説明

実験動物飼育用の給水具

【課題】 キャップと給水管との水密な結合が容易で、給水管の交換が可能な実験動物飼育用の給水具を提供する。
【解決手段】 耐熱性プラスチックで形成され、筒状の口部12を有する給水瓶10と、該口部12とネジにより螺合する有底筒状のキャップ20と、、該キャップの底面と前記瓶本体の口部先端面との間に嵌装される耐熱性のシールパッキング50と、該シールパッキングの中心部に形成された中空円筒状の厚肉部52と、該厚肉部の中空部と水密かつ着脱可能に嵌合し先端に給水孔を有する給水管30と、を有し、前記キャップ20の底部22の中心にボス孔24を有し、該ボス孔24に前記シールパッキング50の厚肉部52を水密に嵌合し、少なくとも前記キャップの底部22の外側面と厚肉部52の露出部とを金属板40で覆った構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウス、ラット、モルモット、兎等の実験動物を飼育する実験動物飼育ケージに取り付けて使用される給水具に関する。
【背景技術】
【0002】
実験動物は人体薬の開発に際して、人体に対する安全性を確認するGLP(Good Laboratory Practice)試験と薬理薬効試験に使用される。その実験動物としては猿、犬、猫、ラット、マウス、モルモットまたはフェレット等が知られている。
【0003】
実験用動物の飼育に際しては、飼育中に動物が種々の感染症および外的感作を受けないように、外界と遮断した状態で行われ、管理された餌と水とが与えられる。
【0004】
給水具は、繰り返し使用されるが、再使用される前に、オートクレーブにより滅菌処理がされる。このとき、121℃程度の高温に所定時間維持されるので、この温度に耐える素材でなければならない。
【0005】
従来の給水具は、特許文献1(特開昭50−157179号)に記載されたように、ポリカーボネイト等の耐熱性プラスチックからなる貯水壜の口部に耐熱性のゴム栓を挿着し、このゴム栓にステンレス等金属製で中空の給水管を貫通保持した構成となっている。また、マウスなどの場合、ゴム栓を囓られるので、ゴム栓の先端にアルミニウムなどの金属製キャップを設けている。
【0006】
この給水具は、給水管部を下方に向けて実験動物飼育ケージの網蓋からケージ内に差し込んで、給水具本体部分を定位置に固定させる。ケージ内のマウス等は、給水管の先端から一部突出している球体をつつくことにより弁を開放して、水を呑むことができる。尚、給水管には、球弁を設ける代わりに、給水管の先端側を細くして、表面張力により水を保持し、マウス等が吸引する分だけ給水できるようにしたものもある。
【0007】
給水具は、頻繁に滅菌を施す必要があり、滅菌には、121℃程度の高温蒸気により20〜30分間加熱して行うオートクレーブが有効な滅菌手段として使用されている。しかし、ゴム栓の着脱に時間が掛かり、処理すべき数も多いので、作業者に大きな負担となっていた。
【0008】
この問題に対し、特許文献2(特許第2941212号)では、耐熱性プラスチックで形成された貯水壜の口部に有底筒状の金属製キャップを螺嵌し、貯水壜の口部の先端面とキャップの底壁部内面との間に、耐熱性シールパッキングを介装し、キャップの底壁部中央に、金属製給水管の基端部を貫通固着した給水具を提案している。
【特許文献1】特開昭50−157179号
【特許文献2】特許第2941212号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献2に記載の給水具では、金属製キャップに金属製給水管の基端部を固着する部分は、水漏れが生じないように水密に固着する必要がある。最も簡単な方法として接着剤による方法が考えられるが、接着剤で固着すると、繰り返しオートクレーブを受ける内に接着剤が劣化して剥がれてしまうとか、接着剤の成分が給水中に溶け出し、実験結果に影響を与えるなどの問題があり、使用できない。実質的には、ロー付け、或いは、かしめ、などに限定されるものと考えられるが、いずれの方法でも時間が掛かり、また、ロー付けは技術的にも難度が高い。さらに、給水管とキャップの一方が破損された場合は、双方を交換しなければならず、無駄が多い。あるいは、長さの異なる給水管に代えたい場合には、キャップと給水管の双方を交換しなければならない。特に、給水管は動物が直接口を付けるので、汚れやすいことから、オートクレーブによる洗浄とは別に給水管だけを洗浄したい場合もあるが、キャップと一体になっていると、洗浄しにくい。また、金属製なので重量が重くなる。金属としてはステンレスを使用するので、高価になる。などの問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題の解決を図ったもので、キャップと給水管との水密な結合が容易で、給水管の交換が可能な実験動物飼育用の給水具を提供することを目的としている。また、併せて、安価で軽量化が可能な実験動物飼育用の給水具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明の実験動物飼育用の給水具は、耐熱性プラスチックで形成され、筒状の口部を有する給水瓶と、該口部とネジにより螺合する有底筒状のキャップと、、該キャップの底面と前記給水瓶の口部先端面との間に嵌装される耐熱性のシールパッキングと、該シールパッキングの中心部に形成された中空円筒状の厚肉部と、該厚肉部の中空部と水密かつ着脱可能に嵌合し先端に給水孔を有する給水管と、を有し、前記キャップの底部の中心に貫通孔を穿設し、該貫通孔に前記シールパッキングの厚肉部を水密に嵌合し、少なくとも前記キャップの底部の外側面と前記シールパッキングの厚肉部の露出部とを金属板で覆ったことを特徴としている。
【0012】
また、前記筒状の口部と、前記有底筒状のキャップの内周面とのいずれか一方にネジを形成し、他方に該ネジと螺合する突起を形成した構成としたり、前記キャップが耐熱性のプラスチックで形成された有底筒状のキャップ本体を有している構成としたり、前記ネジが多条ネジである構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実験動物飼育用の給水具は、給水管が、シールパッキングの中心部に形成された中空円筒状の厚肉部と着脱可能に嵌合しているので、給水管だけをキャップから取外して交換することができる。したがって、給水管のみを洗浄したり、給水管を所望の長さのものと交換したり、給水管のみが破損した場合に給水管のみを交換することができるという格別の効果を奏する。
【0014】
また、キャップ本体を耐熱性のプラスチックで形成することで、キャップを軽量にすることができ、安価に製造することができるという効果を奏する。筒状の口部と、前記有底筒状のキャップとを螺合させることで、簡単にキャップを給水瓶に固定することができる。
【0015】
筒状の口部と、有底筒状のキャップの内周面とのいずれか一方にネジを形成し、他方にネジと螺合する突起を形成した構成にすることで、製造を容易にすることができる。
【0016】
ネジが2条や3条などの多条ネジである構成とすることで、キャップを給水瓶に締め付けるためのキャップの回転角を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実験動物飼育用給水具の要部断面図である。本発明の実験動物飼育用給水具1は、ポリカーボネートなどの耐熱性プラスチック製の給水瓶10と、この上の口部に螺合されたキャップ20と、キャップ20の中心に取り付けられた給水管30とからなる。給水管30の先端には、給水孔31が穿設され、有底円筒形のキャップ20の頂部(円筒の底部)の外側は金属板40で覆われている。キャップ20の円筒部分の外側には、滑止の凹凸26が円筒の軸線と平行な方向に多数形成されている。
【0018】
図2は、給水瓶10の正面図である。ここに示す給水瓶10は、オートクレーブの高温に十分耐えることができるポリカーボネードなどの合成樹脂製で、円筒形のやや細長い形状をした瓶本体11の上方に細径の口部12があり、口部12の外側には、ネジ13が凸状として形成されている。このネジ13は3条の雄ネジである。
【0019】
図3は、キャップ本体21の図で、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A線断面図で、(c)は下面図である。これらの図に示すキャップ本体21は、ポリカーボネートやポリサルホンなどの透明な合成樹脂製で、底部22の部分で閉塞された有底円筒形状をしている。底部22の中心には、肉厚のボス23があり、ボス23の中心にボス孔24が穿設され、ボス孔24の下端には円環状の突起24aがある。
【0020】
また、キャップ本体21の円筒部の内周面には、3個の細長い突起25が斜めに傾斜して形成されているが、これらは、給水瓶10に形成されたネジ13と螺合するネジの一部である。さらに、円筒部の外側には、滑止のための多数の凹凸26を形成している。キャップ本体21の内側のボス23と円筒内壁との間にドーナツ状の窪み27が形成され、底部22の外側には、段部28がある。このようにキャップ本体21は、複雑な形状ではあるが、ステンレス製のプレス加工の場合よりも、プラスチックの射出成形等により安価に製造することができるものである。また、プラスチック製であるため、素材も安価であり、軽量にできる。軽量であることは、多数の実験動物飼育用給水具1を取り扱う実状から、非常に重要である。
【0021】
図4は、シールパッキング50の図で、(a)は上面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は下面図である。シールパッキング50は、給水瓶10の口部12の先端面と底部22の内側面すなわち底面との間に嵌装されるもので、シリコンゴムなどの耐熱性ゴムで形成され、円盤状の鍔部51の中央に円筒状の厚肉部52があり、この厚肉部52の中心に孔53が貫通している。厚肉部52と鍔部51との境界部分には、溝54が形成され、溝54の最奥部には、溝54と直交する方向の小溝54aがある。また、孔53の下端には、孔53より径の大きい段部53aが設けられている。
【0022】
図5はキャップ20に被せられる金属板40の図で、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)は下面図である。金属板40は、キャップ20にかしめにより取り付けられるが、これらの図は、かしめ前の状態を示している。
【0023】
金属板40は、円形の本体41の中央に貫通した孔42があり、周囲には円筒部43が形成されている。
【0024】
図6によりキャップ20の組立方法を説明する。
まず、キャップ本体21にシールパッキング50を取り付ける。このとき、円盤状の鍔部51がキャップ本体21のドーナツ状の窪み27に嵌合する。そして、シールパッキング50の厚肉部52がボス孔24に嵌合する。さらにボス23の下端に形成された突起24aが、シールパッキング50の小溝54aに嵌入する。以上によって、シールパッキング50はキャップ本体21のボス孔24と水密に結合することができる。
【0025】
こうしてキャップ本体21にシールパッキング50が装着されると、キャップ本体21の上から金属板40が被せられ、図5(b)の状態となる。金属板40の内径はキャップ本体21の上端の段部28の外形に外側からほぼ隙間なく嵌合できる大きさで、円筒部43の先端は、段部28の下方に突出した状態となる。この後、円筒部43の段部28の下方に突出した部分を内側に折り曲げてかしめ、図5(c)に示すように金属板40がキャップ本体21に固定されることになる。このとき、金属板40は、キャップ本体21における底部22の外側面と、シールパッキング50の厚肉部52がキャップ本体21のボス孔24から外部に露出した部分を覆う。
【0026】
図示の実施例では、金属板40は1枚の板を有底円筒形に加工したものであるが、これに限定されない。たとえば、シールパッキング50の厚肉部52がキャップ本体21の底部22の外側に突出している場合には、底部22の外側面を覆う板と、シールパッキング50の突出した厚肉部52を覆う板との2枚に板を使用してもよい。
【0027】
キャップ本体21に金属板40が固定された状態のとき、シールパッキング50の孔53と、金属板40の孔42とは、中心軸が重なった状態となる。そして、金属板40の孔42の方が、シールパッキング50の孔53より僅かに大きくなっている。
【0028】
この後、図7に示すように、給水管30を孔53に挿通することで、キャップ20が完成する。シールパッキング50は、軟質の素材から形成されているので、この状態で給水管30を手で掴み、回転方向の力を加えると、給水管30は回転可能であるが、逆さにしても水が漏れない程度の水密な嵌合を確保でき、かつ、給水管30は、キャップ20から着脱可能となっている。このような構成により、給水管30のみを洗浄したり、給水管30の長さを、飼育用ケージの大きさに合わせて交換したりすることが可能となる。
【0029】
このようにして完成したキャップ20を給水瓶10に取り付けるには、所定量の飲料水などの液体が入った給水瓶10の口部12の上にキャップ20を載せ、左右に少し回転する。すると、細長い突起25が口部12の外側に形成されたネジ13と螺合する。ネジ13は3条ネジで、突起25も3個あるので、各突起25と3本のネジ13のそれぞれとが嵌合する。この状態でキャップ20をネジの閉まる方向に回転して締め付けると、口部12の先端面がシールパッキング50の鍔部51に強い力で圧接し、シールパッキング50がキャップ20の底面と瓶本体11の口部12の先端面とを水密に閉止することになる。締付に要するキャップ20の回転角は、3条ネジなので、90゜(1/4回転)程度である。この後、従来例と同様に、給水管30の先端が下方に向くようにして、実験動物飼育用ケージにセットされることになる。
【0030】
上記の実施例では、口部12に螺旋状のネジ13を形成し、キャップ20に突起25を形成したが、逆に、口部12の方に突起25を形成し、キャップ20に螺旋状のネジ13を形成してもよい。また、3条ネジに限定されず、2条以上の多条ネジでよい。
【0031】
また、キャップ本体21を透明なものにすると、内部が見えるので、汚れの状態を確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実験動物飼育用給水具の要部断面図である。
【図2】給水瓶の正面図である。
【図3】キャップ本体の図で、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A線断面図で、(c)は下面図である。
【図4】シールパッキングの図で、(a)は上面図、(b)は(a)のB−B線断面図で、(c)は下面図である。
【図5】キャップに被せられる金属板の図で、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線断面図で、(c)は下面図である。
【図6】キャップの組立方を説明する図で、(a)はキャップ本体に金属板を被せる前の状態を示す図、(b)はキャップ本体に金属板を被せてかしめる前の状態を示す図、(c)はかしめた後を示す図である。
【図7】キャップに給水管を取り付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 実験動物飼育用給水具
10 給水瓶
11 瓶本体
12 口部
13 ネジ
20 キャップ
21 キャップ本体
22 底部
23 ボス
24 ボス孔
24a 突起
25 突起
26 凹凸
28 段部
30 給水管
31 給水孔
40 金属板
50 シールパッキング
52 厚肉部
53 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性プラスチックで形成され筒状の口部を有する給水瓶と、該口部とネジにより螺合する有底筒状のキャップと、該キャップの底面と前記給水瓶の口部先端面との間に嵌装される耐熱性のシールパッキングと、該シールパッキングの中心部に形成された中空円筒状の厚肉部と、該厚肉部の中空部と水密かつ着脱可能に嵌合し先端に給水孔を有する給水管と、を有し、前記キャップの底部の中心に貫通孔を穿設し、該貫通孔に前記シールパッキングの厚肉部を水密に嵌合し、少なくとも前記キャップの底部の外側面と前記シールパッキングの厚肉部の露出部とを金属板で覆ったことを特徴とする実験動物飼育用の給水具。
【請求項2】
前記筒状の口部と、前記有底筒状のキャップの内周面とのいずれか一方にネジを形成し、他方に該ネジと螺合する突起を形成したことを特徴とする請求項1記載の実験動物飼育用の給水具。
【請求項3】
前記キャップが耐熱性のプラスチックで形成された有底筒状のキャップ本体を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の実験動物飼育用の給水具。
【請求項4】
前記ネジが多条ネジであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の実験動物飼育用の給水具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−259783(P2007−259783A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90571(P2006−90571)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(391041349)東洋理工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】