説明

小便器用排水トラップ

【課題】長期にわたり尿の排出を良好に行うことができる小便器用排水トラップを提供する。
【解決手段】小便器用排水トラップ10は、小便器1の鉢面2に沿って流下した尿が流入する流入口11Aを有する蓋部11と、流出口12Cを有する本体部12と、筒状の隔壁部13とを備えている。本体部12内は、第1領域31と第2領域32とに区画され、第1領域31と第2領域32とは第3領域33により連通されている。第1領域31には、非溶水性であり、尿よりも比重が軽く、貯留された尿より上方にシール層Sを形成するシール液が注入される。流入口11Aは第1領域31に上方から尿が流入する位置に貫設されている。流出口12Cは、第2領域32内に本体部12の底部Bから立ち上がり、平面視で隔壁部13内の偏った位置に配置された流出管12Dの上端に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小便器用排水トラップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1には、従来の小便器用排水トラップが開示されている。この小便器用排水トラップは、カートリッジ形態に形成され、蓋部と本体部と隔壁部とを備えている。蓋部は、平面視が円形状であり、小便器の鉢面の下端部に設けられた開口に嵌まり込む。この蓋部には、鉢面に沿って流下した尿が流入する流入口が中心部に設けられている。本体部は、蓋部の外周縁部から下方に延びて形成された円筒形状の側壁部と、側壁部の下端に連続して形成された底部と、貯留された尿が溢流する流出口とを有している。隔壁部は、蓋部の外周縁部より内側の下面から下方に延び、底部との間に間隔を設けて形成されている。隔壁部は下端が開口した円筒形状である。
【0003】
本体部内は、隔壁部により隔壁部の外側に形成された第1領域と内側に形成された第2領域とに区画されている。第1領域と第2領域とは隔壁部の下端より下方かつ底部より上方に形成された第3領域により連通されている。第1領域には、非溶水性であり、尿よりも比重が軽いシール液が注入され、貯留された尿より上方にシール層が形成されている。
【0004】
流入口は第1領域に上方から尿が流入する位置に貫設されている。流出口は第2領域内に本体部の底部から立ち上がり、隔壁部と同芯位置に配置された円筒形状の流出管の上端に形成されている。
【0005】
この小便器用排水トラップでは、本体部に貯留された尿の臭気が流入口から外部へ発散することをシール層により防止することができる。また、下流側に連通された排水路からの臭気の逆流を本体部に貯留された尿によりブロックすることができる。このため、この小便器用排水トラップを有する小便器は、洗浄水を全く使用しなくても流入口からトイレ室内へ臭気を発散させることなく、良好に使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3515785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の小便器用排水トラップでは、流出管が隔壁部と同芯位置に配置され、第2領域における尿の上昇流路は流出管の外側面と隔壁部の内側面との間で一定の間隔を有して形成されている。この部分は、尿が滞留しているため、ゲル状の尿石が付着し易い。流出管の外側面と隔壁部の内側面との間隔が狭いと、流出管の外側面及び隔壁部の内側面に付着したゲル状の尿石が堆積することにより、上昇流路が早期に詰まってしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、長期にわたり尿の排出を良好に行うことができる小便器用排水トラップを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の小便器用排水トラップは、小便器の鉢面の下端部に設けられた開口に嵌まり込み、前記鉢面に沿って流下した尿が流入する流入口を有する蓋部と、
この蓋部の外周縁部から下方に延びて形成された側壁部と、この側壁部の下端に連続して形成された底部と、貯留された尿が溢流する流出口とを有する本体部と、
前記蓋部の外周縁部より内側に設けられ、閉鎖された上端から下方に延び、前記本体部の底部との間に間隔を設けて下端が開口した空洞状の隔壁部とを備え、
前記本体部内は、前記隔壁部により、この隔壁部の外側に形成された第1領域と内側に形成された第2領域とに区画され、前記第1領域と前記第2領域とは前記隔壁部の下端より下方かつ前記底部より上方に形成された第3領域により連通しており、
前記第1領域には、非溶水性であり、尿よりも比重が軽く、貯留された尿より上方にシール層を形成するシール液が注入される小便器用排水トラップであって、
前記流入口は前記第1領域に上方から尿が流入する位置に貫設され、
前記流出口は、前記第2領域内に前記本体部の底部から立ち上がり、平面視で前記隔壁部内の一方に偏った位置に配置された流出管の上端に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この小便器用排水トラップでは、流出管が平面視で隔壁部内の一方に偏った位置に配置されているため、平面視で隔壁部内の他方側における、流出管の外側面と隔壁部の内側面との間隔を拡げることができる。このため、流出管の外側面及び隔壁部の内側面にゲル状の尿石が堆積しても、流出管の外側面と隔壁部の内側面とに囲まれて形成された上昇流路を詰まり難くすることができる。
【0011】
したがって、本発明の小便器用排水トラップは、長期にわたり尿の排出を良好に行なうことができる。
【0012】
前記第2領域の水平断面視において、前記流出管の流路面積が、前記流出管の外側面と前記隔壁部の内側面とに囲まれて形成された上昇流路の流路面積よりも大きくし得る。この場合、上昇流路を流れることができる尿の流量よりも流出管を流れることができる尿の流量が多いため、流出管内が上昇流路から流入した尿によって満水になることを防止することができる。このため、流出管内が満水になることによって生じるサイホン作用を防止することができる。つまり、サイホン作用が生じることによって小便器用排水トラップ内に滞留すべき尿が排出され、水封が切れてしまうことを防止することができる。また、流出管の下流側の内側面にゲル状の尿石が堆積したとしても、流出管内が上昇流路から流入した尿によって満水になる状況を遅らせることができる。このため、この小便器用排水トラップは、長期にわたり良好に使用することができる。
【0013】
前記隔壁部は、水平断面視において、前記本体部の中央部から前記側壁部の内側面に向けて延びて形成され得る。この場合、流出管の流路面積をより広くすることができる。このため、流出管内が上昇流路から流入した尿によって満水になることを防止し、サイホン作用の発生を防止することができる。また、流出管の下流側の内側面にゲル状の尿石が堆積して流路面積が狭くなり、流出管内が上昇流路から流入した尿によって満水になる状況をさらに遅らせることができる。よって、この小便器用排水路トラップは、長期にわたり良好に使用することができる。
【0014】
前記隔壁部は円筒形状に形成されており、前記流出管は半円筒形状に形成され、円弧状の外側面を前記隔壁部の内側面に接近させて配置され得る。この場合、平面視で隔壁部内の他方側において流出管の外側面と隔壁部の内側面との間隔を拡げつつ、流出管の流路面積を大きくすることができる。このため、流出管からの尿の流出流量を十分に確保することができ、尿の排出を良好に行なうことができる。
【0015】
前記第3領域の上下方向の寸法は、前記第1領域に形成された尿の下降流路及び前記上昇流路の上下中央断面視における横方向の寸法よりも大きく形成され得る。この場合、ゲル状の尿石が堆積し易い第3領域において、その上下方向の寸法を大きく形成することができるため、第3領域にゲル状の尿石が堆積しても、第3領域が早期に詰まることを防止することができる。このため、尿の排出を長期にわたり良好に行なうことができる。
【0016】
前記小便器用排水トラップは、排水管が接続され、小便器の鉢面の下端部に上方に向けて開口した凹部に着脱自在に取り付けられるカートリッジ形態に形成され得る。この場合、シール液の減少やゲル状の尿石の堆積による詰まり等が生じた際にカートリッジごと交換することができる。このように、メンテナンスを容易に行なうことができる。また、この小便器用排水トラップは、ゲル状の尿石の堆積による詰まりが抑制されているため、カートリッジの交換頻度を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の小便器用排水トラップを有する小便器を示す断面図である。
【図2】実施例1の小便器用排水トラップが小便器に取り付けられた状態を示す断面図である。
【図3】実施例1の小便器用排水トラップを示す分解斜視図である。
【図4】(A)は、実施例1の小便器用排水トラップの図2における矢視Q−Qの断面図である。(B)は、実施例3の小便器用排水トラップを示す断面図である。
【図5】実施例2の小便器用排水トラップを示す断面図である。
【図6】実施例4の小便器用排水トラップを示す断面図である。
【図7】実施例4の小便器用排水トラップを示す分解斜視図である。
【図8】実施例4の小便器用排水トラップの図6における矢視Q−Q断面図である。
【図9】実施例5の小便器用排水トラップを示す断面図である。
【図10】実施例5の小便器用排水トラップの図9における矢視Q−Q断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の小便器用排水トラップを具体化した実施例1〜5を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
<実施例1>
実施例1の小便器用排水トラップ10は、図1〜図3及び図4(A)に示すように、カートリッジ形態に形成され、小便器1の鉢面2の下端部に上方に向けて開口した凹部3に着脱自在に取り付けられている。小便器1は、壁掛け式であり、トイレ室Rの壁面Wに係止され、固定されている。凹部3は、小便器1の鉢面2の下端部に取り付けられ、上端が開口し、底部を有する円筒形状の収納容器20により形成されている。
【0020】
収納容器20の上端部には係止部材21が連結されている。係止部材21は、収納容器20の上部内側面に連結され、上方に延びる円筒形状の円筒部21Aと、円筒部21Aの上端から外側に拡がるリング形状の鍔部21Bとを有している。また、収納容器20の内側面の中間部には係止凹部20Aが形成されている。係止凹部20Aには、後述する小便器用排水トラップ10の本体部12の側壁部12Aに設けられた係止凸部12Fが係止する。収納容器20内に挿入した小便器用排水トラップ10を軸周りに所定の角度回転させることにより、係止凸部12Fを係止凹部20Aに係止させることができる。このようにして、収納容器20内にカートリッジ形態の小便器用排水トラップ10を着脱可能に取り付けることができる。
【0021】
収納容器20は、係止部材21の外側面にパッキン22が外嵌され、小便器1の鉢面2の下端部に形成された開口2Aに上方から挿入されている。係止部材21の鍔部21Bが開口2Aの周縁部の上面に係止している。収納容器20の外側面の上部に形成されたねじ部には、収納容器20の下方から外嵌され、上面が開口2Aの周縁部の下面に係止するリング形状の締結部材23がねじ込まれている。このようにして、係止部材21の鍔部21Bと締結部材23とにより開口2Aの周縁部を挟持することにより、収納容器20は開口2Aに取り付けられている。収納容器20は下端隅部から延びた連結管24を有している。収納容器20は連結管24を介して壁面Wに引き出された排水管4に接続されている。
【0022】
カートリッジ形態に形成された小便器用排水トラップ10は、蓋部11と本体部12と隔壁部13とを備えている。蓋部11の外形は円形状である。蓋部11は、収納容器20の係止部材21により形成された開口、すなわち、小便器1の鉢面2の下端部に設けられた開口に嵌まり込んでいる。蓋部11の外周端面に形成された環状凹部にはパッキンPが嵌め込まれている。このため、係止部材21により形成された開口の内側面と蓋部11の外側面とは水密的に接合されている。このため、小便器1の鉢面2に沿って流下した尿は蓋部11の上面に流れる。蓋部11は、小便器1の鉢面2に沿って流下した尿が流入する流入口11Aを貫設している。
【0023】
本体部12は、側壁部12Aと底部12Bと流出口12Cとを有している。側壁部12Aは、円筒形状であり、蓋部11の外周縁部から下方に延びている。蓋部11の外周縁部と側壁部12Aの上端部とは隙間なく接着されている。側壁部12Aの外側面の中間部には複数の係止凸部12Fが形成されている。上述したように、係止凸部12Fが収納容器20の内側面に形成された係止凹部20Aに係止することにより、カートリッジ形態の小便器用排水トラップ10は収納容器20内に着脱可能に取り付けられている。底部12Bは側壁部12Aの下端に連続して形成されている。
【0024】
隔壁部13は円筒形状であり、蓋部11の外周端部より内側に設けられ、閉鎖された上端から下方に延び、下端が本体部12の底部12Bとの間に間隔を設けて開口した空洞状である。隔壁部13は蓋部11と同軸上に設けられている。蓋部11には隔壁部13の外側面に沿って複数に分割された流入口11Aがリング状に配置されている。
【0025】
本体部12内は、隔壁部13により、隔壁部13の外側に形成された第1領域31と内側に形成された第2領域32とに区画されている。第1領域31と第2領域32とは隔壁部13の下端より下方かつ本体部12の底部12Bより上方に形成された第3領域33により連通されている。第1領域31には、非溶水性であり、尿よりも比重が軽く、貯留された尿より上方にシール層Sを形成するシール液が注入されている。
【0026】
隔壁部13の下端の外周縁部には第1領域31へ向けて横方向に延びたリング形状の連結部14が形成されている。連結部14の先端周縁部には上方に延びた円筒形状の折返し部15が形成されている。折返し部15は隔壁部13と一定の間隔を有している。また、折返し部15は隔壁部13と側壁部12Aとの間の中央位置に設けられている。つまり、折返し部15、隔壁部13及び本体部12は同軸上に配置されている。また、折返し部15の上端は、第1領域31において、本体部12内に貯留された尿より上方に形成されたシール層Sの下面よりも低い位置まで上方に延びて形成されている。また、折返し部15は、連結部14の先端周縁部とシール層Sの上面との間の中央高さ以上に延びている。
【0027】
流出口12Cは、第2領域32内に本体部12の底部12Bから立ち上がった流出管12Dの上端に形成されている。また、流出口12Cは折返し部15の上端より上方に開口している。流出管12Dは半円筒形状に形成され、円弧形状の外側面が隔壁部13の内側面に接して配置されている。つまり、流出管12Dは平面視で隔壁部13内の一方に偏った位置に配置されている。
【0028】
流出管12Dの下部は、本体部12の底部12Bに沿って側壁部12A方向に屈曲している。流出管12Dの下流端における底部12Bには排出口12Eが貫設されている。この排出口12Eが収納容器20の連結管24の上流部に臨む位置に配置されるようにカートリッジ形態の小便器用排水トラップ10は収納容器20に取り付けられている。
【0029】
第3領域33の上下方向の寸法Xは、第1領域31に形成された尿の下降流路D及び第2領域に形成された尿の上昇流路Uの上下中央断面視おける横方向の寸法Y、Zよりも大きく形成されている。
【0030】
このような構成を有する小便器用排水トラップ10では、隔壁部13が円筒形状に形成され、流出管12Dが半円筒形状に形成され、円弧形状の外側面が隔壁部13の内側面に接して配置されることにより、流出管12Dは平面視で隔壁部13内の一方に偏った位置に配置されている。このため、平面視で隔壁部13内の他方側において、流出管12Dの外側面と隔壁部13の内側面との間隔を拡げることができる。よって、流出管12Dの外側面及び隔壁部13の内側面にゲル状の尿石が堆積しても、流出管12Dの外側面と隔壁部13の内側面とに囲まれて形成された上昇流路Uを詰まり難くすることができる。
【0031】
したがって、実施例1の小便器用排水トラップ10は、長期にわたり尿の排出を良好に行うことができる。
【0032】
また、平面視で隔壁部13内の他方側において、流出管12Dの外側面と隔壁部13の内側面との間隔を拡げつつ、流出管12Dの流路断面積を大きくすることができる。このため、流出管12Dからの尿の流出流量を十分に確保することができ、尿の排出を良好に行なうことができる。
【0033】
また、第3領域33の上下方向の寸法Xは、第1領域31に形成された尿の下降流路D及び第2領域に形成された尿の上昇流路Uの上下中央断面視おける横方向の寸法Y、Zよりも大きく形成されている。つまり、ゲル状の尿石が堆積し易い第3領域において、その上下方向の寸法を大きく形成されているため、第3領域33がゲル状の尿石の堆積により詰まり難くすることができる。このため、尿の排出を良好に行なうことができる。
【0034】
また、この小便器用排水トラップ10では、流入口11Aから流入した尿は、シール層Sを突き抜けて隔壁部13と折返し部15との間に上方から流入する。すると、隔壁部13、連結部14及び折返し部15に囲まれた領域(以下、対流域Tという)において、尿の流れが下降から上昇に転じ、対流が生じる。尿の流入により、シール層Sが攪拌され、シール層Sより下方に引き込まれたシール液の多くは、この対流に巻き込まれる。このため、シール液は対流域Tに留まる。尿の流入がなくなり、対流がなくなると、対流域Tに留まっていたシール液は、その浮力により浮上し、上方のシール層Sに合流する。
【0035】
また、対流域Tから折返し部15の上端を乗り越え、第3領域33に向かう下降流路Dにおける尿の勢いは、対流域Tに流入する際の尿の勢いに比べて減衰している。このため、尿の流れに乗って、対流域Tから折返し部15の上端を乗り越えたシール液は、下降流路Dの中間位置まで搬送されるに留まり、第3領域33まで搬送され難い。尿の流れがなくなると、この下降流路Dに滞留していたシール液は、その浮力により浮上し、上方のシール層Sに合流する。
【0036】
このように、尿の流れによりシール液が第3領域33まで搬送され難いため、それより下流に設けられた流出口12Cからのシール液の流出を抑制することができる。このため、長期の使用によってもシール液の減少を抑えることができ、シール層Sが薄くなり難い。このため、この小便器用排水トラップ10は、長期にわたり臭気の発散を防止することができる。
【0037】
また、流入口11Aが隔壁部13の外側面に沿って複数に分割されたリング形状に貫設されているため、流入口11Aから流入する尿が分散され、本体部12に流入する尿の勢いが弱められる。このため、尿の流入によるシール層Sの攪拌が抑制され、シール層Sより下方にシール液が引き込まれ難くなる。これにより、シール液の流出をさらに抑制することができる。また、流入口11Aから流入する尿は隔壁部13の外側面を伝って流下するため、シール層Sの攪拌が抑制される。これによってもシール液の流出を抑制することができる。よって、シール層Sが薄くなり難く、臭気の発散を防止することができる。
【0038】
また、折返し部15は、隔壁部13と一定の間隔を有して設けられているため、対流域Tの全体において対流を生じさせることができる。このため、尿の流れに乗って、対流域Tから折返し部15の上端を乗り超えるシール液を少なくすることができる。よって、シール液の流出を抑制することができる。また、対流域Tの内面にゲル状の尿石が付着しても、対流域T内に不均一にゲル状の尿石が堆積しない。このため、特定の箇所にゲル状の尿石が早期に堆積してしまい、その箇所で対流が生じないことによりシール液が流出してしまうことを抑制することができる。よって、シール層Sが薄くなり難く、臭気の発散を防止することができる。
【0039】
また、折返し部15は、連結部14の先端周縁部とシール層Sの上面との間の中央高さ以上に延びているため、対流域T内に確実に対流が形成され、シール層Sより下方に引き込まれたシール液を対流域T内の対流に巻き込み、対流域に留まらせることができる。また、折返し部15の上端が第1領域31の高い位置に配置されるため、対流域Tから折返し部15の上端を乗り越えるシール液を少なくすることができる。このため、シール液の流出を抑制することができる。よって、シール層Sが薄くなり難く、臭気の発散を防止することができる。
【0040】
また、折返し部15の上端はシール層Sの下面よりも低く形成されているため、尿が対流域Tから折返し部15の上端を乗り越えて下流側へ流出する際、シール層Sからシール液を引き込むことを抑制することができる。このため、シール液の流出を抑制することができる。よって、シール層Sが薄くなり難く、臭気の発散を防止することができる。
【0041】
また、折返し部15は、隔壁部13と側壁部12Aとの間の中央位置に設けられているため、隔壁部13と折返し部15との間に形成された対流域T、及び折返し部15と側壁部12Aとの間に形成された下降流路Dの特定の箇所にゲル状の尿石が早期に堆積することがなく、ゲル状の尿石の堆積による詰まりを抑制することができる。
【0042】
また、小便器用排水トラップ10がカートリッジ形態に形成されているため、シール液の減少や尿石の堆積等による詰まりが生じた際にカートリッジごと交換することができる。このため、メンテナンスを容易に行なうことができる。また、この小便器用排水トラップ10は、ゲル状の尿石の堆積による詰まりが抑制されているため、カートリッジの交換頻度を少なくすることができる。
【0043】
<実施例2>
実施例2の小便器用排水トラップ110は、図5に示すように、本体部112が小便器1の鉢面2の下端部に直接取り付けられている。本体部112の上端部には係止部材21が連結されている。本体部112は、小便器1の鉢面2の下端部に形成された開口2Aの上方から挿入され、係止部材21の鍔部21Bが開口2Aの周縁部の上面に係止している。本体部112の外側面の上部にねじ部が形成されている。本体部112の下方から外嵌され、上面が開口2Aの周縁部の下面に係止するリング形状の締結部材23が本体部112の外側面に形成されたねじ部にねじ込まれている。このようにして、係止部材21の鍔部21Bと締結部材23とにより開口2Aの周縁部を挟持することにより、本体部112は開口2Aに取り付けられている。
【0044】
また、本体部112は下端隅部から延びた連結管124を有している。連結管124の上流端には、第2領域32内に立ち上がった流出管112Dが連結されている。流出管112Dの上端には流出口112Cが形成されている。流出口112Cは折返し部15の上端より上方に開口している。流出管112Dは半円筒形状に形成され、円弧形状の外側面が隔壁部13の内側面に接して配置されている。つまり、流出管112Dは平面視で隔壁部13内の一方に偏った位置に配置されている。連結管124の下端部は壁面Wに引き出された排水管4に接続されている。
【0045】
また、蓋部11は本体部112に対して着脱可能に取り付けられている。このため、本体部112内にゲル状の尿石が堆積する等によるつまりが生じた際には、蓋部11を取り外し、詰まりの原因を除去することができる。他の構成は、実施例1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0046】
このような構成を有する小便器用排水トラップ110でも、実施例1の小便器用排水トラップ10と同様に、隔壁部13が円筒形状に形成され、流出管112Dが半円筒形状に形成され、円弧形状の外側面が隔壁部13の内側面に接して配置されることにより、流出管112Dは平面視で隔壁部13内の一方に偏った位置に配置されている。このため、平面視で隔壁部13内の他方側において、流出管112Dの外側面と隔壁部13の内側面との間隔を拡げることができる。よって、流出管112Dの外側面と隔壁部13の内側面との間に形成される尿の上昇流路Uは、流出管112Dの外側面及び隔壁部13の内側面にゲル状の尿石が堆積しても詰まり難くすることができる。
【0047】
したがって、実施例2の小便器用排水トラップ110も長期にわたり尿の排出を良好に行うことができる。
【0048】
<実施例3>
実施例3の小便器用排水トラップ210は、図4(B)に示すように、流出管212Dが円筒形状に形成され、この流出管212Dの外側面が隔壁部13の内側面に接して配置されている。つまり、流出管212Dは平面視で隔壁部13内の一方に偏った位置に配置されている。他の構成は、実施例1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0049】
このような構成を有する小便器用排水トラップ210では、平面視で隔壁部13内の他方側において、流出管212Dの外側面と隔壁部13の内側面との間隔を拡げることができる。よって、流出管212Dの外側面と隔壁部13の内側面との間に形成される尿の上昇流路Uは、流出管212Dの外側面及び隔壁部13の内側面にゲル状の尿石が堆積しても詰まり難くすることができる。
【0050】
したがって、実施例3の小便器用排水トラップ210も長期にわたり尿の排出を良好に行なうことができる。
【0051】
<実施例4>
実施例4の小便器用排水トラップ310は、図6〜図8に示すように、蓋部311と本体部312と隔壁部313とを備えている。蓋部311は、小便器1の鉢面2に沿って流下した尿が流入する流入口311Aを貫設している。本体部312は、側壁部312Aと底部312Bと流出口312Cとを有している。側壁部312Aの外側面の中間部には複数の係止凸部312Fが形成されている。
【0052】
隔壁部313は、水平断面視において、本体部312の中央部から側壁部312Aに向けて延びた空洞状である。また、隔壁部313は、側壁部312Aに向けて延びた側の外側面が側壁部312Aの内側面に接している。また、隔壁部313は、水平断面視において、本体部312の中央部側が半円環状であり、この部分の外側面に沿って、蓋部312に複数に分割された流入口311Aが配置されている。また、隔壁部313の内部空間は、水平断面視において、本体部312の中央部側が半円状であり、その半円の直径を短辺として、この短辺から側壁部312Aに向けて長方形状に形成されている。
【0053】
本体部312内は、隔壁部313により、隔壁部313の外側に形成された第1領域331と内側に形成された第2領域332とに区画されている。第1領域331と第2領域332とは隔壁部313の下端より下方かつ本体部312の底部312Bより上方に形成された第3領域333により連通されている。第1領域331には、非溶水性であり、尿よりも比重が軽く、貯留された尿より上方にシール層Sを形成するシール液が注入されている。
【0054】
小便器用排水トラップ310は、水平断面視において、隔壁部313が本体部312の中央部から側壁部312Aに向けて延びた側面の一方の外側面から他方の外側面を連結するように、側壁部312Aの内側面から等間隔に折返し部315を形成している。折返し部315の下端と隔壁部313の下端の一部とは連結部314によって連結されている。折返し部315の上端は、第1領域331において、本体部312内に貯留された尿よりも上方に形成されたシール層Sの下面よりも低い位置まで上方に延びて形成されている。また、折り返し部315は、連結部314の先端周縁部とシール層Sの上面との間の中央高さ以上に延びている。
【0055】
流出口312Cは、第2領域332内に本体部312の底部312Bから立ち上がった流出管312Dの上端に形成されている。また、流出口312Cは折返し部315の上端より上方に開口している。流出管312Dは、開口断面が長方形状であり、かつ外側面の水平断面も長方形である。この流出管312Dは、3方向の外側面が、隔壁部313の内部空間が、水平断面視において、長方形状に形成された部分の内側面に接して配置されている。つまり、流出管312Dは平面視で隔壁部313内の一方に偏った位置に配置されている。
【0056】
流出管312Dの外側面と隔壁部313の内側面とが接しおらず、流出管312Dの外側面と隔壁部313の内側面とに囲まれた部分には、上昇流路Uが形成されている。第2領域332の水平断面視において、流出管312Dの流路面積が、上昇流路Uの流路面積よりも大きく形成されている。
【0057】
流出管312Dの下部は下方に向けて開口している。流出管312Dの下流端における底部312Bには排出口312Eが貫設されている。この排出口312Eが収納容器20の連結管24の上流部に臨む位置に配置されるようにカートリッジ形態の小便器用排水トラップ310は収納容器20に取り付けられている。他の構成は、実施例1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0058】
このような構成を有する小便器用排水トラップ310でも、流出管312Dが平面視で隔壁部313内の一方に偏った位置に配置されているため、流出管312Dの外側面と隔壁部313の内側面との間隔を広げることができる。よって、流出管312Dの外側面及び隔壁部313の内側面にゲル状の尿石が堆積しても、流出管312Dの外側面と隔壁部313の内側面とに囲まれて形成された上昇流路Uを詰まり難くすることができる。
【0059】
したがって、実施例4の小便器用排水トラップ310は、長期にわたり尿の排出を良好に行うことができる。
【0060】
また、第2領域332の水平断面視において、流出管312Dの流路面積が、上昇流路Uの流路面積よりも大きく形成されているため、上昇流路Uを流れることができる尿の流量よりも流出管312Dを流れることができる尿の流量が多い。このため、流出管312D内が上昇流路Uから流入した尿によって満水になることを防止することができる。これにより、流出管312D内が満水になることによって生じるサイホン作用を防止することができる。つまり、サイホン作用が生じることによって小便器用排水トラップ310内に滞留すべき尿が排出され、水封が切れてしまうことを防止することができる。また、流出管312Dの下流側の内側面にゲル状の尿石が堆積したとしても、流出管312D内が上昇流路Uから流入した尿によって満水になる状況を遅らせることができる。このため、この小便器用排水トラップ310は、長期にわたり良好に使用することができる。
【0061】
また、隔壁部313、水平断面視において、本体部312の中央部から側壁部312Aに向けて延びているため、流出管312Dの流路面積をより広くすることができる。このため、流出管312D内が上昇流路Uから流入した尿によって満水になることを防止し、サイホン作用の発生を防止することができる。また、流出管312Dの下流側の内側面にゲル状の尿石が堆積して流路面積が狭くなり、流出管312D内が上昇流路から流入した尿によって満水になる状況をさらに遅らせることができる。よって、この小便器用排水路トラップ310は、長期にわたり良好に使用することができる。
【0062】
また、流出管312Dの下部は下方に向けて開口しているため、尿を流出管312Dから収納容器20内へ直接排出することができる。このため、流出管312D内が上昇流路Uから流入した尿によって満水になることを防止し、サイホン作用の発生を防止することができる。
【0063】
<実施例5>
実施例5の小便器用排水トラップ360は、図9及び図10に示すように、実施例4の小便器用排水トラップ310において、隔壁部313が側壁部312Aの内側面に接する部分を側壁部312Aと一体化して形成し、かつ流出管312Dが隔壁部313の内側面に接する部分を側壁部313と一体化して形成している。これによって、小便器用排水トラップ360の製造を容易にし、かつ原材料の消費を少なくすることができる。
【0064】
この小便器用排水トラップ360の上昇流路Uを形成する流出管312Dの上端部は、R面形状に形成され、このR面に連続して形成され、垂直断面形状が略半円形の凸部を形成している。このため、上昇流路Uから流出管312Dに尿が流入する際、流出管312Dの上端部をスムーズに溢流することができる。他の構成は、実施例4と同様であり、同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0065】
このような構成を有する小便器用排水トラップ360でも、流出管が平面視で隔壁部313内の一方に偏った位置に配置されている構造と同等であるため、流出管の外側面と隔壁部313の内側面との間隔を広げることができる。よって、流出管の外側面及び隔壁部313の内側面にゲル状の尿石が堆積しても、流出管の外側面と隔壁部313の内側面とに囲まれて形成された上昇流路Uを詰まり難くすることができる。
【0066】
したがって、実施例5の小便器用排水トラップ360は、長期にわたり尿の排出を良好に行うことができる。
【0067】
また、第2領域332の水平断面視において、流出管に相当する部分の流路面積が、上昇流路Uの流路面積よりも大きく形成されているため、上昇流路Uを流れることができる尿の流量よりも流出管に相当する部分を流れることができる尿の流量が多い。このため、流出管に相当する部分の内部が上昇流路Uから流入した尿によって満水になることを防止することができる。これにより、流出管に相当する部分の内部が満水になることによって生じるサイホン作用を防止することができる。つまり、サイホン作用が生じることによって小便器用排水トラップ360内に滞留すべき尿が排出され、水封が切れてしまうことを防止することができる。また、流出管に相当する部分の下流側の内側面にゲル状の尿石が堆積したとしても、流出管に相当する部分の内部が上昇流路Uから流入した尿によって満水になる状況を遅らせることができる。このため、この小便器用排水トラップ360は、長期にわたり良好に使用することができる。
【0068】
また、隔壁部313、水平断面視において、本体部312の中央部から側壁部312Aに向けて延びているため、流出管に相当する部分の流路面積をより広くすることができる。このため、流出管に相当する部分の内部が上昇流路Uから流入した尿によって満水になることを防止し、サイホン作用の発生を防止することができる。また、流出管に相当する部分の下流側の内側面にゲル状の尿石が堆積して流路面積が狭くなり、流出管に相当する部分の内部が上昇流路から流入した尿によって満水になる状況をさらに遅らせることができる。よって、この小便器用排水路トラップ360は、長期にわたり良好に使用することができる。
【0069】
また、流出管に相当する部分の下部は下方に向けて開口しているため、尿を流出管に相当する部分から収納容器20内へ直接排出することができる。このため、流出管に相当する部分の内部が上昇流路Uから流入した尿によって満水になることを防止し、サイホン作用の発生を防止することができる。
【0070】
本発明は、上記記載及び図面によって説明した実施例1〜5に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1〜3では、流出管の外側面が隔壁部の内側面に接して配置されているが、流出管は隔壁部の内側面に接しなくても平面視で隔壁部内の一方に偏った位置に配置されるとよい。
(2)実施例1〜3では、小便器用排水トラップの外形が円筒形状であったが、円筒形状でなくてもよい。この場合、隔壁部、折返し部も円筒形状でなく、本体部の側壁部に沿った筒形状であればよい。
(3)実施例1〜5では、隔壁部の下端に形成された連結部と、連結部の先端周縁部に形成された折返し部とを有していたが、連結部及び折返し部を有さなくてもよい。
(4)実施例2では、本体部が小便器の鉢面の下端部に直接取り付けられているが、本体部を小便器本体と一体に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は洗浄水を利用しない小便器に利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…小便器
2…鉢面
10、110、210、310、360…小便器用排水トラップ
11、311…蓋部
11A、311A…流入口
12、112、312…本体部
12A、112A、312A…側壁部
12B、112B、312B…底部
12C、112C、312C…流出口
12D、112D、212D、312D…流出管
31、331…第1領域
32、332…第2領域
33、333…第3領域
S…シール層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小便器の鉢面の下端部に設けられた開口に嵌まり込み、前記鉢面に沿って流下した尿が流入する流入口を有する蓋部と、
この蓋部の外周縁部から下方に延びて形成された側壁部と、この側壁部の下端に連続して形成された底部と、貯留された尿が溢流する流出口とを有する本体部と、
前記蓋部の外周縁部より内側に設けられ、閉鎖された上端から下方に延び、前記本体部の底部との間に間隔を設けて下端が開口した空洞状の隔壁部とを備え、
前記本体部内は、前記隔壁部により、この隔壁部の外側に形成された第1領域と内側に形成された第2領域とに区画され、前記第1領域と前記第2領域とは前記隔壁部の下端より下方かつ前記底部より上方に形成された第3領域により連通しており、
前記第1領域には、非溶水性であり、尿よりも比重が軽く、貯留された尿より上方にシール層を形成するシール液が注入される小便器用排水トラップであって、
前記流入口は前記第1領域に上方から尿が流入する位置に貫設され、
前記流出口は、前記第2領域内に前記本体部の底部から立ち上がり、平面視で前記隔壁部内の一方に偏った位置に配置された流出管の上端に形成されていることを特徴とする小便器用排水トラップ。
【請求項2】
前記第2領域の水平断面視において、前記流出管の流路面積が、前記流出管の外側面と前記隔壁部の内側面とに囲まれて形成された上昇流路の流路面積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の小便器用排水トラップ。
【請求項3】
前記隔壁部は、水平断面視において、前記本体部の中央部から前記側壁部の内側面に向けて延びて形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の小便器用排水トラップ。
【請求項4】
前記隔壁部は円筒形状に形成されており、前記流出管は半円筒形状に形成され、円弧状の外側面を前記隔壁部の内側面に接近させて配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の小便器用排水トラップ。
【請求項5】
前記第3領域の上下方向の寸法は、前記第1領域に形成された尿の下降流路及び前記上昇流路の上下中央断面視における横方向の寸法よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の小便器用排水トラップ。
【請求項6】
排水管が接続され、小便器の鉢面の下端部に上方に向けて開口した凹部に着脱自在に取り付けられるカートリッジ形態に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の小便器用排水トラップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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