説明

密閉形アルカリ蓄電池と、その電極構造、充電方法及び密閉形アルカリ蓄電池用充電器

ニッケル電極を正極とする密閉形アルカリ蓄電池において、電池内の気体圧力および/または電池温度が、規定値以下のときは充電が可能であって、規定値を超えるときは充電不能となる機能を持たせたことを特徴とする密閉形アルカリ蓄電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のアルカリ蓄電池において、高率で充電することが可能であって、高容量の密閉形アルカリ蓄電池と、その電極構造、製造方法および充電方法に関するものである。
【背景技術】
アルカリ蓄電池は、耐過充電、耐過放電特性に優れ、一般ユーザーにとって使い易い電池であるところから、携帯電話、小型電動工具および小型パーソナルコンピュータ等の携帯用小型電子機器類用の電源として広く利用されており、これらの小型電子機器類の普及とともに需要が飛躍的に増大している。また、ハイブリッド型電気自動車(HEV)の駆動用電源としても実用化されている。
従来のアルカリ蓄電池の場合、容量を使い果たした電池を100%充電しようとすると少なくとも1時間を要した。充電所要時間を短縮できれば、ユーザーにとって利便性が高くなるので放電容量の向上とともに充電所要時間のさらなる短縮を可能とする高率充電技術の開発が求められている。
高率充電を妨げる要因は、急速充電を行ったときに、反応熱やジュール熱により電池温度が上昇し電池を構成している材料が変質し電池特性が劣化するためである。高率充電を行うと、例えば、水素吸蔵合金の劣化が速まる。
あるいは、充電時に電池の内圧が上昇し電解液の分解生成物であるガスや電解液が外部に放出される。このため、高率充電を繰り返し行うと通常の充電に比べて電解液の消耗が速く、サイクル寿命が短くなる虞がある。
従来、急速充電を可能にするための方法として、例えば、特公昭47−45462号公報(ページ7,特許請求の範囲)にあるようにパルス充電方式が提案されている。しかし、アルカリ蓄電池の充電にパルス充電方式を適用しても数分の1時間程度の短時間で充電を完了することは実現しなかった。
また、WO 02/35618 A1号公報(FIG.2A)には密閉形電池に圧力スイッチ(圧力応答スイッチ)機能を設けておき、充電時に電池内圧力が規定値を超えたときは充電を打ち切り、電池内圧力が規定値以下のときに充電を行う充電方法およびその装置が提案されている。
しかし、特許文献2提案されている方法には、30分間以内という短時間の充電においては充電効率が低いこと、高容量化を図った密閉式蓄電池に適用した場合に充電効率の低い欠点が顕著になる欠点があった。
また、前記ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池においては、正極には何れもニッケル電極を適用する。該ニッケル電極は、水酸化ニッケルを主成分とする活物質粉末を含むペーストを発泡ニッケルなどの多孔性のニッケル基板に充填したものである。ニッケル水素電池の負極(水素吸蔵合金電極)は、水素吸蔵合金粉末に増粘剤や結着剤を加えてペースト状としニッケルメッキを施した鋼板製のパンチングメタル等の基板上に担持させたものである。
ニッケルカドミウム電極の負極(カドミウム電極)は、前記水素吸蔵合金電極において、水素吸蔵合金に替えて酸化カドミウムや水酸化カドミウムを主成分とする粉末を適用したものである。
アルカリ蓄電池を充電すると、充電末期に正極で酸素が発生する。アルカリ蓄電池においては前記正極で発生した酸素を負極で吸収することによって密閉化を可能にしている。
従来のアルカリ蓄電池においては、正極の充填容量に対する負極の充填容量の比率を1.5〜1.8以上(負極大過剰充填)に設定して、充電時に負極における酸素の吸収を促進するとともに負極からの水素発生を抑制していた。
従来のアルカリ蓄電池の場合、正極の充填容量に対する負極の充填容量の比率を1.5未満にすると、充電リザーブを十分に確保できず、充電末期に負極において水素発生量が増大して電池の内圧が高くなる虞がある。
また、充放電を繰り返すと正極に活物質として不活性なγ−NiOOHが生成蓄積して容量が低下したり、正極で発生する酸素によって水素吸蔵合金やカドミウムが腐食されて容量が低下する虞がある。
前記ニッケル電極においては活物質である水酸化ニッケル粉末の他に、電極内の導電性を高めるために一酸化コバルトや水酸化コバルトを添加し、電池に組み込んだ後に充電することによって水酸化コバルトを導電性の高次コバルト化合物(オキシ水酸化コバルトともいう)に酸化している。
このように、充電によって高次コバルト化合物が生成する時の反応は、不可逆反応である。従って、充電によって高次コバルト化合物を生成させた場合には、該高次コバルト化合物生成のために消費した電気量に相当する分および水酸化ニッケルに固溶体添加したコバルトを酸化するために消費する電気量を負極に放電リザーブとして潜在的に蓄えることになり、その分充電リザーブ量が減少する。充電リザーブ量が低減すると前記のように充電時に電池の内圧が高くなったり、負極活物質である水素吸蔵合金やカドミウムが腐食されて、充放電サイクル寿命の低下に繋がる虞があった。
必要な充電リザーブ量を確保するためには、電池を設計する際に、負極に放電リザーブを形成するための活物質の充填を見込む必要がある。
該放電リザーブ形成を見込んで負極活物質を余分に充填すると、正極活物質の充填量を一層減じ、結果として電池の放電容量が低下することになる。
例えば、特開平3−78965号公報(第3頁、左上欄、14〜16行)及び特開平4−26058号公報(第2頁、右上欄、9〜10行)には、放電リザーブの生成を抑制するため、ニッケル電極の活物質である水酸化ニッケルの表面に配置した水酸化コバルト等のコバルト化合物を、予め化学的な方法によって酸化して高次コバルト化合物に変える方法が提案されている。
しかし、このような方法をもってしても負極容量/正極容量の比を少なくとも1.5〜1.7とする必要があり、該比率をそれ以上に小さく設定することは困難であった。従って、前記従来のアルカリ蓄電池においては、決められた電池容積に負極を大過剰に充填するために正極の容量を減らさざるを得ず、その為に電池の容量が低く制限される欠点があった。
充電時に正極での酸素発生を抑制するために、例えば、特開平9−265981号公報(第2頁、右欄、33〜38行)には、ニッケル電極に希土類元素の化合物を添加する方法が提案されている。
前記希土類元素の化合物をニッケル電極に添加すると、ニッケル電極の酸素発生電位を貴な方向にシフトさせる効果があるので、酸素発生電位とニッケル電極の電位の差が大きくなり酸素発生が抑制され、充電効率が向上する。
しかし、前記のような方策をもってしても、高率で充電すると正極での酸素発生量が増大するために、負極の酸素吸収速度が正極での酸素発生速度に追いつかず、また、負極からの水素発生も同時に起きるため電池の内圧が急激に上昇する虞がある。
このため従来のアルカリ蓄電池においては1時間率充電(1ItA充電)が限界であり、それ以上の高率充電が困難であった。
また、円筒型蓄電池等小型蓄電池においては、矩形状の電極にタブ状端子(以下単に端子と記述する)を接合した電極構造体を採用し、該電極構造体とセパレータからなる積層体を渦巻き状に捲回した極板群を採用している。
従来の蓄電池においては、端子が金属製電槽に接触して内部短絡が発生するのを避けるため、図10に示す電極構造体1の端子3の接合位置、即ち矩形状電極の中心側の一方の短辺2aと端子3の中心線Xとの距離bが電極の長辺aに対してb≦0.4aに設定していた。
これまでのように、充電を速くても1時間程度で完了させるのであれば、前記従来の電極構造体を採用していても何ら問題がなかったが、しかし、前記新規な要求である15〜30分間という短時間で充電を完了する急速充電を行おうとしたときに高い充電効率が得られず、電池の異常な温度上昇による容量低下や、急激なサイクル劣化を伴うことが分かった。
本発明が解決しようとする課題は、前記従来技術の欠点に鑑みなされたものであって、水素吸蔵合金電極やカドミウム電極を負極に適用したアルカリ蓄電池であって、活物質利用率の低下を招いたり充放電サイクル性能および過充電時や高率充電時の電池内圧上昇抑制機能を低下させることなく、放電容量が高くかつ従来なし得なかった極めて短時間で充電したときにも充電効率が高いアルカリ蓄電池およびその充電方法を提供するものである。
本発明は、斯かる従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、小型、高容量、サイクル性能において電池の特性を低下させることなく15〜30分間で充電する急速充電特性の向上を図ることのできる電極構造体及び蓄電池の提供を、更なる目的とするものであり、従来の技術思想では成し得なかった前記電極構造体の端子接合位置を最適化することによって驚くべき効果を有することを見出したことにより前記目的を達成するものである。
【発明の開示】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。
1.ニッケル電極を正極とする密閉形アルカリ蓄電池において、電池内の気体圧力が、規定値以下のときは充電が可能であって、規定値を超えるときは充電不能となる機能を持たせたことを特徴とする密閉形アルカリ蓄電池。
2.ニッケル電極を正極とする密閉形アルカリ蓄電池において、電池内の気体圧力および電池温度が、規定値以下のときは充電が可能であって、規定値を超えるときは充電不能となる機能を持たせたことを特徴とする密閉形アルカリ蓄電池。
3.負極の容量と正極の容量の比(負極の容量/正極の容量)を1.02〜1.45とした密閉形アルカリ蓄電池であって、前記電池内気体圧力の規定値を1.0〜3.0メガパスカル(MPa)の範囲内に設定および/または電池温度の規定値を50〜80℃の範囲内に設定したことを特徴とする請求項1又は2記載の密閉形アルカリ蓄電池。
4.水酸化ニッケルを主成分とする活物質を主構成材料とする粉末材料に含まれる遷移金属元素の平均酸化数が、2.04〜2.4である粉末材料を多孔性基板に担持させたニッケル電極を適用することを特徴とする請求項3記載の密閉形アルカリ蓄電池の製造方法。
5.水酸化ニッケルを主成分とする活物質を主構成材料とする粉末材料を電池に組み込む前に酸化剤を用いて化学的に酸化するかあるいは電気化学的に酸化することにより前記粉末材料に含まれる遷移金属元素の平均酸化数を2.04〜2.4とすることを特徴とする請求項4記載の密閉形アルカリ蓄電池の製造方法。
6.水酸化ニッケルを主成分とする活物質粉末に酸化数が2以下のコバルト化合物やコバルト単体を添加するかもしくは前記活物質の表面に酸化数が2以下のコバルト化合物やコバルト単体からなる被覆層を設けた粉末材料を多孔性基板に担持させた電極を電池に組み込む以前にアルカリ電解液中で充電し、前記粉末材料に含まれる遷移金属元素の平均酸化数を2.04〜2.4とすることを特徴とする請求項5記載の密閉形アルカリ蓄電池の製造方法。
7.水酸化ニッケルを主成分とする活物質粉末に酸化数が2以下のコバルト化合物やコバルト単体を添加するかもしくは前記活物質の表面に酸化数が2以下のコバルト化合物やコバルト単体からなる被覆層を設けた粉末材料を多孔性基板に充填してなる正極と水素吸蔵材料を適用した負極を備える密閉形アルカリ蓄電池の製造方法において、正極および負極を電池に組み込んだ後、電池を密閉せずに充電し、前記正極の粉末材料に含まれる遷移金属の平均酸化数を2.04〜2.4とし、充電終了後電池を吸引による減圧下において、充電により負極に蓄積された水素を除去した後に密閉することを特徴とする請求項6記載の密閉形アルカリ蓄電池の製造方法。
8.前記正極がHo、Er、Tm、Yb、Lu、Yから選択した希土類元素およびCaのうちから選択した少なくとも1種類の元素を含む化合物を前記水酸化ニッケルを主成分とする活物質と非共晶状態で含有することを特徴とする請求項1又は2記載の密閉形アルカリ蓄電池。
9.前記正極に含有させたHo、Er、Tm、Yb、Lu、Yから選択した希土類元素およびCaのうちから選択した少なくとも1種類の元素を含む化合物の比率が0.1重量%以上、5重量%以下であることを特徴とする請求項8に記載の密閉形アルカリ蓄電池。
10.水酸化カリウムを主電解質とした電解質の濃度が7.5±1.5モル/dmのアルカリ水溶液を電解液とし、該電解液をアルカリ蓄電池の単位容量当たり0.6〜1.4cm/Ah内包させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の密閉形アルカリ蓄電池。
11.0.5デニール以下の親水性繊維からなる不織布をセパレータに適用したことを特徴とする請求項1又は2に記載の密閉形アルカリ蓄電池。
12.前記親水性の繊維がオレフィンとビニルアルコールの共重合体からなる分割型繊維またはスルフォン酸基を導入したポリオレフィン系繊維であり、目付量が35〜70g/mである不織布をセパレータに適用したことを特徴とする請求項11記載の密閉形アルカリ蓄電池。
13.前記負極が、酸素ガスおよび/または水素ガスを吸収する反応を促進する触媒を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の密閉形アルカリ蓄電池。
14.前記触媒がラネーコバルトまたはラネーニッケルであることを特徴とする請求項13記載の密閉形アルカリ蓄電池。
15.前記負極の活物質が水素吸蔵合金粉末であり、該水素吸蔵合金粉末あるいは水素吸蔵合金粉末を多孔性基板に担持させた負極を電池に組み込む以前に酸性あるいはアルカリ性水溶液と接触させることにより活性化することを特徴とする請求項1又は2記載の密閉形アルカリ蓄電池の製造方法。
16.前記負極活物質が水素吸蔵合金粉末であり、負極がHo、Er、Tm、Yb、Lu、YおよびCeのうちから選択した少なくとも1種類の希土類元素を水素吸蔵合金粉末の組織外に含有することを特徴とする請求項1又は2記載の密閉形アルカリ蓄電池。
17.負極の容量と正極の容量の比(負極の容量/正極の容量)が1.45を超える密閉形アルカリ蓄電池であって、前記電池内気体圧力の規定値を0.5〜1.5メガパスカル(MPa)の範囲内に設定および/または電池温度の規定値を50〜80℃の範囲内に設定したことを特徴とする請求項1又は2記載の密閉形アルカリ蓄電池。
18.密閉形アルカリ蓄電池の充電方法であって、充電中の電池の内圧および/または電池温度が規定値を超えるときは充電を打ち切り、電池の内圧および/または電池温度が規定値以下のとき充電を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の密閉形アルカリ蓄電池の充電方法。
19.請求項17に記載のアルカリ蓄電池の充電方法であって、定電圧により充電し、かつ、充電電圧が1.5〜1.7Vであることを特徴とする密閉形アルカリ蓄電池の充電方法。
20.密閉形アルカリ蓄電池の充電器であって、該蓄電池の表面温度を検知する機能と蓄電池の表面温度が規定値以上のときは充電を打ち切り、規定値未満のとき充電を行うことを機能を備えたことを特徴とする密閉形アルカリ蓄電池用充電器。
21.前記密閉形アルカリ蓄電池の表面温度の規定値を50〜80℃の範囲内に設定したことを特徴と請求項20記載の密閉形アルカリ蓄電池の充電器。
22.長手方向幅a及び短手方向幅αの矩形状であり且つ一方の短辺を中心側として渦巻き状に捲回可能な多孔質電極基板に、活物質が充填されてなる電極と、前記電極基板に接合される単一の端子とを備え、
前記端子は、前記電極基板の前記一方の短辺から該端子の中心線までの距離bが、0.3a≦b≦0.6aとなるように該電極基板に接合されていることを特徴とする電極構造体。
23.前記端子は、前記電極基板の長手方向及び短手方向にそれぞれ沿った短手方向幅及び長手方向幅がc,γとされ、前記端子は、前記電極基板との重ね合せ領域長さがβとされており、前記a,c,α,β及びγは、
0.02≦c/a≦0.07
0.065≦β/α≦0.45
0.1≦β/γ≦0.75
であることを特徴とする請求項22に記載の電極構造体。
24.前記端子と前記電極基板との重合領域が、該電極基板の外形状と相似形状とされていることを特徴とする請求項22に記載の電極構造体。
25.前記端子は溶接によって前記電極基板に接合されていることを特徴とする請求項22〜24の何れかに記載の電極構造体。
26.前記溶接は、前記電極基板の長辺のうち前記端子が接合される側の一方の長辺と前記端子の中心線との交点を基準にして、放射状に配設されたスポット溶接であることを特徴とする請求項25に記載の電極構造体。
27.請求項22から26の何れかに記載の電極構造体を正極として備えていることを特徴とする蓄電池。
28.一方の電極と同極性の端子を結ぶ電気回路に、電池の内圧が規定値を上回ったときに前記電気回路をONからOFFに切り替え、電池の内圧が低下したときに前記電気回路をOFFからONに切り替えるスイッチ機能を持たせ、且つ、電池内空間を気密に密閉した請求項27に記載の蓄電池。
具体的には、前記電池内の気体圧力および/または電池温度が、規定値以下のときは充電が可能であり、規定値を超えるときは充電不能となる機能を持たせた密閉形アルカリ蓄電池であって、負極と正極の放電容量の比(負極の放電容量/正極の放電容量)が1.45以下の密閉形アルカリ蓄電池の場合は、前記電池内の気体圧力の規定値を0.5〜1.0MPaの範囲内に設定し、前記負極と正極の放電容量の比が1.5以上の密閉形アルカリ蓄電池の場合は電池内の気体圧力の規定値を1〜3MPaの範囲内に設定し、あるいは、電池温度の規定値を50〜80℃の範囲内に設定した密閉形アルカリ蓄電池である。
このことによって、本発明に係るアルカリ蓄電池は、15分間乃至は30分間で充電を完了するというような高率で充電した場合でも、電池内の気体圧力の上昇や電池温度の上昇を抑制することができ、高率で充電した場合にも高い充電効率を達成するものである。
また、本発明に係る密閉形アルカリ蓄電池は、電池内の気体圧力および/または電池温度が、規定値以下のときは充電が可能であり、規定値を超えるときは充電不能となる機能を持たせた密閉形アルカリ蓄電池であって、高容量を達成せんとする蓄電池であり、負極の放電容量と正極の放電容量の比率を1.02〜1.45とした密閉形アルカリ蓄電池である。
また、本発明に係るアルカリ蓄電池の製造方法は、水酸化ニッケルを主成分とする粉末材料を化学的な反応で酸化処理をするかまたは電気化学的な方法で酸化し、該粉末材料に含まれる遷移金属元素の平均酸化数を2.04〜2.4にした粉末材料をニッケル電極の活物質粉末として適用する製造方法である。
このことによって、本発明に係るアルカリ蓄電池は、電池に組み込む負極の容量と正極の容量の比を従来のアルカリ蓄電池に比べて小さく設定し、また正極活物質の酸化数を予め2より大きくして放電リザーブ生成を抑制することによって、充電時の酸素発生量を抑制し、高率充電を行ったときの充電効率を高めた密閉形アルカリ蓄電池である。
また、本発明に係る密閉形アルカリ蓄電池は、前記正極がHo、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうちから選択した少なくとも1種類の希土類元素およびCaから選択した少なくとも1種類の元素を含む化合物を含有する。
前記正極に含まれる前記希土類元素の含有比率を希土類元素の単体ベースで0.5〜4重量%とした密閉形アルカリ蓄電池である。
また、本発明に係るアルカリ蓄電池は、水酸化カリウムを主電解質とし、濃度が7.5±1.5モル/dmのアルカリ水溶液を電解液とし、該電解液をアルカリ蓄電池の単位容量当たり0.6〜1.4cm/Ah内包させた密閉形アルカリ蓄電池である。さらに、本発明に係るアルカリ蓄電池は、繊維径が0.5デニール以下の親水性繊維を主たる構成材料とし、目付け量が35〜70g/m、好ましくは厚さが70〜120μmである不織布をセパレータに適用した密閉形アルカリ蓄電池である。
このことによって、本発明に係るアルカリ蓄電池においては、充電時の正極からの酸素発生、負極からの水素発生を抑制し、高率充電を行ったときの充電効率を高めることができる。
また、本発明に係る密閉形アルカリ蓄電池は、前記負極が酸素および/または水素ガスを吸収する反応を促進するための触媒を含有する密閉形アルカリ蓄電池である。触媒の具体的な例としてはラネーニッケルやラネーコバルト等の金属材料が適用できる。
また、本発明に係る密閉形アルカリ蓄電池の製造方法は、負極に水素吸蔵合金を粉末を適用した密閉形アルカリ蓄電池の製造方法であって、前記水素吸蔵合金を電池に組み込む前にアルカリ性水溶液もしくは酸性の水溶液に浸漬して活性を高めた製造方法である。
このことによって、充電時に発生する酸素ガスおよび水素ガスの吸収能を高め高率充電を行ったときの電池の内圧上昇を抑制した密閉形アルカリ蓄電池とすることができる。
また、本発明に係る密閉形アルカリ蓄電池は、 前記負極活物質が水素吸蔵合金粉末であり、負極がHo、Er、Tm、Yb、Lu、YおよびCeのうちから選択した少なくとも1種類の希土類元素を含ませた密閉形アルカリ蓄電池である。
このことによってアルカリ電解液中における水素吸蔵合金の耐蝕性を高め高率充電を繰り返して行ってもサイクル性能の優れた密閉形アルカリ蓄電池とすることができる。
また、本発明に係る密閉形アルカリ蓄電池の充電方法は、充電中の電池の内圧および/または電池温度が規定値以下のときは充電を実施し、電池の内圧および/または電池温度が規定値を超えるときは充電を打ち切る充電方法である。
また、本発明に係る密閉形アルカリ蓄電池の充電様式は、特に限定されるものではなく、定電圧充電、定電流充電、定電力充電およびこれらの組み合わせができる。
ただし、充電が進むに連れて充電電流が垂下し充電末期には充電電流が小さくなる方が充電のONとOFFを切り替えるときの電池温度の変動幅が小さくて済む利点があり、この観点から定電圧充電が好ましい。
前記定電圧により充電する方法であって、充電電圧を1.5〜1.7Vの範囲内に設定した充電方法である。
本発明に係るアルカリ蓄電池の充電方法によれば、15〜30分間という短時間で充電を完了させることが出来、かつ、電池内の気体圧力の上昇や電池温度の上昇を抑制することができる。
また、本発明の電極構造体は、長手方向幅a及び短手方向幅αの矩形状であり且つ一方の短辺を中心側として渦巻き状に捲回可能な多孔質基板に、活物質が充填されてなる電極基板と、前記電極基板に接合される単一の端子とを備え、前記端子は、前記電極基板の前記一方の短辺から該端子の中心線までの距離bが、0.3a≦b≦0.6aとなるように該電極基板に接合されている電極構造体を提供する。
なお、以下に記述する15〜30分間で充電する急速充電特性向上のメカニズムについては推論を含むが、これによって本発明が何ら限定されるものではない。
従来のように電極構造体の前記bがaに比べて小さい場合には、電極のうち端子から遠い部分の活物質が反応に寄与しないために充電効率が低くなる。
また、充電電流が端子に近い部分に集中し、該部分の電流密度が高くなるために、活物質の充電が追いつかず、電解液の分解反応などの副反応が生じるために充電効率が低くなると考えられる。
また、電流が集中した部分の温度が局部的に上昇していると考えられ、電池のサイクル性能など急速充電特性以外の電池性能への悪影響を及ぼす虞が高い。
これに対して、本発明のように前記電極構造体の端子接合位置の距離bを0.3a≦b≦0.6aとすることによって、電極のうちの端子から遠い部分の活物質も反応に寄与するようになったこと、さらに充電電流が電極の端子に近い部分に集中しないために副反応が抑制されることによって充電効率が向上したと考えられる。
また、前記圧力スイッチ機能を備えた電池においても、従来の電極構造体を適用した蓄電池の場合は、前記の理由により、副反応が生じるために、電池の内圧上昇が促進され、充電中に圧力スイッチが動作して一定の充電時間に占める充電OFFの状態の時間の比率が大きいために高い充電効率が得にくい結果になっていたと考えられる。
本発明は、前記端子接合位置改良した電極構造体と圧力スイッチ機能をとの組み合わせにおいて特に顕著な効果を奏するものである。
本発明の一態様においては、前記端子は、前記電極基板の長手方向及び短手方向にそれぞれ沿った短手方向幅及び長手方向幅がc,γとされ、前記端子は、前記電極基板との重合領域長さがβとされており、前記a,c,α,β及びγは、
0.02≦c/a≦0.07
0.065≦β/α≦0.45
0.1≦β/γ≦0.75
とされる。
他の実施態様においては、前記端子と前記電極基板との重合領域が、該電極基板の外形状と相似形状とされる。
好ましくは、前記端子は溶接によって前記電極基板に接合される。
より好ましくは、前記溶接は、前記電極基板の長辺のうち前記端子が接合される側の一方の長辺と前記端子の中心線との交点を基準にして、放射状に配設されたスポット溶接とされる。
また、本発明は、前記何れかの構成に斯かる電極構造体を正極として備えた蓄電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の1実施形態に係るアルカリ蓄電池内部の要部を示す断面図である。
図2は、本発明実施例電池および比較例電池を充電したときの電池の内圧を示すグラフである。
図3は、本発明実施例電池および比較例電池を充放電したときの電池温度を示すグラフである。
図4は、本発明実施例電池および比較例電池の充放電サイクル性能を示すグラフである。
図5は、本発明実施例電池を定電圧で充電したときの電池温度を示すグラフである。
図6は、本発明実施例電池および比較例電池を充電したときの電池の内圧を示すグラフである。
図7は、本発明実施例電池および比較例電池を充放電したときの電池温度を示すグラフである。
図8は、本発明に係る密閉形アルカリ蓄電池の充電をON,OFFするスイッチ機構が働いた時の充電電流と電池温度の挙動を模式的に示した図である。
図9は、本発明に係る密閉形アルカリ蓄電池の充電をON,OFFするスイッチ機構が働いた時の充電電流と電池温度の挙動を模式的に示した図である。
図10は、本発明の一実施の形態に係る電極構造体の正面図であって、渦巻き状に捲回させる前の状態を示している。
図11は、図10に示す電極構造体を備えた蓄電池の断面構造を示す模式図である。
図12は、図10に示す電極構造体を備えた蓄電池の断面構造を示す模式図である。
図13は、図10及び図11に示す電極構造体からなる正電極と、負電極及びセパレータとを渦巻き状に捲回させたアッセンブリの斜視図である。
図14は、図10に示す電極構造体における電極基板と端子との溶接構造を示す拡大図である。
図15は、本発明の他の実施の形態に係る電極構造体の正面図であって、渦巻き状に捲回させる前の状態を示している。
図16は、抵抗値及び充電効率に関する実施例及び比較例の試験結果を示すグラフである。
(符号の説明)14:正極リード板,15:金属製カバー,17:金属製剛性板,18:金属製薄板,20:スプリング
【発明を実施するための最良の形態】
(充電打ち切り機構)
図1は、本発明の1実施形態に係る密閉形アルカリ蓄電池1の要部断面を模式的に示す断面図である。
図1において帯状正極板2と帯状負極板3を、帯状セパレータ4を間に介して積層し、負極板3が再外周に位置するように捲回した捲回式極板群を円筒形金属製の電槽5内に収納する。
捲回式極板群の上部捲回端面に正極板の基板端部を突出させ、該基板の上部端面に略円板状の正極集電端子6を接合させている。前記捲回式極板群の最外周に位置する負極板は、電槽5の側壁の内面に当接(図では負極板と電槽の内面との間に隙間があるように記したが実際には当接させる)させ負極板と電槽5を電気的に導通させる。KOHを主成分とする電解質の水溶液からなる電解液を注入した後、電槽5の上部開口端に、例えばナイロンのような合成樹脂製のガスケット9を介して金属製の蓋8を嵌着し、気密に密閉している。なお、電解質にはKOHを主成分とし、この他にLiOHやNaOHを含むものも適用できる。
蓋8の中心部分に透孔10を設け、蓋8とキャップ12の間に挿入したゴム製の安全弁11を前記透孔10に押圧して透孔10を気密に塞いでいる。電池内の空間に気体が溜まり、電池内の気体圧力が高まると、内圧によって前記安全弁が変形し、気密が破れて、電池内の気体は透孔10およびキャップに設けた透孔13を通って外部に排出される。
金属製の蓋8の内面には圧力スイッチが取り付けられている。
該圧力スイッチは、金属製のカバー15、金属製剛性板17、金属製薄板18、金属製剛性板17と金属製薄板18によって囲まれた空間を気密にし、かつ金属製剛性板17および金属製薄板18とカバー15を絶縁するためのガスケット19および金属製剛性板17と金属製薄板18によって囲まれた空間に封入されたスプリング20からなる。前記カバー15の周縁部分を蓋8の内面に接合し、かつ透孔20を設けてある。
通常の状態(電池内の気体圧力が高まっていない状態)においては、前記金属製薄板18は、前記蓋8と接触しており電気的な導通状態にある。電池内の気体圧力が高まると、該気体がスプリング20の弾性に抗して金属製薄板18を押し下げ、電池内の気体圧力が規定値を超えたときに金属製薄板18と蓋8が離れるために電気的な導通が絶たれる。電池内の気体圧力が低下するとスプリングの弾性により金属製薄板18が押し上げられ、再び金属製薄板18と蓋8が接触して両者の間の電気的導通が回復する。このような機構を持たせることによって、充電中に電池内の気体圧力が高まったときに充電をOFFにし、電池内の気体圧力が低下したときに充電をONにする機能(以下圧力スイッチ機能と記述する)を持たせる。
図8と図9は、前記充電を本発明に係る密閉形蓄電池のON、OFFするスイッチ機構が働いた時の充電電流と充電時の電池温度の挙動を模式的に示した図である。ここでいうところの充電をOFFにするとは、図8に示したように充電OFFの時に充電を完全に打ち切る(充電電流が0Aである)ことが好ましいが、図9に示したように、充電がOFFの時も、充電電流が0Aにならずに、電池の内圧や温度が規定値を超えて上昇しない程度の小さい充電電流が流れていてもよい。
スイッチの構造によっては、回路のON、OFFを司るスイッチの接点がOFFの時も完全に離れることなく、接触抵抗の大きい状態で接触している場合もある。
この場合はOFFの時も充電電流が0Aにならずに小さな電流が流れつづける。
図1に示した例は、前記圧力スイッチの他に温度スイッチが配置されている。
図の14は、正極集電端子6に接合したバイメタル製のリード板である。該リード板14は、通常の状態(電池温度が上昇していない状態)では前記金属製剛性板17と接触しており両者の間に電気的な導通が保たれている。温度が上昇するとリード板14は図の下方方向に変形し、温度が規定値を上回ったときに、リード板14と金属製剛性板17が離れ、両者の間の電気的な導通が絶たれる。温度が低下するとリード板14の形状が元に戻るため、両者の間の電気的な導通が回復する。
このような機構を持たせることによって、充電中に電池温度が高まったときに充電をOFFにし、電池温度が低下したときに充電をONにする機能(以下温度スイッチ機能と記述する)を持たせる。
前記バイメタル製のリード板の設置箇所は、該リード板が回路に組み込まれる個所であればよく、特に限定されるものではないが、極板に直結している集電端子の温度がもっとも正確に電池の内部温度を反映しているので、図1に示した実施形態のように集電端子に接合するのが好適である。
本願発明の温度スイッチ機能を持たせた電池においては、電池温度が充電打ち切りのための規定値に達したときに充電をうち切るのであるが、前記のように回路を完全にOFFにする以外に充電電流を小さい値に抑えて充電中に電池の温度が上昇するのを阻止するのも有効な方法であり、ここでいう充電打ち切りの範疇に入る。
具体的には前記図1に示した実施形態において集電端子6から蓋9に到るまでの回路に前記バイメタル製のリード板に替えてポリスイッチ(PTC素子)を組み込む。該素子は、温度が所定の温度を超えると急激に電気抵抗が増大する素子であるが、本発明にとっては、温度が50〜80℃で電気抵抗が急激に増大し、増大した後の電気抵抗値がキロオーム(kΩ)オーダー以上であることが好ましい。
該電気回路の抵抗の増大によって実質的に充電を不能にすることができる。
本発明に係る第1の密閉形アルカリ電池において、内部の気体圧力に基づく充電打ち切りのための規定値は、前記ゴム製の安全弁11の開口圧力以下であって、電池の性能劣化が抑制できるように設定する。具体的には、1.0MPa〜3.0MPaに設定するのが好ましく、1.5〜2.5MPaに設定するのがさらに好ましい。
設定圧力が1.0MPa未満では、高率で充電した場合、充電休止の比率が多くなり短時間での充電が困難になる虞がある。設定値が3.0MPaを超えると、内部に溜まった酸素ガスによって負極の活物質である水素吸蔵合金やカドミウムが腐食され、アルカリ蓄電池の放電容量の低下を招く虞がある。
電池温度に基づく充電打ち切り規定値は、50〜80℃が好ましく、60〜80℃がさらに好ましい。
該判定値が50℃未満の場合は、高率充電における充電受け入れが小さくなる。また、80℃を超えると水素吸蔵合金やセパレータ、正極および負極の結着剤の変質を招き、蓄電池の放電容量やサイクル寿命の低下を招く虞がある。
本発明でいう電池温度とは、厳密には電池内部の温度をいうが、電池の表面特に側面または底面における金属製容器表面の温度で代用することもできる。該電池容器の側面または底面は、極板群に接しており、また金属容器の熱伝導性が高いこともあって、良く電池内部の温度を反映している。
前記図1に示したように、本発明に係るアルカリ蓄電池においては、圧力スイッチ機能と温度スイッチ機能の両方を具備することが最も好ましい。
両方の機能を備えることによって、万一片方の機能に不具合が発生しても、もう一方の機能に支障がなければ、電池を使用する上で支障が生じない。
しかし、本発明においては、必ずしも圧力スイッチ機能と温度スイッチ機能の両方を具備する必要はない。どちらか、一方の機能を備えておればよい。
ただし、温度スイッチ機能は、電池内の特定の部位で局部的に発熱があった場合にそれを鋭敏に捉えることが難しい。特に電池が大きくなった場合には、電池内の温度が部位毎に均一ではなくなる虞があり発熱の状況を鋭敏に捉えることが難しい。
それに比べて、圧力スイッチ機能の場合は充電時に気体が発生すれば直ちに電池内の気体圧力が上昇するので、気体発生の状況を敏感に捉えることができる。
従って、圧力スイッチ機能と温度スイッチ機能の一方を設ける場合は、圧力スイッチ機能を設けることが好ましい。
圧力スイッチ機能と温度スイッチ機能の両方を組み込もうとすると、電池の構造が複雑になり、且つ料機能を収容するためのスペースを電池に確保しなければならない。
前記のように本発明においては、電池表面の温度を電池温度とすることもできる。
従って、温度スイッチ機能を電池にもたせるのではなく、充電器にもたせることができ、この方がむしろ好ましい。充電器の被充電電池の表面好ましくは電池の側面または底面と当接する位置に温度センサーを取り付け、充電器に検知した電池温度に応じて充電のONとOFFを切り替える機能を持たせることによって、充電時に電池温度が規定値を超えないようにする。
(正極活物質粉末の構成と製造方法)
本発明に係るアルカリ蓄電池用の正極に適用する正極材料粉末は、活物質である水酸化ニッケルを主成分とし、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)やバリウム(Ba)のうちの少なくとも1種類の元素を少量固溶状態で含有することが望ましい。前記水酸化ニッケルに固溶させた亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)やバリウム(Ba)は、電池を充放電に供した時に活物質として不活性なγ−NiOOHが生成するのを抑制する効果がある。
また、前記Coの固溶は、ニッケル電極の充電電位を卑な方向にシフトさせ充電時にニッケル電極において酸素が発生するのを抑制する効果がある。
特に水酸化ニッケルにZnとCoを固溶添加することは有効であり、本発明の代表的な実施の形態においては、水酸化ニッケルに単体換算で1〜7重量%のZnと1〜5重量%のCoを固溶させたもの(粉末材料)を適用する。
本発明に適用する正極活物質粉末は、前記ZnやCo等を少量固溶させた水酸化ニッケルの表面に水酸化コバルト等のCoを含む化合物からなる被覆層を設けることが好ましい。
正極活物質粉末全体に占める表面のCo化合物からなる被覆層の比率はCo単体換算で1〜7重量%とすることが好ましい。
また、本発明に適用する正極活物質粉末は、正極活物質粉末の合成方法として公知の方法であるアンミン錯塩法によって合成したものであって形状が略球状であり、タップ密度が2.0以上の高密度粉末が好ましい。
このことによって、正極活物質の充填密度が高く、かつ、活物質利用率および高率充電での充電効率の高い正極とすることができる。
本発明に係る第1の密閉形アルカリ蓄電池に適用する水酸化ニッケル系活物質粉末は、該粉末に含まれる遷移金属元素(Ni、Co)の平均酸化数が2.04〜2.40であることが好ましく、2.07〜2.30がさらに好ましい。
前記活物質粉末に含まれる遷移金属元素の平均酸化数を2.04〜2.40に高める具体的な方法は、特に限定されるものではない。例えば、活物質粉末をアルカリ水溶液の存在下で酸化剤を用いて化学的に酸化するのが簡単で量産に適した方法であり、好ましい製造方法である。
例えば、活物質粉末を温度90℃において濃度10重量%のNaOH水溶液中においてNaClOやK等の酸化剤を用いて酸化する。
この際、活物質粉末と酸化剤の比率を調整することによって、活物質に含まれる遷移金属の平均酸化数を、容易に制御することができる。
その他、発泡ニッケル板等の多孔性基板に水酸化ニッケルを主成分とする粉末材料を充填した後水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの水溶液を電解液として電気化学的に酸化することによって作製することができる。
この方法の場合、通電量を規定することによって活物質に含まれる遷移金属元素の平均酸化数を制御することができる。
電気化学的に酸化する場合は正極単極として充電するか正極と負極を電池に組み込んだ後、開放状態で充電し、充電後雰囲気の圧力が0.01MPa以下になるように約1時間連続吸引して前記充電によって負極に吸蔵された水素を除去することが好ましい。該酸化処理によって前記水酸化ニッケルの一部は、β型を主体とするオキシ水酸化ニッケルとなる。また、得られた正極活物質粉末には、前記酸化処理によって水酸化ニッケルを主成分とする粉末の表面に配置した前記コバルト化合物からなる被覆層が、アルカリカチオンを含み、結晶性が乱れた高次コバルト化合物になったものも含まれる。このことによって、放電リザーブ生成量を低減することができる。
前記のように水酸化ニッケル系活物質粉末の平均酸化数を2.04〜2.40に高めることは、活物質粉末を構成する前記表面被覆層のCoの酸化数が2より大きい高次コバルト化合物に酸化する他、芯層に含まれるNiやCoの一部も酸化数2から2より大きい高次化合物に酸化することを意味する。
該酸化によって活物質表面に良導電性の高次コバルト化合物の層を形成させて活物質の利用率を高める他に放電リザーブ生成を抑制することができる。その結果、多くの充電リザーブを確保することができるので、充電時に負極から水素が発生するのを抑制し電池内の気体圧力が上昇するのを抑制することができる。
前記酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されるものではなく、塩素酸塩、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、ペルオキソ酸塩、酸素等を適用することができる。
(正極の構成)
本発明に係る第1の密閉形アルカリ蓄電池用のニッケル電極は、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Yのうちから選択した少なくとも1種類の希土類元素およびCaから選択した少なくとも1種類の元素を含む化合物(水酸化物またはその水和物や酸化物)を含有することが好ましい。
前記希土類元素のトータルの含有比率は、希土類元素またはCaが単体換算で0.1〜5重量%であることが好ましく0.5〜4重量%であることがさらに好ましい。希土類元素またはCaの比率が0.1重量%未満では、正極からの酸素発生を抑制する効果が不十分である。
同比率が5重量%を超えてさらに多くしても、酸素発生を抑制する効果が添加比率5重量%のときと比較してそれ以上に向上しないだけでなく、正極のインピーダンスが増大して容量低下を招く虞がある。
本発明に係る密閉形ニッケル電極は、平均粒度が5〜20μmの前記活物質粉末に、該粉末とおおよそ同程度の大きさかまたはそれより小さな前記希土類元素の水酸化物やその水和物または酸化物の粉末を添加混合した正極材料粉末を発泡ニッケル等の多孔性基板に担持させる。
多孔性基板には発泡ニッケルのような3次元のスポンジ状のもののみではなく、穿孔板のような2次元の多孔体、該2次元の多孔体の表面に突起や凹凸を設けた3次元のものも適用できる。
(負極活物質粉末の構成)
本発明に係るアルカリ蓄電池用の負極は、活物質である水素吸蔵合金粉末または酸化カドミウム粉末や水酸化カドミウム粉末を例えばニッケルやニッケルメッキを施した鋼板等の金属板を材料とする穿孔板に担持させたものである。
前記水素吸蔵合金粉末や酸化カドミウム粉末、水酸化カドミウム粉末の平均粒径を15〜55μmとすることが好ましい。該粉末の平均粒径が15μm未満の場合は、腐食され易く、腐食による性能低下を招く虞がある。
一方、平均粒径が、55μmを超えるときは、ガス吸収機能が劣り電池内の気体圧の上昇を招く虞がある。
本発明に係るアルカリ蓄電池の負極に適用する水素吸蔵合金には、CaCu5型構造を有するAB5系合金、ラーベス相構造(MgCu型又はMgZn型)を有するAB系合金、CsCl型構造を有するAB系合金およびMgNi型構造を有するAB系合金の群から選ばれた何れかを適用するのが好ましい。
(負極の構成)
本発明に係る第1の密閉形アルカリ蓄電池の負極は、水素や酸素の吸収反応を助ける触媒を含有することが好ましい。触媒の材質は特に限定されるものではなく白金やパラジウム等の貴金属元素を適用することもできる。
しかし、ラネーニッケルやラネーコバルト等の安価な材料がより好ましい。具体的にはニッケル60〜40重量%、アルミニウム40〜60重量%からなる合金やコバルト60〜40重量%、アルミニウム40〜60重量%からなる合金をアルカリ水溶液を用いて周知の方法により展開処理して作製したものであって平均粒形が1〜10μmの粉末が好適である。
これによって充電時に負極から発生する水素ガス、正極から発生する酸素ガスの吸収を促進し、電池内の気体圧力が上昇するのを抑制することができる。
本発明に係る第1の密閉形アルカリ蓄電池の水素吸蔵合金電極に適用する水素吸蔵合金粉末を、KOH等のアルカリ水溶液や塩酸等の無機系の酸および酢酸等の有機系の酸の溶液(処理液)に浸漬することによって粉末の表面に生成している水素吸蔵合金を構成する金属の酸化物や水酸化物等の被膜を溶出させて水素吸蔵合金粉末の活性を高めることができる。
また、前記処理液にエチレンジアミン4酢酸(EDTA)や酒石酸等の錯化剤を少量添加することによって、浸漬処理時に溶出した遷移金属元素の処理液内での安定性を高め、一旦溶出した遷移金属元素が水酸化部として水素吸蔵合金粉末表面に再析出するのを防ぐ効果があるのでより好ましい。
本発明に係る第1の密閉形アルカリ蓄電池の水素吸蔵合金電極は、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、YおよびCeのうちから選択した少なくとも1種類の希土類元素を含有することが好ましい。
これらの希土類元素は水素吸蔵合金の組織内に合金として存在してもよいが水素吸蔵合金の組織外に単体、水酸化物あるいは酸化物として存在する方がより好ましい。該希土類元素は、アルカリ電解液中における水素吸蔵合金の耐食性を高め、充電時に正極から発生する酸素の存在あるいは電池温度が上昇することによって水素吸蔵合金が腐食するのを抑制する働きをする。
ここでいう、水素吸蔵合金の組織外とは水素吸蔵合金粉末の内部に存在するのではなく、水素吸蔵合金粉末の外に存在することをいう。
水素吸蔵合金粉末が表面に亀裂を有していたり、一次粒子が凝集して二次粒子を形成しているような場合には表面の亀裂や一次粒子と一次粒子の間の間隙も水素吸蔵合金粉末の組織外とみなす。
(セパレータの構成)
高率で充電する場合、セパレータの保液性、伝導度が低いと、電極の分極が大きくなり充電電圧が上昇してガス発生が増大する虞があるので不利である。
本発明に係るセパレータは、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリエチレン−ポリプロピレン製不織布を気相で三酸化硫黄と反応させて繊維表面にスルフォン酸基を導入する(スルフォン化処理)やアクリル酸などの親水基を繊維にグラフト重合させることにより親水化した不織布などが適用できる。
特にセパレータの持つ空隙が微細で空隙の大きさが均一であって保液性が良いところから、繊維径が0.5デニール以下の微細繊維で構成された不織布が好ましい。ここでいうデニールとは長さ450mの繊維の重さが0.5gの何倍に相当するかを示す数値である。
中でもポリプロピレン等のポリオレフィンからなる第1成分とエチレンとビニルアルコールの共重合体からなる第2成分とを複合紡糸した分割型繊維を各成分毎に分割して微細繊維からなる不織布は、優れた親水性を長期に亘って持続する性質があるのでセパレータの主構成材料として好適である。
また、密閉形アルカリ蓄電池の場合、充電時に正極で発生した酸素を負極で吸収させる。
正極で発生した酸素はセパレータを通って負極に至るので、セパレータのガス透過性が悪いとガス吸収が阻害される。
前記保液性およびガス透過性を確保するためには、本発明においては、セパレータの目付け量が、目付量が35〜70g/mであることが好ましく、40〜60g/mであることがさらに好ましい。
目付量が70g/mを超えた場合、ガス透過性が不十分であり、充電時に発生するガスを電極で吸収させる機能が損なわれる虞がある。
また、目付量が35g/m未満の場合は、不織布を構成する繊維の分布の均一性が失われる確率が高くなり、保液性を損なったり電池を組み立てた時に内部短絡が発生したりする虞がある。
また、セパレータの厚さとしては、50〜120μmが好ましく、80〜110μmであることがさらに好ましい。
なお、ここでいうセパレータの厚さとは、日本工業規格(JIS)L1913(一般繊維不織布の試験法)に記載の厚さの試験法のうちA法(一般的な不織布)に従って測定した値をいう。
(極板群の構成)
本発明に係るニッケル水素蓄電池の極板群は、前記正極(ニッケル電極)と負極(水素吸蔵合金電極やカドミウム電極)をセパレータを介して積層させたものである。
本発明に係る第1の密閉形アルカリ蓄電池においては、該極板群を構成する負極の容量と正極の容量の比{N/P比}を1.02以上、1.45以下とすることが好ましく、1.1以上、1.45以下とすることがさらに好ましい。
この値は、従来のアルカリ蓄電池の1.5〜1.8に比べて低い値である。こうすることによって、高率放電特性を低下させることなく、さらに、前記圧力スイッチ機能または温度スイッチ機能と組み合わせることによって高率充電における充電効率の高いアルカリ蓄電池を得ることができる。
前記N/P比が1.02を下回ると、高率放電特性および高率充電における充電効率が低くなる。逆に1.45を上回ると放電容量の低い電池となる。
なお、ここでいう負極の容量、正極の容量とは、正極、負極をそれぞれ温度20℃において単極試験に供したときの放電容量を指す。単極試験の方法は、正極の単極試験を例に採ると、正極をセパレータを介して容量が大過剰の負極と積層し緊圧を加え、密度1.3g/cmのKOH水溶液を電解液とした試験用セル(開放型セル)を用意し、同セルに正極の電位を測定するための参照電極として例えば酸化水銀電極(Hg/HgO電極)を組み込む。正極の充填容量に対して0.1ItAの電流で16時間充電して1時間休止後、充電と同じ電流で参照電極に対して0mVになるまで放電する。正極の放電容量が安定するまで前記充放電を繰り返し行い、容量が安定した時点での放電容量をもって正極の容量とした。
負極の単極試験は、負極をセパレータを介して容量が大過剰の正極と組み合わせた試験用セル(開放型セル、負極の容量に対して正極の容量を大過剰とした以外は、前記正極の単極試験用セルと構成が同じ)を用意し、負極の充填容量に対して0.1ItAの電流で16時間充電して1時間休止後、充電と同じ電流で酸化参照電極(Hg/HgO電極)に対して−600mVになるまで放電する。
負極の放電容量が安定するまで充放電を繰り返し行い、容量が安定した時点での放電容量をもって負極の容量とした。
(アルカリ蓄電池の構成)
本発明に係るアルカリ蓄電池は、正極、セパレータ、負極を積層させた極板群と電解液からなる発電要素を密閉空間に収納した密閉形電池である。
前記発電要
素は、例えば負極端子を兼ねる金属製電槽内に収納され、該電槽の上部開放端は、正極端子を兼ねる金属製蓋によって閉鎖される。
前記電槽と蓋はその間に介在させた合成樹脂からなるガスケットによって電気的に絶縁され、且つ電槽と蓋の間隙は、該ガスケットによって気密に封止される。前記正極板には正極集電端子が接合されており、前記蓋と正極集電端子は正極リード板によって電気的に接続される。
前記負極板には負極集電端子が接合されており、該負極集電端子と前記電槽が接合される。
(アルカリ蓄電池の充電方法)
本発明に係るアルカリ蓄電池の充電方法は、充電中に電池内の気体圧力および/または電池温度が前記規定値を超えたときは充電を中断し、気体圧力および/または電池温度が前記規定値未満に低下したときに充電を行う。
本発明においては前記充電、充電中断、充電再開を繰り返し実施する。前記のように、本発明に係る充電様式は特に限定されるものではないが、定電圧充電が好ましい。
また、本発明のように充電、充電中断、充電再開を繰り返し行い、15〜30分間という短時間で充電を行うには、定電圧充電において印加する電圧を1.5〜1.7Vとすることが好ましい。
印加電圧が1.5V未満では短時間での充電ができず、1.7Vを超えると充電時の電池温度が高くなり電池性能を劣化させる虞が生じる。
また、充電効率が低くなる虞がある。
以下、実施例により本発明の詳細を説明する。
(本発明に係る第1の密閉形アルカリ蓄電池:N/P比が1.45以下)
(圧力スイッチ動作圧力および温度スイッチ動作温度の影響)
【実施例1】
(正極活物質粉末の作製)
公知の方法により水酸化ニッケルを主体とする正極活物質粉末を作製した。
硫酸アンモニウムと水酸化ナトリウムを含み、pHを11.8〜12.2に、温度を43〜47℃に設定した反応浴に、該反応浴を攪拌しながら、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛および硫酸コバルトを含む水溶液を少量づつ添加混合した。
この間、反応浴のpHと温度を前記の範囲内に制御した。これにより、水酸化亜鉛および水酸化コバルト固溶した水酸化ニッケル粉末を生成させた。該粉末に含まれるZnおよびCoの比率をそれぞれ金属比率で3重量%、2重量%とした。
次いでpHおよび温度を前記と同じ値に設定した水酸化ナトリウムの水溶液に前記水酸化ニッケル粉末を浸漬し、該溶液を攪拌しながら硫酸コバルトの水溶液と水酸化ナトリウムの水溶液を少量づつ添加した。この間反応浴のpHおよび温度を前記範囲内に入るよう制御した。
これにより、前記水酸化ニッケルを主成分とする粉末の表面に水酸化コバルトからなる被覆層を形成させた平均粒径が10μmで球形状の活物質粉末を得た。
正極活物質粉末を得た。水酸化ニッケル系活物質粉末に占める被覆層の比率を4質量%とした。
(正極活物質粉末の化学的酸化による酸化処理)
前記水酸化ニッケル系活物質粉末100gを温度50℃に保った濃度10重量%のNaOH水溶液400cmに投入し、撹拌して分散させながら、酸化剤溶液(NaClO、有効濃度10%)を45cm添加した。
その後1時間撹拌を続けた後、粉末を濾別し、水洗した後空気中で温度80℃におい
て乾燥した。
(正極活物質粉末の加熱処理)
前記酸化処理を施した水酸化ニッケル系活物質粉末に濃度30重量%のNaOH水溶液20gを添加し、湿潤状態とした後、アルゴン雰囲気において温度120℃において撹拌しながら加熱した。
次いで水洗した後、温度80℃において1時間乾燥して、正極活物質粉末を得た。得られた活物質10gを容量10cmのメスシリンダ内に投入し10cmの高さから硬質ゴム製の板の上に自然落下させた。
該落下操作を100回繰り返し行いタップ密度を測定した。得られた活物質粉末のタップ密度は2.1であった。
(正極活物質粉末の遷移金属元素の平均酸化数の測定)
硫酸第一鉄法により正極活物質粉末の平均酸化数を求めた。
具体的には、正極活物質(試料)約0.1gと硫酸第一鉄アンモニウム約1gを秤量し、これを温度5℃に設定した濃度20容積%の酢酸水溶液を添加する。溶液を約5時間撹拌して試料および硫酸第一鉄アンモニウムを完全に溶解させた後、該溶液を濃度0.02モル/dmの過マンガン酸カリウム水溶液を用いて滴定し、下記の式から試料の活性酸素量(mg)を求めた。

上記式(1)中、Xspは試料の秤量量(g)、XFeは硫酸第一鉄アンモニウムの秤量量(g)、Vは過マンガン酸カリウム水溶液の滴定量(cm)、fは過マンガン酸カリウム水溶液のファクター、392.14は硫酸第1鉄アンモニウムの分子量である。
次に、試料粉末中に含まれるニッケル量(mg)およびコバルト量(mg)を、例えばICP発行分光分析法により定量し、下記の式より正極活物質粉末の平均酸化数を求めた。(ここでいう平均酸化数とは正極活物質粉末に含まれるニッケルとコバルトを含む平均の酸化数のことである。)得られた活物質に含まれる
ニッケルとコバルト(遷移金属元素)の平均酸化数は2.15であった。

上記式中、16000は酸素原子の原子量×1000、58690はニッケル原子の原子量×1000、58933.2はコバルト原子の原子量×1000を示す数字である。
(ニッケル電極の作製)
前記加熱処理後の活物質粉末100gに平均粒径1μmのYb粉末を添加し、混合機を用いて均一になるように混合して正極用粉末材料とした。
なお、正極用粉末材料中に含まれるYbの比率がYb単体換算で2重量%となるようにYb粉末の添加比率を調整した。該正極用粉末材料80重量部と濃度0.5重量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液20重量部とを混合してペーストとした。
該ペーストを厚さ1.5mm、空隙率95%の帯状のニッケル製多孔体基板に塗布充填した。乾燥してペーストの水分を除去後、加圧用ロールにて加圧し、厚さ0.8mmの帯状のニッケル電極用原板を得た。該原板を所定の寸法に裁断して円筒型電池(AAサイズ)用のニッケル電極とした。
なお、得られたニッケル電極の活物質充填容量は、2000mAhであった。
(負極の作製)
活物質として組成がMmNi3.6Co0.7Mn0.4Al0.3(Mmは、La、Ce、Pr、NdおよびSm等の希土類元素の混合物であるミッシュメタルを指す)、平均粒径30のμmの水素吸蔵合金粉末を適用した。
該水素吸蔵合金粉末83.5重量部と濃度1重量%のメチルセルロース水溶液15重量部と濃度60重量%のスチレンブタジエンゴム(SBR)粉末の分散液1.5重量部を混合してペーストを作製し、該ペーストを、ニッケルめっきを施した厚さ45μm、開口率45%の穿孔鋼板上にペーステイングした。
次いで乾燥後ロールを通してプレス加工を施し、厚さ0.3mmの長尺の負極用原板を得た。該原板を所定の寸法に裁断して円筒型電池(AAサイズ)用の負極とした。該負極の活物質充填容量を前記正極の活物質充填容量の1.2倍の2400mAhとした。
(円筒型ニッケル水素蓄電池の作製)
エチレンとプロピレンの1/1の共重合体からなり、繊維径が0.2デニール、三酸化硫黄との気相反応により公知の方法によってスルフォン酸基を導入した繊維で構成した、目付量が50g/m、厚さが100μm、のポリプロピレン製不織布からなるセパレータを介して正極と負極を積層し、該積層体を捲回して負極を最外周に配置した極板群とした。
なお、前記繊維のスルフォン酸基の導入比率(以下スルフォン化度という)を1.3重量%とした。
該極板群の上側捲回端面に正極集電端子をシリーズスポット溶接にて接合させた。該極板群を円筒型の金属製電槽に挿入し、捲回式極板群の最外周に位置する負極と金属製電槽を当接させた。
図1に示したように正極集電端子にニッケル板製の正極リード板を接合し、7モル/dmの水酸化カリウムと0.5モル/dmの水酸化リチウムを含む水溶液1.7cmを注入した。
なお、本実施例ではセパレータに用いた繊維のスルフォン化度を1.3重量%としたが、本発明に係る電池の場合、これに限定されるものではない。
ただし、スルフォン化度は0.5〜2重量%が好ましい。
該比率が0.5重量%未満では繊維の親水性が劣り、セパレータの保液性が低い。
スルフォン化度が2重量%を超えると繊維の機械的強度が劣る欠点がある。
ここでは、蛍光X線分析によってセパレータに含まれるSを定量し、求めた値を1m当たりの量(g/m)に換算して、該換算値のセパレータの目付け量に対する比率(%)をスルフォン化度とした。
次いで、内面に図1に示したように圧力スイッチを取り付けた蓋を適用し、前記正極リード板と圧力スイッチの金属製剛性板を接合し、所定の方法で密閉してAAサイズの密閉形の電池とした。
前記圧力スイッチの動作圧力(前記のように充電回路がOFFとなる圧力)を2MPaに設定した。本実施例では温度スイッチ機能を設けなかった。なお、安全弁の動作圧力(密閉が破れて前記図1の透孔10を通って内部の気体が外に排出されるに至ったときの電池内部の圧力)を3.5MPaとした。
【実施例2〜実施例5】
前記実施例1において弾性係数の異なるスプリングを適用し圧力スイッチが動作する規定圧力をそれぞれ0.7MPa、1MPa、3MPa、3.3MPaとし、それ以外は、実施例1と同じ構成とした。該電池を、それぞれ実施例2、実施例3、実施例4および実施例5に係る電池とした。
(比較例1)
前記実施例1において蓋に圧力スイッチを取り付けず、正極集電端子と蓋とを帯状ニッケル板製のリード板で直接接続した。それ以外は、実施例1と同じ構成とした。
該電池を比較例1に係る電池とした。
(化成)
前記実施例1〜実施例5および比較例1に係る電池密閉形アルカリ蓄電池をそれぞれ10個づつ用意し、温度20℃で3時間放置後、温度20℃において化成に供した。
初回の充電を0.05ItAの電流で20時間充電し、次いで0.2ItAの電流で放電終止電圧を1.0Vとして初回の放電を行った。
2回目以降は0.1ItAの電流で16時間充電し、0.2ItAの電流で放電終止電圧を1.0Vとして放電した。該充放電を1サイクルとして初回を含めて10サイクル充放電を繰り返し行った。
(電池試験1)
前記化成終了後の電池に、電池の側面の温度を図る温度センサーを取り付けた後、周囲温度20℃において0.1ItAの電流で16時間充電し、1時間休止後0.2ItAの電流で放電終止電圧を1.0Vとして放電した。
該放電により得られた放電容量(10個の電池の平均値)をK(mAh)とする。その後前記それぞれ10個の電池を5個づつ2組に分け、各組5個づつの電池をそれぞれ周囲温度20℃と周囲温度45℃において、1.65Vの定電圧を印加して15分間充電し、温度20℃において1時間休止後0.2ItAの電流で放電終止電圧を1.0Vとして放電した。該充電時の電池表面の最高温度(5個の電池の平均値)を電池表面の到達温度とした。
該1回目の定電圧充電後の放電により得られた放電容量(5個の電池の平均値)をL(mAh)とする。L(mAh)/K(mAh)×100(%)を1.65V定電圧充電における充電効率(%)とした。
周囲温度20℃において充電電圧を1.65Vとして定電圧充電を行い1時間休止した後、1ItAの電流で放電終止電圧を0.9Vとして放電した。
該充電および放電を1サイクルとして放電容量が該充放電サイクルにおける1サイクル目の放電容量L(mAh)の80%に低下するまで充放電を繰り返し実施し、その時のサイクル数(5個の電池の平均値)をサイクル寿命とした。
試験結果を表1に示す。

また、図2に実施例1に係る電池と比較例1に係る電池を周囲温度20℃において充電電圧1.65Vで15分間充電したときの電池内の圧力の経時変化、図3に同充電時の電池側面の温度の経時変化を示す。
さらに、図4に前記充放電サイクル試験における放電容量の推移を示す。
表1に示す如く、実施例1〜実施例5に係る電池および比較例1に係る電池を通常の定電流充電(0.1ItA、16時間充電)した後の放電容量{K(mAh)}においては大差ないが、1.65Vの定電圧で15分間充電したときの充電効率において、実施例に係る電池の性能が比較例1に係る電池の性能を大きく上回っている。
温度20℃において1.65Vの定電圧で15分間充電した場合、実施例1、実施例3、実施例4においては充電高率が10%以上比較例1を上回っている。
これは、図3に示したように比較例1においては充電の経過とともに電池の温度が上昇し充電の末期では電池温度が100℃を超えている。
このために充電によって特性が劣化し容量が低下したためである。これに対して、実施例1の場合は電池の内圧が規定値の2MPaに達して圧力スイッチが動作し一旦充電がOFFになった後も充電のONとOFFが交互に繰り返されて、圧力スイッチが最初に動作した以降においてさらに10%以上充電できる(他の実施例電池も同様の充電挙動を示す)。
さらに、図3に示すように充電中の電池温度が60℃以下に抑えられ、特性の劣化による容量低下を招くことがない。
このために、実施例電池の場合は高い充電効率を達成することができる。実施例に係る電池の中でも、特に実施例1、実施例3、実施例4に係る電池の充電効率、サイクル寿命が優れているところから電池内圧力規定値を1〜3MPaに設定するのが好ましいことが分かる。
1.65Vの定電圧で充電した場合、図2に示すように充電開始後約10分を経過すると電池の内圧が急速に高くなる。
そのまま充電を継続すると実施例1に係る電池においては圧力スイッチ機能が働き充電のON、OFFが繰り返されて電池の内部圧力が鋸の歯状に変化する。このように圧力スイッチ機能が働くために図3に示したように実施例1に係る電池の場合は電池温度の上昇が抑制され最高でも57℃である。
一方比較例1に係る電池の場合は、充電がONのままであり図2に示すように電池の内圧が上昇し続け安全弁が動作するに至り、その時点で充電がOFFになる。
また、図3に示すように充電中電池温度が上昇し続け充電終了寸前には115℃という高温になった。
電池温度が高温になると充電効率が低下すると共に、その後の電池性能が劣化する。表1および図4に示すように比較例1に係る電池は、実施例1に係る電池に比べて充電効率が低く充放電を繰り返し行った場合急激に性能(放電容量)が低下することが分かる。
特に周囲温度が45℃において充電した場合、比較例1に係る電池においては充電効率が極端に低下する欠点がある。
(電池温度規定値の影響)
【実施例6〜実施例9】
前記比較例1(圧力スイッチ機能を設けず)において、温度スイッチ機能のみを設けた(図1において、圧力スイッチを設けず、バイメタル製の正極リード板の一旦を金属製の蓋の内面に接触させることにより、正極と正極端子との電気的な導通を図った)。正極リード板に適用したバイメタルの温度特性を変えることにより、実施例6〜実施例9の温度スイッチ機能の動作温度(充電回路がOFFになる温度)をそれぞれ50℃、60℃、80℃、100℃に設定し、それ以外は、比較例1と同じ構成とした。該電池を、それぞれ実施例6、実施例7、実施例8および実施例9に係る電池とした。
(電池試験2)
前記と同様に化成した実施例6〜実施例9に係る供試電池(各10個づつ)に、電池内の気体圧力を計測するための圧力センサーを取り付けた。
各10個の電池を5個づつ2組に分け、それぞれ周囲温度20℃と45℃において充電電圧1.65Vで15分間充電した時の電池内の最高圧力を電池内気体圧力到達値(5個の電池の平均値)とした。また、電池試験1と同様に充電効率(5個の電池の平均値、%)を求めた。その後前記電池試験1と同様の充放電試験を行い、サイクル寿命(5個の電池の平均値)を求めた。試験結果を表2に示す。


実施例6〜実施例9に係る電池はいずれも比較例1に係る電池に比べて1.65V定電圧充電を行ったときの充電効率が高い。
実施例に係る電池の中でも、実施例7、実施例8に係る電池は、充電実施の周囲温度が20℃、45℃の両方において充電効率が高い。
このことから、電池温度規定値は50〜80℃が好ましく60〜80℃がさらに好ましいことが分かる。充電時に電池温度が80℃を超えると、正極での酸素発生が活発になることおよび負極の水素吸蔵能が低下するために充電効率が低いと考えられる。
また、電池温度規定値が50℃未満の場合には、充電開始後短時間で電池温度が規定値に達してしまい充電がOFFになるために、たとえば充電時間を15分間と短時間に限定した場合には充電効率が低くなるため好ましくない。
(負極容量/正極容量比の影響)
【実施例10〜実施例13】
前記実施例1(動作圧力が2MPaの圧力スイッチ付き)において圧力スイッチの他に動作温度80℃の温度スイッチを取り付けた。正極の容量を固定し、負極の容量を変えることによってN/P比を1.0〜1.6の範囲で変化させた。
負極容量/正極容量比(N/P)をそれぞれ1.0、1.02、1.45、1.6とし、それ以外の構成は、実施例1と同じとした。
該電池を、それぞれ実施例10、実施例11、実施例12および実施例13に係る電池とした。
(比較例2、比較例3)
前記実施例10において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例10に係る電池と同一の構成の電池とした。該電池を比較例2に係る電池とする。
前記実施例13において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例13に係る電池と同一の構成の電池とした。該電池を比較例3に係る電池とした。
(電池試験3)
実施例10〜実施例13および比較例2、比較例3に係る電池をそれぞれ5個づつ用意し、前記と同様に化成した後、周囲温度20℃において0.1ItAの電流で16時間充電し、1時間休止後0.2ItAの電流で放電終止電圧を1.0Vとして放電した。この時に得られた放電容量をK(mAh)とする。
さらに、0.1ItAの電流で16時間充電し、1時間休止後3ItAの電流で放電終止電圧を0.8Vとして放電した。この時に得られた放電容量をM(mAh)とする。前記放電容量MとKの比{M(mAh)/K(mAh)×100(%)}を高率放電性能を表す指標とした。さらに、前記と同様に化成した実施例9〜実施例14に係る供試電池に、温度20℃において前記電池試験1と同様の試験を行い、充電効率およびサイクル寿命を調べた。試験結果(5個の平均値)を表3に示す。

表3に示したように、実施例電池(圧力スイッチ機能付)と比較例電池(圧力スイッチ機能なし)のうちN/P比が同じもの同士を比較すると、N/P比が1.0としたものに比べてN/Pを1.2としたものの方が圧力スイッチ機能をつけたことによって充電効率およびサイクル性能が顕著に向上している。
そして、実施例11〜実施例13に係る電池のM/Kは、N/P比を1とした実施例10に係る電池に比べて高率放電性能を表す指標M/Kおよび1.65Vで15分間定電圧充電を行ったときの充電効率が高い。
特にN/P比を1.2〜1.6とした実施例12〜実施例13に係る電池の特性が優れている。
このように短時間での充電においても高い充電効率および優れたサイクル性能が達成されたのは、N/P比を1.02〜1.6の範囲に設定したことと電池に圧力スイッチ機能を持たせたことによるものである。
ただし、AAサイズの電池において正極の容量を2000mAhと大きくした電池において、N/P比を1.6とした実施例13に係る電池の場合は、負極活物質の充填量を多くしているので、負極板の厚さが大きく、捲回式極板群を構成したり電池を組立てたりするときに不良が発生し易くなり、歩留まりが低くなる欠点がある。
従って、本発明に係る第1の密閉形アルカリ蓄電池においてはN/P比を1.02〜1.45とする。なかでもN/P比を1.2〜1.45にすることがさらに好ましい。
(正極活物質の酸化数)
【実施例14〜実施例19】
前記実施例1において、正極活物質粉末を酸化するときの酸化剤溶液(NaClO、有効濃度10%)の添加量を変えることにより正極活物質の酸化数(正極活物質に含まれるNiとCoの平均酸化数)の異なる正極活物質を用意し、それぞれの正極活物質を適用し、それ以外は実施例1に係る電池と同一に電池を作製した。
即ち、平均酸化数2.0、2.04、2.07、2.3、2.4、2.5とした正極活物質を適用した電池を作製した。
該電池を、それぞれ実施例14、実施例15、実施例16、実施例14実施例17、実施例18および実施例19に係る電池とした。
(比較例4、比較例5)
前記実施例14において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例14に係る電池と同一の構成の電池とした。該電池を比較例4に係る電池とする。
前記実施例19において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例19に係る電池と同一の構成の電池とした。該電池を比較例5に係る電池とした。
(電池試験4)
実施例14〜実施例19および比較例4、比較例5に係る電池をそれぞれ5個づつ用意し前記と同様に化成した。化成後の電池(放電後の電池)を、それぞれ5個づつ周囲温度20℃において0.1ItAの電流で16時間充電し、1時間休止後0.2ItAの電流で放電終止電圧を1.0Vとして放電した。
該放電により得られた放電容量をK(mAh)とする。該電池に電池の内圧を測定するための圧力センサーを取り付け、周囲温度20℃において電流1ItAにて1時間充電したときの電池の内圧を測定した。
その後、前記同様周囲温度20℃において充放電サイクル試験に供した。なお、実施例12に係る電池を別途に5個用意し、実施例15〜実施例18と同一の試験方法にて電池の内圧を測定した。結果(5個の電池の平均値)を表4に示す。


表4に示したように、実施例電池(圧力スイッチ機能付)と比較例電池(圧力スイッチ機能なし)のうち正極活物質に含まれる遷移金属元素の平均酸化数が同じもの同士を比較すると平均酸化数が2.0のものに比べて平均酸化数が2.15のものの方が、1.65Vで15分間充電したときの充電効率およびサイクル性能が顕著に向上している。実施例14に係る電池に比べて実施例1、実施例15〜実施例19に係る電池が1ItAにて1時間充電したときの電池内圧上昇が抑制されている。
これは、正極を電池に組み込む以前に正極活物質の酸化数を高めておいたために、負極において放電リザーブ生成が抑制され、充電リザーブが確保されたことにより、充電時に負極からの水素の発生が抑制されたために電池の内圧上昇が抑制されると同時に充電効率が高くなったものと考えられる。
実施例15〜実施例19に係る電池において、15分間という短時間の充電において高い充電効率および優れたサイクル性能を達成することができたのは、前記平均酸化数を2.04〜2.5の範囲に設定したことと電池に圧力スイッチ機能を持たせたことによる。
ただし、酸化数を2.4と高くした実施例18に係る電池の場合、起電反応に寄与する正極活物質量が少なくなるので放電容量K(mAh)が若干低く、平均酸化数を2.5と高くした実施例19に係る電池の場合、放電容量K(mAh)がさらに低くなる。また、実施例に係る電池のうち特に実施例12、実施例16〜実施例19に係る電池、特に実施例12、実施例17、実施例18の電池内圧抑制効果、充電効率およびサイクル性能が優れている。
このことから、電池に組み込む以前の正極活物質の酸化数は、2.04〜2.4が好ましく、2.07〜2.3がさらに好ましい。
(正極の電気化学的酸化)
【実施例20】
実施例1において正極活物質粉末の化学的酸化処理およびアルカリ処理を省略し、その他は実施例1と同様に正極を作製した。
該正極を、ニッケル板を対極とし、7.5モル/dmのKOH水溶液を電解液に適用して開放型のセルを組立て、正極の容量に対して1/50ItAで7.5時間充電した。充電後正極を回収し水洗乾燥をおこなった。該正極を10個用意し、5個の正極から活物質粉末を回収して前記と同じ方法にて活物質に含まれるNiとCoの平均酸化数を求めた。
残った5個の電極を用いて前記実施例1と同様に電池を作製し、化成をおこなった。該電池を、実施例20に係る電池とした。
【実施例21】
実施例1において正極活物質粉末の化学的酸化処理およびアルカリ処理を省略し、その他は実施例1と同様に正極を作製した。
該正極を用いて実施例1と同様に電池を10個組み立てた。ただし、電池を封口する前に、正極の容量に対して1/50ItAで7.5時間充電した。充電後5個の電池について正極を回収し水洗乾燥をおこなった。
実施例1と同様に正極の活物質粉末に含まれるNiとCoの平均酸化数を求めた。残った5個の電池を密閉容器内に入れて1時間連続的に吸引した。
この間、密閉容器内の圧力を0.01×MPa以下に保った。
次いで電池を封口し前記と同様に化成を行った。該電池を、実施例21に係る電池とした。
(比較例6)
前記実施例20において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例20に係る電池と同一の構成の電池とした。該電池を比較例6に係る電池とした。
(電池試験5)
実施例20および実施例21および比較例6に係る電池それぞれ5個づつ用意し、該電池を前記電池試験4と同様の電池試験に供した。結果を表5に示す。

表5に示したように、実施例20および実施例21に係る電池は、充電時の電池の内圧上昇抑制機能、充電効率、サイクル性能のいずれについても前記実施例14に比べれば優れた性能を示し、前記実施例1に劣らない程度の性能を有する。
このことは、正極を充電して電気化学的に酸化することによってNiとCoの酸化数を高め、該充電によって負極に水素が蓄積しないような方策を講じることによって放電リザーブ生成を抑制する効果が得られたものと考えられる。
(希土類元素およびCa含有正極)
【実施例22〜実施例28】
前記実施例1において、正極用粉末材料中に含まれる希土類元素の化合物をYb粉末に替えてHo粉末、Er粉末、Tm粉末、Lu粉末Y粉末およびTm粉末、Yb粉末、Lu粉末の3種類の粉末の等量混合粉末およびCa(OH)の粉末を添加した。
実施例22〜実施例28の全てにおいて、正極用粉末材料中に含まれる希土類元素およびCaの含有比率を元素単体換算で実施例1と同じ2重量%とした。
それ以外は、実施例1と同じとした。
該電池を、それぞれ、実施例22、実施例23、実施例24、実施例25、実施例26、実施例27および実施例28に係る電池とした。該電池をそれぞれ5個づつ用意し、電池試験6に供した。
(電池試験6)
前記と同様に化成した実施例22〜実施例28に係る電池を周囲温度20℃において前記電池試験2と同様の試験に供した。結果(5個の電池の平均値)を表6に示す。

表6に示した通り、実施例22〜実施例28に係る電池は、後記実施例29に係る電池に比べて充電効率、サイクル性能ともに優れている。
これは、正極に前記希土類元素あるいはCaを含有させると正極の酸素過電圧が増大し、充電効率が向上したためと考えられる。
実施例22〜実施例28に係る電池のように、15分間という短時間の充電で高い充電効率を得、優れたサイクル性能を達成したのは、正極に希土類元素やCaを含有させたことと電池に圧力スイッチ機能を持たせたことによる。
【実施例29〜実施例35】
前記実施例1において、正極用粉末材料中に含まれるYbの比率をYb単体換算で0および0.1〜8重量%の範囲で変化させた。
すなわち、0、0.1、0.5、1、4、5および8重量%とした。それ以外は、実施例1と同じ構成とした。
該電池を、それぞれ実施例29、実施例30、実施例31、実施例32、実施例33実施例34および実施例35に係る電池とした。
(比較例7、比較例8)
前記実施例29において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例29に係る電池と同一の構成の電池とした。該電池を比較例7に係る電池とする。
前記実施例35において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例35に係る電池と同一の構成の電池とした。該電池を比較例8に係る電池とした。
(電池試験7)
前記と同様に化成した実施例29〜実施例35および比較例7、比較例8に係る電池を周囲温度20℃において前記電池試験2と同様の試験に供した。結果(5個の電池の平均値)を表7に示す。

表7に示したように、正極のYbの含有比率が0重量%と2重量%で、Ybの含有比率が同じ実施例電池(圧力スイッチ機能付)と比較例電池(圧力スイッチ機能なし)を比べると、Ybの含有比率が0重量%のものに比べて、Ybの含有比率が2重量%のものの方が1.65Vで15分関充電したときの充電効率およびサイクル性能が電池に圧力スイッチ機能を持たせることによって顕著に向上している。
実施例1、実施例30〜実施例35に係る電池は、いずれも実施例29に係る電池に比べて、サイクル特性が優れている。
これは、正極に添加した希土類元素の酸化物が充電時に正極での酸素の発生を抑制する効果によるものと考えられる。
すなわち、充電時の正極での副反応が抑制されて充電効率が向上するとともに、負極の水素吸蔵合金が正極で発生する酸素による腐食が低減されたことによる効果と考えられる。
実施例1および実施例30〜実施例34に係る電池において、15分間という短時間の充電で高い充電効率と優れたサイクル性能を達成できたのは、正極に希土類元素であるYbを含有させ、且つ、その含有比率を0.1〜5重量%に設定したことと電池に圧力スイッチ機能を持たせたことによるものである。
該実施例では、正極に希土類元素の酸化物を添加した例を示したが、希土類元素の水酸化物を添加した場合も同様の効果が得られる。
優れている実施例のうちで、特に実施例1、実施例30〜実施例34に係る電池は、充電効率においても優れた性能を示す。これに対して、実施例35に係る電池においては、1.65Vの定電圧充電後の放電容量が低い欠点がある。
これは、正極に含まれるYbの比率が大きいために正極の導電性が低下して活物質の利用率が低下したものと考えられる。
従って、正極に添加する希土類元素の化合物の比率は、希土類元素単体換算で0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜4質量%がさらに好ましい。
(電解液量)
【実施例36〜実施例40】
前記実施例1において、電池に内包させる正極の単位容量当たりの電解液量を0.4cm/Ah〜1.05cm/Ahの範囲で変化させた。
すなわち、0.4cm/Ah、0.6cm/Ah、1.05cm/Ah、1.10cm/Ahおよび1.20cm/Ahとした。それ以外は、実施例1と同じ構成とした。
該電池をそれぞれ実施例36、実施例37、実施例38、実施例39および実施例40に係る電池とした。
(比較例9〜比較例11)
前記実施例38において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例38に係る電池と同一の構成の電池とした。該電池を比較例9に係る電池とした。
前記実施例36において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例36に係る電池と同一の構成の電池とした。
該電池を比較例10に係る電池とした。前記実施例40において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例40に係る電池と同一の構成の電池とした。該電池を比較例11に係る電池とした。
(電池試験8)
前記と同様に化成した実施例36〜実施例40、比較例9〜比較例11に係る電池それぞれ5づつを、温度20℃において前記電池試験3と同様の試験を行い高率放電性能、充電効率およびサイクル寿命を調べた。試験結果(5個の電池の平均値)を表8に示す。また、試験中における漏液の発生の有無を目視により調べた。


表8に示す如く、実施例電池(圧力スイッチ機能付)と比較例電池(圧力スイッチ機能なし)のうち電解液量が同じもの同士を比較すると電解液量が0.40cm/Ahに比べて、電解液量が1.05cm/Ahおよび1.20cm/Ahとしたものの方が電池に圧力スイッチ機能を付けたことによる13.5Vで15分間充電したときの充電効率およびサイクル性能の向上が顕著である。
実施例36に係る電池に比べて、実施例1、実施例37〜実施例40に係る電池は、高率放電での放電性能{M(mAh)}、充電効率、サイクル性能共に優れている。実施例36に係る電池は、電池の内部インピーダンスが高くて充電電流が小さくなり、15分間充電という短時間の充電では充電電気量が小さいために充電効率が低くなったものと考えられる。
実施例1、実施例37〜実施例40に係る電池において15分間という短時間の充電において高い充電効率と優れたサイクル性能を達成できたのは、電解液量を0.6〜1.2cm3/Ahに設定したことと電池に圧力スイッチ機能を持たせたことによるものである。
ただし、実施例40に係る電池の場合は、充放電サイクル試験の初期(50サイクル以内)において5個とも目視により漏液の発生が認められた。以上の結果から、電解液量としては、0.6cm/Ah〜1.4cm/Ahが好ましく、0.8cm/Ah〜1.05cm/Ahがさらに好ましい。
電解液であるアルカリ水溶液の組成に関して、ここで詳細な説明を省略するが、本発明に係る電池に適用する電解液は、従来の電池と同じKOHを主体とする電解質の水溶液であって、電解液1dm中に含まれる電解質の総和は、7.5±0.5モル/dmが好ましい。
電解質の総和が9.0モル/dmを超えたり、6.0モル/dm未満の場合は、電池の内部インピーダンスが高くなり、充電時に水素や酸素などのガスの発生が増え、充電効率が低下したり、低温での特性が低下するので好ましくない。
なお、電解質は前記KOHを主体とし、実施例で示したように、これに少量のLiOHを混合使用したり、さらに実施例では示さないがNaOHを混合使用することもできる。
(セパレータの主構成材料の繊維径と材質)
【実施例41】
前記実施例38において、繊維径が0.7デニールのエチレンとプロピレンの比が1/1の共重合体の繊維からなり目付量40g/m、厚さ100μmの不織布をスルフォン化したセパレータを適用した。
それ以外は、実施例38と同じ構成とした。(スルフォン基導入比率を実施例12と同じ0.3重量%とした。
該電池を実施例41に係る電池とした。
【実施例42】
前記実施例38において、繊維径が0.5デニールのエチレンとプロピレンの比が1/1共重合体繊維からなり、目付量40g/m、厚さ100μmの不織布をスルフォン化したセパレータを適用した。
それ以外は、実施例38と同じ構成とした。
該電池を実施例42に係る電池とした。
【実施例43】
前記実施例38において、繊維径が0.3デニールのエチレンとプロピレンの比が1/1の共重合体繊維からなり、目付量40g/m、厚さ100μmの不織布をスルフォン化したセパレータを適用した。それ以外は、実施例38と同じ構成とした。
該電池を実施例43に係る電池とした。
【実施例44】
前記実施例38において、ポリプロピレンとエチレン−ビニルアルコール共重合体の比率が重量比で1:1であって、それぞれが繊維の断面において交互に隣接されるように複合紡糸された繊維径3デニールの分割性複合繊維60重量部とポリプロピレンを芯成分、ポリエチレンを鞘成分とする繊維径2デニールの芯鞘型複合繊維40重量部とを用いて目付け量が40g/mになるように湿式抄紙した後、これに高圧水流をを噴射して繊維を交絡させると同時に分割性繊維を分割して得た分割後の繊維径が0.2デニール、厚さが100μmの不織布製のセパレータを適用した。
それ以外は、実施例38と同じ構成とした。
該電池を実施例44に係る電池とした。
(比較例12、比較例13)
前記実施例44において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例44に係る電池と同一の構成の電池とした。該電池を比較例12に係る電池とした。
前記実施例41において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例41に係る電池と同一の構成の電池とした。
該電池を比較例13に係る電池とした。
(電池試験9)
前記と同様に化成した実施例41〜実施例44および比較例12、比較例13に係る電池それぞれ5個づつを、周囲温度20℃において前記電池試験4と同様にして充電時の電池の内圧およびサイクル性能を調べた。試験結果(5個の電池の平均値)を表9に示す。


表9に示すように、実施例電池(圧力スイッチ機能付)と比較例電池(圧力スイッチ機能なし)のうちセパレータの繊維径が同じもの同士を比較すると、セパレータの繊維径が0.7デニールのものに比べて繊維径が0.2デニールのものの方が電池に圧力スイッチ機能を持たせたことによる1.65Vで15分間充電したときの充電効率およびサイクル性能の向上が顕著である。
これは、繊維径が小さい繊維を適用することによってセパレータが緻密でかつ孔の分布が均一ものとなり、電解液の保持性およびガス透過性に優れたものとなったことによると考えられる。
実施例38、実施例42〜実施例44に係る電池において、15分間という短時間の充電で高い充電効率と優れたサイクル性能を達成できたのは、セパレータを構成する繊維径を0.5デニール以下としたことと電池に圧力スイッチ機能を持たせたことによる。実施例41に係る電池比べて、実施例42、実施例43、実施例44に係る電池が充電時の電池内圧上昇抑制機能、サイクル性能共に優れており、実施例38、実施例43、実施例44に係る電池が特に優れている。
このことから、セパレータを構成する不織布の繊維径が0.5デニール以下が好ましく、0.3デニール以下がさらに好ましい。
また、同じ繊維径のセパレータで構成した実施例38と実施例44に係る電池を比較すると、実施例44に係る電池が電池内圧上昇抑制機能、サイクル性能共に実施例38に比べてさらに優れているところから、セパレータを構成する繊維の材質としてエチレンとビニルアルコールの共重合体とポリプロピレンからなる分割型繊維が特に好ましい。
これは、分割された繊維のうち、エチレンとビニルアルコールの共重合体が永続性に優れた親水性を有するためと考えられる。また、本実施例では適用しなかったが、分割性繊維を構成する繊維の一方が非親水性の場合(本実施例では上記ポリプロピレン繊維がそれに相当)、該非親水性繊維にスルフォン酸基のような親水基を導入して親水性を付与することもできる。
なお、実施例41〜実施例44のいずれの実施例においても後述の組立て不良の発生は認められなかった。
(セパレータの目付量、厚さ)
【実施例45〜実施例51】
前記実施例44において、セパレータの目付量を25〜80、厚さを40〜110μmの範囲で変化させた。
即ち、実施例45〜実施例50のセパレータの目付量および厚さをそそれぞれ実施例45は25g/m、40μm、実施例46は35g/m、70μm、実施例47は40g/m、80μm、実施例48は40g/m、110μm、実施例49は60g/m、100μm、実施例50は70g/m、100μm、実施例51は80g/m、100μmとし、それ以外は実施例44と同じとした。
実施例45〜実施例50個づつ組立て、組立て不良(組立て時の内部短絡の発生)に発生状況を調べた。
(比較例14、比較例15)
前記実施例45において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例45に係る電池と同一の構成の電池とした。
組立て不良の認められないものを5個選別した。
該電池を比較例14に係る電池とした。前記実施例51において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例51に係る電池と同一の構成の電池とした。
該電池を5個作製し比較例15に係る電池とした。
(電池試験10)
実施例45〜実施例51のうち組立て不良の認められないもの5個づつおよび比較例電池14、比較例電池15を前記と同様に化成したのち、周囲温度20℃において前記電池試験8と同様の試験方法で電池内圧抑制機能を調べた。
試験結果(5個の電池の平均値)を表10に示す。

表10に示すように、実施例電池(圧力スイッチ機能付)と比較例電池(圧力スイッチ機能なし)のうちセパレータの目付け量のおなじもの同士を比較すると、目付け量が80g/mに比べて、目付け量が70g/m以下のものの方が電池に圧力スイッチ機能を付けたときの1.65Vで15分間充電したときに充電効率が顕著に向上する。セパレータの目付け量が80g/mのものはセパレータのガス透過性が劣るために充電時に発生するガスの吸収が阻害されて電池の内圧が上昇し易くなって充電効率が低くなったものと考えられる。
実施例45〜実施例50に係る電池において、15分間という短時間の充電で高い充電効率が達成できたのはセパレータの目付け量を25〜70g/mにしたことと電池に圧力スイッチ機能を持たせたことによるものである。
ただし、実施例45に係る電池の場合は、高い比率で組立不良が発生した。これはセパレータの目付量が小さいために、捲回式極板群を作製する工程においてセパレータ貫通短絡が発生したためである。
また、実施例51に係る電池は、他の実施例に係る電池に比べ充電時の電池内圧上昇抑制効果が劣っている。
これは前記のように充電時に正極で発生する酸素がセパレータを通って負極側に移行し負極で吸収されるのを妨げるためであろうと考えられる。
表10に示したように実施例46〜実施例50に係る電池の特性が優れ、中でも実施例46〜実施例49の特性が優れている。
また、セパレータの目付け量が40g/m以上であれば組立て不良発生の虞が全くない。
このことから、セパレータの目付け量が35g/m〜70g/mが好ましく、40〜60g/mがさらに好ましい。
また、セパレータの厚さは、70〜110μmが好ましい。
(水素・酸素ガス吸収反応用触媒含有水素吸蔵合金電極)
【実施例52】
前記実施例45において、負極活物質として2重量%のラネーニッケル粉末を添加した水素吸蔵合金粉末を適用し、それ以外は、実施例45と同じ構成とした。
ラネーニッケル粉末は、平均粒径が約3μmであって、アルミニウムとニッケルの質量比が1/1合金を周知の方法により苛性アルカリの温水溶液中で展開することによって作製した。
該電池を、実施例52に係る電池とした。
【実施例53】
前記実施例51において、負極活物質として0.2重量%のラネーコバルト粉末を添加した水素吸蔵合金粉末を適用し、それ以外は、実施例51と同じ構成とした。
ラネーニッケル粉末は、平均粒径が約3μmであって、アルミニウムとコバルトの質量比が1/1合金を周知の方法により苛性アルカリの温水溶液中で展開することによって作製した。
該電池を、実施例53に係る電池とした。
【実施例54】
前記実施例51において、負極活物質として1重量%のラネーコバルト粉末を添加した水素吸蔵合金粉末を適用し、それ以外は実施例51と同じ構成とした。
該電池を、実施例54に係る電池とした。
【実施例55】
前記実施例51において、負極活物質として0.5重量%のラネーニッケル粉末と0.5重量%のラネーコバルト粉末の両方を添加した水素吸蔵合金粉末を適用し、それ以外は実施例51と同じ構成とした。
該電池を、実施例55に係る電池とした。
(比較例16)
前記実施例54において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例54に係る電池と同一の構成の電池とした。
該電池を比較例16に係る電池とした。
(電池試験11)
実施例52〜実施例55に係る電池をそれぞれ5個づつ用意し、前記同様化成したのち、前記電池試験4と同様の試験を行い、充電時の電池内圧上昇抑制機能、充電効率およびサイクル寿命を調べた。
試験結果(5個の平均値)を表11に示す。


表11に示した如く、実施例電池(圧力スイッチ機能付)と比較例電池(圧力スイッチ機能なし)のうち負極にラネーコバルトを含まないもの同士、0.5重量%のラネーコバルトを含むもの同士を比較すると、0.5重量%のラネーコバルトを含むものの方が、電池に圧力スイッチ機能を持たせたときにサイクル性能が顕著に向上している。
ラネーコバルトを負極に含む電池において、15分間という短時間での充電を繰り返し行っても性能低下が小さいのは、負極でのガス吸収が促進されているためと考えられる。
実施例52〜実施例55に係る電池において、15分間という短時間の充電を繰り返し行っても優れたサイクル性能が達成されたのは、負極にラネーニッケルやラネーコバルトを含有させたことと電池に圧力スイッチ機能を持たせたことによる。負極に実施例52〜実施例55に係る電池は、実施例44に係る電池に比べて、いずれも充電時の電池内圧上昇抑制機能およびサイクル性能が優れている。
前記N/P比が従来よりも小さく、かつ高率で充電する場合には充電時に負極から水素が発生し易くなる。
ラネーニッケルは負極が水素を吸収する反応を促進する触媒作用を有するので、実施例52に係る電池のようにN/P比が1.25と、従来の1.6を超える電池に比べてN/P比が小さい電池において電圧上昇抑制効果を示すものと考えられる。
アルカリ蓄電池を高率で充電した場合、充電時に正極から酸素が発生し易くなる。実施例53、実施例54に係る電池においてラネーコバルトは、負極が酸素を吸収する反応を促進する触媒作用を有する。本願発明のように高率充電を実現せんとする電池においては、負極にラネーコバルトを添加することによって充電時の電池内圧上昇抑制効果が顕著になると考えられる。
ラネーニッケルとラネーコバルトの両方を負極に添加した実施例55に係る電池は、実施例に係る電池の中でも特に優れた特性を示す。
ラネーニッケルおよびラネーコバルトの負極への添加比率は、特に限定されるものではないが、ラネーニッケルについては0.2〜2重量%、ラネーコバルトについては0.2〜1重量%の添加比率で顕著な効果が得られる。
(水素吸蔵合金の活性化処理)
【実施例56】
前記実施例44において、濃度7モル/dmのKOH水溶液に温度100℃において1時間浸漬処理した後、KOH水溶液をろ別し水洗乾燥した水素吸蔵合金粉末を用いた。
それ以外は、実施例44と同じとした。該電池を、実施例56に係る電池とした。
(比較例17)
前記実施例56において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例56に係る電池と同一の構成の電池とした。該電池を比較例17に係る電池とした。
(電池試験12)
化成処理後の電池を、前記電池試験4と同様に試験を行った。試験結果を表12に示す。


表12に示した如く、実施例電池(圧力スイッチ機能付)と比較例電池(圧力スイッチ機能なし)のうち水素吸蔵合金のアルカリ処理をしないもの同士、アルカリ処理をしたもの同士を比較すると、アルカリ処理をしたものの方が、15分間という短時間での充電を繰り返し行っても優れたサイクル性能を示し、また、充電時の電池の内圧上昇抑制効果においても優れているのは、水素吸蔵合金をアルカリ性水溶液に浸漬することによって、水素吸蔵合金の負極活物質としての活性が増大したために性能が向上したものと考えられる。
このように優れた性能を達成できたのは、水素吸蔵合金のアリカリ処理を行ったことと電池に圧力スイッチ機能を持たせたことによる。
また、本実施例では、アルカリ水溶液を用いたが、塩酸のような無機酸、酢酸のような有機酸の水溶液で処理しても活性化向上の効果が認められた。
(希土類元素含有水素吸蔵合金電極)
(希土類元素の種類)
【実施例57〜実施例63】
前記実施例44において、負極活物質である水素吸蔵合金粉末に、それぞれHo、Er、Yb、Tm、Lu、YおよびCeを希土類元素単体換算で1重量%添加した負極を適用し、それ以外は、実施例44と同じ構成とした。
該実施例をそれぞれ実施例57、実施例58、実施例59、実施例60、実施例61、実施例62および実施例63に係る電池とした。
【実施例64】
実施例64のみ水素吸蔵合金を前記実施例56と同じくアルカリ水溶液で処理した後、該水素吸蔵合金粉末にYb2O3をYb単体換算で1重量%添加した負極を適用し、それ以外は、実施例56と同じ構成とした。
該電池を実施例64に係る電池とした。
(比較例18、比較例19)
前記実施例60において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例60に係る電池と同一の構成の電池とした。該電池を比較例18に係る電池とした。
前記実施例64において圧力スイッチを設けず、それ以外は実施例64に係る電池と同一の構成の電池とした。
該電池を比較例19に係る電池とした。
(電池試験13)
前記と同様に化成した電池をそれぞれ5個づつ用意し、実施例46〜実施例52に係る電池を、周囲温度20℃において前記電池試験4と同様の試験を行い、充電効率、サイクル性能を調べた。試験結果(5個の平均値)を表13に示す。

表13に示したように、実施例57〜実施例64に係る電池は15分間という短時間での充電をくり返し行っても、表9に示した実施例44に係る電池に比べて優れたサイクル性能を示す。
また、実施例64に係る電池は表12に示した実施例56に係る電池(実施例64と同じく水素吸蔵合金のアルカリ処理実施)に比べて優れたサイクル性能を示す。
これは、負極に前記Ho〜YbおよびCeの希土類元素を添加することによって、水素吸蔵合金の耐食性が向上し、充電時に正極で発生する酸素によって合金が腐食するのが抑制されたためと考えられる。
また、実施例64に係る電池においては、水素吸蔵合金粉末をアルカリ水溶液で処理することによって充電時に正極からの酸素発生が抑制されたために、さらに良好なサイクル性能が得られたものと考えられる。
表13に示したように、実施例57〜実施例64に係る電池において、15分間という短時間での充電をくり返し行っても優れたサイクル性能を達成できたのは、負極に前記希土類元素を含有させたことと電池に圧力スイッチ機能を持たせたことによる。
(充電様式の比較:電池試験14)
前記実施例64に係る電池を5個用意し、化成終了後の電池を4ItAの電流で充電終止電圧1.65V、最長充電時間15分間として充電(比較例充電様式)を実施した後、0.2ItAの電流で放電終止電圧を1.0Vとして放電した。
該放電により得られた放電容量および前記同様0.1ItAの電流で16時間充電した後0.2ItAの電流で放電終止電圧を1.0Vとして放電したときに得られた放電容量に対する比率を実施例65における充電効率とした。
前記4ItAの電流で15分間充電、1ItA、放電終止電圧を0.9Vとして放電し、該充電放電を1サイクルとして充放電を繰り返し実施した。該サイクルにおいて放電容量が1サイクル目の放電容量の80%に低下するまでのサイクル数を実施例65におけるサイクル寿命とした。
試験結果を表14に示す。


表14に示す如く、同じ15分間の充電でも実施例65に係る定電流充電に比べて実施例64として示した定電圧充電様式を採用した場合充電効率が高い。
これは、密閉形アルカリ蓄電池において電池に圧力スイッチ機能および/または温度スイッチ機能を設け該機能と定電圧充電様式と組み合わせたことによる効果である。このように、種々の充電様式の中でも定電圧充電が好ましい。
(定電圧充電における充電電圧:電池試験15)
【実施例66〜実施例69】
前記実施例64において充電電圧を1.45〜1.8Vの範囲で変化させた。
即ち1.45V、1.5V、1.7V、1.8Vとし、それ以外は実施例64と同じとした。
該充電方法をそれぞれ実施例66、実施例67、実施例68および実施例69に係る充電方法とした。
また、電池の側面に温度センサーを取り付け
電池の温度を調べた。
(比較例20〜比較例21)
前記実施例66、実施例69に係る充電方法において、被充電電池として圧力スイッチを備えていない電池を適用した。
該充電をそれぞれ比較例20、比較例21とする。該試験の結果(5個の電池の平均値)を表15に示す。
また、1サイクル目の充電時の電池温度を図5に示す。


表15に示す如く、実施例67、実施例64、実施例68が充電効率が高い。
このことから、充電電圧としては、1.5〜1.7Vが好ましい。実施例69の場合充電開始後短時間で電池の内圧が規定値に達して充電を休止する時間が長くなるので15分間という短時間での充電において充電効率が低くなったものと考えられる。
また、実施例69の場合充電時において電池温度が90℃を超えており、充電を繰り返すたびに電池構成材料の劣化が促進されてサイクル特性が悪くなる虞があるところから好ましくない。
(本発明に係る第2の密閉形アルカリ蓄電池:N/P比が1.45を超える電池)
【実施例70】
(正極活物質の作製)
前記実施例1と同じ方法で水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を作製した。
ただし、合成した正極活物質の酸化処理および加熱処理を行わなかった。
実施例1と同じ方法活物質に含まれる遷移金属元素(Ni、Co)の平均酸化数を測定した結果平均酸化数は2.0であった。
(ニッケル電極の作製)
前記遷移金属元素(Ni、Co)の平均酸化数が2.0の正極活物質を用い、Yb粉末を添加しなかったことを除いては実施例1と同様にして放電容量が1600mAhの円筒形電池(AAサイズ)用のニッケル電極を作製した。
(負極の作製)
前記実施例1と同じ水素吸蔵合金粉末を用い、実施例1と同様の方法にて放電容量が2400mAhの円筒形電池(AAサイズ)用のニッケル電極を作製した。
(0126)
(円筒形ニッケル水素蓄電池の作製)
前記放電容量が1600mAhのニッケル電極(正極)と放電容量が2500mAhの水素吸蔵合金電極(負極)とを組み合わせて実施例1と同じ方法にてN/Pが1.5の円筒形ニッケル水素蓄電池(AAサイズ)を作製した。
但し、電解液注液量を2.0cmとした。なお、該ニッケル水素蓄電池には、実施例1と同様圧力スイッチ機能を持たせた。
ただし、圧力スイッチの動作圧力を0.5MPaとした。該電池を実施例70に係る電池とした。
(0127)
【実施例71〜実施例73】
前記実施例70において圧力スイッチの動作圧力を0.3MPaとした。
それ以外は、実施例70と同じとした。該実施例を実施例71に係る電池とした。
前記実施例70において圧力スイッチの動作圧力を1.0MPaとした。それ以外は、実施例70と同じとした。該実施例を実施例72に係る電池とした。
前記実施例70において圧力スイッチの動作圧力を2.0MPaとした。それ以外は、実施例70と同じとした。
該実施例を実施例73に係る電池とした。
(比較例22)
前記実施例70において、圧力スイッチ機能を設けない密閉形蓄電池を作製した。
それ以外は、実施例70と同じとした。該電池を比較例22に係る電池とした。
【実施例74】
前記実施例70において、負極の放電容量を2720mAhとし、その他は実施例70と同じとした。(前記N/Pが1.7である。)
該電池を実施例74に係る電池とした。
【実施例75〜実施例77】
前記実施例74において圧力スイッチの動作圧力を0.3MPaとした。
それ以外は、実施例74と同じとした。該実施例を実施例75に係る電池とした。前記実施例74において圧力スイッチの動作圧力を1.0MPaとした。
それ以外は、実施例74と同じとした。該実施例を実施例76に係る電池とした。前記実施例74において圧力スイッチの動作圧力を2.0MPaとした。
それ以外は、実施例74と同じとした。該電池を実施例77に係る電池とした。
(比較例23)
前記実施例74において、圧力スイッチ機能を設けない密閉形蓄電池を作製した。
該電池を比較例23に係る電池とした。
(化成)
前記実施例70〜実施例77および比較例22、比較例23に係るニッケル水素蓄電池を各々5個づつ容易し、
該電池を前記実施例1と同様の条件で化成した。
(電池試験16)
化成後のニッケル水素蓄電池を温度20℃において、電池試験1と同様の試験に供した。実施例72および比較例22に係る電池を1.65Vで15分間定電圧充電したときの電池の内圧と電池温度(電池側面の温度)をそれぞれ図6と図7に示す。
また、実施例70〜実施例77および比較例22、比較例23に係る電池の試験結果を表16に示す。


図6に示したように実施例72に係る電池の場合は、電池に取り付けた圧力スイッチが機能して、電池の内圧が1MPaを超えないように制御されており、図7に示したように充電中の電池表面の温度は60℃未満である。
これに対して、比較例22に係る蓄電池の場合には圧力スイッチ機能を設けていないために図7に示したように、充電中の電池温度が好ましい温度の上限値である80℃を遥かに超えて上昇している。
比較例22に係る電池は前記比較例1に係る電池同様、充電効率、サイクル性能共に劣っていた。
表16に示したように、実施例70〜実施例72および実施例74〜実施例76に係るニッケル水素蓄電池は、充電時の電池温度が特に好ましい温度の上限である60℃以下に抑えられている。
これは、圧力スイッチが機能して充電のONとOFFが繰り返されたために電池温度の上昇が抑制されたためと考えられる。
これに対して、実施例73および実施例77に係る電池は、充電時の電池温度がアルカリ蓄電池にとって好ましい温度の上限値である80℃を下回っているが、特に好ましい温度の上限である60℃を超えている。
これは、N/Pが1.45を超える電池においては、N/Pが1.45以下の電池に比べ充電時発生したガスを吸収する機能に優れているために充電時に電池の内圧の上昇が抑制されることと、ガス吸収の反応熱が大きいために充電時の電池温度の上昇が促進されるために、圧力スイッチが動作する以前に電池温度が60℃を超えて上昇したためと考えられる。
実施例73および実施例77に係る電池のサイクル性能が他の実施例に係る電池に比べて劣っているのはこのためと考えられる。
詳細は省略するが、電池内圧力の規定値を2.0MPaを超えた値に設定した場合には、充電時の電池の温度が好ましい温度の上限値80℃を超える虞が高く好ましくない。また、実施例71および実施例75に係る電池は、放電容量および充電効率が低い。
これは、圧力スイッチの動作圧を低く設定しているために、充電を開始して早期に圧力スイッチが動作し、充電OFFの時間の比率が大きくなったためと考えられる。
表16に示した結果により前記N/P比が1.45を超える密閉式アルカリ蓄電池においては、充電をOFFにする電池内圧の規定値(前記圧力スイッチの動作圧力設定値)を0.5〜2.0MPaとすることが好ましく、0.5〜1.0MPaとすることがさらに好ましい。
前記実施例70〜77に係る電池に比べ、比較例22、比較例23に係る電池は充電効率、サイクル性能ともに劣っている。
これは比較例に係る電池においては、充電中の電池の温度が好ましい温度の上限値である80℃を遥かに超えたためと考えられる。
なお、前記本発明に係る第2の密閉形アリカリ蓄電池の実施例においては示さなかったが、本発明に係る第2の密閉形アリカリ蓄電池においても、前記本発明に係る第1の密閉形アリカリ蓄電池同様、正極活物質の化学的あるいは電気化学的酸化処理、正極への希土類元素やCaの添加、負極への希土類元素の添加、負極へのラネーコバルトやラネーニッケルの添加、水素吸蔵合金粉末の活性化処理、セパレータの繊維径や目付け量の規定などは、前記本発明に係る第1の密閉形アルカリ蓄電池と同様に適用することができる。
以上、負極に水素吸蔵合金を活物質とするニッケル水素蓄電池を例に採って説明したが、本発明はニッケル水素電池に限定されるものではなく、負極にカドミウムを用いたニッケルカドミウム電池にも適用可能である。
(電極構造体における実施の形態1)
以下、本発明の好ましい一実施の形態に係る電極構造体について添付図面を参照しつつ説明する。
図10は、本実施の形態に係る電極構造体1の正面図であって、渦巻き状捲回させる前の状態を示している。
図11は、本実施の形態に係る電極構造体1を備えた蓄電池100の部分縦断面図である。
図12は、本実施の形態に係る電極構造体1を備えた別の実施形態に係る蓄電池200の要部断面図である。
まず、本実施の形態に係る電極構造体1を用いた蓄電池100の構成について概説する。
図11に示すように、蓄電池100は、積層された状態で渦巻き状に捲回された正電極21及び負電極24と、該正電極21及び負電極24の間に介挿され、両者を絶縁するセパレータ30と、これらを収容する容器40と、該容器40の開口を閉塞する電池蓋50と、該電池蓋50に接続された外部接続用キャップ60とを備えている。
なお、図11中の符号65は、後述する正極端子3が挿通される開口を有する絶縁板である。即ち、該正極端子3は、該絶縁板65の開口に挿通された状態で、前記電池蓋50に接合される。又、符号70は前記電池蓋50の周縁部と前記容器40の内周面とをシールするガスケットである。
前記負電極24に充填される負極活物質としては、例えば、水素吸蔵合金を使用し得る。又、前記容器40内に充填される電解液としては、例えば、水酸化カリウムを主成分とするアルカリ水溶液を使用し得る。さらに、前記セパレータ30は、好ましくは、親水化処理が施されたものを使用し得る。
図12に示した電池は、電極構造体21を備え、前記圧力スイッチ機能を備える電池の実施形態に係る電池を示す。該電池は、正電極21と外部接続用キャップ60を結ぶ電気回路に圧力の大きさに応じて該電気回路をONからOFFへあるいはOFFからONへ切り替える機能を有す。
すなわち、正電極21と外部接続用キャップ60を、正極端子23、金属製の接続部材220、金属製の接続リング230および外部接続用キャップ60と接合した金属製の電池蓋50を介して結んでいる。
合成樹脂成形体からなる封口部材210と容器40および封口部材の中心部分に設けた透孔を貫通させた接続部材220とを気密に当接させることによって、電池内空間を気密に密閉している。
前記封口部材210の中心部分に設けた透孔の周囲の肉厚を薄くして、封口部材210に可撓性を持たせることによって、該封口部材210に嵌着した接続部材220を図の上下方向に移動可能にしている。
通常の状態(電池の内圧が上昇してない状態)では、外部接続キャップの内側に配した弾性体240によって接続部材220が図の下方に押圧され、接続部材220に接合した接続リング230が金属性の蓋50に当接して、前記電気回路はONの状態にある。電池の内圧が上昇し、該内圧が前記弾性体240の押圧力に勝った場合には、接続部材220および接続部材220に接合した接続リング230が図の上方に押し上げられ、接続リング230と金属製の蓋50が離れて前記電気回路は、ONからOFFに切り替わる。
電池の内圧が低下したときには接続部材220および接続部材220に接合した接続リング230が図の上方に押し下げられ、接続リング230と金属製の蓋50が当接して前記電気回路は、OFFからONに切り替わる。
本発明において、前記圧力スイッチ機能の電気回路をONからOFFに切り替えるときの電池の内圧(圧力スイッチが機能する圧力)は、例えば前記弾性体の弾性率を変えることによって調整することができる。
本発明において、前記圧力スイッチが機能する圧力は、特に限定されるものではないが、0.5〜3メガパスカル(MPa)とすることが好ましく、1〜2.5MPaとすることがさらに好ましい。圧力スイッチが機能する圧力が0.5MPa未満の場合には、充電時間にしめる電気回路がOFFになる時間の比率が高くなり、充電効率が低くなる虞がある。
圧力スイッチが機能する圧力が3MPaを超える場合、充電時の電池温度が上昇して、電池特性に悪影響を及ぼす虞がある。
後述の如く、本発明に係る電池は、電極構造体21を前記圧力スイッチ機能を備えた電池に適用することにより急速充電時の充電効率を一層高めた電池である。
次に、本実施の形態に係る電極構造体21について説明する。図10に示すように、前記電極構造体21は、電極基板22と、該電極基板に接合される単一の端子23とを備えている。
図10に示すように、前記電極基板22は、長手方向幅a及び短手方向幅αの矩形状とされており、一方の短辺を中心側として渦巻き状に捲回され得るようになっている。詳しくは、前記電極基板22は、多孔質基板と、該多孔質基板に担持される活物質とを有している。
前記多孔質基板は、例えば、発泡ニッケル等の発泡金属や、ニッケル繊維焼結体等の金属繊維焼結体、金属粒子焼結体、又は、穿孔金属板や表面に凹凸を付けた穿孔金属板とすることができる。
また、前記多孔性基板目付量は、目付量を250〜600g/mとすることができ、好ましくは350〜500g/m、より好ましくは、400〜450g/mとすることができる。
前記目付量が250g/m未満の場合は、基板の導電性が低く高率で充電したときの充電効率や高率で放電したときの放電容量が低くなるので好ましくない。
また、基板の機械的強度が低く、電池の組み立て不良発生を招く虞もある。前記目付量が600g/mを超えると、ニッケル電極のポロシテイが低くなり、電極内でのイオンの移動が阻害されて、急速充電特性が低下する虞がある。
また、電極の硬さが増すために電極を捲回しにくくなる虞がある。
前記活物質は、電池用電極の起電反応に寄与するという作用を果たす限り、種々の材料が使用できる。例えばアルカリ蓄電池用ニッケル電極においては、前記活物質は、好ましくは、水酸化ニッケルを主成分とし、且つ、その表面にコバルト化合物が含有されているものとし得る。
前記端子23は、種々の形状を採用し得る。本実施の形態においては、製造容易性及び前記電池蓋との接続性を考慮して、短手方向幅c及び長手方向幅γの矩形状を採用している。
該端子の材質は特に限定されるものではなく、例えばニッケル板を適用できる。
該端子23は、短手方向が前記電極基板22の長手方向と同一とされ、且つ、長手方向が前記電極基板22の短手方向と同一とされた状態で、該電極基板22に接合されている。
さらに、該端子23は、幅方向中心線X(端子短手方向幅cの1/2の位置を通る仮想中央二等分線)と前記電極基板22の一方の短辺22aとの距離bが、該電極基板の長手方向幅aに対して、0.3a≦b≦0.6aとされており、これにより、以下の効果を奏するようになっている。
即ち、b<0.3aの場合には、前記電極基板2のうちの特定箇所が前記端子3から極端に離間されることになる。
例えば、b<0.3aとした場合には、図10において、電極基板22の右下領域が前記端子23から大きく離間されることになる。
斯かる場合には、前記特定箇所への充電効率が悪化し、結果として、充放電特性の悪化等が生じる。
さらに、b<0.3aの場合には、前記電極基板22を渦巻き状に捲回した状態において、前記端子23が該「渦巻き」の中心寄りに位置することになる。
図13に、正電極21,負電極24及びセパレータ30を渦巻き状に捲回した状態の斜視図を示す。図13に示すように、前記「渦巻き」は、中心へ行くに従って曲率半径が小さくなる。
従って、前記端子23を前記「渦巻き」の中心へ近づけすぎると、該端子23の剛性によって斯かる渦巻き状への成形が困難となるという問題が生じる。
同様に、b>0.7aの場合には、前記電極基板22の特定領域が前記端子23から極端に離間されるという問題が生じる。
さらに、b>0.6aの場合には、前記正電極21,負電極24及びセパレータ30を渦巻き状に捲回した際に、該端子23が該「渦巻き」の径方向外方に寄りすぎ、これによって、該端子23が前記容器40の内壁面等に接触して、短絡する恐れがある(図11参照)。また、端子を長くする必要が生じるので不利である。
このような観点に鑑み、本実施の形態においては、前記端子23を0.3a≦b≦0.6aに位置させており、これにより、前記端子23の短絡を有効に防止しつつ、活物質の利用率の向上及び充電特性の向上を図ることができる。
より好ましくは、前記端子23と前記電極基板2との重ね合せ領域の長さをβとした場合に、前記a,c,α,β及びγが、
0.02≦c/a≦0.07
0.065≦β/α≦0.45
0.1≦β/γ≦0.75
の関係を満たすように構成することができる。
即ち、c/a<0.02の場合には、電極基板22の抵抗が高くなり、他方、c/a>0.07の場合には、該電極基板22のうち活物質を担持し得る面積が減少し、十分な高容量化を図ることが困難となる。
又、β/α<0.065の場合には、電極基板22と端子23との重ね合せ領域の面積が小さくなり、その結果、両者の間の抵抗が増加すると共に、両者の接合強度を十分に確保し難くなって、組立不良率が増加する恐れがある。
他方、β/α>0.45の場合には、接合強度の向上及び抵抗の削減を果たすことができるが、前記電極基板22のうち活物質を担持し得る面積が減少し、十分な高容量化を図ることが困難となる。
さらに、β/γ<0.1の場合には、電極基板22と端子23との重ね合せ領域の面積が小さくなり、その結果、両者の間の抵抗が増加すると共に、両者の接合強度を十分に確保し難くなって、組立不良率が増加する恐れがある。
他方、β/γ>0.75の場合には、接合強度の向上及び抵抗の削減を果たすことができるが、前記電極基板22のうち活物質を担持し得る面積が減少し、十分な高容量化を図ることが困難となる。又、電池蓋50と端子23との接合が困難になるという問題も生じる。
なお、前記端子23は、前記電極基板22に接合可能な種々の導線性材料を用いて形成され得る。又、該端子は、例えば、厚み0.05mm〜0.3mmとされるが、好ましくは、厚み0.1mm〜0.2mmとされる。
又、前記端子と前記電極基板との接合は、強度及び抵抗の観点から、好ましくは、溶接とされる。該溶接は、強度や作業容易性の観点から、図14(a)に示すようなスポット溶接が好ましい。
より好ましくは、図14(b)に示すように、スポット溶接の溶接点を、前記電極基板22の長辺のうち前記端子23が接合される側の一方の長辺22cと前記端子23の中心線Xとの交点を基準にして、放射状に配設することができる。
斯かる構成を備えることにより、電極基板22の全体に亘って充電効率を向上させることができる。
(実施の形態2)
以下、本発明の好ましい他の実施の形態に係る電極構造体について添付図面を参照しつつ説明する。図15は、本実施の形態に係る電極構造体21’の正面図であって、渦巻き状に捲回させる前の状態を示している。
なお、前記実施の形態1におけると同一又は相当部材には同一符号を付して、その説明を省略する。
図15に示すように、本実施の形態に係る電極構造体21’は、前記実施の形態1の電極構造体において、前記端子23に代えて端子23’を備えている。
該端子23’は、前記電極基板22との重ね合せ領域の形状が該電極基板2の外形状と略相似形となるように構成されている。
詳しくは、該端子23’は、前記実施の形態1における端子23と同様に、短手方向幅c及び長手方向幅γを有しているが、他方、前記電極基板22との重合領域においては短手方向幅がc’とされている。
より詳しくは、該端子23’は、前記電極基板22から外方へ延びる部分については短手方向幅がcとされ、且つ、該電極基板2と重合される部分については短手方向幅がc’とされており、c’/β=(0.8〜1.2)×(a/α)となるように構成されている。
斯かる構成の電極構造体21’においては、電極基板22の全域に亘って端子23’との離間距離の均一化を図ることができる。
従って、前記実施の形態1における効果に加えて、電極基板22の充電特性をより向上させ得るという効果を奏する。
【実施例】
以下、正極に前記実施の形態1に係る電極構造体を備えた蓄電池についての実施例について説明する。
【実施例78〜実施例81】
(正極の構成)
前記多孔質基板として目付量400g/mで、長手方向幅a=100mm及び短手方向幅α=43mmの発泡ニッケル基板を用い、該発泡ニッケル基板に水酸化ニッケル系活物質を充填して電極基板22を作成し、その後、ニッケル端子23を5点でスポット溶接した。
ニッケル端子23は、γ=25mm,c=4mm及び厚み0.1mmのものを用いた。該ニッケル端子23の溶接位置b(図1に示した電極構造体の前記一方の短辺2aと端子23の中心線Xの間の距離)は、b=0.3a(実施例78),0.4a(実施例79),0.5a(実施例80),0.6a(実施例81)とした。
詳細構成は以下の通りである。即ち、水酸化ニッケル系活物質として、水酸化ニッケルを主成分とし、金属比率でZn及びCoを3重量部及び2重量部固溶した水酸化ニッケル系活物質の表面をβ−水酸化コバルトで被覆したものを用いた。なお、β−水酸化コバルトの被覆量は金属換算で4重量%であった。
斯かる水酸化ニッケル系活物質80重量部と0.5%−カルボキシメチルセルロース水溶液20重量部とを混合して充填すべきペースト体を作製した。
そして、該ペースト体を前記発泡ニッケル基板に均一に塗布して乾燥した後、AAサイズの電池用寸法に加圧し、長手方向幅a=100mm及び短手方向幅α=43mmに切断した。なお、切断時、端子位置bは、前述の通り、b=0.3a(実施例1),0.4a(実施例2),0.5a(実施例3),0.6a(実施例4)となるように行った。このようにした形成した正極の容量は1800mAhであった。
(負極の構成)
負極は、MmNi3.6 Co0.7Mn0.4Al0.3組成(MmはLa,Ce,Pr,Nd,及びSm等の希土類元素の混合物であるミッシュメタルを意味する)の水素吸蔵合金を使用した。これに1%−メチルセルロースを15重量%と結着剤である60%−SBR水溶液を1.5重量%加えて混合しペースト状にした後、穿孔鋼鈑に塗布し、乾燥した。乾燥後、プレスして水素吸蔵合金電極を作製した。その後、AAサイズの電池用寸法に、切断した。負極容量は正極容量の1.4倍とした。
(ニッケル水素蓄電池の構成)
アクリル酸がグラフト重合された厚さ100μmのポリプロピレン樹脂系不織布からなるセパレータ30を挟んで正極板21と負極板24とを渦巻き状に捲回し、該捲回体を円筒形の容器内に配置した。そして、当該容器内に濃度が、7mol/dmの水酸化カリウム水溶液と0.5mol/dmの水酸化リチウム水溶液との混合液からなる電解液を1.8ml/cell注入し、容量が1800mAhの円筒形AAサイズ密閉形のアルカリ蓄電池(ニッケル水素蓄電池)を製造した。このようにして実施例78から81の電池を得た。
(比較例24、比較例25)
ニッケル端子の接合位置bをb=0.1a(比較例24),0.8a(比較例25)とした点を除き、前記実施例と同一構成とした。
(抵抗試験)
前記実施例78〜81及び比較例24〜25について、それぞれ、100個の蓄電池を作製して、抵抗値を測定した。具体的には、実施例78〜81及び比較例24〜25のニッケル水素蓄電池を20℃の温度環境下において、充電電流0.1ItAで16時間充電し、1時間休止した後、0.2ItAの電流で、1.0Vまでの放電を10回繰り返した。そして、放電後、充電方向に10Aの電流を10msec.通電したのち通電を打ち切り、通電を打ち切る直前の電池電圧と通電打ち切り後0.1msec.経過した時点での電池電圧の差(V)を通電電流(10A)で除した値を抵抗値とした。該試験結果(平均値)を表17及び図7に示す。


表17及び図16から明らかなように、実施例78〜81は、比較例24〜25に比し、抵抗値が低いことが確認された。さらに、比較例25は、組立不良率が非常に高かった。その理由は、端子が容器内周面と接触することによる短絡であった。
(充電効率試験)
前記抵抗試験と同様に、実施例78〜実施例81及び比較例24〜比較例25について、それぞれ、100個の蓄電池に対して充電効率試験を行った。
具体的には、まず、0.1ItAの電流で16時間充電し、1時間休止後0.2ItAで1.0Vまで放電した場合の放電容量Aを測定した。又、4ItAの電流で15分間充電し、1時間休止後0.2ItAで1.0Vまで放電した場合の放電容量Bを測定した。そして、B/A×100を充電効率とした。
該試験結果(平均値)を表17及び図16に付せて示す。
表17及び図16から明らかなように、実施例78〜実施例81に係る電池においては、比較例24〜比較例25に係る電池に比して、充電効率が高いことが確認された。
実施例78〜実施例81に係る電池の場合、比較例24〜比較例25に係る電池と比して充電効率が高いのは、正極であるニッケル電極が電極の隅々に至るまで充電を受け入れるために活物質の利用率が向上したことと、比較例に係る電池に比べて充電の電流密度が低減されて充電時の副反応(例えば電解液の分解反応)が抑制されたために、急速充電を行なったときの充電効率が向上したものと考えられる。
なお、表17および図16に示した如く、実施例78〜実施例81のうちで、実施例78が他の実施例に比べてやや充電効率が低い。実施例79〜実施例81の場合は充電効率が89%以上と高い値を示している。
このことから図11に示した圧力スイッチ機能を備えていない蓄電池の場合、前記端子接合位置(b/a)は、0.3〜0.6が良好ではあるが0.4〜0.6とした方が高い充電効率が得られ、より好ましいことが分かる。
【実施例82〜実施例85】
前記図12に示した圧力スイッチ機能付きの電池構成とした。図12において、弾性体には合成ゴムの成形体を用い、前記圧力スイッチが機能する圧力を2メガパスカル(MPa)になるように設定した。該構成の電池に前記実施例78〜実施例81と同じ電極構造体を適用し、圧力スイッッチを設けた以外は実施例78〜実施例81と同じ電池構成とした。該電池を実施例82〜実施例85に係る電池とする。
(比較例26、比較例27)
前記比較例24、比較例25と同じ電極構造体を、実施例82〜実施例85と同様圧力スイッチ機能付きの電池に適用した。それ以外は比較例24、比較例25と同じ構成とした。該電池を比較例26、比較例27に係る電池とする。
(充電効率試験)
前記同様、0.1ItAの電流で16時間充電し、1時間休止後0.2ItAで1.0Vまで放電した場合の放電容量Aを測定した。
また、4ItAの電流で15分間充電し、1時間休止後0.2ItAで1.0Vまで放電した場合の放電容量Bを測定した。そして、B/A×100を充電効率とした。試験結果を表18に示す。


表18に示す如く、本発明の実施例82〜実施例85に係る電池は、比較例26、比較例27に係る電池と比べて高い充電効率を有する。
実施例82〜実施例85に係る電池においては、比較例26〜比較例27に係る電池に比して充電の電流密度が低減されて充電時の副反応(例えば電解液の分解反応)が抑制されたために、電池の内圧上昇が抑制され、圧力スイッチ機能が動作して充電の回路がOFFの状態にある時間の充電時間に占める比率が小さくて済んだために充電効率が高くなったものと考えられる。
完全あるいはほぼ完全に放電した電池を15分〜30分間という短時間で急速に充電しようとすると、電池の温度が上昇して副反応を促進し、充電効率を低下させる虞が生じる。表17の結果と表18の結果を比較すると分かる通り、本発明の実施例82〜実施例85に係る電池は、前記実施例78〜実施例81に係る電池と比べてさらに高い充電効率を示す。
また、前記実施例78の場合は充電効率がやや低かったのに対して、端子接合位置(b/a)が実施例78と同じ実施例85においても充電効率が90%を超えており高い値を示す。
これは、実施例82〜実施例85においては圧力スイッチ機能を設けることにより、充電中に充電回路のONとOFFの切り替え機能が動作し、実施例78〜実施例81に比べて電池内の局部的な温度の上昇がさらに抑制されて、充電時の副反応が抑えられたためと考えられる。
このように、圧力スイッチ機能を備えた電池に、本発明に係る電極構造体を適用することによって、急速充電を行ったときの充電効率を顕著に高めることができたものと考えられる。
表18に示した如く、圧力スイッチ機能を備える電池においては端子接合位置(b/a)が0.3〜0.6の範囲において充電効率が90%を超える高い値を示すが、そのなかでも端子接合位置(b/a)が0.4〜0.6の範囲において充電効率が93%以上と高く、特に好ましい範囲であることが分かる。
なお、本発明に係る電池の活物質等の材質(組成)は前記実施例に記述したものに限定されるものではなく、例えば正極であるニッケル電極の活物質は化学的あるいは電気化学的な方法によって酸化し、活物質に含まれるニッケルやコバルト等の遷移金属元素の酸化数を2を超える値にしたものも適用できる。
さらに、ニッケル電極にエルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムやイットリウム等の希土類元素を含む化合物(酸化物や水酸化物)を含有させることによって充電時にニッケル電極において酸素が発生するのを抑制して、さらに充電効率を高めることができる。
また、以上ニッケル水素蓄電池を例に採って説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の電池にも適用できるものである。
さらに、前記実施例においては急速充電の例として4ItAによる15分間の定電流充電の例を記したが、本発明に係る電池に対する充電の様式および充電時間は、これに限定されるものではなく、充電様式についていえば、例えば定電圧充電を適用することも有効である。
【産業上の利用可能性】
請求項1〜28に記載のアルカリ蓄電池は、15分間乃至は30分間で充電を完了するというような高率で充電した場合でも、電池内の気体圧力の上昇や電池温度の上昇を抑制することができ、高率で充電した場合にも高い充電効率を達成するものであり、産業上の利用可能性は極めて大きい。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル電極を正極とする密閉形アルカリ蓄電池において、電池内の気体圧力が、規定値以下のときは充電が可能であって、規定値を超えるときは充電不能となる機能を持たせたことを特徴とする密閉形アルカリ蓄電池。
【請求項2】
ニッケル電極を正極とする密閉形アルカリ蓄電池において、電池内の気体圧力および電池温度が、規定値以下のときは充電が可能であって、規定値を超えるときは充電不能となる機能を持たせたことを特徴とする密閉形アルカリ蓄電池。
【請求項3】
負極の容量と正極の容量の比(負極の容量/正極の容量)を1.02〜1.45とした密閉形アルカリ蓄電池であって、前記電池内気体圧力の規定値を1.0〜3.0メガパスカル(MPa)の範囲内に設定および/または電池温度の規定値を50〜80℃の範囲内に設定したことを特徴とする請求項1又は2記載の密閉形アルカリ蓄電池。
【請求項4】
水酸化ニッケルを主成分とする活物質を主構成材料とする粉末材料に含まれる遷移金属元素の平均酸化数が、2.04〜2.4である粉末材料を多孔性基板に担持させたニッケル電極を適用することを特徴とする請求項3記載の密閉形アルカリ蓄電池の製造方法。
【請求項5】
水酸化ニッケルを主成分とする活物質を主構成材料とする粉末材料を電池に組み込む前に酸化剤を用いて化学的に酸化するかあるいは電気化学的に酸化することにより前記粉末材料に含まれる遷移金属元素の平均酸化数を2.04〜2.4とすることを特徴とする請求項4記載の密閉形アルカリ蓄電池の製造方法。
【請求項6】
水酸化ニッケルを主成分とする活物質粉末に酸化数が2以下のコバルト化合物やコバルト単体を添加するかもしくは前記活物質の表面に酸化数が2以下のコバルト化合物やコバルト単体からなる被覆層を設けた粉末材料を多孔性基板に担持させた電極を電池に組み込む以前にアルカリ電解液中で充電し、前記粉末材料に含まれる遷移金属元素の平均酸化数を2.04〜2.4とすることを特徴とする請求項5記載の密閉形アルカリ蓄電池の製造方法。
【請求項7】
水酸化ニッケルを主成分とする活物質粉末に酸化数が2以下のコバルト化合物やコバルト単体を添加するかもしくは前記活物質の表面に酸化数が2以下のコバルト化合物やコバルト単体からなる被覆層を設けた粉末材料を多孔性基板に充填してなる正極と水素吸蔵材料を適用した負極を備える密閉形アルカリ蓄電池の製造方法において、正極および負極を電池に組み込んだ後、電池を密閉せずに充電し、前記正極の粉末材料に含まれる遷移金属の平均酸化数を2.04〜2.4とし、充電終了後電池を吸引による減圧下において、充電により負極に蓄積された水素を除去した後に密閉することを特徴とする請求項6記載の密閉形アルカリ蓄電池の製造方法。
【請求項8】
前記正極がHo、Er、Tm、Yb、Lu、Yから選択した希土類元素およびCaのうちから選択した少なくとも1種類の元素を含む化合物を前記水酸化ニッケルを主成分とする活物質と非共晶状態で含有することを特徴とする請求項1又は2記載の密閉形アルカリ蓄電池。
【請求項9】
前記正極に含有させたHo、Er、Tm、Yb、Lu、Yから選択した希土類元素およびCaのうちから選択した少なくとも1種類の元素を含む化合物の比率が0.1重量%以上、5重量%以下であることを特徴とする請求項8に記載の密閉形アルカリ蓄電池。
【請求項10】
水酸化カリウムを主電解質とした電解質の濃度が7.5±1.5モル/dmのアルカリ水溶液を電解液とし、該電解液をアルカリ蓄電池の単位容量当たり0.6〜1.4cm/Ah内包させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の密閉形アルカリ蓄電池。
【請求項11】
0.5デニール以下の親水性繊維からなる不織布をセパレータに適用したことを特徴とする請求項1又は2に記載の密閉形アルカリ蓄電池。
【請求項12】
前記親水性の繊維がオレフィンとビニルアルコールの共重合体からなる分割型繊維またはスルフォン酸基を導入したポリオレフィン系繊維であり、目付量が35〜70g/mである不織布をセパレータに適用したことを特徴とする請求項11記載の密閉形アルカリ蓄電池。
【請求項13】
前記負極が、酸素ガスおよび/または水素ガスを吸収する反応を促進する触媒を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の密閉形アルカリ蓄電池。
【請求項14】
前記触媒がラネーコバルトまたはラネーニッケルであることを特徴とする請求項13記載の密閉形アルカリ蓄電池。
【請求項15】
前記負極の活物質が水素吸蔵合金粉末であり、該水素吸蔵合金粉末あるいは水素吸蔵合金粉末を多孔性基板に担持させた負極を電池に組み込む以前に酸性あるいはアルカリ性水溶液と接触させることにより活性化することを特徴とする請求項1又は2記載の密閉形アルカリ蓄電池の製造方法。
【請求項16】
前記負極活物質が水素吸蔵合金粉末であり、負極がHo、Er、Tm、Yb、Lu、YおよびCeのうちから選択した少なくとも1種類の希土類元素を水素吸蔵合金粉末の組繊外に含有することを特徴とする請求項1又は2記載の密閉形アルカリ蓄電池。
【請求項17】
負極の容量と正極の容量の比(負極の容量/正極の容量)が1.45を超える密閉形アルカリ蓄電池であって、前記電池内気体圧力の規定値を0.5〜1.5メガパスカル(MPa)の範囲内に設定および/または電池温度の規定値を50〜80℃の範囲内に設定したことを特徴とする請求項1又は2記載の密閉形アルカリ蓄電池。
【請求項18】
密閉形アルカリ蓄電池の充電方法であって、充電中の電池の内圧および/または電池温度が規定値を超えるときは充電を打ち切り、電池の内圧および/または電池温度が規定値以下のとき充電を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の密閉形アルカリ蓄電池の充電方法。
【請求項19】
請求項17に記載のアルカリ蓄電池の充電方法であって、定電圧により充電し、かつ、充電電圧が1.5〜1.7Vであることを特徴とする密閉形アルカリ蓄電池の充電方法。
【請求項20】
密閉形アルカリ蓄電池の充電器であって、該蓄電池の表面温度を検知する機能と蓄電池の表面温度が規定値以上のときは充電を打ち切り、規定値未満のとき充電を行うことを機能を備えたことを特徴とする密閉形アルカリ蓄電池用充電器。
【請求項21】
前記密閉形アルカリ蓄電池の表面温度の規定値を50〜80℃の範囲内に設定したことを特徴と請求項20記載の密閉形アルカリ蓄電池の充電器。
【請求項22】
長手方向幅a及び短手方向幅αの矩形状であり且つ一方の短辺を中心側として渦巻き状に捲回可能な多孔質電極基板に、活物質が充填されてなる電極と、前記電極基板に接合される単一の端子とを備え、
前記端子は、前記電極基板の前記一方の短辺から該端子の中心線までの距離bが、0.3a≦b≦0.6aとなるように該電極基板に接合されていることを特徴とする電極構造体。
【請求項23】
前記端子は、前記電極基板の長手方向及び短手方向にそれぞれ沿った短手方向幅及び長手方向幅がc,γとされ、前記端子は、前記電極基板との重ね合せ領域長さがβとされており、前記a,c,α,β及びγは、
0.02≦c/a≦0.07
0.065≦β/α≦0.45
0.1≦β/γ≦0.75
であることを特徴とする請求項22に記載の電極構造体。
【請求項24】
前記端子と前記電極基板との重合領域が、該電極基板の外形状と相似形状とされていることを特徴とする請求項22に記載の電極構造体。
【請求項25】
前記端子は溶接によって前記電極基板に接合されていることを特徴とする請求項22〜24の何れかに記載の電極構造体。
【請求項26】
前記溶接は、前記電極基板の長辺のうち前記端子が接合される側の一方の長辺と前記端子の中心線との交点を基準にして、放射状に配設されたスポット溶接であることを特徴とする請求項25に記載の電極構造体。
【請求項27】
請求項22から26の何れかに記載の電極構造体を正極として備えていることを特徴とする蓄電池。
【請求項28】
一方の電極と同極性の端子を結ぶ電気回路に、電池の内圧が規定値を上回ったときに前記電気回路をONからOFFに切り替え、電池の内圧が低下したときに前記電気回路をOFFからONに切り替えるスイッチ機能を持たせ、且つ、電池内空間を気密に密閉した請求項27に記載の蓄電池。

【国際公開番号】WO2004/068625
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【発行日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504739(P2005−504739)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000811
【国際出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(000006688)株式会社ユアサコーポレーション (21)
【Fターム(参考)】