説明

射出成形機のノズル装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶融樹脂を金型に射出する射出成形機のノズル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】射出成形機のノズル装置として図7と図8R>8に示すものが知られている。図7のノズル装置は、通常の単材質射出成形機において樹脂漏れを防止するものであり、これについて説明すると、前端(図で左側を前とする。)に射出口11aを有するノズル11内に、上記射出口11aの内側壁(弁座)11bに当接させられて射出口11aを閉じるニードル12が、上記ノズル11と同心状に、かつ軸方向に移動自在に挿入され、ピン13を中心に回動させられるレバー14を介して上記ニードル12を油圧シリンダ15のピストンロッド15bで前進させて射出口11aを閉じる構成とされている(実開昭59−160216号公報)。ピストンロッド15bはレバー14にピン16で連結されている。
【0003】また、図8は、種類や色などが異なる2種以上の樹脂を一つの金型に同時、若しくは別々に射出してサンドイッチ成形等を行うことができる射出成形機のノズル装置である。このノズル装置は、前端に射出口1aを有する外側ノズル1内に、前端に射出口2aを有し上記外側ノズル1の弁座1bに接して外側ノズル1を閉じる内側ノズル2が、射出装置4に連通する流通チャンバC1を外側ノズル1との間に形成して外側ノズル1と同心状に、かつ軸方向に移動自在に挿入され、上記内側ノズル2内に、該内側ノズル2の射出口2aに該射出口2aと同長の閉塞軸3aをその全長にわたり嵌め入れて内側ノズル2を閉じるニードル3が、射出装置5に連通する流通チャンバC2を内側ノズル2との間に形成して内側ノズル2と同心状にかつ軸方向に移動自在に挿入されている。
【0004】そして上記内側ノズル2には、該内側ノズル2を軸方向に外側ノズル1に対して移動させる油圧シリンダ6が付設され、また上記ニードル3には該ニードル3を軸方向に内側ノズル2に対して移動させる油圧シリンダ7が付設されている。
【0005】油圧シリンダ6は、そのシリンダ本体6aを外側ノズル1の後端に直結し、ピストンロッド6bを内側ノズル2の後端に直結して設けられている。また、油圧シリンダ7は、そのシリンダ本体7aを内側ノズル2の後端に形成し、そのピストンロッド7bをニードル3の後端に直結して設けられている。そして、射出装置4は、外側ノズル1に形成された流通孔1cと内側ノズル2に形成された溝を介して流通チャンバC1に連通し、また射出装置5は、ノズル1,2に形成された流通孔1d,2dとニードル3に形成された溝を介して流通チャンバC2に連通する構造となっている。
【0006】このノズル装置は、射出装置4を作動させて樹脂を射出する場合は、電磁弁8のソレノイドaを励磁して駆動シリンダ6で内側ノズル2を後退させることにより外側ノズル1の弁座1bから内側ノズル2を離し、外側ノズル1の射出口1aを図8のように開いて行う。
【0007】また、射出装置5の作動で樹脂を射出するときは、電磁弁8のソレノイドaを消磁して油圧シリンダ6で内側ノズル2を前進させることにより外側ノズル1の弁座1bに当接させて外側ノズル1を閉じるとともに、電磁弁9のソレノイドbを励磁して油圧シリンダ7でニードル3を後退させることにより内側ノズル2の射出口2aから閉塞軸3aを引き抜き、内側ノズル2の射出口2aを開いて行う(実開昭63−161811号公報)。このようなノズル装置は、特開昭60−212315号公報、特公平4−84654号公報、特公昭55−45374号公報にも記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】図7のノズル11と、図8の外側ノズル1とは、ニードル12又は内側ノズル2の弁座11b,1bに対する当接によって閉じられる構成とされているため、シリンダ15,6の出力が弁座11b,1bに作用することになり、弁座11b,1b等が損傷しやすいという問題がある。シリンダ15,6の出力を小さくすれば上記の点は軽減されるが、樹脂の射出圧力が高いと、射出口11a,1aを完全に閉じることができなくなる。
【0009】図8の内側ノズル2の場合は、射出口2aに対する閉塞軸3aの嵌込みで閉じられる構成とされているため、ニードル3の閉塞軸3aの付け根部分を射出口2aの内側壁2bに当接させない限りにおいては上記のような問題はない。しかし、射出口2aと同長とされた閉塞軸3aをその全長にわたって射出口2aに嵌め入れて射出口2aを閉じる構成とされているため、次のような問題点がある。
【0010】■ 閉塞軸3aの長い開閉ストロークが必要となるため、動作遅れを生じやすい。
■ 保圧工程が終了し、キャビティ内の樹脂が固化してからニードル3を移動させて射出口2aを閉じるが、この際閉塞軸3aの閉作動によって射出口2aから押し出される樹脂量が多いため、ノズルタッチ部でばりとなってはみ出たり、ランナーやスプルー等に無理に押し込まれたりして様々な支障を生じやすい。
【0011】■ 閉塞軸3aが射出口2aから引き抜かれる際に、閉塞軸3aの周囲に加わる樹脂圧力が射出口2aからの樹脂の射出開始によって瞬間的に不均衡となり、閉塞軸3aを曲げるように作用するが、閉塞軸3aの長さが前記のように長いと、上記の曲げ作用によって切損することがある。
【0012】本発明は、動作遅れとばり等の支障がなく、しかもノズルとニードルが駆動圧や樹脂圧によって損傷するおそれがない、射出成形機のノズル装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は、前端に直線状の射出口を有するノズル内に、上記射出口に嵌め入れられて該射出口を閉じる直線状の閉塞軸を前端に形成したニードルが、上記ノズルと同心状に、かつ軸方向に移動自在に挿入され、上記ニードルには、該ニードルを軸方向に前進させる移動用駆動装置が付設された射出成形機のノズル装置において、上記ニードルは、移動用駆動装置により前進させられて上記ノズルの射出口に嵌め入れられた閉塞軸の前端面を、移動用駆動装置が前進作動端に達した状態で射出口の開口よりも内側に位置させて停止し、かつ閉塞軸の付け根部分をノズルに当接させることなく射出口に対する閉塞軸の嵌入のみによって上記ノズルを閉じる構成とした。ニードルを、閉塞軸に射出口を有する内側ノズルとすることもできる。
【0014】
【作用】閉塞軸の長さとその開閉ストロークを短かくすることができるので、動作遅れと、射出口からの樹脂の押出しに起因するばり等の支障をなくすことができる上、樹脂圧による閉塞軸の切損を防ぐことができる。また、弁座にニードルが当接してノズルを閉じる方式ではないので、移動用駆動装置の駆動圧によってノズル等を損傷することがない。
【0015】
【実施例】図1と図2は本発明に係る射出成形機のノズル装置の一実施例を示す。なお、図7と同一の部材等には同一の符号を付してその詳しい説明は省略する。
【0016】ノズル11の前端には射出口11cが直線状に形成され、またニードル12の前端には閉塞軸12aが直線状に設けられている。射出口11cと閉塞軸12aとは共に断面円形で、中心線を互いに一致させている。閉塞軸12aは、射出口11cに嵌め入れられて射出口11cを閉じるものであり、その直径は樹脂漏れが生じない程度に射出口11cの直径よりも僅かに小さく、また嵌込み長さは射出口11cよりも十分に短かくされている。
【0017】油圧シリンダ(移動用駆動装置)15は、ニードル12を前進させ、前進作動端に達した状態で閉塞軸12aの一部分を射出口11cに嵌め入れて停止し(図1参照)、また後退作動端では、図2のように、閉塞軸12aが射出口11cから完全に引き抜かれて射出口11cを開くことができるように、そのストロークが定められている。
【0018】次に上記の構成とされた本発明に係る射出成形機のノズル装置の作用を説明する。油圧シリンダ15を縮小させると、ピストン15aのロッド15bにピン16で連結されたレバー14の回動によってニードル12が前進し、閉塞軸12aを射出口11cに嵌め入れてこれを閉じる。
【0019】この場合、油圧シリンダ15のストローク等が前記のように定められているため、ニードル12は、油圧シリンダ15が前進作動端に達した状態で閉塞軸12aの前端面12bを射出口11cの開口面11dよりも内側に位置させて停止し、閉塞軸12aの付け根部分に形成されたテーパ部12cをノズル11に当接させることなく、射出口11cに対する閉塞軸12aの嵌込みのみによってノズル11を閉じることとなる。
【0020】したがって、油圧シリンダ15の駆動力がノズル11に加わることがなく、ノズル11等の損傷が防止される。また、ニードル12の開閉ストロークが短かいので、時間遅れを生じることがないとともに、射出口11cの閉塞時に閉塞軸12aによって射出口11cから押し出される樹脂量が少ないので、ばり等の支障を防止することができる。閉塞軸12aは短いので樹脂圧によって切損することがない。油圧シリンダ15は、電磁石やモータ等を利用した他の移動用駆動装置とすることができる。
【0021】図3は本発明の第2実施例を示す。このノズル装置においては、閉塞軸12aが嵌め入れられる射出口11cの前部分11eが、外開きのテーパ状に形成されている。この実施例の場合は、射出口11cの前部分11eに残った樹脂を製品等と一緒に取り出すことが容易になる。他の構造は図1及び図2のノズル装置と同一である。
【0022】図4ないし図6は本発明に係る射出成形機のノズル装置の第3実施例を示す。なお、図8と同一の部材等には同一の符号を付してその詳しい説明は省略する。
【0023】外側ノズル1と内側ノズル2の前端には射出口1a,2aが直線状に形成され、また内側ノズル2とニードル3の前端には閉塞軸2e,3aが直線状に設けられている。射出口1a,2aと閉塞軸2e,3aとは共に断面円形で、中心線を互いに一致させている。閉塞軸2eは射出口1aに、また閉塞軸3aは射出口2aにそれぞれ嵌め入れられてそれらを閉じるものであり、閉塞軸2e,3aの直径は樹脂漏れが生じない程度に射出口1a,2aの内径よりも僅かに小さく、また長さは射出口1a,2aよりも十分に短かくされている。なお、内側ノズル2は外側ノズル1に対してはニードルとして働く。
【0024】油圧シリンダ(移動用駆動装置)26は、内側ノズル2を前進させ、前進作動端に達した状態で閉塞軸2eの一部分を射出口1aに嵌め入れて停止し(図4R>4と図5参照)、また後退作動端では、図6のように、閉塞軸2eが射出口1aから完全に引き抜かれて射出口1aを開くことができるように、そのストロークが定められている。
【0025】また、他の油圧シリンダ(移動用駆動装置)27も同様に、ニードル3を前進させ、前進作動端に達した状態で閉塞軸3aの一部分を射出口2aに嵌め入れて停止し(図4と図6参照)、また後退作動端では、図5のように、閉塞軸3aが射出口2aから完全に引き抜かれて射出口2aを開くことができるように、そのストロークが定められている。
【0026】この実施例のノズル装置においては、油圧シリンダ26,27を伸長させると、内側ノズル2とニードル3が前進し、閉塞軸2e,3aを射出口1a,2aに嵌め入れてこれを閉じる。この場合、第1実施例のノズル装置と全く同様に、油圧シリンダ26,27のストローク等が前記のように定められているので、内側ノズル2とニードル3は、油圧シリンダ26,27が前進作動端に達した状態で閉塞軸2e,3aの前端面2f,3cを射出口1a,2aの開口面1e,2gよりも内側に位置させて停止し、閉塞軸2e,3aの付け根部分に形成されたテーパ部2h,3dをノズル1,2に当接させることなく、射出口1a,2aに対する閉塞軸2e,3aの嵌込みのみによってノズル1,2を閉じるようになる。
【0027】したがって、この実施例においても第1実施例のノズル装置と同一の効果を得ることができる。なお、このノズル装置に図3の構成を導入することができる。また、ノズル1,2の嵌合段数を3段以上とすることができる。この場合も、内側ノズルがそのノズルの外側にあるノズルに対してニードルとして働くことは前述の通りである。多段構造のノズル装置の場合、必要があれば、例えば、射出口2aの全長にわたって閉塞軸3aが嵌め入れられるようにするなど、すべての射出口1a,2aと閉塞軸2e,3a等を本発明の構成としなくてもよい。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る射出成形機のノズル装置は、前端に直線状の射出口を有するノズル内に、上記射出口に嵌め入れられて該射出口を閉じる直線状の閉塞軸を前端に形成したニードルが、上記ノズルと同心状に、かつ軸方向に移動自在に挿入され、上記ニードルには、該ニードルを軸方向に前進させる移動用駆動装置が付設された射出成形機のノズル装置において、上記ニードルは、移動用駆動装置により前進させられて上記ノズルの射出口に嵌め入れられた閉塞軸の前端面を、移動用駆動装置が前進作動端に達した状態で射出口の開口よりも内側に位置させて停止し、かつ閉塞軸の付け根部分をノズルに当接させることなく射出口に対する閉塞軸の嵌入のみによって上記ノズルを閉じる構成とされているので、閉塞軸の長さと開閉ストロークを短かくすることができる。したがって動作遅れとばり等の支障がなく、またノズルとニードルが移動用駆動装置の駆動力や樹脂圧によって損傷することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る射出成形機のノズル装置の一実施例を示す閉状態の断面図である。
【図2】 同じく、開状態の断面図である。
【図3】 本発明の他の実施例を示す断面図である。
【図4】 本発明の別の実施例を示す断面図である。
【図5】 図4のノズル装置のニードルの後退状態を示す断面図である。
【図6】 同じく、内側ノズルの後退状態を示す断面図である。
【図7】 従来の射出成形機のノズル装置を示す断面図である。
【図8】 従来の他のノズル装置の断面図である。
【符号の説明】
1 外側ノズル 1a 射出口
1e 開口面 2 内側ノズル(ニードル)
2a 射出口 2e 閉塞軸
2f 前端面 2g 開口面
3 ニードル 3a 閉塞軸
3c 前端面 11 ノズル
11c 射出口 11d 開口面
12 ニードル 12a 閉塞軸
12b 前端面
15,26,27 油圧シリンダ(移動用駆動装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 前端に直線状の射出口を有するノズル内に、上記射出口に嵌め入れられて該射出口を閉じる直線状の閉塞軸を前端に形成したニードルが、上記ノズルと同心状に、かつ軸方向に移動自在に挿入され、上記ニードルには、該ニードルを軸方向に前進させる移動用駆動装置が付設された射出成形機のノズル装置において、上記ニードルは、移動用駆動装置により前進させられて上記ノズルの射出口に嵌め入れられた閉塞軸の前端面を、移動用駆動装置が前進作動端に達した状態で射出口の開口よりも内側に位置させて停止し、かつ閉塞軸の付け根部分をノズルに当接させることなく射出口に対する閉塞軸の嵌入のみによって上記ノズルを閉じる構成とされたことを特徴とする射出成形機のノズル装置。
【請求項2】 ニードルが、閉塞軸に射出口を有する内側ノズルとされたことを特徴とする請求項1記載の射出成形機のノズル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【特許番号】第2795173号
【登録日】平成10年(1998)6月26日
【発行日】平成10年(1998)9月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−115672
【出願日】平成6年(1994)5月27日
【公開番号】特開平7−314498
【公開日】平成7年(1995)12月5日
【審査請求日】平成8年(1996)3月25日
【出願人】(000003931)株式会社新潟鉄工所 (6)
【参考文献】
【文献】特開 平3−286819(JP,A)
【文献】特開 平7−156202(JP,A)
【文献】特開 昭57−163543(JP,A)
【文献】特開 平4−84654(JP,A)
【文献】特開 昭60−212315(JP,A)
【文献】実開 昭63−161811(JP,U)
【文献】実開 昭59−160216(JP,U)
【文献】実開 平4−113918(JP,U)
【文献】特公 昭55−45374(JP,B1)