説明

小滴堆積装置

【課題】非使用時の詰まり等の問題を解決した小滴堆積装置を提供する。
【解決手段】それを通って液体小滴がチャンバーから射出されて堆積するためのノズル(42)をもつ長いチャンバー(46)、該チャンバー内の液体の圧力をその容積を変えることによって変動させ小滴を射出するための部材、および該射出された小滴を補充するに要するよりも多量の液流をチャンバー内に生じさせノズルを通過させてそれを清浄にするための部材(38)からなる小滴堆積装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバーの容積を変えることによりノズルを通してオンデマンドでチャンバーから小滴を射出する小滴堆積方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チャンバー容積の変動は圧電アクチュエータによって、たとえばチャンバーを区切っている圧電物質の偏位によって行われることが好ましい。そのような配置は参考文献として挙げる出願人の先の出願EP0277703A(特許文献1)の明細書に開示されている。そのデバイスは、チャンバーの端壁内にノズルをもつ長いインク収納チャンバー(「エンド・シューター」配置として公知)に特徴がある。
【0003】
そのようなデバイスに伴う問題は、使っていない間、チャンバー内のインクが劣化し、チャンバーの端に固体粒子を蓄積してノズルを塞ぐことである。これと同じ問題が、チャンバーの長壁の一部、たとえば中間にノズルがある場合(すなわち、「サイド・シューター」配置)、おそらくもっと軽いだろうが、生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP0277703A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はその好ましい態様において、ノズルに対し浄流を与えることによって、この問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある一面において、本発明はチャンバー容積を変えることによって長いチャンバー内の液圧を変えてチャンバーの一端でノズルを通して小滴を射出して堆積させ、該射出小滴を補充するに要するよりも多量の液流をチャンバー内に生じさせて該液流をノズルの開口部前面を横切って通過させることからなる小滴堆積方法を提供する。
また他の具体例において、本発明はそれを通して小滴をチャンバーから射出して堆積するためのノズルを一端に有する長いチャンバー、該チャンバーの容積を変えることによりチャンバー内の液圧を変えて小滴を射出するための部材、および該射出された小滴を補充するよりも多量の液流をチャンバー内に生じさせて該液流をノズルに通過させる部材からなる小滴堆積装置を提供する。
【0007】
さらに他の具体例において、本発明はそれを通して小滴をチャンバーから射出して堆積するためのノズルを有する長いチャンバー、該チャンバーの容積を変えることによりチャンバー内の液圧を変えて小滴を射出するための部材、および該射出された小滴を補充するよりも多量の液流をチャンバー内に生じさせて該液流をノズルに通過させる部材、および該液流がチャンバーの一端で、その回りに流れる長手方向バリアを有するチャンバーからなる小滴堆積装置を提供する。
ノズルはチャンバーの端壁内、あるいは長壁内にある。
チャンバーはバリアによって長手方向に分割され、液流はバリアの一方の側のある方向および他方の側の逆方向にある。
【0008】
サイド・シューター配置において、長いチャンバーの一端にプレナムチャンバー(plenum chamber)があり、そこを通って液流がバリアの一方の側から他方の側へ流れる。この高圧チャンバーは、長いチャンバー内の液体の圧力波がプレナムチャンバー内の液体によって反射されるようになっている。
当該プレナムチャンバーは、チャンバー内の液体の圧力波を反射させる機能を有するチャンバーである。
チャンバーの少なくとも一つの壁は、圧電物質で形成され、電圧を印加されることにより剪断モードで圧電物質を変形させる電極を有する。
【0009】
さらに他の具体例において本発明は、それを通して小滴をチャンバーから射出して堆積するためのノズルを一端に有し、少なくとも一つの長壁が圧電物質で形成されているチャンバー、該圧電物質に電圧を印加して剪断モードに変形させることにより小滴を射出させるための電極およびチャンバーの長手方向に伸びてその中に複数の流路を区切り、その一端がノズルから隔たって液流が一つの流路から他の流路へノズルを通過するバリアからなる小滴堆積装置を提供する。
バリアは一般に長壁に対し面平行に伸びている。
【0010】
あるいは、長壁はバリアによって長手方向に分割される。
圧電物質は対極領域からなり、バリアの各側に置かれることにより圧電物質に電圧が印加されると山形に変形する。
あるいは、バリアの各側にある圧電物質は、対向領域からなることにより、電圧が印加されるとバリアの各側において山形に変形する。
バリアはノズル軸を含む。
バリアは壁の一方の側にアース電位にあって液体にさらされた第1電極および壁の他方の側にあって液体にさらされていない第2電極を有する圧電物質の長壁からなる。
【0011】
こうしてバリアは2つの上記壁からなり、各壁はそれぞれ一方の側を液体にさらされ、各壁の他方の側は互いに離れて対向している。
バリアの一端と、ノズルが区切られているチャンバーの端壁を形成する構造との間に、開口部をもつ(すなわち、有孔の)プレートを設けてもよい。
本発明はまた、上記方法によって操作される、あるいは上記装置を含むプリンターからもなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるプリントヘッドの斜視図。
【図2】図2(A)及び図2(B)は、同プリントヘッドのそれぞれ長手方向断面図、および一部破断断面図を示す。
【図3】図3(A)は、同プリントヘッドの一部破断斜視図であり、図3(B)は、本発明の他の実施例を示す正面図である。
【図4】図1のプリントヘッドの一部を示す分解斜視図。
【図5】本発明の他の実施例を示す斜視図。
【図6】さらに他の本発明の実施例を示す分解斜視図。
【図7】図2の実施例の変形例を示す長手方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明を説明するが、これらの図面は単に本発明の実施例を説明するためだけのもので、これらに限定されるものではない。
図1において、プリンターは(本発明に関連のある限り)ノズル14内にそれぞれ64流路の端末をもつ多数のプリントヘッド・モジュール12を有するページ幅アレイ・プリントヘッド10からなる。紙や他の印刷媒体16は矢印18で示すようにプリントヘッドを通過し、印刷ドット像がプログラムされたシーケンスに従ってノズルからの小滴の堆積によって形成される。モジュール12は印刷解像度を増す(ドット間隔を減らす)ため、給紙方向に対し角度づけられている。
【0014】
ページ幅アレイの代りに、もっと少数の(あるいは単一の)モジュール12を、それ自体は公知のページ幅にわたって前後にモジュールを動かすための適当なトラバース部材とともに用いてもよい。しかし、多数のノズルをもつページ幅アレイにおいてノズルを清浄に保つことが特に重要なので、ページ幅アレイを図示してある。インクはヘッダータンク22から矢印20で示すように、小滴の堆積に要するよりも大きな率で供給され、後述するようにプリントヘッドを通って重力によって循環し、ポンプ26を経由してヘッダータンク22にもどる。プリントヘッドを通る循環のためにヘッダータンクによって供給される圧力は、一般に10mm水圧である。
プリントヘッド・モジュール12の構造を詳細に考える前に、本発明を概略説明している図2A〜2B及び図3Aを参照してみよう。
【0015】
図2Aは、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)のような対極圧電物質の2つのウエハ30・32からなるプリントヘッドの長手方向断面図である。これらのウエハは、その中を前後に通っている平行な流路34を有し、長いチャンバー36を形成するように流路と対向して組み立てられている。ウエハの間に、UPILEX(商標)のような1枚のポリイミド・シート38があり、チャンバーを2つの流路に区分するバリアを形成している。一般に各ウエハは150mm厚みで、シート38は20〜50mm厚みである。ノズルプレート40が各チャンバーの端にあってそれを閉じるように置かれ、各ノズル42を供給している。電極44・46が、チャンバーの容積を変えてEP0277703Aに開示しているように音響圧力によって小滴49を射出するように、チャンバーの各側でシート38の上方と下方とに設けられており、チャンバーの側壁(たとえば48)を剪断モードで偏位されて山形にする。
【0016】
各チャンバー36において、図3(A)に示す様に、シート38はノズルに最も近い端50でカットされ、チャンバーの上部に沿ってノズルに向かってインクが流れる道を与え、矢印52のように下部に沿ってノズルから離れるようにインクを流し、このバリア端の回りの流れによって、当該チャンバーの内部表面に設けられている当該ノズルの内端前面部が洗浄される。
バリアは、図3(B)の54に示すように交差する代りに、チャンバーの電極支持側壁44に対して面平行に供給される。
【0017】
図4は、プリントヘッド・モジュール12の1つの分解図である。部分的に厚み方向に伸びる複数の平行流路をもつ対極PZTウエハ56・58が、背中合せに組み立てられ、非流路部60・62が一対の背中合せの流路によって形成された1つのチャンバーの2つの部分の間にバリアを形成している。電極は図2の44・46と同様に流路の音響的活性部に設けられ、壁を偏位させて公知の原理によってノズル14から小滴を射出する。ウエハ56・58の端とノズル14が設けられているプレート64との間に挟まれてプレート66があり、非流路部60・62によって形成されたバリアの端を横切って各対の流路につなぐように長い開口部が設けられている。入口70および出口72のマニホールドが、各流路の開通面を閉じるカバープレートとしても配置されている。このモジュールは、図2のプリントヘッド10で流体供給チャンバー74・76の間で受けられる。ノズルから射出される為の液体流よりも多い量の流体を含む超過量のインクはウエハ56を通って外側に各チャンバーを循環し、プレート66の開口部68を経てノズルの内面を横切り、ウエハ58を経てもどる。
【0018】
図5に図4のモジュールの変形を示す。ウエハ56・58は一対のウエハ78・80に置き換えられ、互いに対極してそれらの間に粘着フィルム層82を介して設けられている。流路84は各対のウエハを通して完全に設けられ、各対のウエハは互いにキャリア・プレート86を介して設けられている。バリアをもつ各チャンバー87からの各対の流路は長手方向に伸びるキャリア・プレート86によって構成され、バリア端の回りの循環は図4のように開口プレート66を経て矢印52のように流れる。他の態様におけるバリア86は、ノズル14の軸を含むように整列される。各流路間の対極圧電物質部は、EP0277703Aに開示しているように電圧を印加すると山形に変形するように各側で電極(図示せず)に適合している。
【0019】
図6は、電極の腐食を減らす性質をもつバリアの回りにインクを循環させることによってノズル面を横切る流れが生じる本発明の他の実施例を示す。
PZTウエハ88・89は流路を刻まれ、3つのグループに流路90・92・94を形成するように対面しながら隣接している。電極が流路の間に壁96・98上に設けられ、アース電極は流路90・94に、ライン電極は流路92にある。この流路はマスク・プレート100によって、あるいは柔軟なシーラントを用いて逆補充することにより、インクを空に保たれる。それにより、インクと接している唯一の電極はアース電位にあり、ライン電位にある電極はそこから絶縁されている。電極と他の導電部との間における電解腐食が避けられる。
【0020】
インクは、たとえば流路90から開口プレート66を経て、壁96・98からなるバリア端とブラインド流路92の回りを循環し、矢印52のように流路94を経てもどる。流れはブラインド流路92のブランク・オフ端と揃った流路90・94の中間でノズル102を通過する。こうして流路90・94とプレート66の開口部が、バリア96・98を含む単一の小滴射出チャンバーを構成する。通常の環境下では、壁96・98上の2つの電極対に共通の信号が加えられ、また流路90・94の他の長壁上の電極対にも加えられる。
【0021】
図7は、サイド・シューター・プリントヘッドに適用された本発明の実施例を示す。チャンバー130はバリア136によって長手方向に分割され、上部流路150と下部流路152を形成している。チャンバーの一端にあるプレナムチャンバー140によって、流路150を通ってインクが外側に矢印120のように流れて循環し、矢印110のように流路152を経てもどる。
ノズル160がチャンバー130の長手方向の頂壁において流路150に沿って中間に設けられている。流路150に沿うインク流がノズル160の内面を洗い流し、それを清浄に保つ。プレナムチャンバー140の容積はその中のインクが負の反射係数をもつに十分大きいように選ばれ、それによってインク入口や出口へのマニホールド接続であるかのように、圧力波を反射することができる。
【0022】
この実施例のさらなる長所は、インク供給およびもどりマニホールドに対するプリントヘッド入口と出口接続が、ともにプリントヘッドの同一側にあることである。その結果、製造とインストールが容易になる。
本明細書(特許請求の範囲を含む)および/または図面に開示した各特徴は、他の開示・図示された特徴とは独立に本発明に属する。
本明細書における「本発明の目的」という記述は本発明の好ましい実施態様に関わるが、必ずしも特許請求の範囲内にある本発明の全実施態様に関わるものではない。
【符号の説明】
【0023】
10:プリントヘッド
12:プリントヘッド・モジュール
14:ノズル
30・32:ウエハ
34:流路
36:チャンバー
42:ノズル
44、46:電極
56、58:ウエハ
60、62:非流路部
64、66:プレート
68:開口部
70:入口
72:出口
78、80:ウエハ
84:流路
86:キャリア・プレート
87:チャンバー
88、89:ウエハ
90、92、94:流路
96、98:バリア
100:マスク・プレート
102:ノズル
130:チャンバー
136:バリア
140:高圧チャンバー
150、152:流路
160:ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作時にチャンバーから射出された液体小滴を通過させるノズルをもつ長いチャンバーと、
該小滴を射出するために該チャンバーの容積を変えることによって該チャンバー内の液体の圧力を変えるための手段と、
射出された小滴を補充するのに要するよりも多量の液体の流れをチャンバー内に生じさせるための手段とからなり、
該多量の液体が、該ノズルを過ぎって通過し、該チャンバーが、該チャンバーの長手方向にバリアを有し、該液体が、該チャンバーの一端において、該バリアのまわりを通過することを特徴とする小滴堆積装置。
【請求項2】
該ノズルが、該チャンバーの長手方向の壁に設けられていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
該チャンバーが、バリアによって該チャンバーの長手方向に分割され、該液体の流れが該バリアの一方の側では一方の方向に、他方の側では逆方向に流れることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
該長いチャンバーの一端にプレナムチャンバーが設けられ、該プレナムチャンバーにより、該液体が該バリアの一方の側から他方の側に流れ、該プレナムチャンバーの容積が該長いチャンバーの容積と十分異なり、該長いチャンバー内の液体の圧力波が、該プレナムチャンバー内の液体により反射させられることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
該チャンバーの容積が、該チャンバーの少なくとも一つの壁をゆがませる手段により変化させることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の装置。
【請求項6】
該チャンバーの長手方向の壁が、ゆがむことを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項7】
該チャンバーの容積を該チャンバーを区切っている圧電物質によって変化させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
該チャンバーの少なくとも1つの長手方向の壁が圧電物質から形成され、該物質を電圧の印加によって剪断モードに変形させる電極を有することを特徴とする請求項7記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−30314(P2010−30314A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255981(P2009−255981)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【分割の表示】特願2001−513589(P2001−513589)の分割
【原出願日】平成12年7月28日(2000.7.28)
【出願人】(301055608)ザール テクノロジー リミテッド (31)
【Fターム(参考)】