説明

密閉機器筐体冷却装置

【目的】 従来型のヒートパイプ式筐体冷却装置は装着上の自由度が小さく、天井取り付けの場合と側面取り付けの場合は全く異なった設計にする必要があり、また機器の中に部分的に高発熱量の部品がある場合それを効果的に冷却することは不可能であった。本発明はそれらを解決することを目的とする。
【構成】 蛇行細管ヒートパイプをセパレータプレートを貫通してその面の両側を往復蛇行せしめて両面に剣山形状のピンフィン群を形成して基本ユニットとしこれに所定の副構成ユニットを組み合わせて機器筐体冷却装置を構成した。
【効果】 蛇行細管ヒートパイプで形成されたフィン高さの低い極めて多数のピンフィン群の効果により冷却装置は小型化され性能は向上し天井部と側壁部の兼用が可能になった。又受熱部ピンフィンを延長し、筐体内の特に発熱の多い部品の熱量をこの延長フィンにより直接筐体外に放熱せしめ効率的に冷却することが可能になった。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は機器の密閉筐体冷却装置に関するもので特にヒートパイプの応用により冷却効率が高められてある密閉筐体冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】古くから採用されている密閉筐体冷却装置としては、密閉筐体に開口部を設け、この開口部に波打ち形状に成形して表面積を拡大されてあるセパレータプレートを取り付けて機密に覆い、このセパレータプレート内外表面に夫々筐体内の高温空気及び筐体外の低温空気を吹きつけて熱交換せしめて筐体内空気を冷却する方式のものがあった。然しこの方式は表面積拡大率が小さいので安価ではあるが高性能を発揮せしめることが出来なかった。
【0003】その対策としてヒートパイプ式密閉筐体冷却装置が実用化され、ヒートパイプの卓越した熱輸送性能により高性能密閉筐体冷却装置としてその市場が拡大されつつある。このような従来型のヒートパイプ式密閉筐体冷却装置を図7及び図8の説明図に略示する。図7は天井取り付け形冷却装置を示し、図8は側面取り付け形冷却装置を示す。図に於て11はヒートパイプ、12はヒートパイプ群に共通に装着されてあるプレートフィン群である。ヒートパイプ11の群は何れも放熱部と受熱部の中間部の断熱部に於てセパレータプレート13、13−1を貫通して機密に保持されてある。またセパレータプレート13は機器筐体17の図示されていない開口部を覆って機器筐体17の内外間を機密に分離し且つ冷却装置筐体16の外部対流18の流れる側と内部対流19の流れる側との間を機密に分離している。
【0004】内部ファン15により発生した高温度の内部空気の対流19は冷却装置筐体16の中を矢印の如く流れ、プレートフィン群12を介してヒートパイプ11の受熱部に熱量を吸収された後、低温対流に変化して冷却装置筐体16の外部に放出され、機器筐体17の中を矢印の如く循環しながら、図示されていない機器筐体17の各種実装部品及び機器筐体17を全体的に冷却する。ヒートパイプ11の受熱部で吸収された熱量はヒートパイプの特性により効率的にその放熱部に輸送される。外部ファン14により発生した低温度の外部空気の対流18は冷却装置筐体16の中を矢印の如く流れてプレートフィン群12を介してヒートパイプ11の放熱部から熱量を吸収してこれを冷却し、再び冷却装置筐体16の外部に排出される。
【0005】このようにして図の如く構成されたヒートパイプ式密閉筐体冷却装置はヒートパイプの卓越した熱輸送能力により機器筐体内を効率的に冷却することが出来る。図に於て20は冷却装置の対流排出口であり、21は対流吸入口である。また図8の側面取り付け形冷却装置は機器筐体内壁に装着されてあるが、機器筐体外壁に装着されてあっても良い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の如く構成されたヒートパイプ式密閉筐体冷却装置は通常のヒートパイプにより構成されてあるので、従来から通常のヒートパイプの特性上問題とされていた点はそのままに問題点として残されてあるものであった。そのような問題点は次の如き点であった。
(イ) ヒートパイプの保持姿勢がトップヒートモードとなったり、水平ヒートモードとなるような姿勢では、作動不可能になったり、性能が半減したりして、適用出来ないこと。従って適用時の装着姿勢の自由度が小さく、機器筐体内の部品の配置や装着状態に対する対応困難な場合が発生することがあった。また自由度の小さな点の最も如実な例としては図7、図8の如く天井取り付け形、側面取り付け形ではまったく構造の異なる筐体冷却装置にせざるを得ない点があった。
(ロ) ヒートパイプはプレートフィン群を装着して使用せざるを得ないから小型化軽量化が困難となる。プレートフィン群の容積重量はヒートパイプのそれの数倍以上にも達する。
(ハ) ヒートパイプはプレートフィン群を装着して使用せざるを得ないから、フィン装着上の製造技術的理由に因り全てのヒートパイプは直管ヒートパイプとせざるを得ない。またその直管ヒートパイプ群の各ヒートパイプの長さは等しい長さが要求される。この点から設計の自由度が小さく特に機器筐体内に於けるヒートパイプ応用は大きな制限を受け空気対流による受熱構造以外には全く適用出来ないものであった。
(ニ) プレートフィン群は対流を整流する効果はあるがその反面、対流の流れ方向に制限を受けることになり、この点から設計の自由度が大幅に制限される。
(ホ)ヒートパイプによる受放熱はプレートフィン群を介して為されるので、プレートフィンとヒートパイプの間に接触熱抵抗の発生が避けられない、プレートフィンのフィン効率は70%〜80%であり熱抵抗が大きい、フィン間隙に発生する対流の圧力損失も熱抵抗増加の原因になる、等の理由から熱交換効率が必ずしも良好とは云えない。
【0007】
【課題を解決する為の手段】上述の如き課題を解決する為の本発明にかかる手段の基本的な考え方は適用されるヒートパイプとして従来型ヒートパイプの適用を全廃し、長尺蛇行細管ヒートパイプを適用すると同時に、プレートフィン群の全てを廃止し、長尺蛇行細管ヒートパイプそのものを受熱用及び放熱用ピンフィン群として適用することにある。
【0008】適用される長尺蛇行細管ヒートパイプとしては次の各種の構造のものがある。即ち特開昭63−318493(ループ型細管ヒートパイプ)、特願平2−319461(ループ型細管ヒートパイプ)、特願平3−61385(マイクロヒートパイプ)等である。実用上の構造としては上記の各種細管ヒートパイプを使用して、特願平4−135507(l字形状ピン群を有する剣山型ヒートシンク)に係る構造に構成して適用される。この場合のl字形状ピン群は倒立U字形状ピン群であってもその作用効果はまったく同じである。
【0009】図1、図2はそのように構成されてある密閉機器筐体冷却用の冷却装置の基本構造及び後述する実施例を説明する為の断面略図である。図に於て1は本発明の第一の構成要素であるセパレータプレートであって、機器筐体の所定の部分に設けられた開口部分を気密に覆って、機器筐体壁と同様に機器筐体の内外間を気密に分離すると共に受放熱フィン群の支持体の役目をしている。2は本発明の第二の構成要素である蛇行細管ヒートパイプであって、多数回の蛇行によりセパレータプレート1を貫通し、プレート面に直立して配置され、筐体内部相当側を受熱部とし、筐体外部相当側を放熱部とし、それらを連結している中間部を断熱部とし、断熱部においてセパレータプレートに保持されて全体としてセパレータプレートの両面に多数のピン形フィン群を構成している。
【0010】本発明の密閉機器筐体冷却用の冷却装置の基本構造としては上記の如き第一及び第二の構成要素を組み合わせて形成される冷却装置基本ユニットに所定の副構成要素を付加して構成される。副構成要素は各種実施態様毎に異なるので確定は出来ないが、強制対流の場合は風洞を兼ねた冷却装置筐体、強制対流発生用ファン等が共通した副構成要素として機器筐体の内外に於てセパレータプレートの両面に装着される。また自然対流の場合は対流の流速を向上させる為の対流制御手段が機器筐体の内外の所定の位置に設けられる。
【0011】上記本発明の第一の構成要素であるセパレータプレートの詳細については図4、図5に示されてあり、第二の構成要素である蛇行細管ヒートパイプの詳細については図6、図7に示されてあり、それらの組み合わせからなる本発明の密閉機器筐体冷却装置の基本ユニットの詳細については図3に示されてある。
【0012】図4に於けるセパレータプレートは金属角柱1−1の群が平行並列に接着されてプレートが形成されてある。夫々の金属角柱1−1には挟持細溝1−3が形成されてあり、金属角柱1−1が相互に接着されると同時に、挟持細溝1−3により蛇行細管ヒートパイプ2の直管部をその断熱部に於て気密に挟持接着している。図に於ては蛇行細管ヒートパイプ2の直管部は同一平面の段の5本のみが示されてあるが、各金属角柱1−1には所定のピッチで多数の挟持細溝1−3が設けられてあり各金属角柱1−1毎に蛇行細管ヒートパイプ2の多数の直管部が挟持されてある。
【0013】図5は本発明の機器筐体冷却装置のセパレータプレートの他の例であって、プレートは薄肉金属管1−2の群が平行並列に接着されて形成されてある。各薄肉金属管1−2には所定のピッチで多数の挟持細溝1−3が加圧形成されてあり、薄肉金属管1−2の群が相互に接着されると同時に、挟持細溝1−3の群により蛇行細管ヒートパイプ2の多数の直管部が挟持されてある。
【0014】図5の薄肉金属管1−2の群は必ずしも単なる薄肉金属管1−2に限定されるものではなく、2層流体作動液が封入されて構成されたヒートパイプである場合もある。またこの場合のヒートパイプは必ずしも通常のヒートパイプに限定されるものではなく、全てのヒートパイプが連続した長尺の薄肉金属細管が蛇行して形成されてあっても良い。薄肉金属管1−2がヒートパイプである場合は、後述する如く本発明の機器筐体冷却装置の性能には新しい機能が付加されてその性能は大幅に向上する。
【0015】図6及び図7は本発明の機器筐体冷却装置の第2の構成要素であり、図4、図5に於てセパレータプレート1に挟持されてある蛇行細管ヒートパイプの配設状態を示す詳細説明図である。蛇行細管ヒートパイプは多数回の蛇行を繰り返して多数の箇所に於てセパレータプレートを貫通し、そのターンによりセパレータプレートの両面に多数の受放熱ピンフィン群を形成する。図6、図7には蛇行細管ヒートパイプのターンにより、そのターン部が形成する受放熱ピンフィン群の形状が示されてあり、図6の2−1は倒立U字形状ピンフィン群であり、図7の2−2はl字形状ピンフィン群を示してある。
【0016】図3は第一及び第二の構成要素を組み合わせて形成される冷却装置基本ユニットの平面図である。1はセパレータプレートであり、図4の金属角柱1−1の群または図5の薄肉金属管1−2の群が相互に接着されて構成されてあることが示されてある。1−3は蛇行細管ヒートパイプを接着挟持する為の挟持細溝である。2は蛇行細管ヒートパイプであってそのターン部先端群が示されてあり、即ち図6の倒立U字形状ピンフィン群2−1または図7のl字形状ピンフィン群2−2の先端群が示されてある。1−4は取付枠で、これにより金属角柱群または薄肉金属管群の両端群を支持すると共にセパレータプレート1は機器筐体の開口部を覆って機器筐体に取り付けられる。
【0017】図6、図7及び図3に於てはセパレータプレートの両面に形成される多数のピン形フィン群は比較的フィン高さが低く且つフィン高さが揃った所謂剣山形ピンフィン群として示されてある。然しこれは基本的な構造であって、実用時には本発明の冷却装置に於てはその第二の構成要素である長尺蛇行細管ヒートパイプ2の特徴として、所定のピン型フィンのみを所定の高さまたは長さに至る迄延長して構成することが出来る。
【0018】
【作用】本発明の密閉機器筺体冷却装置に適用されるヒートパイプは長尺蛇行細管ヒートパイプであるからその特徴の全てを備えているので従来のヒートパイプ式密閉機器筐体冷却装置の問題点の全てを解決する。その詳細は以下の通りである。
(イ)如何なる保持姿勢でも十分な性能を発揮するから、この冷却装置は機器筐体の如何なる部分にもまた如何なる姿勢でも装着することが出来る。すなわち機器筐体の内部の部品配置の如何に拘わらずに装着することが出来る。また機器筐体の天井取り付け用としても側壁取り付け用としても同一の設計のままで使用することが出来る。
【0019】(ロ)長尺蛇行細管ヒートパイプの蛇行により形成されるピン型フィン群は熱伝達率が極めて大きいのでプレートフィン群を装着する必要が無いから極めて計量小型に構成することが出来る。
【0020】(ハ)プレートフィン群を装着する必要が無いから長尺蛇行細管ヒートパイプは自在に蛇行せしめて適用することが出来る。従ってピンフィン群の中の所定のフィンはその高さまたは長さを必要な位置まで延長して形成することが可能であり、それを機器筐体内の発熱量の大きな部品に接着せしめて金属間熱伝導により直接熱量を吸収せしめ、機器筐体外に直接放熱せしめ他のフィン群の空気対流による放熱を助けて冷却装置の性能を大幅に向上せしめることが出来る。または放射熱伝達により発熱量の大きな部品から直接熱量を吸収し、直接機器筐体外に放熱せしめ、冷却装置の全体としての性能を画期的に向上せしめることが出来る。
【0021】(ニ)ピンフィン群は対流の方向に制約が無いから、冷却装置筐体の形状の制約も無く、また対流発生用ファンの取り付け部分にも制約が無いので冷却装置形状の設計上の自由度が極めて大きい。
【0022】(ホ)対流受放熱はプレートフィン群を介すること無くなされるので、またピンフィン群は受放熱部間の距離が短く熱損失の発生が少ないので、更にフィン効率は100%であるから、熱交換効率が極めて良好である。
【0023】
【実施例】
第一実施例図1は本発明の第一実施例であって、第一の構成要素であるセパレータプレート1、の両面には第二の構成要素である蛇行細管ヒートパイプ2により夫々ピン形放熱フィン群及びピン形受熱フィン群が形成され本発明の機器筐体冷却装置の基本ユニットが構成されてある。本実施例の冷却装置基本ユニットの平面形状は図3に例示の如き方形をなして居り、ピン形受放熱フィンの配列も方形であり、方形剣山形状になっている。この冷却装置基本ユニットには各種の補助要素が組み合わされて、図の如く機器筐体の開口部に装着されて機器筐体冷却装置が構成される。図1において3−1、3−2は夫々夫々機器筺体の外側及び内側の冷却装置筐体でセパレータプレート1、の両面に強制対流空気の流路となる風洞を構成している。4は外部ファン、5は内部ファンで何れも冷却装置筐体3−1の上面及び3−2の下面の中央部に装着されてある。6は対流吸入排出口であって冷却装置筐体3−1、3−2の外周全方向に多数箇所に設けられてある。矢印は内外のファンにより発生する対流の流れ方向を示しているがファンの回転方向を逆転せしめる場合は矢印の方向は図の全く逆方向となる。
【0024】内部ファン5の回転により発生する機器筐体7の中の高温空気の対流は冷却装置筐体の外周から矢印のごとく吸入されてピン形受熱フィン群により熱量を吸収されて冷却され、低温対流となって内部ファン5から排出され、機器筺体内を冷却する。内部ファン5の回転方向が逆の場合は対流の流れ方向は逆方向となるがその機器筐体内冷却作用は全く同じである。
【0025】外部ファン4の回転により吸入された外部の低温度の空気は低温対流となって矢印の示す如く流れ、受熱部フィン群の熱吸収により加熱された放熱フィン群からその熱量を吸収しながら対流吸入排出孔を経て熱量を外部に放出する。内部ファン5の回転方向が逆の場合は対流の流れ方向は逆方向となるがその放熱作用は全く同じである。
【0026】本実施例は長尺蛇行細管ヒートパイプの前述の如き作用によって従来のヒートパイプ式密閉機器筐体冷却装置の問題点の全てを解決する。本実施例の適用形態は図1の如く天井壁面装着に限定されるものではなく、側壁面に装着しても全く同等の性能のままで適用することが可能であり、更に重要な点としては如何なる姿勢で装着しても使用が可能であり、またトップヒートモードでも使用可能であることから、筐体の床壁面に装着して適用しても高性能を発揮せしめることが出来る。このような適用は従来のヒートパイプ式密閉機器筐体冷却装置では実現不可能であった。
【0027】内外部のファンが図の如く冷却装置筐体3−1、3−2の中央部に装着することが出来るのも本実施例の特徴であり、これにより対流の流れは図の矢印の如く全方位に向かい排出されまたは全方位から吸入することが出来るので熱交換に要する流れの距離が短かく圧力損失が少なく、且つ熱交換効率が高くなり高性能となる。ファン取り付け位置が図の如くである為機器筐体内外に突出する冷却装置全体の高さは多少高くはなるが、プレートフィン群の装着を必要としないことにより従来例に比較すれば十分に低くなり、更に冷却装置全体としては大幅に小型軽量化される。
【0028】第二実施例図2は本発明の第二実施例の説明図であり断面略図により示されてある。本実施例に於ては内外部のファン4、5は何れも冷却装置筐体3−1、3−2の端末の延長部に設けられる。また対流吸入排出口6は夫々のファンの反対側に設けられる。従って図1の例の如き対流の流れが全方位から吸入される場合の如き利点は失われるがその代わりに冷却装置筐体3−1、3−2の高さが低くなり、冷却装置の機器筐体壁面から内外に突出する高さが第一実施例より大幅に低くなる特徴がある。この突出高さはプレートフィン群の装着を必要としないことにより従来例に比較すれば更に大幅に低いものとなる。
【0029】本実施例も第一実施例と同様に長尺蛇行細管ヒートパイプの作用によって従来のヒートパイプ式密閉機器筐体冷却装置の問題点の全てを解決する。機器筐体の如何なる部分であっても自由に装着して使用することが出来る点も全く同様であり機器筐体の底部壁面に装着することも可能である。プレートフィン群の助けを借りずピンフィン群表面が直接熱交換面となることによる受放熱効率が高い点に於ても全く同様の効果がある。
【0030】第三実施例本発明の第三実施例は第一の構成要素であるセパレータプレートの構造に関するもので図3、図5、図7により説明される。本実施例は図5に於ける1−2薄肉金属管を密閉コンテナとし二相凝縮性作動液の所定量を封入して構成される。これにより図3、図7のセパレータプレート1は平板状ヒーとパイプとなる。従って本実施例に於ける冷却装置基本ユニットは蛇行細管ヒートパイプと平板状ヒートパイプの組合わせ構造となる。
【0031】対流による受放熱の場合、対流空気は冷却装置筐体3−1、3−2に於けるその流入部から排出部に至る間に熱量を吸収たは放出して次第に温度上昇または温度降下する。即ち冷却装置の熱交換能力はその流入部から排出部に至る間に次第に低下する。従って対流流路の経路が長い場合や対流の流速が遅い場合はこの現象の発生が激しく、冷却装置の性能が著しく低下する場合がある。
【0032】本実施例の場合はセパレータプレート1は平板状ヒーとパイプであるから、その温度均一化特性により、放熱不足により温度上昇した部分の熱量を放熱能力に余裕があり温度降下した部分に輸送し、または熱吸収不足により温度低下した部分に熱吸収能力に余力があり温度上昇した部分の熱量を輸送し、受放熱フィン群の各部の熱交換能力を均一化せしめる作用がある。このことは筐体冷却装置の全体の能力を著しく向上せしめる。また後述する実施例の如くピンフィンの長さを延長せしめて高温部品の熱量を直接吸収して放熱せしめる場合には特に効果的で部品温度を均一に降下せしめる効果がある。
【0033】本実施例のセパレータプレート1の温度均一化特性はプレートを構成するヒートパイプの長さ方向に対して抜群に優れる。また上述の対流の温度差の発生は対流の流れ方向に於て発生する。従って本実施例の実施に当たっては対流の流れ方向はヒートパイプの長さ方向と一致せしめて実施すべきである。またセパレータプレートを構成するヒートパイプは通常のヒートパイプの群であっても、それらが直列に連結された蛇行細管ヒートパイプで構成されてあってもその効果は同一である。
【0034】第四実施例図8及び図9は本発明の第四実施例の説明図であり、断面略図で示してある。本実施例は自然対流方式の密閉機器筐体冷却装置であって冷却装置基本ユニットに自然対流の流速向上の為の補助要素を付加して構成される。自然体流冷却に共通の手段として流れを良好ならしめる為蛇行細管ヒートパイプ2により形成されるピンフィン群の段間距離及び列間距離は何れも8mm以上、出来得れば10mm以上として配列される。自然対流の流れ方向は上下方向となるから強制対流の場合と異なり天井壁面取り付け型と側壁面取り付け型の場合は自ら構造は異なることになる。
【0035】図8は天井取り付け型の例であって外観的には冷却装置基本ユニットがそのまま適用されてある。然しピンフィン群はそれらの間隙の垂直方向に煙突効果が発生し、その効果はフィン高さが適度に高い程良好となる。実験の結果では高さが80mm前後から効果が増加し始め、300mm前後で最高に達することが分かった。従って図8に於ける本実施例では性能向上の補助要素としてフィン高さを80mm〜400mmとする。
【0036】図9は側壁面取り付け型の例であって、冷却装置筐体3−1、3−2は煙突効果向上用の風洞を兼ねて冷却装置基本ユニット全体を覆って垂直に設けられてある。その形状は実験結果に基づいて、対流吸入排出口の位置を対流の流入部に於ては出来るだけフィンに近く、対流の流出部に於てはフィンから十分に遠くなるよう構成されてある。
【0037】第五実施例図10は本発明の機器筐体冷却装置の第五実施例の説明図であって、断面略図によって示されてある。機器筐体の中には部分的に大発熱量の部品8−1、8−2が配設されてある場合があり、このような部品は機器筐体内の空気を冷却する間接的な冷却方式では冷却不可能な場合が多い。本実施例はそのような部品8−1、8−2を選択的に強力に冷却することを可能にする。
【0038】図に於ける受放熱フィン群2の中の所定の群に於て、それらの機器筐体内部相当部分2−1、2−2は筐体内部に延長して展開されてあり、その先端部分は所定の高温発熱部品8−1に直接接着せしめられてあるか、高温発熱部品8−2に受熱平板2−3を介して接着せしめられてあるかして、伝熱的に連結されてある。このように構成されることにより高温発熱部品8−1、8−2の発生熱量は金属間熱伝導により効率的に受熱フィン群に吸収され、直接フィン群の放熱部に輸送され機器筐体外の空気中に放熱される。従って冷却装置の残余のフィン群は比較的軽い負担により効率的に残余の弱発熱部品からの発生熱量を冷却することが出来るようになる。
【0039】本実施例の冷却装置は主要発熱部品の熱量を直接機器筐体外に放熱するから、残余の少量の熱量の冷却は自然対流放熱で十分となる。従って図10に於ては内部ファン及び冷却装置筐体の配設は省略されて自然対流方式に構成されてある。然し内部発熱量が大きく自然対流で冷却能力不足の場合は他の実施例と同様に強制対流方式に構成しても良い。
【0040】本実施例は機器筐体内に延長され、展開された延長フィン群2−2と実装部品を搭載するに適した構造の金属平板または平板状ヒートパイプとを伝熱的に接着連結し、機器筐体内の高発熱部品を選択的にこの金属平板または平板状ヒートパイプに搭載するようにして実施しても良い。
【0041】本実施例のような構成は自由度の高い本発明の蛇行細管ヒートパイプ式機器筐体冷却装置のみに於て実施可能であり、従来の通常ヒートパイプ式機器筐体冷却装置ではこのように構成することは全く不可能であった。
【0042】第六実施例図11は本発明の第六実施例の説明図であり断面略図により示されてある。本実施例が対象とする密閉機器筐体7はその内部にプリント回路基板群9が所定のピッチで平行並列に配設されてある筐体である。一般の場合筐体冷却装置内の弱発熱部品は受熱フィン群2に熱吸収されて冷却された低温対流の熱伝達により冷却される。然しプリント回路基板群9の如き平板状体が平行並列に配設されてある場合、低温対流を均等の流量流速で多数の基板間隙に導入するのは極めて困難であり、また基板間に導入された低温対流を、基板間をくまなく同一の流量流速で流れるようにすることも不可能に近く、従ってプリント回路基板9の群に搭載された多数の弱発熱部品の冷却は極めて不均一であり、弱発熱部品とは云え中には制限温度を大幅に越えて温度上昇する部品が多発するので大きな問題点となっていた。特に自然対流方式の場合は低温対流の流量流速が小さなことに起因して基板間隙相互間に於ける、また同一基板間隙内であってもその位置により流量流速に大きなむらが発生し、極めて高い頻度で上述のような問題が発生するものであった。
【0043】図11に於ては蛇行細管ヒートパイプにより形成されたピンフィン群2に於ける所定の群2−4は機器筐体内に延長展開されてあり、その部分は熱伝導性の良好な金属平板の群または薄い厚さの平板状ヒートパイプ2−5の群と伝熱的に接続されてあり、それら平板の群はプリント回路基板9の群の基板間隙内に挿入されて、プリント回路基板9の表面を覆つて配置されてあるかまたはプリント回路基板9の表面に伝熱的に接続されてあることを特徴としている。
【0044】このように構成された冷却装置に於てはプリント回路基板9に実装された部品で発生した熱量の殆どは、放射熱伝達または直接熱伝導によって、金属平板の群または平板状ヒートパイプ2−5の群にむらなく吸収される。この熱量は平板状ヒートパイプの作動または受熱平板の金属間熱伝導により効率的に延長フィン2−4に吸収され、更にこの熱量は延長フィン2−4の群の細管ヒートパイプ作用によりピンフィン群の放熱部に輸送され機器筐体外に放熱される。この熱輸送は筐体内対流による熱伝達熱輸送に比較して能力が数十倍も高いので、プリント回路基板9の実装部品が発生する熱量は殆ど損失無く且つむらなく機器筐体外に放熱される。
【0045】このようにして機器筐体内の大部分の発生熱量は直接機器筐体外に放熱されるから機器筐体内における残余の熱量は極めて少ないものとなる。従って残余の熱量は残余のピンフィン群受熱部の自然対流熱吸取のみによって放熱することが出来るから本実施例に於ては機器筐体内の強制対流発生手段は省略されてある。然し残余の発熱体の熱量が特に大きい場合は強制対流発生手段を併用しても良い。
【0046】
【発明の効果】長尺蛇行細管ヒートパイプの蛇行によって形成されるピンフィン群を受放熱手段とする本発明の機器筐体冷却装置は、小型高性能化を可能にするだけでなく、機器筐体内の特に発熱量の大きな発熱部品や、筐体内対流が流入困難なことに因り冷却が困難なな部分の発熱部品の熱量は、放射熱伝達や金属間熱伝導によって能率よく機器筐体外に放熱せしめると云う、従来の機器筐体冷却装置では考えられなかったような優れた特性をも発揮せしめることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の機器筐体冷却装置の基本構造及び第一実施例を示す説明図であって断面略図で示されてある。
【図2】本発明の機器筐体冷却装置の第二実施例示す説明図であって断面略図で示されてある。
【図3】本発明の機器筐体冷却装置構成の基本となる基本ユニットの平面図である。
【図4】本発明の機器筺体の冷却装置基本ユニットの第一構成要素であるセパレータプレートの構造の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の機器筺体の冷却装置基本ユニットの第一構成要素であるセパレータプレートの構造の他の例を示す説明図である。
【図6】本発明の機器筺体の冷却装置基本ユニットの第二構成要素である蛇行細管ヒートパイプの構造の一例を示す説明図である。
【図7】本発明の機器筐体の冷却装置基本ユニットの第二構成要素である蛇行細管ヒートパイプの構造の他の例を示す説明図である。
【図8】本発明の機器筐体冷却装置の第四実施例の一例を示す説明図であって断面略図で示されてある。
【図9】本発明の機器筐体冷却装置の第四実施例の他の例を示す説明図であって断面略図で示されてある。
【図10】本発明の機器筐体冷却装置の第五実施例を示す説明図であって断面略図で示されてある。
【図11】本発明の機器筐体冷却装置の第六実施例を示す説明図であって断面略図で示されてある。
【図12】従来型のヒートパイプ式密閉筺体冷却装置の天井取り付け形のものの説明図であって断面略図で示されてある。
【図13】従来型のヒートパイプ式密閉筐体冷却装置の側面取り付け形のものの説明図であって断面略図で示されてある。
【符号の説明】
1 セパレータプレート
2 蛇行細管ヒートパイプまたは受放熱フィン群
2−1 延長フィン
2−2 延長フィン
3−1 冷却装置筐体
3−2 冷却装置筐体
4 外部ファン
5 内部ファン
6 対流吸入排出口
7 密閉機器筐体
8−1 高温発熱部品
8−2 高温発熱部品
9 プリント回路基板
11 ヒートパイプ
12 プレートフィン群
13 セパレータプレート
14 外部ファン
15 内部ファン
16 冷却装置筐体
17 機器筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 密閉機器筐体の内部にて発生する熱量を主として筐体内の流体の対流により吸収し、機器筐体外に輸送し、主として筐体外の空気の対流中に放熱せしめて機器筐体内の発熱部の温度上昇を防止する密閉機器筐体冷却装置であって、この機器筐体冷却装置の構成は機器筐体の所定の部分に設けられた開口部分を気密に覆って取り付けられ、機器筐体壁相当の機能及び受放熱フィン群支持板としての機能を有するセパレータプレートを第一の構成要素とし、蛇行細管ヒートパイプにより形成され、多数回の蛇行を繰り返しながら、セパレータプレートを貫通し、プレート面に対し直立して配置され、機器筐体内部相当側を受熱部とし、機器筐体外部相当側を放熱部とし、それらを連結している中間部を断熱部とし、断熱部においてセパレータプレートに保持されて形成されてある受放熱フィンの群を第二の構成要素とし、此等二要素からなる冷却装置基本ユニットを主体としてこれらに所定の補助要素が併設されて構成されてあり、第一の構成要素であるセパレータプレートは金属角柱または金属の薄肉管の多数本が平行並列に且つ気密に密接接着されて構成された平板状体であり、各放熱フィンの断熱部は隣接する金属角柱または薄肉管の相互接着部においてそれらの外壁面に形成されてある挟持細溝に密に接着して挟持されて構成されてあり、第二の構成要素である放熱フィンの群はl字形状または倒立U字形状ピンフィン群であり、長尺の蛇行細管コンテナが多数回の蛇行を繰り返すことにより構成されてあるループ型または非ループ型蛇行細管ヒートパイプにより形成されてあり、その蛇行ターンの一回毎にl字形状または倒立U字形状ピンの一対が形成されて全体としてセパレータプレートの両面に多数のピン形フィン群が形成されて冷却装置基本ユニットが構成されあることを特徴とする密閉機器筐体冷却装置。
【請求項2】 セパレータプレートを構成する金属の薄肉管群は通常ヒートパイプの群であるか、ループ型又は非ループ型長尺蛇行細管ヒートパイプの蛇行により構成されてあるかの何れかであり、薄肉管群の整列方向とセパレータプレートの両面における対流の流れ方向とは同一方向であることを特徴とする請求項1に記載の密閉機器筐体冷却装置。
【請求項3】 受放熱フィン群の中の所定の群に於て、それらの筐体内部相当側部分は筐体内部に延長展開されてあり、その先端部分は筐体内の所定の発熱部品に直接接着せしめられてあるか、または受熱平板を介して接着せしめられて伝熱的に連結されてあることを特徴とする請求項1に記載の密閉機器筐体冷却装置。
【請求項4】 密閉機器筐体はその内部にプリント回路基板群が所定のピッチで平行並列に配設されてある筐体であって、筐体冷却装置の受熱フィン群に於ける所定の群は熱伝導性の良好な金属平板の群または薄い厚さの平板状ヒートパイプの群と伝熱的に接続されてあり、それら平板の群はプリント回路基板群の基板間隙内に挿入されて、プリント回路基板表面を覆つて配置されてあるかまたはプリント回路基盤表面に伝熱的に接続されてあることを特徴とする請求項1に記載の密閉機器筐体冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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