説明

密封装置

【課題】機内油の漏洩を防止すると共に機外Aからの泥水の浸入を防止する密封装置1において、耐油性及び耐泥水性の双方を満足した構造とする。
【解決手段】第一の金属環11に対油シールリップ13が一体に成形されると共に前記第一の金属環11に機外A側に面して第二の金属環15が密接嵌合され静止側2に取り付けられるオイルシール10と、このオイルシール10の機外A側に位置して回転側3に取り付けられるダストカバー20と、前記第二の金属環15及びダストカバー20のうちの一方に一体に成形されると共に前記第二の金属環15及びダストカバー20のうちの他方に摺動可能に密接される対泥水シールリップ16を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のトランスファー装置やトランスミッション、デファレンシャルギヤなど、機外からの泥水等に曝されやすい部分の軸周等を密封する密封装置であって、特に、回転側のダストカバーに密接させた対泥水シールリップによって、対油シールリップ側への泥水の浸入を防止する構造を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
機外からの泥水等に曝されやすい部分の軸周等を密封する密封装置として、従来から、図7に示すようなものが知られている。
【0003】
図7において、参照符号2は車両のトランスファー装置等のハウジング、参照符号3は前記ハウジング2に挿通された回転軸である。密封装置100は、ハウジング2の内周に取り付けられた非回転のオイルシール110と、このオイルシール110の軸方向外側に位置して回転軸3の外周に取り付けられ、回転軸3と一体に回転される金属製のダストカバー120を備える。
【0004】
詳しくは、オイルシール110は、機内を向いて延びる対油シールリップ111と、この対油シールリップ111と反対側(外側)を向いて延びる対泥水シールリップ112を有する。対油シールリップ111は、回転軸3の外周面に摺動可能に密接されることによって機内油の漏洩を防止するものであり、対泥水シールリップ112は、ダストカバー120のフランジ部121に摺動可能に密接されることによって、機外Aから飛来する泥水等が、対油シールリップ111側へ浸入するのを抑制するものであり、ダストカバー120自体も、そのフランジ部121に生じる遠心力による振り切り作用を有し、更にその外径に形成された外筒部122をハウジング2の端部外周面に近接させることによって、泥水等の浸入に対する抑制効果の向上を図っている(例えば下記の特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−103209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の密封装置において、一層優れた耐泥水性能を求められる場合は、対泥水シールリップの枚数を増やすことが考えられるが、その場合、摺動トルクによるエネルギ損失が増大してしまうといった問題も指摘される。
【0007】
また、オイルシール110のゴム部の材料としては、一般に、耐油性及び耐熱性を考慮してアクリル系ゴム(以下、ACMという)が使用されるが、ACMは、水に対しては膨潤により軟化するので、過酷な泥水環境では、対泥水シールリップ112の十分な耐泥水性が確保できないといった問題がある。
【0008】
これに対し、オイルシール110のゴム部の材料として、耐泥水性に優れたニトリル系ゴム(以下、NBRという)や水素添加ニトリルゴム(以下、H−NBRという)を使用することで耐泥水性の向上を図った場合には、これらNBRあるいはH−NBRは耐油性及び耐熱性がACMよりも劣るため、対油シールリップ111の耐久性が低下してしまうといった問題がある。
【0009】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、機内油の漏洩を防止すると共に機外からの泥水の浸入を防止する密封装置において、耐油性及び耐泥水性の双方を満足した構造とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る密封装置は、第一の金属環に対油シールリップが一体に成形されると共に前記第一の金属環に機外側に面して第二の金属環が密接嵌合され静止側に取り付けられるオイルシールと、このオイルシールの機外側に位置して回転側に取り付けられるダストカバーと、前記第二の金属環及びダストカバーのうちの一方に一体に成形されると共に前記第二の金属環及びダストカバーのうちの他方に摺動可能に密接される対泥水シールリップを備えるものである。
【0011】
上記構成によれば、対油シールリップ及び対泥水シールリップが別々に成形されるものであるため、対油シールリップには耐油性に優れたゴム材料(例えばACM)を使用し、対泥水シールリップには耐泥水性に優れたゴム材料(例えばNBRやH−NBR)を使用することができる。
【0012】
請求項2の発明に係る密封装置は、請求項1に記載された構成において、第二の金属環及びダストカバーのうちの他方が、低摩擦材からなるものである。
【0013】
上記構成によれば、例えば対泥水シールリップを複数設けても、その摺動相手が低摩擦材からなるため、摺動トルクによるエネルギ損失の増大が抑制される。このため対泥水シールリップを耐泥水性に優れたゴム材料にしなくても、複数設けることで耐泥水性を確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る密封装置によれば、対油シールリップにおける耐油性及び対泥水シールリップにおける耐泥水性の双方を満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る密封装置の第一の実施の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す未装着状態の半断面図である。
【図2】本発明に係る密封装置の第一の実施の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す装着状態の半断面図である。
【図3】本発明に係る密封装置の第二の実施の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す未装着状態の半断面図である。
【図4】本発明に係る密封装置の第二の実施の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す装着状態の半断面図である。
【図5】本発明に係る密封装置の第三の実施の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す未装着状態の半断面図である。
【図6】本発明に係る密封装置の第三の実施の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す装着状態の半断面図である。
【図7】従来の技術に係る密封装置の一例を、その軸心を通る平面で切断して示す装着状態の半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る密封装置の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1及び図2は第一の実施の形態を示すものである。
【0017】
図2において、参照符号2は非回転のハウジング、参照符号3は前記ハウジング2に挿通され軸心の周りに回転可能な回転軸、参照符号1は本発明に係る密封装置で、ハウジング2の開口端部2aの内周面に取り付けられたオイルシール10と、回転軸3の外周面に前記オイルシール10の機外A側に位置して取り付けられたダストカバー20を備える。なお、ハウジング2は請求項1に記載された静止側、回転軸3は請求項1に記載された回転側に相当する。
【0018】
オイルシール10は、第一の金属環11にゴム材料で一体に成形された外周シール部12、対油シールリップ13及びダストリップ14と、前記第一の金属環11に機外A側に面して密接嵌合された第二の金属環15と、この第二の金属環15にゴム材料で一体に成形された対泥水シールリップ16を備えるものである。
【0019】
詳しくは、オイルシール10における第一の金属環11は例えば金属板を打ち抜きプレス成形することにより製作されたものであって、ハウジング2の開口端部2aの内周面に圧入嵌着される圧入筒部11aと、そこから機内B側へ向けて漸次小径になるように延びる外周シール保持部11bと、そこから機内Bと反対側へ向けて折り返された内周筒部11cと、この内周筒部11cの端部から内径側へ屈曲した内径フランジ部11dと、前記圧入筒部11aの機外A側の端部から外径側へ延びる外径フランジ部11eと、さらにその外径端部からハウジング2と反対側へ屈曲して延びる外周筒部11fからなる。
【0020】
オイルシール10における外周シール部12、対油シールリップ13及びダストリップ14は耐油性及び耐熱性に優れたゴム材料、例えばACMからなるものである。そしてこのうち、外周シール部12は第一の金属環11の外周シール保持部11bの外周面に加硫接着されていて、ハウジング2の開口端部2aの内周面に圧入嵌着されるものであり、対油シールリップ13は、その根元が第一の金属環11の内径フランジ部11dに加硫接着されていて、機内B側へ延び、先端近傍の内径エッジ部13aが回転軸3の外周面に摺動可能に密接されるものであり、ダストリップ14は、その根元が対油シールリップ13の根元から分岐していて、この対油シールリップ13と反対側へ延び、先端が回転軸3の外周面に摺動可能に密接されるものである。対油シールリップ13にはその緊迫力及び径方向追随性を補償するガータスプリング17が装着されている。
【0021】
オイルシール10における第二の金属環15は例えば金属板を打ち抜きプレス成形することにより製作されたものであって、第一の金属環11の外周筒部11fの内周面に圧入嵌着された外周筒部15aと、この外周筒部15aから内径側へ延びて外径部が第一の金属環11の外径フランジ部11eと密接されたフランジ部15bからなる。なお、第一の金属環11の外周筒部11fの先端は内径側へカシメられ、これによって第二の金属環15の外周筒部15aの先端部をしっかり固定している。
【0022】
オイルシール10における対泥水シールリップ16は、耐泥水性に優れたゴム材料、例えばNBR又はH−NBRからなるものであって、その根元が第二の金属環15のフランジ部15bの内径部に加硫接着されており、図1に示す未装着状態では、対油シールリップ13と反対側へ向けて漸次大径となる円錐筒状に延びている。
【0023】
ダストカバー20は例えば金属板を打ち抜きプレス成形することにより製作されたものであって、回転軸3の外周面に圧入嵌着される内径筒部20aと、この内径筒部20aから外径方向へ円盤状に展開し、図2に示す装着状態においてオイルシール10における対泥水シールリップ16が適当に湾曲変形された状態で摺動可能に密接されるシールフランジ部20bと、更にその外径端部から図2の装着状態におけるハウジング2の開口端部2aの外周側へ向けて、オイルシール10における第一の金属環11の外周筒部11fの外周側を包囲するように延びる外周筒部20cからなる。
【0024】
以上のように構成された第一の形態の密封装置1において、オイルシール10は、第一の金属環11の圧入筒部11aを外周シール部12と共にハウジング2の開口端部2aの内周面に圧入し、前記第一の金属環11の外径フランジ部11eを前記開口端部2aの先端に当接させることによって、ハウジング2に位置決め固定する。また、ダストカバー20は、その内径筒部20aを回転軸3の外周面に圧入嵌着すると共に、シールフランジ部20bを回転軸3のフランジ部に当接させることによって位置決め固定し、図示の装着状態とする。
【0025】
オイルシール10の対油シールリップ13は、回転軸3の外周面に摺動可能に密接されることによって、機内油が機外Aへ漏洩するのを防止するものである。
【0026】
一方、ダストカバー20の外周筒部20cが対泥水シールリップ16の外周側を覆うように延びているので、機外Aから飛来する泥水等が対泥水シールリップ16の近傍へ入りにくい構造となっており、また、オイルシール10の対泥水シールリップ16は、回転軸3と一体に回転されるダストカバー20のシールフランジ部20bと密接摺動されることによって、内周側への泥水等の浸入を阻止するものであり、遠心力によるシールフランジ部20bの振り切り作用も、内周側への泥水等の浸入防止に有効に作用する。オイルシール10のダストリップ14は、対泥水シールリップ16の内周側で、回転軸3の外周面に摺動可能に密接されることによって、対油シールリップ13側への泥水等の浸入を阻止するものである。
【0027】
そして上記構成によれば、第一の金属環11と一体の外周シール部12、対油シールリップ13及びダストリップ14と、第二の金属環15と一体の対泥水シールリップ16が別々に成形されるものであるため、対油シールリップ13には耐油性及び耐熱性に優れたACMなどのゴム材料を使用し、対泥水シールリップ16には耐泥水性に優れたNBR又はH−NBRなどのゴム材料を使用することができるので、対泥水シールリップ16を複数設けることなく、耐油性及び耐泥水性の双方を満足させることができる。
【0028】
なお、対油シールリップ13がACMからなるものである場合、対泥水シールリップ16はフッ素系ゴム(FKM)からなるものとすることや、あるいは対油シールリップ13をFKMとし、対泥水シールリップ16をNBRからなるものとすることなど、使用条件に応じて種々の材質の組み合わせを採用することができる。
【0029】
次に図3及び図4は、本発明に係る密封装置の第二の実施の形態を示すものである。
【0030】
この第二の実施の形態も、基本的には上述した第一の実施の形態と同様の構成を備えるものであって、オイルシール10における第一の金属環11には図1及び図2における外径フランジ部11e及び外周筒部11fが存在せず、第二の金属環15の外周筒部15aが第一の金属環11の圧入筒部11aの内周面に圧入嵌着されている点、及びダストカバー20のシールフランジ部20bの外径部がハウジング2の開口端部2aに近接すると共にダストカバー20の外周筒部20cが前記開口端部2aの外周を包囲するように延びている点で第一の実施の形態と相違するものである。
【0031】
この構成によれば、対泥水シールリップ16の外周側ではハウジング2の開口端部2aとダストカバー20のシールフランジ部20b及び外周筒部20cの間にラビリンス状の隙間Lが形成されるので、ラビリンスシール作用によって、機外Aから飛来する泥水等が対泥水シールリップ16側へ一層浸入しにくいものとなる。
【0032】
さらに図5及び図6は、本発明に係る密封装置の第三の実施の形態を示すものである。
【0033】
この第三の実施の形態において、オイルシール10は、第一の金属環11にゴム材料で一体に成形された外周シール部12、対油シールリップ13、ダストリップ14及び泥水受け18と、前記第一の金属環11に機外A側に面して密接嵌合された第二の金属環15を備えるものである。
【0034】
詳しくは、オイルシール10における第一の金属環11は第一の実施の形態と同様、ハウジング2の開口端部2aの内周面に圧入嵌着される圧入筒部11aと、そこから機内B側へ向けて漸次小径になるように延びる外周シール保持部11bと、そこから機内Bと反対側へ向けて折り返された内周筒部11cと、この内周筒部11cの端部から内径側へ屈曲した内径フランジ部11dと、前記圧入筒部11aの機外A側の端部から外径側へ延びる外径フランジ部11eと、さらにその外径端部から図6の装着状態においてハウジング2と反対側へ屈曲して延びる外周筒部11fからなる。
【0035】
オイルシール10における外周シール部12は第一の金属環11の外周シール保持部11bの外周面に加硫接着されていて、ハウジング2の開口端部2aの内周面に圧入嵌着されるものであり、対油シールリップ13は、その根元が第一の金属環11の内径フランジ部11dに加硫接着されていて、機内B側へ延び、先端近傍の内径エッジ部13aが回転軸3の外周面に摺動可能に密接されるものであり、ダストリップ14は、その根元が対油シールリップ13の根元から分岐していて、この対油シールリップ13と反対側へ延び、先端が回転軸3の外周面に摺動可能に密接されるものであり、泥水受け18は、ダストリップ14の外周側に位置して、根元が第一の金属環11の内径フランジ部11dに加硫接着され、対油シールリップ13と反対側へ向けて漸次大径となる形状に突出したものである。対油シールリップ13にはその緊迫力及び径方向追随性を補償するガータスプリング17が装着されている。
【0036】
第二の金属環15は第一の金属環11と反対側の面をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やカーボンなどの固体潤滑材料をコーティングした金属板や鏡面加工した金属板などの低摩擦材で製作されたものであって、第一の金属環11の外周筒部11fの内周面に圧入嵌着により一体化された外周筒部15aと、この外周筒部15aから内径側へ延びて外径部が第一の金属環11の外径フランジ部11eと密接されたフランジ部15bからなる。
【0037】
ダストカバー20は例えば金属板を打ち抜きプレス成形することにより製作されたものであって、回転軸3の外周面に圧入嵌着される内径筒部20aと、この内径筒部20aから外径方向へ円盤状に展開した内径フランジ部20dと、その外径部からオイルシール10における第二の金属環15の外周筒部15aの内周空間へ向けて凸形状となるように折り返された折り返し部20eと、この折り返し部20eから外径方向へ円盤状に展開した外径フランジ部20fと、更にその外径端部から図6の装着状態におけるハウジング2の開口端部2aの外周側へ向けて、オイルシール10における第一の金属環11の外周筒部11fの外周側を包囲するように延びる外周筒部20cからなる。
【0038】
ダストカバー20には、オイルシール10側を向いた面にゴム材料からなる二段の対泥水シールリップ21,22が一体に成形されている。また、この対泥水シールリップ21,22の根元から延びるゴム層23が、前記ダストカバー20のオイルシール10側を向いた面のほぼ全面を覆うように加硫接着されている。
【0039】
二段の対泥水シールリップ21,22のうち、内周側の対泥水シールリップ21は、その根元がゴム層23を介してダストカバー20の内径フランジ部20dに接着され、図5に示す未装着状態では、オイルシール10側へ向けて漸次大径になる円錐筒状をなしており、図6に示す装着状態では、適当に湾曲変形された状態でオイルシール10における第二の金属環15のフランジ部15bに摺動可能に密接されるものである。
【0040】
一方、外周側の対泥水シールリップ22は、その根元がゴム層23を介してダストカバー20の折り返し部20eの頂部付近に加硫接着され、根元から途中まではオイルシール10側へ向けて漸次大径になり、そこから外径側へ屈曲した形状に形成されている。そして図6に示す装着状態では、適当に湾曲されて先端が機外A側を向いた状態でオイルシール10における第二の金属環15の外周筒部15aの内周面に摺動可能に密接されるものである。
【0041】
また、図6に示す装着状態では、オイルシール10の第一及び第二の金属環11,15の外周筒部11f,15aは、ダストカバー20の外径フランジ部20fと近接対向しており、このため前記外周筒部11f,15aとダストカバー20の折り返し部20e、外径フランジ部20f及び外周筒部20cとの間には横向きの「J」字形に折れ曲がったラビリンス状の隙間Lが形成されている。
【0042】
以上のように構成された第三の形態の密封装置1において、オイルシール10は、第一の金属環11の圧入筒部11aを外周シール部12と共にハウジング2の開口端部2aの内周面に圧入し、前記第一の金属環11の外径フランジ部11eを前記開口端部2aの先端に当接させることによって、ハウジング2に位置決め固定する。また、ダストカバー20は、その内径筒部20aを回転軸3の外周面に圧入嵌着すると共に、内径フランジ部20d及び外径フランジ部20fを回転軸3のフランジ部に当接させることによって位置決め固定し、図示の装着状態とする。
【0043】
オイルシール10の対油シールリップ13は、回転軸3の外周面に摺動可能に密接されることによって、機内油が機外Aへ漏洩するのを防止するものである。
【0044】
一方、対泥水シールリップ21,22の外周側には、ラビリンス状の隙間Lが形成されているので、機外Aから飛来する泥水等が対泥水シールリップ21,22による密封摺動部へ入りにくいものとなっており、ダストカバー20に設けられた対泥水シールリップ21,22は、回転軸3と一体に回転されるダストカバー20と共に回転しながら非回転のオイルシール10の第二の金属環15と密接摺動されることによって、機外Aからの泥水等の浸入を阻止するものであり、オイルシール10の泥水受け18は、対泥水シールリップ21,22の密封摺動部を万一通過した泥水を受け止め、泥水受け18による円周溝18aに沿って流下させるものである。泥水受け18に沿って流下した泥水は、回転する対泥水シールリップ21に滴下してその遠心力によって振り切られ、外周側へ押し戻される。ダストリップ14は、対泥水シールリップ21の内周側で、回転軸3の外周面に摺動可能に密接されることによって、対油シールリップ13側への泥水等の浸入を阻止するものである。
【0045】
そして上記構成によれば、対泥水シールリップ21,22が摺接されるオイルシール10の第二の金属環15は、固体潤滑材料をコーティングした金属板など、低摩擦材又は鏡面材からなるものであるため、複数(図示の例では2段)の対泥水シールリップ21,22を設けたにも拘らず、摺動トルクによるエネルギ損失の増大が抑制される。
【0046】
また、この形態では複数(図示の例では2段)の対泥水シールリップ21,22によって耐泥水性を確保しているため、これら対泥水シールリップ21,22には必ずしも耐泥水性に優れた材質は求められず、したがって対油シールリップ13と同材質(例えばACM)からなるものとすることができるが、耐泥水性に優れたNBRなどを用いても良いことはもちろんである。
【0047】
なお、オイルシール10の第二の金属環15は、上述のように金属板に固体潤滑材料をコーティングしたものである場合、摺動トルク低減のほか、防錆効果も奏するが、例えばSUS(ステンレス鋼)や、メッキ鋼板、アルミ系金属板などを用いることによって防錆を図ることもできる。
【0048】
また、図1及び図2に示す第一の実施の形態あるいは図3及び図4に示す第二の実施の形態でも、例えばオイルシール10に対泥水シールリップ16を複数設け、この対泥水シールリップ16が摺接するダストカバー20が、固体潤滑材料をコーティングした金属板や鏡面加工した金属板など、低摩擦材からなるものとすることによって、耐泥水性を確保すると共に摺動トルクによるエネルギ損失の増大を抑制した構成とし、あるいはSUSや、メッキ鋼板、アルミ系金属板などを用いることによって防錆を図ることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 密封装置
10 オイルシール
11 第一の金属環
12 外周シール部
13 対油シールリップ
14 ダストリップ
15 第二の金属環
16 対泥水シールリップ
20 ダストカバー
21,22 対泥水シールリップ
2 ハウジング(静止側)
3 回転軸(回転側)
A 機外
B 機内

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の金属環に対油シールリップが一体に成形されると共に前記第一の金属環に機外側に面して第二の金属環が密接嵌合され静止側に取り付けられるオイルシールと、このオイルシールの機外側に位置して回転側に取り付けられるダストカバーと、前記第二の金属環及びダストカバーのうちの一方に一体に成形されると共に前記第二の金属環及びダストカバーのうちの他方に摺動可能に密接される対泥水シールリップを備えることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
第二の金属環及びダストカバーのうちの他方が、低摩擦材からなることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113319(P2013−113319A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257406(P2011−257406)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】