説明

寝装用パッド装置

【課題】利用者を温めたり、冷やしたりするための流体が流通する循環チューブをパッド本体に設けるようにした就寝用パッド装置を提供することにある。
【解決手段】寝具の上面に設けられる寝装用パッド装置であって、
パッド本体3と、柔軟な材料によって形成されパッド本体の厚さ方向の中途部に設けられた循環チューブ13と、循環チューブに流体を流通させるとともに、その流体の温度を制御するコントローラ部19を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は寝具としてのたとえばマットレスの上面に設けられる寝装用パッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、ベッド装置はベッド本体を有し、このベッド本体にはマットレスが載置される。このマットレスの上面にはベッドパッドが設けられ、このベッドパッドにはシーツが掛けられる。つまり、上記ベッドのマットレスはベッドパッドとシーツによってベッドメーキングされた状態で使用されることになる。
【0003】
利用者は上記マットレス上に仰臥して就寝することになるが、冬季や夏季のように室内温度が低い季節や高い季節には暖房や冷房をして快適に就寝するようにしている。
【0004】
しかしながら、室内を暖房や冷房して室温を制御するようにしたのでは熱効率が悪く、エネルギーの無駄が大きいので、上記ベッドを温めたり、冷却するということが行われている。
【0005】
従来、上記ベッドを温めたり、冷却するには、上記ベッドに金属製の放熱パネルを埋設し、この放熱パネルに1本の放熱パイプを蛇行状に装着する。放熱パイプの一端の流入口は内部を流通する液体を温度制御する冷暖房ユニットの供給側に接続され、他端の流出口は冷暖房ユニットの戻り側に接続されている。
【0006】
それによって、上記冷暖房ユニットによって温度制御された液体を上記放熱パイプに循環させることができるから、上記放熱パイプが埋設された寝具用ベッドを効率よく暖房したり、冷房することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−299115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、寝具用ベッドに金属製の放熱パネルを埋設すれば、室内を暖房や冷房する場合に比べて利用者を効率よく温めたり、冷やしたりすること可能となる。しかしながら、寝具用ベッドに金属製の放熱パネルを埋設する構成であると、既存のベッド用寝具を使用することができなかったり、大幅な改造が必要となるため、極めて不経済であり、しかも寝具用ベッドに流れる流体の熱が利用者に効率よく伝わり難いから、熱効率を十分に向上させることができないということもある。
【0009】
この発明は、既存のベッド用寝具が使用できなくなったり、大幅な改造が必要となる不経済が生じることなく利用者を効率よく暖房や冷房することができるようにした寝装用パッド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、寝具の上面に設けられる寝装用パッド装置であって、
パッド本体と、
柔軟な材料によって形成され上記パッド本体の厚さ方向の中途部に設けられた循環チューブと、
この循環チューブに流体を流通させるとともに、その流体の温度を制御するコントローラ部と
を具備したことを特徴とする寝装用パッド装置にある。
【0011】
上記循環チューブは複数の流路部に分割されていて、上記コントローラ部で温度制御された流体は上記複数の流路部に分割されて供給される構成であることが好ましい。
【0012】
内部に供給管路と戻り管路が設けられ一端が上記パッド本体に接続され他端が上記コントローラ部に着脱可能に接続される接続チューブを有し、
上記供給管路と戻り管路は、一端が上記循環チューブの複数の流路部の一端と他端とにそれぞれ接続され、他端が上記コントローラ部によって温度制御された流体を上記供給管路を通じて上記複数の流路部に供給して上記戻り管路を通じて上記コントローラ部に戻るよう接続されていることが好ましい。
【0013】
上記パッド本体は断熱性の材料によって形成された下層と、この下層の上面に設けられ通気性を備えた材料によって形成された上層とによって構成されていて、上記循環チューブは上記下層と上記上層の間に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、寝具の上面に設けられる寝装用パッド装置のパッド本体の厚さ方向の中途部に温度制御された流体が流通する循環チューブを設けたから、上記パッド本体の上面に仰臥する利用者を効率よく暖房したり、冷房することができ、しかも既存のベッドを使用することができるから、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施の形態を示すベッド装置の正面図。
【図2】上記ベッド装置に用いられる就寝用パッド装置の平面図。
【図3】上記就寝用パッド装置のパッド本体の正面図。
【図4】上記就寝用パッド装置の流体の経路を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1はベッド1を示し、このベッド1は長手方向一端にヘッドボード2が設けられたベッド本体3を有する。このベッド本体3の上面には寝具としてのマットレス4が載置され、このマットレス4の上面には就寝用パッド装置5のパッド本体6が一対のバンド6aを上記マットレス4に係合させて着脱可能に載置されている。上記パッド本体6と上記マットレス4は図示しないシーツによって覆われる。
【0018】
なお、寝具としてマットレス4を挙げ、このマットレス4の上面に就寝用パッド装置5のパッド本体6を設けるようにしたが、寝具としては布団であってもよい。
【0019】
図2に示すように、上記パッド本体6は上記マットレス4の平面形状とほぼ同じ大きさの矩形状に形成されている。図3に示すように、上記パッド本体6はポリエステル綿などの断熱性が比較的高い材料によって形成された下層7と、立体メッシュ織物などの通気性の高い材料によって形成された上層8とを重合し、これら下層7と上層8との周縁部をフランジ布11によって一体的に縫合し、周縁部以外の部分をキルティング12によって縫合して形成されている。
【0020】
上記下層7の断熱性は上記上層8よりも高く、しかもこの上層8よりも低い通気性を備えていることが好ましい。つまり、断熱性と通気性の両方を備えた素材を用いることが好ましい。
【0021】
上記立体メッシュ織物は、詳細は図示しないが、上面メッシュ地と下面メッシュ地とを連結糸によって適当な間隔で連結した立体構造をなしていて、厚さ方向及び厚さ方向と交差する方向に通気性を備えている。なお、この立体メッシュ織物はポリエステル、ポリアミド、アクリルなどの合成繊維、ウールや絹などの天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維などの編成可能な繊維によって形成されている。
【0022】
さらに、上記上層としては、立体メッシュ織物の他に、たとえば糸状のポリエチレンなどの樹脂を3次元的に絡み合わせることで、通気性を呈する空気層を有するよう形成された立体状の繊維層などであってもよい。
【0023】
上記パッド本体6の下層7と上層8との間には、たとえばフッ素ゴムなどの柔軟な材料によって形成された循環チューブ13が蛇行状に設けられている。この循環チューブ13は上記パッド本体6の幅方向中央部分に三重に蛇行して設けられた第1の流路部13aと、上記パッド本体6の幅方向の上記第1の流路部13aの上側と下側にそれぞれU字状に1回だけ蛇行して設けられた第2乃至第5の流路部13b〜13eとの5つの部分に分割されている。
【0024】
上記第1乃至第5の流路部13a〜13eの一端と他端は上記パッド本体6の長手方向一端側に位置している。上記パッド本体6の長手方向一端側の幅方向中央部には本体チューブ14が一端部を上記パッド本体6の内部に突出させて設けられている。
【0025】
図4に示すように、上記本体チューブ14の内部には第1の供給管路15aと第1の戻り管路15bが全長にわたって設けられている。上記第1の供給管路15aの一端部には上記第1乃至第5の流路部13a〜13eの一端が上記本体チューブ14の一端部に設けられた接続口体16を介して接続され、上記第1の戻り管路15bの一端部には上記第1乃至第5の流路部13a〜13eの他端が上記接続口体16を介して接続されている。
【0026】
上記本体チューブ14の他端には、内部に第2の供給管路18aと第2の戻り管路18bを有する接続チューブ18の一端が着脱可能に接続されている。この接続チューブ18の他端はコントローラ部19に着脱可能に接続される。つまり、パッド本体6に対して上記コントローラ部19は上記接続チューブ18によって着脱可能に接続されている。
【0027】
図4に示すように、上記コントローラ部19にはたとえばペルチェ素子などによって形成された温度調節部21が設けられている。この温度調節部21にはポンプ22を介してタンク23が接続されている。このタンク23に収容された流体、たとえば液体は上記温度調節部21に上記ポンプ22によって供給される。そして、上記温度調節部21に供給された流体は図示しない設定部によって設定された温度に加熱或いは冷却される。
なお、上記タンク23は図示しない制御部によって運転が制御されるようになっている。
【0028】
上記温度調節部21で温度制御された流体は、この温度調節部21から上記接続チューブ18の第2の供給管路18a及び上記本体チューブ14の第1の供給管路15aを通じて上記パッド本体6の循環チューブ13の第1乃至第5の流路部13a〜13eに分割されて供給される。
【0029】
第1乃至第5の流路部13a〜13eに供給された流体は、温度制御された温度に応じてパッド本体6の内部で上記循環チューブ13を介して放熱しながら循環し、上記本体チューブ14の第1の戻り管路15b、上記接続チューブ18の第2の戻り管路18b及び上記タンク23を通じて上記温度調節部21に戻るようになっている。
【0030】
上記構成の寝装用パッド装置5によれば、就寝用パッド装置5のパッド本体6にコントローラ部19によって温度制御された流体がポンプ22によって循環させられる循環チューブ13を設けるようにした。
【0031】
そのため、従来から用いられているベッド本体3、マットレス4及びパッドのうち、パッドを新たなパッド本体6に交換するだけでよいから、既存のベッド本体3やマットレス4を改造する場合に比べて経済的である。つまり、パッド本体6とコントローラ部19からなる寝装用パッド装置5は既存のベッド本体3に容易に用いることができる。
【0032】
上記パッド本体6には、コントローラ部19によって温度制御された流体が供給される循環チューブ13を、上記パッド本体6の厚さ方向中途部に設けるようにした。つまり、上記パッド本体6を構成する下層7と上層8の間に設けるようにした。
【0033】
上記下層7は断熱性が比較的高い材料によって形成され、上記上層8は通気性の高い材料によって形成されている。そのため、上記循環チューブ13を流れる流体の熱は、上記パッド本体6の下面側には逃げ難く、上面側に放散され易いため、上記循環チューブ13からの熱を上記パッド本体6上に仰臥した利用者に対して効率よく作用させることができる。つまり、上記循環チューブ13を流れる流体の熱によって利用者を効率よく温めたり、冷やすことができる。
【0034】
上記パッド本体6の下層7と上層8の間に設けられる上記循環チューブ13を、第1乃至第5の流路部13a〜13eに分割し、上記コントローラ部19の温度調節部21で温度制御された流体を、接続チューブ18と本体チューブ18の第2、第1の供給管路18a,15aを通じて供給するようにした。
【0035】
すなわち、上記コントローラ部19で温度制御された流体は、第1乃至第5の流路部13a〜13eに分割されて同時に供給されることになる。そのため、第1乃至第5の流路部13a〜13eにはほぼ同じ温度で流体が循環することになるから、パッド本体6の第1乃至第5の流路部13a〜13eが設けられた部分である、パッド本体6のほぼ全面をほぼ均一な温度にすることができる。
【0036】
それによって、パッド本体6上に仰臥した利用者は全身がほぼ同じ温度で温められたり、冷やされたりするから、そのことによって快適性が向上することになる。
【0037】
つまり、パッド本体6に設けられる循環チューブ13を第1乃至第5の流路部13a〜13eに分割せずに1本とし、その一端から温度制御された流体を流入させて他端から流出させるようにした場合、上記循環チューブ13での流体の流入側と流出側とで温度差が生じる。
【0038】
しかしながら、この実施の形態に示すように循環チューブ13を第1乃至第5の流路部13a〜13eに分割すれば、第1乃至第5の流路部13a〜13eにほぼ同じ温度の流体を流すことができるから、上述したようにパッド本体6の全面をほぼ均一な温度になるよう制御することが可能となる。
【0039】
なお、上記一実施の形態では循環チューブ13をパッド本体6の厚さ方向中途部に設けるために、パッド本体6を断熱性の高い材料からなる下層と、通気性の高い材料からなる上層とに分割したが、パッド本体6を下層と上層とに分割せずに綿などによって所定の厚さに形成するとともに、その厚さ方向の中途部に上記循環チューブ13を埋設するようにしてもよい。
【0040】
また、パッド本体6をマットレス4の上面に載置する例を挙げて説明したが、マットレス4の上面を形成する上鏡地をパッド本体6で形成するようにしてもよい。
【0041】
また、パッド本体6をシート状の薄手で、可撓性を有する材料で形成すれば、そのパッド本体6によって形成された寝装用パッド装置を折り曲げて、たとえばソファーの座面と背面にかけて使用することもでき、さらにマットレス4の上面を形成する上鏡地として用いる場合にも好適する。
【0042】
マットレス4がダブルサイズやキングサイズの場合、左右に2つのパッド本体6を並設して使用することもできる。その場合、左右一対のパッド本体6に設けられた循環チューブ18を流れる流体の温度を異なる温度に調節することができる。
【0043】
さらに、パッド本体6をマットレス4の長さの約半分の寸法にし、マットレス4の上下方向に2つのパッド本体6を設け、上下2つのパッド本体6に設けられた循環チューブ18を流れる流体の温度を異なる温度に調節するようにしてもよい。
【0044】
また、循環チューブ13を5つに分割した例を挙げて説明したが、循環チューブ13は2つ以上に分割すれば、分割しない場合に比べて上述した作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1…ベッド、3…ベッド本体、4…マットレス、5…就寝用パッド装置、6…パッド本体、7…下層、8…上層、13…循環チューブ、13a〜13e…第1乃至第5の流路部、18…接続チューブ、19…コントローラ部、22…ポンプ、23…タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝具の上面に設けられる寝装用パッド装置であって、
パッド本体と、
柔軟な材料によって形成され上記パッド本体の厚さ方向の中途部に設けられた循環チューブと、
この循環チューブに流体を流通させるとともに、その流体の温度を制御するコントローラ部と
を具備したことを特徴とする寝装用パッド装置。
【請求項2】
上記循環チューブは複数の流路部に分割されていて、上記コントローラ部で温度制御された流体は上記複数の流路部に分割されて供給される構成であることを特徴とする請求項1記載の寝装用パッド装置。
【請求項3】
内部に供給管路と戻り管路が設けられ一端が上記パッド本体に接続され他端が上記コントローラ部に着脱可能に接続される接続チューブを有し、
上記供給管路と戻り管路は、一端が上記循環チューブの複数の流路部の一端と他端とにそれぞれ接続され、他端が上記コントローラ部によって温度制御された流体を上記供給管路を通じて上記複数の流路部に供給して上記戻り管路を通じて上記コントローラ部に戻るよう接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の寝装用パッド装置。
【請求項4】
上記パッド本体は断熱性の材料によって形成された下層と、この下層の上面に設けられ通気性を備えた材料によって形成された上層とによって構成されていて、上記循環チューブは上記下層と上記上層の間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の寝装用パッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−245094(P2012−245094A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117915(P2011−117915)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000010032)フランスベッド株式会社 (95)
【Fターム(参考)】