説明

密閉構造容器及び密閉構造電気機器

【課題】窓部周辺の厚さや固定ネジの本数を減少させ、コストの低廉化、及び組立作業の容易化を実現し、設計の自由度を高めて小型化を実現する。
【解決手段】密閉構造容器100は、正面1Aに矩形のガラス板3で被覆された窓部11を有し、保持部13及び留め具4を備える。保持部13は、ガラス板3の厚さに等しい開口幅の開口部が正面に直交する溝部14であって長手方向の少なくとも一端が側面方向に開放した溝部14を有し、開口部が互いに対向するように正面1Aにおける窓部11を挟む2位置のそれぞれに一体的に形成した。保持部13は、長手方向についてガラス板3より短くかつ窓部11より長い。留め具4は、正面1Aにおける保持部13の両端部のそれぞれに装着され、一端から溝部14内に挿入されたガラス板3における保持部13から露出した部分を被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、照明装置や光電スイッチ等の外部との間で光の遣り取りを行うデバイスを収納する密閉構造容器、及びこの容器を有する密閉構造電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉構造容器にデバイスを収納した密閉構造電気機器として、防爆型照明装置がある。防爆型照明装置は、石油化学プラント等の可燃性ガス雰囲気の危険区域内で暗所や夜間の作業時に照明が必要とされる場合に使用され、光源を電源回路等の電気部品とともに防爆構造の防爆容器に収納している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
防爆型照明装置に用いられる防爆容器は、内部に収納した光源の光を外部に照射するため、一部にガラス板で被覆した窓部を備えている。防爆容器は、筐体の内部で発生した火焔がガラス板の周囲を経由して外部に露出しないように、窓部の周縁部とガラス板の周囲との間を密閉する必要がある。
【0004】
このため、従来の照明装置用防爆容器では、図5に示すように、筐体110の前面において窓部120の周囲に段部121を形成したものがある。ガラス板130とパッキン160を段部121内に外部から挿入して段部121に固着材で固めて一体化した後、ガラス押え板140を筐体110における窓部120の周囲に複数の固定ネジ150で固定し、ガラス押え板140でガラス板130周囲を段部121に押し付けることで防爆構造を維持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−053929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の密閉構造容器は、容器とガラス押え板との2つの部材間にガラス板の全周を挟持する構成であり、容器の強度を確保するためにガラス押え板を含む窓部周辺の厚さや固定ネジの本数の増加によるコストの上昇、及び組立作業の煩雑化を招く。また、窓部の周囲に複数のネジのそれぞれが螺合する複数の雌ネジ部を形成する必要があり、設計上の制約が多くなり、容器が大型化する。
【0007】
この発明の目的は、容器に一体的に形成された部材で透光性の板材を保持することで、窓部周辺の厚さや固定ネジの本数を減少させることができ、コストの低廉化、及び組立作業の容易化を実現でき、設計の自由度を高めて小型化を実現できる密閉構造容器及び密閉構造電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る密閉構造容器は、外部との間で光の遣り取りを行うデバイスを収納し、正面に透光性の板材で被覆された窓部を有し、保持部及び留め具を備えている。保持部は、透光性の板材の厚さに等しい開口幅の開口部が正面に直交する溝部であって長手方向の少なくとも一端が側面方向に開放した溝部を有し、開口部が互いに対向するように正面における窓部を挟む2位置のそれぞれに一体的に形成されている。保持部は、長手方向について透光性の板材より短くかつ窓部より長い。留め具は、正面における保持部の両端部のそれぞれに装着され、一端から溝部内に挿入された透光性の板材における保持部から露出した部分を被覆する。
【0009】
この構成により、窓部が形成された正面に、2つの保持部が窓部を挟んで平行に立設される。2つの保持部は、それぞれ開口部が正面に直交し、且つ開口部が互いに対向する溝部を備えている。溝部は、開口部の開口幅が透光性の板材の厚さに等しく、溝部の長手方向の少なくとも一端が側面方向に開放している。このため、透光性の板材は、溝部の一端から溝部内に挿入でき、保持部によって保持される。透光性の板材における保持部の両端部に露出した部分は、留め具によって被覆され、保持部による保持状態が維持される。
【0010】
この構成において、溝部内には長手方向に直交する方向で透光性の板材との間に溝部側間隙を形成し、留め具内には長手方向で透光性の板材との間に溝部側間隙に連通する留め具側間隙を形成することが好ましい。溝部側間隙及び留め具側間隙に接着剤を充填することで、透光性の板材の周囲を封止することができる。
【0011】
また、正面に平行な方向に沿って一様な断面を呈する押出し材に窓部を開設することが好ましい。密閉構造容器の正面に、開口部が正面に直交する溝部を有する保持部を容易に一体形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、正面に一体的に形成された保持部の溝部で透光性の板材を保持することができ、窓部周辺の厚さや固定ネジの本数を減少させることによるコストの低廉化、及び組立作業の容易化を実現でき、設計の自由度を高めて小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施形態に係る密閉構造容器の組立図である。
【図2】同密閉構造容器の側面断面図である。
【図3】同密閉構造容器に用いられる留め具の正面図、断面図である。
【図4】同密閉構造容器の要部の断面図である。
【図5】従来の密閉構造容器の組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、この発明の実施形態に係る密閉構造容器について、図面を参照しつつ説明する。ここでは、本発明の適用例として、照明装置として機能する防爆装置について説明する。
【0015】
図1に示すように、密閉構造容器100は、本体1、蓋体2、ガラス板3、留め具4、パッキン5を備えている。本体1は、正面(図1において上向き。)1Aに矩形状の窓部11を備え、両側面1B,1Cに長円状の開口部12を備えた筐体であり、内部に電気部品を収納する。
【0016】
本体1の正面1Aにおいて、窓部11を挟む平行な2箇所には、保持部13が一体的に形成されている。保持部13は、開口面が正面1Aに直交する溝部14を構成する。2つの保持部13は、溝部14の開口面を互いに対向させて配置されている。溝部14の両端は、開放している。
【0017】
蓋体2は、本体1の側面1B,1Cのそれぞれに固定され、開口部12を塞ぐ。本体2には、引込み部21が形成されている。引込み部21は、光源及び電気部品に対する電源線及び信号線が挿通された状態で、本体1の内部を外部に対して遮蔽する。
【0018】
ガラス板3は、窓部11よりも面積の大きい矩形状の強化ガラスであり、保持部正面1Aに配置されて窓部11を被覆する。ガラス板3の長辺は、保持部13より長い。ガラス板3の外側面の周縁部には、パッキン6が貼付される。なお、ガラス板3は、透光性の板材であればよく、例えば透明樹脂板であってもよい。
【0019】
留め具4は、保持部13の両端部の外側で正面1Aに各々2本の固定ネジを介して装着される。固定ネジは、本体1のネジ穴15に螺合する。留め具4は、ガラス板3において保持部13の両端から露出した部分を被覆する。
【0020】
パッキン5は、弾性を有する環状体であり、ガラス板3と窓部11の周縁部との間に配置される。
【0021】
図2に示すように、溝部14の開口面の開口幅は、ガラス板3の厚さに略等しくされている。溝部14は、長手方向の両端部が側面方向に開放している。このため、ガラス板3は、2つの保持部13の溝部14内に、溝部14の一方の端部から、溝部14の長手方向に沿って、正面1Aに平行に挿入することができる。
【0022】
正面1Aにおける窓部11の周縁部に、パッキン5が嵌入する凹部32が形成されている。ガラス板3を正面1Aの適正な位置に配置した状態で正面1Aに留め具4を装着すると、溝部14の長手方向におけるガラス板3の移動が規制され、ガラス板3を正面1Aにおける適正な位置に固定することができる。
【0023】
2つの保持部13のそれぞれの溝部14内にガラス板3を挿入することにより、ガラス板3は長辺部を本体1の正面1Aに一体的に形成された保持部13で保持される。ガラス板3を十分な内圧強度を確保した状態で本体1に固定するために、本体1と別体の押え板を使用する必要がない。したがって、容易に容器の強度を確保できるため、窓部周辺の厚みを減少することができるとともに、押え板を本体1に固定するための多数の固定ネジを省略することができる。これによって、コストの低廉化、組立作業の簡略化、装置の小型化を実現できる。
【0024】
本体1は、図2に示す横断面形状の金型を用いた押出し加工で形成された押出し材を素材として、切削加工によって窓部11等を作成して得ることができる。溝部14を有する保持部13を備えた本体1を容易に形成できる。
【0025】
本体1の内部には、この発明のデバイスとしての光源搭載基板21と駆動回路基板22とが内蔵されている。光源搭載基板21は矩形の基板であって、上面に2列に並んだ複数のLED21Aが実装されている。駆動回路基板22も矩形の基板であり、LED21Aを駆動するための電気部品(図示せず。)が実装されている。LED21Aから照射された光は、ガラス板3を介して外部に配光される。
【0026】
図3及び図4に示すように、留め具4には、2つの固定用の貫通孔41及び2つの接着充填剤用の連通孔42が形成されている。貫通孔41には、正面1Aのネジ穴15に螺合する固定ネジが貫通する。連通孔42は、留め具4を正面1Aに装着した状態で、正面1Aに形成された溝16に連通する。溝16は、正面1Aにおける所定の位置に配置されたガラス板3の内側面における窓部11の外側に位置する部分に対向する。溝16は、溝部14に連通している。
【0027】
図2に示すように、保持部13にガラス板3を維持させた状態で、平面1Aに平行な方向において溝部14とガラス板3との間には間隙14Aが形成されている。
【0028】
連通孔42の何れかから接着剤を投入流入すると、接着剤は連通孔42から溝16を経由して間隙14Aに達する。接着剤を投入した連通孔42以外の連通孔42から接着剤が露出するまで接着剤の投入を継続すると、全ての連通孔42、溝16及び間隙14Aに接着剤が充填される。これによって、ガラス板3を正面1Aにおける所定の位置に確実に固定し、防爆構造として確立することができる。
【0029】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0030】
例えば、本体1に収納するデバイスは、外部との間で光の遣り取りを行うものであればよく、LED21Aや冷陰極管等の光源のほか、外部光を検出する受光素子を備えた光電スイッチ等であってもよい。
【0031】
また、容器100は、容器の密閉構造の一例として耐圧防爆構造の容器について説明したが、その他の密閉構造であってもよい。また、密閉構造電気機器は、防爆装置や照明装置として機能するものに限るものではなく、例えば光電スイッチとして機能するものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1−本体
2−蓋体
3−ガラス板(透光性の板材)
4−留め具
5−パッキン
11−窓部
13−保持部
14−溝部
100−密閉構造容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部との間で光の遣り取りを行うデバイスを収納し、正面に透光性の板材で被覆された窓部を有する密閉構造容器であって、
前記正面における前記窓部を挟む2位置のそれぞれに、前記透光性の板材の厚さに等しい開口幅の開口部が前記正面に直交する溝部であって長手方向の少なくとも一端が側面方向に開放した溝部を有する保持部を、前記開口部を互いに対向させて一体的に形成し、
前記保持部は、前記長手方向について前記透光性の板材より短くかつ前記窓部より長く、
前記正面における前記保持部の両端部のそれぞれに装着される留め具であって、前記一端から前記溝部内に挿入された前記透光性の板材における前記保持部から露出した部分を被覆する留め具を備えた密閉構造容器。
【請求項2】
前記溝部は、前記長手方向に直交する方向において前記透光性の板材との間に溝部側間隙を形成し、
前記留め具は、前記長方向において前記透光性の板材との間に前記溝部側間隙に連通する留め具側間隙を形成する請求項1に記載の密閉構造容器。
【請求項3】
前記正面に平行な方向に沿って一様な断面を呈する押出し材に前記窓部を開設した請求項1又は2に記載の密閉構造容器。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の密閉構造容器と、外部との間で光の遣り取りを行うデバイスであって前記密閉構造容器に収納されたデバイスと、を備えた密閉構造電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−79556(P2012−79556A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224186(P2010−224186)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】