説明

小滴射出装置

【課題】粘性圧力損失を改良した小滴堆積装置を提供する。
【解決手段】各チャンバが小滴射出用オリフィス、共通の流体入口マニホルド(220)および共通の流体出口マニホルド(210、230)とつながった流体チャンバ(300、310)のアレイ、および入口マニホルド内、およびアレイの各チャンバを通って出口マニホルド内へ流体流れを生じさせるための部材からなり、各チャンバを通る流体流れが流体内の異物がオリフィス内に溜まるのを防ぐのに十分である小滴堆積装置であって、入口・出口マニホルドの1つの流れ抵抗が、2つのチャンバ間で小滴射出特性に重大な差をもたらすよりも少ない量だけ流体入口での圧力が変化するように選ばれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体の小滴を射出するための装置に関し、流体チャンバの配列からなり、各チャンバは小滴射出用オリフィス、共通の流体入口マニホルドおよび共通の流体出口マニホルドにつながり、該流体入口マニホルド内に流体を発生させるための部材とともに、配列内の各チャンバを通って、流体出口マニホルド内に流体を送る。さらに詳しくは、本発明は上記構造をもち、流体がインクであるインクジェット・プリントヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記したようなインクジェット・プリントヘッドは参考文献の国際公開第WO91/17051号パンフレットから公知である。図1は該国際公開第WO91/17051号パンフレットから取られ、圧電物質のベース12内に形成されたプリントヘッド・チャネル11の縦軸に沿う断面を示している。チャネルからのインク射出はカバー60内のノズル22を通して行われ、インクはチャネルの各端にある流体マニホルド32,33によって供給される。たとえばEP−A−0277703やEP−A−0278590から公知のように、圧電アクチュエータ壁は一連のチャネルの間に形成され、各壁の対向側にある電極間に印加される電極によって作動して剪断モードで横に偏向する。その結果、インク内に生じた圧力波によってノズルから小滴が射出する。また公知のように、インクはマニホルド32,33の一方のマニホルドに供給され、チャネルを通り、他方のマニホルドから出ると共に、ノズルから射出されるインク流を生じる。これによって、埃、乾燥インクあるいは他の異物がノズル内に溜まるのを防ぎ、インク小滴の射出を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO91/17051号
【特許文献2】EP−A−0277703
【特許文献3】EP−A−0278590
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オリフィス内に異物が集まるのを防ぐのに十分な流量(rate)でインクが供ノズル内に異物が集まるのを防ぐのに十分な流量(rate)でインクが供給される上記プリントヘッドを用いた実験において、小滴射出特性(特に射出小滴の大きさと速度)がアレイに沿って変化することがわかった。この変化は各チャンバ内のインク・メニスカスの残りの位置の変化、および次には各チャンバ内のノズルの静圧の変化の結果であることがわかった。
【0005】
本発明者らは、圧力のこの変化はインクの連続流、特に全チャネルを通る全インク流に等しいインク流によることを発見した。このようなインク流は、流体入口マニホルドおよび流体出口マニホルドの双方に沿って重大な粘性圧力損をもたらす。この粘性圧力損が、各チャンバに対し入口と出口で静圧に影響を与え、したがってノズルでの静圧にも影響を与える。
好ましい実施態様において、本発明の目的は、異物をインク内に閉じ込めてノズル詰まりを減らすための解決法を探ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記した目的を達成するために、基本的には、以下に記載されたような技術構成を採用するものである。
即ち、本発明に係わる小滴射出装置の態様は、
複数の流体チャンバで構成されているアレイを有する小滴射出装置において、
各々の流体チャンバが、小滴射出用オリフィスと、共通の流体入口マニホルドと、共通の流体出口マニホルドとにそれぞれ連結され、
該流体入口マニホルド内に入り、該アレイを構成するそれぞれのチャンバを通り、流体出口マニホルド内に入るような第1の流体流を発生させるための手段を具備し、
各流体チャンバは、前記小滴射出用オリフィスから小滴を射出するための手段と連携することで、前記流体入口マニホルドから前記チャンバに入り、前記小滴の形で前記小滴射出用オリフィスから射出される第2の流体流を発生させ、前記第2の流体流は、前記第1の流体流と同時に発生し、前記第1の流体流の流量が、前記第2の流体流の最大流量より大であることを特徴とするものである。
又、本発明は、小滴射出装置であって、当該小滴射出装置は、各々の流体チャンバが、小滴射出用オリフィスと、共通の流体入口マニホルドと、共通の流体出口マニホルドとにそれぞれ連結されている、複数の流体チャンバで構成されているアレイ、および該流体入口マニホルド内に入り、該アレイを構成するそれぞれのチャンバを通り、流体出口マニホルド内に入るような流体の流れを発生させるための部材であって、且つ当該チャンバは、当該流体流が当該チャンバを介して流れると同時に当該オリフィスから小滴を射出する為の部材を含んでいる、流体流発生部材と、を含んでおり、当該小滴射出装置は、更に、少なくとも当該流体入口マニホルドと当該流体出口マニホルドの一方の断面積が、当該各チャンバを流れる当該流体流の流量が、当該オリフィス内に流体内の異物が溜まるのを防止する様に設定されており、且つ当該流体の流れに起因して発生する、当該アレイ内の何れかのチャンバに於ける当該オリフィスでの負の静圧が、任意の2つのチャンバ間に於いて、当該アレイ内における当該2個のチャンバのそれぞれから射出される小滴の液量に可視的な変化を与える様な量よりも少ない量だけ変化する様に設定されている小滴射出装置を提供する。
【0007】
ある閾値以下に流体入口・出口マニホルドの1つの流れ抵抗を下げることにより、インク循環の結果として生じる粘性圧力損失がアレイの幅にわたる小滴射出特性の均一性に悪影響させなくする。その結果、基板の印刷幅にわたる均一な印字品質がより容易に達成される。
【0008】
1つの好ましい構成において、流体入口マニホルドはアレイの2つのチャンバ間に重大な小滴射出特性の差を生じる十分な入口間の静圧の変化をもたらすよりも小さな流れ抵抗を有する。
【0009】
他の好ましい構成では、流体出口マニホルドの流れ抵抗が、入口での圧力が2つのチャンバ間で、小滴射出特性に重大な差をもたらすよりも少なく変化する。
【0010】
好ましくは、流体入口・出口マニホルドの各流れ抵抗は、オリフィスでの圧力が2つのチャンバ間で、小滴射出特性に重大な差をもたらすよりも少なく変化するように選ばれる。ノズルでの圧力は入口・出口双方での静圧に影響されるので、双方の流体マニホルドの流れ抵抗を適切な閾値以下に減らすことにより、入口圧力も出口圧力もアレイにおける一連のチャンバのノズル間で重大な圧力差を生ずるようには変化しなくなる。したがって、プリントヘッドの幅にわたる印字品質の変動は問題にならないレベルまで低減される。
【0011】
したがって、本発明は各チャンバが小滴射出用オリフィス、共通の流体入口マニホルドおよび共通の流体出口マニホルドにつながっている流体チャンバ・アレイ、および流体入口マニホルド内および各チャンバを通って流体出口マニホルド内に流体の流れを生じるための部材からなり、各チャンバを通る該流体流れが流体内に異物が溜まるのを防ぐのに十分であり、ここで各チャンバはチャンバを通る流体流れと同時にオリフィスから小滴を射出する部材と結合し、流体入口・出口マニホルドの流れ抵抗が、流れによるオリフィスでの静圧が2つのチャンバ間での重大な小滴射出特性の差をもたらすよりも少なく変化するように選ばれる小滴射出装置を提供する。
【0012】
1つの好ましい配列において、流体入口・出口マニホルドの少なくとも1つの断面積は、2つのチャンバ間で圧力が小滴射出特性に重大な差をもたらすよりも少なく変化する。
【0013】
チャンバ・アレイは、各チャンバが所定の間隔を持って配列され、2つのチャンバはアレイ内で互いに隣接して置かれ、あるいはアレイ内で互いに離れて置かれる。
【0014】
アレイは水平に置かれ、流体入口マニホルドはアレイに平行に配置され、その特性は、流体入口マニホルド内の粘性損失による圧力損失率を重力による静圧の増加率に実質的に合わせるように、アレイに平行な方向に変化する。その結果、印字品質が、アレイの頂チャンバと底チャンバ間にあるインク・ヘッド(液位)の差にもかかわらず、アレイの全高さにわたって均一に保たれる。
【0015】
したがって、本発明は、各チャンバがアレイと平行に伸びる共通の流体マニホルドから小滴流体を供給される、水平に置かれた小滴流体チャンバ・アレイ、およびアレイの各チャンバへ流体流れを生じさせるための部材からなり、ここで流体入口マニホルドの特性が、流体マニホルド内の粘性損失による圧力損失率が重力による静圧増加率に実質的に合うように、アレイに平行な方向で変わる。
【0016】
好ましい配列において、流体入口マニホルドの断面積はチャンバ・アレイの縦軸に対して垂直な方向に変化する。
【0017】
装置はチャンバ・アレイ用の共通の流体出口マニホルドを含む。その場合、流体出口マニホルドの断面積は、チャンバ・アレイの縦軸に対して垂直な方向に変化する。
【0018】
好ましい配列において、アレイは実質的に垂直に配列されている。こうして、均一な印字品質はA3サイズ基板用の垂直プリントヘッドの場合、12.6インチ(32cm)にわたって伸びる。
【0019】
上記のような装置において、インクは一般にプリントヘッド上方に配列された容器から供給され、プリントヘッド下方に配列された容器に流れ、ここからポンプによって上方容器にもどされる。プリントヘッドがアイドル状態でポンプのスイッチが切られているとき、インクは上方容器からプリントヘッドを経て下方容器に流れるので、プリントヘッドが再作動するとき、上方容器内のインクレベルは印刷開始前に再設定されなければならない。これはポンプの大きさにより、いくらか時間をとる。
【0020】
本発明は少なくとも1つのチャンバの上方に位置する第1流体容器およびチャンバ下方に位置する第2流体容器とつながった少なくとも1つの小滴流体チャンバ、第2流体容器から第1流体容器へ流体を運ぶためのポンプおよびポンプが作動していないとき第1流体容器から第2流体容器への流体の流れを阻止するための部材からなる小滴射出装置を提供する。
【0021】
本発明者らは上記のようなインク供給システムを確立し、そのシステムにおいて容器は大気に開放され、各容器内の流体レベルの制御はプリントヘッドの動作に決定的である。上方容器は一般にチャンバ入口とオリフィス間のチャンバ部分のインク流れに対する粘性抵抗に打ち勝つのに十分な静圧を与えるように選ばれる。同時に、ノズルでの圧力がインク・メニスカスの表面張力に打ち勝ち、インクをノズルから「滴らせる」(weep)ほど大きくてはいけない。実際、ノズルでのわずかな負圧が好ましい。下方容器はチャンバ出口で十分な負圧を働かせてインクを流すようにしなければならない。しかし、上方容器に関してのように、負圧はノズル内のインク・メニスカスを壊すほど大きくしてはいけない。
【0022】
したがって、好ましい実施態様において、本装置は第1流体容器内の流体レベルに依存してポンプを制御するためのポンプ制御部材を有する。
【0023】
こうして、本発明は少なくとも1つのチャンバの上方に位置する第1流体容器およびチャンバの下方に位置する第2流体容器につながった少なくとも1つの小滴流体チャンバ、第2流体容器から第1流体容器へ流体を運ぶためのポンプ、および第1流体容器内の流体レベルに依存してポンプを制御するためのポンプ制御部材からなる小滴射出装置を提供する。
【0024】
ポンプ制御部材は、第1流体容器内に位置する流体レベルにセンサを有し、該センサからの出力に依存してポンプを制御する。
【0025】
本装置は、第2流体容器から第1流体容器へ運ばれる流体の温度を制御するための温度制御部材を有する。これにより、インクは最適温度で、したがって周囲温度にかかわらず最適粘度で装置から射出する。
【0026】
本発明は少なくとも1つのチャンバの上方にある第1流体容器およびチャンバ下方にある第2流体容器とつながった少なくとも1つの小滴流体チャンバ、第2流体容器から第1流体容器に流体を運ぶための部材、および該運ばれた流体の温度を制御するための温度制御部材からなる小滴射出装置を提供する。
【0027】
インク温度はプリントヘッドを通り抜けるとき、ヘッドの駆動回路から発せられる熱によって上昇する。したがって、好ましい実施態様では、温度制御部材は第2容器から第1容器に運ばれる流体の温度を下げる部材を含む、これにより、最適温度よりも高温にあるインクはプリントヘッドまで運ばれない。
【0028】
本装置は、第1流体容器から少なくとも1つの小滴流体チャンバへ流体を運ぶための導管を有し、温度制御部材は該導管内に置かれた温度センサを有し、該センサからの出力に応じて第2流体容器から第1流体容器へ運ばれる流体の温度を制御する。
【0029】
1つの好ましい配列において、本装置は第1流体容器内の流体レベルが、ある与えられたレベルを越えるとき、第1容器から第2容器へ流体を運ぶための部材を有する。これにより第1容器の「オーバーフロー」を防げる。
【0030】
したがって、本発明は少なくとも1つのチャンバの上方にある第1流体容器およびチャンバ下方にある第2流体容器につながった少なくとも1つの小滴流体チャンバ、第2流体容器から第1流体容器へ流体を運ぶための部材および第1流体容器内の流体レベルが、ある与えられたレベルを越えるとき、第1流体容器から第2流体容器へ流体を運ぶための部材からなる小滴射出装置を提供する。
【0031】
第1容器から第2容器へ流体を運ぶための部材は、第1、第2容器間に伸びた導管を有する。
【0032】
1つの実施態様において、本装置は第2容器に流体を供給するための部材を有し、かつ、第2容器内の流体レベルに応じて第2容器への流体供給を制御するための部材を有する。これにより第2容器はオーバーフローしない。
【0033】
本発明は少なくとも1つのチャンバの上方にある第1容器およびチャンバ下方にある第2容器につながった少なくとも1つの小滴流体チャンバ、第2容器から第1容器へ流体を運ぶための部材、第2容器へ流体を供給するための部材、および第2容器内の流体レベルに応じて第2容器への流体供給を制御するための部材からなる小滴射出装置を提供する。
【0034】
流体供給制御部材は第2容器におかれた流体レベルセンサを有し、該センサからの出力に応じて第2容器への流体供給を制御する。
【0035】
1つの配列において、本装置は第2容器につながった第3容器、および第2容器内の流体レベルに応じて第3容器から第2容器へ流体を運ぶための部材を有する。
【0036】
本発明は少なくとも1つのチャンバの上方にある第1容器およびチャンバ下方にある第2容器とつながった少なくとも1つの小滴流体チャンバ、第2容器から第1容器へ流体を運ぶための部材、第2容器とつながった第3容器、および第2容器内の流体レベルに応じて第3容器から第2容器へ流体を運ぶための部材からなる小滴射出装置を提供する。
【0037】
本装置は第2容器から少なくとも1つの小滴流体チャンバへ流体を運ぶための部材を有する。
【0038】
こうして、第10の態様において、本発明は、少なくとも1つのチャンバの上方にある第1容器およびチャンバ下方にある第2容器につながった少なくとも1つの小滴流体チャンバ、第2容器から第1容器へ、および第2容器から少なくとも1つの小滴流体チャンバへ流体を運ぶためのポンプからなる小滴射出装置を提供する。
【0039】
好ましい配列において、本装置は第1容器から少なくとも1つのチャンバへ流体を運ぶのを切り替えるための部材を有する。
【0040】
各チャンバは、それぞれの端を第1・第2容器に接続され、かつ、第1・第2端の中間の点で小滴射出ノズルに接続されたチャネルを有する。
【0041】
チャネルの回りの流体流れをバイパスするため、チャネルの各端の間に接続された部材を有しうる。
【0042】
好ましくは、第2容器はその高さに比べて大きな表面積を有し、それにより容器内のヘッド(液深さ)のわずかな変動を伴って流体容積の大きな変化を調整し得る。これにより、チャンバ内に負圧変化を減らし得る。
【発明の効果】
【0043】
本発明は、上記のように構成したので、異物をインク内に閉じ込めてノズル詰まりを減らし、印字品質を良好にすることを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来技術によるプリントヘッドの断面図である。
【図2】本発明の第1の面による「ページ幅」プリントヘッドの斜視図である。
【図3】図2のプリントヘッドの後部および頂部からの斜視図である。
【図4】図2、3のプリントヘッドの断面図である。
【図5】図1のプリントヘッドのチャネルに沿う断面図である。
【図6】本発明の第2実施例のプリントヘッドの断面図である。
【図7】本発明のプリントヘッドの概略説明図である。
【図8】図1〜7のプリントヘッドに適する流体供給システムの説明図である。
【図9】図1〜7のプリントヘッドに適する流体供給システムの説明図である。
【図10】図1〜7のプリントヘッドに適する流体供給システムの説明図である。
【図11】図1〜7のプリントヘッドに適する流体供給システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を用いて本発明を具体的に説明する。
図2は、本発明の第1〜3の態様に対応するプリントヘッド10の第1実施例を示す。
図示しているのは「ページ幅」の装置で、紙の1片の幅(矢印100の方向)に伸びる2列のノズル20、30を有し、これにより1回のパスでページの全幅にわたってインクが射出される。ノズルからのインクの射出はたとえばEP−A−0277703、EP−A−0278590およびさらに詳しくはUK9710530、9721555から公知なように、ノズルとつながったチャンバと結合したアクチュエータへ電気信号を送ることにより達成される。製造を、簡単に効率を上げるため、ノズルの「ページ幅」列が多数のモジュールから構成される。そのうちの1つがモジュール40に示され、各モジュール40はチャンバおよびアクチュエータと結合し、たとえばフルキシブル回路60によって駆動回路(集積回路IC)50に接続されている。プリントヘッドへ、およびそれからのインク供給は端キャップ90内の各穴(図示せず)を通して行われる。
【0046】
図3は図2の端キャップ90を取り除いたときの後端からみたプリントヘッドの斜視図で、幅方向に伸びる流体入口マニホルド220、流体出口マニホルド210、230と結合したプリントヘッドの支持構造200を示す。端キャップ90の1つにおける穴を通して、インクはプリントヘッドおよび矢印215に示すように流体入口マニホルド220に入る。通路に沿ってインクが流れると、図4に示すように、インクは各チャンバ内に吐出される。流体入口マニホルド220からインクは開口部320を経てチャンバの第1・第2列(各300、310)に流入する。
【0047】
次にインクは開口部330、340を経て流出し、第1・第2インク出口通路である流体マニホルド210、230に沿ってインク流に合流する。端キャップ内に形成された共通のインク出口(図示せず)で合流し、それらは入口穴が形成されるプリントヘッドの対向端あるいは同一端に位置する。
【0048】
チャンバの各列300、310はそれぞれ駆動回路360、370と結合している。これらの駆動回路は導管として作用する支持構造200の部分と実質的に熱接触して装着され、導管は当該インク流の通路を規定し、それによって、当該駆動回路がその作動中に発生した熱の実質的な量を、当該支持構造を介してインクに伝達する事を可能にする。
【0049】
このため、支持構造200は熱をよく伝える性質の物質からなる。そのような物質は、アルミニウムが押出加工によって容易に安価に作られるので特に好ましい。駆動回路360、370は次に支持構造200の外面に位置し、熱接触する。熱伝導パッド又は接着剤を駆動回路と支持構造の間の熱交換に対する抵抗を減らすのに用い得る。
【0050】
インクを循環させることによりチャンバを効果的にきれいにするため、特に埃粒子のようなインク内の異物がノズル内に入らずに、ノズルを通過させるため、チャンバを通るインク流量は高く、たとえばチャネルからのインク最大射出量の10倍高くなければならない。これはインクをチャンバへ、またチャンバから供給する流体マニホルド内の高い流量を要求する。本発明によれば、流体入口および/または流体出口マニホルドはそのような高いインク流量でも、粘性効果によるチャンバ長さに沿う圧力損失が問題ではないようにさせるに十分な断面積を有している。
【0051】
上に説明したように、どちらか一方あるいは双方の流体マニホルド内の重大な圧力損失は、当該アレイ中の異なるチャンバ間のノズルでの静圧に重大な差をもたらす。これにより、チャンバ間のインク・メニスカスの位置に重大な差が生じ、したがってチャネル間の体積変化および速度変動をもたらす。公知なように、これらの変動は特に印刷される像に依存して印刷欠陥をもたらす。本発明ではマニホルド特性はそのような欠陥を避けるように選ばれている。たとえば、図2〜4のようなプリントヘッドは一般に50pl(ピコリットル)の小滴を生じ、この小滴は一般に約6kHzの最高射出周波数で、300ナノリットル/秒の各チャンバのノズルを通る流量に相当する。360ドット/インチの標準解像度でページ幅印刷(一般に12.6インチ)を供給するのに必要な4604ノズルを積算すると、約83ml/分のプリントヘッドのノズルからの最高射出量になる。
【0052】
図5のプリントヘッドチャンバとノズルをさらに詳細に述べる。流体チャンバは圧電物質のベース860内に形成されたチャネル11の形を取り、EP−A−0277703に開示されているように電極で被覆されることによりチャネル壁アクチュエータを形成するように、圧電チャネル壁を区切る。各チャネルは半分がカバー620の各部分820、830によって長手600、610に沿って閉じられ、カバー620もそれぞれ流体入口マニホルド220、流体出口マニホルド210、230とつながったポート640、650、630を伴って形成されている。810での電極の途切れによって、チャネルの各半分のチャネル壁が電気信号によって独立に作動する。各チャネルのからのインク射出はベースの対向面につながった開口部840、850を通して行われる。ノズル870、880は圧電部材に付属したノズル板890内に形成される。
【0053】
信頼性を考慮すると、プリントヘッドを通るインクの循環量が射出量よりも約10倍程度大きいことを要する。これにより、異物をインク内に閉じ込めてノズル詰まりを減らす。その結果、プリントヘッドを通る全流量は830ml/分のオーダーになる。ノズルからのインク射出は、プリントヘッドに流入するインク量に対して流出するインク量を減らす。しかし、この差は全インク循環量に比べて小さめで、各チャンバを通る流量は実質的に一定と言い得る。
【0054】
端キャップ90から離れるにつれて、流体入口マニホルドに沿う流量は、アレイに沿って距離とともに減る。同様に、流体出口マニホルド内の流量はインクを消耗するチャネルの数がふえると、アレイに沿って距離とともにふえる。
【0055】
アレイ内の異なるチャネルによって印刷された印字品質の重大な変動なく流体入口・出口マニホルド双方で最高流量にするため、流体入口・出口マニホルドはそれぞれ1.6×10−4および1.2×10−4の断面積をもつ。これにより、流体入口マニホルドの長手にわたって136Paのオーダーの全圧力降下を与える。流体出口マニホルドでの圧力降下は161Paのオーダーである。最高流量および最大圧力降下は、それぞれ流体入口・出口マニホルドの入口・出口接続部で生じる。実施例では、これらの位置での圧力降下は一連のチャネル間の印字品質の差が重大になるレベルを越えなかった。
【0056】
図2〜4の配列の利点はさらに、流体マニホルドの実質的に長方形の断面積により、十分な流れ面積を与えることで、基板の横方向(小滴射出方向およびチャネルアレイ方向双方に直交する)にプリントヘッドをより広くさせないことである。
【0057】
図6はノズル列の伸びる方向に直交する小滴体積装置の第2実施例の断面図である。図4の第1実施例と同様にプリントヘッドの支持構造900はヘッドの幅方向に伸びるインク流通路910、920と合体している。インクはプリントヘッドに入り、915で示すようにインク供給通路920に入る。通路に沿ってインクが流れると、支持構造900内に形成された開口部930を通って各インク・チャンバ925内に吐出される。チャンバを通って流れたインクは開口部940、950を通って935で示すように、インク流通路910に沿ってインク流と合流する。
【0058】
フラットなアルミナ基板960は、アルミナ介挿層970を介して支持構造900に装着されている。アルミナ介挿層970は約100μm厚みの熱伝導接着剤を使って支持構造900に結合されるのが好ましい。
【0059】
駆動回路のICチップ980は低密度フレキシブル回路板985上に実装されている。プリントヘッドの製造を容易にし、かつ安価にするため、ICチップ980を載せる回路板の各部はアルミナ基板960の表面に直接実装される。駆動回路の過熱を避けるため、抵抗器990のような他の熱発生部品は導管として作用する支持構造900と実質的に熱伝導接触で実装され、抵抗器990によって発生する熱を、支持構造900を通してインクに移させる。
【0060】
アルミナ基板およびアルミナ介挿層に加え、アルミナ板995が支持構造900の下側に設けられてこの位置で支持構造900の膨張を制限することにより、熱膨張による支持構造900の歪みを実質的に防止する。
【0061】
図7は小滴流体チャンバのリニア・アレイが水平方向に対して、0℃でない角度で配列されている本発明の他の面をさらに説明するものである。明確にするため、チャンバの単一リニア・アレイを矢印1000で示す。しかし、以下の解析は、図2〜図5に示す単一の流体入口マニホルド1010および二つの流体出口マニホルド1020の配列に基づいて行う。流体入口マニホルド1010には、接続1030でインクが供給され、流体出口マニホルド1020は、接続1040でインクを排出する。
【0062】
テーパ形状の介挿材1050、1060がそれぞれ流体入口・出口マニホルド内に設けられ、アレイの頂部で流体入口マニホルドに入るインクは流体マニホルドの一部の断面のみを介挿物によって阻止される。インクが流体入口マニホルドを下へ通るとき、その幾らかはチャネル1000を通って流体出口マニホルド1020へ流れ、アレイの底部に達する時間によって、流体入口マニホルドにはインク流がなく、介挿材は流れのために何の断面も残さない。流体出口マニホルドに達するインクもさらにテーパ形状の介挿材によって底部に向かって増す断面を通って下に流れる。アレイの底部では、全インクが介挿材による大きなスペース内を流れる。
【0063】
各流体マニホルドにおいて、アレイを下る長さ当たりの粘性圧力降下は各点で流れを利用できる断面を調整することにより、重力による圧力増加に対してバランスされる。チャンバ・アレイの長さをL、ノズル列当たりのノズル解像度をrとすると、図2−5の2列プリントヘッド内の全ノズル数は2rLで、プリントヘッドに対する全インク射出量は2rLVfである。ここでVとfはそれぞれ、小滴射出の体積と最高周波数である。一方、プリントヘッドを通る全流量は上記のようにクリーニングを考慮することにより射出量よりもn倍(典型的には10倍)大きいことを要する。
【0064】
図7のテーパ状介挿材は、流体入口マニホルド内での流速を2rVfnx(ここでxはアレイ底部からの距離)に従って減らし、各流体出口マニホルド内ではrVfn(L−x)に従って増やす。
【0065】
一般に長方形断面の流体マニホルドと組み合わせて、当該流体マニホルドは、当該アレイに沿ったそれぞれの位置における当該インク流が利用しえる断面形状を提供する事になる。その際の断面形状は、矩形であり、その寸法は、当該流体入口マニホルド部では、(W−T(x))、であり、当該流体出口マニホルドでは、(w−t(x))である。ここで、Wは、流体入口マニホルド1010の幅、T(x)は、テーパ状介挿材1050の幅であり、又、wは、流体出口マニホルド1020の幅、t(x)は、テーパ状介挿材1060の幅である。
【0066】
したがって、各マニホルド内の流れの速度Vは,アレイに沿って、流体入口マニホルドに対しては2rVfnx/(W−T(x))、そして、流体出口マニホルドに対してはrVfn(L−x)/(w−t(x))のように変化する。
【0067】
テーパ形状の循環しないチャネルに沿う流れと結合した圧力降下は、流速vおよびインク濃度pによってKpv/2に従って決まる。ここでKは、抵抗係数f(dx)/Dで、dxは薄層摩擦係数f=64/レイノルズ数をもつパイプの短い長さ、Dは水力直径で、長方形断面の場合は、小径の約2倍、すなわち流体入口マニホルドに関しては2(W−T(x))であり、流体出口マニホルド関しては2(w−t(x))に等しい。
【0068】
本発明のこの態様によれば、長さの短要素dxにわたる粘性圧力降下はその長さにわたる重力による静ヘッドの増加とバランスし、pg(dx)に等しい。ここでgは重力加速度である。
【0069】
このバランスを粘性損失に対して当てはめると、流体入口マニホルドに対して次式のようになる。
【0070】
(W−T)=16nrfVxμ/pgd
また、各流体出口マニホルドに対しては
(w−t)=8nrfV(L−x)μ/pgd
となる。これは流体入口マニホルド内の介挿材がx1/3のように変わるインクに対して通路幅を残すようにテーパ形状になる必要があり、流体出口マニホルド内の介挿材は同様にテーパ状になる必要があるが、アレイの反対側からである。この変化は、実際上達成するのが難しく、特に介挿材が機械加工されるときはそうで、その場合、たとえば一連のくさび形詰め木によって得られる近似の変化が受け入れられる。
【0071】
図2〜4のような、本発明の第1〜第3の態様に関するプリントヘッドに対する典型的な値は、流体入口マニホルド1010の入口端で(W−T)=1.46mm、および流体出口マニホルドの各出口端で(w−t)=1.16mmである。これらの値はマニホルド深さd=40mm、インク濃度p=900kg/m、およびインク粘度μ=0.01Pa・sを前提としている。また、インク射出による2つのマニホルド間のいかなる差も無視し、チャネルを通る流れが実質的に一定であるとしている。
【0072】
上記発明により、適切に流体マニホルドを用いて、水平に対しいかなる角度に配列されたプリントヘッドのアレイに対しても均一な射出特性が得られる。それは「ページ幅」設計にのみ限定されず、アレイにわたる静圧の変化が大きいという可能性がある場合にもそうである。流れ抵抗の変動が流れエリアにおける変動によって実施例では生じたが、これは唯一のメカニズムではない。上記パラメータの他のもの、特に抵抗係数Kはたとえばマニホルド内のコーティングの凹凸によるインク流変動によって変化し得る。さらに、たとえば国際公開第WO97/04963号パンフレットから公知のように、この概念は単一アレイ内で一度以上使われ得る。本発明はまた、インク循環をするシステムにのみ限定されない。実質的に一定のインク流は実質的に常時インクを射出している実質的に全インク・チャンバからも得られる。
【0073】
図8はスルーフロー・プリントヘッド2010を使うのに適するインク供給システム2000を示している。プリントヘッド2010は、チャネルが水平にアレイし、ノズル2020が下方に向いているが、本システムはすでに説明した非水平配列にも等しく適用できる。
【0074】
インクはエアフィルタ2041を経て大気に開放されている上方容器2040からプリントヘッドの中央流体入口マニホルド2030に入り、ポンプ2060によって下方容器2050からインクを供給される。ポンプ2060は上方容器内のセンサ2070によって、ノズルの面Pの上にあるノズルの面Pからの一定の高さHUに流体レベル2080を維持するように制御される。制限器2090によって過度の流量が防止されるので、ポンプ循環は自由面2080によって作られた圧力を乱さない。フィルタ2095によって、特に貯蔵タンクを経てインク供給内に入り得る異物がトラップされる。約50pl体積の小滴を射出するプリントヘッドは一般に、8μm以上の粒子をトラップするフィルタを要し、それにより約25μmの最小外径をもつノズルを詰まらせないようにする。たとえば、いわゆる「マルチパルス」印刷用に使われるより小さな小滴は、より小さなノズル(一般に20μm径)およびより密なフィルタを要する。
【0075】
下方容器2050において、流体レベル3000はインク貯蔵タンク(図示せず)に接続されたポンプ3030を制御するセンサ3010によってノズル面Pの下にあるノズルの面Pからの一定の高さHLに保たれる。フィルタ3020と制限器3040は上方容器の場合と同じ目的に使われる。下方容器2050はプリントヘッドの流体出口マニホルド2035につながれている。
【0076】
下方容器により流体出口マニホルドに加えられる負圧とともに、上方容器により流体入口マニホルドに加えられる正圧によって、チャンバ・アレイを通って、ノズルに不適当な圧力を加えることなく異物の滞留を防止するのに十分な流れを生じる。上記のプリントヘッドを使うと、HUが約280mm、HLが320mmで、ノズルに約−200Paの圧力を与える。このようなわずかな負圧によってインク・メニスカスは壊れず、正圧パルスの場合でさえそうである。種々のポンプを制御して自由面レベルを一定に保つ部材がそのような操作に役立つ。
【0077】
弁3050、3060がインク供給ラインに配列されている。ポンプ2060、3030およびセンサ2070、3010とともにプリントヘッド制御器に電気的に接続され、プリントヘッドの作動中、弁は開いているが、ヘッドが停止すると弁は閉じて上方容器から下方容器へインクが逆流するのを防ぐ。その結果、次にプリントヘッドが作動したとき、印刷が速やかに再開される。逆止弁3070がポンプ2060への供給ラインに設けられている。
【0078】
図9aは図8のインク供給配列の変形を示している。ポンプ2060を連続運転させることにより制御回路が簡略化され、容器内の流体レベルが出口レベル4000を越えるとインクは下方容器にもどる。気密のインク貯蔵タンク4010が下方容器2050の上方に装着され、供給パイプ4020によって接続されている。さらにパイプ4030の一端がタンク上部のエアスペース4040につながり、他端は所望のインクレベルAの高さに位置している。下方容器内の実際のインクレベル3000がレベルAよりも下がると、パイプ4030の前記他端がインクレベルよりも上に現れるので、空気がエアスペース4040内に流れ込み、チューブ4020を経てタンクからインクが流出して下方容器内に入るので、インクレベルは所定レベルAにもどる。図8のように、常閉弁と逆止弁により印刷の急速展開が可能になる。
【0079】
図9aのより簡略された変形を図9bに示す。単一の大径チューブ4012が封止容器4010と下方容器2050の間に伸びている。このチューブはどの部分も水平でなく、好ましくは先端を角度を切られている下端4014が下方容器内の流体と接している。インクレベルはこの目的で設定される。まず、スペース4040内が真空になるまでインクが封止容器4010から流出する。下方容器からインクが少なくなるとチューブの下端4014が露出し、空気を封止容器まで流し上げ、そこの真空度合を減らす。次にインクは、真空度合がインクヘッドを保つに十分な以前のレベルまで増すまで封止容器から下に流れる。
【0080】
図8、9の装置において、プリントヘッドの流体入口マニホルドは上方容器によってインクを供給される。しかし、初期のインク供給は容易でない。第一に、プリントヘッド内の空気が下方に流出させられなければならない。第二に、空気がプリントヘッド内にトラップされ、下方容器内の「サイフォン」効果の設定を妨げる。
【0081】
インク系から空気をすっかり排出することが正および負の流体圧力を発生させるのに重要で、インク系を空(から)から充填するとき、プリントヘッド・マニホルドおよびチューブから大量の空気を出さなければならない。このため、図10a、10bに示す2つの方法を開発した。これらは一緒に、あるいは単独で使われる。
【0082】
図10a、10bにおいて、図6のようにプリントヘッド2010は単一の流体入口マニホルド2030および単一の流体出口マニホルド2035をもつように示されている。これらの流体マニホルドはバイパス弁5012を有するバイパス5010によってつながれている。
【0083】
通常の印刷の間、インクはエアフィルタ2041を経て大気に開放された上方容器2040から流体入口マニホルド2030に入る。弁5012は閉じているので、インクは流体入口マニホルドからチャネルに入り、流体出口マニホルドに入って、下方容器に運ばれる。上方容器はポンプ2060によって下方容器2050からインクを供給される。図9のシステムのように、ポンプ2060は連続運転され、上方容器の流体レベルがレベル4000を越えた時、下方容器にインクがもどされる。フィルタ2095は異物をトラップする。
【0084】
インクはフィルタ2095から2つの位置の1つを選択する転換弁5000に流れる。転換弁5000は通常印刷の間、図10aの第1位置5002を取るので、インクは上方容器2040に供給される。
【0085】
プリントヘッドの初期充填の間、弁3050は閉じ、転換弁5000は図10bの第2位置5004を取る。これにより、プリントヘッドは、ポンプアップされたインクを下方容器の底から充填する。その間、バイパス弁5012は開いている。開くと、この弁は流体入口・出口マニホルドを接続パイプの対向端で接続し、チャネルを介さずに、互いにインクと空気を通させる。これは、抵抗がより低い通路なので、より高い流体速度で流体を通し、空気も通過させる。
【0086】
図8で説明したように、弁3050、3060はインク供給ラインに配置され、印刷の間開いたままで、弁3050は充填操作の間、閉じてインクがプリントヘッドから下方容器内に排出するのを防ぐ。弁3050、3060は接続パイプの穴と等しい穴を有し、気泡が弁入口に溜まるのを防ぐ。逆止弁も供給ラインに設けられる。
【0087】
バイパス弁5012は上方容器2040からプリントヘッドを有効に充填するために用いられる。ポンプ2060を運転させ、上方容器を充満させて、弁3050を閉じ、バイパス弁5012と弁3060を開ける。流体はプリントヘッド内に流入し、空気を下方接続パイプ内に圧縮する。これが生じると、弁3050は開き、インクの高流量によって空気が排出される。空気がすべて除かれると、バイパス弁は閉じ、プリントヘッドは作動準備に入る。
【0088】
バイパス弁を使うことの利点は、プリントヘッドが充填の間、ノズルからインクを滴下しないことである。
【0089】
他の利点は、少量の空気がバイパス弁5012を瞬間的に開けることにより、容易に排出されることである。
【0090】
亦、他の利点は、バイパス弁5012を開けてプリントヘッドをつないだ後、チャネルを流れる異物を除くように一掃することである。
【0091】
さらに他の利点は、供給パイプに結合してバイパス弁5012を使うことで、許容できる圧力降下を両立する最小の内部穴を有する。これにより、高い速度が得られ、気泡を下方に運ぶのに便利である。
【0092】
このシステムは転換弁5000あるいはバイパス弁5012の一方、もしくは双方を用いる。インク温度は、たとえば周囲温度およびプリントヘッド作動条件によって変動する。それにより、インク粘度が変化するので、プリントヘッドから滴下するインク量が変化し、たとえば小滴の大きさの好ましくない変化をもたらす。したがって、インク温度を制御することが望ましい。
【0093】
図11は、インク温度調整配置を示す。図10と同様だが、説明上、転換弁5000、バイパス5010およびバイパス弁5012を省いてある。
【0094】
図11のシステムは、上方容器2040内のインクを加熱するためのヒーター6000を有する。ヒーター6000は、たとえば上方容器2040を囲むように配置される。その出力は制御器(図示せず)によって制御され、温度センサ6020からの出力によって温度指示を受ける。
【0095】
たとえば周囲温度が15℃から30℃に変化するならば、プリントヘッドが最適温度40℃で作動すると仮定すると、ヒーターはインクを25℃だけ加熱しなければならない。しかし、プリントヘッドの作動の間、それを通る流体も加熱されるので、インク温度は10℃上昇する。これにより、下方容器から上方容器に流れる熱が最適温度よりも上がる。したがって、制御可能な冷却用熱交換器6010がポンプ2060とフィルタ2095の間に設けられ、流体温度を下げる。
【0096】
本明細書および図面に開示された各特徴は、他の特徴とは独立して、本発明の中に含まれる。
【0097】
たとえば、図8〜11に開示された特徴は、いかなる適切な配列とも一緒になり得る。また、図11の加熱・冷却配列は、図8、9のシステム内に用いられ得る。同様に、図10の下方容器2050を用いるプリントヘッド充填用配列は、図8、9のシステム内に用いられ得る。
【符号の説明】
【0098】
10: プリントヘッド
20、30: ノズル
220: 流体入口マニホルド
210、230: 流体出口マニホルド
900: 支持構造
925: インク・チャンバ
1000: 単一リニア・アレイ
1010: 流体入口マニホルド
1020: 流体出口マニホルド
1050: 介挿材
2000: インク供給システム
2010: プリントヘッド
2030: 流体入口マニホルド
2035: 流体出口マニホルド
2040: 上方容器
2050: 下方容器
4000: 出口レベル
4010: インク貯蔵タンク
5000: 転換弁
5010: バイパス
5012: バイパス弁
6000: ヒーター
6010: 冷却用熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流体チャンバで構成されているアレイを有する小滴射出装置において、
各々の流体チャンバが、小滴射出用オリフィスと、共通の流体入口マニホルドと、共通の流体出口マニホルドとにそれぞれ連結され、
該流体入口マニホルド内に入り、該アレイを構成するそれぞれのチャンバを通り、流体出口マニホルド内に入るような第1の流体流を発生させるための手段を具備し、
各流体チャンバは、前記小滴射出用オリフィスから小滴を射出するための手段と連携することで、前記流体入口マニホルドから前記チャンバに入り、前記小滴の形で前記小滴射出用オリフィスから射出される第2の流体流を発生させ、前記第2の流体流は、前記第1の流体流の流れと同時に発生し、前記第1の流体流の流量が、前記第2の流体流の最大流量より大であることを特徴とする小滴射出装置。
【請求項2】
各流体チャンバは、長細く、第1端において、前記共通の流体入口マニホルドに連通する流体入口と、対向する第2端において、前記共通の流体出口マニホルドに連通する流体出口とを有し、前記流体チャンバを通る前記第1の流体流は、前記流体入口から前記流体出口に流れることを特徴とする請求項1記載の小滴射出装置。
【請求項3】
前記小滴を射出するための手段は、前記流体チャンバの長さに沿って、且つ、前記オリフィスに対向して設けられていることを特徴とする請求項2記載の小滴射出装置。
【請求項4】
前記小滴を射出するための手段は、圧電部材で構成したことを特徴とする請求項3記載の小滴射出装置。
【請求項5】
前記第1の流体流は、ポンプを用いて、前記流体チャンバ内を循環させると共に、前記流体入口マニホルドに対して第1の正の圧力を印加すると共に、第2の負の圧力を前記流体出口マニホルドに対して印加することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の小滴射出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−88449(P2011−88449A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22421(P2011−22421)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2006−355491(P2006−355491)の分割
【原出願日】平成11年12月24日(1999.12.24)
【出願人】(301055608)ザール テクノロジー リミテッド (31)
【Fターム(参考)】