態、給餌凹陥部4bの凹陥形状等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 ケージ本体
10 開口部
11 開口縁部
2 ケージ蓋
3 矩形周枠
31 鍔部
32 嵌入部
32a 金網受け部
32b 垂直壁部
33 傾斜ガイド部
34 端板
4 金網
4a 平坦部
4b 給餌用凹陥部
M 実験動物
T 木材チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開放した平面視略矩形のケージ本体と、金属板材からなる矩形周枠の内側にワイヤー製の金網が張設固着されたケージ蓋とからなり、
ケージ蓋の矩形周枠は、外周側がケージ本体の開口周縁上に載る鍔部、内周側が該開口周縁の内側に嵌まり込む嵌入部をなし、この嵌入部の内側が金網受け部を形成すると共に、矩形の少なくとも一辺側において金網受け部から前記鍔部へ上向きに傾斜して連続する傾斜ガイド部を有し、
ケージ蓋の金網は、矩形周枠の前記傾斜ガイド部側に臨む平坦部と、給餌用凹陥部とを備えており、
ケージ本体上に被せたケージ蓋を前記傾斜ガイド部側を前として前方へ押すことにより、該傾斜ガイド部が傾斜誘導でケージ本体の開口周縁を乗り越し、該ケージ蓋が水平部を該開口周縁上に乗り上げる形で前方へスライドし、その後方側でケージ本体の開口部が開くように構成されてなる実験動物飼育ケージ。
【請求項2】
ケージ蓋の矩形周枠の前記傾斜ガイド部側を前として、前記嵌入部の左右両側が金網受け部と垂直壁部とで縦断面L字形をなす請求項1に記載の実験動物飼育ケージ。
【請求項3】
前記ケージ蓋は、矩形周枠の前記傾斜ガイド部側を前として、前記給餌用凹陥部が左右方向に沿って略V字状に凹陥し、その左右両側端が矩形周枠に一体形成された略逆三角形の端板にて封鎖されてなる請求項1又は2に記載の実験動物飼育ケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−29619(P2012−29619A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171563(P2010−171563)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(391033137)日本クレア株式会社 (7)
【Fターム(参考)】