説明

害虫忌避材

【課題】植物への悪影響が少なく、簡単に使用することができる害虫忌避効果の高い害虫忌避材を提供する。
【解決手段】本発明の害虫忌避材10は、生分解性を有する繊維状物12aからなる平板状の成形体12と、前記成形体12に添加された害虫忌避成分14とで構成されていることを特徴とする。又、前記害虫忌避成分14が、植物から得られた天然物由来のものであることを特徴とする。更には、前記生分解性を有する繊維状物12aが木質繊維であり、前記成形体12がランダムに配向された前記木質繊維を成形して得たものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植木鉢やプランターなどで育てる植物用の害虫忌避材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭において、植木鉢やプランターなどを用いたガーデニングや家庭菜園などの園芸が盛んに行われるようになってきているが、植物を栽培する上で害虫による食害は大きな問題となる。なぜなら、この害虫は植物の栄養分を吸収するのみならず病気の原因となる細菌やウィルスを媒介するからである。このため、害虫による食害を抑えることは、植物を健康に育成する上で特に重要である。
【0003】
従来、植木鉢やプランターなどを用いた園芸における害虫忌避技術としては、例えば特許文献1に示すように、忌避薬剤を植物に直接噴霧する方法や、例えば特許文献2に示すように、植物以外の露出面となる植木鉢外側全体及び植木鉢の上側の土壌面部、又は植物以外の植木鉢中に収容された土壌全体を柔軟な不織布シート等で被包する方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−036006号公報
【特許文献2】特開2000−270683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の害虫忌避技術のうち、前者の忌避薬剤を植物に直接噴霧する方法では、忌避薬剤の使用量が多くなると、植物自体に変色や枯死などの不具合を生じる恐れがあり、逆に忌避薬剤の使用量が少ない場合や散布部位が悪い場合(この種の薬剤は葉の表では効きが悪く、葉裏にかけてやる必要がある)には、害虫の忌避効果が現れにくく、取扱いが難しいという問題があった。
【0006】
一方、後者の植物以外の露出面となる植木鉢外側全体及び植木鉢の上側の土壌面部、又は植物以外の植木鉢中に収容された土壌全体を柔軟な不織布シート等で被包する方法では、植木鉢の大きさや植物の形状に合わせて適当な大きさの不織布シートを用意しなければならず、施工にも精度が求められるため手間がかかる。加えて、植木鉢の移動時および屋外の紫外線や風雨の影響によりシートが破損するおそれがあり、その場合には不織布シートの施工を再度やり直さなければならない等の問題があった。
【0007】
それゆえに本発明の主たる課題は、植物への悪影響が少なく、簡単に使用することができる害虫忌避効果の高い害虫忌避材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
「請求項1」に記載の発明は、「生分解性を有する繊維状物12aからなる平板状の成形体12と、前記成形体12に添加された害虫忌避成分14とで構成されている」ことを特徴とする害虫忌避材10であるが、害虫忌避材10の害虫忌避成分14を担持するマトリックスが生分解性を有する繊維状物12aからなる平板状の成形体12で構成されており、該成形体12から害虫忌避成分14が蒸散してその周囲を害虫忌避雰囲気とするようになっているので、使用に際して植木鉢pの下に敷設したり、植木鉢p上側の土壌S表面を覆うように載置するだけでよく、柔軟な不織布シートで植木鉢p等の全体を被包する方法のように手間がかからない。又、前述の使用方法のほかに、成形体12の一部分を土に刺して立てる方法や、植物Pや植木鉢pに成形体12の一部を引っ掛ける方法など様々な方法で使用することもできる。
【0009】
ここで、本発明の害虫忌避材10では、成形体12が、生分解性を有する繊維状物12aで成形されているので、害虫忌避材10の使用後には、そのまま放置したり土中に埋めることによって処分することが可能であり、廃棄物処理に手間がかからない。又、使用済みの害虫忌避材10を一般可燃ゴミとして処分することも可能である。
【0010】
さらに、繊維状物12aを成形して成形体12を構成することによって、その内部には空隙構造が形成されるようになるので、成形体12に添加した害虫忌避成分14を保持し徐放させることができるようになる。このため、該成形体12に多量の害虫忌避成分14を添加したとしても、これが一気に蒸散して植物Pに対して悪影響が出るような心配はなく、害虫忌避効果が発揮される有効期間に応じた所定量の害虫忌避成分14を予め添加させておくことができる。
【0011】
「請求項2」に記載の発明は、請求項1に記載の害虫忌避材10において、「前記害虫忌避成分14が、植物から得られた天然物由来のものである」ことを特徴とするもので、これにより、植物P自体のみならず人間や環境への負荷を軽減させることができる。
【0012】
「請求項3」に記載の発明は、請求項1又は2に記載の害虫忌避材10において、「前記生分解性を有する繊維状物12aが木質繊維であり、前記成形体12がランダムに配向された前記木質繊維を成形して得たものである」ことを特徴とする。ここで、「木質繊維」とは、チップ状の木片を高温で煮詰めて解繊したものである。
【0013】
この発明では、成形体12が、ランダムに配向された木質繊維を成形して得た平板材であるので、成形体12の内部には、3次元方向にランダムに延びたトンネル状の孔が迷路のように多数寄り集まって出来た無数の微細な空隙vが形成されており、成形体12に添加した害虫忌避成分14を長い時間かけて徐放させることができる。又、植木鉢pやプランター等の下に敷設した場合もしくは植木鉢p等の上側の土壌S表面を覆うように載置して使用した場合には、成形体12による保温効果が得られる。更に、植木鉢p等の上側の土壌S表面を覆うように載置して使用した場合、成形体12による調湿効果が得られ、土壌Sの急激な乾燥を和らげることができる。そして、ランダムに配向された木質繊維を成形して得た成形体12は、ポーラス且つバルキーであるにもかかわらず、繊維同士の絡みにより、剛性が高く、一定期間の使用に耐え得る機械的強度を保持することができるので、植木鉢pの下に敷いてもすぐに割れたり変形したりしないし、土に刺して使用してもすぐにはへたらない。
【0014】
「請求項4」に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の害虫忌避材10において、「前記成形体12の形状が、湾曲楕円形状である」ことを特徴とするもので、これにより、害虫忌避材10を植物Pの茎の形状(サイズ)や植木鉢pの形状に沿うようにして植物Pの根元に設置することができる。特に、係る害虫忌避材10を2枚以上使用することで、円形の植木鉢p上側の土壌S表面全体を簡単に覆うことが可能になる。
【0015】
なお、「湾曲楕円形状」とは、或る円をその中心が所定の略半円円弧上をトレースするように移動させた際に当該円の外形が描く軌跡を表した形状で、楕円を湾曲させた勾玉或いは馬蹄のような形状のことを云う。
【0016】
「請求項5」に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の害虫忌避材10において、「前記成形体12の形状が、外周面の一部が突出した突起部16を有する」ことを特徴とするもので、これにより、当該突起部16を土に突き刺して害虫忌避材10を簡単に立設させることができ、このように害虫忌避材10の突起部16を土壌S中に突き刺して立設させることによって、水遣りの際に植木鉢pからオーバーフローする程度の水を与えても、オーバーフローする水と一緒に害虫忌避材10が流出するのを防止することができる。又、土壌Sに突き刺して害虫忌避材10を立設させることができるため、害虫忌避材10には植物の名前や愛称、管理者の名前等を書くことができ、ネームプレートとして使用することができる。更に、突起部16の先端が曲成されたフック形状であれば、簡単に植木鉢pの縁や枝葉に引っ掛けて設置することができるようになるので、下地面から離れた高い場所であっても害虫忌避効果を発揮させることができる。
【0017】
「請求項6」に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の害虫忌避材10において、「前記成形体12の形状が、モチーフ化された形状である」ことを特徴とするもので、これにより、見た目に楽しめ可愛い印象を与える害虫忌避材10となるだけでなく、小さな子供の興味をひくことができ、家族全員でガーデニングを楽しめるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の害虫忌避材によれば、害虫忌避成分を担持するマトリックスが平板状の成形体で構成されているので、ある程度の剛性を備えており、使用に際して植木鉢の下に敷設したり、植木鉢上側の土壌表面を覆うように載置するだけでよく、柔軟な不織布シートで植木鉢等の全体を被包する方法のように手間がかからない。加えて、成形体が内部に空隙構造を有するものであることから、該成形体に、植物に対して悪影響が出ない適正量の害虫忌避成分を予め添加させておくことができる。
【0019】
また、害虫忌避成分を植物から得られた天然物由来のものにすることで、確実な害虫忌避効果を発揮させることができるのに加え、植物自体のみならず人間や環境への負荷を軽減させることができる。
【0020】
さらに、生分解性の繊維状物を積層して成形体を構成すれば、害虫忌避材の使用後、そのまま放置したり土中に埋めることによって処分することが可能であり、廃棄物処理に手間がかからない。
【0021】
以上のように本発明によれば、植物への悪影響が少なく、簡単に使用することができる害虫忌避効果の高い害虫忌避材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の害虫忌避材における使用態様の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の害虫忌避材(底部敷設タイプ)における成形体の形状が異なる他の例を示す斜視図である。
【図3】本発明における一実施例の害虫忌避材(根元囲繞タイプ)の取付け方法を示す斜視図である。
【図4】本発明の害虫忌避材(根元囲繞タイプ)における成形体の形状が異なる他の例を示す斜視図である。
【図5】本発明における他の実施例の害虫忌避材(土壌突き刺しタイプ)の取付け方法を示す斜視図である。
【図6】本発明における他の実施例の害虫忌避材(引っ掛けタイプ)の取付け方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。図1は、本発明の害虫忌避材10の使用態様の一例を示す説明図(斜視図)である。本発明の害虫忌避材10は、植木鉢pやプランター等の下に敷設したり、植木鉢pやプランター上側の土壌S表面を覆うように載置して使用するもので、平板状の成形体12と該成形体12に添加された害虫忌避成分14とで大略構成されている。
【0024】
成形体12は、害虫忌避材10のマトリックスとなる部材で、切削等の加工が容易な厚さ2.5mm〜30mm程度の繊維状物成形板(平板材)で構成されている。このように、成形体12を繊維状物成形板で構成することにより、害虫忌避成分14の性状に合わせて浸透性や保持力を比較的容易に調整することが可能となる。
【0025】
この成形体12となる繊維状物成形板を構成する繊維状物12aとしては、廃棄物処理の容易性などの観点から、木質繊維,綿,羊毛,麻,絹,レーヨン及びポリ乳酸等の生分解性プラスチック繊維等と云った生分解性のものを用いるのが好ましく、とりわけ、成形体12を構成した際に、得られる成形体12の剛性を高くすることができる木質繊維を用いるのが特に好適である。なお、繊維状物成形板を構成する生分解性の繊維状物12aは、上に列挙したものに限定されるものではなく、又、上述したものを単独で或いは2種以上を組合わせて用いるようにしてもよい。このような繊維状物12aを用いて成形体12を構成することによって、その内部には3次元方向にランダムに延びたトンネル状の孔が迷路のように形成されるようになり、その結果、成形体12に添加した害虫忌避成分14を長い時間かけて徐放させることができるようになる。
【0026】
ここで、「木質繊維」とは、上述したように、チップ状の木片を高温で煮詰めて解繊したもので、この木質繊維を用いて成形体12となる繊維状物成形板(すなわち木質繊維板)を形成する際には、湿式抄造法や乾式法が用いられる。
【0027】
このうち、湿式抄造法は、木質繊維を水中に投入してスラリーとして、これを円網や長網式の抄造機によって抄造してウェットマットとした後、プレス、乾燥を施すことで成形する方法である。この際、0.4mm〜30mm程度の長さの範囲にある木質繊維で抄造すれば、木質繊維が適度に絡まり繊維板として成形することが可能なのでバインダーは必ずしも必要がない。係る方法で得られる木質繊維板は、比較的低密度(概ね0.35g/cm3前後)のもので、インシュレーションボード(IB)と称される。又、前記ウェットマットを熱圧プレスにより高密度化(0.80g/cm3以上)したものがハードボード(HB)である。
【0028】
一方、乾式法は、解繊した木質繊維に接着剤を添加した後、乾燥し、フォーミング、トリミングなどの工程を経てマット状態に整えたものを、熱圧プレスして成形する方法である。係る方法で得られる木質繊維板は、中密度(0.35〜0.80g/cm3程度)の中密度繊維板(MDF)である。
【0029】
本発明の害虫忌避材10では、成形体12として木質繊維板を使用する場合、インシュレーションボード,中密度繊維板及びハードボードのいずれか1種のみを用いて形成するようにしてもよいし、2種以上を組合わせて形成するようにしてもよい。例えば、図示しないが、低密度のインシュレーションボードの両表面に、中密度繊維板或いはハードボードを積層すると共に、インシュレーションボードから成る層に害虫忌避成分14を担持させれば、成形体12に多量の害虫忌避成分14を担持させることができると共に、担持させた害虫忌避成分14を長期間かけて徐放させることができるようになる。
【0030】
なお、上記各種木質繊維板のうち、木質繊維を湿式抄造して得られるインシュレーションボードは、乾式法で得られる中密度繊維板や熱圧プレス工程を必要とするハードボードと比較して、内部に微細な空隙vが特に多く害虫忌避成分14の浸透性や保持力に優れるので、とりわけ1種類の木質繊維板のみで成形体12を構成する場合には、このインシュレーションボードを用いるのが特に好適である。又、インシュレーションボードは、その他の木質繊維板と比較して、低密度で、軽く、柔らかい為、使用後は簡単に細かく裁断して廃棄することができ、このように細かく裁断できることによって、土に埋めた際に微生物による分解を促進させることができる。更に、インシュレーションボードで成形体12を構成した場合、該成形体12の内部に無数の空隙vが形成され(図1の破線円囲み拡大部分参照)、植木鉢pやプランター等の下に敷設した場合もしくは植木鉢p等の上側の土壌S表面を覆うように載置して使用した場合には、成形体12による保温効果が得られる。又、植木鉢p等の上側の土壌S表面を覆うように載置して使用した場合、成形体12による調湿効果が得られ、土壌Sの急激な乾燥を和らげることができる。更に、木質繊維を湿式抄造して形成した成形体12は、ポーラス且つバルキーであるにもかかわらず、繊維同士の絡みにより剛性が高く、一定期間の使用に耐え得る機械的強度を保持することができるので、植木鉢pの下に敷いてもすぐに割れたり変形したりしないし、後述するように土に刺して使用してもすぐにはへたらない。
【0031】
以上のような多孔質で且つ平板状の各種材料で構成される成形体12の形状は、その使用方法に対応した各種形状に成形することができる。例えば、図1に示すように、害虫忌避材10を植木鉢p或いはプランター(図示せず)などの下に敷設して使用する場合には、図1のような矩形状のものの他に、図2(a)に示すような円形状のものや同(b)に示すような三角形状のもの、あるいは同(c)に示すような星形状のものなどであってもよい。
【0032】
なお、上述のように本発明の害虫忌避材10を植木鉢p或いはプランターなどの下に敷設して使用した場合、害虫忌避材10の上に植木鉢p等を乗せるだけで済むため施工が非常に簡単であり、この方法によって、下地面から這い上がってくるような害虫(例えば、アリ、ナメクジ等)に対して特に忌避効果を発揮でき、植木鉢p等に近づけないようにすることができる。
【0033】
また、図1及び図3に示すように、害虫忌避材10を植木鉢p等の上側の土壌S表面を覆うように複数載置して使用する場合には、図1及び図3のような湾曲楕円形状のものの他に、図4(a)に示すようなL字形状のものや同(b)に示すようなコ字形状のもの、あるいは同(c)に示すような細長矩形状のものなどであってもよい。
【0034】
このうち、図1及び図3に示すように湾曲楕円形状のものを使用すれば、害虫忌避材10を植物Pの茎の形状(サイズ)や植木鉢pの形状に沿うようにして植物Pの根元に設置することができ、特に、係る害虫忌避材10を2枚以上の複数枚使用することで、円形の植木鉢p上側の土壌S表面全体を簡単に覆うことが可能になる。
【0035】
なお、上述のように本発明の害虫忌避材10を植木鉢p等の上側の土壌S表面を覆うように複数載置して使用した場合、下地面から這い上がってきた害虫や、既に土壌Sの中に存在していたような害虫に対して特に忌避効果を発揮させることができる。
【0036】
さらに、図5に示すように、成形体12外周面の一部をストレートに突出させて突起部16を設け、この突起部16を土壌Sに突き刺して害虫忌避材10を立設させるようにしてもよい。このような突起部16を設けることにより、害虫忌避材10を簡単に土壌Sに突き刺して立設させることができ、水遣りの際に植木鉢pからオーバーフローする程度の水を与えても、オーバーフローする水と一緒に害虫忌避材10が流出するのを防止することができる。加えて、土壌Sに突き刺して害虫忌避材10を立設させることができるため、害虫忌避材10には植物の名前や愛称、管理者の名前等を書くことができ、ネームプレートとして使用することができる。
【0037】
また、図6に示すように、突起部16の先端を曲成してフック形状にすれば、簡単に植木鉢p等の縁や枝葉に引っ掛けて設置することができるようになる。
【0038】
なお、上述のように本発明の害虫忌避材10を土壌Sに突き刺したり、植木鉢p等の縁や枝葉に引っ掛けて使用した場合、その表裏面から害虫忌避成分14を広範囲に徐放させて下地面から這い上がってきた害虫や、(植物から少し離れた場所や高い所に害虫忌避材10を設置できるので、)飛翔性害虫に対して特に忌避効果を発揮させることができる。
【0039】
また、突起部16が設けられた成形体12の本体部分の形状は、図5に示す小鳥をモチーフ化した形状や図6に示す矩形状のものに限定されるものではなく、猫や猿など他の生き物をモチーフ化した形状であってもよいし、円形状や三角形状など他の幾何学的形状であってもよい。このうち、特に、成形体12の形状を、前記生き物や乗用車・電車・船などの乗り物、もしくは住宅や東京タワーなどの建造物をモチーフ化した形状とすることにより、見た目に楽しめ可愛い印象を与える害虫忌避材10となるだけでなく、小さな子供の興味をひくことができ、家族全員でガーデニングを楽しめるようになる。
【0040】
さらに、成形体12の形状は、上述のものに限定されるものではなく、図示しないが、成形体12の一部に孔や切れ込みを設けて、係る孔や切れ込みを介して植物の枝に害虫忌避材10を取り付けるような形状であってもよい。
【0041】
害虫忌避成分14は、害虫忌避材10における害虫忌避効果、すなわち害虫の嫌う臭いを継続的に発することによって該害虫忌避成分14を添加した物品を設置した周囲に害虫を寄せ付けなくする効果を有する成分である。この害虫忌避成分14は、多孔質で且つ平板状の成形体12を製造した後、該成形体12に添加しても良いし、予め成形体12を構成する材料に添加した後、成形体12を製造するようにしてもよい。成形体12に害虫忌避成分14を添加する方法としては、スプレー法,滴下法,ローラー法或いはディッピング法など公知の方法を用いることができる。
【0042】
また、図1に示すように、成形体12に添加した害虫忌避成分14の効果がなくなった後に、上述した公知の方法を用いて害虫忌避成分14を再度添加することによって、害虫忌避効果を再生することが可能となる。
【0043】
ここで、本発明の害虫忌避材10に用いる害虫忌避成分14としては、化学合成によって新たに合成された自然界に存在しない成分ではなく、植物等から得られる天然物由来のものを用いるのが好ましい。このような天然由来の成分としては、センダン科のニームか
ら得られるアザジラクチン,イネ科のシトロネラから得られるシトロネラール,シソ科のローズマリーから得られるボルネオールなどを例示することができるが、本発明の害虫忌避成分14はこれらの成分に限定されるものではない。また、本発明の害虫忌避材10では、害虫忌避成分14として、これら天然物由来の成分を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用するようにしてもよい。
【0044】
以上のように構成された本発明の害虫忌避材10によれば、害虫忌避成分14を担持するマトリックスが多孔質で且つ平板状の成形体12で構成されているので、ある程度の剛性を備えており、使用に際して植木鉢pの下に敷設したり、植木鉢p上側の土壌S表面を覆うように載置するだけでよく、柔軟な不織布シートで植木鉢p等の全体を被包する方法のように手間がかからない。加えて、成形体12が多孔質であることから、該成形体12に、植物Pに対して悪影響が出ない適正量の害虫忌避成分14を予め添加させておくことができる。
【0045】
また、害虫忌避成分14を植物から得られた天然物由来のものにすることで、確実な害虫忌避効果を発揮させることができるのに加え、植物P自体のみならず人間や環境への負荷を軽減させることができる。
【0046】
さらに、生分解性の繊維状物12aを成形して成形体12を構成すれば、害虫忌避材10の使用後、そのまま放置したり土中に埋めることによって処分することが可能であり、廃棄物処理に手間がかからない。
【0047】
以上のように本発明によれば、植物Pへの悪影響が少なく、簡単に使用することができる害虫忌避効果の高い害虫忌避材10を提供することができる。
【実施例】
【0048】
厚み4mm、密度0.35g/cm3のインシュレーションボード(大建工業(株)製)を準備し、該インシュレーションボードから、図5に示すような小鳥をモチーフにした形状で且つ10cm角に収まるような大きさの成形体12を切り出し、該成形体12に害虫忌避成分14としてシトロネラ抽出物であるシトロネラ油(精油:有効成分シトロネラール)を2.0ml滴下させて害虫忌避材10を得た。
【0049】
係る害虫忌避材10の突起部16を、ペペロミアを植えた4号植木鉢の土壌に突き刺し、日々状態を観察したところ、害虫忌避材10設置後90日間ヨコバエ等の植物害虫を植木鉢周辺に寄せ付けなかった。
【符号の説明】
【0050】
10…害虫忌避材
12…成形体
12a…繊維状物
14…害虫忌避成分
16…突起部
P…植物
p…植木鉢
S…土壌
v…空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性を有する繊維状物からなる平板状の成形体と、前記成形体に添加された害虫忌避成分とで構成されていることを特徴とする害虫忌避材。
【請求項2】
前記害虫忌避成分が、植物から得られた天然物由来のものであることを特徴とする請求項1に記載の害虫忌避材。
【請求項3】
前記生分解性を有する繊維状物が木質繊維であり、前記成形体がランダムに配向された前記木質繊維を成形して得たものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の害虫忌避材。
【請求項4】
前記成形体の形状が、湾曲楕円形状であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の害虫忌避材。
【請求項5】
前記成形体の形状が、外周面の一部が突出した突起部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の害虫忌避材。
【請求項6】
前記成形体の形状が、モチーフ化された形状であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の害虫忌避材。



【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−115221(P2012−115221A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269509(P2010−269509)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】