説明

家畜・家禽用飼料

【課題】取扱性に優れ、家畜や家禽の飼料効率を高め生産性を向上させることのできる家畜や家禽の飼料用原料として有用な飼料用植物油油さい、これを用いた家畜・家禽用飼料及び家畜・家禽の飼育方法の提供。
【解決手段】水分を3〜35質量%及び脂肪酸ナトリウムを5〜30質量%含有する飼料用植物油油さい;該油さいを含有する家畜・家禽用飼料;該飼料を給与する家畜・家禽の飼育方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飼料用植物油油さい、これを用いた家畜・家禽用飼料及び家畜・家禽の飼育方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物油油さいは、安価で栄養価が高いため動物の飼料用原料として極めて有用である。飼料用植物油油さいを配合した飼料としては、例えば、植物油油さいに粘度低下剤を加えた低粘度の植物油油さいを配合した飼料(特許文献1)や、グリース状の中和ソーダ油さいを配合した飼料(非特許文献1)等が報告されている。
しかしながら、これまで使用されてきた飼料用植物油油さいでは粘度が高いため取扱性が悪く、また水分含量が高いため飼料の変質、腐敗をもたらし、更に生産性等においても未だ十分満足のいく飼料が得られていないのが実状であった。
【特許文献1】特開昭50−51870号公報
【非特許文献1】「ブロイラー飼料に対する各種油滓添加の提供」、岡山大農学報(43)、39−46(1974)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の如き従来の問題と実状に鑑みてなされたものであり、取扱性に優れ、家畜や家禽の飼料効率を高め生産性を向上させることのできる飼料用植物油油さい、これを用いた家畜・家禽用飼料及び家畜・家禽の飼育方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、当該課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定量の水分及び脂肪酸ナトリウムを含有する飼料用植物油油さいを用いれば、家畜及び家禽の飼料要求率が向上し、飼育成績の低下、生産性の低下を防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、水分含量が3〜35質量%であり、且つ脂肪酸ナトリウム含量が5〜30質量%であることを特徴とする飼料用植物油油さいにより上記課題を解決したものである。
【0006】
また、本発明は、上記飼料用植物油油さいを含有することを特徴とする家畜・家禽用飼料により上記課題を解決したものである。
【0007】
また、本発明は、上記家畜・家禽用飼料を給与することを特徴とする家畜・家禽の飼育方法により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、家畜や家禽の飼料効率を高めることができ、優れた生産性向上効果が得られる。また、飼料を調製する際に飼料用植物油油さいを均一に混合することができ、品質の一定した飼料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の飼料用植物油油さいは、植物油の精製工程における脱酸工程で精製前の植物油原油より分離された油さいを乾燥処理し、水分含量を3〜35質量%、且つ脂肪酸ナトリウム含量を5〜30質量%の範囲に調整することにより得られる。ここに用いられる油さいには、植物油原油にリン酸と苛性ソーダを添加し、遠心分離などにより精製植物油を除いて得られるソーダ油さいと、このソーダ油さいに硫酸等を添加して中和処理することにより得られる中和油さいと、更に硫酸等を添加して得られる酸性油さいとが含まれる。
【0010】
植物油原油としては、食用油脂として使用が認められているものであれば、その原料の如何等は問わないが、例えば菜種油原油、大豆油原油、亜麻仁油原油、サフラワー油原油、胡麻油原油、米油原油、綿実油原油、ヒマワリ油原油、パーム油原油、カポック油原油等が好適なものとして挙げられる。特に菜種油原油、大豆油原油が望ましい。
【0011】
水分含量と脂肪酸ナトリウム含量を調整する油さいの乾燥方法は、特に限定されず、例えば熱風乾燥法、凍結乾燥法、噴霧乾燥法等が挙げられる。
【0012】
本発明において、飼料用植物油油さい中に含まれる水分含量が35質量%より多いと、例えばこれを飼料用原料として用いた場合、特に気温の高い時期(夏期等)に変質、腐敗し易く、他方、水分含量が3質量%より少ないと、粘度が高くなるため飼料に均一に混合し難くなり取扱性の点から好ましくない。飼料用植物油油さい中の水分含量は、3〜35質量%が好ましく、特に5〜30質量%が好ましく、更に7〜20質量%が好ましい。
【0013】
また、飼料用植物油油さい中に含まれる脂肪酸ナトリウム含量が30質量%より多いと、飼料用植物油油さいの流動性や発育成績が悪くなり、他方、脂肪酸ナトリウム含量が5質量%より少ないと、発育成績が悪くなるばかりか、飼料用植物油油さいの飼料への添加量が多くなり、飼料中の水分が増加し腐敗し易くなる。飼料用植物油油さい中の脂肪酸ナトリウム含量は、5〜30質量%が好ましく、特に10〜25質量%が好ましい。
脂肪酸ナトリウムにおける脂肪酸としては、植物油から得られる脂肪酸であるが、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれも含む。例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナンチン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。上記脂肪酸は、単一でも混合脂肪酸でもよい。
【0014】
本発明において、飼料用植物油油さい中にリンを0.2〜5質量%、好ましくは0.4〜2質量%、ナトリウムを1〜15質量%、好ましくは2〜10質量%含むように調整することにより、これを飼料用原料として用いた場合に一層生産性向上効果を高めることができる。また、エネルギーの利用性の点から、リン脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン)の含有量は、飼料用植物油油さい中に10質量%以下であることが好ましい。
【0015】
本発明において、飼料用植物油油さい中の水分、脂肪酸ナトリウム、ナトリウム、リン及びリン脂質の含有量は、以下の方法で定量することができる。
水分の測定法
「分析実務者が書いた五訂日本食品標準成分表分析マニュアルの解説」(中央法規出版株式会社、2002年7月15日初版第2刷、第12−14頁参照)に記載の乾燥助剤添加法に基づいて測定する。
【0016】
脂肪酸ナトリウムの測定法
下記の酸分解粗脂肪法とエーテル抽出水洗処理法から脂肪酸ナトリウム画分を求める。
[脂肪酸ナトリウム(質量%)]=[(1)酸分解粗脂肪法の分析値−(2)エーテル抽出水洗処理法の分析値]
(1)酸分解粗脂肪法
200mL三角フラスコに試料1gを秤量し、28%塩酸20mL、エタノール(特級)4mLを加え、80℃で10分毎に撹拌し、1時間加熱する。放冷後、エタノール(特級)16mLを加え、200mL分液ロートへ移した後、ジエチルエーテル(特級)100mLを加える(このうちの一部で、200mL三角フラスコを洗浄し、その洗液も分液ロートに加える)。脱気をしながら撹拌し、その後30分間静置し、上層A(ジエチルエーテル層)と下層(水層)に分けてそれぞれ200mL三角フラスコに移した後、200mL分液ロートを少量のジエチルエーテル(特級)で洗浄し、その洗液は上層に加える。下層を200mL分液ロートに移し、下層の入っていた200mL三角フラスコを洗いながらジエチルエーテル(特級)20mLを加え、脱気しながら撹拌し、30分静置した後、下層は廃棄し上層は上層A(ジエチルエーテル層)と混合する。その後上層Aを200mL分液ロートに移し、三角フラスコは少量のジエチルエーテル(特級)で洗浄し、その洗液は200mL分液ロートに加える。上層Aの入った200mL分液ロートに超純水30mLを加え、脱気をしながら攪拌し、2層に分かれたら下層(水層)を廃棄する操作を計5回繰り返し行った後、上層を新しい200mL三角フラスコに移す。200mL分液ロートは少量のジエチルエーテル(特級)で洗浄し、その洗液は200mL三角フラスコに加える。無水硫酸ナトリウムを固まらなくなるまで加えて脱水を行う。あらかじめ105℃で1時間乾燥し、1時間デシケーターで放冷後秤量しておいた脂肪ビンに、5Aろ紙でろ過をしながら移し、200mL三角フラスコ内の漏斗及びろ紙を少量のジエチルエーテル(特級)で洗浄し、その洗液は脂肪ビンに加える。脂肪ビンを50℃のウォーターバスで加温し、ジエチルエーテルを蒸発させ、乾燥機で105℃、2時間乾燥し、デシケーター内で1時間放冷した後に秤量する。秤量した重量から空の脂肪ビンの重量を引き、試料採取量で割って、100をかけたものを、酸分解粗脂肪の分析値とする。
【0017】
(2)エーテル抽出水洗処理法
200mL三角フラスコに試料1gを秤量し、10%塩化ナトリウム水溶液20mL、エタノール(特級)20mLを加え、200mL分液ロートへ移し、ジエチルエーテル(特級)100mLを加える(このうちの一部で、200mL三角フラスコを洗浄し、その洗液も分液ロートに加える)。脱気をしながら撹拌し、その後30分間静置し、上層A(ジエチルエーテル層)と下層(水層)に分けてそれぞれ200mL三角フラスコに移した後、200mL分液ロートを少量のジエチルエーテルで(特級)で洗浄し、その洗液は上層に加える。下層を200mL分液ロートに移し、下層の入っていた200mL三角フラスコを洗いながらジエチルエーテル(特級)20mLを加え、脱気しながら撹拌し、30分静置した後、下層は廃棄し上層は上層A(ジエチルエーテル層)と混合する。上層Aを200mL分液ロートに移し、上層Aの入っていた200mL三角フラスコは少量のジエチルエーテル(特級)で洗浄し、その洗液は200mL分液ロートに加える。その上層Aに超純水30mLを加え、脱気をしながら攪拌し、2層に分かれたら下層(水層)を廃棄する操作を計5回繰り返し行った後、上層を新しい200mL三角フラスコに移す。200mL分液ロートは少量のジエチルエーテル(特級)で洗浄し、その洗液は200mL三角フラスコに加える。無水硫酸ナトリウムを固まらなくなるまで加えて脱水を行う。あらかじめ105℃で1時間乾燥し、1時間デシケーターで放冷後秤量しておいた脂肪ビンへ、5Aろ紙でろ過をしながら移す。200mL三角フラスコ内の漏斗及びろ紙を少量のジエチルエーテル(特級)で洗浄し、その洗液は脂肪ビンに加える。脂肪ビンを50℃のウォーターバスで加温し、ジエチルエーテルを蒸発させ、乾燥機で105℃、2時間乾燥し、デシケーター内で1時間放冷した後に秤量する。秤量した重量から空の脂肪ビンの重量を引き、試料採取量で割って、100をかけたものを、エーテル抽出水洗処理法の分析値とする。
【0018】
ナトリウムの測定法
「飼料分析法・解説(2004)」(社団法人日本科学飼料協会、平成16年3月18日発行第4−16〜4−17頁参照)に記載の原子吸光光度法に基づいて測定する。
【0019】
リンの測定法
「飼料分析法・解説(2004)」(社団法人日本科学飼料協会、平成16年3月18日発行第4−9〜4−12頁参照)に記載の吸光光度法に基づいて測定する。
【0020】
リン脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン)の測定法
「日本油化学会誌」第48巻第8号(1999)第801−806頁に記載の方法を参照して下記の方法により測定する。
試料1gを共栓付き遠沈管に秤量し、クロロホルム(特級)50mLを加えてホモジナイズする。遠心分離(3,000rpm、10分、常温)後、クロロホルム層をろ過(日本ポール株式会社製 エキクロディスク 13CR 0.45μm)し、以下の条件でHPLCに供する。標準物質の面積から検量線を作成し、試料中のホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン及びホスファチジルエタノールアミンの濃度を算出する。検量線の作成:ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン及びホスファチジルエタノールアミンの標準品は大豆由来のものを用いる(Sigma Chemical社製)。標準品を16mg秤量し、クロロホルム(特級)で20mLにメスアップし、HPLCに供する。
<HPLC条件>
HPLCポンプ:日立製作所L-7100、カラムオーブン:日立製作所L-7300、オートサンプラー:日立製作所L-7250、インデグレーター:日立製作所L-7500、分離カラム:Chemco社製Chemco Pack Nucleosil50-7, 4.6i.d.x300mm、ガードカラム:Chemco社製 Chemco Pack Nucleosil50-7, 4.6i.d.x50mm、測定波長:202nm、移動相:アセトニトリル−メタノール-85%リン酸(760:100:9V/V/V)、流速:1.4mL/min、注入量:20μL、カラム温度:40℃)
【0021】
本発明の飼料用植物油油さいは、特に家畜・家禽用の飼料原料として好適に用いることができる。飼料中の飼料用植物油油さいの含有量としては、生産性、嗜好性の点から、0.5〜10質量%が好ましく、特に1〜6質量%が好ましい。
【0022】
本発明の家畜・家禽用飼料には、前記飼料用植物油油さいの他、例えば、とうもろこし、マイロ、大麦、小麦等の穀類;ふすま等の糟糠類;大豆油粕、菜種油粕等の植物性油粕類;魚粉、骨肉粉等の動物性飼料;食塩、オリゴ糖類、ケイ酸、各種ビタミン類、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等のミネラル類;アミノ酸類及び有機酸類等の飼料原料を配合することができる。
【0023】
本発明の飼料の給与は、発育を向上させ、より生産性を高める上で、例えば、鶏の場合全期間給与するのが好ましいが、少なくとも継続して14日間以上給与するのが望ましい。
【0024】
本発明の飼料を給与する家畜・家禽の種類は特に限定されず、例えば鶏、アヒル等の家禽類、牛、豚、羊等を挙げることができ、特に鶏に好適である。
【実施例】
【0025】
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
【0026】
実施例1 中和菜種油油さいの調製
菜種より夾雑物を除去した後水分を調節しながら加熱した。次いでこの菜種をエキスペラーにより圧搾した。得られた油分にヘキサンを加えて抽出し、ミセラを得た。得られたミセラに温湯を加えた後、遠心分離機にかけてガム質と油に分離して菜種原油を得た。この菜種原油に少量のリン酸を加えてガム質を分離しやすいように調整した後、カセイソーダ水溶液を加えて脱酸処理を行い、次いで遠心分離機にて菜種ソーダ油さいを分離し、これに硫酸を添加して中和した後、表1記載の水分含量及び脂肪酸ナトリウム含量になるまで乾燥して調製した。
得られた各油さいの分析結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
試験例1
チャンキー種の雄鶏100羽(10羽×2種類×5反復、1週令)を2区に分けて供試した。それぞれの区に、表2に示す飼料をバタリーケージ内において水桶流水式で21日間給餌した。飼育試験における増体重(g/羽)、食下量(g/羽)及び飼料要求率を表3に示す。
(区分)
第1区:試験区1(菜種油0%、菜種油油さい5.1%)
第2区:対照区1(菜種油4.2%、菜種油油さい0%)
【0029】


【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
表3から明らかなように、本発明の飼料を給与した試験区1は、増体重、食下量及び飼料要求率とも対照区1に比べて優れた成績を示し、良好な発育を促すことが確認された。
【0032】
試験例2
チャンキー種の雄鶏200羽(10羽×4種類×5反復、1週令)を4区に分けて供試した。それぞれの区に、表4に示す飼料をバタリーケージ内において水桶流水式で21日間給餌した。飼育試験における増体重(g/羽)、食下量(g/羽)及び飼料要求率を表5に示す。
(区分)
第3区:試験区2(菜種油2.9%、菜種油油さい1.5%)
第4区:試験区3(菜種油1.9%、菜種油油さい3.0%)
第5区:試験区4(菜種油0%、菜種油油さい5.9%)
第6区:対照区2(菜種油3.8%、菜種油油さい0%)
【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
表5から明らかなように、本発明の飼料を給与した試験区2〜4は、増体重、食下量及び飼料要求率とも対照区2に比べて優れた成績を示した。また、菜種油油さいの配合量が多い程良好な発育成績を示した。
【0036】
試験例3
ジュリア種の雌鶏150羽(10羽×3種類×5反復、35週令)を3区に分けて供試した。それぞれの区に、表6に示す飼料を2羽ずつケージ内においてニップル給水式で28日間給餌した。飼育試験における産卵率(%)、卵重(g)、日卵量(g)、食下量(g/羽/日)及び飼料要求率を表7に示し、卵黄色検査の結果を表8に示す。なお、卵黄色は、ロシュ社製93年版ヨークカラーファンを用い、測定時の光源としては(株)ケンコー社製の標準光源電球(国際標準A光源タングステン電球中心照度(1m)3,250ルクス)の1m下で目視によって検査した。
(区分)
第7区:試験区5(菜種油1.7%、菜種油油さい2.1%、Na 0.3%、P 0.51%)
第8区:試験区6(菜種油0%、菜種油油さい4.2%、Na 0.3%、P 0.51%)
第9区:対照区3(菜種油3.4%、菜種油油さい0%、Na 0.3%、P 0.51%)
【0037】


【表6】

【0038】
【表7】

【0039】
【表8】

【0040】
表7から明らかなように、本発明の飼料を給与した試験区5及び6は、産卵率、日卵量、食下量及び飼料要求率とも対照区3に比べて優れた成績を示した。また、試験区の卵は対照区の卵に比べて卵黄色が濃く、卵質の良好な産卵鶏を飼育できることが確認された。更に、Na及びPを特定量含む菜種油油さいを用いた試験区は、無機由来のNa及びPで同量に調整した対照区と比べて優れた成績を示し、良好な発育を促すことが確認された。
【0041】
実施例2
前記サンプル5を、40℃で1日間保温した後、良く攪拌し、サンプルを分取した(サンプルA)。菜種油油さいサンプルAを遠沈管250mL容器に200g分注し、対の遠沈管重量を天秤で調整し冷蔵庫で品温を10℃前後まで低下させたものを、冷却遠心分離機(BECKMAN社製J-2-21M/Ecentrifuge)を用い回転数3000rpm、温度4℃、作動時間10分間の条件で遠心分離した。分離した上層(サンプルB)の油さいは粘性が低く流動性が高いため遠沈管を傾斜することにより分離し、下層(サンプルC)の油さいはやや粘性があるため遠沈管より薬さじを用いて取り分けた。表9に各サンプルの分析結果を示す。
【0042】
【表9】

【0043】
試験例4
チャンキー種の雄鶏200羽(10羽×5種類×4反復、1週令)を5区に分けて供試した。それぞれの区に、表10に示す飼料をバタリーケージ内において水桶流水式で21日間給餌した。飼育試験における増体重(g/羽)、食下量(g/羽)及び飼料要求率を表11に示す。
(区分)
第10区:試験区7(菜種油0%、菜種油油さいA 5.1%、Na 0.4%、P 0.6%)
第11区:試験区8(菜種油0%、菜種油油さいB 4.8%、Na 0.4%、P 0.6%)
第12区:試験区9(菜種油2.6%、菜種油油さいC 2.5%、Na 0.4%、P 0.6%)
第13区:対照区4(菜種油3.9%、菜種油油さい0%、Na 0.2%、P 0.55%)
第14区:対照区5(菜種油3.9%、菜種油油さい0%、Na 0.41%、P 0.6%)
【0044】
【表10】

【0045】
【表11】

【0046】
表11から明らかなように、本発明の飼料を給与した試験区7〜9は、増体重、食下量及び飼料要求率とも対照区4及び5に比べて優れた成績を示した。また、Na及びPを特定量含む菜種油油さいを用いた試験区と、無機由来のNa及びPで同量に調整した対照区5と比べると、試験区はより優れた成績を示し、良好な発育を促すことが確認された。
【0047】
実施例3
実施例1に準じて、表12記載の水分含量及び脂肪酸ナトリウム含量を有する中和菜種油油さいを調製した。
得られたサンプル7を、60℃の恒温器で30分加温した後、良く攪拌してステンレス製ボールに移し、サンプル7(菜種油油さい)1.0Kg対して水酸化ナトリウム(両毛化学工業(株)48%溶液)0.08Kgを混合し、5〜10分攪拌してサンプルDを得た。表12及び表13に各サンプルの分析結果を示す。
【0048】
【表12】

【0049】
【表13】

【0050】
なお、本発明において、植物油油さい中のpHは、以下の方法で定量することができる。
pHの測定法
飼料用植物性油油さいのサンプル10gを秤量し、200ml共栓付三角フラスコに入れ、超純水100mlを加えて、サンプルが均一になるまで手動で震振した後、30分間震振機で震振する。震振後に10分間静置し、上澄み液を100mlビーカーに移し、スターラーで攪拌しながらpHメーターにより測定する。
【0051】
試験例5
チャンキー種の雌鶏150羽(10羽×3種類×5反復、1週令)を3区に分けて供試した。それぞれの区に、表14に示す飼料を与えバタリーケージ内において水樋流水式で21日間給餌した。飼育期間における増体重(g/羽)、食下量(g/羽)及び飼料要求率を表15に示す。
(区分)
第15区:試験区10(菜種油0%、菜種油さい5.1% [脂肪酸ナトリウム18.8%])
第16区:対照区6(菜種油0%、菜種油さい5.1% [脂肪酸ナトリウム38.5%])
第17区:対照区7(菜種油3.7%、菜種油さい0% [脂肪酸ナトリウム0.0%]
【0052】
【表14】

【0053】
【表15】

【0054】
表15から明らかなように、本発明の飼料を給餌した試験区10は、増体重及び要求率とも対照区6及び7に比べて優れた成績を示した。対照区6は、増体重及び食下量とも対照区7に比べて若干低い傾向を示した。
以上より、脂肪酸ナトリウムを特定量含む菜種油油さい(サンプル6)を給与した場合は良好な発育成績を示すが、脂肪酸ナトリウムを多く含む菜種油油さい(サンプルD)を給与した場合は、発育成績が低いことが分かった。
【0055】
実施例4
前記サンプル9を、60℃の恒温器で30分加熱した後、良く攪拌してステンレス製ボールに移し、サンプル9(菜種油油さい)1.0Kgに対して硫酸(和光純薬工業(株):一級試薬97%)0.05Kgを混合し、5〜10分攪拌してサンプルEを得た。
また、前記サンプル10を、60℃の恒温器で30分加熱した後、良く攪拌してステンレス製ボールに移し、サンプル10(菜種油油さい)1.0Kgに対して硫酸(和光純薬工業(株):一級試薬97%)0.1Kgを混合し、5〜10分攪拌してサンプルFを得た。
表16に各サンプルの分析結果を示す。
【0056】
【表16】

【0057】
試験例6
チャンキー種の雄鶏150羽(10羽×3種類×5反復、1週令)を3区に分けて供試した。それぞれの区に、表17に示す飼料を与えバタリーケージ内において水樋流水式で21日間給餌した。飼育期間における増体重(g/羽)、食下量(g/羽)及び飼料要求率を表18に示す。
(区分)
第18区:試験区11(中和菜種油さい5.0% [脂肪酸ナトリウム19.5%])
第19区:試験区12(酸性菜種油さい4.9% [脂肪酸ナトリウム5.6%])
第20区:対照区8(酸性菜種油さい4.8% [脂肪酸ナトリウム0.3%])
【0058】
【表17】

【0059】
【表18】

【0060】
表18から明らかなように、脂肪酸ナトリウムを特定量含む中和植物油油さい(サンプル8)を給与した試験区11区と、脂肪酸ナトリウムを特定量含む酸性植物油油さい(サンプルE)を給与した試験区12は、増体重、食下量、要求率においてほぼ同等の発育成績を示した。しかし、脂肪酸ナトリウムが少ない酸性植物油油さい(サンプルF)を含む対照区8は、試験区11及び12と比べて発育成績(増体重、食下量、要求率)が悪い傾向を示した。
【0061】
実施例5
菜種に代えて大豆を用いた以外は実施例1に準じて、表19記載の水分含量及び脂肪酸ナトリウム含量を有する中和大豆油油さいを調製した。表19にサンプルの分析結果を示す。
【0062】
【表19】

【0063】
試験例7
チャンキー種の雌鶏100羽(10羽×2種類×5反復、1週令)を2区に分けて供試した。それぞれの区に、表20に示す飼料を与えバタリーケージ内において水樋流水式で21日間給餌した。飼育期間における増体重(g/羽)、食下量(g/羽)及び飼料要求率を表21に示す。
(区分)
第21区:試験区13(菜種油0.0%、大豆油油さい5.2%)
第22区:対照区9(菜種油3.7%、大豆油油さい0.0%)
【0064】
【表20】

【0065】
【表21】

【0066】
表21から明らかなように、本発明の飼料を給餌した試験区13は、増体重、飼料要求率とも対照区9に比べて優れた成績を示し、良好な発育を促すことが確認された。因って、大豆油油さいにおいても菜種油油さい同様に良好な発育を促すことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を3〜35質量%及び脂肪酸ナトリウムを5〜30質量%含有することを特徴とする飼料用植物油油さい。
【請求項2】
飼料用植物油油さいがソーダ油さい、中和ソーダ油さい又は酸性ソーダ油さいである請求項1記載の飼料用植物油油さい。
【請求項3】
請求項1又は2記載の飼料用植物油油さいを含有することを特徴とする家畜・家禽用飼料。
【請求項4】
請求項3記載の家畜・家禽用飼料を給与することを特徴とする家畜・家禽の飼育方法。