説明

小型自己保持型ソレノイド

【課題】 組立て後の小型自己保持型ソレノイドにおいて、ヨークとコイルボビンを容易に分解できるようにし、リサイクル時における作業性の向上を図る。
【解決手段】 ヨーク11の第1脚部11a、11b間のヨーク脚部間橋22がコイルボビン13a、13bの一端側と当接するまで、ヨーク11をコイルボビン13a、13bの一端側からボビン孔内に挿入させると、コイルボビン13の一端側の係止爪13fがヨーク11の磁石取付孔17の内側に引っ掛かり、ヨーク11がコイルボビン13a、13bに取り付けられ、これにより、組立て後の小型自己保持型ソレノイドにおいて、係止爪がある反対側から永久磁石を押せば、係止爪が持ち上がり、ヨークとコイルボビンの抜け止め規制が解除され、容易に分解できる構造になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型自己保持型ソレノイドに関するものであり、特に、例えばメディアディスクドライブのロック機構、或いは家庭電化製品その他の電源を要する機器等に用いられ、コイルボビンに永久磁石を取り付けたヨークの一部と可動片の一部を挿通した構造を有する小型自己保持型ソレノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の小型自己保持型ソレノイドは、ヨークに取り付けた永久磁石の磁束でヨークに可動片を吸着させ、コイルに電流を流すことでボビン内部に逆磁界を発生させてヨークの吸着力を打ち消すことによって、該ヨークから可動片を離脱させるソレノイドであり(特許文献1参照)、別に、例えば図3に示すような構造のものも知られている。
【0003】
図3に示すソレノイドは、一対の第1脚部111a、111bと基部111cとを有する鉄等の磁性材料で構成される略コ字型に形成されたヨーク111と、該ヨークの基部中心に作られている磁石取付孔117内に装着されている永久磁石112と、連結した一対の筒状に形成されて、それぞれ巻線を巻き付けた状態で設置されているコイルボビン113a、113bと、一対の第2の脚部114a、114bと基部114cとを有して、鉄等の磁性材料で略コの字型に形成された可動片114等、を備えている。
【0004】
ヨーク111は、コイルボビン113a、113bのボビン孔内に、それぞれ樹脂等の接着剤を塗布した第1脚部111a、111bを一端側からボビン鍔部がヨーク脚部間橋に当接するまで挿入させて、前記接着剤でコイルボビン113a、113bに固定されている。一方、可動片114は、上記ボビン孔の他端側から、可動片114の各第2脚部114a、114bがそれぞれ各第1脚部111a、111bと当接することが可能なように、コイルボビン113a、113bに対してそれぞれ摺動自在に挿入されている。また、可動片114は、永久磁石112が取り付けられたヨーク111の一対の第1脚部111a、111bの先端に生じるN、S極に可動片114の一対の第2脚部114a、114bがそれぞれ吸着保持されている。
【0005】
コイルボビン113a、113bに通電されていない時、永久磁石112による磁束で可動片114はヨーク111に吸着されている。しかし、永久磁石112の磁束とは逆方向に磁界が発生するようにコイル113a、113bに電流を流すと、可動片114がヨーク111から分離される。
これらの従来の小型自己保持型ソレノイドでは、コイルボビン113a、113bに対してヨーク111を接着剤で固定している。そのため、リサイクルのために小型自己保持型ソレノイドを分解する際、かなりの労力を要し、作業性が悪い。また、接着剤が付着しているヨークはリサイクルに適していないという問題があった。
【0006】
また、小型自己保持型ソレノイドではなく、マグネットのコイル保持装置に関するものではあるものの、ヨークとコイルとの接合に、接着剤接合に換えて、凹凸部の係合を基本とする機械的・物理的な“接合”態様を用いるものも見られる(特許文献2参照)。
特許文献2に開示されたものにおいては、図4示すように、コイルZ5が巻かれたボビンZ1の一端側に設けられた突出部Z2とヨークZ3の側面に形成された段部Z4とを係合させてボビンZ1とヨークZ3とを接合・固定している。この態様においては、可撓性材料で形成されたボビンZ1の突出部Z2の弾性の作用によって容易に組み付けられるものの、取り外すための格別の工夫が施されていないので、リサイクル時の組解き時の操作には、手間暇と技量が要求される。
【0007】
【特許文献1】実公平5−47450号公報
【特許文献2】実開昭58−3004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、リサイクル時における小型自己保持型ソレノイドの分解を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、本発明の小型自己保持型ソレノイドの発明は、一対の第1脚部を設けた略コの字型で、その基部の中心に永久磁石を取り付ける略矩形の孔を有するヨークと、前記ヨーク基部の中心にある孔に取り付けられ、ヨークの一対の第1脚部の先端にN、S極を発生させている永久磁石と、弾力性を有する樹脂材で成形され、貫通しているボビン孔を有し、外周にコイルが連結されて各々巻回されている一対の筒状のコイルボビンと、一対の第2脚部を有した略コ字型の可動片、とを備え、前記一対のコイルボビンの前記ボビン孔の一端から前記第1脚部が、他端側から前記第2脚部が、それぞれ当接するまで摺動自在に挿入されている小型自己保持型ソレノイドであって、前記ヨークの基部中心にある磁石取付孔の内側に引っ掛けることにより前記ヨークが前記ボビン孔に対して抜け止めされている係止爪を少なくとも一方の前記ボビンのヨーク挿入側端部に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ヨークをコイルボビンの一端側から該ボビン孔内に所定の位置まで挿入させ、ボビンの係止爪をヨークの磁石取付孔の内側に掛けることで、ヨークがコイルボビンに対して抜け止め規制され、この規制によりコイルボビンがヨークに取り付けられる。リサイクル時における小型自己保持型ソレノイドの分解に際しては、永久磁石を磁石取付孔から係止爪側に押し出すことにより、係止爪が磁石取付孔の内側から外れるので、係止爪のヨークへの係合を解除することができるようになり、リサイクルのための分解を容易にすることが可能である。これにより、リサイクル時における作業時間の短縮でき、作業性が向上する。又、接着剤を使用しないことで、ヨークに付着した接着剤を除去する手間がかからない利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に関わる小型自己保持型ソレノイドについて、添付図面を参照しつつ、実施の形態をあげて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態を示し、下側半分に於ける一部を破断して示す小型自己保持型ソレノイドの上面図である。
図2は、本発明に係る小型自己保持型ソレノイドの、図1中のA−A線における断面的側面図である。
(実施の形態)
図1および図2において、小型自己保持型ソレノイドは自己保持型の電磁石装置であり、ヨーク11と、外周にコイル19が巻回されているボビン本体13と、永久磁石12と、可動片14とで基本的に構成されている。
【0012】
ボビン本体13は、平面図示で左右(図1、図3では上下)対称な形状であり、それぞれ筒状に形成され、一端が連結された一対のボビン本体部13cと、該ボビン本体部13cの両端にそれぞれ設けられた鍔部13d、13eとを有し、一方の鍔部13dは一体丁番部で連結されている。
このボビン本体13は、コイル19が巻回される本体部13cと、該本体部13cの両端にそれぞれ設けられた鍔部13d、13eとを有し、中央にはヨーク11の第1脚部11a、11bが挿入されるボビン孔が前後に貫通して設けられている。
【0013】
又、鍔部13e側のボビン端部には係止爪13fが設けられている。一端側の鍔部13eには端子取り付け部13gが設けられている。この端子取り付け部13gには、ボビン本体部13cの外周に巻回されたコイル19の端部の処理及び接続用の配線の半田付け用として用いられる一対の端子ピン15が、側方と上方にそれぞれ突き出すように取り付けられる。
ボビン本体13は、弾性力を有する樹脂材、例えばナイロンやポリプロピレンのような熱可塑性樹脂で型成形され、全体として弾力性が持たされている。
【0014】
各コイルボビン13a、13bの一端側の鍔部13eは互いに離れているが、他端側の鍔部13d同士との間は互いに繋がり、この繋がりによって各コイルボビン13a、13bが一体化された状態になっている。又、その繋がり合っている鍔部13d同士との間は一体丁番部21が形成されている。その一体丁番部21は、ヒンジとして使用することができ、一対のボビン本体部13cが屈曲し、揺動するのを可能にしている。従って、この屈曲、揺動により、ボビンの本体部13cにコイル19を巻回するとき、ボビン本体13をコイル19の巻易い姿勢に変更することができる。
【0015】
ボビン本体13のボビン孔は、ヨーク11の第1の脚部11a、11b付け根部分の断面形状と同じ四角形状をした角孔として作られており、このボビン孔内に第1の脚部11a、11bが挿入できる構造になっている。
ヨーク11は、鉄等の磁性材料で作られ、一対の第1脚部11a、11bと、この一対の第1脚部11a、11bを連結している基部11cとを一体に有して、略コの字状に形成されている。又、ヨーク基部11cの中心部の磁石取付孔17は、ボビンの係止爪13fの引っ掛かりを増やすために一部孔幅が広げられていて、そして、磁石取付孔17内には、細長く形成された永久磁石12が装着されている。このため、この永久磁石12によりヨーク11が常時磁化され、一対の第1脚部11a、11bの先端にN、S極が生じた状態になっている。又、基部11cには、該ヨーク11を機器等にネジ等により取り付け固定するための取付孔16が形成されている。
【0016】
可動片14は、鉄等の磁性材料で作られ、一対の第2脚部14a、14bと、この一対の第2脚部14a、14bを連結している可動片基部14cとを一体に有して略コの字状に形成されている。その第2脚部14a、14bの断面形状は、コイルボビン13a、13bのボビン孔の断面形状と同じ略四角形状で、且つ、ボビン孔内で摺動できる大きさになっている。又、可動片基部14cには、可動片14が離脱される方向への力を掛けるための図示されていない器具等が挿入される取付用孔20が形成されている。
【0017】
これらの部品で小型自己保持型ソレノイドを組み立てる手順の一例を説明する。
はじめに、ボビン本体13の一対の端子取付部13gに其々端子ピン15を取り付けて、本体部13cの外周部分にそれぞれコイル19を巻回し、コイル端部をそれぞれの端子ピン15に接続処理したコイルボビン13a、13bを用意する。次に、ヨーク11の第1脚部11a、11bを、各コイルボビン13a、13bのボビン孔に、鍔部13e側から挿入させる。
【0018】
ヨークの挿入はボビンの鍔部13eがヨーク脚部間橋22に当接し、且つ、ボビン本体13の係止爪13fがヨーク11の磁石取付孔17の内側に引っ掛かるまで行なう。これによりヨーク11はコイルボビン13a、13bに対して前後方向に移動するのが規制され、この規制でヨーク11がコイルボビン13a、13bに固定される。続いて、ヨーク11の磁石取付孔17内に永久磁石12を挿入される。なお、永久磁石12は、その磁力によって、ヨーク11に吸着固定される。この固定は、永久磁石12を横に押し出すことで、解除される。
【0019】
可動片14の第2脚部14a、14bを他端側の鍔部13d側からボビン孔に挿入させる。そして、各第2脚部14a、14bがヨーク11の第1脚部11a、11bの先端に当接すると、可動片14がヨーク11の一対の第1脚部11a、11bの先端に生じているN、S極に吸着保持され、組み立てが完了する。
図1及び図2は、この組み立て後の状態で示されている。
【0020】
この小型自己保持型ソレノイドは、コイル19に通電されていない時、永久磁石12による磁束で、ヨーク11が可動片14を吸着している。又、永久磁石12の磁束と逆方向に磁界が発生するようにコイル19に電流を流すと、取付孔20に付勢された可動片が離脱する方向への力により可動片14がヨーク11から分離される。この分離される時の可動片14の動きがロック機構等に利用されている。
このように構成された小型自己保持型ソレノイドでは、係止爪がある反対側から永久磁石を押せば、係止爪が持ち上がり、ヨークとコイルボビンの抜け止め規制を解除でき、容易に分解することが可能であり、リサイクル時における作業性が向上する。
【0021】
上記実施の形態の構造では、ボビン本体13の係止爪13fはコイルボビン13a、 13bの両方に設けた構造にしているが、片側のコイルボビンにだけ設けた構造にしても良いものである。
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態を示し、下側半分に於ける一部を破断して示す小型自己保持型ソレノイドの上面図である。
【図2】本発明に係る小型自己保持型ソレノイドの、図1中のA−A線における断面的側面図である。
【図3】従来例の構造を示し、下側半分に於ける一部を破断して示す小型自己保持型ソレノイドの上面図である。
【図4】図3の従来例とは別の永久磁石を有していない小型ソレノイドの構造を示し、ボビンとヨークとの接合・固定の態様を示す説明上面図である。
【符号の説明】
【0023】
11 ヨーク
11a 第1脚部
11b 第1脚部
11c ヨーク基部
12 永久磁石
13 ボビン本体
13a コイルボビン
13b コイルボビン
13c 本体部
13d 鍔部
13e 鍔部
13f 係止爪
13g 端子ピン取付部
14 可動片
14a 第2脚部
14b 第2脚部
14c 可動片基部
15 端子ピン
16 取付孔
17 磁石取付孔
19 コイル
20 取付用孔
21 一体丁番部
22 ヨーク脚部間橋

111 ヨーク
111a 第1脚部
111b 第1脚部
111c ヨーク基部
112 永久磁石
113 ボビン本体
113a コイルボビン
113b コイルボビン
113c 本体部
113d 鍔部
113e 鍔部
113g 端子ピン取付部
114 可動片
114a 第2脚部
114b 第2脚部
114c 可動片基部
115 端子ピン
116 取付孔
117 磁石取付孔
119 コイル
120 取付用孔
121 一体丁番部
122 ヨーク脚部間橋

35 コイル
31 ボビン
32 突出部
33 ヨーク
34 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1脚部を設けた略コの字型で、その基部の中心に永久磁石を取り付ける略矩形の孔を有するヨークと、前記ヨーク基部の中心にある孔に取り付けられ、ヨークの一対の第1脚部の先端にN、S極を発生させている永久磁石と、弾力性を有する樹脂材で成形され、貫通しているボビン孔を有し、外周にコイルが各々巻回されている一端が連結された一対の筒状のコイルボビンと、一対の第2脚部を有した略コ字型の可動片、とを備え、前記一対のコイルボビンの前記ボビン孔の一端から前記第1脚部が、他端側から前記第2脚部が、それぞれ当接するまで摺動自在に挿入されている小型自己保持型ソレノイドであって、前記ヨークの基部中心にある磁石取付孔の内側に引っ掛けることにより前記ヨークが前記ボビン孔に対して抜け止めされており、且つ、磁石取付孔内の永久磁石の上面の一部もしくは全面を覆う係止爪を少なくとも一方の前記ボビンのヨーク挿入側端部に有することを特徴とする小型自己保持型ソレノイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−10292(P2010−10292A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166135(P2008−166135)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000110985)ニッコーシ株式会社 (11)