説明

導電ペーストおよび積層セラミックコンデンサ

【課題】本発明は、チキソトロピー性、並びに耐糸引き性、耐にじみ性および耐シートアタック性といった印刷適性に優れる導電ペーストを提供することを目的とする。さらには、積層セラミックコンデンサを効率よく製造できる導電ペーストを提供することを目的とする。
【解決手段】導電粉末、アルキル変性ビニルアルコール系重合体および水系溶剤を含有することを特徴とする導電ペーストであって、前記アルキル変性ビニルアルコール系重合体は、炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有し、粘度平均重合度Pが200以上5000以下であり、けん化度が20モル%以上99.99モル%以下であり、かつアルキル変性率Sが0.05モル%以上5モル%以下である導電ペーストに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品の内部電極層の形成や太陽電池の導電層の形成などに用いる導電ペースト、並びに当該導電ペーストとセラミックグリーンシートと用いて得られる積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサとは、酸化チタンやチタン酸バリウムなどの誘電体層と内部電極層とを多数積み重ねたチップタイプのセラミックコンデンサである。このような積層セラミックコンデンサは、例えば、次のような方法で製造される。まず、セラミック粉末を分散させた有機溶剤中に、ポリビニルブチラール樹脂等のバインダー樹脂と可塑剤とを添加し、ボールミル等により均一に混合することでセラミックグリーンシート用スラリー組成物を調製し、調製したスラリー組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム等の剥離性の支持体上にて流延成形し、加熱等により溶剤等を除去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを製造する。
【0003】
このようにして得られるセラミックグリーンシートは、上記剥離性の支持体から剥離されて用いられる。まず、セラミックグリーンシートの表面に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等により塗布したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を得る。さらに、諸工程により積層体を形成し、所定形状に切断する。そして、この積層体中に含まれるバインダー成分等を熱分解して除去する処理、いわゆる脱脂処理を行った後に焼成して得られるセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結する工程を経ることにより、積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【0004】
近年、積層セラミックコンデンサを小型化・高容量化する目的で、セラミックグリーンシートの薄層化や多層化が進められている。しかしながら、セラミックグリーンシートの薄層化や多層化が進むにつれ、導電ペーストが印刷されている部分とされていない部分との段差が大きくなり、積層体を加熱圧着する際に、層間剥離やセラミックグリーンシートおよび内部電極層の変形が生じて、積層セラミックコンデンサの電気特性や信頼性が低下するという問題が生じていた。また、積層セラミックコンデンサの小型化・高容量化に伴い、従来の導電ペーストでは印刷適性が不十分であるという問題も生じていた。
【0005】
これらの問題を解決するため、特定の変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する導電ペーストが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1では、セラミックグリーンシート上に導電ペーストを印刷する際に、導電ペーストに含まれる有機溶剤によりセラミックグリーンシート中のポリビニルブチラール樹脂等のバインダーが溶け出すため、耐シートアタック性が不十分であった。また、導電ペーストのチキソトロピー性も不十分であった。
【0006】
ここで、導電ペーストのチキソトロピー性とは、剪断速度が速い状態においては見かけ粘度が低くなり、かつ、剪断速度が遅い状態および剪断されていない状態においては見かけ粘度が高くなる性質を意味する。
【0007】
一方で、電子部品の製造に際し、従来の有機溶剤を用いることで人体の安全に対する害、環境汚染、火災、爆発の危険性等が問題となっている。このような問題を解決するため、セラミックグリーンシート用スラリー組成物として有機系スラリーの代わりに、ポリビニルアルコールを含有する水系スラリーを用いることが提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2には、セラミックグリーンシート上に印刷する導電ペーストの溶剤として水系溶剤を用いることは記載されておらず、依然として、導電ペーストのチキソトロピー性および耐シートアタック性は不十分であった。
【0008】
このような種々の問題を解決すべく、チキソトロピー性および耐シートアタック性に優れ、さらに、人体および環境に安全な導電ペーストが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−143922号公報
【特許文献2】特開2002−284579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、チキソトロピー性、並びに耐糸引き性、耐にじみ性および耐シートアタック性といった印刷適性に優れる導電ペーストを提供することを目的とする。さらには、積層セラミックコンデンサを効率よく製造できる導電ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、
[1]アルキル変性ビニルアルコール系重合体(以下、アルキル変性PVAと略記することがある。)、導電粉末および水系溶剤を含有する導電ペーストであって、前記アルキル変性ビニルアルコール系重合体は、炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有し、粘度平均重合度Pが200以上5000以下であり、けん化度が20モル%以上99.99モル%以下であり、かつアルキル変性率Sが0.05モル%以上5モル%以下である導電ペースト;
[2]前記アルキル変性ビニルアルコール系重合体の含有割合が、0.1質量%以上10質量%以下である上記[1]の導電ペースト;
[3]前記水系溶剤中の水の含有率が60質量%以上である上記[1]または[2]の導電ペースト;
[4]前記アルキル変性ビニルアルコール系重合体におけるアルキル基が、炭素数15〜26のアルキル基である上記[1]〜[3]のいずれかの導電ペースト;
[5]上記単量体単位が、下記式(I)で示されるN−アルキル(メタ)アクリルアミド単位である上記[1]〜[4]のいずれかの導電ペースト;
【化1】

(式(I)中、Rは、炭素数5〜29の直鎖状または分岐状アルキル基を表す。Rは、水素原子またはメチル基を表す。)
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの導電ペーストとセラミックグリーンシートとを用いて得られる積層セラミックコンデンサ;
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導電ペーストは、チキソトロピー性、並びに耐糸引き性、耐にじみ性および耐シートアタック性といった印刷適性に優れている。したがって、本発明の導電ペーストは、積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品の内部電極層の形成や、太陽電池の導電層の形成などに用いる導電ペーストとして好適に用いることができる。
【0013】
上記耐糸引き性または耐にじみ性は、それぞれ糸引き、またはにじみが生じにくいことを意味する。ここで、糸引きとは、印刷に用いる版から導電ペーストがきれいに剥がれず、印刷面が糸を引いた状態になることをいい、これは、剪断速度が速い状態において導電ペーストの見かけ粘度が高い場合に発生する。一方、にじみとは、印刷した導電ペーストがセラミックグリーンシート上で流動し、目的の印刷形状よりも広がった状態で印刷されてしまう現象をいい、これは、剪断速度が遅い状態及び剪断されていない状態において導電ペーストの見かけ粘度が低い場合に発生する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の導電ペーストおよびその製造方法、並びに当該導電ペーストを用いて得られる積層セラミックコンデンサの実施形態について詳しく説明する。
【0015】
[導電ペースト]
本発明の導電ペーストは、特定のアルキル変性PVA、導電粉末および水系溶剤を含有し、必要に応じて、さらに他の成分を含有してもよい。以下、本発明の導電ペーストに含有される各成分について説明する。
【0016】
(アルキル変性PVA)
本発明に用いられるアルキル変性PVAは、炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有する。すなわち、当該アルキル変性PVAは、上記炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位と、ビニルアルコール単位(−CH−CHOH−)とを含有する共重合体であり、さらに他の単量体単位を含有していてもよい。このようなアルキル変性PVAを用いると、当該アルキル変性PVAにおける疎水基相互作用により、得られる導電ペーストのチキソトロピー性が向上する。そのため、当該導電ペーストを印刷する際に、印刷部が広がりにくくなり、耐糸引き性および耐にじみ性といった印刷適性も向上する。上記アルキル基の炭素数が5未満の場合、アルキル基同士の相互作用が十分に発現しないため、チキソトロピー性が低下する。一方、このアルキル基の炭素数が29を超える場合、当該アルキル変性PVAの水溶性および高温での取扱性が低下する。これらのうち、チキソトロピー性をより一層向上する観点から、炭素数8〜29のアルキル基が好ましく、炭素数12〜27のアルキル基がより好ましく、炭素数15〜26のアルキル基がさらに好ましく、炭素数17〜24のアルキル基が特に好ましい。
【0017】
上記炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位としては、例えば、1−オクテン、1−デセン等のα−オレフィン類に由来する単量体単位;ペンチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のビニルエーテル類に由来する単量体単位;(メタ)アクリル酸アルキル;下記式(I)で示されるN−アルキル(メタ)アクリルアミド単位が好ましく、下記Rが炭素数8〜29のアルキル基であるN−アルキル(メタ)アクリルアミド単位がより好ましい。
【0018】
【化2】

【0019】
式(I)中、Rは、炭素数5〜29の直鎖状または分岐状アルキル基を表す。Rは、水素原子またはメチル基を表す。なお、上記RおよびRは、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよいが、これらの置換基を有していないことが好ましい。
【0020】
上記Rで表される炭素数5〜29のアルキル基としては、例えばペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、ノナデシル基等が挙げられる。これらのうち、チキソトロピー性がより一層向上する観点から、炭素数8〜29のアルキル基が好ましく、炭素数12〜27のアルキル基がより好ましく、炭素数15〜26のアルキル基がさらに好ましく、炭素数17〜24のアルキル基が特に好ましい。
【0021】
上記Rは、合成の容易性等の点から、水素原子またはメチル基である。
【0022】
上記アルキル変性PVAを製造する方法は特に制限されないが、下記式(II)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行い、得られるアルキル変性ビニルエステル系重合体をけん化する方法が好ましい。
【0023】
【化3】

【0024】
式(II)中、RおよびRの定義は上記式(I)と同様である。
【0025】
上記式(II)で表される不飽和単量体としては、例えばN−オクチルアクリルアミド、N−デシルアクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド、N−ヘキサコシルアクリルアミド、N−オクチルメタクリルアミド、N−デシルメタクリルアミド、N−ドデシルメタクリルアミド、N−オクタデシルメタクリルアミド、N−ヘキサコシルメタクリルアミド等が挙げられる。これらのうち、N−オクタデシルアクリルアミド、N−オクチルメタクリルアミド、N−デシルメタクリルアミド、N−ドデシルメタクリルアミド、N−オクタデシルメタクリルアミド、N−ヘキサコシルメタクリルアミドが好ましく、N−オクタデシルアクリルアミド、N−ドデシルメタクリルアミド、N−オクタデシルメタクリルアミドがより好ましく、N−オクタデシルアクリルアミド、N−オクタデシルメタクリルアミドがさらに好ましい。
【0026】
上記式(II)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行う際の温度は特に限定されないが、0℃以上200℃以下が好ましく、30℃以上140℃以下がより好ましい。共重合を行う温度が0℃より低い場合は、十分な重合速度が得られにくい。また、重合を行う温度が200℃より高い場合、本発明で規定するアルキル変性率Sを有するアルキル変性PVAが得られにくい。共重合を行う際に採用される温度を0℃以上200℃以下に制御する方法としては、例えば、重合速度を制御することで、重合による発熱と反応器の表面からの放熱とのバランスをとる方法や、適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法等が挙げられるが、安全性の面からは後者の方法が好ましい。
【0027】
上記式(II)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行うのに採用される重合方式としては、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合のいずれでもよい。重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知の方法の中から、任意の方法を採用することができる。その中でも、無溶媒またはアルコール系溶媒存在下で重合を行う塊状重合法や溶液重合法が好適に採用される。高重合度の共重合物の製造を目的とする場合は乳化重合法が採用される。塊状重合法または溶液重合法に用いられるアルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。またこれらの溶媒は2種類またはそれ以上の種類を併用することができる。
【0028】
共重合に使用される開始剤としては、重合方法に応じて従来公知のアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等が適宜選ばれる。アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、過酸化物系開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート等が挙げられる。さらには、上記開始剤に過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等を組み合わせて開始剤とすることもできる。また、レドックス系開始剤としては、上記の過酸化物と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。
【0029】
また、上記式(II)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を高い温度で行った場合、ビニルエステル系単量体の分解に起因するPVAの着色等が見られることがある。その場合には着色防止の目的で重合系に酒石酸のような酸化防止剤を1ppm以上100ppm以下(ビニルエステル系単量体の質量に対して)程度添加することはなんら差し支えない。
【0030】
共重合に使用されるビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。これらの中でも酢酸ビニルが最も好ましい。
【0031】
上記式(II)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合に際して、本発明の趣旨を損なわない範囲で他の単量体を共重合しても差し支えない。使用しうる単量体として、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパン等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。
【0032】
また、上記式(II)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合に際し、得られるアルキル変性ビニルエステル系重合体の重合度を調節すること等を目的として、本発明の趣旨を損なわない範囲で連鎖移動剤の存在下で共重合を行っても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;2−ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン類;トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ホスフィン酸ナトリウム1水和物等のホスフィン酸塩類が挙げられる。その中でも、アルデヒド類およびケトン類が好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数および目的とするビニルエステル系重合体の重合度に応じて決定すればよい。一般にビニルエステル系単量体に対して0.1質量%以上10質量%以下が望ましい。
【0033】
アルキル変性ビニルエステル系重合体のけん化反応には、従来公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基性触媒またはp−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いた加アルコール分解反応ないし加水分解反応を適用することができる。この反応に使用しうる溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でもメタノールまたはメタノール/酢酸メチル混合溶液を溶媒とし、水酸化ナトリウムを触媒に用いてけん化反応を行うのが簡便であり好ましい。
【0034】
本発明に用いられるアルキル変性PVAは、炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位の含有率、すなわち、アルキル変性率(S)が0.05モル%以上5モル%以下である必要があり、0.1モル%以上2モル%以下が好ましく、0.2モル%以上1モル%以下がより好ましい。なお、本明細書におけるアルキル変性率Sとは、アルキル変性PVAを構成する全構造単位のモル数に占める炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位のモル数の割合である。
【0035】
上記アルキル変性率Sが5モル%を超えると、上記アルキル変性PVA一分子あたりに含まれる疎水基の割合が高くなり、このアルキル変性PVAの水溶性が低下する。一方、アルキル変性率Sが0.05モル%未満の場合、上記アルキル変性PVAの水溶性は優れているものの、このアルキル変性PVA中に含まれるアルキル基の数が少なく、アルキル変性に基づく導電ペーストのチキソトロピー性、耐糸引き性および耐にじみ性が十分に発現しない。
【0036】
上記アルキル変性率Sは、当該アルキル変性PVAから求めても、その前駆体であるアルキル変性ビニルエステル系重合体から求めてもよく、いずれもプロトンNMRから求めることができる。例えば、アルキル変性ビニルエステル系重合体から求める場合、具体的には、n−ヘキサン/アセトンでアルキル変性ビニルエステル系重合体の再沈精製を3回以上十分に行った後、50℃の減圧下で乾燥を2日間行い、分析用のサンプルを作製する。このサンプルをCDClに溶解させ、プロトンNMRを用いて室温で測定する。
【0037】
この際、例えば、上記単量体単位以外のアルキル変性単量体単位を含まず、Rが直鎖状であり、さらにRが水素原子である場合、以下の方法にて算出できる。すなわち、アルキル変性ビニルエステル系重合体の主鎖メチンに由来するピークα(4.7〜5.2ppm)とアルキル基Rの末端メチル基に由来するピークβ(0.8〜1.0ppm)とから、下記式を用いて、アルキル変性率Sを算出する。
アルキル変性率S(モル%)={(βのプロトン数/3)/(αのプロトン数+(βのプロトン数/3))}×100
【0038】
上記アルキル変性PVAの粘度平均重合度(P)(以下、粘度平均重合度を単に重合度と呼ぶことがある。)は200以上5000以下である必要があり、500以上4000以下が好ましく、1000以上3000以下がより好ましい。アルキル変性PVAの重合度が5000を超えると、このアルキル変性PVAの生産性が低下するため実用的でない。逆に、アルキル変性PVAの重合度が200未満の場合、得られる導電ペーストのチキソトロピー性が十分に発現しない。
【0039】
この粘度平均重合度Pは、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、アルキル変性PVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求められる。
粘度平均重合度P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
【0040】
上記アルキル変性PVAのけん化度は、20モル%以上99.99モル%以下である必要があり、40モル%以上99.9モル%以下が好ましく、60モル%以上99.5モル%がより好ましく、80モル%以上99モル%がさらに好ましい。アルキル変性PVAのけん化度が20モル%未満の場合には、アルキル変性PVAの水溶性が低下するため、導電ペーストを調製するのが困難である。一方、アルキル変性PVAのけん化度が99.99モル%を超える場合には、アルキル変性PVAの生産が困難になるので実用的でない。なお、上記アルキル変性PVAのけん化度は、JIS−K6726に準じて測定し得られる値である。
【0041】
本発明の導電ペーストにおける上記アルキル変性PVAの含有割合は、得られる導電ペーストのチキソトロピー性をより一層向上される観点から、0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0042】
(導電粉末)
本発明に用いられる導電粉末としては、導電性を示すものであれば特に限定されないが、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、銅、これらの合金からなる粉末等が挙げられる。上記導電粉末としては、表面にケイ素、アルミニウムまたはジルコニウムを含む酸化物である不溶性無機酸化物が吸着している導電粉末を用いることが好ましい。このような導電粉末を用いることにより、導電粉末が再凝集することなく水性スラリー中に高濃度で安定に分散するため、焼成用導電ペースト、特に積層セラミックコンデンサ形成用導電ペーストとして好適に使用できる。上記導電粉末は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明の導電ペーストにおける上記導電粉末の含有割合は、得られる導電ペーストのチキソトロピー性をより一層向上させる観点から、30質量%以上80質量%以下が好ましい。
【0044】
(水系溶剤)
本発明の導電ペーストにおいては、溶剤として水系溶剤を用いることが重要である。理由としては、上記アルキル変性PVAは、分子内に多数の水酸基を有するため極性が高く、有機溶剤には溶解しにくい傾向であることが挙げられる。したがって、水系溶剤を用いることで、本発明の導電ペーストを容易に製造できる。
【0045】
また、溶剤として水系溶剤を用いることで、後述のように、セラミックグリーンシート上に導電ペーストを印刷して積層セラミックコンデンサを製造する際に、上記セラミックグリーンシートに含有されるポリビニルアセタール等の樹脂が、導電ペースト中に溶け出しにくく、特に耐シートアタック性に優れるという利点もある。
【0046】
上記水系溶剤は特に限定されないが、人体に対する安全性、環境汚染性、火災の可能性、爆発の可能性等の観点から、水を主体とするものが好ましく、具体的には、水系溶剤中の水の含有率は60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましく、100質量%でもよい。上記水としては、蒸留水またはイオン交換水であることが好ましく、イオン交換水であることがより好ましい。
【0047】
本発明の導電ペーストにおける上記水系溶剤の含有割合は、得られる導電ペーストのチキソトロピー性をより一層向上させる観点から、20質量%以上70質量%以下が好ましい。
【0048】
(他の成分)
本発明の導電ペーストは、本発明の趣旨を損なわない範囲で、公知の各種PVA(本発明に用いられるアルキル変性PVAを除く)、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどの水溶性高分子;可塑剤;潤滑剤;分散剤;帯電防止剤等の他の成分を含有してもよい。
【0049】
本発明の導電ペーストを製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、導電粉末、上記アルキル変性PVA、水系溶剤およびその他の成分をブレンダーミル、3本ロールなどの公知の混合機に供給して混練する導電ペーストの製造方法が採用され得る。
【0050】
本発明の導電ペーストの粘度は特に限定されないが、shear rate:1(1/sec)での粘度ηとshear rate:100(1/sec)での粘度ηとの粘度比η/ηが、0.8以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましく、0.3以下であることがさらに好ましく、0.1以下であることが特に好ましい。上記粘度比η/ηが上記範囲内であることにより、チキソトロピー性がより一層高まり、耐糸引き性および耐にじみ性により一層優れる導電ペーストを得ることができるため好ましい。
【0051】
(用途)
本発明の導電ペーストは、積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品の内部電極層の形成や太陽電池の導電層の形成などに好適に用いられる。したがって、本発明の導電ペーストとセラミックグリーンシートとを用いて得られる積層セラミックコンデンサもまた、本発明の1つの態様である。本発明の導電ペーストはチキソトロピー性、並びに耐糸引き性、耐にじみ性および耐シートアタック性といった印刷適性に優れるため、当該導電ペーストを用いることで積層セラミックコンデンサを効率よく製造することができる。
【0052】
上記セラミックグリーンシートに用いられるスラリー組成物を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、ポリビニルアセタール樹脂等のバインダー樹脂、セラミック粉末、有機溶剤および必要に応じて添加する各種添加剤をボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法が採用される。
【0053】
上記セラミックグリーンシートの製造方法としては特に限定されず、従来公知の製造方法により製造することができ、例えば、セラミックグリーンシート用スラリー組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム等の剥離性の支持体上に流延成形し、加熱等により溶剤等を除去させた後、支持体から剥離する方法等が採用される。
【0054】
このようにして得られるセラミックグリーンシートに、本発明の導電ペーストを印刷(塗布)したものを積層することにより、積層セラミックコンデンサを製造することができる。具体的には、例えば、上記セラミックグリーンシートの表面に本発明の導電ペーストをスクリーン印刷等により塗布したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体とし、この積層体中に含まれる樹脂等を熱分解して除去(脱脂処理)した後に焼成して得られるセラミック焼成物の端面に、外部電極を焼結する方法等が採用される。
【実施例】
【0055】
以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明する。以下の実施例および比較例において「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準を意味する。
【0056】
下記の製造例により得られたPVA(アルキル変性PVAおよび無変性PVA)について、以下の方法にしたがって評価を行った。
【0057】
[PVAの粘度平均重合度Pおよびけん化度]
PVAの粘度平均重合度Pおよびけん化度は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
【0058】
[PVAのアルキル変性率S]
PVAのアルキル変性率Sは、上述したプロトンNMRを用いた方法に準じて求めた。なお、プロトンNMRは、500MHzのJEOL GX−500を用いた。
【0059】
[製造例1]PVA1の製造
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口および開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル750g、メタノール250gおよびN−オクタデシルメタクリルアミド1.1gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてN−オクタデシルメタクリルアミドをメタノールに溶解して濃度5%としたコモノマー溶液を調製し、このコモノマー溶液を窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始した。上記反応器に、上記ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成が一定となるようにしながら、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えたコモノマーの総量は4.8gであった。また重合停止時の固形分濃度は29.9%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、アルキル変性酢酸ビニル系重合体(アルキル変性PVAc)のメタノール溶液(濃度35%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したアルキル変性PVAcのメタノール溶液771.4g(溶液中のアルキル変性PVAcは200.0g)に、27.9gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液におけるアルキル変性PVAc濃度25%、アルキル変性PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比は0.03)。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成した。このゲル状物を粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得た。この白色固体にメタノール2000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置してアルキル変性PVA(PVA1)を得た。PVA1の粘度平均重合度Pは1700、けん化度は98.5モル%、アルキル変性率Sは0.4モル%であった。
【0060】
[製造例2〜4]PVA2〜4の製造
N−アルキル(メタ)アクリルアミド単位の種類およびその使用量、重合率、けん化時におけるアルキル変性PVAcの濃度、並びに酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比を表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様の方法により各種のPVA(PVA2〜4)を製造した。
【0061】
【表1】

【0062】
[実施例1]
(導電ペーストの製造)
製造例1により得られたPVA1を2gと、イオン交換水98gとを撹拌翼を供えたセパラブルフラスコに供給し、90℃のウォーターバス内で加熱しながら2時間撹拌して、2%のPVA1の水溶液を調製した。次に、調製した2%のPVA1水溶液の全量と、導電粉末としてニッケル粉末(三井金属鉱業株式会社製;2020SS)100gとを3本ロールに供給して、導電ペーストを作製した。
【0063】
(評価)
実施例1で作製した導電ペーストについて、以下の方法により評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0064】
(セラミックグリーンシートの作製)
ポリビニルブチラール樹脂(株式会社クラレ製;モビタール B60H)10部を、トルエン30部とエタノール15部との混合溶剤に加え、撹拌溶解した。続いて、可塑剤としてジブチルフタレート3部を加え、撹拌溶解した。得られた溶液に、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(堺化学工業株式会社製;BT−01(平均粒径0.1μm))100部を加え、ボールミルで48時間混合してセラミックスラリー組成物を得た。得られたスラリー組成物を、離型処理したポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚みが約1μmになるように塗布し、常温で1時間風乾し、熱風乾燥機、80℃で3時間、続いて120℃で2時間乾燥させた後に、ポリエステルフィルムから引き剥がすことで、セラミックグリーンシートを作製した。
【0065】
(1)粘度
実施例1で作製した導電ペーストのチキソトロピー性の指標として、導電ペーストの粘度を、回転レオメータ(TA INSTRUMENT社製;ARES G2)を用いて、以下の測定条件でFLOW SWEEPモードにて、shear rate:1(1/sec)での粘度およびshear rate:100(1/sec)での粘度を測定した。shear rate:1(1/sec)での粘度ηは25Pa・sであり、shear rate:100(1/sec)での粘度ηは1.5Pa・sであり、粘度比η/ηは0.06であった。
<測定条件>
回転する円盤の直径:40mm
回転する円盤(上側):平板
回転する円盤(下側)のコーンアングル:0.02rad
Truncation gap:0.0262mm
【0066】
(2)耐糸引き性
実施例1で作製した導電ペーストを、上記セラミックグリーンシート上にスクリーン印刷機にて印刷した後、オーブンにて100℃で30分間乾燥した。その後、印刷部分の糸引き性について光学顕微鏡で観察し、以下の基準に従って評価した。
○:長さ20μm以上の糸引きが無い。
×:長さ20μm以上の糸引きがある。
【0067】
(3)耐にじみ性
実施例1で作製した導電ペーストを、上記セラミックグリーンシート上にスクリーン印刷機にて印刷した後、オーブンにて100℃で30分間乾燥した。その後、印刷部分の耐にじみ性を光学顕微鏡で観察し、以下の基準に従って評価した。
○:にじみ量が20μm未満。
×:にじみ量が20μm以上。
【0068】
(4)耐シートアタック性
実施例1で作製した導電ペーストを、上記セラミックグリーンシート上にスクリーン印刷機にて印刷した後、オーブンにて100℃で30分間乾燥した。その後、導電ペーストに対するセラミックグリーンシートのシートアタック性について、印刷されたシート裏面の膨潤やゆがみを実体顕微鏡で観察し、以下の基準に従って評価した。
○:膨潤やゆがみがほとんどない。
×:膨潤やゆがみがある。
【0069】
[実施例2]
PVA1に代えてPVA2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電ペーストを作製した。得られた導電ペーストについて、実施例1と同様の方法により、粘度、耐糸引き性、耐にじみ性および耐シートアタック性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0070】
[実施例3]
PVA1に代えてPVA3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電ペーストを作製した。得られた導電ペーストについて、実施例1と同様の方法により、粘度、耐糸引き性、耐にじみ性および耐シートアタック性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0071】
[比較例1]
PVA1に代えてPVA4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電ペーストを作製した。得られた導電ペーストについて、実施例1と同様の方法により、粘度、耐糸引き性、耐にじみ性および耐シートアタック性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0072】
[比較例2]
導電ペーストにおける水系溶剤として使用されている水に代えて、α−ターピネオールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電ペーストを作製しようとしたが、PVA1が完全には溶解せず、均一な溶液を作製することができなかった。
【0073】
[比較例3]
α−ターピネオール92gをヒーターで温度60℃まで加熱し、撹拌翼で撹拌しながら、エチルセルロース(Dow Chemical社製;STD−200)8gを徐々に加え、8%のエチルセルロース溶液を調製した。次に、調製した8%のエチルセルロース溶液の全量と、導電粉末としてニッケル粉末(三井金属鉱業株式会社製;2020SS)100gとを3本ロールに供給して、導電ペーストを作製した。得られた導電ペーストについて、実施例1と同様の方法により、粘度、耐糸引き性、耐にじみ性および耐シートアタック性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0074】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の導電ペーストは、チキソトロピー性に優れ、印刷時の糸引き性やにじみが少なく、さらにセラミックグリーンシートに対する耐シートアタック性にも優れることから、積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品の内部電極層の形成や、太陽電池の導電層の形成などに用いる導電ペーストとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル変性ビニルアルコール系重合体、導電粉末および水系溶剤を含有する導電ペーストであって、
前記アルキル変性ビニルアルコール系重合体は、炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有し、粘度平均重合度Pが200以上5000以下であり、けん化度が20モル%以上99.99モル%以下であり、かつアルキル変性率Sが0.05モル%以上5モル%以下である導電ペースト。
【請求項2】
前記アルキル変性ビニルアルコール系重合体の含有割合が、0.1質量%以上10質量%以下である請求項1に記載の導電ペースト。
【請求項3】
前記水系溶剤中の水の含有率が60質量%以上である請求項1または2に記載の導電ペースト。
【請求項4】
前記アルキル変性ビニルアルコール系重合体におけるアルキル基が、炭素数15〜26のアルキル基である請求項1〜3のいずれかに記載の導電ペースト。
【請求項5】
上記単量体単位が、下記式(I)で示されるN−アルキル(メタ)アクリルアミド単位である請求項1〜4のいずれかに記載の導電ペースト。
【化1】

(式(I)中、Rは、炭素数5〜29の直鎖状または分岐状アルキル基を表す。Rは、水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の導電ペーストとセラミックグリーンシートとを用いて得られる積層セラミックコンデンサ。

【公開番号】特開2013−114891(P2013−114891A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259865(P2011−259865)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】