説明

害虫防除用液体容器及び害虫防除装置

【課題】 本発明は、本体内部に液体を貯留する容器であって、害虫が液体に接しやすく、かつ当該液体の急激な揮発を抑えた害虫防除用液体容器を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、上面が開口しており、液体を貯留するための貯留部を有する容器本体と、
前記貯留部内に配置され、貫通孔及び/又は切り欠き部を有する浮遊部材と、を備え、
前記浮遊部材の貫通孔又は切り欠き部を介して貯溜部と外気とが連通しており、前記貯溜部内に液体が貯留されたとき、前記浮遊部材は液面上に浮遊し液面の低下に伴い下降する、害虫防除用液体容器

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫防除用液体容器及び害虫防除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
殺虫剤等を含む液体状の餌を害虫に摂食させるための装置としては、種々のものが提案されている。
【0003】
例えば、開口部及び当該開口部を密封する蓋を有する、液状餌を入れておくための貯蔵部;当該貯蔵部の開口部に位置決めされた液体吸上装置;当該蓋に穴をあけるための穿孔器;液体餌収容槽;固体状餌室;固体状餌;及び外側を覆い、開口部を有する基礎部を備える昆虫給餌装置が知られている(特許文献1)。当該装置においては、貯蔵部又は穿孔器を移動させて、穿孔器により上記蓋に穴を開ける。その結果、液状餌が貯蔵部から液体吸上装置を通過し、液体餌収容槽に溜まる。当該装置は、基礎部の開口部を通じて害虫が装置内に侵入し、固体餌及び液体餌を摂取するように設計されている。
【0004】
また、殺虫液を入れた容器の開口部に支持蓋嵌合し、この支持蓋上面に布を被覆し、この布の下端部延長部を殺虫部に浸し、この容器を受け皿に載置して成るハエ等の殺虫具も知られている(特許文献2)。
【0005】
また、ベースとカバーとを有する中空体を含み、該カバーが該ベースと実質的に液体がもれないように接合してなる、標的とする昆虫に液体昆虫用餌を与えるための昆虫用餌場であって、前記ベースが床と、床の周辺にベースリムを有し、前記カバーは、全体に床に平行で、かつ、その上方に位置するステージを有し、ベースの床とカバーの内部で向き合う面が、液体昆虫用餌を収容することができる保存室を規定するものであり、そして標的とする前記ステージ上の昆虫に、前記保存室内に収容された液体昆虫用餌を接触させるためのこぼれ防止接触手段である毛管式液体搬送手段を保存室内に備える、昆虫用餌場も知られている(特許文献3)。
【0006】
ここで、特許文献1に記載の装置においては、液状餌収容槽は、害虫が当該装置の外壁にある開口部を通り、さらに固体状餌室を通過した後、はじめて到達できる位置にあり、液体まで遠いという欠点を有する。また、液状餌が、液体吸上装置を通って液状餌収容槽に溜まるため、液状餌が液体餌収容槽に溜まる速さは、重力、毛細管現象、液状餌の粘度等により決まる。液状餌収容槽の液状餌は、蒸発、害虫の喫食等により減少するが、その減少速度に合わせて液状餌収容槽への液状餌の流出速度を調整することが困難である。また、このような装置の場合、液状餌の露出部分は、液状餌収容槽の大きさにより決まるが、その大きさは通常一定の範囲に収める必要があるため、露出面積を調節することが難しいという欠点も有する。そして、液状餌収容槽に溜まっている液状餌の液面が蒸発等により下がると、液状餌収容槽の開口部から液面までの距離はさらに長くなり、害虫が液状餌に摂食しづらくなってしまう。
【0007】
また、特許文献2に記載の殺虫具は、毛細管現象により殺虫液が布の支持蓋上面まで移動するが、当該支持蓋上面にある布の表面積が大きいため殺虫液が揮発しやすい。従って、殺虫液が短期間で揮発によりなくなってしまうこと、支持蓋上面で充分な量の殺虫液が保持されないという欠点を有する。
【0008】
また特許文献3に記載の餌場においては、害虫は、スポンジ状の液体搬送手段に浸漬した液体餌を喫食するため、喫食性が充分でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2003−503077号公報
【特許文献2】実開昭50−87069号公報
【特許文献3】特表平10−512146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、本体内部に液体を貯留する容器であって、害虫が液体に接しやすく、かつ当該液体の急激な揮発を抑えた害虫防除用液体容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような状況の下、本発明者らは、鋭意研究した結果、上面が開口している容器本体と、当該容器本体とは別個の部材であって、当該開口部から容器本体内に配置され、かつ貫通孔及び/又は切り欠き部を有する浮遊部材とを備える害虫防除用液体容器を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
従って、本発明は、以下の項を提供する:
項1.上面が開口しており、液体を貯留するための貯留部を有する容器本体と、
前記貯留部内に配置され、貫通孔及び/又は切り欠き部を有する浮遊部材とを備え、
前記浮遊部材の貫通孔又は切り欠き部を介して貯溜部と外気とが連通しており、前記貯溜部内に液体が貯留されたとき、前記浮遊部材は液面上に浮遊し液面の低下に伴い下降する、害虫防除用液体容器。
【0013】
項2.前記容器本体が上面の開口部分から下方に伸びるガイド壁を備え、
前記貯溜部内に液体が貯留されたとき、前記浮遊部材は、液面の低下に伴い当該ガイド壁に沿って下降するよう配置されている、項1に記載の害虫防除用液体容器。
【0014】
項3.項1又は2に記載の害虫防除用液体容器に液体を収納してなる害虫防除装置。
【0015】
項4.前記液体が殺虫剤及び/又は誘引物質を含む、請求項3に記載の害虫防除装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、浮遊部材が常に液体の液面にあり、当該浮遊部材が足場になるため、害虫が液体を摂食しやすいという利点を有する。また当該浮遊部材が、当該液体の急激な揮発を抑え、蓋の役割を果たす。そして、浮遊部材の貫通孔及び/又は切り欠け部の大きさ、形状を変更することにより、液体の露出面積を容易に調製することができる。また、従来の容器の場合、液体の露出面積が大きいため、害虫が落ちて外観が悪くなってしまっていたが、本発明の場合、貫通孔及び/又は切り欠け部の面積を小さくすることにより、液面の露出部分を小さくして、害虫を液面に落下しにくくすることもできる。本発明の場合、貯留部に溜まった液体に直接害虫が接触するため、液体をスポンジにしみ込ませた場合と比較して、喫食性が高いという利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の害虫防除用液体容器の一実施形態の斜視図を示す。
【図2】図2は、本発明の害虫防除用液体容器の一実施形態の平面図を示す。
【図3】図3は、本発明の害虫防除用液体容器の一実施形態の断面図を示す。
【図4】図4は、本発明の害虫防除用液体容器の一実施形態の断面図を示す。
【図5】図5は、本発明の害虫防除用液体容器の一実施形態の断面図を示す。
【図6】図6は、本発明の害虫防除用液体容器の別の実施形態の斜視図を示す。
【図7】図7は、本発明の害虫防除用液体容器の別の実施形態の平面図を示す。
【図8】図8は、本発明の害虫防除用液体容器に含まれる種々の浮遊部材を示す。
【図9】図9は、実施例1において用いた容器の写真を示す。
【図10】実施例1の試験中の様子を撮影した写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る害虫防除装置が対象とする害虫としては、アリ、ゴキブリ、ダニ、ワラジムシ、ダンゴムシ等の匍匐害虫、及びハエ、カ、ハチ、コバエ等の飛翔性害虫が挙げられる。これらのうち、匍匐害虫が好ましく、匍匐害虫のなかでもアリが好ましい。
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明を説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態に限定されない。
【0020】
害虫防除用液体容器
第一の実施形態
本発明の一つの実施形態における害虫防除用液体容器の斜視図を図1に、平面図を図2に示す。当該実施形態において、害虫防除用液体容器は、上面に開口部3を有し、液体を貯留するための貯留部を有する容器本体1と、板状の浮遊部材2とを備える。
【0021】
そして、図2の点線X−X’を通り、容器本体1の底面に垂直に接する面で切断した切断図を図3に示す。同様に、図2の点線Y−Y’を通り、容器本体1の底面に垂直に接する面で切断した切断図を図4に示す。
【0022】
容器本体1が有する開口部3は、図1に示すような円であってもよく、またそれ以外の形状、例えば、四角形等の多角形、楕円等であってもよい。
【0023】
容器本体1は、その内部に液体を貯留するための貯留部を有する。貯留部は、容器本体1の内壁により囲まれた部分を示す。ここで容器本体1の内壁とは、容器本体の内部かつ開口部3と連通する空間に接している壁面を示す。従って、図4の場合、底面部分の内壁9−2及び開口部3から垂直に伸びたガイド部分の内壁9−3だけでなく、流通路5を通じて開口部と連通している空間に接した壁面9−1も内壁に含まれる。
【0024】
容器本体1の素材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリロ・ニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、金属(アルミ等)、ガラス等が挙げられる
前記容器本体1の貯留部内には、貫通孔及び/又は切り欠き部を有する浮遊部材2が配置される。前記貯溜部内に液体が貯留されたとき、前記浮遊部材2は液面上に浮遊し液面の低下に伴い下降する。容器本体1に液体が貯留されている場合の断面図を図5として示す。
【0025】
浮遊部材2の形状は特に限定されないが、板状で、かつ開口部3に沿った形状が好ましい。当該浮遊部材2が足場になるため、害虫は貫通孔4の近傍まで到達でき、液体に近づきやすくなる。図1に示す実施形態において、当該浮遊部材2は、貫通孔4を有する。浮遊部材2は、貫通孔4に代えて、または貫通孔4に加えて切り欠き部11を有していてもよい。図8に、種々の形態の浮遊部材を示す。図8に示すような浮遊部材の貫通孔及び/又は切り欠き部を介して貯留部と外気とが連通する。害虫は、浮遊部材2の上に乗り、貫通孔4の周囲又は切り欠き部11の周辺部の付近から液体を喫食する。通常、貫通孔4の外周及び切り欠き部の周辺部の総延長が長い方が、害虫が液体に接しやすくなるが、液体と外気との接触面の面積が大きくなり、液体が揮発しやすくなるため、液体の組成、使用場所、気温、対象害虫の種類等を考慮し、適宜設定される。例えば対象害虫がアリの場合は、貫通孔4の外周及び切り欠き部11の周辺部の長さの合計が10〜100mmが好ましい。
【0026】
また、浮遊部材2の平面部分の面積(片側)に関しても、液体の組成、使用場所、気温、対象害虫の種類等を考慮し、適宜設定される。つまり、害虫が浮遊部材上にのるための足場が確保され、かつ害虫防除用液体容器に液体を注入した際、液体の揮発を抑えることができる程度に、液体と外気との接触面の面積が充分小さく抑えられるよう設定される。例えば対象害虫がアリの場合は、浮遊部材2の貫通孔4の数は1〜10個が好ましく、貫通孔4の直径は1〜5mmが好ましい。
また、浮遊部材2の厚さは、特に限定されないが、強度が保たれる程度に薄い方が、害虫が液体に接しやすくなるため好ましく、例えば0.01〜5mmが好ましい。
【0027】
浮遊部材の素材は、液体上に浮かぶものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリロ・ニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、耐水紙(撥水紙)、木材、アルミ等が挙げられる。貯留部に入れる液体として粘度及び/又は比重が高いものを用いる場合、比較的比重の大きな浮遊部材を使用することができる。
【0028】
容器本体1は、開口部3から下方向に伸びるガイド壁を有していなくてもよいが、図1〜4に示すように当該ガイド壁を有することが好ましい。この場合、円筒状のガイド壁の内壁9−3と底面部分の内壁9−2とが凹部を形成する。そして、浮遊部材2は、凹部を塞ぎ(但し、浮遊部材2は凹部の内壁面との間に隙間が形成されていてもよい。)且つ凹部内でガイド壁に沿って昇降可能に配置される。従って、容器本体1に液体が貯留されている場合には、浮遊部材2は、液体の増減に応じて、ガイド壁に沿って上下する。
【0029】
開口部3からガイド壁が下方向に伸びている場合、ガイド壁に流通路5を形成させておくことにより、ガイド壁の外側にも液体を収納することができる。流通路5は、ガイド壁の円周に沿って1つ又は複数個所形成してもよいし、ガイド壁の円周全体に流通路5を形成させてもよい(その場合、ガイド壁と底面部の内壁9−2とは、接しないこととなる)。
【0030】
また、貯留部を形成する最も外側の内壁9−1は、図3〜5に示すようにテーパー状であることが好ましい。液体が蒸発、害虫の喫食等により減少した場合、残りの液体が浮遊部材2の下に集まるためである。
【0031】
また、容器本体1の外周部分は、図1〜5に示すように、上部から下部に広がるようなテーパー状とすると匍匐害虫が当該テーパー状の外周を上って浮遊部材2に到達しやすくなるため、好ましい。
【0032】
第二の実施形態
図6及び7に、本発明の害虫防除液体容器の別の実施形態を示す。図6及び7に示すように、本発明の害虫防除用液体容器は、前記第一の実施形態の害虫防除用液体容器のガイド内壁3に、さらに、ガイド突起7を備え、このガイド突起7に対応する浮遊部材2に溝8を備えていてもよい。当該ガイド突起及び溝を備えることにより、浮遊部材2の水平報方向の回転が抑制されるため、好ましい。
【0033】
また、本発明の害虫防除用液体容器は、容器本体1にかぶせる上蓋10を備えていてもよい。本発明の害虫防除用液体容器は、野外に設置する場合が想定されるため、雨が液体貯留部に流入するのを防ぐことができるので、上蓋10を用いるのが好ましい。上蓋10の素材としては、容器本体1の素材として前記に列挙したものと同様のものを用いることができる。
【0034】
上記上蓋10を用いる場合、本体1の上部に、突起6を備えていてもよい。突起6があることにより、容器本体と上蓋10との間に害虫が通過する充分な空間が形成されるため、好ましい。
【0035】
害虫防除装置
本発明は、前記害虫防除用液体容器に液体を収納してなる害虫防除装置を提供する。
【0036】
液体としては、水又は有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、乳酸エチル、濃グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール等が挙げられる。
【0037】
本発明においては、上記液体に殺虫剤を配合してもよい。殺虫剤としては、殺虫活性、殺ダニ活性または殺線虫活性を有する化合物が挙げられる。
【0038】
殺虫活性、殺ダニ活性または殺線虫活性を有する化合物としては、例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、アセチルコリン受容体阻害剤、GABA制御クロライドチャンネルアゴニスト、ナトリウムチャンネル制御剤、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、アセチルコリン受容体アゴニスト、クロライドチャンネル活性化剤、幼若ホルモンミミック、酸化的リン酸化阻害及びATP形成阻害剤、水素イオン勾配のかく乱による酸化的リン酸化のアンカップラー、同翅目に対するキチン生合成阻害剤(タイプ1)、エクダイソンアゴニスト/脱皮阻害剤、オクトパミンアゴニスト、サイトI電子伝達系阻害剤(METI剤)、サイトII電子伝達系阻害剤、脂質生合成阻害剤、リアノジン受容体制御剤、または非特異的作用機構(選択的摂食阻害)を有する化合物等を挙げることができる。
【0039】
また、殺虫活性を有する化合物としては、上記以外に、例えば、殺ダニ剤、チアジアジンIGR系殺虫剤、ピレスロイド系殺虫剤、ナトリウムチャネルブロッカー系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、ベンゾイルフェニルウレア系殺虫剤、ジアシルヒドラジン系殺虫剤、ホウ酸等を上げることができる。殺虫活性を有する化合物としてアセタミプリド、イミダクロプリド、ニテンピラム、クロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリド、フロニカミド、カルバリル、プロポキスル、ペルメトリン、ビフェントリン、シフルトリン、ピレトリン、アレスリン、プラレトリン、レスメトリン、テフルトリン、フェンプロパトリン、エムペントリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、フェンバレレート、エトフェンプロックス、フェニトロチオン、マラチオン、ダイアジノン、メタミドホス、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン、フェノブカルブ、フェノキシカルブ、等を挙げることができる。これらの殺虫剤は、一種単独で、又は二種類以上を混合して用いることができる。
【0040】
上記殺虫剤の配合量は害虫に対し充分な殺傷効果が得られれば特に限定されないが、例えば、液体中、0.0001〜50重量%が好ましく、0.001〜10重量%がより好ましい。
【0041】
上記液体には、害虫を誘引するための誘引物質を配合してもよい。誘引物質としては、従来害虫防除用に用いられているものを広く採用することができるが、例えば、糖質(グラニュー糖、果糖、マルトース、トレハロース等)、タンパク質、炭水化物、脂質等の食餌成分:天然物由来及び調合された芳香成分、フェロモン、アミノ酸、核酸、油脂等を有効成分として用いることができる。これらの誘引物質は、一種単独で、又は二種類以上を混合して用いることができる。
【0042】
また、上記液体には、必要に応じて安定化剤、防腐剤、色素などを混合して用いることもできる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を用いて特定の実施形態を詳述するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0044】
実施例1及び比較例1
実施例1として、図9の左側に示すような、上面が略正方形(7.0cm×7.0cm)であり、約1cm×1cmの開口部を有する容器(素材アクリル樹脂)を用いた(高さ1.0cm)。当該開口部に約1cm×1cmの正方形の浮遊部材(素材ポリエチレン樹脂)にφ3mmの貫通孔を5個あけたものを設置した。
【0045】
比較例1として、図9の左側に示すような、上面が略正方形(7.0cm×7.0cm)での容器を用いた(素材アクリル樹脂、高さ1.0cm)。比較例の容器においては、上面中央部付近にφ3mmの貫通孔を5個あけてあり、かつ当該5つの貫通孔と貯留部底面との両方に接するように当該容器内にスポンジが挿入した。これらの容器にそれぞれ20%砂糖水を3mlいれたものを検体として用い、下記(1)〜(4)の手順で喫食試験を行った:
(1)35cm×25cm×6cmプラスチックケースに実施例1及び比較例1の容器を10cm程度離して並置する。
(2)当該プラスチックケースに供試虫(クロヤマアリ約50頭)を放つ。
(3)1分おきに容器内の砂糖水を喫食している供試虫数をカウントする。
(4)5分間観察を行い、累計喫食頭数を算出する。
試験は実施例1及び比較例1の位置を入れ替えてN=2で行った。
【0046】
結果
試験中のプラスチックケースの様子を図10に示す。また、結果を以下の表1に示す(N=2の平均)。
【0047】
【表1】

【0048】
上記表1に示すように、実施例1の容器においては、累計喫食頭数5.5頭と高い喫食性を示した。ここで、上記のように、当該試験は、容器の貯留部の体積に対して比較的少ない量の砂糖水を入れて行っている。従って、上記試験においては、害虫防除装置を設置し、長期間放置した後、液体の蒸発、害虫による喫食により砂糖水の量が減少した状態が再現されている。従って、上記結果から、実施例の容器では、害虫防除装置の設置後、長時間が経過し、容器内の液体が減少した状態であっても高い喫食性を維持できることが分かる。これに対し比較例1では、累計喫食頭数0頭であり、喫食性がないことがわかる。
【0049】
実施例2
図1に示す形状の容器本体1をポリプリピレンにより製造した。また、浮遊部材2をポリエチレンにより製造した。浮遊部材2における4個の貫通孔4は、直径は5mmの円形とした。
【0050】
容器本体1の貯留部に、グラニュー糖20重量%及びジノテフラン0.05重量%の水溶液を注入し、浮遊部材2を水溶液上に配置することにより、本発明の害虫防除装置を得た。
【0051】
上記構成を有する害虫防除装置を、野外に放置すると、アリ等の害虫が誘引されて浮遊部材2上にのり、殺虫剤溶液を喫食した。容器内に貯留されている殺虫剤が液状であるため喫食性が高く、かつ液体の量が減少しても液面の降下に伴い、害虫の足場となる浮遊物質2も降下し、害虫は容易に液体に接することができるため、かかる喫食性が高い状態が長時間保持された。
【符号の説明】
【0052】
1 害虫防除用液体容器
2 浮遊部材
3 開口部
4 貫通孔
5 流通路
6 突起部
7 ガイド
8 溝
9 内壁
10 上蓋
11 切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口しており、液体を貯留するための貯留部を有する容器本体と、
前記貯留部内に配置され、貫通孔及び/又は切り欠き部を有する浮遊部材とを備え、
前記浮遊部材の貫通孔又は切り欠き部を介して貯溜部と外気とが連通しており、前記貯溜部内に液体が貯留されたとき、前記浮遊部材は液面上に浮遊し液面の低下に伴い下降する、害虫防除用液体容器。
【請求項2】
請求項1に記載の害虫防除用液体容器に液体を収納してなる害虫防除装置。
【請求項3】
前記液体が殺虫剤及び/又は誘引物質を含む、請求項2に記載の害虫防除装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−55901(P2013−55901A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195469(P2011−195469)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】