説明

家禽個体管理システム

【課題】 管理者が家禽を個体管理をでき、家禽の管理方針を検討でき、その検討結果に基づいて管家禽の生産現場の作業者へ的確な指示を行うことができ、及び、家禽毎の各種情報を消費者へ適宜提供でき、もって家禽又はその卵などの生産物の安全性を管理および証明することができる家禽個体管理システムを提供すること。
【解決手段】 記憶タグに内蔵されるICタグには、複数羽の鶏を各個体毎に識別するため各鶏ごとに付与される識別コードが記憶されている。この識別コードは、各鶏ごとに異なる文字列で構成されており、この識別コードに基づいて複数羽の鶏を個体識別できる。一方、複数羽の全ての鶏1の成長過程に関する家禽管理情報は、識別コードに対応つけて家禽管理データベースに記憶され、ディスプレイ又は印刷用紙などの記録媒体を介して管理者に提示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数羽の家禽について家禽毎の成長過程に関する家禽管理情報を管理することができる家禽個体管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
家禽の一種である鶏の卵の生産現場では、生産コスト削減を図るため、多数羽の鶏の一斉飼育が行われ、飼育現場の機械化も進められている。このため、飼育現場の作業者一人当たりが飼育する鶏の羽数も増加し、作業負担が増大している。また、鶏からの採卵効率を高めるため、単位面積当たりの鶏の収容羽数も増大の傾向にあり、鶏一羽当たりの専有スペースが徐々に狭まっている。
【0003】
例えば、飼育施設の中には、飼育用ケージを複数区画に仕切ってその各区画にそれぞれ二羽から十数羽の鶏をまとめて収容することによって、数万羽から数百万羽の鶏を飼育するものもある。このため、鶏同士の間での細菌感染も発生しやすくなり、鶏の疾病発症率も増大してきている。
【0004】
また、近年、鶏飼育施設の周辺に飛来する野鳥が保有する病原菌、海外旅行者が保有する病原菌、又は、海外輸入品に混入したり付着した病原菌が、国内へ侵入するケースが増加しており、これらの病原菌が鶏に二次感染したと推測される事案も国内にて確認されている。また、現在国内で確認されている病原菌の他にも、今後、新たな病原菌に鶏が感染する可能性も多々存在している。
【0005】
そこで、鶏の生産現場においては、鶏への病原菌感染を予防するため、鶏飼育施設への入場者を制限したり、施設内への入場車両を消毒したり、施設内専用作業者を在中させたり、一羽ごと鶏にワクチン接種するなどの対策が行われている。なかでも鶏へのワクチン接種は、病原菌の感染予防法として大きな効果を奏するものであるが、鶏へ接種すべきワクチンの種類は多種多様であり、鶏が成鳥になるまでに複数回実施される。
【0006】
このような鶏へのワクチン接種は、主に、鶏の雛が産卵可能な成鳥(例えば、生後120日程度)になるまでの期間に一通り実施される。具体的には、鶏へのワクチン注射、ワクチン投与、ワクチン点眼、ワクチンのスプレー散布などが行われる。なお、成鳥となった鶏に対するワクチン接種は鶏卵の生産現場ではほとんど行われない。ワクチン接種が鶏への一種のストレスとなるため、産卵周期が乱れて生産性が低下するからである。
【0007】
また、鶏の病原菌感染または発病の判断は、現在、目視、触手、又は採血による診断方法が採られており、特に、鶏の体内に病原菌やそれに対する抗体の有無を判断する場合には、採血検査によるしか方法がない。この採血検査は、例えば、複数羽の鶏を数羽から数十羽単位の個体群(グループ)に形式上区分して、その個体群毎に代表となる一数羽の鶏を抽出して、各個体群毎に抽出された鶏について行われている。
【0008】
そして、採血検査の結果によりある個体群から抽出された鶏が病原菌に感染していなければ、その個体群に属する残りの鶏も病原菌に感染していないという判断がなされている。ところが、このような抽出検査では、採血検査を受けていない鶏の中に、鶏同士の間で感染することのないような病原菌を保有する鶏が存在すると、このような病原菌に感染した鶏を発見することができない。
【0009】
このような抽出検査がなされるのは、数万羽から数百万羽の鶏を同時に飼育する場合に、鶏毎の個体識別が現状でなされていないことに起因している。しかし、今後は、病原菌に感染した鶏がその加工肉や卵の流通過程で確認された場合、その鶏の加工肉や卵の生産者を追跡調査によって特定することが求められると共に、更に、鶏やその卵の生産段階での病原菌感染を高精度で発見することも要求されるものと考えられる。
【0010】
そこで、特開平5−268853号公報には、畜舎内のゲージ内で飼育される鶏の状況を逐次監視するために、畜舎内に監視カメラを設置して、その監視カメラにより撮影された畜舎内の鶏の映像を、管理棟内に設置されるモニターテレビで監視する装置が提案されている。この装置によれば、飼育施設内で作業する作業者は、管理棟内のモニターテレビを通じて、餌の有無、鶏の生死、鶏の発病の有無を判断することができ、少人数でも多数羽の鶏の管理が行われる。
【特許文献1】特開平5−268853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した装置では、発病したり死亡した鶏の有無を管理することはできるが、病原菌に感染した発病前の鶏をモニターテレビを通じた目視のみで発見すること極めて困難である。このため、かかる装置では、病原菌への感染を未然に防止したり、或いは、病原菌への感染を早期に発見することができないという問題点がある。そこで、複数羽の鶏を個体識別して、各個体毎にワクチン接種や採血検査結果などの各種情報を総合的に管理することが求められる。
【0012】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、複数羽の家禽について家禽毎の成長過程に関する各種情報を管理者が使用する記憶手段へ記憶して、その記憶手段に記憶される各種情報を管理者が参照することによって、管理者が家禽を個体毎に管理をでき、管理者が家禽の管理方針を検討でき、その検討結果に基づいて管理者が家禽の生産現場の作業者へ的確な指示を行うことができ、及び、管理者が家禽毎の各種情報を消費者へ適宜提供でき、もって家禽又はその卵などの生産物の安全性を管理および証明することができる家禽個体管理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、請求項1記載の家禽個体管理システムは、複数羽の家禽にそれぞれ付着可能で、家禽毎に異なる識別コードを記憶可能で、且つ、非接触方式によるデータ通信が可能な記憶タグと、その記憶タグから非接触方式により識別コードを読み取ることが可能で且つその読み取った識別コードを提示可能なリーダ手段と、そのリーダ手段により読み取られる識別コードに対応つけて家禽毎の成長過程に関する家禽管理情報を記憶する記憶手段と、その記憶手段へ識別コードに対応つけて家禽管理情報を入力する入力手段と、その入力手段により前記記憶手段へ記憶された家禽管理情報を管理者に提示する出力手段とを備えている。
【0014】
請求項2記載の家禽個体管理システムは、請求項1記載の家禽個体管理システムにおいて、前記リーダ手段によって前記記憶タグに記憶されている識別コードが読み取られた場合に、その読み取られた識別コードに対応する文字又はバーコードを記録媒体に印刷する印刷手段を備えている。
【0015】
請求項3記載の家禽個体管理システムは、請求項1又は2に記載の家禽個体管理システムにおいて、前記記憶タグは家禽の脚部の外周に捲着されている。
【0016】
請求項4記載の家禽個体管理システムは、請求項1から3のいずれかに記載の家禽個体管理システムにおいて、識別コードに対応つけて前記記憶手段に記憶される家禽管理情報は、過去に家禽へ接種されたワクチン名、そのワクチンの接種回数、家禽の病原菌感染の有無、家禽の保有する各種抗体の有無、家禽に与えられた飼料の内容、その飼料添加物の原産地名、その飼料の衛生検査データ、飲水の状況、家禽の体重値、家禽の健康状態を示す評価値、若しくは、家禽が産卵した卵の計測値に関する情報、又は、これらの情報のうち少なくとも2以上の組合せを含んでいる。
【0017】
本発明の家禽個体管理システムによれば、複数羽の家禽を一斉飼育する場合、その複数羽の家禽のそれぞれに記憶タグが付着される。ここで、請求項3記載の発明によれば、家禽の身体に記憶タグを付着する場合、記憶タグは家禽の脚部の外周に捲着される。このようにすれば、家禽に記憶タグが付着された後に、その家禽に啄まれるなどして記憶タグが破損することを抑制できる。
【0018】
また、各家禽に付着された各記憶タグにはそれぞれ異なる識別コードが記憶されており、この識別コードが複数羽の家禽の中から特定の個体を識別するための標識となる。すなわち、記憶タグを各家禽に付着することによって、複数羽の家禽にそれぞれ異なる識別コードが付与されるので、この識別コードをリーダ手段によって読み取って提示させることで家禽を個体毎に識別することが可能となる。
【0019】
例えば、病原菌感染又は抗体の有無を採血検査や検便などによって判断する場合について説明すると、まず、複数羽の家禽の中から家禽が1個体毎に取り出され、その家禽に付着された記憶タグから識別コードがリーダ手段によって読み取られて提示される。一方、識別コードが読み取られた家禽については、採血や排泄物(便)の採取がなされて、その採取された血液や排泄物が検査試料容器へ収容される。
【0020】
そして、この検査試料容器には、リーダ手段にて提示された識別コードが記入される。ここで、請求項2記載の発明によれば、リーダ手段によって家禽の識別コードが記憶タグから読み取られると、その識別コードに対応する文字又はバーコードが記録媒体に印刷手段によって印刷される。この文字又はバーコードが印刷された記録媒体が検査試料容器に貼り付けられれば、この記録媒体に印刷された識別コードを手懸りにして、複数羽の家禽の中から当該検査試料が採取された家禽を探し出すことができる。なお、バーコードはバーコード読み取り用の装置によって読み取られて提示される。
【0021】
また、このような病原菌感染又は抗体の有無に関する検査結果は、家禽の成長過程に関する家禽管理情報として記憶手段へ記憶される。ここで、請求項4記載の発明によれば、過去に家禽へ接種されたワクチン名、そのワクチンの接種回数、家禽の病原菌感染の有無、家禽の保有する各種抗体の有無、家禽に与えられた飼料の内容、その飼料添加物の原産地名、その飼料の衛生検査データ、飲水の状況、家禽の体重値、家禽の健康状態を示す評価値、若しくは、家禽が産卵した卵の計測値に関する情報、又は、これらの情報のうち少なくとも2以上の組合せが家禽管理情報として記憶手段へ記憶される。
【0022】
このような家禽管理情報は、入力手段によって識別コード毎に対応つけられて記憶手段へ記憶され、出力手段によって管理者に提示される。この提示された家禽管理情報は、管理者によって、家禽の飼育管理のための資料として利用される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の家禽個体管理システムによれば、複数羽の家禽を個体毎に識別コードに基づいて識別できるので、家禽を個体毎に管理することができるという効果がある。例えば、採血検査や検便などにより病原菌感染のある家禽の存在が確認され、その家禽がその他多数の別の家禽の中に紛れ込んだ状態で飼育されていても、各家禽に付着された記憶タグに記憶される識別コードをリーダ手段によって読み取って、採血検査により病原菌感染が確認された識別コードとを照合することによって、病原菌感染のある家禽を追跡調査して特定ができるという効果がある。
【0024】
また、家禽毎の成長過程に関する家禽管理情報は、入力手段によって識別コードに対応つけられながら記憶手段へ記憶でき、更に、出力手段によって管理者に対して提示できる。従って、管理者は、出力手段により家禽毎に家禽管理情報を提示させることによって、各家禽毎の飼育状況を確認でき、今後の管理方針を検討でき、その検討結果に基づいて管理者が家禽生産現場の作業者へ的確な指示を促すこともできるという効果がある。
【0025】
また、雛の時期から家禽に記憶タグを付着して管理しておけば、その家禽が雛から死亡されるまでの成長過程の追跡調査が可能となり、消費者からの問い合わせなどに対して、問い合わせの対象となっている家禽に関する管理情報を適宜提供できる。この結果、消費者に対して各家禽又はその卵などの生産物の安全性を証明でき、かかる生産物の信頼性の向上に寄与できるという効果がある。
【0026】
また、例えば、記憶タグに記憶された識別コードを読み取ることによって、複数羽の家禽を各個体毎に識別することができるので、各家禽をゲージに閉じ込めてゲージ毎に家禽を識別管理する必要もない。従って、複数羽の家禽、例えば、数十羽以上の家禽を一所に放し飼いにして飼育する場合であっても、各家禽を個体毎に識別して個別に飼育管理することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例である家禽個体管理システムを構成する記憶タグ10、リーダライタ(以下「R/W」という。)20、及び、プリンタ32の外観図である。
【0028】
図1に示すように、記憶タグ10は、家禽の一種である鶏1の脚部2に付着される脚環状に形成されており、鶏1の脚部2のうち踵周辺(図中では、ふ脛骨側の部分)の外周に捲着されている。ここで、図1では成鳥の鶏1に記憶タグ10を付着した状態を図示しているが、好ましくは、この記憶タグ10は、鶏1が成鳥になった後に付着されるものではなく、鶏1がワクチン接種を受け始める以前の雛の頃から付着される。これによって、鶏1が成鳥になるまでの過程で接種される複数種のワクチンの接種状況を、後述する家禽管理データベース49bによって管理できるのである。
【0029】
記憶タグ10には、マイクロ波方式などの非接触通信方式によってデータ(情報)の読み出し及び書き込みが可能なIC(集積回路)タグが内蔵されており、このICタグはRF−ID(Radio Frequency-IDentification)とも称される。なお、記憶タグ10の通信距離は、例えば、略数十cmから数mのものであれば良い。
【0030】
記憶タグ10に内蔵されるICタグには、鶏1に関する各種情報を電子情報として記憶可能であり、この電子情報には複数羽の鶏1を各個体毎に識別するため各鶏1ごとに付与される識別コードが含まれている。この識別コードは、各鶏1ごとに異なる文字(記号を含む。以下同じ。)列で構成されており、この識別コードに基づいて複数羽の鶏1の個体識別をすることができる。よって、例えば、約数万羽の鶏1を飼育する場合であっても、その各鶏1に異なる識別コードが記憶された記憶タグ10をそれぞれ付着することで、その数百万羽の鶏1を一羽ずつ個体識別できるのである。
【0031】
R/W20は、マイクロ波方式など非接触通信方式によって記憶タグ10に内蔵されるICタグと双方向通信可能に形成されており、記憶タグ10のICタグに記憶される識別コードを含む電子情報(以下「識別コード等」という。)を読み取ると共に、必要に応じて記憶タグ10のICタグに記憶される電子情報を書き込むための機器である。また、R/W20は、記憶タグ10に内蔵されるICタグと双方向通信するための携帯型の機器であって、利用者により把持される把持部20aの前面には複数のキーボタンを備えた操作パネル26が設けられている。
【0032】
この操作パネル26は、識別コード等の読取動作や、新たな識別コード等の書込み動作や、後述するプリンタ32による印刷動作など、R/W20が備える各種機能を使用する場合に操作される。また、R/W20の頭部20bにおける前面には、LCDなどのディスプレイ30も設けられており、このディスプレイ30には、記憶タグ10から読み取られた識別コード等が表示される。よって、R/W20の利用者は、ディスプレイ30に表示された識別コード等を確認することで、鶏1の識別コード等を確認することができる。
【0033】
プリンタ32は、R/W20と通信ケーブルを介して電気的に接続されている。このプリンタ32は、R/W20によって記憶タグ10から読み取られた鶏1の識別コードを、その識別コードに対応するバーコードに変換して記録媒体に印刷するための印刷装置である。例えば、鶏1とその鶏1から採取された採血や検便用排泄物などの検査試料とを対応付ける場合には、プリンタ32によって、その鶏1の識別コードに対応するバーコードが粘着ラベルの非粘着面に印刷される。
【0034】
、そして、このバーコードが印刷された粘着ラベルを、鶏1から採取された検査試料容器に貼着されると、その検査試料容器に貼付されたラベルの識別コードをバーコードリーダにより読み取ることで、その検査試料容器に収容される検査試料が採取された鶏1の識別コードを知ることができ、この識別コードから対応する鶏1を特定できる。
【0035】
図2は、記憶タグ10及びR/W20の電気的構成を示したブロック図である。図2に示すように、記憶タグ10には、主に、制御回路11と、メモリ12と、アンテナ回路13と、電源回路14と、復調回路15と、変調回路16とが設けられている。制御回路11は、R/Wユニット20からの指令を受けて記憶タグ10の動作を制御する制御装置であり、メモリ12と、復調回路15と、変調回路16とそれぞれ接続されている。
【0036】
メモリ12は、制御回路11により各種データが読み出され又は書き込まれる不揮発性の書換可能な記憶装置であり、その一部に記憶タグ10が付着される鶏1に関する識別コード等が記憶されている。アンテナ回路13は、非接触通信に用いられるアンテナであり、R/W20のアンテナ回路27からの電磁波(電波)を受信すると共に、制御回路11により読み出された識別コード等をR/W20へ送信する。
【0037】
また、電源回路14は、アンテナ回路13により受信される電磁波を受けて、記憶タグ10の各部へ電力供給するものである。更に、復調回路15は、アンテナ回路13により受信したアナログ信号をデジタル信号に復調して制御回路11へ出力するものであり、変調回路16は、制御回路11から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変調してアンテナ回路13へ出力するものである。
【0038】
R/Wユニット20には、CPU21、ROM22、RAM23、入出力回路24、電源回路25と、操作パネル26と、アンテナ回路27と、復調回路28と、変調回路29と、ディスプレイ30と、インターフェイス31とが設けられている。ここで、CPU21、ROM22及びRAM23はバスラインを介して相互に接続されている。このバスラインは、更に、入出力回路24に接続されており、この入出力回路24には、電源回路25と、操作パネル26と、アンテナ回路27と、復調回路28と、変調回路29と、ディスプレイ30と、インターフェイス31とが接続されている。
【0039】
CPU21は、R/Wユニット20の各部を制御する演算装置であり、ROM22は、このR/Wユニット20で実行される制御プログラムや各種の固定値データを格納した書換え不能な不揮発性メモリである。RAM22は、R/Wユニット20の各動作の実行時に各種のデータを一時的に記憶するための書換可能な揮発性メモリであり、記憶タグ10から読み取った識別コード等を記憶することができる。なお、R/Wユニット20には常時給電を受ける電源回路25が設けられており、この電源回路25によって各部に常時必要な電力が供給されている。
【0040】
アンテナ回路27は、非接触通信に用いられるアンテナであり、記憶タグ10のアンテナ回路13からの電磁波を受信すると共に、記憶タグ10へ送信される各種指令を送信するものである。復調回路28は、アンテナ回路27により受信した電磁波信号(アナログ信号)を識別情報等の元データ(デジタル信号)に復調するものであり、変調回路29は、記憶タグ10へ送信される各種指令などの各データ(デジタル信号)を電磁波信号(アナログ信号)に変調してアンテナ回路27へ出力するものである。インターフェイス31には、上述したプリンタ32が接続される。
【0041】
図3は、家禽管理装置40の電気的構成を示したブロック図である。図3に示すように、家禽管理装置40は、CPU41、ROM42、RAM43、入出力ポート44、キーボード45、マウス46、ディスプレイ47、ハードディスク(HD)48、及び、LANインターフェイス49が設けられたコンピュータである。
【0042】
家禽管理装置40に設けられる各部のうち、CPU41、ROM42、RAM43は、アドレスバス、データバス及び制御信号線により構成されたバスラインにより、相互に接続されている。また、入出力ポート44は、キーボード45、マウス46、ディスプレイ47、HD48、及び、LANインターフェイス49とも接続されている。
【0043】
CPU41は、ROM42に記憶されるプログラムや、HD48に記憶されているオペレーティングシステム及び各種のアプリケーションプログラムなどの制御プログラムに基づいて動作する演算装置であり、各種の情報処理を行うものである。ROM42は、CPU41を動作させる基本プログラムの他、各種のデータを記憶する書き換え不能な不揮発性メモリである。また、RAM43は、各種のデータを記憶する書き換え可能な揮発性メモリである。
【0044】
キーボード45は、HD48の家禽管理データベース48bに記憶される家禽管理情報を入力するため入力装置であり、文字情報を入力するための複数のキースイッチ(図示せず)が配列されている。また、マウス46は、キーボード45と同様の家禽管理情報を家禽管理データベース48bへ入力するための入力装置であり、ディスプレイ47に表示されるカーソルなどを操作するためのポインディングデバイスである。
【0045】
ディスプレイ47は、各種の画像情報や文字情報を表示(提示)可能なLCD又はCRT等の表示装置である。よって、鶏1を飼育管理する管理者(以下「飼育管理者」という。)は、後述する家禽管理データベース48bに記憶されている家禽管理情報をディスプレイ47に表示させて、その家禽管理情報を確認することができる。
【0046】
HD48は、書き換え可能な不揮発性の大容量記憶媒体であり、主に、CPU41によって実行される制御プログラム48aの他、家禽管理データベース48bとを備えている。家禽管理データベース48bは、複数の飼育場で飼育されている全ての鶏1の成長過程に関する情報を記憶するためのデータベースであり、このデータベース48bに記憶される家禽管理情報は、識別コードに対応つけて記憶されている。
【0047】
具体的に、家禽管理データベース48bには、各鶏1の家禽管理情報が識別コード毎に区分して記憶されており、例えば、家禽管理情報としては、識別コードに対応する鶏1へ過去に接種されたワクチン名、そのワクチンの接種年月日、そのワクチンの接種回数、その鶏1の病原菌感染の有無、その鶏1が保有する各種抗体の有無、その鶏1に与えられた試料の内容、その飼料添加物の原産地名、その飼料の衛生検査データ、その鶏1に与えられた飲水の状況、その鶏1の体重値、その鶏1の健康状態を示す評価値、及び、その鶏1が産卵した卵の計測値などが記憶されている。
【0048】
LANインターフェイス49は、LANを介してルータ50と接続され、更に、このルータ50を介してプリンタ51や専用データ回線網52と接続されている。プリンタ51は、ルータ50を介して家禽管理装置40から出力されたデータを受信して、そのデータを印刷用紙などの記録媒体へ印刷する印刷装置である。よって、飼育管理者は、家禽管理データベース50bに記憶される家禽管理情報を記録媒体へ印刷させて確認することもできる。
【0049】
専用データ回線網52には、複数の飼育場内端末53,53,53が接続されている。飼育場内端末53は、複数箇所に存在する飼育場毎にそれぞれ設置されるコンピュータであって、その飼育場内端末53が設置される飼育場で飼育されている鶏1のみに関する家禽管理情報を記憶して管理するものである。各飼育場内端末53に記憶されている家禽管理情報が更新されると、その更新後の家禽管理情報が専用データ回線網52を通じて、家禽管理装置40へ送信されて、家禽管理データベース48bの内容も逐次更新される。
【0050】
また、家禽管理装置40は、ルータ50を介してインターネット網54とも接続されており、このインターネット網54には、鶏1に与えられる飼料を供給する飼料会社にて使用されるコンピュータ55と、採血検査や検便を行う検査機関にて使用されるコンピュータ56と、鶏1の加工肉やその卵を購入する消費者にて使用されるコンピュータ57とが、それぞれ接続されている。
【0051】
家禽管理装置40の家禽管理データベース48bに記憶される飼料に関する情報は、飼料会社のコンピュータ55からインターネット網54を介して家禽管理装置40へ送信される。また、検査機関による採血検査や検便の結果は検査機関のコンピュータ56からインターネット網54を介して家禽管理装置40へ送信される。更に、家禽管理装置40は、消費者のコンピュータ57から送られてくる電子メールをインターネット網54を介して送受信可能に構成されており、電子メールにて消費者からの問い合わせを受けることができる。
【0052】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0053】
例えば、本実施例では、管理対象である家禽として鶏1を例に説明したが、管理対象である家禽は必ずしも鶏1に限定されるものではなく、その他、鴨、家鴨、鵞鳥などの家禽であっても良い。また、本実施例では、脚環状の記憶タグ10を鶏1の脚部2の踵周辺であってふ脛骨側の部分に捲着したが、記憶タグの捲着箇所は必ずしもこれに限定されるものではなく、脚部2の?蹠(ふしょ)の周囲に捲着するようにしても良い。
【0054】
また、本実施例では、記憶タグ10を脚環状に形成したが、かかる記憶タグの素材は特に限定されるものではなく、ステンレス鋼やアルミニウムなどの金属材料製またはABS樹脂やポリカーボネート樹脂などの合成樹脂材料製の成形体や、可撓性樹脂材料製のテープ状体を丸めたものであっても良い。即ち、ICタグを埋め込むことが可能で、且つ、鶏1の生存中に擦切れて鶏1の身体から脱落しないような耐摩耗性を有する素材であれば良い。
【0055】
また、本実施例では記憶タグ10を脚環状に形成して鶏1の体外に捲着したが、記憶タグ10の付着態様は必ずしもこれに限定されるものではなく、鶏1の体内へ埋め込んでも良い。更に、本実施例では、家禽管理データベース48bに記憶される家禽管理情報の具体的な例示をしたが、鶏1の健康状態を判断するためのデータならば、上記以外のデータを家禽管理データベース48bに記憶させるようにしても良い。
【0056】
また、本実施例では、プリンタ32が識別コードに対応するバーコードを印刷する装置であるものとして説明したが、かかるプリンタ32により印刷される識別コードの表示形態は必ずしもバーコードに限定されるものではなく、識別コードに対応する文字を粘着ラベルに印刷するようにしても良い。また、本実施例では、飼育場内端末53を3台として説明したが、かかる端末の数は飼育場の数に応じて適宜変更されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施例である家禽個体管理システムを構成する記憶タグ、リーダライタ及びそのリーダライタと接続されるプリンタの外観図である。
【図2】記憶タグ及びリーダライタの電気的構成を示したブロック図である。
【図3】家禽管理装置の電気的構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0058】
1 鶏(家禽)
2 脚部(鶏の脚部)
10 記憶タグ
20 リーダライタ(R/W)(リーダ装置)
32 プリンタ(印刷手段)
45 キーボード(入力手段の一部)
46 マウス(入力手段の一部)
47 ディスプレイ(出力手段の一部)
48b 家禽管理データベース(記憶手段)
51 プリンタ(出力手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数羽の家禽にそれぞれ付着可能で、家禽毎に異なる識別コードを記憶可能で、且つ、非接触方式によるデータ通信が可能な記憶タグと、
その記憶タグから非接触方式により識別コードを読み取ることが可能で且つその読み取った識別コードを提示可能なリーダ手段と、
そのリーダ手段により読み取られる識別コードに対応つけて家禽毎の成長過程に関する家禽管理情報を記憶する記憶手段と、
その記憶手段へ識別コードに対応つけて家禽管理情報を入力する入力手段と、
その入力手段により前記記憶手段へ記憶された家禽管理情報を管理者に提示する出力手段とを備えていることを特徴とする家禽個体管理システム。
【請求項2】
前記リーダ手段によって前記記憶タグに記憶されている識別コードが読み取られた場合に、その読み取られた識別コードに対応する文字又はバーコードを記録媒体に印刷する印刷手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の家禽個体管理システム。
【請求項3】
前記記憶タグは家禽の脚部の外周に捲着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の家禽個体管理システム。
【請求項4】
識別コードに対応つけて前記記憶手段に記憶される家禽管理情報は、過去に家禽へ接種されたワクチン名、そのワクチンの接種回数、家禽の病原菌感染の有無、家禽の保有する各種抗体の有無、家禽に与えられた飼料の内容、その飼料添加物の原産地名、その飼料の衛生検査データ、飲水の状況、家禽の体重値、家禽の健康状態を示す評価値、若しくは、家禽が産卵した卵の計測値に関する情報、又は、これらの情報のうち少なくとも2以上の組合せを含んでいることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の家禽個体管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−81495(P2006−81495A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271177(P2004−271177)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(392018481)株式会社ナカヤマ・エッグ (1)
【Fターム(参考)】