説明

尿吸収用材料又は汗吸収用材料

【課題】吸液性とともに、優れたアンモニア臭あるいは汗の臭の消臭効果を発揮できる尿吸収用材料又は汗吸収用材料を提供する。
【解決手段】少なくとも液吸収層を有する尿吸収用材料又は汗吸収用材料であって、繊維質材料等から構成されている液吸収層中に、クエン酸、ホウ酸及びリンゴ酸等の酸の固体粒子が分散、胆持されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿取りパッド、おむつ、脇の汗取りパッド等に利用できる尿吸収用材料又は汗吸収用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、尿取りパッド、紙おむつ(使い捨ておむつ)、生理用ナプキン、脇の汗取りパッド等は、その利便性から需要が増加の一途をたどっている。特に、尿取りパッド、紙おむつ等にあっては、高齢化社会において不可欠なアイテムのひとつになっている。
【0003】
このため、さまざまな角度から改良が加えられ、より使いやすい製品の開発が進められている。例えば、内面側に液透過性のトップシートが、内部に前記トップシートを透過した液を吸収する吸収コアが設けられ、外面側には前記吸収コアを通過した液を透過させる液透過領域が形成され、前記液透過領域を覆う液不透過性のバックシートが、前記外面側のほぼ全域に剥離可能に接合されていることを特徴とする尿取りパッド(特許文献1)等が提案されている。
【特許文献1】特開平11−267145
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これまでの製品では、あくまで吸液性に主眼が置かれるにとどまる。特に、尿取りパッド、紙おむつにおいては、悪臭(特にアンモニア臭)の対策が十分になされていない。このため、尿が尿取りパッド、紙おむつ等に吸収されてもアンモニア臭が強く残るため、それによって使用者や周辺関係者が不快感に悩まされる。また、脇の汗取りパッドにおいても、汗の吸液性に主眼が置かれているだけであり、汗の臭いやワキガの臭いの対策は十分になされていない。汗の臭いの成分の1つはアンモニアであるが、アンモニア臭に対する対策は十分になされていない。
【0005】
従って、本発明の主な目的は、吸液性とともに優れた消臭効果を発揮できる尿吸収用材料又は汗吸収用材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の材料を液吸収層に存在させることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の尿吸収用材料又は汗吸収用材料に係る。
1. 少なくとも液吸収層を有する尿吸収用材料又は汗吸収用材料であって、前記液吸収層中に酸の固体粒子が分散されていることを特徴とする尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
2. 前記液吸収層が、担体に高吸水性高分子の粉末が担持されてなる、前記項1に記載の尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
3. 前記担体が、繊維質材料から構成されている、前記項1又は2に記載の尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
4. 前記酸が、室温で固体の酸である、前記項1〜3のいずれかに記載の尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
5. 前記酸が、クエン酸、ホウ酸及びリンゴ酸の少なくとも1種である、前記項1〜4のいずれかに記載の尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
6. 前記液吸収層の上層及び下層の少なくとも一方に液透過層がさらに積層されている、前記項1〜5のいずれかに記載の尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
7. 前記固体粒子が、前記担体に担持されている、前記項2に記載の尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
8. 前記酸の溶液又は分散液を担体に含浸させ、次いで乾燥することによって、前記固体粒子が担体に担持されている、前記項7に記載の尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の尿吸収用材料又は汗吸収用材料によれば、特に、酸の固体粒子を分散させた液吸収層を採用しているため、アンモニア臭あるいは汗の臭を低減ないしは解消することができる。
【0009】
また、
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の尿吸収用材料又は汗吸収用材料は、少なくとも液吸収層を有する尿吸収用材料又は汗吸収用材料であって、前記液吸収層中に酸の固体粒子が分散されていることを特徴とする。
【0011】
液吸収層を構成する材料としては、特に尿を吸収できるものであれば限定的でなく、公知の材料を用いることができる。例えば、ポリアクリル酸塩系、イソブチレン−マレイン酸共重合体系、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体系、カルボキシメチルセルロース系、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体けん化物系、デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体けん化物系等の高吸水性高分子のほか、粉砕パルプ、不織布、ティッシュペーパー等を用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。これらは市販品を用いることもできる。
【0012】
上記材料の形態は限定的でなく、製品の形態等に応じて適宜設定することができる。例えば、粉末状の高吸水性高分子を好適に用いることができる。この場合、担体(脱脂綿、綿花、不織布等の繊維質材料)等にこれらの粉末を担持させて用いることもできる。
【0013】
液吸収層の厚みは、用いる材料、使用形態等により異なるが、一般的には0.5〜30mmの範囲内で設定することができる。
【0014】
酸の固体粒子(以下、単に「固体粒子」ともいう。)は、室温(20℃付近)で固体状態の酸を好適に用いることができる。例えば、ホウ酸等の無機酸、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸を用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。これらは、市販品を用いることもできる。
【0015】
酸の固体粒子の粒径は限定的でない。例えば日本薬局方による粉末を用いる場合には、一般に平均粒径0.1〜3mm程度の範囲の固体粒子から適宜選択することができる。酸の溶液を用いて固体粒子を付与する場合(溶液から固体粒子を析出させる場合)は、前記の平均粒径よりも小さくなってもよい。
【0016】
酸の固体粒子の使用量は、本発明材料の具体的用途、使用目的、使用形態、所望の消臭効果等に応じて適宜決定することができる。一般的には、液吸収層の吸収可能重量100重量部(比重は水に換算)に対して0.01〜10重量部の範囲内で設定することができる。例えば、液吸収層が尿300ml吸収用(300ml用尿取りパッド)であれば、固体粒子は0.03〜30重量部とすれば良い。
【0017】
酸の固体粒子は、液吸収層に固定(担持)されていても良いし、固定されていなくても良い。固定する場合は、例えば液吸収層を担体として、その担体に酸の固体粒子を付着させれば良い。付着方法は、例えば粘着剤、接着剤、その他バインダーに酸を溶解又は分散させ、その溶液又は分散液を担体に含浸させれば良い。固定しない場合は、1)固体粒子をそのまま液吸収層に分散させたり、あるいは2)水、アルコール等に固体粒子を分散させた後、その分散体を液吸収層に含浸させれば良い。このときは、他の層で液吸収層を挟持することにより、固体粒子が液吸収層から脱落しないようにすれば良い。
【0018】
本発明材料は、用途、使用目的等に応じて、他の層を積層して積層体として用いることもできる。例えば、液透過層、液不透過層、接着剤層等の公知の製品で使用されている層構成を採用することができる。これらの層の形成は、公知の製品で採用されている方法により実施できる。
【0019】
例えば、尿取りパッドとして使用する場合は、図1に示すような基本層構成を採用することができる。すなわち、本発明材料層1の上層に液透過層2を形成し、本発明材料の下層に液不透過層3を形成することができる。この場合、液透過層2の上方から尿が透過し、本発明材料層1で尿が吸収される。吸収された尿は、本発明材料層中に分散している固体粒子により、アンモニアからアンモニウム塩が生成され、アンモニア臭の消臭が行われる。また、液不透過層3の形成により、本発明材料層から尿が外部(下方)に漏れるのを防止することができる。
【0020】
このように、本発明材料は、市販の紙おむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン、脇の汗取りパッド、動物用尿取りシート等の液吸収層(尿吸収層)として用いることができる。
【0021】
本発明材料の製造方法は、上記のような構成が得られる限り特に限定されない。例えば、脱脂綿等のような綿状担体に粉末状高吸水性高分子及び固体粒子を分散させた後、必要に応じて上層及び/又は下層を形成し、積層体とすることができる。この場合、両端を粘着剤、接着剤、粘着テープ等で留めることにより、粉末状高吸水性高分子及び固体粒子の脱落を防ぐこともできる。これは、前記のような市販品の製造過程において、液吸収層を構成する際に、本発明材料で液吸収層を導入すれば、本発明材料を有する各種の製品を得ることもできる。
【0022】
また、製造後の市販品の液吸収層に別途に固体粒子を分散させることによって、市販品に本発明材料層を形成することもできる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0024】
実施例1
市販の尿とりパッドの一部(10cm×10cm)を切り取り、尿取りパッドを構成する多層構造の液吸収層中に、常温で固体のクエン酸0.5gを分散させることにより、尿吸収用材料を製造した。得られた材料に2%アンモニア水を100ml吸収させた。5分経過後にパネラーに上記材料(アンモニア水を吸収させた側)から2cmの位置まで鼻を近づけてそのアンモニアの臭いを嗅ぎ、次の4段階で臭いの程度を評価させた。評価は嗅覚検査に合格した臭覚判定能力確認済みの6人のパネラーA〜Fで実施した。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
表1中のパネラーによる評価は、下記の基準とした。
【0027】
0:無臭
1:弱いアンモニア臭が認識できる
2:容易にアンモニア臭が確認できる
3:アンモニアの強烈な刺激臭が確認できる
実施例2
クエン酸0.5gに代えてホウ酸0.5gとしたほかは、実施例1と同様にして尿吸収用材料を製造し、パネラーによる試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0028】
比較例1
クエン酸を使用しなかったほかは、実施例1と同様にして尿吸収用材料を製造し、パネラーによる試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0029】
実施例3
市販の脇の汗取りパッドの一部(5cm×5cm)を切り取り、脇の汗取りパッドを構成する不職布の構造の中に、常温で固体のクエン酸0.01gを分散させることにより、汗吸収用材料を製造した。得られた材料に2%アンモニア水を1ml吸収させた。5分経過後にパネラーに上記材料(アンモニア水を吸収させた側)から2cmの位置まで鼻を近づけてそのアンモニアの臭いを嗅ぎ、次の4段階で臭いの程度を評価させた。評価は嗅覚検査に合格した臭覚判定能力確認済みの6人のパネラーA〜Fで実施した。その結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表2中のパネラーによる評価は、下記の基準とした。
【0032】
0:無臭
1:弱いアンモニア臭が認識できる
2:容易にアンモニア臭が確認できる
3:アンモニアの強烈な刺激臭が確認できる
実施例4
クエン酸0.01gに代えてホウ酸0.01gとしたほかは、実施例3と同様にして汗吸収用材料を製造し、パネラーによる試験を実施した。その結果を表2に示す。
【0033】
比較例2
クエン酸を使用しなかったほかは、実施例3と同様にして汗吸収用材料を製造し、パネラーによる試験を実施した。その結果を表2に示す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明材料を用いた層構成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも液吸収層を有する尿吸収用材料又は汗吸収用材料であって、前記液吸収層中に酸の固体粒子が分散されていることを特徴とする尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
【請求項2】
前記液吸収層が、担体に高吸水性高分子の粉末が担持されてなる、請求項1に記載の尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
【請求項3】
前記担体が、繊維質材料から構成されている、請求項1又は2に記載の尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
【請求項4】
前記酸が、室温で固体の酸である、請求項1〜3のいずれかに記載の尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
【請求項5】
前記酸が、クエン酸、ホウ酸及びリンゴ酸の少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
【請求項6】
前記液吸収層の上層及び下層の少なくとも一方に液透過層がさらに積層されている、請求項1〜5のいずれかに記載の尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
【請求項7】
前記固体粒子が、前記担体に担持されている、請求項2に記載の尿吸収用材料又は汗吸収用材料。
【請求項8】
前記酸の溶液又は分散液を担体に含浸させ、次いで乾燥することによって、前記固体粒子が担体に担持されている、請求項7に記載の尿吸収用材料又は汗吸収用材料。


【図1】
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【公開番号】特開2007−135979(P2007−135979A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335888(P2005−335888)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(595092363)株式会社データアクション (5)
【出願人】(505432430)
【Fターム(参考)】