説明

家電製品からの有価金属回収方法

【課題】家電製品、特に小型家電製品から効率的にプリント配線板などの実装基板を回収し、レアメタル等の有価金属を回収する方法を提供する。
【解決手段】本発明の有価金属回収方法は、家電製品に衝撃を加えて破砕する破砕工程と、破砕した家電製品を篩にかけて分別する篩工程と、篩上の破砕した家電製品を磁力で磁着物と非磁着物とに選別する磁力選別工程と、前記非磁着物を渦電流選別し、金属物と非金属物とに選別する渦電流選別工程と、前記金属物と前記非金属物とをそれぞれ色彩選別し、実装基板を選別する色彩選別工程と、色彩選別工程で選別した実装基板を実装部品と基板とに分離選別し、実装部品から有価金属を回収する有価金属回収工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄された家電製品から有価金属を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、廃棄された家電製品をリサイクルすることが行われている。例えば、下記特許文献1には、予め銅線を使用している部品を解体し取り出すことなく、これら銅を高効率に回収することを目的とする、廃家電製品の再資源化処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−96261号公報
【0004】
このように、限りある資源をより効率的に利用するために資源の再生利用を図ることが望まれている。
特に、レアメタル、ベースメタル及び貴金属(以下「レアメタル等」)などの有価金属は、貴重な資源であり、地下資源に乏しい我が国にとって、その安定的確保は極めて重要であり、これらは、家電製品、特に小型家電製品に、高い濃度で集積されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
家電製品、特に小型家電製品の実装基板の実装部品にはレアメタル等の有価金属が多く含有されている。このため、レアメタル等の有価金属を回収するには、まず、実装基板を回収する必要がある。しかし、現在では、実装基板の回収は手作業で行われており、この回収作業には時間のかかるものであった。特に、小型家電製品から実装基板を効率よく回収することは困難なものであった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、家電製品、特に小型家電製品から効率的にプリント配線板などの実装基板を回収し、レアメタル等の有価金属を高品位で含む実装部品を回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の有価金属回収方法は、家電製品に衝撃を加えて破砕する破砕工程と、破砕した家電製品を篩にかけて分別する篩工程と、篩上の破砕した家電製品を磁力で磁着物と非磁着物とに選別する磁力選別工程と、前記非磁着物を渦電流選別し、金属物と非金属物とに選別する渦電流選別工程と、前記金属物と前記非金属物とをそれぞれ色彩選別し、実装基板を選別する色彩選別工程と、色彩選別工程で選別した実装基板を実装部品と基板とに分離選別し、前記実装部品から有価金属を回収する有価金属回収工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の有価金属回収方法は、家電製品、特に携帯電話などの小型家電製品から効率的に実装基板を回収し、その実装基板から有価金属を高品位で含む実装部品を回収することができるものであり、家電製品の破砕から実装部品の回収までを約30分で済ますことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態の有価金属回収方法を示したフローチャート図である。
【図2】本発明の破砕工程で用いることができるパーツセパレータ装置の一例を概略的に示した側断面図である。
【図3】本発明の破砕工程で用いることができるハンマークラッシャー装置の一例を概略的に示した側断面図である。
【図4】本発明の色彩選別工程で用いることができる色彩選別機の一例を概略的に示した斜視図である。
【図5】本発明の有価金属回収工程の一例を示したフローチャート図である。
【図6】本発明で用いることができる乾式比重選別機の原理を説明するための図である。
【図7】本発明で用いることができるジグ比重選別機の原理を説明するための図である。
【図8】本発明で用いることができる湿式薄流選別機の原理を説明するための図である。
【図9】本発明の実施例において、篩工程後の篩下分のタングステン含有量を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態の有価金属回収方法を説明する。なお、本発明の範囲は、この実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明の一実施形態の有価金属回収方法は、図1のフローチャートに示すように、家電製品に衝撃を加えて破砕する破砕工程と、破砕した家電製品を篩にかけて分別する篩工程と、篩上分を磁力で磁着物と非磁着物とに選別する磁力選別工程と、前記非磁着物を渦電流選別し、金属物と非金属物とに選別する渦電流選別工程と、前記金属物と前記非金属物とをそれぞれ色彩選別し、実装基板を選別する色彩選別工程と、色彩選別工程で選別した実装基板を実装部品と基板とに分離選別し、前記実装部品から有価金属を回収する有価金属回収工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明は、家電製品として、冷蔵庫、テレビ、洗濯機などの大型家電製品や携帯電話などの小型家電製品などを用いることができ、特にデジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレイヤー、ポータブルDVDプレイヤー、携帯ラジオ、携帯TV、ゲーム機、電子辞書、電卓、ハードディスク、携帯電話、リモコンなどの小型家電製品を用いることができ、これらから効率的に実装基板を回収し、さらに、その実装基板から実装部品を回収して有価金属を回収することができる。これらは、廃棄処分された家電製品であることが好ましい。電池を有する家電製品は、破砕工程の前に取り除いておくことが好ましい。また、家電製品はある程度手作業などで解体しておくことが好ましいが、そのまま破砕してもよい。
【0013】
破砕工程は、家電製品に衝撃を加えて破砕する工程であり、家電製品中の実装基板が単体分離するまで破砕するのが好ましい。衝撃は、ハンマー、回転羽根、鎖、ワイヤーなどのいずれかで加えることができる。
この破砕には、粗破砕機を用いることができ、粗破砕機としては、パーツセパレータやハンマークラッシャーなどの装置を用いることができる。
【0014】
パーツセパレータ1は、一軸式破砕機とも呼ばれ、図2に概略的に示すように、有底円筒状の容器2の底面中心にモータ3を設置し、モータ3に回転羽根4などを固定し、回転羽根4などが回転するようにしてある。この装置の中に家電製品を投入することにより、落下してきた家電製品と回転している回転羽根などが、衝突し家電製品を跳ね上げるなどして衝撃を加えることができる。モータの回転数を調整することにより、衝撃力を変えることができ、回転数を上げれば家電製品を細かく破砕することができる。
パーツセパレータとしては、具体的には、松下電器産業及び平田機工が共同開発した「パーツセパレータ」を用いることができ、底内で回転する回転羽根で家電製品を破砕できるものである。
破砕工程に、パーツセパレータを用いた場合は、回転羽根などの回転数を750rpm〜1500rpm、好ましくは1000rpm〜1500rpmで20秒間〜60秒間回転させ、その際の家電製品の投入量は5kg〜10kgにするのが好ましい。
携帯電話を破砕する場合は、回転羽根などの回転数を750rpm〜1000rpmで20秒間〜60秒間回転させ、投入量は2.5kg〜10kgであるのが好ましい。
【0015】
ハンマークラッシャー5は、衝撃式破砕機とも呼ばれ、図3に概略的に示すように、供給口上部のホッパーまたは供給装置により、破砕室6に均一に家電製品を投入し、高速回転しているハンマー7によって家電製品が連続的に強打されて破砕することができ、破砕物は下方のメッシュ状のスクリーン8の間隙から下に落ちるものである。
破砕室の下方に設けられたスクリーンの間隙の幅によって破砕物の粒度を調整することができる。また、スクリーンを使用せず、破砕物を篩分けして粒度を調整することもできる。
ハンマークラッシャーとしては、具体的には、増野製作所株式会社の「ハンマークラッシャー」を用いることができ、プレート型ハンマーを12列配したものであり、スクリーンのメッシュを5mm〜50mmのいずれかに設定できるものである。
破砕工程に、ハンマークラッシャーを用いた場合は、ハンマーの回転数を500rpm〜1000rpmにし、スクリーンのメッシュを17mm〜50mmに設定し、その際の家電製品の投入量は5kg〜10kgにするのが好ましい。
携帯電話を破砕する場合は、ハンマーの回転数を500rpm〜1000rpm、スクリーンのメッシュを10mm〜30mmに設定しであるのが好ましい。
【0016】
篩工程は、破砕工程で破砕した家電製品を篩にかけ選別する工程では、篩としては10mm〜50mmの篩を用いることができ、特に17mm〜30mmの篩を用いることが好ましい。この際、振動をかけて分別するのが好ましい。実装基板は主に篩上に分別される。
携帯電話を篩で分別する場合は、10mm〜20mm、特に17mmの篩で分別するのが好ましい。
【0017】
磁力選別工程は、篩工程での篩上分を、磁力にて磁着物と非磁着物とに選別する工程であり、磁着物としては、外装などの用いられている鉄、ステンレスなどを含み、非磁着物としては、銅、アルミ、プラスチックなどを含むものである。実装基板は主に非磁着物中に含まれる。
磁力選別には、磁力選別機を用いることができ、例えば、永久磁石式吊り下げ磁力選別機を用いた時は磁力を300G〜700G、好ましくは500G〜700G、ドラム型磁力選別機を用いた場合には1000G〜1500Gに設定して行うことができる。
携帯電話を選別する場合は、吊下げ式では磁力を200G〜300G、ドラム式では700G〜1500Gに設定して行うことが好ましい。
具体的には、磁力選別機としては、日本エリーズ社製「吊下げ磁選機」又は「ドラムセパレーター」を用いることができる。
【0018】
なお、篩工程での篩下分は、タングステンなどの有価金属を含有する振動子などの実装部品を多く含むものである。篩下に分別された破砕した家電製品は、篩にて分級するのが好ましい。この際、0.1mm〜10mmのいずれかの篩を単独又は複数用いて分級するのが好ましい。例えば、6mm、3mm及び1mmの3種の篩を用いて、17mm未満6mm以上、6mm未満3mm以上、3mm未満1mm以上、1mm未満に分級することが好ましい。タングステンは、17mm未満1mm以上に分級した中に比較的多く含まれている。この分級品を、従来公知の方法、例えば、住友電気工業株式会社が開発した「廃超硬工具からのタングステン等の回収技術の開発」などの方法により有価金属を回収することができる。この方法の詳細は、住友電気工業株式会社HP[URL:http://www.sei.co.jp/newsletter/2011/04/3a.html]などに記載されている。
【0019】
渦電流選別工程は、非磁着物を渦電流にて銅、アルミなどの金属とプラスチックなどの非金属に選別する工程である。実装基板はどちらにも含まれていることが多い。
渦電流選別には、渦電流選別機を用いることができ、ベルトスピード25m/min〜110m/min、ドラム回転数500rpm〜2000rpm、磁力1000G〜5000Gに設定して行うことができる。
携帯電話を選別する場合は、ベルトスピード25m/min〜35m/min、ドラム回転数900rpm〜1000rpm、磁力3000Gに設定して行うことが好ましい。
渦電流選別機としては、具体的には、大阪マグネットロール社製「アルミセパレーター」を用いることができる。
【0020】
色彩選別工程は、渦電流選別工程で選別した金属物と非金属物とをそれぞれ色彩選別し、金属物の場合は実装基板とアルミなどの金属に分別し、非金属物の場合は実装基板とプラスチック類に分別する工程である。
色彩選別には、色彩選別機を用いるのが好ましい。この色彩選別機9は、例えば、図4に概略的に示すように、渦電流工程で選別した金属物又は非金属物をコンベア10上に流し、色彩センサー11で色彩を識別し、設定した色をエアノズル12により圧縮エアで遠くに飛ばし、非設定の色は圧縮エアを発射せずに近くに飛ばして選別できるものである。色の設定は、実装基板でよく用いられる色の緑色及び茶色の少なくとも二色を設定するのが好ましい。この他にも、白色などに設定することができる。家電製品によって、設定する色は変えることが好ましく、例えば、携帯電話の実装基板を回収するには、緑色及び茶色の二色に設定するのが好ましい。
色彩選別機は、具体的には、北川鉄工所製「セレスター」を用いることができる。
【0021】
色彩選別工程を経ることにより、家電製品中の実装基板を回収することができる。実装基板の回収量は、手作業で回収した場合には本体重量に占める実装基板重量は約13〜16%であったが、機械での解体の場合には約19〜22%であった。増加分は若干の異物混入であるが、基板回収率は97%以上であるので問題ない値であると考えられる。家電製品を破砕し始めてから実装基板を得るまでに約10〜30分程度、平均約20分程度であり、手作業で回収していた場合と比べて大幅に時間を短縮することができる。
【0022】
有価金属回収工程は、色彩選別工程で選別した実装基板を、実装部品と基板とに選別し、実装部品から有価金属を回収する工程であり、例えば、図5のフローチャートに示すように、前記色彩選別工程にて選別した実装基板を、部品剥離装置に投入して基板と実装部品とに分別する分別工程と、前記実装部品を、比重選別機を使用して比重の重い重産物と比重の軽い軽産物とに選別する比重選別工程とを含むことができる。
【0023】
分別工程は、実装基板からその上に実装されている実装部品を剥離などして基板と実装部品とに分別する工程であり、例えば、実装基板を部品剥離装置に投入して破砕し、破砕した実装基板を篩分けすることにより分別することができる。部品剥離装置としては、上記したパーツセパレータなどを用いることができる。
分別工程に、パーツセパレータを用いた場合は、回転羽根などの回転数を1000rpm〜1800rpm、特に1000rpm〜1500rpmで60秒間以上、特に90〜240秒間回転させ、その際の実装基板の投入量は2.5kg〜10kg、特に4.0kg〜7.0kgにするのが好ましい。
携帯電話の実装基板を分別する場合は、回転羽根などの回転数を1000rpm〜1500rpmで100秒間〜150秒間回転させ、投入量は3kg〜7kgにするのが好ましい。
パーツセパレータとしては、上記した松下電器産業及び平田機工が共同開発した「パーツセパレータ」などを用いることができる。
【0024】
部品剥離装置で破砕された実装基板は、10mm〜25mmの網目の篩、好ましくは17mmの網目の篩で選別することにより、篩上の基板と篩下の実装部品とに分別することができる。
【0025】
比重選別工程は、分別工程で分別された実装部品を、重産物と軽産物とに選別する工程であり、この選別には比重選別機を使用するのが好ましい。重産物と軽産物とは、相対的な比重の違いを言うものであるが、大凡、重産物は嵩比重が約0.8〜2.5g/cmであり、軽産物は比重が約0.2〜0.8g/cmである。
比重選別機は、比重の違いにより実装部品を選別できるものであり、比重選別機としては乾式比重選別機(エアテーブル)、ジグ(JIG)選別機や湿式薄流選別機(ウォータナゲット)などを用いることができる。
【0026】
乾式比重選別機は、エアテーブルとも呼ばれ、振動とエアの浮力により比重の小さい軽産物と比重の大きい重産物とに選別できるものであり、より詳細に説明すると、図6に示すように、傾斜状に配した網状のデッキ上に実装部品を載せ、下側から風を送風し、網に振動を与えることにより、比重の軽い軽産物は風力により浮き上がるため振動が伝わらず、傾斜を滑り降り図5の左方から下に落ち、比重の重い重産物は風力により浮き上がらないため、振動が伝わり傾斜を昇り図5の右方から下に落ち、分別することができるものである。
乾式比重選別機としては、具体的には、原田産業株式会社の「エアテーブルSH−4」を用いることができる。
比重選別工程に、乾式比重選別機を用いた場合は、風力40m/min〜80m/min、特に50m/min〜65m/min、傾斜角度10°〜20°、特に12.5°〜14°、振動数50Hz〜75Hz、特に58Hz〜60Hzに設定するのが好ましい。
携帯電話の実装部品を選別する場合は、風力50m/min〜60m/min、傾斜角度13.5°〜14°、振動数55Hz〜65Hzに設定するのが好ましい。
【0027】
ジグ(JIG)選別機は、水の浮力により比重の小さい軽産物と比重の軽い重産物とに選別できるものであり、より詳細に説明すると、図7に示すように、水で満たした縦長の水槽に網を配し、その上に実装部品を載せ、空気を入排気させることにより、水槽内の水を上下に移動させ、比重の大きな重産物は水に早く沈み、水の上昇流で浮き上がりにくいため下方に集まり、比重の小さな軽産物は水にゆっくり沈み、水の上昇流で浮き上がりやすいため上方に集まり、分別することができるものである。
ジグ選別機としては、具体的には、日本エリーズマグネチック株式会社の「JIG試験装置RJC−150」を用いることができる。
比重選別工程に、ジグ選別機を用いた場合は、波高さを30mm〜80mm特に40mm〜60mm、振動数20Hz〜50HZ特に30Hz〜40Hzに設定するのが好ましい。
携帯電話の実装部品を選別する場合は、振動数を30Hz〜40Hz、波高さ40cm〜50cmに設定するのが好ましい。
【0028】
湿式薄流選別機は、ウォータナゲットとも呼ばれ、振動と水の流れにより比重の小さい軽産物と比重の大きい重産物とに選別できるものであり、より詳細に説明すると、図7に示すように、振動している斜面上に実装部品を載せ、上流側から水を流すと、軽産物は水流により下方に流され、重産物は斜面の振動の摩擦により上方へ押し上げられて分別することができるものである。
湿式薄流選別機としては、具体的には、三立機械工業株式会社の「WN試験装置WN−50型」を用いることができる。
比重選別工程に、湿式薄流選別機を用いた場合は、水の流速を0.1m/s〜0.5m/s、斜面の振動数を40Hz〜70Hz、特に50Hz、斜面の振幅1cm〜5cm、特に2cmに設定することが好ましい。
携帯電話の実装部品を選別する場合は、水の流速を0.1m/s〜0.5m/s、特に0.2m/s、斜面の振動数を50Hz、斜面の振幅2cmに設定することが好ましい。
【0029】
比重選別工程において、比重選別機で重産物と軽産物とに選別する前に、分別工程で分別された実装部品を、0.1mm〜10mmのいずれかの篩を単独又は複数用いて分級しておくことが好ましい。この際には、大粒品、中粒品、小粒品の3種類に分級するのが好ましい。より具体的には、実装部品を6mm及び1mmの篩を用いて6mm以上の大粒品、6mm未満1mm以上の中粒品、1mm未満の小粒品の3種類に分級するのが好ましい。
そして、大粒品の実装部品には、比重選別機として乾式比重選別機を使用し、中粒品の実装部品には比重選別機としてジグ選別機を使用し、小粒品の実装部品には比重選別機として湿式比重選別機を使用することが好ましい。
【0030】
比重選別工程で選別された重産物には、Ta、Ti、Ni、Nd、W、Ba、Pd、Sb、Nb、Biなどのレアメタル等の有価金属が高品位で含まれている。特に、実装部品の中粒品及び小粒品には、レアメタル等の有価金属が高品位で含まれている。
【0031】
さらに、重産物を、酸浸出し、残渣と溶解成分とに分別し、溶解成分を除去することにより、Taなどの品位を高めることができる。酸としては、2N以上、好ましくは3N〜6Nの塩酸などを用いることができる。酸浸出する前に、重産物を振動ミルで粉砕し、0.5mmの網目の篩で選別し、篩下分を酸浸出すると、残渣中にTaなどを高品位で含ませることができる。
【0032】
この残渣中には、Taが10〜30wt%程含まれている。他にも、Ti,Ni,Nd,W,Ba,Pd,Sb,Nb,Biなどの有価金属が高品位で含まれているものである。
【0033】
本発明の有価金属回収方法は、Ta、Ti、Ni、Nd、W、Ba、Pd、Sb、Nb、Biなどのレアメタル等の有価金属を回収することができ、特にTaの回収に好適なものである。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の有価金属回収方法の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲はこの実施例に限定されるものではない。
【0035】
(家電製品)
使用済みの家電製品として以下のものを集めた。
・デジタルカメラ
・ビデオカメラ
・音楽プレイヤー
・ポータブルDVDプレイヤー
・携帯ラジオ
・携帯TV
・ゲーム機
・電子辞書
・電卓
・ハードディスク
・携帯電話
・リモコン
【0036】
(破砕工程)
増野製作所株式会社製「ハンマークラッシャー」を用いて、上記各家電製品を破砕した。「ハンマークラッシャー」は、12列のプレート型ハンマーを有するものである。各家電製品において設定した回転数及び用いたスクリーンの目は下記表1に示す。
【0037】
(篩工程)
17mmの篩を用いて破砕した家電製品を分別した。それぞれの篩上分及び篩下分の重量は下記表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
(磁力選別工程)
日本エリーズ社製「ドラムセパレータ」を用いて、篩上分を選別した。「磁力選別機」は、磁力を1500Gに設定した。これにより、鉄及びステンレスなどの磁着物と、実装基板などを含む非磁着物とに選別された。磁着物に選別された重量を上記表1に示す。
【0040】
(渦電流選別工程)
大阪マグネットロール社製「アルミセパレータ」を用いて、非磁着物を選別した。「渦電流選別機」は、ベルトスピード28m/min、ドラム回転数2000rpm、磁力3000Gに設定した。これにより、銅、アルミなどの金属物とプラスチックなどの非金属物に選別した。金属物及び非金属物に選別された重量を上記表1に示す。
【0041】
(色彩選別工程)
北川鉄工所製「セレスター」を用いて、金属物及び非金属物をそれぞれ色彩選別した。飛ばす色の設定はそれぞれ緑色及び茶色の2色とし、これらの色を識別させて飛ばすようにした。
飛ばされた回収物を目視で確認したところ実装基板が多く含まれていた。これらの合計の重量を測定し、元の家電製品の重量に対する回収した実装基板の重量の割合を回収率とした。回収率を下記表2に示す。また、参考に実装基板を手作業で回収した場合の回収率を下記表2に示す。なお、空欄は未測定である。
【0042】
【表2】

【0043】
(篩下分)
篩工程で、篩下に分別された家電製品は、6mmの篩及び1mmの篩を用い、さらに17mm未満6mm以上、6mm未満1mm以上、1mm未満に分別し、これらのタングステンの含有量を測定した。その結果を図9に示す。なお、この測定は微粉砕後に化学成分分析により実施した。
このように、篩下に分別された家電製品には、タングステンを多く含むものであり、特に携帯電話は多くタングステンを含むものであった。
これらを、従来公知の方法、例えば、上記した「廃超硬工具からのタングステン等の回収技術の開発」などの方法により有価金属を回収することができる。
【0044】
(実装基板の回収)
上記表2に示すように、手作業と比較して、実装基板の回収率は略同じであった。本発明の方が大きい値になる場合もあるが、これは他の部品などが混入してしまったためであると思われる。手作業と比較した実装基板の回収率は平均98.5%と問題ない値であった。
ここまでの工程を終わらせるには20分ほどであり、手作業の場合と比較して回収率が略同じながらも、大幅に時間を短縮することができた。
【0045】
(分別工程)
部品剥離装置として平田機工製社製「パーツセパレータ」を用い、回収した実装基板を投入して基板と実装部品とに分別させた。部品剥離装置の回転羽根は、1500rpmで120秒間回転させ、実装基板を約5kg投入した。
部品剥離装置から実装基板を取り出し、17mmの網目の篩にかけて分別した。目視で観察したところ、篩上には基板が、篩下には実装部品が略回収されていた。これらの重量割合を下記表3に示す。なお、空欄は未測定である。
【0046】
【表3】

【0047】
(比重選別工程)
まず、分別工程で回収した実装部品を6mm及び1mmの網目の篩を使用して6mm以上の実装部品、6mm未満1mm以上の実装部品、1mm未満の実装部品の3種類に分級した。
6mm以上の実装部品は、乾式比重選別機として原田産業株式会社の「エアテーブルSH−4」を用いて、重産物と軽産物とに選別した。この際、風力50m/min、傾斜角度12.5°、振動数60Hzに設定した。
この重産物及び軽産物を、微粉砕後に成分分析をXRFを用いて分析したところ、重産物はTa、W、Nd、Nb、Bi、Ni、Au、Pdを多く含み、軽産物はプラスチックなどを多く含むものであった。
【0048】
6mm未満1mm以上の実装部品は、ジグ比重選別機として日本エリーズマグネチック株式会社の「JIG試験装置RJC−150」を用いて、重産物と軽産物とに選別した。この際、波高さを30mm、振動数30Hzに設定した。
この重産物及び軽産物を、微粉砕後にXRFを用いて成分を分析したところ、重産物はTa、Ti、Ni、Nd、W、Ba、Pd、Nb、Biを多く含み、軽産物はプラスックなどを多く含むものであった。
【0049】
1mm未満の実装部品は、湿式比重選別機として三立機械工業株式会社の「WN試験装置WN−50型」を用いて、重産物と軽産物とに選別した。この際、水の流速を0.2m/s、斜面の振動数を60Hz、斜面の振幅2cmに設定した。
この重産物及び軽産物を、微粉砕後にXRFを用いて成分を分析したところ、重産物はTa、Ti、Ni、Nd、W、Ba、Pd、Nb、Biを多く含み、軽産物はプラスックなどを多く含むものであった。
【0050】
(酸浸出)
各廃家電製品から選別された6mm未満1mm以上の実装部品及び1mm未満の実装部品の重産物を、混合し、振動ミルで微粉砕し、0.5mmの篩を用いて分別した。篩下分を酸浸出し、溶解成分を除去して残渣の成分をXRFで分析した。酸浸出は、6Nの塩酸を用い、液温80℃、反応時間8hrとした。残渣の成分の分析結果を下記表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
(結果)
上記表4に示すように残渣中にはTaが18.1wt%と高品位で含まれるものであった。Ta以外にもTi,Ni,Nd,W,Ba,Pd,Sb,Nb,Biなどが高品位で含まれているものであった。
本発明は、廃家電製品から有価金属を効率的に回収することができた。家電製品を粗破砕機に投入してから重産物を得るまでには約120分であり、手作業の場合と比較して、大幅に時間を短縮することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家電製品に衝撃を加えて破砕する破砕工程と、破砕した家電製品を篩にかけて選別する篩工程と、前記篩工程における篩上の破砕した家電製品を磁力で磁着物と非磁着物とに選別する磁力選別工程と、前記非磁着物を渦電流選別し、金属物と非金属物とに選別する渦電流工程と、前記金属物と前記非金属物とをそれぞれ色彩選別し、有価金属を含有する実装基板を選別する色彩選別工程と、色彩選別工程で選別した実装基板を実装部品と基板とに分離選別し、前記実装部品から有価金属を回収する有価金属回収工程と、を含む有価金属回収方法。
【請求項2】
前記破砕工程は、衝撃を、ハンマー、羽根、鎖のいずれかで加える請求項1に記載の回収方法。
【請求項3】
前記篩工程は、5mm〜50mmの篩で分別する請求項1又は2に記載の回収方法。
【請求項4】
前記色彩選別工程は、色彩選別機を用いて緑色及び茶色の少なくとも二色とその他の色とに選別する請求項1〜3のいずれかに記載の回収方法。
【請求項5】
前記篩工程の篩下の破砕した家電製品からタングステンを回収する請求項1〜4のいずれかに記載の回収方法。
【請求項6】
前記有価金属回収工程は、前記色彩選別工程にて選別した実装基板を、基板と実装部品とに分別する分別工程と、前記実装部品を、比重の重い重産物と比重の軽い軽産物とに選別する比重選別工程とを含む請求項1〜5のいずれかに記載の回収方法。
【請求項7】
前記分別工程において、前記実装基板をパーツセパレータ装置に投入して分別させ、この装置は、回転羽根を1000〜1800rpmで60秒以上回転させる請求項6に記載の回収方法。
【請求項8】
前記比重選別工程において、前記実装部品を少なくとも3種類以上に分級してから比重選別機を使用して重産物と軽産物とに選別する請求項6又は7に記載の回収方法。
【請求項9】
前記比重選別機として、乾式比重選別機、ジグ選別機、湿式薄流選別機、遠心分離機のいずれか少なくとも1種を使用して重産物と軽産物とに選別する請求項8に記載の回収方法。
【請求項10】
前記比重選別工程において、前記実装部品を大粒品、中粒品、小粒品の3種類に分級し、大粒品の前記実装部品には乾式比重選別機またはジグ選別機を使用して選別し、中粒品の前記実装部品には、乾式比重選別機またはジグ選別機を使用して選別し、小粒品の前記実装部品には湿式薄流選別機を使用して選別する請求項6〜9のいずれかに記載の回収方法。
【請求項11】
前記比重選別工程において、前記乾式比重選別機は、風力40m/min〜80m/min、傾斜角度10°〜20°、振動数50Hz〜75Hzに設定する請求項9又は10に記載の回収方法。
【請求項12】
前記比重選別工程において、前記ジグ選別機は、振動数20Hz〜50Hz、波高さ30mm〜80mmに設定する請求項9〜11のいずれかに記載の回収方法。
【請求項13】
前記比重選別工程において、前記湿式薄流選別機は、流速0.1m/s〜0.5m/s、振動数40Hz〜70Hz、振幅1cm〜5cmに設定する請求項9〜12のいずれかに記載の回収方法。
【請求項14】
前記比重選別工程において、前記重産物を酸浸出し、溶解成分を除去してTaを回収する請求項9〜13のいずれかに記載の回収方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−685(P2013−685A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135541(P2011−135541)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省資源型・環境調和型資源循環プロジェクト」委託研究、産業技術強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【出願人】(000005913)三井物産株式会社 (37)
【出願人】(511068740)財団法人福岡県環境保全公社 (2)
【Fターム(参考)】