説明

家庭用吸水マットとその製造方法

【課題】 家庭用風呂の出入り口前に敷いて、風呂上がりの体からしたたり落ちる水分を吸収させるために使用する水分吸収用マットの提供。
【解決手段】 下面布1と中間布2と接着膜3と表面布4とからなり、下面布1が下面側に防滑性を備えた不透水性の合成樹脂シートで形成され、中間布2が吸水性と保水性に富んだ繊維の不織布または繊維の集合体で形成され、接着膜3がホットメルト繊維で形成され、表面布4が疎水性に富んだ繊維製の不織布または布帛で形成され、これらの四体1,2,3,4が積層され、全周縁部5で融着一体化されている構成としたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第一義的には、家庭用風呂の出入り口前の床に敷いて、風呂上がりの体からしたたり落ちる水滴を吸収させるために使用するマットであり、他の使用方法としては、台所や洗面所の足下や、洋式トイレの足置き部に敷いて飛散水滴を吸収させるのに適した床置きマットであって、常にマットの表面が乾燥状態にある感触が得られるようにした吸水マットと、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、家庭用風呂の出入り口前の床に敷いて、湯上がり時に、体から足下に滴下した水分を吸い取らせるために使用するマットは、種々の素材を使用し、種々の形状に形成したものが製造販売されていて広く一般家庭において使用されている。
【0003】
これらの現行市販の家庭用風呂の出入り口前に敷いて使用する風呂上がり用マットの大部分は、吸水を主たる目的としたもので、例えば、綿繊維のような天然繊維の吸水性に富んだ素材でマット全体を形成してあるものが多くを占めている。しかしながら、このような一般市販の湯上がり用マットの多くは、多人数が使用するとマット全体が濡れて後の人に不快感を与え、マットの下面にまで水が浸透し床面を濡らし、床面の拭き掃除を余儀なくされるものがあった。
【0004】
他方、文献上においては、このような浴室の出入り口に敷いて風呂上がり時の体に付いた水滴を吸収させるために使用する湯上がり用マットや、このような風呂上がり用マットと同じ構成としたマットを、形状を変えて台所前や洗面所前、更には洋式トイレの足置きマットとして使用するものも提案されている。
【0005】
そのマット構造として、例えば、後記特許文献1には、
「非透水性で、床に対して滑り止め作用を有する下面シート11と、透水性で水不溶性 の上面シート12と、下面シートと上面シートの間に吸水性高分子ポリマー14を含 んだ綿状の中間吸水層13を介在させた防水用床敷きマット」
の提案がなされている。
【0006】
また、他の手段として、後記特許文献2では、
「珪藻土を含む調湿材を用いて平面矩形状に形成された高吸水性タイルと、この高吸水 性タイルを支持盤に複数枚並べて支持しうるようにした足拭きマット」
の提案がなされ、特許文献3では、
「バスマットを足拭き用マット12と着替え用マット13との2枚1組にして、その2 枚のマット12・13の側縁14・15を突き合わせて面ファスナーで密着するよう にしたバスマット」
の提案がなされている。
【特許文献1】特開2003−153785号公報
【特許文献2】特開2006−34797号公報
【特許文献3】特開2001−37660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、これらのうち、特許文献1に見られる防水用床敷きマットは、風呂上がりの水分を吸い取らせるために、浴室前に敷いて使用する防水用床敷きマットであること、水分を吸収させるための中間吸水層13の素材として吸水性高分子ポリマー14を含んだ綿状の吸水層を使用すること、下面シート11の床面側を滑り止め作用を有するものとすること、上面シート12を透水性で水不溶性のものとすることが記載され、また、その構造として、滑り止めを施した下面シート11で中間吸水層13の前後を包み込んで、中間吸水層13の上面で上面シート12と接着させて袋状としたした中に中間吸水層13を収納させて、その長辺側の両端で下面シート11と上面シート12とを接着したものであることが記載されている。また、この防水用床敷きマットは、毎日取り替え、使用済みのものは燃えるゴミとして処分することができると記載されている。しかしながら、ここに記載の防水用床敷きマットは、構造が複雑で多くの加工手数を要し、使い捨てとすることは、資源の無駄使いであり、不経済であって、結果的に高価に付くものとなっている。
【0008】
また、後者の特許文献2に記載の足拭きマットは、珪藻土等の調湿材を固めて平面矩形状に形成した複数枚の高吸水性タイル2を、外周枠5と底板6とを備えたタイル支持盤3上に並べて使用するようにしたもので、風呂上がり等の水分吸収に使用するには、使用の都度、使用前には複数枚のタイル2を支持盤3上に並べ、使用後は複数枚のタイル2を支持盤3上から取り外して乾燥させなければならないという多大な手数を必要とするものとなっている。
【0009】
また、特許文献3に記載のバスマットは、足拭きマット12と着替え用マット13とに別体形成するものとされていて、使用の都度、これらの両マット12,13を連結用ファスナー21を介して連結したり、連結を解除したりする必要があり、少なくとも足拭きマット12は頻繁に取り替えて洗濯されるものであることが記載されている。したがって、ここに記載のバスマットも、使用の都度、両マット12,13の連結と連結解除をしなければならないものとなっている。
【0010】
そこで、本発明は、前者の特許文献1に記載のような、構造が複雑で製造に手数を要する構造を廃し、使い捨てのような不経済性を廃し、また、後者の特許文献2,3のような、使用の度ごとに、組み立て・取り外しや、連結・連結解除という手数を一切必要とすることのない吸水マットであって、構造が簡単で製造が容易にでき、使用に際しては、風呂の出入り口前のような吸水に必要な箇所に、単に敷くだけでよく、所要量の水分を吸水しても、表面が乾燥感を呈していて、使用者に不快感を与えることがない家庭用吸水マットの提供と、その製造方法をここに提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
該目的を達成するために講じた本発明にいうところの家庭用吸水マットの構成は、実施例説明において使用した符号を用いて説明すると、水滴滴下箇所に敷いて使用する水分吸収マットであって、下面布1と中間布2と接着膜3と表面布4とからなり、下面布1が下面側に防滑性を備えた不透水性の合成樹脂シートで形成され、中間布2が吸水性と保水性に富んだ繊維の不織布または繊維の集合体で形成され、接着膜3がホットメルト繊維で形成され、表面布4が疎水性に富んだ繊維製の不織布または布帛で形成され、これらの四体1,2,3,4が積層され、少なくとも全周縁部5で融着一体化されている構成としたものである。
【0012】
また、請求項2に記載の家庭用吸水マットの製造方法は、予め片面に防滑性樹脂12の塗布加工を施した不透水性の合成樹脂シート11を防滑性樹脂12の塗布面を下側にして配置した下面布1の上面に、所定の厚さを保持させた吸水性と保水性に富んだ不織布21または繊維の集合体で形成された中間布2を積層し、その上面にホットメルト繊維で形成され接着膜3を積層し、更にその上面に疎水性に富んだ繊維製の不織布または布帛で形成された表面布4を積層し、これらの四体1,2,3,4を積層状態としたまま、製品の全周縁部5と同形状に形成した加熱融着金型で四体1,2,3,4を加圧加熱融着一体化し、該加熱融着加工と同時にか、別工程で同周縁部5を打ち抜き加工し、全周縁部5が融着一体化されている家庭用吸水マットを得る方法としたものである。
【発明の効果】
【0013】
以上の構成から明らかなように、本発明にいうところの家庭用吸水マットは、表面布を疎水性に富んだ繊維製の不織布または布帛で形成し、水分は迅速に透過させるが逆通過を阻止するものとし、その内部に中間布として吸水性と保水性に富んだ繊維の不織布または繊維の集合体を収容させて、表面布から透過した水分を保持させ、該中間布の下面には、下面側に防滑性を備えた不透水性の合成樹脂シートで形成され下面布を配置してあるので、例えば家庭用風呂の出入り口前に敷いて、風呂上がりの体からしたたり落ちる水滴を吸収させても、落下した水滴は表面布を透過して内部の中間布に吸収されて保水され、一旦中間布に吸収された水分は表面布上に逆通過することはないので、表面布は、内部に水分を含んだ状態であってもさらさら感を保持していて、次の使用者に不快感を与えることなく使用することができるという顕著な利点を有し、中間布に吸収された水分が、下面布を透過して床面を濡らすことはなく、使用時にマットが滑って不測の事態を招くというような危険性もないという効果を有する。
【0014】
したがって、何人かの一家族全員が心地よく使用でき、使用後はそのまま洗濯機に入れて脱水させるだけで殆ど吸湿感をなくすることができ、また、脱水後少時間天日乾燥させるだけで、時には、洗濯し脱水乾燥させれば、その状態で再使用することができるという顕著な効果を有し、更には、下面布の下に水分が透過することがないので、使用後に床面の水分を拭き取らなければならないという手間もかけずに使用できるという効果も同時に有している。
【0015】
また、請求項2に記載の製造方法にあっては、単に4種の素材を積層し、積層状態で、製品の全周縁部と同形状に形成した加熱融着金型を用いて加圧加熱融着させて全層を一体化し、この金型に加圧切断刃を形成しておいて加熱融着加工と同時に製品の全周縁部を切断加工するか、別工程で融着一体化した周縁部を打ち抜き加工することによって、全周縁部が融着一体化されている前記の構造を備えた家庭用吸水マットを得ることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
このような効果を有する本発明にいうところの家庭用吸水マットを得るに当たっては、特に限定する意図はないが、表面布を形成する素材としては、ポリエステル繊維の他、ポリプロピレン繊維やアクリル繊維の不織布または布帛が、疎水性に富み、中間布への水分の迅速な透過移動性と、一旦吸水した中間布からの逆吸水がなく吸湿感を呈しない点で好ましい。中間布の素材としては、吸湿性と保水性に優れている点で、木綿、麻、レーヨンのようなセルロース系繊維や、絹、羊毛のようなタンパク質系繊維の他、ポリビニールアルコール系繊維、吸湿性アクリル繊維のような化学繊維、これらの繊維の混合繊維による不織布や綿状の繊維集合体が好ましい。
【0017】
また、下面布の基材としては、例えばポリエステル樹脂を溶融してシート状やフィルム状に押し出し成形した不透水体を使用することもできるが、前記表面布の形成繊維と同じ繊維、例えばポリエステル繊維の不織布や布帛を用いて、その片面または両面に発泡ウレタン樹脂エマルジョンを塗布して発泡させることにより塗布表面に無数の微細凹凸を形成し不透水性と防滑性を備えさせたものとしたり、前記不織布や布帛に不透水膜加工を施した後、その片面にラテックスのような接着性を有する液状樹脂を全面・線状・点在状等適宜に塗布して固体化させることにより防滑性を保持させるのが好ましい。
【実施例】
【0018】
以下本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図1乃至図4は、本発明にいうところの家庭用吸水マットのうち、湯上がり用として使用するマットの実施例構造を示す図であって、図1はマットの外観と各層を示す一部切り欠き平面図、図2は図1に記載したA−A線の断面図、図3は下面の形状を示す背面図、図4は使用する各素材を示す分解断面図である。
【0019】
先ず、説明の便宜上、本発明にいうところの吸水マットを製造する方法から説明する。図4において拡大して示した断面図は、下方から下面布1、中間布2、接着膜3及び表面布4を示し、これらの布または膜が順次積層されていることを示す。
【0020】
下面布1には、厚さ約0.5mm程度に形成したポリエステル繊維の不織布を用い、その片面、図において下側に発泡ウレタン樹脂のエマルジョンを厚さ0.5mm程度に塗布して発泡させる。この発泡により塗布表面に無数の微細な凹凸を形成し、この塗布膜によって不透水性と防滑性を備えたものとする。更に、この下面に、ラテックスのような接着性を有する液状樹脂を、図3に示したように、適当な間隔を隔てて線状に塗布し、これを固体化させることにより滑り止めとした防滑性樹脂12を備えた合成樹脂シート11を使用する。これを最下面に配置する。
【0021】
中間布2には、吸湿性と保水性に優れているポリビニールアルコール系繊維または吸湿性アクリル繊維製の厚さ4mm程度に圧縮形成した不織布21を用い、これを前記下面布1の上に積層する。
【0022】
その上面に、ホットメルト繊維を絡み合わせて透視可能な程度に薄く形成した薄膜を接着膜3として積層する。
【0023】
更にその上面に、疎水性に富んでいて、中間布への水分の迅速な透過移動作用と、一旦下方に移動した水分の逆移動がなくて吸湿感を呈しないポリエステル繊維製の厚さ1mm程度に形成された不織布を用いる。これを表面布4として前記接着膜3の上に積層する。
【0024】
このようにして上下に配置した四枚の素材1,2,3,4を積層状態としたまま、図1における縦約50mm、横幅約70mmとした製品=ここでは湯上がり用マットM=の全周縁部5と同形状に形成した加熱融着用の加熱部と、その外側に近接して形成してある打ち抜き用の切断刃とを備えた上部金型と下部金型(図省略)とによって、製品の外周部を加熱融着すると同時に製品の全周縁部を切断加工するエンボス加工によって、製品の全周縁部5が融着一体化されている湯上がり用マットMを得たものである。なお、図1において符号6で示した部分は、前記上下金型によるエンボス加工時に同時に加圧融着した模様であり、周縁部5以外の部分で各素材が分離するのを防止する融着部である。言うまでもなく、この模様6は、必ずしも必要なものではなく、模様の形態も文字や記号やキャラクター図形等任意の形状のものとすることができる。
【0025】
ここにいうところのマットMの周縁部5の融着加工と切断加工とは、必ずしも同時加工する必要はなく、一旦融着加工を施した後に、別工程で周縁部5を打ち抜き加工することによって、全周縁部5が融着一体化されているマットMを得るようにしてもよいことはいうまでもないことである。
【0026】
このようにして得た湯上がり用マットMは、図1及び図2に見られるように、下方から、下面布1と、中間布2と、接着膜3と、表面布4とからなり、マットMの周縁部5の全体が融着一体化されていて、下面布1が不透水性を備え、その下面側に防滑性樹脂12を備えているものとなっている。
【0027】
このような構造とされた湯上がり用マットMは、入浴時に風呂の出入り口前の水滴滴下箇所に敷いて、風呂上がりの体からしたたり落ちる水滴を吸収させるために使用する。
【0028】
このような構造としたマットは、必ずしも湯上がり用マットMのみに限定されるものではなく、水分を吸収させるために使用するマットであるから、図5に示したように、例えば台所の流し台の前に敷いて、台所の飛散水分を吸収させるために使用する横長に形成した台所用マットKMや、洗面所前に敷いて使用する図外の洗面所用マットや、更には図6に示したように、洋式トイレの足置き部に敷いて使用するトイレ用マットTM等として実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明にいうところの湯上がり用マットや、台所用マット、洗面所用マット、トイレ用マットとして実施することができるものであるから、市販することにより
大いに社会に受け入れられて普及する可能性が大きいものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかるマットの一部切り欠き平面図。
【図2】図1におけるA−A断面図。
【図3】図1の背面図。
【図4】各素材を説明する拡大断面図。
【図5】別実施例を示す平面図。
【図6】更なる別実施例を示す平面図。
【符号の説明】
【0031】
1 下面布
2 中間布
3 接着膜
4 表面布
5 周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水滴滴下箇所に敷いて使用する水分吸収マットであって、
下面布(1)と中間(2)と接着膜(3)と表面布(4)とからなり、
下面布(1)が下面側に防滑性を備えた不透水性の合成樹脂シートで形成され、
中間(2)が吸水性と保水性に富んだ繊維の不織布または繊維の集合体で形成され、
接着膜(3)がホットメルト繊維で形成され、
表面布(4)が疎水性に富んだ繊維製の不織布または布帛で形成され、
これらの四体(1,2,3,4)が積層され、少なくとも全周縁部(5)で融着一体化されている家庭用吸水マット。
【請求項2】
予め片面に防滑性樹脂(12)の塗布加工を施した不透水性の合成樹脂シート(11)を防滑性樹脂(12)の塗布面を下側にして配置した下面布(1)の上面に、
所定の厚さを保持させた吸水性と保水性に富んだ不織布(21)または繊維の集合体で形成された中間(2)を積層し、
その上面にホットメルト繊維で形成され接着膜(3)を積層し、
更にその上面に疎水性に富んだ繊維製の不織布または布帛で形成された表面布(4)を積層し、
これらの四体(1,2,3,4)を積層状態としたまま、製品の全周縁部(5)と同形状に形成した加熱融着金型で四体(1,2,3,4)を加圧加熱融着一体化し、
該加熱融着加工と同時にか、別工程で同周縁部(5)を打ち抜き加工し、全周縁部(5)が融着一体化されている家庭用吸水マットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−295626(P2008−295626A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143266(P2007−143266)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(596060594)株式会社サンコー (65)
【Fターム(参考)】