説明

導電性組成物、導電体及びその形成方法

【目的】 溶剤として水が使用可能であり、湿度依存性がなく高い導電性を発現し成膜性、成形性、透明性に優れた導電性組成物、および導電体。
【構成】 1.スルホン基を全芳香環に対して15〜80%の割合で含有するアニリン系導電性ポリマー類(a)、水溶性高分子化合物及び水系でエマルジョンを形成する高分子化合物よりなる群から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物(b)、水(c)とアミン類及び第四級アンモニウム塩類よりなる群から選ばれた少なくとも一種の含窒素化合物(d)を含有することを特徴とする導電性組成物、2.(a)スルホン基を全芳香環に対して15〜80%の割合で含有するアニリン系導電性ポリマー類、および(b)水溶性高分子化合物及び水系でエマルジョンを形成する高分子化合物から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物、を含む。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は導電性組成物、該導電性組成物から形成された導電体およびその製造法に関するものである。本発明の導電性組成物は、塗布、スプレー、キャスト、ディップ等の簡便な手法によって各種帯電防止用途に適応可能である。また、前記組成物より得られる本発明の導電体は、半導体、電器電子部品などの工業用包装材料、オーバーヘッドプロジェクタ用フィルム、スライドフィルムなどの電子写真記録材料等の帯電防止フィルム、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータ用テープ、フロッピィディスクなどの磁気記録用テープの帯電防止、更に透明タッチパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイなどの入力及び表示デバイス表面の帯電防止や透明電極として利用される透明導電性フィルムあるいは透明導電性ガラスなどとして使用することができる。
【0002】
【従来の技術と問題点】従来、導電性組成物の導電成分として7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯塩、ポリアニリンなどの導電性ポリマー、金属系粉末やカーボン粉末、界面活性剤を用いたもの、およびこれらの成分と高分子化合物とを組み合わせたものが知られている。また、導電体としては、前記組成物からなる導電性塗料を用いて基材上に形成した導電体が知られている。例えば、プラスチックフィルムまたはガラスなどの基材にイオンビームスッパタ装置や真空蒸着装置を用いて、金、白金などの金属薄膜または酸化インジウム・すず(ITO)などの金属酸化物薄膜を形成する方法は、透明性及び導電性に優れている導電体が得られることが知られている。しかし、その薄膜を形成させるために用いられる装置が高価であり、しかも材料として用いられる金、白金などの貴金属やITOなども高価であるため、得られる導電体も高価になってしまうという問題がある。TCNQを用いる電子電導性の高分子導電体としては、第4級窒素カチオン性基を有する高分子化合物とTCNQとからなる高分子電導体が知られているが、溶剤に対する溶解性が非常に悪く、ジメチルホルムアミド等の特殊な溶剤にのみ可溶なものが多く、ワニスとして適するとは言い難い。また、高分子化合物中にTCNQの有機低分子錯塩を配合した導電性高分子組成物を電気絶縁性高分子フィルム表面にこの配合物を形成させることによって透明導電化する方法(特開昭63−276815号公報、特開平1−210470号公報)が提案されている。この方法によって得られる導電体は、高分子化合物中にTCNQ錯塩の結晶が成長し、それらが重なり合うほど導電性が向上すると考えられているが、この結晶成長の状態が溶剤の揮発速度や乾燥時の温度分布に影響を受け易く、単位面積当たりの導電経路数が不均一となることから表面抵抗のばらつきが大きく、均一の表面抵抗が得られない。しかも、高温(例えば140℃加熱)または高温高湿(例えば60℃、95%RH)の条件下において、結晶の結合点が少しでも劣化すると、その導電経路が著しく減少して導電性が大幅に減少するという問題がある。
【0003】ドープされたポリアニリン(導電性ポリマー)は良く知られているがほとんどの全ての溶剤に不溶であり成形、加工に難点がある。また、アニリンを電解酸化重合する方法〔特開昭60−235831号公報、J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 26, 1531(1988)〕は電極上にポリアニリンのフィルムを形成することが可能であるが、単離操作が煩雑になること及び大量合成が困難であるという問題がある。一方、アニリンの化学酸化重合によって得られた脱ドープ状態のポリアニリンと酸解離定数pKaが4.8以下であるプロトン酸のアンモニウム塩からなる導電性組成物(特開平3−285983号公報)が報告されているが、脱ドープ状態のポリアニリンはN−メチル−2−ピロリドンなどの特殊な溶媒にのみ可溶であるためワニスとして適するとは言い難い。また、近年ドープ剤を添加することなく導電性を発現するアルカリ可溶性のスルホン化ポリアニリンと高分子化合物からなる導電性組成物(US510970)が報告されている。しかし、用いられる高分子化合物が有機溶剤への溶解性が極めて低いポリ(1,4−ベンゾアミド)樹脂、ポリイミド樹脂などであり、溶剤として硫酸などを用いているためワニスとして大きな問題が残る。
【0004】更に、上記導電性組成物などは有機溶剤を用いているが、これらが引火性、爆発性などの性質を有する危険物の場合、作業環境の安全性などの問題がある。更に、毒性による人体に対する安全性や地球環境問題の高まりとともに人体や環境に影響を及ぼす種々の有機溶剤への規制が高まっており、導電性組成物の安全性も重要な課題になっている。
【0005】また、カーボン粉末や金属粉末と高分子化合物からなる導電性組成物から形成した導電体は、塗膜の耐久性に優れるが透明性に欠けるという問題がある。さらにアニオン系、カチオン系、非イオン系、両性などの半透明な界面活性剤などをプラスチックフィルム中に練り込んだり、プラスチックフィルム表面にコーティングすることにより、親水性とイオン性を与えてフィルム表面に導電性を付与したものが知られている。しかし、この方法で得られる導電体はイオン導電性のため、その導電性が大気中の湿度の影響を受け易く、なおかつ単位面積当たりの表面抵抗値が108Ω/□以下の導電性を得ることができないという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の従来技術の諸々の問題を解決するためになされたものであり、溶剤として水が使用可能であり、湿度依存性がなく高い導電性を発現し成膜性、成形性、透明性に優れた導電性組成物、および該組成物を利用して湿度依存性がなく高い導電性を発現し、表面抵抗のばらつきが小さく、成膜性、成形性、透明性に優れた導電性高分子膜を形成させて得られる導電体及びその形成方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の導電性組成物は、スルホン基を全芳香環に対して15〜80%の割合で含有するアニリン系導電性ポリマー類(a)に対し、水溶性高分子化合物及び水系でエマルジョンを形成する高分子化合物よりなる群から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物(b)、水(c)およびアミン類及び第四級アンモニウム塩類よりなる群から選ばれた少なくとも一種の含窒素化合物(d)を含有することを特徴とする。また本発明の導電体は、(a)スルホン基を全芳香環に対して15〜80%の割合で含有するアニリン系導電性ポリマー類、及び(b)水溶性高分子化合物及び水系でエマルジョンを形成する高分子化合物から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物を含んでなる透明導電性高分子膜で構成されることを特徴とし、該導電体は、例えば基材の少なくとも一つの面上に、(a)スルホン基を全芳香環に対して15〜80%の割合で含有するアニリン系導電性ポリマー類、(b)水溶性高分子化合物及び水系でエマルジョンを形成する高分子化合物から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物、(c)水、および(d)アミン類及び四級アンモニウム塩類から選ばれた少なくとも一種の含窒素化合物からなる導電性組成物を塗布し透明導電性高分子膜を形成した後、常温で放置あるいは加熱処理し、(c)および(d)成分を揮発除去させることにより得られる。ただし透明導電性高分子膜の処理としては、常温で放置することにより行うこともできるが、加熱処理により残留する(c)および(d)成分の量をより低下することができるため導電性がさらに良くなる(抵抗値が小さくなる)ので好ましい。使用用途により異なるが、導電体に残留する(d)成分の量は導電膜10重量部に対して2重量部以下、好ましくは1重量部以下とするのがよい。また(c)成分も実質的に存在しない方が良い。加熱処理としては、250℃以下、好ましくは40〜200℃の範囲の加熱が好ましい。250℃より高いと、(a)成分の劣化により導電性が低下することがある。
【0008】以下本発明の導電性組成物および該導電性組成物より形成した導電体ならびにその製造法について説明する。本発明の前記導電性組成物および導電体を構成する前記のスルホン基を含むアニリン系導電性ポリマー類(a)の例としては、下式(I)の構造式で示される化合物、もしくはこの繰り返し単位を部分構造として有する化合物が挙げられる。
【0009】
【化1】


(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7又はR8はそれぞれ水素、スルホン酸基およびアルコキシ基よりなる群から選ばれ、R′は水素又は炭素数1〜4のアルキル基、ベンゼンスルホン酸基およびベンゼンカルボン酸基よりなる群から選ばれる。xは0〜1の任意の数を表す。)
【0010】前記(a)成分は、具体的には例えば日本化学会誌、1985,1124、特開昭61−197633号公報、特開平1−301714号公報、J.Am.Chem.Soc.,1990,122,2800.、J.Am.Chem.Soc.,1991,113,2665−2666.及びWO.9106887に記載されている種々のスルホン化ポリアニリン類を用いることができる。また、前記(a)成分は各種合成法によって得られるものを用いることができるが例えばアニリン、N−アルキルアニリン及びフェニレンジアミン類よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物と、アミノアニソールスルホン酸のようなアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類とを共重合させて得られる共重合体(以下、前者の共重合という)、あるいはアニリン、N−アルキルアニリン及びフェニレンジアミン類よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物と、o−,m−,及び/又はp−アミノベンゼンスルホン酸類とを共重合させ、更にスルホン化剤によりスルホン化して得られる共重合体(以下、後者の共重合という)が好ましく用いられる。
【0011】前記N−アルキルアニリンとしては、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−nプロピルアニリン、N−isoプロピルアニリン、N−ブチルアニリン等を挙げることができ、フェニレンジアミン類としては、フェニレンジアミン、N−フェニルフェニレンジアミン、N,N’−ジフェニルフェニレンジアミン、N−アミノフェニル−N’−フェニルフェニレンジアミン等を挙げることができる。アニリン、N−アルキルアニリン及びフェニレンジアミン類は、それぞれ単独あるいは混合して用いられる。N−アルキルアニリンのアニリン及び/又はフェニレンジアミン類に対して用いられる割合(重量)は、アニリン及び/又はフェニレンジアミン類の合計量100に対してN−アルキルアニリン0〜30が好都合である。N−アルキルアニリンの割合が多すぎる場合は、水に対する溶解性が低下し、また導電性が劣る傾向が認められる。アニリンとフェニレンジアミン類は、それぞれ単独で用いられるか、任意の割合で混合して用いられる。
【0012】なお、前記のスルホン基を含むアニリン系導電性ポリマー類(a)は、スルホン基が芳香環に対して15〜80%、好ましくは20〜75%の範囲で含まれ、しかもスルホン基を含む芳香環と有さない芳香環が適当に混在して結合しているものが好ましく、交互に並んだ構造を持つものがより好ましい。ここで、スルホン基の含有率が15%未満であると溶解性が不十分であるため得られる膜の導電性が低下し、一方、80%を超える場合も導電性が低下する傾向が認められる。
【0013】以下、前者の共重合について説明する。前者の共重合において、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類(B)としては、もっとも代表的なのがアミノアニソールスルホン酸類であり、アミノアニソールスルホン酸類は、2−アミノアニソール−3−スルホン酸、2−アミノアニソール−4−スルホン酸、2−アミノアニソール−5−スルホン酸、2−アミノアニソール−6−スルホン酸、3−アミノアニソール−2−スルホン酸、3−アミノアニソール−4−スルホン酸、3−アミノアニソール−5−スルホン酸、3−アミノアニソール−6−スルホン酸、4−アミノアニソール−2−スルホン酸、4−アミノアニソール−3−スルホン酸などを挙げることができる。また、アニソールのメトキシ基が、エトキシ基、プロポキシ基などの他のアルコキシ基に置換されたものも用いることができる。しかしながら、2−アミノアニソール−3−スルホン酸、2−アミノアニソール−4−スルホン酸、2−アミノアニソール−6−スルホン酸、3−アミノアニソール−2−スルホン酸、3−アミノアニソール−4−スルホン酸、3−アミノアニソール−5−スルホン酸が特に好ましく用いられる。
【0014】重合に用いるアニリン、N−アルキルアニリン及びフェニレンジアミン類よりなる(A)グループモノマーとアミノアニソールスルホン酸類で代表されるアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類よりなる(B)グループモノマーとの重量比は、A:B=8:2〜1:9、好ましくはA:B=7:3〜2:8が用いられる。アミノアニソールスルホン酸類で代表されるアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類(B)はそれぞれ単独で用いるか、異性体が任意の割合で混合したものを用いても良い。ここでアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類(B)の割合が少ない場合は、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類の導入割合が低くなり、溶剤に対する溶解性が低下する傾向があり、多い場合は、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類の導入割合が高くなり導電性の低下する傾向がある。
【0015】共重合は、酸性溶媒中、酸化剤で酸化重合することにより行うことができる。重合操作は、−5〜70℃の温度範囲で行うのが好ましく、更に好ましくは0〜60℃の範囲が適用される。ここで、−5℃以下では、共重合体の溶剤に対する溶解性が低下する傾向があり、70℃以上では、導電性が低下する傾向がある。
【0016】反応に使用する溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが好ましく用いられる。
【0017】また、酸化剤は、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素等が用いられ、モノマー1モルに対して0.1〜5モル、好ましくは0.5〜5モル用いられる。酸は、硫酸、塩酸及び、p−トルエンスルホン酸等又はそれらの混合物が用いられ、酸の濃度は0.1〜3mol/l、好ましくは0.2〜2mol/lの範囲で用いられる。またこの際、触媒として鉄、銅などの遷移金属を添加することも有効である。
【0018】ここで、アニリン及び/又はN−アルキルアニリンとアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類との共重合体は、スルホン酸基の導入割合が芳香環に対して25〜40%であり、フェニレンジアミン、N−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン類を用いた場合に比較して、一般的にスルホン基の導入割合が低くなるが導電性は良い傾向がある。一方、フェニレンジアミン、N−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン類とアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類との共重合体は、スルホン基の導入割合が芳香環に対して25〜50%と高く、溶解性が良い傾向がある。
【0019】かくして得られた同一芳香環にアルコキシ基とスルホン酸基を有するアニリン系導電性ポリマーの平均重量分子量は、300〜500,000である。また、アルコキシ基及びスルホン酸基は全芳香環に対し25〜50%の含有量であり、更にスルホン化操作を施すことなくアンモニア及びアルキルアミン等の塩基を含む水又は有機溶剤もしくはそれらの混合物に溶解することができる。
【0020】以下、後者の共重合について説明する。後者の共重合において、アミノベンゼンスルホン酸類(C)は、o−、m−、p−いずれも用いることが可能である。o−アミノベンゼンスルホン酸またはm−アミノベンゼンスルホン酸とアニリンとの共重合体については、既にJ.Am.Chem.Soc.,1991,113,2667頁及び特開平1−301714号公報に記載されているが、本発明者らは、p−アミノベンゼンスルホン酸とアニリンも共重合することを見い出した。なお、p−アミノベンゼンスルホン酸とアニリンとの共重合体は、従来知られている直鎖状の重合体(p位での結合の繰り返し)とは異なる重合体が得られる。
【0021】重合に用いるアニリン、N−アルキルアニリンおよびフェニレンジアミン類よりなるAグループモノマーとアミノベンゼンスルホン酸類よりなるCグループモノマーとのモル比は、Aグループモノマーの合計量100重量部に対してCグループモノマー10〜500重量部が用いられる。アミノベンゼンスルホン酸類は、o−、m−、p−それぞれ単独で用いられるか、任意の割合で混合して用いられる。
【0022】共重合体は、酸性溶媒中、酸化剤で酸化重合することにより得ることができる。溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が好ましく用いられる。また、酸化剤は、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等が好ましく用いられ、モノマー1モルに対して0.1〜10モル、好ましくは0.5〜5モル用いられる。酸は、硫酸、塩酸及びp−トルエンスルホン酸等またはそれらの混合物が好ましく用いられ、酸の濃度は0.1〜5モル/リットル、好ましくは0.2〜3モル/リットルの範囲で用いられる。反応温度は、70℃以下で行うのが好ましく、−20℃〜50℃の範囲で行うのがより好ましい。ここで、アニリンおよび/またはN−アルキルアニリンとアミノベンゼンスルホン酸類との共重合体は、一般的にスルホン基の導入割合が芳香環に対して10〜25%と低く、導電性及び溶解性が不十分である。しかし、フェニレンジアミン類とアミノベンゼンスルホン酸類との共重合体は、スルホン基の導入割合が芳香環に対して25〜40%と高くなる傾向があり、導電性及び溶解性とも良好なスルホン化ポリアニリンが得られる。
【0023】得られた共重合体は、無溶媒中又は溶媒中でスルホン化剤によりスルホン化される。フェニレンジアミン類とアミノベンゼンスルホン酸類との共重合体はもちろんのこと、アニリンおよび/またはN−アルキルアニリンとアミノベンゼンスルホン酸との共重合体は、既に芳香環の一部にスルホン基を有しているため、ポリアニリンと比較してスルホン化剤及び溶媒に対する溶解性が高く、操作性が向上し、反応がスムースに進行するためかスルホン基の導入割合が高くなるという利点がある。スルホン化剤は、濃硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄及び三酸化硫黄錯体等が好ましく用いられる。濃硫酸及び発煙硫酸を用いてスルホン化する場合は無溶媒中で、三酸化硫黄及び三酸化硫黄錯体を用いる場合は溶媒中で反応するのが好ましい。溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ピリジン等が好ましく用いられる。濃硫酸及び発煙硫酸は、共重合体1gに対して10〜200g、好ましくは20〜100gの範囲で用いられる。また、三酸化硫黄及び三酸化硫黄錯体は、共重合体1gに対して1〜100g、好ましくは5〜50g用いられる。溶媒は、共重合体1gに対して10〜300g、好ましくは20〜200g用いられる。反応温度は、200℃以下が好ましく、0〜100℃が更に好ましい。得られたスルホン化物は、スルホン基の導入割合が芳香環に対して40〜80%へと増加する。
【0024】かくして得られたスルホン化ポリアニリンは、300〜500,000の平均重量分子量を有し、アンモニア及びアルキルアミン等の塩基又は酢酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム等の前記塩基のカチオンを含む水又はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の溶媒又はそれらの混合物に溶解することができる。
【0025】導電体におけるスルホン基を含むアニリン系導電性ポリマー(a)と水溶性高分子化合物(b)の比率は、(a)/(b)=0.025/100〜100/0.5 であり、好ましくは、(a)/(b)=0.15 /100〜100/1 である。アニリン系導電性ポリマー(a)が、この比率以外の場合、導電性の低下や平坦性及び透明性が悪化する。水溶性高分子化合物(b)が、この比率以外の場合は、膜の硬度、耐摩耗性、導電性などが低下したり、基板との接着性が悪化する。また、前記成分(a)と(c)水の使用割合は、(c)水100重量部に対して0.1〜20重量部であり、好ましくは0.5〜15重量部である。成分(a)の割合が0.1重量部未満では導電性が劣ることになり、一方20重量部を超えると溶解性、平坦性、及び透明性が悪くなるとともに導電性はピークに達しており増加しない。
【0026】本発明に用いられる組成物の構成成分(c)水は単独でも用いられるが、水と相溶性のある有機溶媒の一種以上を任意の割合で混合して用いることもできる。有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、メチルプロピレングリコール、エチルプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどのピロリドン類などを挙げることができる。用いられる割合は、水/有機溶媒=1/100〜100/0が好ましい。
【0027】本発明の導電性組成物および導電体の構成成分(b)はそれぞれ単独でも用いられるが、二種以上の任意の割合で混合したものであってもよい。水溶性高分子化合物は、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール類、ポリアクリルアマイド、ポリ(N−t−ブチルアクリルアマイド)、ポリアクリルアマイドメチルプロパンスルホン酸などのポリアクリルアマイド類、ポリビニルピロリドン類、水溶性アルキド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリル/スチレン共重合樹脂、水溶性酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性スチレン/マレイン酸共重合樹脂及びこれらの共重合体などが用いられる。水系でエマルジョンを形成する高分子化合物は、水系アルキド樹脂、水系メラミン樹脂、水系尿素樹脂、水系フェノール樹脂、水系エポキシ樹脂、水系ポリブタジエン樹脂、水系アクリル樹脂、水系ウレタン樹脂、水系アクリル/スチレン共重合樹脂、水系酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、水系ポリエステル樹脂、水系スチレン/マレイン酸共重合樹脂、水系アクリル/シリカ樹脂及びこれらの共重合体などが用いられる。
【0028】成分(b)高分子化合物の使用割合は成分(c)水100重量部に対して0.1〜400重量部であり、好ましくは0.5〜300重量部である。0.1重量部未満では成膜性、成形性、強度が劣ることになり、一方400重量部を超えると成分(a)スルホン基を含むアニリン系導電性ポリマー類の溶解性が低下したり、導電性が劣ることになる。
【0029】本発明で用いられる組成物の構成成分(d)の含窒素化合物は、例えば式II、式IIIで表される化合物が用いられる。用いられるアミン類の構造式を式IIに示す。
【0030】
【化2】


式中、R1〜R3は各々互いに独立に水素、炭素数1〜4(C1〜C4)のアルキル基、CH2OH、CH2CH2OH、CONH2又はNH2を表す。更に用いられる四級アンモニウム塩類の構造式を式IIIに示す。
【0031】
【化3】


式中、R1〜R4は各々互いに独立に水素、炭素数1〜4(C1〜C4)のアルキル基、CH2OH、CH2CH2OH、CONH2又はNH2を表し;X-はOH-、1/2・SO42-、NO3-、1/2CO32-、HCO3-、1/2・(COO)22-、又はR′COO-〔式中、R′は炭素数1〜3(C1〜C3)のアルキル基である〕を表す。
【0032】上記含窒素化合物成分(d)は、これらのアミン類とアンモニウム塩類を混合して用いることにより更に導電性を向上させることができる。具体的には、NH3/(NH42CO3、NH3/(NH4)HCO3、NH3/(NH4)HCO3、NH3/CH3COONH4、NH3/(NH42SO4、N(CH33/(NH4)HCO3、N(CH33/CH3COONH4、N(CH33/(NH42SO4などが挙げられる。また、これらの混合比は任意の割合で用いることができるが、アミン類/アンモニウム塩類=1/10〜10/0が好ましい。
【0033】含窒素化合物成分(d)の使合割合は成分(c)100重量部に対して0.01〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部である。成分(d)の割合が0.01重量部未満では成分(a)の溶解性が十分ではなく、一方30重量部を超えると溶液が強塩基性を示し、成分(a)の分解が促進されるため導電性が劣ることとなる。なお、溶液のpHは、含窒素化合物の濃度、種類及び混合比率で任意に調節することができ、pH5〜12の範囲で用いることができる。
【0034】本発明の導電性組成物は、前記成分(a)、(b)、(c)及び(d)の成分のみでも性能の良い膜を形成することが可能であるが、界面活性剤(e)を加えると更に平坦性、塗布性及び導電性などが向上する。界面活性剤(e)は、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸などの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン、アルキル四級アミンなどの陽イオン界面活性剤、カルボキシベンダイン、アミノカルボン酸などの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤及びフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤が用いられる。なお、界面活性剤は二種以上用いても何らさしつかえない。
【0035】構成成分(e)の使用割合は、成分(c)水100重量部に対して0〜10重量部、好ましくは0〜5重量部である。成分(e)の割合が10重量部を超えると塗布性は向上するが、平坦性が低下したり、平坦性は向上するが導電性が劣るなどの現象が生じる。さらに本発明に用いられる導電性組成物には、必要に応じて、保存安定剤、接着助剤などを添加することができる。
【0036】本発明による導電性組成物は、成分(c)水に(a)スルホン基を全芳香環に対して15〜80%の割合で含有するアニリン系導電性ポリマー類、(b)水溶性高分子化合物及び水系でエマルジョンを形成する高分子化合物から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物および(d)アミン類及び四級アンモニウム塩類から選ばれた少なくとも一種の含窒素化合物を添加し、室温下で又は加熱撹拌して完全に溶解するか、又は混和して調製する。室温で固形分が析出する場合はろ別して用いる。また、本発明の導電体は、前記のようにして調製した導電性組成物を基材に塗布することにより形成することが可能である。これらの成分を混合する際、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリットミキサーなどのブレード型撹拌混練装置が好適に用いられる。なお、この後更にボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミルなどのボール型混練装置を用いて分散溶解を徹底化することが望ましい。
【0037】本発明の導電体の形成方法として用いられる導電性組成物は、一般の塗料に用いられる方法によって基材の表面に加工される。例えばグラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーティング、スクリーンコーティングなどの塗布法、スプレーコーティングなどの噴霧法、ディップなどの浸漬法などが用いられる。
【0038】導電性組成物によって形成される透明導電性高分子膜は、膜厚0.01〜1000μmに成膜が可能であるが、膜厚が大きいと透明導電性高分子膜の透明性が低下するので、なるべく薄いことが要求され、好ましくは0.01〜500μmの範囲、更に好ましくは0.02〜100μmの範囲とするのがよい。また、上記の厚さの透明導電性高分子膜を得るためには、導電性組成物の粘度を1000cp以下、好ましくは1〜500cpの範囲とし、固形分量0.1〜80重量%の範囲とすることが好ましい。
【0039】導電性組成物を塗工する基材としては、高分子化合物、木材、紙材、セラミックス及びそのフィルムまたはガラス板などが用いられる。例えば高分子化合物及びフィルムとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ABS樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルニトリル、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート及びそのフィルムなどがある。これらの高分子フィルムは、少なくともその一つの面に透明導電性高分子膜を形成させるため、該高分子膜の密着性を向上させる目的で上記フィルム表面をコロナ表面処理またはプラズマ処理することが好ましい。また、基材に透明導電性高分子膜を形成した後の加熱処理は、250℃以下、好ましくは40〜200℃の範囲で処理することにより導電体が形成される。
【0040】
【実施例】
実施例1スルホン化ポリアニンを既知の方法(J.Am.Chem.Soc.,1991,113,2665−2666.)に従って合成した。この化合物はIRスペクトル(図1、1500cm-1付近:スルホン化ポリアニリンの骨格、1100cm-1付近:スルホン基の吸収)においてスルホン化ポリアニリン特有の吸収が認められた。なお、得られたスルホン化ポリアニリンのスルホン基の含有量は52%であった。上記スルホン化ポリアニリン2重量部、水溶性ポリエステル樹脂「アラスタ−300」(荒川化学工業(株)製)100重量部、アンモニア0.3重量部を水100重量部に室温で撹拌溶解し導電性組成物を調製した。このようにして得られた溶液をガラス基板上にキャスト法により塗布し、100℃で乾燥させた。形成された膜に残留する(d)成分は、膜の重量に対し、1%以下である。膜厚5μmの表面の平滑な表面抵抗値3.0×106Ω/□のフィルムが得られた。
【0041】実施例2アニリン10重量部とm−アミノベンゼンスルホン酸18重量部を塩酸酸性条件下ペルオキソ二硫酸アンモニウムで重合し、共重合体を合成した。この共重合体を発煙硫酸640重量部で更にスルホン化し、スルホン化ポリアニリンを合成した。この化合物はIRスペクトル(図2R>2、1500cm-1付近:スルホン化ポリアニリンの骨格、1100cm-1付近:スルホン基の吸収)においてスルホン化ポリアニリン特有の吸収が認められた。なお、得られたスルホン化ポリアニリンのスルホン基の含有量は48%であった。上記スルホン化ポリアニリン2重量部、水系でエマルジョンを形成するウレタン樹脂「アデカボンタイター232」(旭電化工業(株)製)50重量部、アンモニア0.3重量部を水100重量部に室温で撹拌混和し導電性組成物を調製した。このようにして得られた溶液を厚さ1mmのガラス基板上にディップ法により塗布し、100℃、2分間乾燥させた。形成された膜に残留する(d)成分は、膜の重量に対し、1%以下である。膜厚3μmの表面の平滑な表面抵抗値1.5×106Ω/□のフィルムが得られた。
【0042】実施例3フェニレンジアミン10重量部とp−アミノベンゼンスルホン酸19重量部を塩酸酸性条件下ペルオキソ二硫酸アンモニウムで重合し、共重合体を合成した。この共重合体を濃硫酸1530重量部で更にスルホン化し、スルホン化ポリアニリンを合成した。この化合物はIRスペクトル(図3、1500cm-1付近:スルホン化ポリアニリンの骨格、1100cm-1付近:スルホン基の吸収)においてスルホン化ポリアニリン特有の吸収が認められた。なお、得られたスルホン化ポリアニリンのスルホン基の含有量は54%であった。上記スルホン化ポリアニリン3重量部、水溶性アクリル樹脂「サイビノールX−590−354」(サイデン化学(株)製)10重量部、トリメチルアミン1.3重量部、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸0.05重量部を水100重量部に室温で撹拌混和し導電性組成物を調製した。このようにして得られた溶液を厚さ1mmのガラス基板上にスピンコート法により塗布し、100℃、2分間乾燥させた。形成された膜に残留する(d)成分は、膜の重量に対し、1%以下である。膜厚0.5μmの表面の平滑な表面抵抗値1.0×106Ω/□のフィルムが得られた。
【0043】実施例4アニリン10重量部、N−メチルアニリン1.3重量部及びm−アミノベンゼンスルホン酸20重量部を硫酸酸性条件下ペルオキソ二硫酸アンモニウムで重合し、共重合体を合成した。この共重合体を濃硫酸1530重量部で更にスルホン化し、スルホン化ポリアニリンを合成した。この化合物はIRスペクトル(図4、1500cm-1付近:スルホン化ポリアニリンの骨格、1100cm-1付近:スルホン基の吸収)においてスルホン化ポリアニリン特有の吸収が認められた。なお、得られたスルホン化ポリアニリンのスルホン基の含有量は49%であった。上記スルホン化ポリアニリン5重量部、水系でエマルジョンを形成するアクリル/スチレン樹脂「ニカゾールRX−832A」(日本カーバイド工業(株)製)70重量部、アンモニア1.0重量部を水/イソプロピルアコール(1/1)100重量部に室温で撹拌混和し導電性組成物を調製した。このようにして得られた溶液を前記PETフィルム上にキャスト法により塗布し、100℃、2分間乾燥させた。形成された膜に残留する(d)成分は、膜の重量に対し、1%以下である。膜厚3.5μmの表面の平滑な表面抵抗値2.5×106Ω/□のフィルムが得られた。
【0044】実施例5アニリン10重量部、2−アミノアニソール−4−スルホン酸20重量部を硫酸酸性条件下ペルオキソ二硫酸アンモニウムで共重合し、芳香環にスルホン基を有するポリアニリンを合成した。この化合物はIRスペクトル(図5、1500cm-1付近:スルホン化ポリアニリンの骨格、1100cm-1付近:スルホン基の吸収)においてスルホン化ポリアニリン特有の吸収が認められた。なお、得られた芳香環にスルホン基を有するポリアニリンのスルホン基の含有量は48%であった。上記芳香環にスルホン基を有するポリアニリン2重量部、水系でエマルジョンを形成するエポキシ樹脂「アデカレジン EPE−0410」(旭電化工業(株)製)50重量部、アンモニア0.5重量部を水100重量部に室温で撹拌混和し導電性組成物を調製した。このようにして得られた溶液を厚さ1mmのガラス基板上にスピンコート法により塗布し、100℃、2分間乾燥させた。形成された膜に残留する(d)成分は、膜の重量に対し、1%以下である。膜厚2.0μmの表面の平滑な表面抵抗値1.5×106Ω/□のフィルムが得られた。
【0045】実施例6基板として厚さ75μmのポリエステルフィルム「ルミラーTタイプ」〔東レ(株)製〕を使用した。アニリン系導電性ポリマーとして、スルホン化ポリアニリンを既知の方法(J. Am. Chem. Soc.,1991,113,2665−2666.)に従って合成した。この化合物はIRスペクトル(図1、1500cm-1付近:スルホン化ポリアニリンの骨格、1100cm-1付近:スルホン基の吸収)においてスルホン化ポリアニリン特有の吸収が認められた。なお、得られたスルホン化ポリアニリンのスルホン基の含有量は52%であった。上記スルホン化ポリアニリン2重量部、水溶性ポリエステル樹脂「アラスター300」〔荒川化学工業(株)製〕100重量部、アンモニア0.3重量部を水100重量部に室温で高速ディスパイサーを用いて撹拌溶解後、サンドミル処理を行い、ついでろ紙(ワットマンフィルターNo.3)を用いてろ過を行ない、粘度30cpの導電性組成物を調製した。このようにして得られた溶液を180メッシュ、深度35μmのグラビアコーターにより前記ポリエステルフィルムの一面にコーティングし、乾燥塗膜の厚さが0.5μmの透明導電性高分子膜を形成させた。形成された膜に残留する(d)成分は、膜の重量に対し、1%以下である。得られたフィルムを加温エイジング(60℃、72時間)した後、表面抵抗を測定したところ、平均値3.0×106Ω/□、最大値3.1×106Ω/□、最小値2.8×106Ω/□であってばらつきが小さく、その光透過率は90%以上、ヘイズは15以下であった。また、このフィルムを60℃、95%RHの高温高湿の雰囲気中に120時間保持して表面抵抗を測定したところ4.0×106Ω/□であり、導電性が保たれていた。
【0046】比較例1実施例1で合成したスルホン化ポリアニリンに関してスルホン化ポリアニリン2重量部、水溶性ポリエステル樹脂「アラスター300」〔荒川化学工業(株)製〕500重量部、アンモニア0.3重量部を水100重量部に室温で撹拌溶解し導電性組成物を調製した。このようにして得られた溶液をガラス基板上にキャスト法により塗布し、100℃、2分間乾燥させた。膜厚10μmの表面の平滑な表面抵抗値8.0×1012Ω/□のフィルムが得られた。
【0047】比較例2基板として厚さ75μmのポリエステルフィルム「ルミラーTタイプ」〔東レ(株)製〕を使用した。実施例6で合成したスルホン化ポリアニリンに関してスルホン化ポリアニリン2重量部、水溶性ポリエステル樹脂「アラスター300」〔荒川化学工業(株)製〕500重量部、アンモニア0.3重量部を水100重量部に室温で撹拌溶解し導電性組成物を調製した。このようにして得られた溶液を180メッシュ、深度35μmのグラビアコーターにより前記ポリエステルフィルムの一面にコーティングし、乾燥塗膜の厚さが0.5μmの透明導電性高分子膜を形成させた。得られたフィルムを加温エイジング(60℃、72時間)した後、表面抵抗を測定したところ、平均値6.0×1012Ω/□、最大値7.1×1012Ω/□、最小値4.6×1012Ω/□であった。
【0048】比較例3実施例2で合成したスルホン化ポリアニリンに関してスルホン化ポリアニリン2重量部、水系でエマルジョンを形成するウレタン樹脂「アデカボンタイター232」(旭電化工業(株)製)50重量部、トリエチルアミン40重量部を水100重量部に室温で撹拌溶解し導電性組成物を調製した。このようにして得られた溶液をガラス基板上にスピンコート法により塗布し、100℃で乾燥させた。膜厚3μmの表面の平滑な表面抵抗値6.5×109Ω/□のフィルムが得られた。
【0049】比較例4実施例3で合成したスルホン化ポリアニリンに関してスルホン化ポリアニリン3重量部、トリメチルアミン1.3重量部、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸0.05重量部を水100重量部に室温で撹拌溶解し、導電性組成物を調製した。このようにして得られた溶液をガラス基板上にスピンコート法により塗布し、100℃で乾燥させた。膜厚0.3μmの表面の円滑な表面抵抗値1.5×106Ω/□のフイルムが得られたが、水溶性高分子化合物を添加した組成物を使用して得られた実施例3のフイルムに比較してガラス基板との接着性が著しく悪化し、耐摩擦性が低下した。
【0050】比較例5実施例2で合成したスルホン化ポリアニリンに関してスルホン化ポリアニリン2重量部、水系でエマルジョンを形成するウレタン樹脂「アデカボンタイター232」〔旭電化工業(株)製〕50重量部、水酸化ナトリウム1.5重量部を水100重量部に室温で撹拌溶解し導電性組成物を調製した。このようにして得られた溶液をガラス基板上にスピンコート法により塗布し、100℃で乾燥させた。膜厚0.3μmの表面の円滑なフイルムが得られたが、アンモニアを使用する実施例2で得られたフイルムに比較して表面抵抗値が増大し、1.5×106Ω/□以上の表面抵抗値を有する。。
【0051】
【効果】
1.本発明よる導電性組成物は、溶剤として水が使用可能であり、該組成物を適当な基材に塗布、スプレー、キャスト、ディップ及び加熱処理のみで湿度依存性がなく高い導電性を発現し成膜性、成形性、透明性に優れた導電性薄膜を得ることができる。
2.本発明においては、スルホン基を含有するアニリン系導電性ポリマー類及び高分子化合物を含んでなる成膜性、成形性、透明性に優れた透明導電性高分子膜を、適当な基材に塗布、スプレー、キャスト、ディップなどの加工により形成後、常温で放置あるいは加熱処理のみで湿度依存性がなく高い導電性を発現し、表面抵抗のばらつきが小さい導電体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるスルホン化ポリアニリンのIRスペクトル図である。
【図2】実施例2におけるスルホン化ポリアニリンのIRスペクトル図である。
【図3】実施例3におけるスルホン化ポリアニリンのIRスペクトル図である。
【図4】実施例4におけるスルホン化ポリアニリンのIRスペクトル図である。
【図5】実施例5におけるスルホン化ポリアニリンのIRスペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 スルホン基を全芳香環に対して15〜80%の割合で含有するアニリン系導電性ポリマー類(a)、水溶性高分子化合物及び水系でエマルジョンを形成する高分子化合物よりなる群から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物(b)、水(c)とアミン類及び第四級アンモニウム塩類よりなる群から選ばれた少なくとも一種の含窒素化合物(d)を含有することを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】 前記アニリン系導電性ポリマー類が、アニリン、N−アルキルアニリンおよびフェニレンジアミン類よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物(A)と、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類(B)とを共重合させたことにより得られたアニリン系導電性ポリマーである請求項1記載の導電性組成物。
【請求項3】 前記アニリン系導電性ポリマー類が、アニリン、N−アルキルアニリンおよびフェニレンジアミン類よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物(A)と、アミノベンゼンスルホン酸(C)との共重合体のスルホン化物であることを特徴とするアニリン系共重合体スルホン化物である請求項1記載の導電性組成物。
【請求項4】 界面活性剤(e)を含有させたことを特徴とする請求項1,2または3記載の導電性組成物。
【請求項5】 (a)スルホン基を全芳香環に対して15〜80%の割合で含有するアニリン系導電性ポリマー類、および(b)水溶性高分子化合物及び水系でエマルジョンを形成する高分子化合物から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物、を含んでなる透明導電性高分子膜から形成された導電体。
【請求項6】 基材の少なくとも一つの面上に、(a)スルホン基を全芳香環に対して15〜80%の割合で含有するアニリン系導電性ポリマー類、(b)水溶性高分子化合物及び水系でエマルジョンを形成する高分子化合物から選ばれた少なくとも一種の高分子化合物、(c)水、および(d)アミン類及び四級アンモニウム塩類から選ばれた少なくとも一種の含窒素化合物、からなる導電性組成物を塗布し透明導電性高分子膜を形成した後、常温で放置あるいは加熱処理することにより形成された導電体。
【請求項7】 加熱処理が40〜250℃の温度範囲で行い、(c)および(d)成分を除去するものである請求項6記載の導電体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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