説明

容器入り冷凍スフレ、およびその解凍方法

【課題】
特殊な技術を使用せず、熟練された技術がなくとも、スフレを大量生産、安定生産することが出来、且つ、洋菓子店と同様の適度な生地表面の焼き色と膨らんだ外観、ふっくらとしたホットな焼き立ての食感と良好な風味を有した冷凍スフレを提供する。
【解決手段】
内側面に縦線の溝を施し、内面が樹脂加工された紙製、シリコン製、または、耐熱性プラスチック製の容器入り冷凍スフレであり、この冷凍スフレを該容器から取り出し、ココット容器に移し替えた後、マイクロウェーブ加熱、もしくは、オーブン加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入り冷凍スフレ、およびその解凍方法に関するものであり、詳しくは、大量生産、安定生産、保管、流通が可能であり、且つ、スフレ専門店と同様の品質を提供することが出来る容器入り冷凍スフレとその解凍方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スフレとは、ベースにカスタードソース、クリームソース、ベシャメルソース、モルネーソース、ピュレ等のクリームを使い、メレンゲ(さらに必要に応じて卵黄)を加えてオーブン等で焼きあげることでふわりとした食感をもたせた食品である。デザートにする場合にはカスタードソース等をベースに、必要に応じチーズ・チョコレート・レモンなどを加え、甘いケーキとして、主菜とする場合には、甘くないクリームソース等をベースに供される。
【0003】
生地表面に適度な焼き色がついており、容器よりもスフレ生地が上部に膨らんでいることとふっくらとした食感があり、かつ、ホットなうちに食すると美味な点を特徴としている(非特許文献1、非特許文献2)。
オーブン等で加熱直後のスフレは容器から高くはみ出すほど膨らんでいてふわふわと軽いが、その後20〜30分でしぼんで小さくなってしまうため、通常は焼きたてをすぐに喫食する。
【0004】
クリームとメレンゲを混合してスフレ生地を調整するが、クリームの調整に手間がかかることや、メレンゲの気泡状態が非常に不安定であり、生地の調製に熟練を要する。更に、生地の作り置きや冷凍保管、冷蔵保管が困難であることから、オーダー毎に生地を調整し、焼成することが可能な洋菓子店やレストラン等での提供に限られている。
【0005】
工業的な製造法として、特許文献1では、ホットスフレの製造方法が示されており、スフレ生地を1次焼成後に凍結し、解凍時に2次焼成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−298933号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】スフレ・シュクレ&スフレ・サレ3頁
【非特許文献2】non.noお菓子基本大百科330頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この方法において得られる2次焼成後の品質は十分でなく、生産性も良好でない。更に、スフレ生地が油っぽい、底面に生地がくっつく、取出しにくい、等の課題もあり、且つ、容器上面よりスフレ生地が出ていることで、冷凍保管中、及び、輸送中のスフレ生地天面の形状と焼き色を良好に保つことが出来ないなどの課題を有していた。
【0009】
また、スフレ生地を冷凍保管・輸送時の容器から喫食時の容器に移し替えることにより、スフレ生地は焼成後にしぼみ、又、しぼんだ時の形状が一定でない。更に、焼成容器からスフレ生地を取出しにくい、スフレ生地が底面にくっつく、スフレ生地が油っぽい、等の課題も挙げられている。
【0010】
よって、本発明は、特殊な技術を使用せず、熟練された技術がなくとも、スフレを大量生産、安定生産することが出来、且つ、洋菓子店やレストラン等と同様の適度な生地表面の焼き色と膨らんだ外観、ふっくらとしたホットな焼き立ての食感と良好な風味を有した冷凍スフレを提供することを目的とする。
【0011】
また、スフレ生地は焼成後にしぼまず、焼成容器からスフレ生地を取出しやすく、スフレ生地が底面にくっつかず、スフレ生地が油っぽくない等の特徴を有する冷凍スフレを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、形状に関して、冷凍保管・輸送中の容器と喫食時の容器を別々にすることで、スフレ生地天面の形状と焼き色を良好に保つことを見出した。
【0013】
更に、スフレ生地を輸送中の容器から喫食時の容器に移し替えるということで、スフレ生地は焼成後にしぼむことが特性であり、しぼんだ時の形状が一定でないという課題が生じた。また、焼成容器からスフレ生地を取出しにくい、スフレ生地が底面にくっつく、スフレ生地が油っぽい、等の課題が挙げられる。
【0014】
これらの課題の解決策として、焼成後の形状安定化については、容器上面にカールをつけることで、容器淵へのひっかかりがなく、均一にしぼむようになり、形状を安定することができることを見出した。
【0015】
即ち、本発明は、内側面に縦線の溝を施し、内面が樹脂加工された紙製、シリコン製、または、耐熱性プラスチック製の容器入り冷凍スフレであり、この冷凍スフレを該容器から取り出し、ココット容器等の別の容器に移し替えた後、マイクロウェーブ加熱、もしくは、オーブン加熱することを特徴とする容器入り冷凍スフレ及びその解凍方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、大量生産、安定生産、保管、流通が可能であり、尚且つ、容易にスフレ専門店と同様の品質を簡便に提供することが出来るようになった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の詳細は以下の通りである。
1)内側面に縦線の溝を施し、内面が樹脂加工された紙製、シリコン製、または、耐熱性プラスチック製の容器入り冷凍スフレ。
2)紙製容器の上部がカール加工されていることを特徴とする1)に記載の容器入り冷凍スフレ。
3)紙製容器の内面に油脂が塗布されていることを特徴とする1)に記載の容器入り冷凍スフレ。
4)上記1)に記載の冷凍スフレを該容器から取り出し、別の容器に移し替えた後、マイクロウェーブ加熱、もしくは、オーブン加熱することを特徴とする容器入り冷凍スフレの解凍方法。
【0018】
本発明で冷凍保管および輸送時に使用する容器は、喫食の際の加熱または解凍時に容器を移し替えるので、材質は、取出し易く、軟らかい、紙、シリコン、もしくは、耐熱プラスチックを用いる。耐熱性プラスチックとしては、TPX(ポリメチルペンテン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEI(ポリエーテルイミド)、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル、ナイロン、(PBT)ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0019】
また、紙製容器、シリコン製容器、耐熱性プラスティク容器の内面を樹脂加工されたものが本発明において用いられる。樹脂としては上記プラスチックに加え、シリコン、ポリテトラフルオロエチレン(登録商標「テフロン」)等の利用が可能である。更に、容器の内側面に縦線の溝を施すことが必要である。内側面の縦線の溝の深さは、0.01mm〜0.1mm程度あれば良い。
【0020】
容器、特に紙製容器を用いる場合は、上部がカール加工されたものを用いた方がよい。また、容器の内側面への油脂塗布は、容器とスフレ生地の摩擦を小さくし、スフレ生地を均等に上方向に膨張させることができるメリットがある反面、焼成後においては不要なものであり、容器の内側面に残ると油っぽさの原因となる。しかし、容器の内側面に縦線を入れることで、容器とスフレ生地に一定の空間を作り、油脂を底面へ導くことが出来、油っぽさを低減することができる。
【0021】
また、油が底面に落ちることにより、底面と生地の剥離性が向上し、冷凍スフレ特有の紙容器からの取出し易さが改善できる。好ましくは、底面にも格子状の線を入れることで、より油っぽさと容器からの取出し易さが改善できる。
【0022】
こうすることで、塗布する油脂量にバラツキがあっても、余分な油脂は底面に溜まる為、安定した品質を再現出来るようになり、工業的な安定性が得られるようになった。
【0023】
喫食時に使用する容器は、マイクロウェーブ加熱に対し耐性を有する容器、もしくは、オーブン加熱に対し耐性を有する容器であれば良く、例えば、ココット容器等が用いられる。
【0024】
尚、解凍はマイクロウェーブ加熱でも、オーブン加熱でも構わない。解凍の条件は特に拘るものではなく、通常の条件を用いればよい。また、解凍したスフレは家庭内で食しても良いが、商業的に販売しても構わないことは言うまでもない。以下、本発明を実施例に基づき説明する。勿論、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
以下の配合及び工程でスフレを作製した。
ボウルに卵黄30g、砂糖30gを入れホイッパーで混ぜ、白っぽくなったら薄力粉8gを一度に加えて滑らかに混ぜた。牛乳105gを火にかけ、鍋の淵がふつふつしてきたら、先程のボウルに加えた。良く混ぜたら、濃し器を通しながら鍋に戻し、弱火にかけ、木べらの跡が残るくらいまで混ぜながら煮詰めた。
【0026】
次に、火から下ろし、バター10gを加えて混ぜ、ボウルに戻した。別のボウルに卵白105g、砂糖150gを入れホイッパーで混ぜ、比重0.22のメレンゲを作製した。これらをムラなく混合し、最終比重0.47のスフレ生地を作製した。これを、内側面に油脂を塗布した紙容器に充填し、オーブン上火170℃、下火150℃、11分間焼成した。
【0027】
更に、凍結した後、紙容器から取り出し、ココット容器に移し替えた後、電子レンジで500W、40秒解凍した。
【0028】
尚、容器として、紙、プラスチック、金属、シリコンを用いた場合、容器の淵にカールがある場合とない場合、容器内面を樹脂加工した場合としない場合、容器の内側面に縦線を施した場合としない場合、底面に格子加工をした場合としない場合、油脂を少量塗布した場合と多量塗布した場合、内側面のみに塗布した場合と全面に塗布した場合、で、焼成後の形状、取出しいさ、底面の剥離性、油っぽさ、総合評価を、◎:とても良好、○良好、△:やや良好、×:不良 として評価した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側面に縦線の溝を施し、内面が樹脂加工された紙製、シリコン製、または、耐熱性プラスチック製の容器入り冷凍スフレ。
【請求項2】
紙製容器の上部がカール加工されていることを特徴とする請求項1に記載の容器入り冷凍スフレ。
【請求項3】
紙製容器の内面に油脂が塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の容器入り冷凍スフレ。
【請求項4】
請求項1に記載の容器入り冷凍スフレを該容器から取り出し、別の容器に移し替えた後、マイクロウェーブ加熱、もしくは、オーブン加熱することを特徴とする容器入り冷凍スフレの解凍方法。